説明

情報記録媒体、及び情報記録媒体の真偽判定装置

【課題】目視による認識を不能とし、更に、秘匿情報を記録した領域を判別することを困難とすることにより、偽造を困難とした情報記録媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の情報記録媒体1は、情報支持層11と、情報支持層11上に積層された情報保護層とからなる。そして、情報保護層の表面に秘匿情報を保持している回折格子を有する微小な複数の回折格子要素13が配置され、光源3からの照明光Lが回折格子要素13で回折してなる回折光Kが、所定領域4に入射するように格子の間隔と角度が設定されている。また、少なくとも2個の回折格子要素13の組み合わせからなる回折格子要素群14からの回折光Kが所定領域4に入射した場合、所定領域4における再生情報和が、秘匿情報として現出するようにしている。更に、秘匿情報を保持する回折格子要素13の配置に対応して、情報支持層11に所定の色及び所定の柄を配している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、秘匿情報を保持する回折格子要素の配置に対応して所定の色及び所定の柄を配し、回折格子要素に対して照明光を照射することによって、保持されている秘匿情報の検知を確実に行えるようにした情報記録媒体、及び情報記録媒体の真偽判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回折格子を有する情報記録媒体の真贋を検証機を用いて判定する方法として、特定の格子方向及び空間周波数を有する回折格子により形成された微細な回折格子パターンの組み合わせにより情報をコード化記録し、パターン情報の部分へレーザー光等を照射して回折光を得、それをセンサーで読み出す方法が知られている。
【0003】
また、回折格子等の回折構造の有無によって構成されたバーコードを、入射光に対して所定の位置に設置された受光器に回折光を発生するように記録させ、レーザー光等で走査して回折像を受光し、出力波形を取り込んでコードを認識し、真偽を判定する方法も知られている。
【特許文献1】特開2003−215319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのようにして得られる回折格子を有する情報記録媒体は、特定の領域に情報を記録していることから、情報を記録している領域を、拡大鏡などの観察装置で容易に発見することができ、レーザー光を照射する角度さえ解ってしまえば、その情報を基に模造品が作成される恐れがある。
【0005】
これを解決するために、例えば、特許文献1では、絵柄や文字によって識別すべき情報をカムフラージュする方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案された方法で真贋の判定を行う場合、レーザー光と回折格子パターンが転写されている基材部分の背景色や柄との組み合わせによっては、情報を明確に読み取ることが困難となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その第一の目的は、秘匿情報を微小な回折格子要素で構成することで、目視による認識を不能とし、更に、色や柄を配することによって、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することを困難とし、偽造を困難にする情報記録媒体を提供することにある。
【0008】
また、その第二の目的は、この秘匿情報を保持する回折格子要素の配置に対応して所定の色及び所定の柄を配することによって、光源から照明光を照射された場合、秘匿情報が確実に読み取られ、秘匿情報の検知性を高めた情報記憶媒体を提供することにある。
【0009】
更に、その第三の目的は、このような情報記録媒体から秘匿情報を読み取り、秘匿情報の真偽を容易に判定することができる真偽判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0011】
すなわち、請求項1の発明は、情報記録媒体に関する。この情報記録媒体は、第一の層と、第一の層上に積層され、光反射層を含む透明の第二の層とから成なる。そして、第二の層の表面に秘匿情報の全部又は一部を保持している回折格子を有する微小な複数の回折格子要素が配置されており、光源からの照明光が回折格子要素で回折してなる回折光の全部又は一部が、空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素の組み合わせからなる回折格子要素群からの回折光の全部又は一部が所定領域に入射した場合、所定領域における再生情報和が、所定の1つ又は複数の秘匿情報として現出するようにしている。更に、秘匿情報を保持する回折格子要素の配置に対応して、第一の層に所定の色及び所定の柄を配している。
【0012】
従って、請求項1の発明の情報記録媒体においては、以上のように、秘匿情報を微小な回折格子要素で構成することで、目視による認識を不能とし、更に、色や柄を配することによって所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難とし、偽造を困難にすることが可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明の情報記録媒体において、秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に、黒色を配している。
【0014】
従って、請求項2の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に黒色を配して輝度値レベルを低下させることで、秘匿情報を保持する回折格子要素の輝度レベルが相対的に上がり、秘匿情報の検知性を高めることが可能となる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の発明の情報記録媒体において、秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する第一の層上に、黒色を配している。
【0016】
従って、請求項3の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、秘匿情報を保持する回折格子要素部分に黒色を配して背景のノイズ成分をおさえ、回折光とのコントラストを向上させることができ、秘匿情報の検知性を高めることが可能となる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項3の発明の情報記録媒体において、秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に、白色を配している。
【0018】
従って、請求項4の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に白色を配してノイズ成分を上げ、回折光とのコントラストを低下させることで、秘匿情報を保持する回折格子要素からの回折光を際立たせることができ、秘匿情報の検知性上を高めることが可能となる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1又は請求項2の発明の情報記録媒体において、秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する第一の層上に、白色を配している。
【0020】
従って、請求項5の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、秘匿情報を保持する回折格子要素部分に白色を配することで、回折格子要素の輝度値レベルを向上させることができ、秘匿情報の検知性を高めることが可能となる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1又は請求項3又は請求項5の発明の情報記録媒体において、秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に、秘匿情報の読み取りの際に照射される光の波長に相当する色から成る柄を配している。
【0022】
従って、請求項6の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に、秘匿情報を読み取る装置(例えば、真偽判定装置)で用いている照明光の波長に相当する色を配する。そして、この照明光が照射されると、周囲の回折格子要素から回折光のコントラストを低下させることができ、秘匿情報の検知性を高めることが可能となる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1又は請求項2又は請求項4又は請求項6の発明の情報記録媒体において、秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する第一の層上に、秘匿情報の読み取りの際に照射される光の波長に相当する色の補色から成る柄を配している。
【0024】
従って、請求項7の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、照明光の照明によって回折光とのコントラストを向上させることができ、秘匿情報の検知性を高めることが可能となる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のうち何れか1項の発明の情報記録媒体に記録された秘匿情報の真偽を判定するための装置であって、予め決められた光量及び波長分布を有する照明光を照射する光源と、光源から回折格子要素へ照射された照明光が回折格子要素で回折してなる回折光の組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る読取手段と、読取手段によって読み取られた情報に基づいて、秘匿情報の真偽判定を行なう判定手段とを備えている。
【0026】
従って、請求項8の発明の真偽判定装置においては、以上のような手段を講じることにより、本発明の情報記録媒体に、予め決められた光量及び波長分布を有する光を照射し、その回折光に基づいて、秘匿情報を確実に読み取り、情報記録装置の真偽を容易に判定することが可能となる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項1乃至7のうち何れか1項の発明の情報記録媒体に記録された秘匿情報の真偽を判定するための装置であって、白色光を照射する光源と、光源から回折格子要素へ照射された照明光が回折格子要素で回折してなる回折光の組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る読取手段と、読取手段によって読み取られた情報に基づいて、秘匿情報の真偽判定を行なう判定手段とを備えている。
【0028】
従って、請求項9の発明の真偽判定装置においては、以上のような手段を講じることにより、本発明の情報記録媒体に、白色光源から発せられる光を照射し、その回折光に基づいて、秘匿情報を確実に読み取り、情報記録装置の真偽を容易に判定することが可能となる。
【0029】
請求項10の発明は、請求項1又は請求項6又は請求項7の発明の情報記録媒体に記録された秘匿情報の真偽を判定するための装置であって、秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する第一の層上及びその周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に配されている所定の色からなる柄の、補色あるいは同系色の照明光を照射する光源と、光源から回折格子要素へ照射された照明光が回折格子要素で回折してなる回折光の組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る読取手段と、読取手段によって読み取られた情報に基づいて、秘匿情報の真偽判定を行なう判定手段とを備えている。
【0030】
従って、請求項10の発明の真偽判定装置の場合、例えば、情報記録媒体の秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する第一の層上に緑色が配されている場合、回折格子要素への照明光を緑色(同系色)とする。これは、照明光と同じ成分の色が配されている領域ではコントラストが著しく低下するため、読み取りが困難となり、回折光を検知できないからである。これとは逆に、秘匿情報を持つ回折格子要素にマゼンタ色が用いられている場合、この回折格子要素への照明光に緑色(補色)を用いる。これによって、回折光とのコントラストが向上し、確実に読み取ることが可能となる。
【0031】
請求項11の発明は、請求項8乃至10のうち何れか1項の発明の真偽判定装置において、読取手段に波長選択機能を付加している。
【0032】
従って、請求項11の発明の真偽判定装置においては、以上のような手段を講じることにより、例えば白色光源を用いた場合に、秘匿情報の検知に緑色の照明光が必要となった場合であっても、例えばフィルタのような波長選択機能を用いることによって、緑色の波長成分のみを抽出することが可能となる。
【0033】
請求項12の発明は、光源を複数個有する、請求項8乃至11のうち何れか1項の発明の真偽判定装置である。
【0034】
従って、請求項12の発明の真偽判定装置においては、以上のような手段を講じることにより、装置構成の柔軟性を高めることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、秘匿情報を微小な回折格子要素で構成することで、目視による認識を不能とし、更に、色や柄を配することによって、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することを困難とし、偽造を困難にする情報記録媒体を実現することができる。
【0036】
また、この秘匿情報を保持する回折格子要素の配置に対応して所定の色及び所定の柄を配することによって、光源から照明光を照射された場合、秘匿情報が確実に読み取られ、秘匿情報の検知性を高めた情報記憶媒体を実現することができる。
【0037】
更に、このような情報記録媒体から秘匿情報を読み取り、秘匿情報の真偽を容易に判定することができる真偽判定装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0039】
本発明の実施の形態に係る情報記録媒体1は、回折格子を有しており、この回折格子を利用して秘匿情報を保持するものであって、図1の断面図に示すように、基板上に印刷層等が積層されてなる情報支持層11と、情報支持層11の上面に積層された情報保持層12とから構成される。なお、情報支持層11は、基板上に印刷層等が積層されてなるものに限られるものではなく、印刷層等が積層されておらず、着色された基板自体を用いても良い。また、直接印刷された基板自体を用いても良い。このような情報記録媒体1は、保持する秘匿情報によって情報支持層11の真正を証明するものである。情報支持層11が紙幣や有価証券、あるいは各種証明書類等である場合には、秘匿情報の存在によって情報支持層11そのものの真正を証明でき、そうでない場合には偽造と判別する。また、情報支持層11が包装材料である場合には、この情報支持層(包装材料)11で包装された内容物の真偽を判別することができる。
【0040】
この秘匿情報は、肉眼で読み取ることができず、特定の読取装置を利用して読み取ることができるもので、次のような構成で情報記録媒体1に保持されている。
【0041】
すなわち、情報保持層12は、光反射層124を具備している。図1に示す情報記録媒体1においては、この光反射層124を情報支持層11に接着する接着層125を具備しているが、このように情報支持層11と光反射層124との間に他の層が介在しても構わない。ここで示す情報支持層11とは、基材自体に色や柄(パターン)がついたもの、あるいは基材の上に色や柄のついた印刷層等が積層されているもの等である。なお、情報保護層12は、光反射層124の上面に保護層123を設け、この保護層123によって、光反射層124を傷や汚れから保護している。
【0042】
また、図2に示すように、回折格子を有する情報記録媒体1は、基板表面に複数の微小な回折格子要素13を配置しており、これら回折格子要素13は秘匿情報の全部又は一部を保持しており、所定の光源から照明光が照射されたとき、照明光が回折格子要素13で散乱してなる散乱光、及び回折してなる回折光が空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度を設定している。また、情報記録媒体1は、少なくとも2個の回折格子要素13の組み合わせからなる回折格子要素群を含んでいる。この場合、複数個の回折格子要素13が存在しない領域に関しては、ダミーとなるパターンを混在させることができる。
【0043】
より具体的には、この回折格子を有する情報記録媒体1には、基板の表面に複数の微小な回折格子要素13を配置しており、これら複数の回折格子要素で1つの回折格子要素群を構成している。これら複数の回折格子要素13のうち少なくとも一部の回折格子要素、例えば回折格子要素13a,13b,13c,13d,13α,13β,13γ,13εは、秘匿情報の全部または一部を保持している。これら回折格子要素13a,13b,13c,13d,13α,13β,13γ,13εは、所定の面積をもつ光源から照明光が照射されると、この照明光が回折してなる回折光が空間上の所定領域に入射するように、格子間隔及び格子角度をそれぞれ設定している。そして、情報記録媒体1は、これらの少なくとも2個の回折格子要素13の組み合わせになる回折格子要素群を含むと共に、回折格子要素群に対応する空間上の所定領域における再生情報和により所定の秘匿情報がパターン化されるようにしている。
【0044】
また、他の回折格子要素13x,13yはダミーであって、秘匿情報を保持していない。そして、このダミーの回折格子要素13x,13yを混在させることによって、秘匿情報を保持する回折格子要素13a,13b,13c,13d,13α,13β,13γ,13εの存否及びその位置を隠すことが可能となる。
【0045】
図3は、情報支持層11に所定の色、および所定の柄を配した状態の一例を示している。このとき、秘匿情報を保持する回折格子要素13a,13b,13c,13dの背面の情報支持層11に所定の色を配しているか、もしくは、ダミーの回折格子要素13x,13yの背面の情報支持層11に所定の色を配している。あるいは、その両方であっても良い。ただし、秘匿情報を保持する回折格子要素13a,13b,13c,13dとそれ以外の領域とで同じ配色になることはない。そして、この回折格子要素13a,13b,13c,13dの配置に対応した配色によってできるパターンが、情報支持層11の所定の領域に配されることで、秘匿情報を保持する領域をカムフラージュし、その存否及び位置の発見を一層困難とすることができる。
【0046】
上述したように、本発明の実施の形態に係る情報記録媒体1においては、秘匿情報を微小な回折格子要素13で構成することで、目視による認識を不能とし、更に、色や柄を配することによって所定の秘匿情報を記録した領域を判別することを困難とし、偽造を困難にする情報記録媒体を実現することが可能となる。
【0047】
その一方で、本発明の実施の形態に係る情報記録媒体1は、図4にその構成概念を示すような本発明の実施の形態に係る真偽判定装置を用いて秘匿情報が検知された場合における検知性の向上が図られており、該装置によって、この秘匿情報の真偽が容易に判定される。
【0048】
すなわち、本発明の実施の形態に係る情報記録媒体は、図5に示すように、回折格子要素群14の回折格子要素13全てが秘匿情報の全部または一部を保持しており、情報支持層11に配する所定の色柄によって任意の秘匿情報のみを検知できるようにしている。
【0049】
より具体的には、1つの回折格子要素群14の中に、回折格子要素13a,13b,13c、13dによって再生される秘匿情報に加え、回折格子要素13α,13β,13γ,13εによって再生される秘匿情報など複数個の情報を含ませておき、その中から再生したい秘匿情報のみを選択できるようにしている。このとき、情報支持層11の配色は、検知したい秘匿情報を保持している回折格子要素(例えば、回折格子要素13a,13b,13c,13d)が配置されている部分のみに成されているか、それ以外の回折格子要素(例えば、回折格子要素13α,13β,13γ,13ε)が配置されている部分に成されているか、あるいは双方それぞれに適した配色が成される。これによって、読み取りたい秘匿情報のみを検知できるようにしている。
【0050】
例えば、秘匿情報を保持する回折格子要素13の周囲の回折格子要素13に対応する情報支持層11上に、黒色を配すれば、この場所における輝度値レベルが低下するので、秘匿情報を保持する回折格子要素13の輝度レベルが相対的に上がり、秘匿情報の検知性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、秘匿情報を保持する回折格子要素13に対応する情報支持層11上に、黒色を配すれば、背景のノイズ成分が抑えられるので、回折光とのコントラストが向上し、秘匿情報の検知性の向上を図ることが可能となる。
【0052】
また、秘匿情報を保持する回折格子要素13の周囲の回折格子要素13に対応する情報支持層11上に、白色を配すれば、この場所におけるノイズ成分が上がるので、回折光とのコントラストが低下し、秘匿情報を保持する回折格子要素13からの回折光を際立たせることができ、秘匿情報の検知性の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また、秘匿情報を保持する回折格子要素13に対応する情報支持層11上に、白色を配すれば、この場所における輝度値レベルが向上するので、秘匿情報の検知性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
また、秘匿情報を保持する回折格子要素13の周囲の回折格子要素13に対応する情報支持層11上に、秘匿情報を読み取る装置(例えば、真偽判定装置)で用いる光の波長に相当する色から成る柄を配すれば、照明光を照射した場合、周囲の回折格子要素13から回折光のコントラストが低下するので、秘匿情報の検知性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、秘匿情報を保持する回折格子要素13に対応する情報支持層11上に、秘匿情報を読み取る装置(例えば、真偽判定装置)で用いる光の波長に相当する色の補色から成る柄を配すれば、照明光を照射した場合、回折光とのコントラストが向上するので、秘匿情報の検知性の向上を図ることが可能となる。
【0056】
これらの方法を用いると、情報支持層11の色柄のみを変えることで、読み取りたい秘匿情報を変更することが可能となり、例えば月毎に検知する秘匿情報を変更するときなどに有効である。
【0057】
次に、図4に示す本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の真偽判定装置について説明する。
【0058】
すなわち、本実施の形態に係る真偽判定装置は、照明光Lを照射する光源3と、この照明光Lが回折格子要素13で回折してなる回折光Kの組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る例えばカメラ5のような読取装置と、読取装置による読み取り結果に基づいて、該秘匿情報の真偽を判定する判定装置6とを少なくとも備えている。
【0059】
光源3からの予め決められた光量及び波長分布を有する照明光Lは、回折格子要素群14中の各回折格子要素13a,13b,13c,13dで設計された回折角度で回折して回折光Kとなり、空間上の所定領域4に入射する。回折光Kの検知は、例えば予め予定された位置にセンサー(図示せず)を配置しておくことによって可能である。また、予め予定された位置に投影スクリーン7を配置して回折光Kをこのスクリーン7に射出させ、こうして得られた光点の有無をカメラ5などで撮影することも可能である。
【0060】
平面状の光源3の光源色は、回折格子要素13a,13b,13c,13dに配されている色と対応している必要がある。すなわち、読み取りたい秘匿情報を保持している回折格子要素13a,13b,13c,13dの背面の情報支持層11に黒及び白以外の色が配されている場合は、光源3からの照明光Lによって回折光Kとのコントラストを上げる必要があるため、情報支持層11の配色とは補色関係にある照明光Lとする必要がある。また、読み取りに必要のない回折格子要素13の背面の情報支持層11に黒及び白以外の配色が成されている場合には、必要のない回折光Kのコントラストを低下させて検知できなくする必要があるため、情報支持層11の配色とは同系色の照明光Lとする必要がある。
【0061】
この一例として、光源色が赤(Red)である場合を挙げる。光源色が赤である場合、読み取りたい秘匿情報を保持している回折格子要素13a,13b,13c,13dの背面の情報支持層11に色を配するなら、赤(Red)の補色である水色(Cyan)が有効である。というのは、光源色と補色関係の配色を行うことで、読み取りたい回折格子要素13a,13b,13c,13dのノイズ成分が抑えられ、照明光Lによって射出する回折光Kとのコントラストが高くなるためである。逆に、読み取りに必要のない回折格子要素13からの回折光を排除したい場合は、その背面の情報支持層11に赤色を配することで、読み取りに必要のない回折格子要素13のノイズを上げて回折光Kとのコントラストを低くすることができ、結果として回折光Kの検知を不可能にすることが可能である。
【0062】
なお、読取装置が波長選択機能を備え、特定の波長を持つ回折光Kのみを撮像できるのであれば、光源3は、上述したように予め決められた波長分布を有する照明光Lを発することができるものに限らず、白色光を発するものであっても良い。あるいは、読取装置が波長選択機能を備えていなくても、光源3からの照明光Lに波長選択性フィルタをかけ、必要な波長成分を持つ光のみを照射できるようにしてもよい。
【0063】
図4では、秘匿情報を保持する回折格子要素13a,13b,13c,13dを含む回折格子要素群14を利用し、単一の平面状の光源3からの照明光Lが回折してなる4種の回折光Kを投影スクリーン7に集光し、この光点をカメラ5などで撮影する方法を示している。判定装置6は、カメラ5によって撮影された画像に基づいて、所定の演算を行い、この演算結果から、秘匿情報の真偽判定を行なう。
【0064】
一方、図6に示すように、回折格子要素群14に対し異なる方向に配置された平面状の複数の光源31,32から照明光La,Lbを照射することによって秘匿情報を再現することもできる。すなわち、回折格子要素13a,13bに対し光源31から照明光Laを照射し、これによって得られる回折光Kaから秘匿情報の一部を再現し、回折格子要素13c,13dに対しては、光源31とは異なる方向に配置された光源32から、紫外線による照明光Lbを照射し、それにより得られる回折光Kbから秘匿情報の一部を再現する。切替装置31a,32aは、それぞれ光源31,32の切り替えを行うための装置である。回折格子要素13a,13bからの回折光Ka、及び回折格子要素13c,13dからの回折光Kbは、いずれも、スクリーン7に投影される。そして、本発明の実施の形態に係る真偽判定装置は、このスクリーン7に投影されたそれぞれの領域の組み合わせから所定の秘匿情報のデータを読み取る読取機構を、レンズ8、撮像素子9等により構成している。
【0065】
レンズ8は、スクリーン7に投影された画像を秘匿情報として撮像素子9上に記録する。そして、判定装置6は、撮像素子9上に記録された画像データに対して所定の演算を行い、この演算結果から秘匿情報の真偽判定を行なう。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る情報記録媒体は、偽造することが困難であるのに加えて、秘匿情報の検知性の向上が図られる構成となっているので、本発明の実施の形態に係る真偽判定装置を用いることによって、秘匿情報を確実に読み取り、その真偽を容易に判定することが可能となる。
【0067】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の構成例を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の構成例を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の情報支持層に、所定の色及び所定の柄を配した状態の一例を示す概念図。
【図4】本発明の実施の形態に係る真偽判定装置の構成例を示す概念図。
【図5】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の情報支持層に、所定の色及び所定の柄を配した状態の別の例を示す概念図。
【図6】本発明の実施の形態に係る真偽判定装置の別の構成例を示す概念図。
【符号の説明】
【0069】
L…照明光、K…回折光、1…情報記録媒体、3…光源、4…所定領域、5…カメラ、6…判定装置、7…スクリーン、8…レンズ、9…撮像素子、11…情報支持層、12…情報保持層、13…回折格子要素、14…回折格子要素群、31,32…光源、31a,32a…切替装置、123…保護層、124…光反射層、125…接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の層と、前記第一の層上に積層され、光反射層を含む透明の第二の層とから成り、前記第二の層の表面に秘匿情報の全部又は一部を保持している回折格子を有する微小な複数の回折格子要素が配置されており、光源からの照明光が前記回折格子要素で回折してなる回折光の全部又は一部が、空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素の組み合わせからなる回折格子要素群からの前記回折光の全部又は一部が前記所定領域に入射した場合、前記所定領域における再生情報和が、所定の1つ又は複数の秘匿情報として現出するようにした情報記録媒体であって、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素の配置に対応して、前記第一の層に所定の色及び所定の柄を配した情報記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の情報記録媒体において、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する前記第一の層上に、黒色を配した情報記録媒体。
【請求項3】
請求項1に記載の情報記録媒体において、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する前記第一の層上に、黒色を配した情報記録媒体。
【請求項4】
請求項1又は請求項3に記載の情報記録媒体において、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する前記第一の層上に、白色を配した情報記録媒体。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の情報記録媒体において、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する前記第一の層上に、白色を配した情報記録媒体。
【請求項6】
請求項1又は請求項3又は請求項5に記載の情報記録媒体において、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素の周囲の回折格子要素に対応する前記第一の層上に、秘匿情報の読み取りの際に照射される光の波長に相当する色から成る柄を配した情報記録媒体。
【請求項7】
請求項1又は請求項2又は請求項4又は請求項6に記載の情報記録媒体において、
前記秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する前記第一の層上に、秘匿情報の読み取りの際に照射される光の波長に相当する色の補色から成る柄を配した情報記録媒体。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の情報記録媒体に記録された秘匿情報の真偽を判定するための装置であって、
予め決められた光量及び波長分布を有する照明光を照射する光源と、
前記光源から前記回折格子要素へ照射された前記照明光が前記回折格子要素で回折してなる回折光の組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた情報に基づいて、前記秘匿情報の真偽判定を行なう判定手段と
を備えた情報記録媒体の真偽判定装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の情報記録媒体に記録された秘匿情報の真偽を判定するための装置であって、
白色光を照射する光源と、
前記光源から回折格子要素へ照射された照明光が前記回折格子要素で回折してなる回折光の組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた情報に基づいて、前記秘匿情報の真偽判定を行なう判定手段と
を備えた情報記録媒体の真偽判定装置。
【請求項10】
請求項1又は請求項6又は請求項7に記載の情報記録媒体に記録された秘匿情報の真偽を判定するための装置であって、
秘匿情報を保持する回折格子要素に対応する第一の層上及びその周囲の回折格子要素に対応する前記第一の層上に配されている所定の色からなる柄の、補色あるいは同系色の照明光を照射する光源と、
前記光源から前記回折格子要素へ照射された前記照明光が前記回折格子要素で回折してなる回折光の組み合わせによって現出される秘匿情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた情報に基づいて、前記秘匿情報の真偽判定を行なう判定手段と
を備えた情報記録媒体の真偽判定装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のうち何れか1項に記載の真偽判定装置において、
前記読取手段に波長選択機能を付加した真偽判定装置。
【請求項12】
前記光源を複数個有する、請求項8乃至11のうち何れか1項に記載の真偽判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−299042(P2007−299042A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123966(P2006−123966)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】