説明

情報記録再生装置

【課題】 光ディスクの両面にそれぞれ光ピックアップを回転自在に配置してデータの記録や再生を行うことができる情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】 光ディスクを保持して回転するスピンドルモータ7によって保持された光ディスクの第1面に対向配置され、第1のレーザ光を照射する第1の光ピックアップ13と、この第1の光ピックアップ13と光ディスクを挟んで略対称位置に配置され、光ディスクの第1面の反対側に設けられた第2面に第2のレーザ光を照射する第2の光ピックアップ15と、第1及び第2の光ピックアップを保持し、第1および第2の光ピックアップを光ディスク上のトラックの接線方向を軸として180度以上回転させる回転用モータ19を有する送り機構ベース25と、第1および第2の光ピックアップを光ディスクの半径方向に移送する移送手段23とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ピックアップによって光ディスクに対するデータの記録や再生を行う光ディスク装置に関し、特に光ディスクの両面にそれぞれ光ピックアップを回転自在に配置してデータの記録や再生を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように近年では、情報の高密度記録が可能な光ディスクとして、片面1層容量が4.7GBを有する光ディスクが実用化されている。例えば、再生専用の光ディスクであるDVD−ROM(Digital Versatile Disk−Read Only Memory)、DVD−RW(Rewritable)、DVD−RAM(Random Access Memory)等がある。これら光ディスクは情報記録再生装置に装填され、光ピックアップにより比較的短い波長のレーザ光によって照射され、情報が記録または情報の再生が可能とされる。
【0003】
ところで、最近では、高速の記録動作を行う要請から、光ディスクの両面に2つの光ピックアップを配置し、データの記録再生動作を光ディスクの両面に同時に行えるようにした情報記録再生装置が実用されている。特に、特開2001−43548号公報には、ディスク回転機構によって保持された光ディスクの両面に、第1、第2の光ピックアップを配置し、それぞれ移送機構によって光ディスクの半径方向に移送することにより、光ディスクの両面に同時または別々の動作でデータの記録や再生を行う光ディスク装置が記載されている。
【特許文献1】特開2001−043548号公報(段落番号0016)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外、赤、青など波長の違うレーザーに対応した多様な光ディスクの記録再生を一つの光ピックアップで対応しようとすると、光ピックアップは複数のレーザーを含む複雑な光学系設計で、過大な性能を要求されるものとなり、装置全体として製造コストが大きくなってしまう。 そこで複数の異なる仕様の光ピックアップを用いて、多様な光ディスクに対応しようとすると、装置全体が大きなものになってしまう問題がある。
【0005】
また、上記特許文献1に記載の技術によると、光ディスクの上下には、下面の記録再生を行う光ピックアップと上面の記録再生を行う光ピックアップが配置されており、それぞれ送りネジ軸に沿ってシーク動作が行われ、光ディスク全域へのデータの記録再生が行われる。
【0006】
しかしながら、このように光ピックアップを上下に配置しただけでは、光ディスクの両面に同時記録動作、同時再生動作を行うことは困難である。特に、DVD規格ではレーザ光の照射側から見て反時計回りに回転させることが決められており、上下の光ピックアップで同時に記録や再生を行うことは現実的に無理である。したがって、単純に光ピックアップを上下に配置したのであれば、光ピックアップの送り機構等の部品点数の増加や配置スペースの拡大に繋がり、結果的に小型化が図れないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題を解決するために成されたものであり、光ディスクの両面にそれぞれ光ピックアップを回転自在に配置してデータの記録や再生を行うことができる情報記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、この発明は、光ディスクを保持して回転する回転駆動手段と、この回転駆動手段によって保持された前記光ディスクの第1面に対向配置され、第1のレーザ光を照射する第1の光ピックアップと、この第1の光ピックアップと前記光ディスクを挟んで略対称位置に配置され、前記光ディスクの前記第1面の反対側に設けられた第2面に第2のレーザ光を照射する第2の光ピックアップと、前記第1及び第2の光ピックアップを保持し、前記第1および第2の光ピックアップを前記光ディスク上のトラックの接線方向を軸として180度以上回転させる回転手段を有する送り機構ベースと、
この送り機構ベースに保持された前記第1および第2の光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に移送する移送手段とを有し、前記第1及び第2の光ピックアップを交互に配置換えする際には、前記移送手段によって前記第1及び第2の光ピックアップは前記光ディスクの最外周よりさらに外側に移送されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、従来既にある赤外レーザー、あるいは赤色レーザーを用いた光ピックアップに加えて、青色レーザーを用いた光ピックアップを内蔵し、複数の光ピックアップを切り替えることができる機構とすることによって、多様な光ディスクメディアに対応する情報記録再生装置を提供することができる。
【0010】
また、共通のディスクローディング機構とすることによって、複数の光ピックアップを有する装置であっても装置全体を小型化することができる。
【0011】
また、上下に光ピックアップを配置させ、スピンドルモータを逆回転可能とすることによって、両面タイプの光ディスクであっても、ディスクを裏返すことなく記録再生ができる機構である。
【0012】
さらに、上下2個の光ピックアップを光ディスクのデータトラックの接線方向を軸として回転して切り替えを行う機構は、同じ機構を用いてデータの再生時、あるいは記録時に光ピックアップとディスクにとって最良の角度となるように調整する機能も持たせることができる。一般に樹脂材料でできている光ディスクは半径方向に反りを持っていることが多く、光ピックアップに対して傾きが変化することは光ピックアップの特性上好ましくない。従ってディスクの記録面を概略回転中心として相対角度を調整する機構は、光ピックアップの対物レンズ作動距離に影響しない調整になるので、理想的な調整方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報記録再生装置の全体を示す斜視図である。図2は、情報記録再生装置の一部分を示す斜視図である。図3は、光ディスクが装置内部に引き込まれた状態を示す情報記録再生装置の斜視図である。図4は、光ディスクが装置内部に引き込まれた状態を示す情報記録再生装置の断面図である。図5は、図4のA−A断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、情報記録再生装置は、ディスクカートリッジ3を載置するディスクトレイ5と、光ディスク1を回転駆動させるスピンドルモータ7と、光ディスク1をクランプするディスククランパー9と、ディスクトレイ5を保持するためのディスクトレイホルダー11と、比較的波長の短い青色レーザを使用した高密度記録ディスクを記録再生可能な第1の光ピックアップ13と、比較的波長の長い赤色レーザあるいは赤外レーザを使用したCDやDVD用、あるいはその両方の機能を持つ第2に光ピックアップ15と、第1または第2の光ピックアップ13、15を保持する光ピックアップホルダー17と、第1の光ピックアップ13と第2の光ピックアップ15を所定の回転軸を中心に180度回転させる光ピックアップ回転用モータ19と、光ピックアップ回転用モータ19と接続され、第1及び第2の光ピックアップ13、15を光ディスク1の内外周方向に案内させるための光ピックアップ送りガイドシャフト21と、実際に第1及び第2の光ピックアップ13、15を光ディスクの内外周に移動させるための光ピックアップ送りモータ23と、その回転に伴って回転するリードスクリュー22と、光ピックアップ回転用モータ19と第1及び第2の光ピックアップ13、15と接続され、さらには光ピックアップ送りガイドシャフト21と摺動自在に接続される送り機構ベース25と、筐体としてなるフレーム27とから構成されている。
【0016】
図1および図2は、ディスクカートリッジ3に内蔵された光ディスク1をスピンドルモータ7のターンテーブル上にローディングする機構と、第1および第2の上下2個の光ピックアップ13、15を上記光ディスク1の半径方向に移動させる機構と、第1および第2の光ピックアップ13、15を光ディスク1の記録トラックの接線を軸として180度以上回転させることができる機構によって構成される本発明の実施例を示している。図1および図2は、光ディスク1がローディングされる前の状態であり、ディスクカートリッジ3はディスクトレイ5に乗せられている。ディスクトレイ5は図示されていないトレイの下に配置された駆動機構によって、左右のディスクトレイホルダ11、12に沿って装置内部に引き込まれると同時に、ディスクトレイホルダ12とディスクトレイ5に配置された図示されない機構でディスクカートリッジ3のシャッターが開かれる。ディスクカートリッジ3内部の光ディスク1は上下両面で露出されるが、この時、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ7と光ディスク1をスピンドルモータ7のターンテーブルとの間に挟み込むディスククランパー9は上下に退避している。ディスクカートリッジ3が所定の位置まで引き込まれると、上下に退避していたスピンドルモータ7とディスククランパー9は図示されていない機構によって光ディスクを挟み込み、所定の面内で回転できるように拘束される。
【0017】
一方、図3乃至図5に示すように、光ディスク1上のデータを読み出すことのできる第1の光ピックアップ13と第2の光ピックアップ15は光ピックアップホルダー17に取り付けられており、光ピックアップホルダー17はディスクカートリッジ3とディスクトレイホルダー11の全体を差し込むことができるような構造になっている。そして、その内側には光ディスク1を挟んで互いに対向するように第1の光ピックアップ13と第2の光ピックアップ15が配置されている。
【0018】
この光ピックアップホルダー17は、ローディングされた光ディスク1の露出部分に第1および第2の光ピックアップ13、15が光ディスク上下両面のデータを読み出すことのできるように、その位置が精度良く取り付けられている。更に、光ピックアップホルダー17は光ピックアップ送りモータ23によってディスク面内半径方向に移動することができる機構である。
【0019】
送り機構ベース25が移動できる範囲は、ディスクカートリッジ3とディスクトレイホルダー11の全体が差し込まれた状態で光ピックアップが光ディスク最内周位置に達する位置から、ディスクカートリッジ3とディスクトレイホルダー11の全体が抜け出た状態までである(図3の矢印Cの範囲)。そして、ディスクカートリッジ3とディスクトレイホルダー11の全体が抜け出た状態では、光ピックアップホルダー11は図に示す回転軸を中心に180度回転することができる。従って、第1の光ピックアップ13と第2の光ピックアップ15はディスクトレイ5が邪魔にならない位置で上下で入れ替えることができるようになる。この回転軸は送り機構ベース25と共に移動するが、ディスクモータ7に近い、光ディスク1面内の位置にある場合は、概略光ディスクの記録面内で、且つ、第1および第2の光ピックアップ13、15のレーザー照射位置で記録トラックの接線とほぼ一致する関係にある。
【0020】
ここで第1の光ピックアップ13は、比較的波長の短い青色レーザーを使用した高密度記録ディスクを記録再生できる光ピックアップであり、第2の光ピックアップ15は赤色レーザーあるいは赤外レーザーを使用したCDあるいはDVD用、あるいはその両方機能を持つ光ピックアップである。
【0021】
また、第1および第2の光ピックアップ13、15あるいは光ピックアップホルダー17には、光ディスク1の傾きを検出する図示されていない傾きセンサーが取り付けられており、第1および第2の光ピックアップ13、15が光ディスク1へデータの記録あるいは読み出しを行っている間、光ピックアップホルダー17を回転させる機構と傾きセンサーの信号によって、第1および第2の光ピックアップ13、15と光ディスク1の相対角度が所定の角度となるように制御される機能を持っている。図4に示すように、第1および第2の光ピックアップ13、15は矢印方向に微動して、光ディスク1との相対角度を常に一定となるように制御される。
【0022】
両面にデータが記録されているタイプの光ディスクの場合で、スピンドルモータ7のターンテーブル側とは反対側のデータを再生する場合は、スピンドルモータ7が逆回転することができるのもとする。すなわち、DVD規格ではレーザ光の照射側からみて反時計回りに回転させることが規格化されているためである。このようにスピンドルモータ7が逆回転可能であれば、ユーザは光ディスクをわざわざ引っくり返して差し込むという動作をする必要がなくなる。
【0023】
また、第1および第2の光ピックアップ13、15の送り機構は、リードスクリュー22による送り機構であるが、平ギヤによる送り、あるいはベルト駆動による送りなどでもかまわない。また、取り扱うディスクもディスクカートリッジ3に内臓されていない裸ディスクであってもよく、またトレイ方式のディスクローディング機構である必要もない。
【0024】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報記録再生装置の全体を示す斜視図。
【図2】情報記録再生装置の一部分を示す斜視図。
【図3】光ディスクが装置内部に引き込まれた状態を示す情報記録再生装置の斜視図。
【図4】光ディスクが装置内部に引き込まれた状態を示す情報記録再生装置の断面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 光ディスク
3 ディスクカートリッジ
5 ディスクトレイ
7 スピンドルモータ
9 ディスククランパー
11 ディスクトレイホルダー
13 第1の光ピックアップ
15 第2の光ピックアップ
17 光ピックアップホルダー
19 光ピックアップ回転用モータ
21 光ピックアップ送りガイドシャフト
22 リードスクリュー
23 光ピックアップ送りモータ
25 送り機構ベース
27 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを保持して回転する回転駆動手段と、
この回転駆動手段によって保持された前記光ディスクの第1面に対向配置され、第1のレーザ光を照射する第1の光ピックアップと、
この第1の光ピックアップと前記光ディスクを挟んで略対称位置に配置され、前記光ディスクの前記第1面の反対側に設けられた第2面に第2のレーザ光を照射する第2の光ピックアップと、
前記第1及び第2の光ピックアップを保持し、前記第1および第2の光ピックアップを前記光ディスク上のトラックの接線方向を軸として180度以上回転させる回転手段を有する送り機構ベースと、
この送り機構ベースに保持された前記第1および第2の光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に移送する移送手段とを有し、
前記第1及び第2の光ピックアップを交互に配置換えする際には、前記移送手段によって前記第1及び第2の光ピックアップは前記光ディスクの最外周よりさらに外側に移送されることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項2】
前記第1の光ピックアップは、比較的波長の短い青色レーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載の情報記録再生装置。
【請求項3】
前記第2の光ピックアップは、比較的波長の長い赤色レーザ光あるいは赤外レーザを照射することを特徴とする請求項1記載の情報記録再生装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の光ピックアップは記録あるいは再生時に前記光ディスクの反りを補正するように傾きセンサーを有することを特徴とする請求項1記載の情報記録再生装置。
【請求項5】
前記回転駆動手段は、逆回転駆動も可能とすることを特徴とする請求項1記載の情報記録再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−40470(P2006−40470A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221629(P2004−221629)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】