説明

情報記録媒体

【課題】ユーザーが繰り返し、情報記録層に記録された情報に影響を与えることなく、情報記録媒体の表面に、内部に記録された内容等を筆記したり、該筆記跡の消去を容易且つ確実に行なうことが可能であり、さらにこれらの操作を繰り返し行なうことが可能な情報記録媒体を提供する。
【解決手段】光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層102と、前記情報記録層の前記光が入射する面とは反対の側に形成された保護層104と、前記保護層上に、前記保護層が一部露出するようにパターン状に形成されたレーベル層106とを有し、前記保護層が露出した領域が、インキ消去液により消去可能な油性インキによる筆記のために用いられる筆記用領域であることを特徴とする情報記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報記録媒体に関する。詳細には、光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、前記情報記録層の前記光が入射する面とは反対の側に形成された保護層と、前記保護層上に、前記保護層が一部露出するようにパターン状に形成されたレーベル層とを有し、前記保護層が露出した領域が、インキ消去液により消去可能な油性インキによる筆記のために用いられる筆記用領域であることを特徴とする情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子データを記録する際には情報記録媒体が広く用いられており、これらの情報記録媒体には、記録した内容やインデックス等を表記するレーベル部が設けられる。
前記レーベル部は、情報記録媒体の種類によって態様が異なる。例えば、ハードケースに収容されたMOやDVD−RAM等には、ユーザー等がシールを貼付する態様が一般的である。
また、CDやDVD等の情報記録媒体においては、ディスク表面に直接レーベル印刷する方法が、一般的である。
またCD−R、DVD−R、Blu−rayディスク等の書き込み型の情報記録媒体においては、ディスク表面に設けられたレーベル部に情報記録媒体の内容等に応じて、ユーザーが文字等を書き込むことが行なわれている(特許文献1〜3)。
【0003】
これらの情報記録媒体では、例えばレーベル部に記録した内容やインデックス等を表記する際に書き損じたり、記録データを追記したり、書き換え可能な情報記録媒体では記録データの書き換えに伴い、一旦、表記したレーベル部の内容を書き換えたいという要望がある。この様な場合、ハードケースに貼着したシールの場合は、貼りかえることにより対応可能であるが、ディスク表面に直接レーベル部が形成されている場合は、塗りつぶしたり、取り消し線で訂正して追記したりするしかなく、判別しずらかったり見栄えが良くないという課題がある。
【0004】
そこで、レーベル部への筆記のためのマーキングペンが例えば特許文献4等に提案されている。該マーキングペンインキ組成物は、可逆熱変色組成を内包するマイクロカプセル顔料を含有しており、該インキ組成物による筆記跡は、加熱により消色可能である。
【0005】
またインキ消去具として、炭素数4以下のアルコール又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤と樹脂と脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素から選ばれる液状化合物と硫酸エステル界面活性剤又は燐酸エステル界面活性剤とから少なくともなるインキ消去液が知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−124562号公報
【特許文献2】特開2008−208292号公報
【特許文献3】特開2009−67922号公報
【特許文献4】特開2008−299895号公報
【特許文献5】特開2008−308631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のマーキングペンインキ組成物を加熱により消色する際には、熱がレーベル部のみならず情報記録層にも伝わる可能性があり、繰り返し筆記及び消色を行なう場合には、情報記録層に記録したデータを損なう可能性があった。
また、特許文献2に記載のインキ消去液を用いる場合でも、油性マーキングペン等の油性筆記具で筆記したインキがレーベル部に浸透している場合には、消去効果が発揮されないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らが鋭意研究を行なった結果、情報記録媒体のレーベル部側に、一部保護層が露出している領域を設け、この領域を油性マーキングペン等の油性筆記具による筆記のための領域として用いることにより、該インキによる筆記、及びインキ消去液による筆記跡の消去が可能であることを見出した。
【0009】
本発明の要旨は、
光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、前記情報記録層の前記光が入射する面とは反対の側に形成された保護層と、前記保護層上に、前記保護層が一部露出するようにパターン状に形成されたレーベル層とを有し、前記保護層が露出した領域が、インキ消去液により消去可能な油性インキによる筆記のために用いられる筆記用領域であることを特徴とする情報記録媒体に存する。
【0010】
前記記録媒体は、前記筆記用領域の周囲のレーベル層の色相が、L***表色系のL*値が75以下であることが好ましい。
【0011】
また前記筆記用領域内に、L***表色系のL*値が75以下である色相を有する罫線を有していてもよい。
また前記保護層がスピンコート法により形成されていてもよく、射出成形により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の情報記録媒体によれば、ユーザーが消色可能なインキを用いて、容易に筆記用領域に筆記が可能なものとすることができる。また該筆記跡は、消色可能であり、筆記跡を消色した箇所への再筆記も可能である。したがって、ユーザーが、情報記録媒体の筆記用領域への筆記及び筆記跡の消色を容易な方法で確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の情報記録媒体の第1の実施形態の層構成の一例を説明するための説明図である。
【図2】本発明の情報記録媒体の筆記用領域を説明するための平面図であり、情報記録媒体をレーベル層側から見た平面図である。
【図3】本発明の情報記録媒体の筆記用領域を説明するための平面図であり、情報記録媒体をレーベル層側から見た平面図である。
【図4】本発明の情報記録媒体の筆記用領域を説明するための平面図であり、情報記録媒体をレーベル層側から見た平面図である。
【図5】本発明の情報記録媒体の第2の実施形態の層構成の一例を説明するための説明図である。
【図6】本発明の情報記録媒体のその他の実施形態の層構成の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に記載する例示物等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。なお、本願明細書において(メタ)アクリレートと記載する場合には、アクリレート及びメタアクリレートを示すものとする。以下、情報記録媒体の層構成に応じて、2つの実施形態にわけて説明するが、本発明の情報記録媒体の層構成は特にこれらに限定されるものではない。
【0015】
1.第1の実施形態
第1の実施形態の情報記録媒体の層構成を示すための概略断面図を図1に示す。図1は、図2の平面図に示すような、筆記用領域がドーナツ状に形成された情報記録媒体の、a−a´部分の概略断面図である。本実施形態では、情報記録媒体は、基板101と、情報記録層102と、反射層103と、保護層104と、レーベル層106とがこの順に積層された層構成とされる。すなわち、情報記録層102に情報を記録または再生するために照射される光(レーザー光)107が入射する側と反対側の面に反射層103、保護層104、レーベル層106が形成される。
また、レーベル層106は、保護層104の一部領域が露出するように、パターン状に形成され、該保護層が露出した領域が、インキ消去液で、油性インキ等で筆記したインキの消去が可能な筆記用領域とされる。
以下、各層について説明する。
【0016】
(1)基板
基板101は、通常、情報記録層102に対する記録光及び再生光の波長に対して透明な材料により形成される。
【0017】
基板101を形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料の他、ガラス等の無機材料が使用される。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。上記の中でも特に、ポリカーボネート樹脂は、光の透過性が高く且つ光学的異方性が小さく、さらに、機械的強度が高い等の点で優れているので好ましい。また、耐薬品性、耐吸湿性、光学特性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。
【0018】
また、通常、基板101には、例えば、情報記録層102に接する面に、記録再生用の案内溝又はピットが設けられる。この場合、基板101は、射出成形等の成形方法によって成形されるものとすることができる。またこのような案内溝又はピットは、基板101の成形時に付与することが好ましいが、例えば、基板101上に紫外線(UV)硬化樹脂を用いて付与することもできる。
【0019】
また、基板の厚さの下限は通常1.1mm、好ましくは1.15mmであり、厚さの上限は通常1.3mm、好ましくは1.25mmである。
【0020】
(2)情報記録層
本実施形態の情報記録媒体102への情報の書き込み(記録)及び/又は読み取り(再生)は、好ましくは1μm程度に収束したレーザー光によって行なわれることが好ましい。レーザー光としては、例えば半導体レーザー光を好適に用いることができる。また情報記録層102への情報の記録は、通常、レーザー光照射部分(記録部分)の情報記録層の材料の、溶融、蒸発、昇華、変形、変性等によって行なわれる。また、記録された情報の再生は、レーザー光照射部分と非照射部分との反射率の差を読み取ることにより行なわれる。上記のレーザー光としては、半導体レーザー光が好適に使用される。
【0021】
情報記録層102は、レーザー光の照射により電子情報(デジタル信号で記録されている情報等、その内容を何らかの再生装置で読み取る情報)が記録可能な材料により形成され、通常、有機物質よりなる情報記録層又は無機物質よりなる情報記録層として形成される。
【0022】
情報記録層102が有機物質よりなる場合には、主として有機色素が使用される。有機色素としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素等)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。これらの中でも含金属アゾ系色素、シアニン色素、フタロシアニン色素が好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。上記の中でも特に、含金属アゾ系色素は、耐久性及び耐光性に優れているため好ましい。
【0023】
有機物質よりなる情報記録層102の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式成膜法や、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている湿式成膜法が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面から湿式成膜法が好ましく、スピンコート法が特に好ましい。
【0024】
情報記録層102が無機物質よりなる場合は、例えば、光磁気効果により記録が行われるTb・Te・CoやDy・Fe・Co等の希土類遷移金属合金が使用される。また、相変化するGe・Te、Ge・Sb・Teのようなカルコゲン系合金も使用し得る。これらの層は、単層であっても良く、2層以上の複層で構成されていても良い。
【0025】
無機物質よりなる情報記録層102の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。中でも、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。
また、情報記録層102の膜厚は、種類により異なるが、下限は通常5nm、好ましくは10nmであり、上限は通常500nm、好ましくは300nmである。
なお、上記情報記録層102は、記録/消色が可能な相変化型記録層であっても良い。
【0026】
(3)反射層
反射層103は、通常、情報記録媒体に照射される光を反射する機能を有する。反射層103は、基板101に記録再生用の案内溝又はピットが設けられている場合は、これと対応した凹凸形状が生じている。
反射層103を形成するための材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いものが挙げられ、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは、反射率が高く反射層103の材料として適している。また、Agを主成分とするものは、コストが安く、反射率が高い等の点から特に好ましい。
【0027】
反射層103の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。中でも、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。また、反射層103の厚さの下限は通常30nm、好ましくは50nmであり、上限は通常150nm、好ましくは120nmである。
【0028】
(4)保護層
本実施形態の情報記録媒体には、情報記録層102の記録光又は再生光が入射する面とは反対の側に保護層104が形成される。また該保護層104上にはレーベル層106がパターン状に形成される。
【0029】
筆記用領域の形状は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はない。該筆記用領域の形状は自由に設計可能であり、該筆記用領域の形状に応じて、後述の、例えば情報記録媒体のレーベル層側から観察した平面図(図2及び図3)に示すように、ディスク状の情報記録媒体に、筆記用領域をドーナツ状に形成してもよく、また例えば、情報記録媒体のレーベル層側から観察した平面図(図4)に示すように、情報記録媒体の任意の位置に、筆記用領域が矩形状等、任意の形状に形成してもよい。ただし、回転対称でない形状とする場合は、情報記録媒体を高速回転させた場合に、不つりあいが生じ、スピンドルモーターの振動の原因となる場合があるため、筆記用領域を狭い領域とすることが好ましい。
【0030】
また保護層104の色相は、筆記用領域において、油性マーキングペンの色がどのような色であっても見やすいものとするため、無彩色であることが好ましい。具体的には、L***表色系のL*値が60以上が好ましく、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上である。またa*値の絶対値は15以下が好ましく、より好ましくは10以下である。またb*値の絶対値は15以下が好ましく、より好ましくは10以下である。
【0031】
上記色相とするためには、例えば保護層104を形成するための混合物中に、酸化チタン等の着色剤を含有させること等が好ましい。なお、2層以上を積層して保護層104を形成する場合には、最外層が上記色相を有するものとしてもよく、また下地となる層が上記色相を有するものとし、該下地となる層状に、可視光に対して透過性を有する層を積層してもよい。
【0032】
また該筆記用領域内には、ユーザーが文字や模様等を筆記する際に、書きやすいように罫線やマス等を有していてもよく、特に後述するL***表色系におけるL*値、a*値、b*値が特定の範囲である灰色または黒色の罫線を有することが好ましい。
罫線やマス等の形成方法としては、後述するレーベル層の材料と同様の材料により、スクリーン印刷等により行なうことができる。これらの罫線やマス等の線の太さは、通常1mm以下、より好ましくは0.5mm以下とすることが好ましい。ただし、細くしすぎると保護層104との密着性が低下する場合があるため、0.05mm以上が好ましく、更に好ましくは0.1mm以上が好ましい。
【0033】
また前記罫線またはマスの色相は、灰色または黒色であることが好ましい。具体的には、L*値が好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。油性インキで罫線等の上にも筆記することも考えられ、筆記跡を消去後に、罫線やマス上の筆記跡が残った場合であっても、上記色相とすることによりこれを目立ち難くすることが可能となる。
【0034】
保護層104は、レーザー光透過性の材料により形成することができ、例えば、紫外線(UV)硬化性樹脂を用いて形成することができる。紫外線(UV)硬化性樹脂の具体例としては、アクリル系モノマーと、アクリル系オリゴマー、またはアクリル系モノマー単独で構成され、上記オリゴマーとしては、例えばエポキシ、エステル、エーテル等の骨格を有するものが挙げられる。これらの殆どは、レーザー光透過物質であるため、好適に使用することができる。これらの紫外線(UV)硬化性樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、保護層は、一層のみからなる単層膜でも良く、2層以上が積層された多層膜であっても良い。
【0035】
上記モノマーとしては、単官能モノマー及び多官能モノマーがあり、代表的な単官能モノマーとしては2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしてはトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等が用いられる。
【0036】
上記オリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、上記モノマーと、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸などのビニルカルボン酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル等のグリシジル基含有ビニル化合物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸クロライド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等から選ばれる化合物との共重合体が挙げられる。
【0037】
エポキシ骨格を持ったオリゴマーとしては、エポキシ樹脂にアクリレートを反応させたエポキシ系オリゴマー、ポリアリレート等が挙げられ、これらを樹脂オリゴマー成分として使用することが出来る。
エステル骨格を持ったオリゴマーとしては、例えば、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールから成るポリエステルジオールとアクリル酸とのエステル、等のオリゴマーが挙げられる。
エーテル骨格を持ったオリゴマーとしては、例えば、ポリプロピレングリコールとアクリル酸とのエステル等が挙げられる。
上記の中でも油性インキが浸透しにくい細かな網目状構造を形成できるため、紫外線(UV)硬化性樹脂としては、モノマーのみを用いる(オリゴマーを含まない)ことが好ましい。
【0038】
また、保護層104の形成には、通常上記紫外線硬化性樹脂とともに、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン又はそのエーテル;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;ベンジル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタールなどのベンジル系化合物;1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロパンなどのヒドロキシアルキルフェニルケトン系化合物等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。該光重合開始剤の混合量としては、紫外線硬化性樹脂に対して、通常0.5%以上、好ましくは1%以上であり、また通常15%以下、好ましくは10%以下である。この範囲とすることにより樹脂モノマーや樹脂オリゴマー等の硬化性を十分なものとすることができる。
【0039】
また、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、上記紫外線硬化性樹脂等と併せて、各種添加剤や、着色剤等を用いることができ、これらは1種単独で、または2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0040】
保護層104を紫外線(UV)硬化性樹脂により形成する方法としては、通常、紫外線(UV)硬化性樹脂をそのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を反射層103上に塗布し、紫外線(UV)光を照射して硬化させることにより形成することができる。この場合、塗布方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。また保護層104の形成にはキャスト法、射出成形法等も採用することができる。
【0041】
また、保護層104は、上述した方法に限定されず、例えばスクリーン印刷法等の各種湿式成膜法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の各種乾式成膜等により形成することもでき、用いる材料に応じて適宜選択された方法で形成される。中でも湿式成膜法、特に、スピンコート法が、表面に凹凸がない膜を形成でき、筆記用領域において、油性インキによる筆記跡を消色しやすい層とすることができることから好適である。
【0042】
保護層104の厚さの下限は通常1μm、好ましくは3μmであり、上限は通常15μm、好ましくは10μmである。また保護層のJISで規定される表面粗さRaは、通常50nm以下、30nm以下とすることが好ましい。これにより表面に凹凸がない保護層104とすることができ、油性インキによる筆記跡を消去しやすい層とすることができる。
【0043】
(5)レーベル層
本実施形態においては、レーベル層106が、保護層104上にパターン状に形成される。具体的には、上記保護層104の筆記用領域以外の領域(非筆記用領域)にレーベル層106が形成される。レーベル層106のパターンは、筆記用領域の形状に応じて適宜決定され、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はない。
【0044】
レーベル層106は、通常、情報記録層102と反射層103を物理的な傷付け等から保護する役割と果たすと共に、目視で判別できるあらゆる情報を表示するために用いられる。表示情報としては、ディスクの種類(CDかDVDか、記録できるか、書き換えできるか、どのようなフォーマットか、コピープロテクション対応かどうか等)や、記録容量、ディスクの販売者のブランド名、等が挙げられる。レーベル層106は1層からなるものであってもよく、また2層以上が積層されたものであってもよい。
レーベル層は非筆記用領域を形成する層であり、言い換えれば書換不能な表示情報を表示する領域である。ディスク製造者があらかじめ上述の表示情報を表示してもよいし、ユーザーが後からインクジェットプリンタ等で追記可能な材料から形成してもよい。筆記用領域に書換可能な表示情報を表示し、非筆記用領域に書換不能な表示情報を表示することにより、2種類の表示情報が存在することとなり、ユーザーのディスク管理上好ましい形態であると言える。
【0045】
また本実施形態において、筆記用領域の周囲のレーベル層106の色相は、筆記用領域を明確にするため、筆記用領域の周囲以外となるレーベル層と色相が異なることが好ましい。
なお、筆記用領域の周囲とは、筆記用領域(保護層104が露出している領域)と、非筆記用領域(レーベル層106が形成されている領域)との境界から、非筆記用領域側の少なくとも幅1mmの領域をいうこととする。
【0046】
筆記用領域の周囲のレーベル層106の色相は、灰色または黒色であることが好ましい。具体的には、L***表色系のL*値が好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。上記色相とすることにより、油性マーキングペン等の油性筆記具で筆記の際、筆記用領域の外側の非筆記用領域にまで筆記し、該筆記跡を消去する際に筆記跡が残った場合であっても、筆記跡を目立ち難くでき、書換可能な表示情報と書換不能な表示情報が共存することが可能である。なお、上記色相とする範囲は、筆記用領域の周囲の一部領域であってもよく、筆記用領域の周囲の全領域であってもよい。
【0047】
筆記用領域の周囲の色相を上記色相とする方法としては、例えば酸化チタンホワイトやカーボンブラック等の無機顔料や有色有機顔料、染料等の着色剤を含有させた調色した後述の紫外線硬化性インキを、当該領域にスクリーン印刷により印刷する方法が挙げられる。なお、2層以上を積層してレーベル層を形成する場合には、最外層を上記色相を有するものとしてもよく、また下地となる層を上記色相を有するものとし、該下地層状に、可視光に対して透過性を有する層を積層してもよい。
【0048】
レーベル層106は、通常、紫外線(UV)硬化性インキにより形成され、紫外線硬化性インキは、紫外線硬化性樹脂を含有する。本実施形態において、紫外線硬化性樹脂として、ラジカル反応型樹脂、及びイオン反応型樹脂のいずれも用いることが可能であるが、一般にラジカル反応型樹脂の反応速度が速いことから、ラジカル反応型樹脂が好適である。
【0049】
ラジカル反応型の紫外線硬化性樹脂を含む紫外線硬化性インキ中には、通常、紫外線硬化性モノマーと光重合開始剤とが含有される。
紫外線硬化性モノマーとしては、例えば単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0050】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
また、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA 1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
また紫外線硬化性樹脂の架橋密度を向上させるために、紫外線硬化性インキ中に架橋性モノマーを含有させることも好ましい。架橋性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、シクロデカントリアクリレート等が挙げられる。
【0054】
紫外線硬化性モノマーは、紫外線硬化性インキ中に、通常50重量%以上含まれ、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90%以上である。これにより紫外線(UV)硬化性インキの粘度、チキソ特性を印刷に適正な範囲に調整することができる。なお、2種以上の紫外線硬化性モノマーを用いる場合には、これらの総量が上記範囲内とされる。
【0055】
また、これらの紫外線硬化性モノマー(重合性モノマー)と併せて、重合性オリゴマーを併用することができる。本発明において、重合性オリゴマーの数平均分子量は、通常数千から1万未満のものをいう。一般にモノマーだけでは求められる全ての特性的に合わせられないため、オリゴマーの種類や量の適正添加により、求められる特性にあった、硬度、密着性、耐水性、耐湿性等の特性向上に用いることができる。
【0056】
重合性オリゴマーの具体例として、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー(以下、ウレタンアクリレートオリゴマーと呼ぶ場合がある。)を用いることが好ましい。
ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、紫外線硬化後のレーベル層106に架橋構造を導入することができる。また、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、紫外線硬化の際の硬化収縮が低減されやすくなる。さらに、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、レーベル層106と保護層104との接着性を維持しやすくなる。
【0057】
ここで、一般に、ウレタンアクリレートオリゴマーは疎水性のものを指すが、水との親和性を向上させるため、水酸基、エーテル基、アミン基、カルボン酸基等の極性基を導入しても良い。以下に、疎水性ウレタンアクリレートオリゴマー、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーについて説明する。
【0058】
疎水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、所定の架橋構造を形成してレーベル層106の塗膜強度を上げるため、及び、保護層104との接着性を高めるために、主に用いられる。すなわち、疎水性のウレタンアクリレートオリゴマーを含有させることにより、十分な架橋構造を有するとともに、保護層104への接着性を良好とし、また硬化収縮の緩和が可能であり、さらにレーベル層106の耐水性、耐スクラッチ性を良好なものとすることができる。
【0059】
また、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、所定の架橋構造を形成してレーベル層106の塗膜強度及び耐水性を上げるために主に用いられる。すなわち、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーを含有させることにより、十分な架橋構造が形成されやすくなる。このため、レーベル層106の硬化収縮が緩和されて、レーベル層106に所定の耐スクラッチ性を付与しやすくなる。
親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、レーベル層106中に、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上含有される。一方、親水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、レーベル層106中に、通常30重量部以下、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは19重量部以下、特に好ましくは18重量部以下含有される。
上記範囲内とすれば、十分な膜強度を有する架橋構造を得やすくなる。また、タック性が良好であり、保護層104との接着性も確保しやすい。
【0060】
また光重合開始剤としては、紫外線硬化性インキに一般的に用いられるものを用いることができ、これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
また紫外線硬化性インキ中には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、着色用顔料や染料、各種顔料を含有していてもよい。
【0061】
レーベル層の形成方法は、レーベル層をパターン状に形成可能な方法であればよい。このような方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、スピンコート等が挙げられる。中でも、生産性が高く、また汎用性が高いことから、スクリーン印刷が好ましい。
以下、レーベル層をスクリーン印刷法により形成する場合を例に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0062】
スクリーン印刷法によりレーベル層106を形成する場合、上記紫外線硬化性インキを、保護層104上に目的とするパターン状に塗布し、塗布膜を形成する。次いで該塗布膜に紫外線照射することにより、紫外線硬化性樹脂を硬化させ、レーベル層106を得る。なお、レーベル層106が、2層以上の層からなる場合には、上記塗布及び硬化を複数回繰り返すことにより形成する。
【0063】
紫外線照射に用いられる光源としては、特に制限はなく、通常、波長200nm以上、また通常波長450nm以下の光を照射可能なものが用いられる。光源の具体例としては、水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0064】
また、紫外線の照射エネルギー量としては、紫外線硬化性樹脂を硬化可能な量であればよく、通常150mJ/cm2以上、好ましくは250mJ/cm2以上である。また通常2000mJ/cm2以下、好ましくは1000mJ/cm2以下である。
【0065】
レーベル層106の膜厚としては、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。また通常50μm以下であり、好ましくは30μm以下とされる。レーベル層の膜厚が薄すぎると、引っかき耐久性が足りない場合があり、厚すぎるとレーベル層の収縮により反りが大きくなる傾向があるため、この範囲内とすることが好ましい。なお、上述したように、レーベル層106が2層以上の層からなる場合には、各層積層後の全体の膜厚が上記範囲であることが好ましい。
【0066】
(6)油性インキ
本実施形態の情報記録媒体における筆記用領域への筆記に用いられるインキは油性であれば特に制限はないが、好ましくは、以下の[1]〜[3]のインキが好ましく用いられる。
[1]
着色剤と、有機溶剤と、樹脂と、両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンとを少なくとも含有してなる油性インキ
ここで、両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンとは、直鎖状ジメチルポリシロキサンの主鎖両末端基をポリエーテル基で置換したものである。前記ポリエーテル基は−R1(C24O)a(C36O)b2で表される〔式中R1は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2は、水素、炭素数1〜50のアルキル基、アリール基のいずれかを表す。また、aは1〜50の整数を表し、bは1〜50の整数を表す〕。
前記両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンとしては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の商品名:ペインタッド 29、同8142、同8331、同8353、同8388A、同8388B、同8417、DK Q8−8211や、信越化学(株)製の商品名:X−22−4952、X−22−4272、X−22−6266、KF−6004等が挙げられる。
前記両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンは、インキ組成物全量中0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲で用いられる。また、前記両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンは、HLBが1〜10、好ましくは3〜8の範囲のものが用いられる。
【0067】
前記インキに用いられる有機溶剤としては、汎用の溶剤を使用でき、インキ組成中40乃至80質量%の範囲で用いられる。
具体的な有機溶剤としては、ベンジルアルコール、メトキシメチルブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等を例示できる。
【0068】
また、有機溶剤として揮発し易い20℃における蒸気圧が5.0〜50mmHg、より好ましくは10〜50mmHgの溶剤を主溶剤として用いると筆跡の乾燥性に優れるため、筆跡を手触した際、未乾燥のインキが手に付着したり、筆記面上の筆跡を形成していない空白部分を汚染する等の不具合を生じることなく、良好な筆跡を形成できる。
蒸気圧が5.0〜50mmHg(20℃)の有機溶剤としては、エチルアルコール(45)、n−プロピルアルコール(14.5)、イソプロピルアルコール(32.4)、n−ブチルアルコール(5.5)、イソブチルアルコール(8.9)、sec−ブチルアルコール(12.7)、tert−ブチルアルコール(30.6)、tert−アミルアルコール(13.0)等のアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(8.5)、エチレングリコールジエチルエーテル(9.7)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(6.0)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(7.6)等のグリコールエーテル系有機溶剤、n−ヘプタン(35.0)、n−オクタン(11.0)、イソオクタン(41.0)、メチルシクロヘキサン(37.0)、エチルシクロヘキサン(10.0)、トルエン(24.0)、キシレン(5.0〜6.0)、エチルベンゼン(7.1)等の炭化水素系有機溶剤、メチルイソブチルケトン(16.0)、メチルn−プロピルケトン(12.0)、メチルn−ブチルケトン(12.0)、ジ−n−プロピルケトン(5.2)等のケトン系有機溶剤、蟻酸n−ブチル(22.0)、蟻酸イソブチル(33.0)、酢酸n−プロピル(25.0)、酢酸イソプロピル(48.0)、酢酸n−ブチル(8.4)、酢酸イソブチル(13.0)、プロピオン酸エチル(28.0)、プロピオン酸n−ブチル(45.0)、酪酸メチル(25.0)、酪酸エチル(11.0)等のエステル系有機溶剤を例示できる。
なお、括弧内の数字は20℃におけるそれぞれの有機溶剤の蒸気圧を示す。
前記20℃における蒸気圧が5.0〜50mmHgの有機溶剤は溶剤中50質量%以上添加される。また、二種以上の溶剤を併用して用いてもよい。
更に、主溶剤として炭素数3以下のアルコール及び/又は炭素数4以下のグリコールエーテル類を用いる系においては、沸点が160℃〜250℃の有機溶剤を併用して筆跡乾燥速度を調整することが好ましい。
【0069】
前記着色剤としては、油性インキに適用される汎用の染料、顔料が適宜用いられる。
前記染料としては、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
前記ソルベント染料の具体例としては、バリファーストブラック3806(C.I.ソルベントブラック29)、同3807(C.I.ソルベントブラック29の染料のトリメチルベンジルアンモニウム塩)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、スピロンブラックGMH(C.I.ソルベントブラック43)、バリファーストレッド1308(C.I.ベーシックレッド1の染料とC.I.アシッドイエロー23の染料の造塩体)、バリファーストイエローAUM(C.I.ベーシックイエロー2の染料とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンイエローC2GH(C.I.ベーシックイエロー2の染料の有機酸塩)、スピロンバイオレットCRH(C.I.ソルベントバイオレット8−1)、バリファーストバイオレット1701(C.I.ベーシックバイオレット1とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンレッドCGH(C.I.ベーシックレッド1の染料の有機酸塩)、スピロンピンクBH(C.I.ソルベントレッド82)、ニグロシンベースEX(C.I.ソルベントブラック7)、オイルブルー613(C.I.ソルベントブルー5)、ネオザポンブルー808(C.I.ソルベントブルー70)等が挙げられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる厚みが0.01〜0.1μmの金属顔料、金、銀、白金、銅から選ばれる平均粒子径が5〜30nmのコロイド粒子、蛍光顔料、蓄光性顔料、熱変色性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
【0070】
前記着色剤は一種又は二種以上を併用してもよく、インキ組成物中3〜40重量%の範囲で用いられる。特に、前記着色剤としては、インキ中での安定性が高い油溶性染料が好ましく用いられる。
【0071】
前記樹脂としては、前述した有機溶剤に対して可溶なものであれば特に限定されることなく適用でき、筆跡の滲み抑制、定着性向上、堅牢性等を付与する目的でインキ中に添加される。具体的には、ケトン樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物等が挙げられる。これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中0.5〜40重量%、好ましくは1〜35重量%の範囲で用いられる。
【0072】
[2]
着色剤と、有機溶剤と、樹脂と、ポリエーテル部のポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の重量比においてポリオキプロピレン鎖が0重量%以上50重量%未満であると共に、HLBが10以下である側鎖ポリエーテル変性シリコーンとを少なくとも含有するインキ
側鎖ポリエーテル変性シリコーンは、ポリシロキサンの側鎖の一部にポリエーテル基を導入したものであり、ポリエーテル基は、ポリオキシエチレン鎖単独で構成される、又は、少なくともポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとにより構成され、前記ポリオキシプロピレンの含有量が重量比で50重量%未満(ポリエーテル中)であることが好ましい。また、側鎖ポリエーテル変性シリコーンは、HLBが10以下、好ましくは2〜9の範囲のものが用いられ、更に好適には、少量の添加で高い効果が得られることから3〜6の範囲のものが用いられる。
前記側鎖ポリエーテル変性シリコーンは、インキ組成物全量中0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲で用いられる。
なお、着色剤と、有機溶剤と、樹脂については、上記[1]において記載したものと同じものが使用できる。
【0073】
[3]
着色剤と、炭素数4以下のアルコール及び/又は炭素数6以下のグリコール系溶剤と、樹脂と、ノニオン性フッ素系界面活性剤とを少なくとも含むインキ
ノニオン性フッ素系界面活性剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等が例示できる。特に、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のエチレンオキシド付加物は表記面に対する効果が高いため好適に用いられる。
更に、前記ノニオン性フッ素系界面活性剤として、フルオロ基を導入したアクリルオリゴマーも好適に用いられる。前記アクリルオリゴマーとしては、フルオロ基・親油性基含有オリゴマーであればどのようなものでも適用でき、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキドアクリレート、シリコンアクリレート等を骨格とするものが適用できる。特に、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマーが好適に用いられる。
前記ノニオン性フッ素系界面活性剤は、インキ全量に対して、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%の範囲で添加することができる。
【0074】
前記溶剤としては、炭素数4 以下のアルコールや、炭素数6 以下のグリコール系溶剤を単独、又は二種類以上を併用して使用できる。炭素数4以下のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
炭素数6以下のグリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
更に、筆記描線の白化を抑える目的で、フェニルグリコール、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の低蒸気圧成分を添加することもできる。
なお、着色剤と樹脂については、上記[1]において記載したものと同じものが使用できる。
【0075】
(7)インキ消去液
インキ消去液としては、油性インキを消去できるものであれば特に制限はないが、好ましくは下記のインキ消去液が使用できる。
炭素数4以下のアルコール又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤と、樹脂と、脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素から選ばれる液状化合物と、硫酸エステル界面活性剤又は燐酸エステル界面活性剤とから少なくともなるインキ消去液
【0076】
ここで、炭素数4以下のアルコール又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0077】
樹脂としては、ケトン樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルピロリドン、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等を例示することができ、特にポリビニルブチラール樹脂が好適に用いられる。
前記ポリビニルブチラール樹脂としては、ヘキスト社製、商品名:Mowital B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H、積水化学工業(株)製、商品名:エスレックB、BH−3、BL−1、BL−2、BL−L、BLS、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、電気化学工業(株)製、商品名:デンカブチラール#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−C等が挙げられる。
前記樹脂は消去液全量中0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲で配合される。
【0078】
前記脂肪酸エステルは、常温(25℃)で液状の化合物であって、炭素数が6以上の高級脂肪酸と炭素数が2以上の一価アルコールとの高級脂肪酸アルキルエステルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソブチル、オレイン酸イソブチル等が挙げられる。
また、脂肪酸エステルとして炭素数が6以上の高級脂肪酸と炭素数が2以上の多価アルコールとの高級多価アルコールエステルであってもよい。
【0079】
前記脂肪族炭化水素は、常温(25℃)で液状の化合物であって、パラフィン系炭化水素やオレフィン系炭化水素が好ましく、流動パラフィンが挙げられる。
前記脂肪酸エステル又は脂肪族炭化水素は、消去液全量中1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%の範囲で配合される。
前記硫酸エステル界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステルが挙げられる。
【0080】
前記硫酸エステル界面活性剤として具体的には、日光ケミカルズ(株)製、ニッコールSBL−2N−27、SBL−3N−27、SBL−4N、SBL−2T−36、SBL−4T、SBL−2A−27、第一工業製薬(株)製、ハイテノールN−17、NE−15、NF−13、NF−17、18E、LA−14、LA−16、H−3960、花王(株)製、エマール20C、E−27C、E−70C、20CM、20T、NC−35を例示できる。
【0081】
前記燐酸エステル界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの燐酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの燐酸エステルが挙げられる。
前記燐酸エステル界面活性剤として具体的には、第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフA212C、同A210G、同A207H、同AL、同A212C、同A208B、同A208S、同A208F、同M208B、同M208F、同A212E、同A219B、同A206K、同A217E、東邦化学工業(株)製、商品名:フォスファノールRA−600、RB−410、RD−510Y、RE−210、RE−410、RE−710、RE−960、RP−710、RS−410、RS−610、RM−410、RM−510、RM−710、RL−210、BH−650、GB−520、LS−500、ML−200、PE−510を例示できる。
前記界面活性剤は、消去液全量中3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲で配合される。
【0082】
筆記用領域への筆記は、通常油性インキをペン先等に含んだ筆記具によって行なわれる。筆記具の種類等は特に制限はないが、筆記用領域(保護層104)の表面を摩耗しないように、油性インキを塗布可能なものであることが好ましい。また、インキジェット方式で油性インキを吐出することによりプリンターで印刷しても良い。
また、インキ消去液による筆記跡の消色方法についても、特に制限はなく、例えばインキ消去液を含ませたスポンジもしくは布等により、筆記跡を拭き取る方法や、筆記用領域をインキ消去液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0083】
2.第2の実施形態
第2の実施形態の情報記録媒体の層構成を示すための概略断面図を図5に示す。なお、図5は、図2の平面図に示すような、筆記用領域がドーナツ状に形成された情報記録媒体の、a−a´部分の概略断面図である。本実施形態では、情報記録媒体は、基板201と、情報記録層202と、反射層203と、接着層211と、保護層204と、レーベル層206とがこの順に積層された層構成とされる。すなわち、情報記録層202に情報を記録または再生するために照射される光(レーザー光)207が入射する側と反対側の面に反射層203、保護層204、レーベル層206が形成される。
また、レーベル層206は、保護層204の一部領域が露出するように、パターン状に形成され、該保護層204が露出した領域が、インキ消去液により消去可能な油性インキによる筆記用領域とされる。
【0084】
本実施形態の情報記録媒体を構成する基板201、情報記録層202、反射層203、及びレーベル層206については、上述した第1の実施形態と同様とすることができる。以下、接着層211、及び保護層204について説明する。
【0085】
(1)保護層
本実施形態における保護層204は、接着層211によって、反射層203と接着され、該保護層204上にはパターン状にレーベル層206が形成される。またレーベル層206が形成されない領域、すなわち保護層204が露出した領域が油性インキを用いた筆記用領域とされる点については、第1の実施形態と同様であり、筆記用領域の形状、色相等についても、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0086】
本実施形態における保護層204を形成するための材料は、前述した第1の実施形態の情報記録媒体における基板101と同様の材料を挙げることができる。具体例としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料の他、ガラス等の無機材料が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を任意に組合せて用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂は、機械的強度が高い等の点で優れているので好ましい。また、耐薬品性、耐吸湿性、光学特性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。
【0087】
保護層204は、透明な材料である必要はないため、この他にアルミニウム等の金属や、筆記用領域に筆記した際の視認性を高めるため、上記高分子材料に白色等の着色剤を混合して用いることも可能である。
【0088】
保護層204の形成方法は特に制限がなく、例えばキャスト法や射出成形法等の成形法によって形成することができる。特に上記保護層204が、射出成形により形成されたものであることが好ましく、さらに、射出成形に用いられる金型は、鏡面仕上げされたものであることが好ましい。これにより表面に凹凸がない保護層204を形成でき、油性インキによる筆記跡を消去しやすい層とすることができる。
また保護層のJISで規定される表面粗さRaは、通常50nm以下、30nm以下とすることが好ましい。
【0089】
保護層204の膜厚の下限は通常100μm、好ましくは400μmであり、上限は通常800μm、好ましくは700μmである。
【0090】
(2)接着層
接着層211は、反射層203と保護層204とを接着するために用いられる層である。接着層211の材料としては、通常、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等が用いられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えばラジカル系接着剤、遅延硬化型接着剤等が挙げられる。上記の中でもラジカル系接着剤が好ましい。
【0091】
また、接着層211の形成方法としては、接着層の種類等に応じて適宜選択される。例えば接着層211の材料として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、上記紫外線硬化性樹脂を直接、または必要に応じて溶剤等と混合した状態で、反射層203上に塗布して塗布膜を形成する。該塗布膜上に保護層204を載せ、この状態で必要に応じてスピンコート法等により塗布膜の膜厚を均一化させ、紫外線を照射することにより、塗布膜中の紫外線硬化性樹脂を硬化させて形成する方法等とすることができる。
【0092】
接着層211の膜厚の下限は通常10μm、好ましくは30μmであり、上限は通常100μm、好ましくは70μmである。
【0093】
3.その他の実施態様
本発明の情報記録媒体は、情報記録層と保護層とレーベル層とを有するものであれば、本発明の効果及び目的を損なわない限り、その種類に制限はない。本発明は、例えばCD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD+RW、DVD−RW、DVD−RAM、Blu−ray等の各種ディスク状の情報記録媒体等に適用可能である。
【0094】
また、本発明の情報記録媒体の層構成についても、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態に限定されるものではない。例えば、CD−RやCD−RW等に代表される、基板/記録層/反射層/保護層/レーベル層がこの順に積層され、基板側から情報の記録又は再生を行なう構成(上記第1の実施の形態)であってもよく、また例えばBlu−rayディスクに代表される、光透過層/記録層/反射層/基板/レーベル層がこの順に積層され、レーベル層と反対の側から情報の記録又は再生を行なう構成等であってもよい。この場合、図6に示すように、基板が保護層の役割を兼ねることになる。また、例えばDVD−RやDVD−RW等に代表される、2枚の基板間に記録層及び反射層を有し、情報の記録又は再生を行なう光の入射面とは反対側の基板上にレーベル層が積層される貼り合わせ型の構成(第2の実施形態)等であってもよい。この場合、光の入射面とは反対側の基板が保護層の役割を果たすことになる。
【実施例】
【0095】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
以下の方法により、図1の層構成で、図3に示した筆記用領域を有する第1の実施形態の情報記録媒体を作製した。即ち、射出成形により、幅0.55μm、深さ190nm、ピッチ1.6μmのグルーブを有し、厚さ1.2mmのポリカーボネート樹脂製基板を成形した。この基板上に、含金属アゾ系色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートにより塗布し、90℃で15分間乾燥して、厚さ70nmの情報記録層を形成した。次に、この情報記録層上に、Agをスパッタリングして、厚さ70nmの反射層を形成した。さらにこの反射層の上に、アクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性樹脂(大日本インキ社製「SD−3300」)をスピンコートで塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化させ、厚さ7μmの保護層を形成しCD−R媒体を作製した。続いて、この保護層上の半径25mmから45mmの範囲に、白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布して、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し情報記録媒体(情報記録媒体1)を得た。
この情報記録媒体1のレーベル層の25mmから45mmの範囲でのL*値は94であった。筆記用領域45mmから58mmのL*値は93であった。測定には Gretag−Mcbeth社の測色計 Spectro Eye を用いた。その測定条件は光源D65,観察視野 2°、濃度基準 Ansi A,内蔵フィルタ No、白色ベース Absを用いた。
【0097】
このようにして作製した情報記録媒体1の半径45mmから58mmの範囲に、パイロット社製の油性マーカで筆記したのち、インキ消去液(組成は下記の通り)で筆記した文字を消したところ、跡形もなく消すことができた。油性マーカとしては、パイロット社製の下記型番の4種類を用いた。
黒 MFD-15EU-B
赤 MFD-15EU-R
青 MFD-15EU-L
緑 MFD-15EU-G
【0098】

インキ消去液の組成
ステアリン酸ブチル 6.0質量部
ジオクチルドデカンジエート 7.0質量部
ステアリン酸−エチレングリコールモノブチルエーテル 7.0質量部
硫酸エステル系界面活性剤 7.0質量部
ポリビニルブチラール樹脂 2.0質量部
エチルアルコール 71 質量部
【0099】
(実施例2)
以下の方法により、図1の層構成で図2に示した筆記用領域を有する第1の実施形態の情報記録媒体を作製した。即ち、実施例1と同様の方法によりCD−R媒体を作製した。続いて、この保護層上の半径25mmから45mmと55mmから58mmの範囲は白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し、さらに、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は灰色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD 650 Grayをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmの2層目のレーベル層を形成し情報記録媒体(情報記録媒体2)を得た。
この情報記録媒体2の半径25mmから40mmの範囲でのL*値は94、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲でのL*値は74、筆記用領域の半径45mmから55mmの範囲でのL*値は93であった。
【0100】
このようにして作製した情報記録媒体2の半径45mmから55mmの範囲に、実施例1と同じパイロット社製の油性マーカで筆記した際に、誤って半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲にも筆記してしまった。そののち、該インキ消去液で筆記した文字を消したところ、半径45mmから55mmの範囲は跡形もなく消すことができた。また、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は、僅かに消し跡が残るが、レーベル層の灰色と識別が困難で問題ない結果であった。
【0101】
(実施例3)
以下の方法により、図5の層構成で、図3に示した筆記用領域を有する第2の実施形態の情報記録媒体を作製した。即ち、射出成形により、幅0.32μm、深さ150nm、ピッチ0.74μmのグルーブを有し、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製基板を成形した。この基板上に、含金属アゾ系色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートにより塗布し、70℃で30分間乾燥して、厚さ80nmの情報記録層を形成した。次に、この情報記録層上に、Agをスパッタリングして、厚さ120nmの反射層を形成した。
上述した方法で作製した反射層の上に、紫外線硬化樹脂(日本化薬製ラジカル系紫外線硬化樹脂 DVD750:弾性率3100MPa(25℃)、ガラス転移温度Tg=98℃)を塗布し、保護層(上述の樹脂製基板と同様の基板)を上に載せながら、前記紫外線硬化樹脂層の膜厚がおよそ50μmになるようにスピンコート回転数を調節して塗布した。続いて、保護層側から紫外線を照射して上記紫外線硬化樹脂を硬化させ、その層を接着層とすることにより、樹脂基板および貼り合わせ基板で狭持されたDVD媒体を作製した。
続いて、この保護層上の半径25mmから45mmの範囲に、白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布して、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し情報記録媒体(情報記録媒体3)を得た。
この情報記録媒体3の半径25mmから45mmの範囲でのL*値は96であった。筆記用領域45mmから58mmの範囲でのL*値は84で、表面粗さRaは20nmであった。
【0102】
このようにして作製した情報記録媒体2の半径45mmから58mmの範囲に、実施例1と同じパイロット社製の油性マーカで筆記したのち、該インキ消去液で筆記した文字を消したところ、跡形もなく消すことができた。
【0103】
(実施例4)
以下の方法により、図5の層構成で図2に示した筆記用領域を有する第2の実施形態の情報記録媒体を作製した。即ち、実施例3と同様の方法によりDVD媒体を作製した。続いて、この保護層上の半径25mmから45mmと55mmから58mmの範囲は白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し、さらに、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は灰色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD 650 Grayをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し情報記録媒体(情報記録媒体4)を得た。
この情報記録媒体4の半径25mmから40mmの範囲でのL*値は96、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲でのL*値は74、筆記用領域の半径45mmから55mmの範囲でのL*値は84であった。
【0104】
このようにして作製した情報記録媒体4の半径45mmから55mmの範囲に、パイロット製の油性マーカで筆記した際に、誤って半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲にも筆記してしまった。そののち、該インキ消去液で筆記した模様を消したところ、半径45mmから55mmの範囲は跡形もなく消すことができた。また、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は、わずかに消し跡が残るが、レーベルの灰色と識別が困難で問題ない結果であった。
【0105】
(実施例5)
以下の方法により、図5の層構成で図2に示した筆記用領域を有する第2の実施形態の情報記録媒体を作製した。即ち、実施例3と同様の方法によりDVD媒体を作製した。続いて、この保護層上の半径25mmから45mmと55mmから58mmの範囲は白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し、さらに、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は実施例4より暗い灰色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD 552 Grayをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmの2層目のレーベル層を形成し情報記録媒体(情報記録媒体5)を得た。
この情報記録媒体5の半径25mmから40mmの範囲でのL*値は96、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲でのL*値は46であった。筆記用領域45mmから55mmの範囲でのL*値は94であった。
【0106】
このようにして作製した情報記録媒体5の半径45mmから55mmの範囲に、実施例1と同じパイロット社製の油性マーカで筆記した際に、誤って半径45mmから55mmの範囲をはみ出して、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲にも筆記してしまった。そののち、該インキ消去液で筆記した模様を消したところ、半径45mmから55mmの範囲は跡形もなく消すことができた。また、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は、ほとんど消し跡が見えず問題ない結果であった。
【0107】
(実施例6)
以下の方法により、図5の層構成で図2に示した筆記用領域を有する第2の実施形態の情報記録媒体を作製した。即ち、実施例3と同様の方法によりDVD媒体を作製した。続いて、この保護層上の半径25mmから45mmと55mmから58mmの範囲は白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し、さらに、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は黒色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD 582 Blackをスクリーン印刷で塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し情報記録媒体(情報記録媒体6)を得た。
この情報記録媒体5の色相は、半径25mmから40mmの範囲ではL***表色系のL*値は96、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲ではL*値は11であった。筆記用領域45mmから55mmのL*値は94であった。
【0108】
このようにして作製した情報記録媒体5の半径45mmから55mmの範囲に、パイロット製の油性マーカで筆記した際に、誤って半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲にも筆記してしまった。そののち、該インキ消去液で筆記した模様を消したところ、半径45mmから55mmの範囲は跡形もなく消すことができた。また、半径40mmから45mmと55mmから58mmの範囲は、消し跡が全く見えず問題ない結果であった。
【0109】
(比較例1)
以下の方法により、保護層上の全面にレーベル層を形成した情報記録媒体を作製した。即ち、実施例1と同様の方法によりCD−R媒体を作製し、続いて、この保護層上の半径25mmから58mmの範囲は白色のアクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性インキDIC社製DICURE SSD IUP Whiteをスクリーン印刷で塗布して、さらに、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ10μmのレーベル層を形成し、情報記録媒体(情報記録媒体5)を得た。
このレーベル層のL*値は94であった。
【0110】
このようにして作製した情報記録媒体1の半径25mmから58mmの範囲に、実施例1と同じパイロット社製の油性マーカで筆記した。これらを、該インキ消去液で筆記した模様を消したところ、容易に認識できる消し跡が残った。
【0111】
以上の結果から、少なくとも筆記用領域の周囲の領域に、L*が75以下のレーベル層を設けることで、全体として鮮明な表示情報を維持できることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、情報記録媒体に設けられた筆記用領域に油性マーキングペンを用いて直接筆記記入でき、誤記入時の訂正や記録内容の変更が可能である。具体的には、炭素数4以下のアルコール又はグリコールエーテルから選ばれる有機溶剤と樹脂と脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素から選ばれる液状化合物と硫酸エステル界面活性剤又は燐酸エステル界面活性剤とから少なくともなるインキ消去液で筆記跡を消色することができ、これらの操作は繰り返し行なうことができる。
したがって、現在市場で一般的に使用されている特に書き換え可能な情報記録媒体では、記録内容の変更等に合わせて表記内容を書き換えたり、また書き込み型の情報記録媒体等であっても、例えば誤記の修正等が容易に可能となる。したがって、情報記録媒体全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
101、201、301 基板
102、202、302 情報記録層
103、203、303 反射層
104、204 保護層
106、206、306 レーベル層
107、207、307 光(記録光または再生光)
211 接着層
311 光透過層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射することにより情報の記録又は再生が可能な情報記録層と、前記情報記録層の前記光が入射する面とは反対の側に形成された保護層と、前記保護層上に、前記保護層が一部露出するようにパターン状に形成されたレーベル層とを有し、
前記保護層が露出した領域が、インキ消去液により消去可能な油性インキによる筆記のために用いられる筆記用領域であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記筆記用領域の周囲のレーベル層の色相が、L***表色系のL*値が75以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記筆記用領域内に、L***表色系のL*値が75以下の色相を有する罫線を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記保護層がスピンコート法により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記保護層が射出成形により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−100531(P2011−100531A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216766(P2010−216766)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】