説明

情報記録再生装置、情報記録再生媒体、及び情報記録再生装置のホスト装置

【課題】 特定の規則には従わない解読困難な暗号鍵を埋め込むことによって、強力に不正コピーを防止することができるようにする。
【解決手段】 本発明に係るディスクを製造する時、本来のデータに、そのECCブロックのエラーレートの違いで表現される暗号鍵が付加される。ディスク上のデータを読み取る時、暗号鍵を構成する1ビットの情報を、16個のECCブロックのエラーレートの平均値を判定することにより求める。暗号鍵は、8×7=56ビットであるが、傷や汚れなどでエラーレートが悪化して論理値の”0”を論理値の”1”と誤認識することを防ぐために、チェック用の8ビット(1バイト)のデータ(チェックサム)を最後に付加している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の情報記録再生媒体のエラー訂正機能を利用して、不正コピーを防止するようにした情報記録再生装置、情報記録再生媒体、及び情報記録再生装置のホスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ機器やビデオ機器などのオーディオ製品の普及を背景に、デジタルコンテンツを記録するための情報記録媒体と、その記録再生装置の技術が急速に発展してきた。それと相まって、著作物としてのデジタルデータの複製、特に不正コピーが問題とされるようになり、不正コピーを防止するためのコピープロテクション技術が盛んに開発されている。最近の特に高度なコピープロテクション技術を用いた例としては、DVDビデオディスク装置の例があり、これには、複雑な暗号化技術が利用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来の情報記録再生装置、及び情報記録再生媒体にあっては、例えば、DVDビデオディスクの複雑な暗号化システムは、当初は不正コピーに対して有効に機能していたが、暗号化に用いる暗号鍵が一度解読されてしまうと、この暗号鍵で保護されていたコンテンツが全て復号化されて、自由に複製されてしまうという問題点があった。
【0004】
このため、従来のDVDビデオディスクでは、暗号鍵が知られてしまった時の対策として、数百個の複数の暗号鍵を予め用意しておき、知られてしまった暗号鍵については、それ以降のシステムでは暗号鍵として使用できないように切り離していくという方法を取っている。
【0005】
しかし、この複数の暗号鍵は、一応は、システムに対応した一定の非公開規則に基づいて作成されてはいるが、この規則自体が知られてしまうと、やはり不正コピーを防止することはできなくなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、特定の規則には従わない解読困難な暗号鍵を埋め込むことによって、強力に不正コピーを防止することができる情報記録再生装置、情報記録再生媒体、及び情報記録再生装置のホスト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る情報記録再生装置は、情報記録再生媒体に対して情報を記録再生する機能を備えた情報記録再生装置において、前記情報記録再生媒体に記録される前記情報を、暗号鍵を使用して暗号化する手段と、情報の正常な記録単位であるECCブロックに対して、誤ったデータを、エラー訂正不能に陥らない程度に混入することにより、前記ECCブロックのエラーレートを変化させる誤りデータ混入手段と、前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値に対応させて、前記暗号化された情報を構成する1以上のECCブロックに対して前記誤りデータ混入手段を適用するか、若しくは適用しないかのいずれか1方の選択肢を選択することにより、前記暗号鍵を、前記暗号化された情報の内に埋め込む手段と、前記前記暗号鍵が埋め込まれた前記暗号化された情報を、前記情報記録再生媒体に記録する手段とを備えたことを特徴とする情報記録再生装置を提供するものである。
【0008】
ここで、前記誤りデータ混入手段が選択的に適用される前記1以上のECCブロックは、前記情報記録再生媒体上の所定の領域に記録されることを特徴とする。
【0009】
また、前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値を、対応する前記1以上のECCブロックのエラーレートまたはその平均値により選択的に決定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る情報記録再生媒体は、情報記録再生装置によって情報が記録再生される情報記録再生媒体であって、前記記録再生される情報は、前記情報を暗号鍵を使用して暗号化する手段と、情報の正常な記録単位であるECCブロックに対して、誤ったデータを、エラー訂正不能に陥らない程度に混入することにより、前記ECCブロックのエラーレートを変化させる誤りデータ混入手段と、前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値に対応させて、前記暗号化された情報を構成する1以上のECCブロックに対して前記誤りデータ混入手段を適用するか、若しくは適用しないかのいずれか1方の選択肢を選択することにより、前記暗号鍵を、前記暗号化された情報の内に埋め込む手段とを備えた前記情報記録再生装置によって記録されたものであることを特徴とする情報記録再生装置を提供するものである。
【0011】
ここで、前記1以上のECCブロックに対して、前記誤りデータ混入手段が選択的に適用されて成るデータは、所定領域に記録されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値は、対応する前記1以上のECCブロックのエラーレートまたはその平均値により選択的に決定されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る情報記録再生装置のホスト装置は、情報記録再生媒体に対して情報を記録再生する機能を備えた情報記録再生装置に接続されるホスト装置であって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報記録再生装置に装填された請求項4記載の情報記録再生媒体に対して、コピーが禁止されているか否かを判断する手段と、コピーが禁止されていると判断した場合に、情報記録再生媒体上の特定アドレスを指定して前記アドレスから埋め込まれた暗号鍵を受け取るための指令を前記情報記録再生装置に対して送出する手段と、前記アドレスから記録されたデータを受け取るための指令を前記情報記録再生装置に対して送出する手段と、前記受け取った暗号鍵を使用して前記データを復号化する手段とを備えたことを特徴とする情報記録再生装置のホスト装置を提供するものである。
【0014】
即ち、本発明の情報記録再生装置は、エラー訂正を有する情報記録再生媒体に対して情報を記録再生するための情報記録再生装置において、記録される情報のECCブロック単位に、意図的に誤ったデータを混入することにより、ECCブロック単位のエラーレートを、訂正不能にならない程度に上げる。より具体的には、エラーレートを変化させたECCブロックを”1”、変化させてないECCブロックを”0”(逆でも可)というようにビット列の各論理値を割り当て、これらの各論理値を有するビット列により暗号鍵を構成し、この暗号鍵を含むデータを情報記録再生媒体に記録することにより、暗号鍵をデータに埋め込んで隠し、これにより、不正コピーされて作成された不正な情報記録再生媒体では、暗号鍵の複製まではできないようにすることを特徴とするものである。
【0015】
この情報記録再生装置において、暗号鍵を構成する1つのビットに割り当てるECCブロックは、傷や汚れ等によるエラーレート悪化を考慮して、連続した複数のECCブロックを使い、それら複数ECCブロックのエラーレートの平均値によって”1”、”0”を判断することが好ましい。
【0016】
また、本発明の情報記録再生媒体は、エラー訂正を有する情報記録再生媒体に対して、意図的に誤ったデータを混入してECCブロック単位のエラーレートを訂正不能にならない程度に上げる手段により、エラーレートを変化させたECCブロックを”1”、変化させてないECCブロックを”0”(逆でも可)というようにビットを割り当て、これらのビット列により暗号鍵を構成して記録したものである。
【0017】
この情報記録再生媒体において、暗号鍵を構成する1つのビットに割り当てるECCブロックは、傷や汚れ等によるエラーレート悪化を考慮して、連続した複数のECCブロックを使い、それら複数ECCブロックのエラーレートの平均値によって暗号鍵を構成する各ビットの論理値の”1”、”0”を決定(または判断)することが好ましい。
【0018】
本発明の情報記録再生装置のホスト装置は、前記情報記録再生装置に装填された情報記録再生媒体に対して、コピーが禁止されているか否かを判断し、コピーが禁止されていると判断した場合は、情報記録再生媒体に埋め込まれた暗号鍵を情報記録再生装置から受け取るための指令を送出し、その応答として情報記録再生装置から暗号鍵を受け取る。その後、情報記録再生装置から暗号化されたデータを読み込み、前記受け取った暗号鍵を使用して、この暗号化されたデータを復号化するものである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の情報記録再生装置、情報記録再生媒体、及び情報記録再生装置のホスト装置によれば、情報記録媒体上に記録するデータを暗号鍵で暗号化すると共に、この暗号鍵を表現するエラーデータをデータに埋め込むことによって不正コピーを防止しているが、正規業者以外の外部者は、暗号鍵を表現するエラーデータの分布までは知ることができないので、暗号鍵まで含めて不正に複製することが困難であるという効果がある。
【0020】
また、正規ディスクに埋め込まれた暗号鍵を外部から知ることは容易ではなく、さらに、不正ディスク上のアプリケーションデータには暗号鍵が含まれていないので、よしんば、不正使用者が、複製された不正ディスク上のアプリケーションデータの読み出しに成功したとしても、アプリケーションデータに掛けられたスクランブルを除去してアプリケーションデータを利用することまではできないという効果がある。
【0021】
また、万一、或るディスク内の1つの暗号鍵が外部に知れたとしても、特定の規則によらず、任意に代わりの暗号鍵を埋め込むことができるので、従来のように他の暗号鍵を芋づる式に求められることにより不正コピー防止システムそのものが有効に機能しなくなるといった事態を、実用的に防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の情報記録再生装置、情報記録再生媒体、及び情報記録再生装置のホスト装置の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る情報記録再生装置及びそのホスト装置を含む情報記録再生システムの全体構成を示す構成図である。
同図において、本実施形態の情報記録再生装置1は、本実施形態の情報記録再生媒体である光ディスク2(後述する記録媒体)に対してのデータの記録再生を行うための記録再生ヘッド12と、光ディスク2のサーボ制御を行うためのサーボ制御部13と、サーボ制御部13と連携しながら、光ディスク2に対してデータを記録再生するデータ変復調部14と、記録再生データを格納するための記録再生バッファ15と、ECC回路17(後述)のワーク領域であるECC用メモリ16と、誤り訂正符合を付加したり、誤りを検出し訂正を行なうECC回路17と、本装置全体の動作を制御するためのシステムコントロールマイコン18と、本実施形態のホスト装置であるホスト装置10からのリード/ライト等の命令、コマンド実行結果を示すステータス、及びその他のデータの送受信を行うためのホストI/F制御部19と、を備えて構成している。
【0024】
光ディスク2は、着脱可能な光ディスク媒体である。
本実施形態に係るホスト装置10は、周知のコンピュータシステムで構成することができるので、その構成図は省略する。
【0025】
以下、本実施形態の情報記録再生装置及びそのホスト装置の動作について説明する。
本実施形態に係る情報記録再生装置及びそのホスト装置は、図1に示すように、本実施形態に係る情報記録再生媒体として着脱可能な光ディスク2を用いる。以下、本実施形態に係る光ディスク2において、誤り訂正符号を含むデータの最小単位のことを、ECCブロックと呼称する。
【0026】
各ECCブロックには、ディスク上で一意に識別可能なアドレスが割り振られている。
ホスト装置10からのリード/ライトコマンドによって、光ディスク2上においてリード/ライトを行いたい開始位置と、リード/ライトを行いたいデータのサイズとが指定される。
【0027】
記録再生バッファ5は、データを一時的に格納するためのRAMであり、光ディスク2の記録再生速度とホスト装置10とのデータ転送速度との差を吸収するものである。また、システムコントロールマイコン8は、ディスク上にデータを記録する時には、ECC回路7に対して誤り訂正符号を付加すべきことを指示し、ディスク上のデータを再生する時には、ECC回路7に対して前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正を行うべきことを指示する。
【0028】
次に、本実施の形態に係る情報記録再生媒体の構造を説明する。
図2は、本実施の形態に係る情報記録再生媒体の構造を示す模式図である。
本実施の形態に係る情報記録再生媒体である光ディスク2には、その最も内側の円周領域に、このディスクに記録するのに最適なレーザーパワーの出力を求めるための基準値など記録再生に必要な情報が格納されている書き換え不可能な領域が設けられている(以下、これを「HFM領域」と呼称する)。
【0029】
その外側の円周領域には、上記HFM領域に書かれた基準レーザーパワーで実際にディスクに記録再生を試みて、レーザーパワーの出力値を微調整するための領域が設けられている(以下、これを「OPC領域」と呼称する)。
さらに、その外側の円周領域は、データ領域であり、データを記録再生するための複数のECCブロックが螺旋状に設けられている。各ECCブロックにはアドレスが設定されている。このアドレスは、内周から外周に向かって増加していき、例えば、16進数で020000hから17FFFFhまでのアドレスが設定されている。
【0030】
上記のデータ領域内には、アプリケーションを管理するための管理情報が記録されている。これは通常、ディスクの内周付近に記録されることが多いが、本発明では、特定のアドレスに固定されるものではない。
【0031】
次に、本実施の形態に係る情報記録再生媒体に埋め込まれた暗号鍵の再生方法を説明する(なお、前記暗号鍵が埋め込まれた本実施の形態に係る情報記録再生媒体の作成手順については後述する)。
本実施の形態に係る情報記録再生装置では、情報記録再生媒体である光ディスク2上の1つのECCブロックのエラーレートまたは複数のECCブロックのエラーレートの平均値を用いて、暗号鍵の各桁の論理値を作成している。以下、ディスク再生時に、ディスクの記録から暗号鍵を取り出す暗号鍵の復号化方法について、さらに詳細に説明する。
【0032】
図3は、暗号鍵が埋め込まれていない通常のディスクを再生した時のエラーレートの様子を示した説明図である。
同図に示すように、ディスクに傷や汚れがない限り、エラーレートは、通常は、訂正不能になる限界値(図3の訂正不能レベル)よりもかなり低く抑えられている。
【0033】
図4は、暗号鍵が埋め込まれていない通常のディスクを再生した時のエラーレートの様子を示した説明図である。図4は、或るECCブロックに故意に誤りデータを混入してエラーレートを悪化させた時の様子を示したものである。同図に示すECCブロックには、誤りデータが故意に混入されているので、エラーレートは、図3に示す場合よりも高くなっている。
【0034】
図3に示すようなエラーレート状態を論理値の”0”、また、図4に示すようなエラーレート状態を論理値の”1”として、暗号鍵の1ビットの情報(論理値)に対応させる。
この場合、1つのECCブロックを暗号鍵の1ビットに対応させてもよいが、より信頼性を高めるために複数のECCブロックを一纏めにし、その平均値を求めて暗号鍵の1ビットの情報の決定に使用してもよい。
【0035】
図5は、ディスクに記録されたECCブロックのデータから暗号鍵を取り出す方法の具体例を示した説明図である。
同図は、アドレス070000hから暗号鍵を埋め込んでいるディスクの場合を示したもので、暗号鍵を構成する1ビットの情報を、16個のECCブロックのエラーレートの平均値を判定することにより求めている。図5に示す例では、暗号鍵は、8×7=56ビットであるが、傷や汚れなどでエラーレートが悪化して論理値の”0”を論理値の”1”と誤認識することを防ぐために、チェック用の8ビット(1バイト)のデータが最後に付加されている。
【0036】
この例では、このチェック用のデータは、暗号鍵本体のデータ用のバイト値を合計した値の下位1バイト分となっている。図5では、これを「チェックサム」として示している。
実際のデータのチェック方法としては、読み出し命令の「リード」を行って、埋め込まれている暗号鍵を読み出しながら、そのデータのバイト値を次々に加算していき、その値の下位1バイトと最後に読み出されたチェックサムの値が一致するか否かを判定することで確認している。
【0037】
前記判定結果が不一致を示せば、暗号鍵が正しく読まれなかったことが分かるので、その暗号鍵は破棄する。暗号鍵は、特定の場所に連続して複数回埋め込まれているので、一致しなければその後に続く暗号鍵を読み込む。
或る任意の1つの暗号鍵について前記チェックサムの確認がOKの場合でも、念のため、その後に続く暗号鍵も読み込んでみて、前記判定結果が一致するかどうかをチェックすれば、さらに信頼性は高まる。
【0038】
なお、チェック用のデータは、図5の例に示すようなチェックサムではなく、CRCコード等、他のコードであってもよい。チェックサムでは、読み取り異常の有無しか分からないが、CRCコードなどであればエラーを訂正することもできるので、さらに信頼性が向上する。
【0039】
次に、ディスクに記録されたデータの再生方法を説明する。
情報記録再生装置1は、埋め込まれた暗号鍵を取り出してホスト装置10に渡すためのコマンド(以下、暗号鍵要求コマンド)を備えている。
一方、ディスク記録再生装置1に接続されているホスト装置10は、データを読み出すための通常のリードコマンドとは別に、この暗号鍵要求コマンドを情報記録再生装置に対して指令することで、指定されたアドレスからのECCブロックに埋め込まれた暗号鍵を読み出すことができる。
【0040】
以下、暗号鍵要求コマンドの動作について説明する。
暗号鍵要求コマンドは、指定されたアドレスから始まるECCブロックを再生し、そのエラーレートを基にして、前述の復号化方法により、ビット列に変換して暗号鍵を求める。
この時、データの最後に付加されているチェックサムを確認してOKであれば、得られた暗号鍵と、正常ステータスとをホスト装置10に返す。このチェックサムが異常であれば、前述のとおり、引き続き、次に続くECCブロックの暗号鍵の再生と復号化とを試みる。
【0041】
このチェックサムによる暗号鍵のチェックでは、例えば、10回読んでもチェックサムがOKとならなかった場合に、ホスト装置にエラーステータスを返すように構成することができる。
以上が、暗号鍵要求コマンドの動作である。
【0042】
以下、本発明の実施形態に係る情報記録再生装置及びそのホスト装置を含む情報記録再生システムの動作を総括して説明する。
【0043】
今、アプリケーションデータ(保護すべきプログラムやデジタルコンテンツを含む)が記録された1面の正規ディスク(ここでは、ディスク2)があり、このアプリケーションデータは、不正コピーを防止するために、前述のとおりスクランブルを掛けて暗号化されているものとする。このスクランブルを解除して解読(復号化)するには、対応する暗号鍵が必要であり、この暗号鍵は、前述のとおり、ディスク上の特定アドレスに前記の方法で埋め込まれている。
【0044】
ユーザーは、ホスト装置10に接続されているディスク装置1にディスク2を装填した後、ホスト装置10上において、前記アプリケーションデータの利用を開始するように操作し、情報記録再生装置1に読み取り指令を送出するが、これにより、情報記録再生装置1は、まず、ディスク2上に記録されている最も基本的な管理情報を読み込み、この管理情報を参照することにより、レーザーパワー指定等を最適に設定し、次に、このディスクのアプリケーション用の管理情報をホスト装置10に読み込む。
【0045】
このアプリケーション用の管理情報には、このディスク2がコピー禁止であるか否かの情報や、コピー禁止の場合、スクランブルを解除するための暗号鍵が埋め込まれているECCブロックのアドレス等が記録されている。
【0046】
前記の読み込みにより、ホスト装置10は、ディスク2がコピー禁止ディスクであると判断した場合、暗号鍵が埋め込まれているアドレスをパラメータとする暗号鍵要求コマンドを情報記録再生装置1に指令(送出)する。
このコマンドの応答として、情報記録再生装置1から暗号鍵を受け取ったホスト装置10は、これ以降に通常リードコマンドで読み出したスクランブルの掛かった前記アプリケーションデータを、この暗号鍵を用いて解読し、利用する。
【0047】
仮に、情報記録再生装置1を、他のホスト装置に接続することで、アプリケーションデータを吸い出し、複製したとしても、アプリケーションデータにはスクランブルが掛けられているために、不正使用者は、使用することができない。
このスクランブルを解除するには、前記の暗号鍵が必要となるが、万一、何らかの方法で暗号鍵の埋め込まれたアドレスが不正使用者に知れてしまったとしても、この不正使用者は、情報記録再生装置1からホスト装置に読み込まれたデータを、意味あるデータ(即ち、暗号鍵)として、従来のようなアルゴリズムを用いた解読方法では解読することができない。
【0048】
また、よしんばエラーレートが解読に関与する鍵であることが知られてしまったとしても、実際にこの暗号鍵を取り出すために必要なエラーレート測定処理等は、情報記録再生装置1内部のECC処理回路やシステムコントロールマイコンが連携して行っている閉じた処理であり、よって、不正使用者が、この暗号鍵を知ることは非常に困難である。
【0049】
次に不正コピーが行なわれた場合の動作を述べる。
本発明によるコピーが禁止された正規ディスク(ここでは、ディスク2)は、データにスクランブルをかけて暗号化しているため、暗号鍵がないとデータを復号化することができない。
【0050】
不正使用者が、本発明による正規のディスク上のアプリケーションを、そのまま他のディスク上に複製することを試みた場合、この複製はホスト装置10を介して、一応は可能ではあるが、暗号鍵までは解読できないので、この不正使用者は、スクランブルが掛かったデータを使うことはできない。
【0051】
また、不正使用者がホスト装置10と情報記録再生装置1とを介して得られるデータは、正規のディスク上のアプリケーションデータそのものではなく、記録再生装置1によってエラー訂正されているので、不正使用者は、そのエラーレートや、エラーデータの混入位置までは知ることができない。よって、正規ディスクと同じ位置に同じエラーデータを複製先のディスクに混入させることができない(即ち、不正使用者は、暗号鍵までは複製できない)。
【0052】
よって、複製後の非正規ディスクを情報記録再生装置1に装填し、ホスト装置10が、そのディスクに対して暗号鍵要求コマンドを送出しても、指定されたアドレスのECCブロックには暗号鍵がなく(若しくは正しい暗号鍵がなく)、この状態では、情報記録再生装置1はエラーステータスをホスト装置10に返すため、ホスト装置10は、この非正規ディスクに記録されているデータのスクランブルを解除することができないのである。
【0053】
なお、ここで言うアプリケーションの中には動画等の映像情報も含まれるものとする。この場合の情報記録再生システムの構成は、情報記録再生装置1とホスト装置10とが、1つの筐体内に収められて該筐体内部で接続されており、この筐体の外部に動画の再生・停止ボタンが付いている構成例が可能である。
【0054】
この情報記録再生システムの使用形態として、ユーザが、この再生・停止ボタンや、さらには外部のリモコン等を操作することによって、前記筐体内部のホスト装置10が、この筐体内部の情報記録再生装置1にデータの記録再生を指示し、これにより、動画の記録再生が開始される形態が可能である。即ち、この場合の情報記録再生システムは、ユーザーから見ると、一種の動画プレーヤや動画レコーダと考えられることになる。
【0055】
次に、本発明の実施の形態に係る情報記録再生媒体の作成手順(製造工程等)について説明する。
読み出し専用ディスクの場合、ディスク生産工場内において、通常は、原盤を作成してプレスしていくことによって大量生産が行われているが、本実施の形態に係る暗号鍵を含む情報記録再生媒体は、必ずしもディスク生産工場内の機械とは限るものではなく、本実施の形態に係る情報記録再生装置1とホスト装置10の機能を備えてさえすれば、例えば、一般ユーザ用の端末装置を使用して作成することも可能である。
【0056】
以下では、ディスク生産工場内の機械を使用して情報記録再生媒体を作成する場合について説明するが、本実施の形態に係る情報記録再生装置1とホスト装置10の機能を有する一般ユーザ用の端末を使用して情報記録再生媒体を作成する場合も、この作成手順と同じである。
【0057】
本実施の形態に係る情報記録再生媒体の暗号鍵は、原盤を作成する機械によって、指定されたアドレスからの本来のデータを操作しながら埋め込まれる。この埋め込み操作として、まず、暗号鍵により本来のデータにスクランブルを掛ける暗号化の処理がなされる。この暗号化の方法は、既成の如何なる方法でも使用可能である。
【0058】
次に、原盤を作成する機械は、本来のデータに対して前記暗号鍵を埋め込んだデータを作成して原盤に記録する。
この埋め込まれるデータは、原盤を作成する機械が、スクランブルを掛ける時に使用した前記暗号鍵の各ビットに対応させて、論理値”0”を示すECCブロックの通常のデータ(通常のエラーレートを有するデータ、即ち、誤りデータ混入手段が適用されていないデータ)、若しくは論理値”1”を示すECCブロックのデータ(エラーレートを意図的に悪化させたデータ、即ち、誤りデータ混入手段を適用して成るデータ)を充当することにより作成されたものである。但し、ここで、論理値”0”を示すECCブロックの通常のデータは、データ変復調部14で変復調された直後のデータとして、既に存在しているデータであるので、特別に作成する必要はない。同時に、この暗号鍵を埋め込んだ原盤上のアドレスは、アプリケーション管理情報内に記録する。
【0059】
一方、本実施の形態に係る情報記録再生装置1やホスト装置10の機能を有さない一般的な情報記録再生装置により、本実施の形態に係る情報記録再生媒体を作成する場合は、暗号鍵を埋め込むことができないので、このままでは本実施の形態に係る情報記録再生媒体を作成することができない。そこで、前記一般的な情報記録再生装置に暗号鍵を埋め込むことができる機能を付加した装置を接続して作成する。この装置は、本実施の形態に係る情報記録再生媒体を製造する正規の製造業者用の装置であり、一般のユーザーは入手できないようになっている。
【0060】
この正規の製造業者用の装置によって、従来のデータを記録する際に、この装置は、通常のECCブロックに対してはエラー訂正符号を付加した後に、そのままディスクに記録していくが、本実施の形態に係る情報記録再生媒体のように、特定アドレスからのECCブロックに対して暗号鍵を埋め込む必要がある場合は、データのエラー訂正符号を付加した直後のデータ変復調部14においてディスクに記録直前となって保持されている本来のデータに対して前述の操作を加えるものとする。即ち、暗号鍵の論理値”1”に相当するECCブロックのエラーレートを意図的に悪化させるように本来のデータを改変して記録する。この場合も、暗号鍵を埋め込んだアドレスは、アプリケーション管理情報内に記録されることになる。
【0061】
ちなみに、前述のとおり、エラー訂正符号を付加後の本来のデータに対して誤りデータを混入させる理由は、よしんばエラー訂正符号の付加前に誤りデータを混入したとしても、このような混入がなされた誤りデータに対して、データ変復調部14においてエラー訂正符号が付加されるので、それを再生したとしても誤りデータを混入した前記誤りデータが正しく再生されるだけであり、エラーレートには影響を及ぼすことができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る情報記録再生装置及びそのホスト装置を含む情報記録再生システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】本実施の形態に係る情報記録再生媒体の構造を示す模式図である。
【図3】暗号鍵が埋め込まれていない通常のディスクを再生した時のエラーレートの様子を示した説明図である。
【図4】暗号鍵が埋め込まれていない通常のディスクを再生した時のエラーレートの様子を示した説明図である。
【図5】ディスクに記録されたECCブロックのデータから暗号鍵を取り出す方法の具体例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 情報記録再生装置(本発明に係る情報記録再生装置)
2 情報記録再生媒体(本発明に係る情報記録再生媒体)
10 ホスト装置(本発明に係る情報記録再生装置のホスト装置)
12 記録再生ヘッド
13 サーボ制御部
14 データ変復調部
15 記録再生バッファ
16 ECC用メモリ
17 ECC回路
18 システムコントロールマイコン
19 ホストI/F制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録再生媒体に対して情報を記録再生する機能を備えた情報記録再生装置において、
前記情報記録再生媒体に記録される前記情報を、暗号鍵を使用して暗号化する手段と、
情報の正常な記録単位であるECCブロックに対して、誤ったデータを、エラー訂正不能に陥らない程度に混入することにより、前記ECCブロックのエラーレートを変化させる誤りデータ混入手段と、
前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値に対応させて、前記暗号化された情報を構成する1以上のECCブロックに対して前記誤りデータ混入手段を適用するか、若しくは適用しないかのいずれか1方の選択肢を選択することにより、前記暗号鍵を、前記暗号化された情報の内に埋め込む手段と、
前記前記暗号鍵が埋め込まれた前記暗号化された情報を、前記情報記録再生媒体に記録する手段と、
を備えたことを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項2】
前記誤りデータ混入手段が選択的に適用される前記1以上のECCブロックは、前記情報記録再生媒体上の所定の領域に記録されることを特徴とする請求項1記載の情報記録再生装置。
【請求項3】
前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値を、対応する前記1以上のECCブロックのエラーレートまたはその平均値により選択的に決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報記録再生装置。
【請求項4】
情報記録再生装置によって情報が記録再生される情報記録再生媒体であって、
前記記録再生される情報は、
前記情報を暗号鍵を使用して暗号化する手段と、
情報の正常な記録単位であるECCブロックに対して、誤ったデータを、エラー訂正不能に陥らない程度に混入することにより、前記ECCブロックのエラーレートを変化させる誤りデータ混入手段と、
前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値に対応させて、前記暗号化された情報を構成する1以上のECCブロックに対して前記誤りデータ混入手段を適用するか、若しくは適用しないかのいずれか1方の選択肢を選択することにより、前記暗号鍵を、前記暗号化された情報の内に埋め込む手段と、
を備えた前記情報記録再生装置によって記録されたものであることを特徴とする情報記録再生媒体。
【請求項5】
前記1以上のECCブロックに対して、前記誤りデータ混入手段が選択的に適用されて成るデータが、所定領域に記録されていることを特徴とする請求項4記載の情報記録再生媒体。
【請求項6】
前記暗号鍵を構成するビット列の各ビットの論理値は、対応する前記1以上のECCブロックのエラーレートまたはその平均値により選択的に決定されたものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の情報記録再生媒体。
【請求項7】
情報記録再生媒体に対して情報を記録再生する機能を備えた情報記録再生装置に接続されるホスト装置であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報記録再生装置に装填された請求項4記載の情報記録再生媒体に対して、コピーが禁止されているか否かを判断する手段と、
コピーが禁止されていると判断した場合に、情報記録再生媒体上の特定アドレスを指定して前記アドレスから埋め込まれた暗号鍵を受け取るための指令を前記情報記録再生装置に対して送出する手段と、
前記アドレスから記録されたデータを受け取るための指令を前記情報記録再生装置に対して送出する手段と、
前記受け取った暗号鍵を使用して前記データを復号化する手段と、
を備えたことを特徴とする情報記録再生装置のホスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−85807(P2006−85807A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268402(P2004−268402)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】