説明

情報通信システムの処理要求調停方法及びそのシステム並びにそのための制御プログラム

【課題】情報処理システムの性能向上を図る。
【解決手段】プロセッサ11,12からHDD16へのアクセスを第1のアドレス空間又は第2のアドレス空間を介して行い得るように情報処理システム10を構築する。プロセッサ11,12がHDD16へアクセスするとき、そのアクセスが第1のアドレス空間を介して行われたものであるか、第2のアドレス空間を介して行われたものであるかをアクセス判定回路14によって判定する。書込みアクセスを伴う読込みアクセスが、遅れて、第2のアドレス空間を介して行われたものであるとき、遅れて発せられたアクセスを先行して実行されているアクセスが完了するまで待機させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報通信システムの処理要求調停方法及びそのシステム、情報処理システムのアクセス調停方法及びそのシステム並びにその制御プログラムに関し、詳しくは処理要求に対する調停論理を改良した情報通信システムの処理要求調停方法及びそのシステム、情報処理システムのアクセス調停方法及びそのシステム並びにそのための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチプロセッサシステムにおいて、記憶デバイスへのアクセス競合を調停する仕組みが採用されている。その1つの例(以下、公知例という)は、図5に示すように、プロセッサ51,52と、共有バス53と、調停回路54と、記憶デバイス55とから概略構成されている。この公知例におけるアクセスの競合は、次のように調停されて任意の時刻においてアクセスが重ならないように構成されている。
プロセッサ51が共有バス53を介して記憶デバイス55へアクセスしようとするとき、そのアクセスS60(図6)において調停回路54の調停論理へアクセス中である旨を通知する。その後に、書込みのための読込みアクセスS61を開始し、記憶デバイス55内のプロセッサ51から見たアクセス単位のアドレスA60からの読込みを実施する。そして、書込みアクセスS64を実行して記憶デバイス55内のプロセッサ51から見たアクセス単位のアドレスA60内のアドレスへの書込みを行い、その完了でアクセス要求の解除のアクセスS65を実行して調停回路55の調停論理に記憶デバイス55へのアクセスが完了したことを通知する。
【0003】
プロセッサ51によるアクセスS60からアクセスS65までの間に、プロセッサ52からのアクセス要求が発生すると、調停回路55の調停論理は、プロセッサ51によるアクセスが完了するまで、プロセッサ52からのアクセス要求を待たせる、つまり、プロセッサ52からのアクセス要求に対してアクセス阻止中の状態(S63)にする。
すなわち、上述のアクセスS65によるアクセス要求の解除、すなわち、書込み完了の通知があると、アクセス待機中にあるプロセッサ52は、アクセスS64で書き込んだデータをアクセスS66で読み込む。
そして、プロセッサ52は、読み込んだアドレスA60のデータを元にそのアドレスA60内のアドレスA62のデータを変更したデータを記憶デバイス55のアクセス単位であるアドレスA60に書き込む。
【0004】
また、特許文献1には、アドレス競合を回避するマイクロプロセッサシステムが開示されている。このマイクロプロセッサシステムは、複数のノード71−1、71−2、…、71−Nが相互結合網72を介して接続されて構成され、その各ノードにリクエスト管理テーブル75を設け、プロセッサ73からアクセスがあったアドレスをリクエスト管理テーブル75に保持し、このリクエスト管理テーブル75に既に保持されたアドレスに対して競合したアクセスがあると、アクセスを制限して書込みを完了させた後、アクセス制限の解除を行うようにして構成されている。
【特許文献1】特開2003−150573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の公知例は、既にアクセスが開始されているプロセッサがあれば、その後にアクセス要求を発するプロセッサがあったとしても、先行したアクセスの完了まで、後続するアクセスを待機させるようにしているので、上書きによりデータが消されてしまうことは無くなるが、アクセス中のプロセッサがあれば、その後にアクセスをしたいプロセッサのアクセスは制限されてしまうから、システムの性能が低下するという欠点を有する。
特許文献1では、アクセス中のアドレスを確認して競合が生じていないアドレスにはアクセスを許容するので、システムの性能の向上に貢献してはいるが、アクセスしたいアドレスに競合が発生しているときは、上記公知例等と同様、システムの性能低下は避けられないという欠点を有する。
【0006】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、システムの性能を向上させる情報通信システムの処理要求調停方法及びそのシステム、情報処理システムのアクセス調停方法及びそのシステム並びにその制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、複数の第1のノードから第2のノードへの複数種の処理要求が競合して発生したとき、複数種の処理要求を競合調停手段で調停する情報通信システムの処理要求調停方法に係り、前記処理要求の種別を判定して前記処理要求を許否する調停論理を前記競合調停手段に設定し、競合した前記処理要求が発生したとき、該処理要求間の調停を前記調停論理に基づいて行うことを特徴としている。
【0008】
この発明の第2の構成は、複数の第1のノードと、第2のノードと、複数の前記第1のノードから第2のノードへの競合した複数種の処理要求を調停する競合調停手段を有する情報通信システムに係り、前記処理要求の種別を判定して前記処理要求を許否する調停論理が設けられる前記競合調停手段を備え、競合した前記処理要求が発生したとき、該処理要求間の調停を前記競合調停手段の前記調停論理に基づいて行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、複数の第1のノードから第2のノードへの処理要求が競合したとき、競合する処理要求の種別を判定して競合する処理要求のうちのいずれか1の処理要求の処理を行うようにしているので、その処理システムの性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明は、複数の処理要求手段から処理要求に対応する処理を行う処理手段への処理要求が競合する構成を有するシステムに、それら処理要求の種別を判定することと、その判定結果に基づいて競合しているいずれの処理要求を許容することを仕組ませて構成される。
【実施形態1】
【0011】
図1は、この発明の実施形態1である情報処理システムの要部の構成を示す図、図2は、同情報処理システムの各プロセッサによってアクセスされるアドレス空間を示す図、また、図3は、同情報処理システムの各プロセッサによるアクセスシーケンスを示す図である。
この実施形態の情報処理システム10は、複数のプロセッサによる記憶手段へ書込みアクセスを伴なわない読込みアクセスに対してアクセス制限を解除するシステムに係り、図1に示すように、プロセッサ11,12、共有バス13、アクセス判定回路14、HDDへのコマンド発行デバイス15及びHDD16を有して概略構成されている。
【0012】
プロセッサ11,12は、図示しない記憶装置に記憶されているプログラムを読み出して実行し、HDDへのコマンド発行デバイス15及びHDD16を用いてデータの保存や、データの読出し、データの変更を行う処理手段である。プロセッサ11,12の内部構成自体には、この発明とは無関係でありその詳細は省略する。プログラムは、図2及び図3に示される機能を実行し得ることは必要であるが、そのプログラムで実行されるその他の内容についてはこの発明とは無関係でありその詳細は省略する。
【0013】
共有バス13は、プロセッサ11と、プロセッサ12と、アクセス判定回路14とを接続し、それらの間でデータを送受する信号線である。この共有バス13にはPCIバス等が使用される。この発明では共有バス13の仕様には次に述べる条件を除いて特定の条件は付されない。その条件とは、プロセッサ11及びプロセッサ12とアクセス判定回路14との間でアドレスを含むデータの送受を行い得ることと、プロセッサ11,12からアクセス要求が生じた場合に、アクセス対象となるデバイスへのアクセスを一定期間拒否したいとき、その期間アクセスを出来なくすることである。
【0014】
アクセス判定回路14は、プロセッサ11からのアクセスとプロセッサ12からのアクセスとを排他的に処理し得るように構成されている。
すなわち、プロセッサ11及びプロセッサ12からHDD16へのアクセス要求があったとき、より早くアクセス要求があったプロセッサの処理を先行させるが、一方のプロセッサから所定の条件関係(アドレス空間MA−2を介してアクセスされていること(詳細は後述する))にある読込みアクセス(書込みアクセスを伴う読込みアクセス)が実行されていたならば、他方のプロセッサから書込みアクセスを伴う読込みアクセスが実行されんとしたとしても上記一方のプロセッサの書込みアクセスに対する処理が完了するまで上記他方のプロセッサのアクセス要求に対する処理を待機させる。
しかし、他方のプロセッサからの読込みアクセスが所定のアクセス条件(図2に示す通常のアドレス空間(アドレス空間MA−1(図2))を介するアクセスであること(詳細は後述する))を満たす場合には、上記一方のプロセッサの書込みアクセスに対する処理の完了を待たずに、上記他方のプロセッサの読込みアクセスに対する処理を実行する。
【0015】
図2は、A20、A21、A22及びA23は、プロセッサ11及びプロセッサ12で実行されるプログラムから見たHDD16のアドレス空間のアドレスである。そして、記憶領域MA−1は、アドレスA20からアドレスA21までのアドレス空間であり、記憶領域MA−2は、アドレスA22からアドレスA23までのアドレス空間である。
また、A24及びA25は、HDD16上でデータの位置を表すアドレス空間内のアドレスである。そして、記憶領域MA−3は、アドレスA24からアドレスA25までのアドレス空間である。
【0016】
このようなアドレス空間関係が構築されている情報処理システムにおいて、プロセッサ11,12が、HDD16のアドレス空間MA−3に対しアクセスをしようとするときは、アドレス空間MA−1、MA−2を介して行うようにプロセッサ11,12で実行されるプログラムは作成される。すなわち、そのプログラム上では、例えば、プロセッサ11,12からアドレス空間MA−1又はMA−2内の或る特定のアドレスにアクセス要求があると、HDD16上のアドレス空間MA−3に一意的に写像される。
【0017】
HDDへのコマンド発行デバイス15は、プロセッサ11,12からアクセス判定回路14を介して受け付けたHDD16へのアクセス要求を実際に実行する手段である。HDDへのコマンド発行デバイス15は、バス17を介してHDD16へ接続されている。このバス17の具体的な仕様にこの発明はなく、その詳細な説明は省略する。
【0018】
HDD16は、データ記憶用の部品を組み合わされた構成であり、或るデータサイズ以上の単位でしかアクセスできない。この実施形態では、その単位の大きさは、512バイトとする例であるが、アクセス可能な単位のサイズは、その他の値であってもよい。また、HDD16の詳細な構成は広く知られており、したがって、HDD16の構成にこの発明はなく、その詳細な説明は省略する。
【0019】
次に、図1乃至図3を参照して、この実施形態の動作について説明する。
情報処理システム10において、そのプロセッサ11からHDD16に対するアクセスがHDD16(図1)のアドレスA30に対して開始される一方、このプロセッサ11によるアクセスに遅れて、プロセッサ12からもHDD16に対するアクセスがHDD16のアドレスA30に対して行われるものとする。
【0020】
プロセッサ11からのアクセスは、書込みアクセスを伴う読込みアクセスであるとする。これらのアクセスには、書込みのための読込みを行う読込みアクセスS30と書込みを行う書込みアクセスS34とがあり、これらのアクセスは、コマンドを発行して行われる。読込みアクセスS30は、書込みアクセスS34で書込みを行うためのデータの読込みを実施する。この読込みの実施は、アクセス単位となるHDD16上のアドレスA30に対してアドレス空間MA−2(図2)を介して行われる。そして、書込みアクセスS34は、データの書込みを実施する。この書込みの実施は、アクセス単位となるHDD16上のアドレスA30に対してアドレス空間MA−2を介して行われる。
【0021】
また、プロセッサ12からのアクセスは、書込みを伴わない読込みだけの読込みアクセスS31と、これに続いて書込みを伴う読込みを行う読込みアクセスS32,書込みアクセスS36とが出されるものとする。したがって、プロセッサ12による書込みを伴わない読込みだけの読込みアクセスS31のときは、その読込みアクセスS31は、図2のアドレス空間MA2A−1を介してHDD16のアドレスA30に対して行われる。また、書込みを伴う読込みを行う読込みアクセスのときは、その読込みアクセスS32のときも、また、書込みアクセスS36のときも、プロセッサ11からの上記アクセスと同様に、図2のアドレス空間MA2A−2を介して行われる。いずれのアクセスにおいても、HDD16のアドレスA30に対して行われるとする。
両プロセッサ11,12からアクセスされるアドレスA30は、HDD16上のアドレスを表しており、図2に示すHDD16上のアドレス空間MA−3の中に定義されるアドレスである。したがって、アドレスA30は、HDD16のアクセス単位である512バイト毎のアドレスを示している一方、アドレスA31,A32は、アクセス単位であるアドレスA30内の処理対象のデータのアドレスの各各である。
【0022】
このような設例の下で、プロセッサ11がHDD16に対して書込みアクセスS34を伴う読込みアクセスS30を発生すると、アクセス判定回路14は、HDD16に対してプロセッサ11がアクセス中であることを記憶する。
そして、プロセッサ11が書込みアクセスS34を実行する前に、プロセッサ12が通常の読込みアクセスS31(書込みアクセスを伴わない読込みアクセス)を実行して読込みが実施されたとする。この読込みアクセスS31は、書込みを伴わないアクセスであるから、図2に示すアクセス空間MA−1を介してのアクセスとなっている。
したがって、アクセス判定回路14は、アクセス空間MA−1を介しての読込み要求に対しては制限をしないので、プロセッサ12からの読込みアクセスS31は制限されずに完了する。
【0023】
これとは異なって、プロセッサ11が読込みアクセスS30を実行した後、書込みアクセスS34を実行する前に、プロセッサ12が書込みアクセスS36を伴う読込みアクセスS32の実行に入り、読込みを実施しようとしたとき、読込みアクセスS32は、書込みアクセスS36を実行するためのアクセスであるので、その読込みアクセスS32は、図2のアクセス空間MA−2を介してアクセスS32の読込みを実施しているから、プロセッサ12による読込みアクセスS32は、アクセス判定回路14によってプロセッサ11がアクセスS34を完了するまで制限される、すなわち、調停待ちの状態となる(図3のS33)。
【0024】
そして、プロセッサ11は、書込みアクセスS34によりアドレスA30内のアドレスA31を変更したデータのアドレスA30からの書込みを実施する。この完了で、アクセス判定回路14は、プロセッサ11によるアクセスが完了したとして自身の内部状態を解除B31に設定し、プロセッサ12のアクセスが可能になったことをプロセッサ12に通知する。
この通知を受け取ったプロセッサ12は、アクセスS35によりHDD16のアドレスA30のデータを受け取る。アクセス判定回路14は、プロセッサ12がアクセス中であることをその内部状態B32として記憶する。このときには、プロセッサ11による書込みアクセスS34は完了しているので、プロセッサ11が書込みを意図したデータは、アドレスA30からのHDD16のアクセス単位となる512バイト内のアドレスに反映されている。
したがって、プロセッサ12の書込みアクセスS36による書込みは、プロセッサ11の書込みアクセスS34による書込みを無効にすることなく完了させることができる。なお、書込みアクセスS36による書込みは、アドレスA30内のアドレスA32のデータを変更したアクセス単位のデータをアドレスA30から実施する。
【0025】
このように、この実施形態の構成によれば、2つのプロセッサによるHDDへのアクセスが行われんとするとき、書込みアクセスを伴う読込みアクセスがこのアクセス用のアドレス空間を介してあったときにのみ、遅れて実行されんとする書込みアクセスを伴う読込みアクセスに対して制限を掛けるようにしたので、情報処理システムの性能を向上させることができる。
【実施形態2】
【0026】
図4は、この発明の実施例2である情報処理システムの構成を示す図である。
この実施形態の構成が、実施形態1のそれと大きく異なる点は、書込みアクセスを伴う読込みアクセスが競合する場合のアクセス制限に、先行してアクセスが開始されているアクセスアドレスを用いるようにした点である。
すなわち、この実施形態の情報処理システム10Aは、図4に示すように、アドレス空間MA−2を介してHDD16にアクセスがあった場合にアクセスしたアドレスを保存するアドレス管理テーブル41を設けたこと及びアクセス判定回路14Aはアドレス管理テーブル41を参照してHDD16へのアクセスに制限があるか否かを判定することにこの実施形態の特徴部分がある。
この構成以外のこの実施形態の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その逐一の説明は省略する。
【0027】
次に、図4を参照して、この実施形態の動作について説明する。
情報処理システム10Aにおいて、そのプロセッサ11からHDD16に対するアクセスがHDD16のアドレスA30(図3)に対して開始される一方、このプロセッサ11によるアクセスに遅れて、プロセッサ12からもHDD16に対するアクセスがHDD16のアドレスA30に対して行われるものとする。
【0028】
実施形態1と同様、プロセッサ11からのアクセスは、書込みアクセスS34を伴う読込みアクセスS30を行うアクセス(図3)であるとする。これらのアクセスは、コマンドを発行して行われる。また、読込みアクセスS30も、また書込みアクセスS34も、アクセス単位となるHDD16上のアドレスA30に対してアドレス空間MA−2(図3)を介して行われるものとする。
【0029】
また、プロセッサ12からのアクセスは、書込みアクセスを伴わない読込みアクセスS31(図3)だけのアクセスに続いて、書込みアクセスS36を伴なう読込みアクセスS32(図3)が出されることも、同様である。これらのアクセスもコマンドを発行して行われる。
読込みアクセスS31は、図2のアドレス空間MA−1を介してHDD16のアドレスA30に対して行われるのに対して、読込みアクセスS32も、また、書込みアクセスS36も、プロセッサ11からの上記アクセスと同様に、図2のアドレス空間MA−2を介して行われることも、同様である。いずれのアクセスにおいても、HDD16のアドレスA30に対して行われるとする。
両プロセッサ11,12からアクセスされるアクセスA30は、HDD16上のアドレスを表しており、図2に示すHDD16上のアドレス空間MA−3の中に定義されるアドレスである。したがって、アドレスA30は、HDD16のアクセス単位である512バイト毎のアドレスを示している。
【0030】
このような設例の下で、プロセッサ11からHDD16に対してアクセスS30が実行されると、アクセス判定回路14Aは、アドレス空間MA−2を介して行われる読込みアクセスのアドレスをアドレス管理テーブル41に保存する。
そして、プロセッサ11が書込みアクセスS34を実行する前に、プロセッサ12が読込みアクセスS31を実行して読込みが実施されたとする。この読込みアクセスS31は、書込みアクセスを伴わないアクセスであるから、図2に示すアクセス空間MA−1を介してのアクセスとなっている。
【0031】
読込みアクセスS31が実行されるとき、アクセス判定回路14Aは、アドレス管理テーブル41を参照し、アドレス空間MA−2を介してアドレスA30へアクセスがあるか否かを判定する。このとき、既に、プロセッサ11によってアドレスA30へのアクセスが行われてそのアドレスA30がアドレス管理テーブル41に保存されているが、その保存は、アドレス空間MA−2を介してのものではないから、アクセス空間MA−1を介しての読込みアクセスS31に対してはアドレスA30へのアクセスはないと判定してその読込みアクセスS31に対する制限を解除する。したがって、プロセッサ12からのアクセスS31は制限されずに完了する。
【0032】
これとは異なって、プロセッサ11が書込みアクセスS34を伴うアクセスS30を実行した後、アクセスS34を実行する前に、プロセッサ12が書込みアクセスS36を伴うアクセスS32の実行に入り、読込みを実施しようとしたとき、アクセス判定回路14Aは、アクセスS32が、図2のアクセス空間MA−2を介してのアクセスであるので、アドレス管理テーブル41を参照する。
このとき、既に、プロセッサ11によってアドレスA30へのアクセスが行われてそのアドレスA30がアドレス管理テーブル41に保存されているので、アドレス判定回路41は、アクセス空間MA−2を介しての読込みアクセスS32に対してはアドレスA30へのアクセスが既に行われていると判定してその読込みアクセスS32に対してはアドレスA30へのアクセスを制限する。
したがって、プロセッサ12による読込みアクセスS32は、アクセス判定回路14Aによってプロセッサ11によるアクセスS34が完了するまで制限される、すなわち、調停待ちの状態となる(図3のS33)。
【0033】
そして、プロセッサ11は、書込みアクセスS34によりアクセス単位内のアドレスA31を変更したアクセス単位のデータのアドレスA30からの書込みを実施する。この完了で、アクセス判定回路14Aは、プロセッサ11によるアクセスが完了したとして自身の内部状態を解除B31に設定し、プロセッサ12のアクセスが可能になったことをプロセッサ12に通知する。
この通知を受け取ったプロセッサ12は、アクセスS35によりHDD16のアドレスA30のデータを受け取る。アクセス判定回路14Aは、プロセッサ12がアクセス中であることをその内部状態B32として記憶する。このときには、プロセッサ11による書込みアクセスS34は完了しているので、プロセッサ11が書込みを意図したデータは、アドレスA30からのHDD16のアクセス単位となる512バイト内のアドレスに反映されている。
したがって、プロセッサ12の書込みアクセスS36による書込みは、プロセッサ11の書込みS34による書込みを無効にすることなく完了させることができる。なお、書込みアクセスS36による書込みは、アドレスA30内のアドレスA32のデータを変更したアクセス単位のデータをアドレスA30から実施する。
【0034】
このように、この実施形態の構成によれば、2つのプロセッサによるHDDへのアクセスが行われるとき、書込みアクセスを伴う読込みアクセスがこのアクセス用のアドレス空間を介してあったときそのアクセスアドレスを保存しておき、遅れて実行されんとするアクセス用アドレス空間を介しての読込みアクセスに対して制限を掛けるようにしたので、情報処理システムの性能を向上させることができる。
【0035】
以上、この発明の実施例を、図面を参照して詳述してきたが、この発明の具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。
例えば、上記実施形態においては2つのプロセッサからHDDへアクセスするときの競合を回避するのに、アクセス種別に応じたアドレス空間を介してアクセスを行う仕組みを設ける構成を説明したが、HDD等の記憶手段へのアクセスが発生したとき、そのアクセスがいずれのアクセス種別に属するかを判別する仕組みを設け、アクセスが記憶手段に行われるとき、判別結果に基づいて記憶手段へのアクセスを制限するようにしてもよい。
また、上述した実施形態は、記憶手段へのアクセスについての例を示したが、その他の処理手段への処理要求が競合する場合にも、この発明を実施し得る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ここに開示している情報処理システムのアクセス調停方法及びそのシステム並びにそのための制御プログラムは、処理要求が競合する各種のシステムでも利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施形態1である情報処理システムの要部の構成を示す図である。
【図2】同情報処理システムの各プロセッサによってアクセスされるアドレス空間を示す図である。
【図3】同情報処理システムの各プロセッサによるアクセスシーケンスを示す図である。
【図4】この発明の実施形態2である情報処理システムの要部の構成を示す図である。
【図5】従来の1つのマルチプロセッサシステムの構成図である。
【図6】同マルチプロセッサシステムの各プロセッサによるアクセスシーケンスを示す図である。
【図7】従来の1つのマルチプロセッサシステムの構成図である。
【符号の説明】
【0038】
10、10A 情報処理システム
11 プロセッサ(第1のノード)
12 プロセッサ(第1のノード)
13 共有バス(競合調停手段の一部)
14、14A アクセス判定回路(競合調停手段の一部)
15 HDDへのコマンド発行デバイス(競合調停手段の一部)
16 HDD(第2のノード、記憶手段)
17 バス(競合調停手段の残部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1のノードから第2のノードへの複数種の処理要求が競合して発生したとき、複数種の処理要求を競合調停手段で調停する情報通信システムの処理要求調停方法であって、
前記処理要求の種別を判定して前記処理要求を許否する調停論理を前記競合調停手段に設定し、
競合した前記処理要求が発生したとき、該処理要求間の調停を前記調停論理に基づいて行うことを特徴とする情報通信システムの処理要求調停方法。
【請求項2】
複数のプロセッサと、記憶手段と、複数の前記プロセッサと前記記憶手段とを接続するアクセス調停手段を有する情報処理システムのアクセス調停方法であって、
前記アクセスの種別を判定して前記アクセスを許否する調停論理を前記アクセス調停手段に設定し、
競合した前記アクセス要求が発生したとき、該アクセス要求間の調停を前記調停論理に基づいて行うことを特徴とする情報処理システムのアクセス調停方法。
【請求項3】
前記調停論理は、前記アクセスの種別毎に異なるアドレス空間を設定して構成されることを特徴とする請求項2記載の情報処理システムのアクセス調停方法。
【請求項4】
前記調停論理は、前記アドレス空間のうちのいずれの前記アドレス空間を介して前記アクセスが行われたか否かに基づいて前記アクセスの許否を行うことを特徴とする請求項3記載の情報処理システムのアクセス調停方法。
【請求項5】
前記調停論理は、いずれかの前記アドレス空間を介してアクセスされた前記記憶手段のアドレスに基づいて前記アクセスの許否を行うことを特徴とする請求項3記載の情報処理システムのアクセス調停方法。
【請求項6】
複数の第1のノードと、第2のノードと、複数の前記第1のノードから第2のノードへの競合した複数種の処理要求を調停する競合調停手段を有する情報通信システムであって、
前記処理要求の種別を判定して前記処理要求を許否する調停論理が設けられる前記競合調停手段を備え、
競合した前記処理要求が発生したとき、該処理要求間の調停を前記競合調停手段の前記調停論理に基づいて行うことを特徴とする情報通信システム。
【請求項7】
複数のプロセッサと、記憶手段と、複数の前記プロセッサと前記記憶手段とを接続するアクセス調停手段を有する情報処理システムであって、
前記アクセスの種別を判定して前記アクセスを許否する調停論理が設けられる前記アクセス調停手段を備え、
競合した前記アクセス要求が発生したとき、該アクセス要求間の調停を前記競合調停手段の前記調停論理に基づいて行うことを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
前記競合調停手段の前記調停論理は、前記アクセスの種別毎に異なるアドレス空間を設定して構成されることを特徴とする請求項7記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記調停論理は、前記アドレス空間のうちのいずれの前記アドレス空間を介して前記アクセスが行われたか否かに基づいて前記アクセスの許否を行うことを特徴とする請求項8記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記調停論理は、いずれかの前記アドレス空間を介してアクセスされた前記記憶手段のアドレスに基づいて前記アクセスの許否を行うことを特徴とする請求項8記載の情報処理システム。
【請求項11】
コンピータに請求項1乃至請求項5記載の情報通信システムの処理要求調停方法又は情報処理システムのアクセス調停方法を実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項12】
コンピータに請求項6乃至請求項10記載の情報通信システム又は情報処理システムの制御を行わせることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−187327(P2009−187327A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27091(P2008−27091)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】