説明

感光性ペーストおよび焼結層

ガラスフリット;有機バインダー;重合性モノマー;光重合開始剤;および有機溶媒を含む感光性ペーストであって、重合性モノマーの少なくとも一部分は構造内にリン原子を含有する感光性ペーストが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ペースト、さらに詳細には感光性ペーストに含まれているモノマー成分の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーストは、電極または抵抗パターンなどの伝導性パターンを形成するのに広範囲に使用されている。ペーストは、形成されたパターンに機能を付与する機能性機能性成分およびペースト自体に優れた特性を付与する他の成分を含む。例えば、電極用伝導性ペーストは、伝導性粉末、ガラスフリット、有機バインダー、有機溶媒、および安定化剤などの添加剤を含む。伝導性粉末は、形成された電極に伝導性を付与する。ガラスフリットは、伝導性粉末を焼結電極に保つためのバインダーとして働く。有機バインダーは、ペーストに分散された各成分を保つためのバインダーとして働く。
【0003】
電気材料の開発につれて、微細なパターンがますます求められてきている。この要求を満たすために、感光性ペーストが開発された。感光性ペーストは、ペーストの成分としてモノマーおよび光重合開始剤を含み、重合は光が照射される領域で進行する(ネガ型感光性ペースト)。以下の現像プロセスの後に、その領域はパターンとして残る。スクリーン印刷に比べて、より微細なパターンを感光性ペーストの使用によって形成することができる。
【0004】
しかし、感光性ペーストによるパターン形成において、アンダーカットが重大な問題となりつつある。アンダーカットは、現像時にパターンが内側に腐食されるように、底部でパターンの幅が狭くなることを意味する。アンダーカットは、無機顔料を含んだ感光性ペーストから形成されたパターンによく見られる。というのは、照射光が、ペースト層で強く吸収または反射されるからである。パターンの幅が広いとき、アンダーカットの影響は比較的小さく、無視できる。しかし、パターンの幅が狭いとき、アンダーカットはパターンの特性に影響を及ぼすようになる。例えば、アンダーカット量が10マイクロメートルであることを条件として、現像によって、100マイクロメートルのパターン幅は90マイクロメートルに低減される。同じ前提のもとで、30マイクロメートルのパターン幅は20マイクロメートルに低減される。パターンが伝導性層である場合、パターン幅がこのように大きく変化すると、伝導性パターンと隣接する基板との間の接触面積が減少することになり、抵抗が増大することを意味する。さらに、アンダーカットによって引き起こされるパターンと基板との間の接触面積の減少は、接着力の低下を生じ、電気製品の欠陥を招く。
【0005】
ちなみに、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面パネルは、典型的には、パネルのコントラストを改善するために白色電極および黒色電極が積層されている2層構造のバス電極を有する。典型的な構造は、PDPを視聴者の側から、前面ガラス/透明電極/黒色電極/白色電極である。この構造において、黒色電極のアンダーカットが大きい場合、視聴者に白色電極の一部分が見える可能性があり、コントラストの低下が生じる。
【0006】
感光性ペーストで使用される従来のモノマーとして、ヘキサンジオールトリアクリレートやエチレングリコールジアクリレートなどのエチレン性不飽和モノマーが広く使用される(米国特許第6790596号、米国特許第6749994号、米国特許第6132937号、米国特許第6197480号を参照のこと)。現像時のアンダーカットを低減させた感光性ペーストを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リン含有モノマーを感光性ペーストのモノマーとして使用することによって、アンダーカットを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明の態様は、感光性ペーストであって、ガラスフリット;有機バインダー;重合性モノマー;光重合開始剤;および有機溶媒を含み、重合性モノマーの少なくとも一部分は構造内にリン原子を含有する感光性ペーストである。
【0009】
本発明の別の態様は、電気デバイスのパターンを製造する方法であって、ガラスフリット;有機バインダー;重合性モノマー;光重合開始剤;および有機溶媒を含む感光性ペーストをコーティングするステップであって、重合性モノマーの少なくとも一部分は構造内にリン原子を含有するステップと;コーティングしたペーストを乾燥するステップと;コーティングしたペーストを露光して、重合を選択的に進行させるステップと;コーティングしたペーストを現像して、パターンを形成するステップと;得られたパターンを焼成するステップとを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ACプラズマディスプレイパネルデバイスを概略的に示す斜視展開図である。
【図2】透明電極を有するガラス基板上に2層構造のバス電極を生成する一連のプロセスを示す。各図は、(A)黒色バス電極形成用ペーストを塗布する段階、(B)白色電極形成用ペーストを塗布する段階、(C)所与のパターンを露光する段階、(D)現像段階、および(E)焼結段階を示す。
【図3】リンモノマーの含有量とアンダーカット量の関係を示すグラフである。
【図4】リン含有モノマーの含有量と剥がれ欠陥量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、改良された感光性ペーストに関する。本発明の感光性ペーストは、伝導性または絶縁性とすることができ、伝導および絶縁の目的で使用することができる。伝導性ペーストを使用して、微細な電極パターン、微細な伝導性パターン、または他のこのようなパターニング用途を形成することができる。絶縁ペーストを使用して、微細な抵抗パターン、微細な絶縁パターン、誘電パターンなどが形成される。
【0012】
感光性ペーストの成分は、ペーストの用途に依存する。電極用伝導性ペーストは、主成分として典型的には銀粉末などの伝導性成分を含む。一方、絶縁ペーストは、主成分として典型的にはガラスフリットを含む。各用途向けの成分の典型的な含有量を以下に示す。
【0013】
感光性伝導性ペースト中の各成分の好ましい含有量を以下に示す。以下の含有量で各成分を含有する感光性ペーストを、PDPなどの電気デバイスにおいて電極パターンを形成するのに使用することができる。
【0014】
伝導性粉末の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは50〜75重量%、より好ましくは60〜75重量%である。ガラスフリットの含有量は、感光性ペーストの全重量を基準にして好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。有機バインダーの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜15重量%である。重合性モノマーの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%である。光重合開始剤の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜8重量%である。有機溶媒の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは5〜15重量%、より好ましくは7〜10重量%である。
【0015】
コントラストをより良くする目的で形成されるPDP黒色電極用のペースト中の各成分の好ましい含有量を以下に示す。
【0016】
黒色顔料の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは5〜20重量%、より好ましくは8〜15重量%である。ガラスフリットの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは15〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。有機バインダーの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%である。重合性モノマーの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは3〜12重量%、より好ましくは5〜10重量%である。光重合開始剤の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは1〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%である。有機溶媒の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは10〜25重量%、より好ましくは15〜22重量%である。
【0017】
黒色バス電極における伝導性粉末の含有量は、黒色顔料の伝導性および目的に依存する。例えば、ルテニウム酸化物またはルテニウムパイロクロアなどのある程度の伝導性を有する黒色顔料が、PDPの黒色バス電極を形成するのに使用される場合、添加される伝導性粉末の含有量は0とすることができる。上記の背景を考慮すると、黒色バス電極用ペースト中の好ましい含有量は以下の通りである。
【0018】
伝導性粉末の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは0〜1.5重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0019】
感光性伝導性ペースト中の各成分の好ましい含有量を以下に示す。以下の含有量で各成分を含有する感光性ペーストを、PDPなどの電気デバイスにおいて電極パターンを形成するのに使用することができる。
【0020】
ガラスフリットの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%である。有機バインダーの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは5〜20重量%、より好ましくは7〜15重量%である。重合性モノマーの含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは3〜12重量%、より好ましくは5〜10重量%である。光重合開始剤の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%である。有機溶媒の含有量は、感光性ペーストの全量を基準にして好ましくは5〜20重量%、より好ましくは7〜15重量%である。
【0021】
本発明における伝導性組成物の構成要素を、まず順を追って説明する。しかし、ペーストは、ペーストの使用に応じて、以下の成分のうちの必要な成分を必要量で含む。本発明のペーストは、必ずしも以下の成分をすべて含むわけではない。例えば、伝導性粉末は、通常、絶縁ペースト中には含まれない。
【0022】
(A)伝導性粉末
伝導性金属粉末は、本発明のペーストから形成されたパターンに伝導性を付与する。このような伝導性金属としては、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、またはそれらの合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金、Ag−Pt−Pd合金、Pt−Pd合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。コストおよび効果の点から、合金は、好ましくはAg−Pd合金、Ag−Pt−Pd合金、またはPt−Pd合金、より好ましくはAg−Pd合金である。コアシェル型粉末を使用することができる。コアシェル粉末の例としては、銀または金でコーティングされた銅、ニッケル、アルミニウム、およびタングステンが挙げられる。好ましい金属粉末は、金、銀、パラジウム、白金、銅、およびそれらの組合せからなる群から選択される。最も好ましい金属粉末は銀である。銀は一般に入手可能であり、かつ安価である。銀の焼結温度は、金のような他の金属に比べて、比較的低い。さらに、空気条件下などの酸素を含む雰囲気下で、銀金属を焼結することが可能である。
【0023】
本発明の組成物中では、球状粉末およびフレーク(棒、円錐、および板)を含めて、事実上どんな形状の金属粉末を使用してもよい。好ましい形状は球状である。というのは、球状粉末が、他の形状より比較的良好な充填比およびUV透過性を有するからである。
【0024】
伝導性粉末は、0.1から10.0マイクロメートルに及ぶ平均粒径(PSD D50)を有する。平均粒径(PSD D50)が10.0マイクロメートルより大きいとき、パターン中の欠陥数は増加する傾向がある。平均粒径(PSD D50)が0.1マイクロメートル未満であるとき、ペーストの分散および露光感度が不十分である傾向がある。ここで、平均粒径(PSD D50)は、粒径分布が調製されたとき、粒子数の積算値の50%に対応する粒径を意味する。粒径分布は、MicrotracによるX100などの市販の測定装置を使用して決定することができる。
【0025】
伝導性粉末は、0.3から2m2/gに及ぶ比表面積を有する。上記の範囲内では、焼成皮膜パターンの直線路が優れている傾向があり、ペーストの分散および露光感度も優れている傾向がある。
【0026】
(B)ガラス粉末(ガラスフリット)
ガラス粉末は、形成されたパターン中の成分のバインダーとして働く。本発明において使用されるガラス粉末は特に限定されるものではない。基板と接着するように十分低い軟化点を有する粉末が、通常使用される。
【0027】
ガラス粉末の軟化点は、通常325から700℃、好ましくは350から650℃、より好ましくは375から600℃である。溶融が325℃より低い温度で起こる場合、有機物質は包み込まれる傾向があり、その後に有機物質が分解することによって、ブリスターがペースト中で生成される。一方、700℃を超える軟化点は、ペーストの接着を弱め、ガラス基板を損傷する可能性がある。
【0028】
ガラス粉末のタイプとしては、ビスマス系ガラス粉末、ホウ酸系ガラス粉末、リン系ガラス粉末、Zn−B系ガラス粉末、および鉛系ガラス粉末が挙げられる。環境にかかる負担を考慮すると、鉛不含ガラス粉末の使用が好ましい。
【0029】
ガラス粉末は、当技術分野で周知である方法で調製することができる。例えば、ガラス成分は、オキシド、ヒドロキシド、カーボネートなどの原材料を混合および溶融し、クエンチすることによってカレットに作製し、続いて機械的に微粉砕(湿式または乾式粉砕)することによって調製することができる。その後、必要に応じて、所望の粒径に分級する。
【0030】
ガラス粉末の比表面積は、10m2/g以下であることが好ましい。ガラス粉末の少なくとも90重量%が0.4から10μmの粒径を有することが好ましい。
【0031】
(C)有機バインダー
有機バインダーを使用して、伝導性粉末、ガラス粉末、および黒色顔料などの構成要素が組成物中に分散することを可能にする。有機バインダーは、高温の焼結プロセスにおいて燃焼除去される。
【0032】
本発明の組成物を使用して、感光性組成物を生成するとき、有機バインダーを選択する際に水性系中での現像を考慮することが好ましい。高分解能のものを選択することが好ましい。
【0033】
有機バインダーの例としては、(1)C1〜C10アルキルアクリレート、C1〜C10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、またはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーと、(2)エチレン性不飽和カルボン酸含有成分を含む酸性コモノマーとから調製されたコポリマーが挙げられる。酸性コモノマーがペースト中に存在するとき、酸性官能基によって、0.8%炭酸ナトリウム水溶液などの塩基水溶液中での現像が可能になる。酸性コモノマー含有量は、ポリマーの重量を基準にして15から30重量%であることが好ましい。
【0034】
酸性コモノマー量がより低いと、塗布したペーストの塩基水溶液による現像が困難になる可能性があり、一方酸性コモノマーが多すぎると、現像条件下でペーストの安定性が低下し、それによって、像が形成されるべき領域で部分現像しか行われない可能性がある。
【0035】
適当な酸性コモノマーとしては、(1)アクリル酸、メタクリル酸、またはクロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;(2)フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルコハク酸、およびマレイン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸;(3)(1)および(2)のヘミエステル;ならびに(4)(1)および(2)の無水物が挙げられる。2種以上の酸性コモノマーを同時に使用してもよい。低酸素雰囲気中での可燃性を考慮して、メタクリル系ポリマーがアクリル系ポリマーより望ましい。
【0036】
非酸性コモノマーが上記のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートであるとき、非酸性コモノマーは、ポリマーの重量を基準にして70から75重量%であることが好ましい。非酸性コモノマーがスチレンまたは置換スチレンであるとき、非酸性コモノマーは、ポリマーの重量を基準にして約50重量%を占めることが好ましく、残りの50重量%は、無水マレイン酸のヘミエステルなどの酸無水物であることが好ましい。α−メチルスチレンが好ましい置換スチレンである。
【0037】
有機バインダーは、ポリマー分野において周知の技法を使用して生成することができる。例えば、酸性コモノマーを、比較的低沸点(75から150℃)の有機溶媒中で1つまたは複数の共重合性非酸性コモノマーと混合して、10から60%モノマー混合物を得ることができる。次いで、得られたモノマーに重合触媒を添加することによって、重合が起こる。得られた混合物を溶媒の還流温度に加熱する。ポリマー反応が実質的に完了すると、得られたポリマー溶液を室温に冷却して、試料を回収する。
【0038】
有機バインダーの分子量は特に限定されるものではないが、好ましくは50,000未満、より好ましくは25,000未満、さらにより好ましくは15,000未満である。
【0039】
本発明の伝導性組成物をスクリーン印刷で塗布するとき、有機バインダーのTg(ガラス転移温度)は40℃を超えることが好ましい。その温度を下回るTgのバインダーは、一般に、スクリーン印刷後にペーストが乾燥すると接着性の高いペーストを生じる。スクリーン印刷以外の手段で塗布される材料の場合には、より低いガラス転移温度を用いることができる。
【0040】
(D)有機溶媒
有機溶媒を使用する主な目的は、組成物に含まれている固体の分散液を基板に容易に塗布することを可能にすることである。したがって、有機溶媒は、まず第一に、固体が適当な安定性を維持しながら分散するのを可能にするものであることが好ましい。次に、有機溶媒のレオロジー特性は、分散液に好適な塗布特性を与えることが好ましい。
【0041】
有機溶媒は、単一成分でも、有機溶媒の混合物でもよい。選択される有機溶媒は、ポリマーおよび他の有機成分が完全溶解することができるものであることが好ましい。選択される有機溶媒は、組成物中の他の材料を基準にして不活性であることが好ましい。有機溶媒は、十分に高い揮発性を有することが好ましく、雰囲気中、比較的低い温度で塗布されるときでさえ分散液から蒸発除去できることが好ましい。溶媒は、スクリーン上のペーストが、印刷プロセス時に通常の温度で急速に乾燥するほど揮発性でないことが好ましい。
【0042】
有機溶媒の沸点は、通常の圧力において300℃以下、好ましくは250℃以下であることが好ましい。
【0043】
有機溶媒の具体例としては、酢酸エステルまたはプロピオン酸エステルなどの脂肪族アルコールおよびそのアルコールのエステル;ターペンタイン、α−もしくはβ−テルピネオール、またはそれらの混合物などのテルペン;エチレングリコールモノブチルエーテルまたはブチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールまたはエチレングリコールのエステル;ブチルカルビトールアセテートやカルビトールアセテートなどのブチルカルビトールまたはカルビトールのエステル;およびテキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)が挙げられる。
【0044】
(E)黒色顔料
形成されたパターンの黒度を確実にするように、黒色顔料を使用する。例えば、PDPバス電極の黒色層用ペーストは黒色顔料を含有して、ディスプレイのコントラストを改善する。
【0045】
本発明における黒色顔料は特に限定されるものではない。例としては、Co34、クロム−銅−コバルト酸化物、クロム−銅−マンガン酸化物、クロム−鉄−コバルト酸化物、ルテニウム酸化物、ルテニウムパイロクロア、ランタン酸化物(例えば、La1-xSrxCoO3)、マンガンコバルト酸化物、およびバナジウム酸化物(例えば、V23、V24、V25)が挙げられる。環境にかかる負担、材料コスト、形成されたパターンの黒度および電気的諸特性を考慮すると、Co34(四酸化三コバルト)が好ましい。2種以上を使用してもよい。
【0046】
(F)光重合開始剤
望ましい光開始剤は、熱的に不活性であるが、185℃以下の温度で化学線に露光されるとラジカルを生成するものである。例としては、共役炭素環系中に2個の分子内環を有する化合物が挙げられる。望ましい光開始剤のさらに具体的な例としては、EDAB(4−ジメチルアミノ安息香酸エチル)、DETX(ジエチルチオキサントン)、2−メチル−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセン−5,12−ジオン、および1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオンが挙げられる。
【0047】
使用することができる他の化合物としては、米国特許第2,850,445号、第2,875,047号、第3,074,974号、第3,097,097号、第3,145,104号、第3,427,161号、第3,479,185号、第3,549,367号、および第4,162,162号に記載されているものが挙げられる。
【0048】
(G)光重合性モノマー
本発明は、構造内にリン原子を含むモノマーを含む。このようなモノマーは、現像プロセス時のアンダーカット量を抑制することができる。アンダーカットの抑制は、形成されたパターンに様々な利点をもたらす。その1つは、抵抗の低減によって引き起こされる、電気デバイスの低電力消費である。別の利点は、パターンの先端に関する欠陥率の低下である。
【0049】
リン含有モノマーは、好ましくは以下の構造を有する。
【0050】
【化1】

−R1、−R2、−R3は独立に、−H、アルキル、アリール、またはエチレン性不飽和二重結合を有する架橋基であり、−R1、−R2、および−R3の少なくとも1つは、エチレン性不飽和二重結合を有する。さらに具体的には、架橋基は、次式−(R4)x−C(=O)−C(−R5)=CH2で表される。−R4−は、−CH2CH2O−または−C36O−であり、式中、xは1から9の整数であり、−R5は、−Hまたは−CH3である。
【0051】
リン含有モノマーは、好ましくは重合時にリンカーとして働くことができる2つまたは3つの基を有する。アンダーカット抑制の点から、リン含有モノマーは、重合時にリンカーとして働くことができる3つの基を有することが好ましい。さらに具体的には、上記の構造式のR1、R2、およびR3のいずれも、水素ではなく、R1、R2、およびR3はすべて、エチレン性不飽和二重結合を有する。
【0052】
リン含有モノマーとしては、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、モノ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、ジ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、モノ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシ)プロピルホスフェート、ジ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)ホスフェート、トリ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)ホスフェートが挙げられるが、これに限定されるものではない。2つ以上のリン含有モノマーを組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明のペーストは、リン含有モノマーに加えて、他の重合性モノマーを含むことができる。例えば、エチレン性不飽和モノマーをペーストに含めることができる。
【0054】
他の重合性モノマーは特に限定されるものではない。例としては、少なくとも1つの重合性エチレン基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0055】
単独または他のモノマーと組み合わせて使用することができる望ましい他のモノマーとしては、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、デカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、米国特許第3,380,381号に記載される化合物、米国特許第5,032,490号に開示される化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−1,2−ジ−(p−ヒドロキシエチル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノールAジ−[3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノールAジ−[2−(メタ)アクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ジアリルフマレート、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、モノヒドロキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を示す略語である。上記モノマーは、ポリオキシエチル化またはエチル化などの修飾を受けてもよい。
【0056】
あるいは、上記モノマーのオリゴマーを使用することができる。本明細書では、重合性成分を記述するために「モノマー」を使用する。しかし、このようなオリゴマーが本発明のペースト中で使用される場合、モノマーに関する本明細書の記述をオリゴマーに当てはめることができる。
【0057】
リン含有モノマーと他のモノマーを組み合わせて使用する場合、リン含有モノマーの含有量は、重合性モノマーの全重量を基準にして好ましくは1重量%を超え、より好ましくは1.5重量%を超え、さらにより好ましくは3重量%を超え、さらにより好ましくは5重量%を超え、最も好ましくは6重量%を超える。リン含有モノマーの含有量が多くなれば、アンダーカット量が少なくなる。
【0058】
一方、多すぎる体積のリン含有モノマーをペーストが含有するとき、形成されたパターンは、隣接する基板から現像の条件に応じて除去される可能性がある。非常に厳しい条件が現像に適応されている場合、リン含有モノマーの含有量を調整することが好ましい。具体的には、リン含有モノマーの含有量は、重合性モノマーの全重量を基準にして好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、さらにより好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは8重量%未満、最も好ましくは8重量%未満である。
【0059】
(H)追加の成分
ペーストは、分散剤、安定化剤、可塑剤、ストリッピング剤、消泡剤、湿潤剤などの周知の追加の成分も含むことができる。
【0060】
本発明の第2の態様は、電気デバイスのパターンを製造する方法に関する。本発明の範囲は、PDPに限定されるものではなく、一例としてAC PDP製造プロセスを用いた図を参照して、第2の態様をさらに詳細に記述する。
【0061】
感光性ペーストを使用することによってパターンを形成するプロセスは、最終生成物に関係なく、基本的に同様である。すなわち、プロセスは、ペーストのコーティング、乾燥、露光、現像、および焼成を含む。最適化条件は、用途ごとに異なるが、基本的な手順は同様であり、各用途における好ましい条件は周知である。以下の記述において、説明のためにPDPバス電極の製造プロセスを使用する。しかし、従来の知識に基づいて、製造条件をペーストのタイプに応じて最適化することは実に明らかである。
【0062】
図1は、2層構造を有するバス電極を含むAC PDPデバイスの構造を示す。図1に示すように、AC PDPの前面パネルは、以下の構造要素:ガラス基板5、ガラス基板5に形成された透明電極1、透明電極1に形成された黒色バス電極10、および黒色バス電極10に形成された白色電極7を有する。誘電コーティング層(透明オーバーグレーズ層)(TOG)8およびMgOコーティング層11は、一般に白色電極7上に形成される。本発明の伝導性組成物を使用して、黒色バス電極10を生成する。
【0063】
AC PDPの後面パネルは、以下の構造要素:誘電基板6、イオン化ガスが充填された放電空間3、透明電極1に平行した第2の電極(アドレス電極)2、および放電空間を分割する隔壁4を有する。透明電極1および第2の電極2は、放電空間3の両側で互いに向き合っている。
【0064】
黒色バス電極10および白色電極7は、以下のように形成される。まず、あるパターンが露光により形成される。露光された部分で、重合反応が進行し、現像液への溶解性が変更する。パターンを塩基性水溶液中で現像する。次いで、高温で焼結することによって、有機部分がなくなる一方、無機物質は焼結される。黒色バス電極10および白色電極7は、同じまたは非常に異なる像を用いてパターン形成される。最後に、焼結された高伝導性の黒色バス電極10および白色電極7を含む電極アセンブリが得られる。電極アセンブリは透明電極1の表面が黒く見え、前面ガラス基板上に配置されたとき、外光の反射が抑制される。図1に示されてはいるが、以下に記載される透明電極1は、本発明のプラズマディスプレイデバイスを形成するときに必要でない。
【0065】
PDPの前面パネルにバス電極を生成する方法を、以下に詳述する。
【0066】
図2に示すように、本発明の第1の実施形態のバス電極を形成する方法は、一連のプロセスを含む(図2A〜2E)。
【0067】
当業者に周知の従来の方法に従って、SnO2またはITOを使用して、透明電極1をガラス基板5に形成する。透明電極は、通常SnO2またはITOで形成される。これらは、イオンスパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、または電着技法で形成することができる。このような透明電極の構造および形成方法は、AC PDP技術分野で周知である。
【0068】
次いで、本発明における黒色バス電極用の伝導性組成物を使用して、電極ペースト層10を塗布し、次いで黒色電極ペースト層10を窒素または空気中で乾燥する(図2A)。
【0069】
次いで、白色電極を形成するための感光性厚膜導体ペースト7を、黒色電極ペースト層10上に塗布する。次いで、白色電極ペースト層7を窒素または空気中で乾燥する(図2B)。
【0070】
本発明のペーストは、白色電極用ペーストとして使用することができる。白色電極ペーストは、周知のまたは市販の感光性厚膜導体ペーストとすることができる。本発明で使用するための望ましいペーストは、銀粒子、ガラス粉末、光開始剤、モノマー、有機バインダー、および有機溶媒を含有してもよい。銀粒子形状は、ランダム状フレークまたは薄フレークとすることができ、好ましくは粒径が0.3から10μmである。ガラス粉末、光開始剤、モノマー、有機バインダー、および有機溶媒成分は、黒色バス電極用の組成物中で使用される材料と同じ材料とすることができる。しかし、成分の量はかなり異なる。伝導性銀粒子をブレンドさせる量は特に、白色電極ペーストの場合の方が多く、ペーストの全重量を基準にして約50から90重量%などである。
【0071】
黒色電極ペースト層10および白色電極ペースト層7を、現像後に適切な電極パターンが形成されるような条件下で露光する。露光時に、材料を、通常黒色バス電極および白色電極のパターンに対応する形状を有するターゲット13またはフォトツールを介してUV線に露光させる(図2C)。
【0072】
黒色電極ペースト層10および白色電極ペースト層7の露光された部分(10a、7a)を、0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液または別のアルカリ性水溶液などの塩基性水溶液中で現像する。このプロセスにおいて、層10および層7の露光されていない部分(10b、7b)を除去する。露光された部分10aおよび7aは残存する(図2D)。次いで、現像後のパターンが形成される。
【0073】
形成された材料を450から650℃の温度で焼成する(図2E)。この段階で、ガラス粉末は溶融し、基板にしっかりと結合される。焼結温度は、基板材料に応じて選択される。本発明において、貴金属含有合金を黒色バス電極の伝導性成分として使用し、約600℃で焼結を行うことができる。上記に指摘したように、その理由は、PDP黒色バス電極において垂直方向の伝導を確実にすることである。より低い温度で焼結することも好ましい。というのは、高温で焼結すると、Ag拡散が増大する傾向があるからである。
【0074】
図2における方法で生成された前面パネルガラス基板アセンブリを、AC PDP中で使用することができる。図1に戻って、例えば透明電極1、黒色バス電極10、および白色電極7が前面パネルガラス基板5に形成された後、前面ガラス基板アセンブリを、誘電体層8、次いでMgO層11でコーティングする。次いで、前面パネルガラス基板5を後面パネルガラス基板6と組み合わせる。
【実施例】
【0075】
本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。実施例は例示の目的にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0076】
(A)リン含有の効果に関する試験
1.有機成分の調製
有機溶媒としてテキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)および有機バインダーとして分子量6,000から7,000のアクリル系ポリマーバインダーを混合し、混合物を、撹拌しながら100℃に加熱した。混合物を、有機バインダーのすべてが溶解するまで加熱撹拌した。得られた溶液を75℃に冷却した。EDAB(4−ジメチルアミノ安息香酸エチル)、DETX(ジエチルチオキサントン)、およびChiba Specialty ChemicalsによるMMPMP(2−メチル−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン)を光重合開始剤として添加し、TAOBN(1,4,4−トリメチル−2,3−ジアザビシクロ[3.2.2]−ノナ−2−エン−N,N−ジオキシド)を安定化剤として添加した。固体がすべて溶解するまで、混合物を75℃で撹拌した。溶液を40ミクロンのフィルターに通して濾過し、冷却した。
【0077】
2.黒色電極ペーストの調製
ペーストを調製するために、リン酸モノマー(トリ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェートまたはトリ−[アクリロイルトリ(オキシエチル)]ホスフェート)、およびBASFによるLaromer(登録商標)LR8967(エポキシ含有アクリレート架橋剤)、ならびに安定化剤として0.17重量%のブチル化ヒドロキシトルエンおよび0.42重量%のマロン酸を、混合槽中、黄色灯下で45重量%の上記有機成分と混合した。次いで、黒色顔料として12.67重量%の酸化コバルト(Co34)、伝導性粉末、および31.5重量%のガラス粉末を、有機成分混合物に添加した。0.1重量%のAg−Pd合金(FerroによるK8015−15:銀85%/パラジウム15%の粉末)を伝導性粉末として使用した。リン酸モノマーおよびLaromer(登録商標)LR8967のタイプおよび量を、表2および表3に示すように変更した。リン含有モノマーの量(重量%)は、添加されたモノマーの全量を基準にしたものである。
【0078】
ペースト全体を、無機材料の粒子が有機材料で湿潤するまで混合した。3本ロールミルを使用して、混合物を分散した。得られたペーストを20μmのフィルターに通して濾過した。この時点におけるペーストの粘度を、テキサノール(有機溶媒)で、印刷するのに理想の粘度に調整した。
【0079】
ペースト中の成分の量を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
3.白色電極ペーストの調製
ペーストを調製するために、TMPEOTA(トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート)からなる光重合性モノマー、ならびに0.12重量%のブチル化ヒドロキシトルエン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、BHT)、0.11重量%のマロン酸、および消泡剤としてBYKによる0.12重量%のBYK085を、混合槽中、黄色灯下で24.19重量%の上記有機成分と混合した。ガラスフリットおよび70重量%の伝導性球状粒子のAg粉末を無機材料として、有機成分の混合物に添加した。ペースト全体を、無機材料の粒子が有機材料で湿潤するまで混合した。3本ロールミルを使用して、混合物を分散した。得られたペーストを30μmのフィルターに通して濾過した。この時点におけるペーストの粘度を、上記のテキサノール溶媒で、印刷するのに理想の粘度に調整した。
【0082】
4.電極の調製
ペーストの調製時および部品の製造時にほこりによる汚染が欠陥をもたらすはずであるので、ほこりによる汚染を回避する予防策が取られた。
【0083】
4−1:黒色バス電極の形成
200から400メッシュスクリーンを使用したスクリーン印刷で、黒色電極ペーストをガラス基板に塗布した。適当なスクリーンおよび黒色電極ペーストの粘度を、所望の膜厚が得られるように選択した。ペーストを、透明電極(薄膜ITO)が形成されたガラス基板に塗布した。次いで、乾燥膜厚4.5から5.0μmの黒色バス電極を形成するために、ペーストを熱風循環炉中100℃で20分間乾燥した。
【0084】
4−2:白色電極の形成
黒色電極を被覆するために、400メッシュスクリーンを使用したスクリーン印刷で、白色電極ペーストを塗布した。これを再び100℃で20分間乾燥した。乾燥した2層構造の厚さは12.5から15μmであった。
【0085】
4−3:UV線パターン露光
平行UV線源(照度:18から20mW/cm2;露光:200mj/cm2)を使用して、フォトツールを介して2層構造を露光した。
【0086】
4−4:現像
露光された試料をコンベヤーに載せ、次いで現像液として0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液を充填したスプレー式現像装置に入れた。現像液を30℃の温度で維持し、10から20psiでスプレーした。試料を12秒間現像した。過剰の水をエアジェットで吹き飛ばすことによって、現像した試料を乾燥した。
【0087】
4−5:焼結
1.5時間のプロファイルを用いて、ベルト炉において空気中で焼結することによって、590℃のピーク温度に到達した(第1の焼結)。
【0088】
4−6:TOGコーティング
次いで、150メッシュステンレス鋼スクリーンを使用して、TOGペーストをスクリーン印刷した。これを再び100℃で20分間乾燥した。2.0時間のプロファイルを用いて、ベルト炉において空気中580℃のピーク温度で、焼結を行った(第2の焼結)。
【0089】
5.評価
5−1:アンダーカット
現像した後、オリンパス(Olympus)によるBX51を使用して、アンダーカットを決定した。アンダーカットが幅広くなると、感光性ペーストの性能が低下する。特に、アンダーカットが幅広くなると、欠陥が増加する。表2および表3、ならびに図3および図4に示すように、リン酸モノマーを使用すれば、非常に小さなアンダーカットを実現することができる。リン酸モノマーによって、優れたアンダーカットがもたらされ、申し分ない接着性能が得られた。
【0090】
5−2:接着性能
現像した後、ガラス基板と黒色電極との間の接着度を決定した。基板と黒色電極との間の接着度を決定するために、オリンパス(Olympus)によるBX51を使用することによって、剥がれライン数を計数して決定した。実際の条件より厳しい条件を使用して、接着性能を評価した。
【0091】
剥がれライン数が増加すると、接着性能が低下する。表2および表3、ならびに図3および図4に示すように、リン酸モノマーを使用すれば、非常に少ない剥がれラインを実現することができる。リン酸モノマーによって、ガラス基板と黒色電極との間で優れた接着がもたらされ、申し分ない接着性能が得られた。実験から判断すると、1.0重量%から10重量%が、改善された範囲である。特に、5重量%で剥がれラインが認められなかった。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性ペーストであって、ガラスフリット;有機バインダー;重合性モノマー;光重合開始剤;および有機溶媒を含み、重合性モノマーの少なくとも一部分は構造内にリン原子を含有する感光性ペースト。
【請求項2】
伝導性粉末をさらに含む、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項3】
感光性ペーストの全重量を基準にして、伝導性粉末の含有量が50〜75重量%であり、ガラスフリットの含有量が0.5〜10重量%であり、有機バインダーの含有量が5〜25重量%であり、重合性モノマーの含有量が1〜15重量%であり、光重合開始剤の含有量が3〜15重量%であり、有機溶媒の含有量が5〜15重量%である、請求項2に記載の感光性ペースト。
【請求項4】
黒色顔料、および任意選択により伝導性粉末をさらに含む、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項5】
感光性ペーストの全量を基準にして、伝導性粉末の含有量が0〜1.5重量%であり、黒色顔料の含有量が5〜20重量%であり、ガラスフリットの含有量が15〜40重量%であり、有機バインダーの含有量が5〜20重量%であり、重合性モノマーの含有量が3〜12重量%であり、光重合開始剤の含有量が5〜15重量%であり、有機溶媒の含有量が10〜25重量%である、請求項4に記載の感光性ペースト。
【請求項6】
感光性ペーストが絶縁ペーストであり、かつ感光性ペーストの全量を基準にして、ガラスフリットの含有量が20〜80重量%であり、有機バインダーの含有量が5〜20重量%であり、重合性モノマーの含有量が3〜12重量%であり、光重合開始剤の含有量が0.1〜10重量%であり、有機溶媒の含有量が5〜20重量%である、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項7】
重合性モノマーが次式:
【化1】

(式中、−R1、−R2、−R3は独立に、−H、アルキル、アリール、またはエチレン性不飽和二重結合を有する架橋基であり、−R1、−R2、および−R3の少なくとも1つが、エチレン性不飽和二重結合を有する)
を有する、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項8】
重合性モノマーが、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、モノ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、ジ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、モノ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシ)プロピルホスフェート、ジ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)ホスフェートおよびトリ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)ホスフェートからなる群から選択される、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項9】
重合性モノマーの全重量を基準として1〜10重量%の重合性モノマーが、構造内にリン原子を含有する、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項10】
電気デバイスのパターンを製造する方法であって、
ガラスフリット;有機バインダー;重合性モノマー;光重合開始剤;および有機溶媒を含む感光性ペーストをコーティングするステップであって、重合性モノマーの少なくとも一部分は構造内にリン原子を含有するステップと;
コーティングしたペーストを乾燥するステップと;
コーティングしたペーストを露光して、重合を選択的に進行させるステップと;
コーティングしたペーストを現像して、パターンを形成するステップと;
得られたパターンを焼成するステップと
を含む電気デバイスのパターンを製造する方法。
【請求項11】
重合性モノマーが次式:
【化2】

(式中、−R1、−R2、−R3は独立に、−H、アルキル、アリール、またはエチレン性不飽和二重結合を有する架橋基であり、−R1、−R2、および−R3の少なくとも1つが、エチレン性不飽和二重結合を有する)
を有する、請求項10に記載の電気デバイスのパターンを製造する方法。
【請求項12】
重合性モノマーが、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、モノ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、ジ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)ホスフェート、モノ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシ)プロピルホスフェート、ジ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)ホスフェートおよびトリ−(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)ホスフェートからなる群から選択される、請求項10に記載の電気デバイスのパターンを製造する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−524023(P2011−524023A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511839(P2011−511839)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045590
【国際公開番号】WO2009/146400
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】