説明

感光性印刷要素の熱処理方法及び装置

本発明は、感光性要素を処理して、フレキソ印刷版に好適なレリーフ構造を形成するプロセス及び装置に関する。前記装置は、筐体と、コンベアと、吸収性材料がその上を移動する加熱ローラと、フレキソ印刷版のレリーフ構造を著しく平滑化する又は均一に粗化することができるローラとを含む。事前に選択的に硬化される感光性要素は、吸収性材料を拭取ることにより加熱ローラを用いて現像され、得られるレリーフ構造は、平滑化又は粗化ローラを用いて均一にされる。本方法及び装置により作製されるフレキソ印刷版は、実質的に平滑化又は均一に粗化された刷版表面を必要とするプロセスに特に適し、より高品質な印刷をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性要素を熱処理して、フレキソ印刷に好適なレリーフ構造を形成するための方法及び装置に関する。前記方法及び装置により製造されるフレキソ印刷版は、実質的に平滑な又は均一に粗化された印刷版表面を必要とする方法に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、紙、版紙素材、段ボール、フィルム、フォイル、及び合版等の多様な基体への印刷に一般的に用いられる方法である。新聞、及び紙コップが主な例として挙げられる。フレキソ印刷版は、画像要素が開口領域に盛り上がった凸版である。そのような版は、主にその耐久性及び製造容易性により、多くの長所をプリンターにもたらす。
【0003】
感光性要素は、一般的に、支持体とカバーシート又は複数のカバー要素との間に介在する光重合性組成物の層(1又は複数)を有する。化学線に像様露光されると、露光領域で光重合性層の重合又は光硬化が生じる。次に、これら版を現像することが必要であり、前記版を溶媒又は水性流出で処理して、光重合性層の非露光領域を除去し、フレキソ印刷に用いることができる印刷レリーフを残すことが一般的に知られている。或いは、「乾燥」熱現像を利用することが当該技術分野において知られており、これは、版の重合部分と非重合部分との溶融温度の差を利用して、適切なレリーフ構造を残すものである。
【0004】
多くのフレキソ版製造手順は、高圧水噴霧を用いて印刷版を加工する。これらの系の例は、特許文献1及び2に記載されている。これらのプロセスは、未硬化感光性樹脂の除去に有効であるが、多くの問題点を有する。第1に、このアプローチは、水をプロセスに輸送し、エネルギーを輸送してこの水を加熱するための配管を必要とする。また、このプロセスでは廃水が生じ、次いでそれを廃棄しなければならない。廃水を廃棄する前に処理が必要であるため、コストがかかることが多い。しかし、本発明にとって最も重要なのは、高圧水噴霧には硬化感光性樹脂の表面を変化させる効果がないことである。また重要なことに、これらフレキソ版の製造手順は、実質的に平滑にするにしろ、均一な表面粗さを有するようにするにしろ、レリーフ構造の表面粗さを正確に制御することができない。
【0005】
「乾燥」熱現像は、フレキソ版の生産において評判を得ているプロセスである。前記プロセスは、高品質な版を生産するユーザフレンドリーなプロセスである。このプロセスの基本パラメータは、特許文献3に記載されているように、当該技術分野において周知である。これらのプロセスにより、現像溶媒と、溶媒の除去に必要な長い乾燥時間とを省くことができる。レリーフ構造を形成するために、乾燥拭取を用いて、未硬化及び融解した感光性樹脂を除去し、溶融温度の高い硬化感光性樹脂を残す。しかし、溶媒現像法と同様に、これらフレキソ版製造手順は、レリーフ構造の表面粗さを効率的に制御することができない。拭取ローラは、未硬化感光性樹脂を除去する機能しか有さず、様々な理由のために、表面構造を確実に変化させることができない。
【0006】
特許文献4及び5は、熱ローラと、加熱された印刷版に接触する吸収性材料とを用いる典型的な熱現像装置について記載している。吸収性材料は、軟化又は液化感光性樹脂をウェブに吸収させる加熱ウェビングからなる。
【0007】
本発明は、先行技術の問題点の多くを克服するフレキソ印刷版の熱系現像の新規系を提供する。
【0008】
本発明は、ローラ、又は硬化感光性樹脂の表面構造を実質的に変化させて、平滑化又は粗化させる、好ましくは均一に平滑化又は均一に粗化させる他の手段の使用を含むフレキソ印刷版を熱現像する新規方法及び装置を目的とする。このローラは、既に言及した拭取ローラの前又は後(好ましくは後)に配置することができ、TEFLON(登録商標)又はゴム等の弾性表面によるコーティングが施されてもよく、施されなくてもよい。先行技術の熱現像系とは異なり、本発明の系は、均一な印刷に役立つ、レリーフ構造の実質的に均一な表面構造を達成する。
【0009】
本発明はまた、先行技術の多くの問題点を克服するフレキソ印刷版の溶媒系現像のための新規系を提供する。硬化及び未硬化感光性要素に水又は他の溶媒を噴霧しても、レリーフ構造の表面構造を確実に変化させることができない。熱現像と同様に、溶媒系現像は、未硬化感光性樹脂の除去を助けるのみであり、版のレリーフ構造の実質的な平滑化又は均一な粗化に対する効果は有しない。
【0010】
更に、消費者は、熱現像及び溶媒を用いる現像のいずれにも好適なフレキソ印刷要素を要求することが多い。しかし、これら2つの方法により形成されるレリーフ構造の表面が必ずしも類似している訳ではなく、これらの差により、特に熱及び溶媒現像印刷版の両方を用いて同じパターンを印刷する場合、コーティングの一貫性がなくなる。拭取系を含まないが、レリーフ構造の表面構造の改善を助けるローラを追加すると、先行技術の問題点が克服される。これを用いて、印刷版のレリーフ構造を平滑化することができるため、画像が印刷されるとき、行われた現像の種類にかかわらず画像が均一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,196,018号明細書(Inoko等)
【特許文献2】米国特許第4,081,815号明細書(Horner等)
【特許文献3】米国特許第5,175,072号明細書(Martens)
【特許文献4】米国特許第5,279,697号明細書(Peterson等)
【特許文献5】米国特許第7,241,124号明細書(Roberts等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、得られるレリーフ構造が均一、好ましくは平滑であって、より効率よく且つ高品質な印刷が得られるように、感光性要素を処理できる熱又は溶媒に基づく現像系を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、印刷の際、効率よく、細かく、且つ高品質な画像を得るために、レリーフ構造が高度に均一且つ平滑であることが必要とされる、感光性フレキソ印刷版の製造で用いることができる熱現像系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明の系は、一般的に、感光性印刷要素がコンベアの連続ループ上に配置される連続ループを含むコンベアと;前記コンベア上に配置される感光性印刷要素に向かって駆動されうる加熱ローラであって、加熱ローラの外側表面の少なくとも一部を吸収性材料が移動し、前記吸収性材料が、加熱ローラが加熱され回転するとき感光性印刷要素から液化又は軟化した材料を吸収することができ、且つ前記吸収性材料が感光性印刷要素の少なくとも一部と接触するローラと;前記吸収性材料を前記加熱ローラの外側表面の少なくとも一部に供給する送達手段と;液化又は軟化した材料の少なくとも一部が前記吸収性材料に吸収されるように、前記コンベアと前記加熱ローラとの間の点で少なくとも1つの感光性材料層と前記吸収性材料とを接触させる手段と;前記レリーフ構造が、変形又は亀裂を実質的に含まず、印刷プロセスにおいてインクを均一にコーティングさせるように、感光性印刷要素を平滑化又は粗化する更なる手段と;を含む。
【0015】
好ましい実施形態では、平滑化手段は、TEFLON(登録商標)ゴム又はゴムなどの弾性表面でコーティングされたローラにより提供され、感光性印刷要素は、前記ローラの外側表面上を移動し、前記ローラにより印加される圧力が、レリーフパターン自体を損なわずレリーフ構造を平滑化し、欠陥を修正することができるように前記ローラが加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明を更に理解するために、添付図面に関連して以下の記載を参照する。
【図1】図1は、本発明の熱現像系の概略断面図である。
【0017】
各図面の全ての要素に番号を付す訳ではないが、同じ参照番号を有する要素は全て、類似又は同一の部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この方法及び装置を、溶媒現像プロセスに適用することもできるが、本発明は、平滑化プロセスにおいて熱を使用することが好ましいため、熱現像プロセスとして具現化されることが好ましい。かかるプロセスの1つは、米国特許第7,044,055号(Gotsick等)に記載されている。
【0019】
図1に示すように、本発明は、感光性印刷要素1上にレリーフ像を形成する装置21及び方法に関する。装置(刷版プロセッサ)21は、刷版の熱処理系の要素を収容するための筐体22を含む。
【0020】
刷版プロセッサ21は、事前に形成され像形成されているフレキシブル感光性印刷要素1を受け入れる。該感光性印刷要素は、化学線に選択的に露光され、適切な位置で感光性樹脂を硬化させて、所望のパターンを形成することにより事前に像形成されている。赤外線感知層を用いることが好ましく、前記赤外線感知層を用いて、重合されることが望ましくない感光性要素の領域上にin situマスクを形成する。この層は、現像プロセスで容易に除去されるため、前記層を使用しても本発明には影響しない。本発明で使用できる好適な感光性印刷要素としては、米国特許第5,175,072号(Martens)、同第5,262,275号及び同第6,238,837号(Fan)、並びに同第5,925,500号及び同第6,605,410号(Yang等)に記載されている感光性印刷要素が挙げられ、これらの主題は参照することにより全体が本願に援用される。感光性印刷要素は、フレキシブル基材と、照射硬化層(感光性樹脂層)と、IRアブレーション可能層とを含むことが好ましい。照射硬化層の一部は、基底面を介して化学線により硬化されて、硬化した「フロア」を形成することが好ましい。このフロアは、刷版を安定化させ、レリーフ構造が隆起する基部をもたらす。
【0021】
駆動モータ(図示せず)に取り付けられるコンベア23を用いて、感光性印刷要素1を運搬及び搬送する。該感光性印刷要素1は、基材層がコンベア23側に向き、硬化部及び非硬化部の両方を含む側面がコンベアから見て外側に向くように位置合わせされる。感光性印刷要素は、締結手段2によりコンベア上に保持される。該締結手段2は、クランプ、又はコンベア23上に感光性印刷要素1をしっかりと保持するための任意の他の手段であってもよい。コンベア23は、筐体22の固定位置に実装され、少なくとも第1のローラ3及び第2のローラ4により支持されることが好ましい連続ループを含む。好ましい実施形態では、コンベア23の連続ループは、金網を含む。
【0022】
稼働中、コンベア23は、感光性印刷要素1が、コンベア23と加熱ローラ6との間を通過するように、感光性印刷要素1と共に加熱ローラ6に向かって第1の方向13に動く。第2のローラ4を用いる場合、第2のローラ4は、適切な方向5に回転しなければならず、加熱ローラは、反対方向7に回転しなければならない。加熱ローラ6は、直接コンベア23に近づく方向又はコンベア23から離れる方向に可動可能であることが好ましい。加熱ローラ6は、ピボット(図示せず)上に実装されることが最も好ましく、前記ピボットにより加熱ローラ6はコンベア23に向かって動くことができる。
【0023】
好ましい実施形態では、加熱ローラ6は、空気圧シリンダ12などの好適な手段を用いてコンベア23に向かって動く。コンベア23と加熱ローラ6との間を移動するとき、感光性印刷要素1を所望の通り接触させるために、この空気圧シリンダ12は、加熱ローラ6をコンベア23から特定の距離に位置合わせする。
【0024】
吸収性材料のウェブ14は、加熱ローラ6の表面の少なくとも一部上を移動する。このウェブ14は、感光性印刷要素1から液化又は軟化した材料を吸収することができる。この吸収は、感光性印刷要素1がコンベア23と加熱ローラ6との間を通過するときに行われ、そこで吸収性ウェブ14は感光性印刷要素1と接触した状態で加圧される。この接触は、感光性印刷要素1がコンベア23と加熱ローラ6との間を通過するときにコンベア23及び加熱ローラ6と接触するように、コンベア23と加熱ローラ6との間の隙間が十分狭い位置に空気圧シリンダ12を固定することにより生じる。加熱ローラ6上において感光性印刷要素1とウェブ14とを接触させることにより、感光性印刷要素1の上面の液化又は軟化材料の少なくとも一部が、ウェブ14により吸収され、除去される。
【0025】
感光性材料1の少なくとも一部を軟化又は液化する外温を維持することができるコアヒータにより、加熱ローラ6が加熱される。この温度は、感光性材料の組成に基づいて選択されなければならず、感光性材料に含有されるポリマーの溶融温度に基づくはずである。非重合材料を除去して、重合感光性材料を含むレリーフ構造を作製することが本発明の目的であるため、この温度は、非硬化感光性樹脂の溶融温度以上であるが、硬化感光性樹脂の溶融温度より低くなるように選択すべきである。この加熱ローラの一般的な温度は、100℃〜250℃であるが、この温度も吸収性ウェブ14自体又は基材層の溶融温度を超えてはならない。加熱ローラ6は電気コアヒータを含んで所望の温度をもたらすことが好ましいが、蒸気、油、熱風、及び様々な他の熱源を用いて、所望の温度をもたらしてもよい。
【0026】
吸収性材料ウェブの14は、吸収性材料ウェブの14の供給ローラ8から加熱ローラ6の外面の少なくとも一部に供給される。吸収性材料の具体的な種類は、本発明にとって重要ではない。吸収性材料14の選択は、処理される感光性印刷要素1の厚さ、吸収性材料のウェブ14の溶融温度、並びに感光性印刷要素1及び吸収性材料ウェブの14の双方の伝熱性に部分的に依存する。
【0027】
吸収性材料ウェブ14は、供給ロール8で始まり、巻き取りローラ9で終わる系に沿って移動する。この系全体にわたって吸収性材料ウェブの14の均一な張力を維持するために好適な手段を用いてもよい。かかる手段は、系に沿った様々な箇所に実装されるアイドルローラ11の1以上のセットであってもよい。ウェブの張力を維持するための他の手段を設けてもよく、前記手段は当業者に知られている。吸収性ウェブ14の移動速度は、モータ10により制御することができる。該モータ10は、選択されたウェブの張力に干渉しないよう設定されるべきである。モータが張力に干渉する場合、得られるフレキソ印刷版のレリーフ構造の高さが可変的になり、歪んで販売できなくなる恐れがある。感光性印刷要素1は、モータ10の速度をうまく制御できないときにも類似の変形が生じる恐れがあるため、加熱ローラ6、吸収性材料のウェブ14、及び感光性印刷要素1の線速度を実質的に同じにして、感光性印刷要素1の剪断応力を避けることも重要である。
【0028】
また、系は、筐体22に連結される換気手段(図示せず)を有してもよい。これら手段は、揮発性有機化合物及び他の汚染物質を除去する際に稼働する。これら手段は、当該技術分野において既知であり、米国特許第7,044,055号(Gotsick等)に十分記載されている。感光性印刷要素1の一部を更に軟化及び液化させる更なる加熱手段を設けることもでき、且つ好ましい。かかる手段は、IRヒータ17を含んでもよく、これは、一般的に、吸収性ウェブ14と接触する前に感光性印刷要素1を加熱するために設置される。しかし、吸収性ウェブ14と接触した後に加熱手段を設けることが本発明で好ましい場合もあるため、この加熱手段17は適宜設置してもよい。
【0029】
系は、少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラ19を更に含み、これは吸収性ウェブ14と接触した感光性印刷要素1の側面に接触する。この感光性印刷要素1と接触するローラ19部分は、同時に吸収性ウェブ14とは接触してはならない。従って、感光性印刷要素1の、ウェブに接触する、又は好ましくは接触した側面が、少なくとも1つの平滑化ローラ19の面と接触することになる。この接触は、吸収性ウェブの感光性印刷要素1又はローラ19との接触を伴うべきではない。この更なる接触は、感光性印刷要素が加熱ローラ6及び吸収性ウェブ14と接触する前、又は接触した後のいずれでもよいが、加熱ローラ6と接触した後が好ましい。また、この接触は、系21における別のローラ、又は硬質表面との接触と同時に生じる場合もあり、その結果、感光性印刷要素上の少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラ19の間に圧力がかかるはずである。この硬質表面は、第2の平滑化ローラ19又はコンベア23であってもよい。本発明の目的は、印刷版の算術平均粗さ(「Ra」)が少なくとも5nm変化するように、得られるレリーフ構造の表面粗さを変更するのに十分な圧力及び/又は熱と共にこの接触を生じさせることである。従って、少なくとも5nmの大きさを有するレリーフ構造のRaの変化が、有意な変化として定義される。更なる変化は、また、少なくとも1つの平滑化若しくは粗化ローラ19以外の装置の他の任意の要素、加熱ローラ6、又は任意の吸収性材料14により生じないレリーフ構造の表面の変化を意味すると言われる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラ19との接触は、感光性印刷要素1が加熱ローラ6及び吸収性ウェブ14と接触した後に生じる。その結果、感光性印刷要素1は、少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラ19の外縁部下、好ましくはコンベア23と少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラ19との間を移動する。感光性印刷要素1がコンベアと少なくとも1つの平滑ローラとの間を通過するとき、確実に吸収性ウェブ14とは接触させないことが重要である。
【0031】
任意的に、加熱ローラ6と類似の方法で、少なくとも1つの平滑化ローラを加熱してもよい。しかし、ローラ19は、大部分が平滑化を必要とする感光性印刷要素1の表面と接触するため、少なくとも19を加熱することが好ましいが、必ずしも所望の効果を得られるとは限らない。また、少なくとも1つの(又は複数の)平滑化又は粗化ローラ19に更なる空気圧シリンダを取り付けることが好ましい。好ましい実施形態では、コンベア23と平滑化又は粗化ローラ19との間を移動するとき、感光性印刷要素1に所望の圧力を印加するために、空気圧シリンダ(図示せず)は、平滑化又は粗化ローラ19をコンベア23から特定の距離に位置合わせする。従って、熱及び圧力の組み合わせによって、少なくとも1つの平滑化ローラは、感光性印刷要素1の少なくとも片面の表面粗さを著しく変化させることができる。
【0032】
少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラ19を、弾性表面でコーティングすることも好ましい。弾性表面は、TEFLON(登録商標)(フッ素化ポリマー)、ゴム、又はTEFLON(登録商標)/ゴム複合材を用いることができる。加熱又は非加熱ローラを、かかる表面でコーティングすることは、当業者に周知である。モータ(図示せず)を使用することにより、1以上の平滑化又は粗化ローラ19の回転を駆動することも可能である。少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラとの接触によって、印刷要素の表面の算術平均粗さを少なくとも5nm、好ましくは10nm〜2,000nm、より好ましくは100nm〜1,000nm、最も好ましくは150nm〜600nm変化させる効果が得られるはずである。少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを変化させるだけでなく、印刷要素の表面粗さを均一化させることが好ましい。
【0033】
更に、マイクロプロセッサなどのコントローラを本発明の系で用いて、刷版プロセッサ21における各要素の操作を制御してもよい。かかるコントローラは、当該技術分野において周知である。刷版プロセッサの様々な要素を制御するために用いられるコントローラの一例は、米国特許第5,279,697号(Peterson等)に記載されており、これらの主題は参照することにより全体が本願に援用される。
【0034】
本発明はまた、感光性印刷要素上にレリーフ画像を形成する方法であって、前記感光性印刷要素が、フレキシブル基材と、上記系を用いて前記フレキシブル基材上に形成される少なくとも1つの感光性材料層とを含む方法に関する。
【0035】
前記方法は、(1)筐体を提供する工程と、(2)連続ループを含み、且つ前記連続ループ上に前記感光性印刷要素が支持される搬送手段を提供する工程と、(3)前記筐体に実装した加熱ローラを提供する工程と、(4)前記加熱ローラの少なくとも一部に吸収性材料を提供する工程であって、感光性印刷要素が加熱ローラの一部上の吸収性ウェブと接触するとき、加熱された感光性印刷要素から液化又は軟化した材料を前記吸収性材料が吸収することができる工程と、(5)吸収性材料が存在する箇所で、前記感光性印刷要素を前記加熱ローラと接触させる工程と、(6)加熱ローラと感光性印刷要素とが接触するとき、前記感光性印刷要素の少なくとも一部を液化又は軟化させる温度に、前記加熱ローラを加熱する工程と、(7)加熱ローラと接触した感光性印刷要素の同一側面を少なくとも1つの平滑化ローラに接触させて、感光性印刷要素の表面粗さを更に且つ著しく変化させる工程と、を含む。
【0036】
好ましくは、感光性印刷要素は、前記プロセス工程を通して数回加工され、その結果、全てではないが大部分の非硬化感光性材料を感光性印刷要素の表面から除去することができ、レリーフ像が得られる。印刷要素が加熱ローラと全く接触しない場合、感光性印刷要素を複数回処理し、平滑化又は粗化プロセスのみを行うことも可能であり、且つ好ましい。更に、既に記載された装置の好ましく且つ任意の要素の全てを、この方法で用いることができる。
【0037】
溶媒現像した印刷要素の場合、印刷要素は、先ず画像形成され、次いで印刷要素の非重合領域が選択的に溶解されるが、重合領域を元の状態のままで残す溶媒に曝露することにより現像される。次いで、本発明の装置に印刷要素を供するが、この場合、装置がロール6、8、及び9、並びに吸収性材料14、空気圧シリンダ12、及びモータ10を必要としない。
【0038】
均一なレリーフ構造からはより高品質な印刷が得られるため、平滑化プロセスは、感光性印刷要素の処理に有利である。感光性印刷要素のレリーフ構造を均一に粗化又は平滑化する平滑化ローラ12の表面を提供することにより、芸術的又は審美的に美しい印刷効果を得ることも可能である。
【実施例】
【0039】
提案される本発明のプロセスを、以下の実施例により更に説明するが、これは単に更なる説明を目的とするものであり、如何なる方法でも限定するものではない。
【0040】
(実施例1)
化学線重合部分及び非重合部分を含む、熱現像され得る幾つかの感光性印刷要素を調製する。この目的のために、Digital MAX感光性樹脂印刷要素(マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシーから入手可能)を、IRレーザを用いて所望の像において選択的にアブレーションし、次いでin situマスクを通して紫外線に露光して、重合領域及び非重合領域を作製した。これらの種類の熱現像刷版は、当該技術分野において周知であり、任意のかかる種類の版は本発明に非常に適しており、同等の結果が得られる。感光性樹脂の種類は、通常、重要ではない。
【0041】
これら刷版は、上記好ましい装置を用いて熱現像され、この場合加熱ローラは145℃に加熱される。また、2kwのIRヒータを用いて、印刷要素を予加熱し、非重合領域が除去されるまで前記プロセスを1回〜5回行った。感光性印刷要素は、前記プロセス工程を通して数回処理され、その結果、全てではないが大部分の非硬化感光性材料を感光性印刷要素の表面から除去することができ、レリーフ像が得られる。
【0042】
顕微鏡でレリーフ画像を観察し、標準的な表面形状測定装置を用いて表面をスキャンする。レリーフ構造の算術平均粗さを測定すると、1,333.31nmである。
【0043】
(実施例2)
非コーティング平滑化熱ローラを用い、加熱ローラと吸収性材料との温度を170℃に設定したことを除いて、実施例1と同じ方法で感光性印刷要素を調製及び現像する。平滑化ローラの表面は、平滑であり、170℃に加熱される。感光性印刷要素は、吸収性材料及び加熱ローラと一旦接触した後、平滑化ローラと接触する。実施例1と同様の方法で、レリーフ構造の算術平均粗さを再度測定すると、1,279.69nmである。
【0044】
(実施例3)
印刷要素を平滑化ローラと合計4回連続して接触させることを除いて、実施例2と同様の方法で、感光性印刷要素を調製及び現像する。実施例1と同様の方法でレリーフ構造の算術平均粗さを測定すると、987.14nmである。
【0045】
(実施例4)
4回目に170℃の平滑化ローラを通過させた後、平滑化ローラの温度を180℃に上昇させ、印刷要素をこのローラと更に2回接触させることを除いて、実施例3と同様の方法で感光性印刷要素を調製及び現像する。実施例1と同様の方法でレリーフ構造の算術平均粗さを測定すると、941.34nmである。
【0046】
以下の表は、これまでの実施例の結果を要約するものである。
【表1】

【0047】
従って、吸収性ウェブを含まない少なくとも1つの平滑化ローラの使用は、感光性印刷要素のレリーフ構造を著しく変化させ得ることが分かる。平滑化ローラを通過する温度及び反復数は、プロセスに大きな影響を与える因子である。平滑化ローラを複数回通過させることが好ましいと思われるため、感光性印刷要素を処理するために連続して並ぶ多数の平滑化ローラを含む熱現像装置も考えられる。
【0048】
上記のように本発明の特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなしに多くの変更、修正、及び変形を行い得ることは明らかである。従って、かかる変更、修正、及び変形は全て添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0049】
1 感光性印刷要素
2 締結手段
3 第1のローラ
4 第2のローラ
5 適切な方向
6 加熱ローラ
7 反対方向
8 供給ローラ
9 巻き取りローラ
10 モータ
11 アイドルローラ
12 空気圧シリンダ
13 第1の方向
14 吸収性材料のウェブ
17 加熱手段
19 平滑化又は粗化ローラ
21 刷版プロセッサ
22 筐体
23 コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性印刷要素上にレリーフ構造を形成する装置であって、前記感光性印刷要素が、フレキシブル基材と、前記フレキシブル基材上に存在する少なくとも1層の感光性材料とを含み、前記装置が、
(i)筐体と、
(ii)前記感光性印刷要素が支持され得る連続ループを含む搬送手段と、
(iii)前記筐体に実装された加熱ローラと、
(iv)前記加熱ローラの少なくとも一部を覆い、且つ前記感光性印刷要素が前記加熱ローラの一部上の吸収性ウェブと接触するとき、前記感光性印刷要素から液化又は軟化した材料を吸収することができる吸収性材料と、
(v)前記感光性印刷要素の表面粗さを変化させることができる平滑化又は粗化ローラであって、前記吸収性材料の任意の部分が前記感光性印刷要素と同時に接触する点において、前記吸収性材料と全く接触しない平滑化又は粗化ローラと、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
感光性印刷要素を加熱するための更なる加熱手段を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
加熱ローラの少なくとも一部上において吸収性材料を連続的に搬送する手段を更に含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
印刷要素が加熱ローラと接触する前に、平滑化又は粗化ローラが前記印刷要素と接触し得る請求項1に記載の装置。
【請求項5】
印刷要素が加熱ローラと接触した後に、平滑化又は粗化ローラが前記印刷要素と接触し得る請求項1に記載の装置。
【請求項6】
平滑化又は粗化ローラが加熱され得る請求項1に記載の装置。
【請求項7】
平滑化又は粗化ローラが電気的に加熱される請求項6に記載の装置。
【請求項8】
平滑化又は粗化ローラが弾性表面でコーティングされる請求項1に記載の装置。
【請求項9】
弾性表面がゴムからなる請求項8に記載の装置。
【請求項10】
弾性表面がフッ素化ポリマーからなる請求項8に記載の装置。
【請求項11】
弾性表面がフッ素化ポリマー/ゴム複合材からなる請求項8に記載の装置。
【請求項12】
平滑化又は粗化ローラの効果によって、印刷要素の表面の算術平均粗さが10nm〜2,000nm変化する請求項1に記載の装置。
【請求項13】
平滑化又は粗化ローラの効果によって、印刷要素の表面の算術平均粗さが100nm〜1,000nm変化する請求項1に記載の装置。
【請求項14】
平滑化又は粗化ローラの効果によって、印刷要素の表面の算術平均粗さが150nm〜600nm変化する請求項1に記載の装置。
【請求項15】
平滑化又は粗化ローラが自由に回転する請求項1に記載の装置。
【請求項16】
平滑化又は粗化ローラがモータにより駆動される請求項1に記載の装置。
【請求項17】
平滑化又は粗化ローラの位置を空気圧シリンダが制御する請求項1に記載の装置。
【請求項18】
感光性印刷要素上にレリーフ構造を形成する方法であって、前記感光性印刷要素が、フレキシブル基材と、前記フレキシブル基材上に少なくとも1つの感光性材料層とを含み、前記方法が、
(i)筐体を提供する工程と、
(ii)連続ループを含み、且つ前記連続ループ上に、コンベアと接触するフレキシブル基材により前記感光性印刷要素が支持される搬送手段を提供する工程と、
(iii)前記筐体に実装された加熱ローラを提供する工程と、
(iv)前記加熱ローラの少なくとも一部に吸収性材料を設ける工程であって、前記感光性印刷要素が前記加熱ローラの一部上の前記吸収性材料と接触するとき、前記吸収性材料が、前記感光性印刷要素から液化又は軟化した材料を吸収することができる工程と、
(v)前記搬送手段と前記加熱ローラとの間において、前記感光性印刷要素と前記吸収性材料とを接触させる工程と、
(vi)前記加熱ローラと、前記吸収性材料と、前記感光性印刷要素とが接触するとき、前記感光性印刷要素の少なくとも一部を液化又は軟化させる温度に前記加熱ローラを加熱する工程と、
(vii)前記吸収性材料と接触した前記感光性印刷要素の同一側面と、前記感光性印刷要素の表面粗さを変化させる1つの平滑化又は粗化ローラとを接触させる工程であって、この接触が、前記吸収性材料が前記感光性印刷要素と接触する点では生じない工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
感光性印刷要素を加熱するための更なる加熱手段を提供する工程を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
加熱ローラの少なくとも一部上において、吸収性材料を連続的に搬送する工程を更に含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
印刷要素が加熱ローラと接触する前に、平滑化又は粗化ローラと接触する請求項18に記載の方法。
【請求項22】
印刷要素が加熱ローラと接触した後に、平滑化又は粗化ローラと接触する請求項18に記載の方法。
【請求項23】
平滑化又は粗化ローラが加熱される請求項18に記載の方法。
【請求項24】
平滑化又は粗化ローラが弾性表面でコーティングされる請求項18に記載の方法。
【請求項25】
弾性表面がゴムからなる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
弾性表面がフッ素化ポリマーからなる請求項24に記載の方法。
【請求項27】
弾性表面がフッ素化ポリマー/ゴム複合材からなる請求項24に記載の方法。
【請求項28】
平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを10nm〜2,000nm変化させる請求項18に記載の方法。
【請求項29】
平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを100nm〜1,000nm変化させる請求項18に記載の方法。
【請求項30】
平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを150nm〜6,000nm変化させる請求項18に記載の方法。
【請求項31】
平滑化又は粗化ローラが自由に回転する請求項18に記載の方法。
【請求項32】
平滑化又は粗化ローラがモータにより駆動される請求項18に記載の方法。
【請求項33】
平滑化又は粗化ローラの位置を空気圧シリンダが制御する請求項18に記載の方法。
【請求項34】
感光性印刷要素上にレリーフ構造を形成する方法であって、前記感光性印刷要素が、フレキシブル基材と、前記フレキシブル基材上に少なくとも1つの感光性材料層とを含み、前記方法が、
(i)筐体を提供する工程と、
(ii)連続ループを含み、且つ前記連続ループ上に、コンベアと接触するフレキシブル基材により前記感光性印刷要素が支持される搬送手段を提供する工程と、
(iii)前記フレキシブル基材が前記搬送手段と接触するように、画像形成及び現像された前記感光性印刷要素を、前記搬送手段上において搬送する工程であって、前記フレキシブル基材と反対側の前記感光性印刷要素の面が少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラと接触して、前記感光性印刷要素の表面粗さを変化させ、前記接触が、吸収性材料が前記感光性印刷要素と接触するいずれの点においても生じない工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
少なくとも1つの平滑化又は粗化ローラが加熱される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
平滑化又は粗化ローラが弾性表面でコーティングされる請求項34に記載の方法。
【請求項37】
弾性表面がゴムからなる請求項36に記載の方法。
【請求項38】
弾性表面がフッ素化ポリマーからなる請求項36に記載の方法。
【請求項39】
弾性表面がフッ素化ポリマー/ゴム複合材からなる請求項36に記載の方法。
【請求項40】
平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを10nm〜2,000nm変化させる請求項34に記載の方法。
【請求項41】
平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを100nm〜1,000nm変化させる請求項34に記載の方法。
【請求項42】
平滑化又は粗化ローラが、印刷要素の表面の算術平均粗さを150nm〜6,000nm変化させる請求項34に記載の方法。
【請求項43】
平滑化又は粗化ローラが自由に回転する請求項34に記載の方法。
【請求項44】
平滑化又は粗化ローラがモータにより駆動される請求項34に記載の方法。
【請求項45】
空気圧シリンダが平滑化又は粗化ローラの位置を制御する請求項34に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530088(P2011−530088A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521142(P2011−521142)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046343
【国際公開番号】WO2010/014293
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(506314391)マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー (23)
【Fターム(参考)】