説明

感光性樹脂および樹脂組成物

【課題】現像性、硬化性等の基本特性に優れ、未硬化塗膜物性(タックフリー性、現像性)と硬化塗膜物性(耐水性、耐屈曲性)を両立させた感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
エポキシ樹脂、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物、および不飽和一塩基酸を反応させて得られる硬化性樹脂に、多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂であって、前記エポキシ樹脂として2官能エポキシ樹脂を用い、前記多塩基酸無水物の少なくとも一部として一分子中に複数の酸無水物基を有するものを用いることを特徴とする感光性樹脂と、光重合開始剤を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化させて画像形成することのできる感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成用の感光性樹脂組成物は、写真法(フォトリソグラフィー)の原理を応用することによって微細加工が可能な上に、物性に優れた硬化物を与えて画像を形成できることから、電子部品関係の各種レジスト材料や印刷版等の用途に多用されている。この画像形成用感光性樹脂組成物には溶剤現像型とアルカリ現像型があるが、近年では、環境対策の点から希薄な弱アルカリ水溶液で現像できるアルカリ現像型が主流になっている。
【0003】
画像形成用感光性樹脂組成物を、写真法(フォトリソグラフィー)の工程に用いる場合には、先ず基板上に樹脂組成物を塗布し、続いて加熱乾燥を行って塗膜を形成させた後、この塗膜にパターン形成用フィルムを装着し、露光して、現像するという一連の工程が採用されている。このような工程において、加熱乾燥後の塗膜に粘着性が残存していると、剥離後のパターン形成用フィルムに一部のレジストが付着して正確なパターンの再現ができなくなったり、あるいはパターン形成用フィルムが剥離できない、といった問題があった。このため、光感度も重要ではあるが、塗膜形成後のタックフリー性も画像形成用の感光性樹脂組成物の重要な要求特性であった。また、光硬化後の塗膜には、現像性に加えて、耐熱性や、耐水性、耐湿性等の長期信頼性に関わる特性が求められる。
【0004】
上記各特性をある程度満足するものとして、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるビニルエステル(エポキシアクリレート)に酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したカルボキシル基含有ビニルエステルが知られている。本出願人は、従来からカルボキシル基含有ビニルエステル系感光性樹脂組成物について研究開発を続けており、多数の発明をなしている(例えば、特許文献1〜3)。
【0005】
カルボキシル基含有ビニルエステルは、タックフリー性、光感度、現像性といった相反する特性をバランス良く満足している上に、硬化物に求められる耐熱性や耐水性等の重要特性も比較的良好である。しかしながら、技術の進歩に伴って、さらにハイレベルな特性、例えば、耐屈曲性が求められるようになってきた。
【0006】
この耐屈曲性は、例えば、薄膜基材上に塗膜を形成して光硬化した後に、塗膜を外側にして折り曲げてもクラックが入らない、という特性である。耐屈曲性を良好にするには、感光性樹脂のTgを低めにして樹脂を柔らかめの設計にすることが考えられるが、本発明者等が検討したところ、耐屈曲性は改善されても、硬化前塗膜の現像性が低下してしまうことがあった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−153978号公報
【特許文献2】特開2007−199533号公報
【特許文献3】特開2007−206421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術を考慮して、本発明では、現像性、硬化性等の基本特性に優れ、未硬化塗膜のタックフリー性と硬化塗膜の耐屈曲性とを両立させ、耐水性にも優れた感光性樹脂組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明の感光性樹脂は、エポキシ樹脂、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物、および不飽和一塩基酸を反応させて得られる硬化性樹脂に、多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂であって、前記エポキシ樹脂として2官能エポキシ樹脂を用い、前記多塩基酸無水物の少なくとも一部として一分子中に複数の酸無水物基を有するものを用いることを特徴とする。
【0010】
上記感光性樹脂は酸価が20〜70mgKOH/gであること、上記一分子中に複数の酸無水物機を有する多塩基酸無水物は四塩基酸二無水物であることが好ましい。また、本発明には、上記感光性樹脂と光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物や、この感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、2官能エポキシ樹脂を出発原料とし、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物を反応させて、さらに一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物によって鎖延長することで塗膜が脆くならず、耐屈曲性が向上することを見い出した。
【0012】
また、一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物によってカルボキシル基を導入しつつ鎖延長することとなり、光硬化前のタックフリー性を維持でき、低酸価でもアルカリ現像が良好なことから、硬化塗膜の耐水性に優れることも判明した。
【0013】
従って、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能な画像形成用感光性樹脂組成物として、例えば、エッチングレジスト、無電解メッキレジスト、ビルドアップ法プリント配線板の絶縁層、印刷製版、さらには、カラーフィルターの保護膜、カラーフィルター、ブラックマトリックス、フォトスペーサー等の液晶表示板製造用等の各種の用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の必須成分である感光性樹脂は、2官能エポキシ樹脂、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物、および不飽和一塩基酸および一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物から合成される。すなわち、2官能エポキシ樹脂、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物、および不飽和一塩基酸から得られた硬化性樹脂に対して一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物を反応させることで、硬化性樹脂を鎖延長しつつカルボキシル基を導入して、アルカリ現像型の感光性樹脂を得るものである。
【0015】
アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物を反応させることによって、分子鎖末端にアルコール性ヒドロキシル基を導入し、さらにそれを反応点として一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物で鎖延長する。その結果、硬化前のタックフリー性、アルカリ現像性、硬化物の耐水性、可撓性をバランス良く向上させることができた。
【0016】
本発明の出発原料である2官能エポキシ樹脂としては、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば良く、公知の1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が利用でき、ビスフェノールA型、テトラブロモビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;多価アルコールのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、特に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、あるいは前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の前駆体であるビスフェノール化合物にアルキレンオキサイドを付加させたものである二価アルコール類と、エピクロルヒドリンを反応させて得られるジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェニレン型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
また、これらのエポキシ樹脂の2分子以上を、多塩基酸、ポリフェノール化合物、多官能アミノ化合物あるいは多価チオール等の鎖延長剤との反応によって結合して鎖延長したものも使用できる。
【0018】
これらの中でもビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニレン型エポキシ樹脂が、硬化物物性が特に良好である点で好ましい。
【0019】
また、本発明においては出発原料となるエポキシ樹脂として、1分子中に平均して3個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂を併用して用いてもよい。
【0020】
このようなエポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂であれば特に限定されずに用いることができ、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等の多官能性グリシジルアミン樹脂;テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等の多官能性グリシジルエーテル樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、ナフトール等のフェノール化合物と、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酸でエポキシ化したもの;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環を有するエポキシ樹脂;等が挙げられる。
【0021】
本発明のアルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物とは、フェノール化合物の芳香族環にアルコール性ヒドロキシル基が間接的に結合したものであり、複数のアルコール性ヒドロキシル基またはフェノール性ヒドロキシル基を持っていてもよい。またアルコール性ヒドロキシル基とフェノール性ヒドロキシル基以外に、他の置換基を有していてもよく、さらに、アルコール性ヒドロキシル基を有するナフトール等も含まれるものとする。
【0022】
このようなフェノール化合物の具体例としては、(ビス)ヒドロキシメチルフェノール、(ビス)ヒドロキシメチルクレゾール、ヒドロキシメチル−ジ−t−ブチルフェノール、p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール、p−ヒドロキシフェニル−2−プロパノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール、p−ヒドロキシフェニル−2−ブタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−ブタノール、p−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−2−ブタノール、4−(3−ヒドロキシデシル)−2−メトキシフェノール、ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルフェノールまたはヒドロキシアルキルクレゾール;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸等のカルボキシル基含有フェノール化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等とのエステル化物;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
不飽和一塩基酸は、樹脂中にラジカル重合性二重結合を導入するために用いる。不飽和一塩基酸とは、1個のカルボキシル基と1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する一塩基酸である。具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、β−アクリロキシプロピオン酸、1個のヒドロキシル基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、1個のヒドロキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物等が挙げられる。
【0024】
中でも好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有するものである。これらは、1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
エポキシ樹脂とアルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物および不飽和一塩基酸との反応は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸を反応させ、次いでアルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物を反応させる方法、エポキシ樹脂に対して不飽和一塩基酸とアルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物を同時に反応させる方法、エポキシ樹脂とアルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物を反応させ、次いで不飽和一塩基酸と反応させる方法等があり、いずれを採用してもよい。
【0026】
エポキシ樹脂中のエポキシ基1化学当量に対して、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物は0.01モル以上、0.6モル以下(より好ましくは0.05モル以上、0.5モル以下)で反応させることが好ましく、不飽和一塩基酸は0.4モル以上、0.99モル以下(より好ましくは0.5モル以上、0.95モル以下)で反応させることが好ましい。また、フェノール化合物と不飽和一塩基酸の合計としては、エポキシ基1化学当量に対して、0.8〜1.1モルとするのが好ましい。
【0027】
フェノール化合物を0.01モル以上とすることで可撓性付与効果がより一層発現し、不飽和一塩基酸を0.4モル以上とすることでより良好な硬化性となる。この合計量を1.1モル以下とすることで、未反応で残存するフェノール化合物や不飽和一塩基酸が低減でき、これらの低分子量化合物による硬化物の特性低下を引き起こすことがない。
【0028】
エポキシ樹脂に対するアルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物と不飽和一塩基酸の反応は、前記したように、いずれを先に行っても、同時に反応させてもよい。
【0029】
これらの反応は、後述するラジカル重合性モノマーや溶媒等の希釈剤の存在下あるいは非存在下で、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤、およびトリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のリン化合物、金属の有機酸塩または無機酸塩(塩化リチウム等)あるいはキレート化合物等の反応触媒の共存下、60〜150℃、好ましくは80〜140℃で反応させればよい。
【0030】
この反応により、一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物による鎖延長前の硬化性樹脂が得られるが、この硬化性樹脂は、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物により導入されたアルコール性ヒドロキシル基と、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物や不飽和一塩基酸が原料エポキシ樹脂中のエポキシ基を開環させたことによって生成したアルコール性ヒドロキシル基を有している。これらのヒドロキシル基と、一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物を反応させることにより、硬化性樹脂を鎖延長しつつカルボキシル基を導入することができる。得られるカルボキシル基含有感光性樹脂はアルカリ現像が可能となるので、画像形成用等のアルカリ現像型感光性樹脂として利用することができる。
【0031】
一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四塩基酸二無水物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
【0032】
本発明における感光性樹脂の酸価は20mgKOH/g以上、70mgKOH/g以下が好ましい。より好ましく30mgKOH/g以上、65mgKOH/g以下、さらに好ましくは40mgKOH/g以上、60mgKOH/g以下である。この範囲とすることで、硬化前のタックフリー性、アルカリ現像性、硬化物の耐水性をよりバランス良く向上させることができる。
【0033】
また、本発明における感光性樹脂の二重結合当量(ラジカル重合性二重結合1化学当量あたりの分子量)は、400g/eq以上が好ましい。適度な架橋点間距離となるため、硬化物に可撓性が付与されて、耐屈曲性が向上する。より好ましい二重結合当量の下限は、450g/eqであり、さらに好ましい下限は500g/eqである。また、二重結合当量の上限は7000g/eqが好ましい。二重結合当量が7000g/eq以下であると、後述のラジカル重合性化合物や溶媒といった希釈剤の存在下あるいは非存在下において充分な流動性を得ることができ、製造時や塗布作業時の取扱い性が容易である。より好ましい上限は6000g/eq、さらに好ましい上限は5000g/eqである。
【0034】
本発明では、感光性樹脂の酸価や二重結合当量を上記の好ましい範囲とするために、一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物を、硬化性樹脂が有するヒドロキシル基1化学当量に対して0.01〜0.5モル、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物により導入されたアルコール性ヒドロキシル基1化学当量に対して0.1〜10モルとなるように反応させることが好ましい。
【0035】
本発明では、一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物以外に二塩基酸無水物を併用しても良い。このことで、必要以上に鎖延長せず(分子量を増大させ過ぎず)にカルボキシル基を導入することができる。このような二塩基酸無水物としては、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。
【0036】
これらは、一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物と二塩基酸無水物とを合わせた多塩基酸無水物全体100モル%に対して50モル%以下、より好ましく40モル%以下の使用量とすることで、タックフリー性維持効果を損なうことなく、現像性を補うことができる。
【0037】
この反応は、後述するラジカル重合性モノマーや溶媒等の希釈剤の存在下または非存在下でハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤の存在下、通常50〜130℃で行う。このとき必要に応じて、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、塩化リチウム等の金属塩等を触媒として添加してもよい。
【0038】
本発明の感光性樹脂は、これまでに述べた工程を経て、2官能エポキシ樹脂の末端に導入されたヒドロキシル基を介して一分子中に複数の酸無水物基を有する多塩基酸無水物により鎖延長された構造を主として含むものである。出発原料のエポキシ樹脂にもアルコール性ヒドロキシル基を有するものがあり、また、エポキシ基と不飽和一塩基酸やフェノール化合物との反応により開環して生成するヒドロキシル基も存在するが、これらのヒドロキシル基は立体障害により酸無水物基との反応が阻害され、先ず、フェノール化合物由来のアルコール性ヒドロキシル基と酸無水物基との反応が優先されるためである。
【0039】
このような構造を有することで、不飽和二重結合が鎖延長された分子鎖の両末端に位置することとなる。従って、硬化物に可撓性が付与されて耐屈曲性が向上する。
【0040】
本発明の感光性樹脂は、光重合開始剤を配合した感光性樹脂組成物とすることで、光によるラジカル重合が可能となる。
【0041】
光重合開始剤としては公知のものが使用でき、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0042】
これらの光重合開始剤は1種または2種以上の混合物として使用され、感光性樹脂と後述するラジカル重合性化合物の合計100質量部に対し、0.5〜30質量部含まれていることが好ましい。光重合開始剤の量が0.5質量部より少ない場合には、光照射時間を増やさなければならなかったり、光照射を行っても重合が起こりにくかったりするため、適切な表面硬度が得られなくなる。なお、光重合開始剤を30質量部を越えて配合しても、多量に使用するメリットはない。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物には、ラジカル重合性化合物が含まれていてもよい。ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性樹脂とラジカル重合性モノマーとがある。
【0044】
ラジカル重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等が使用できる。ラジカル重合性化合物としてこれらのラジカル重合性樹脂を用いる場合、本発明の感光性樹脂に由来する耐屈曲性向上効果等を有効に発揮させるためには、樹脂固形分(本発明の感光性樹脂と上記ラジカル重合性樹脂固形分との総量)を100質量部としたとき、ラジカル重合性樹脂を90質量部以下で使用することが好ましい。より好ましい上限値は80質量部、さらに好ましい上限値は70質量部である。
【0045】
ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性モノマーも用いることができる。単官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が1個)と多官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が2個以上)のいずれも使用可能である。ラジカル重合性モノマーは光重合に関与するため、得られる硬化物の特性を改善する上に、各種反応時の溶媒としても使用でき、さらには、感光性樹脂組成物の粘度を調整することもできる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合の好ましい使用量は、本発明の感光性樹脂と前記ラジカル重合性樹脂の総量100質量部に対し、300質量部以下(より好ましくは100質量部以下)である。
【0046】
ラジカル重合性モノマーの具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルメチルマレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N−オクタデセニルマレイミド、N−ドデセニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(1−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のN−置換マレイミド基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン、デンドリチックアクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の(ヒドロキシ)アルキルビニル(チオ)エーテル;(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のラジカル重合性二重結合を有するビニル(チオ)エーテル;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体あるいはこれをアルコール類、アミン類、水等により酸無水物基を開環変性した単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル系単量体;アリルアルコール、トリアリルシアヌレート等、ラジカル重合可能な二重結合を1個以上有する化合物が挙げられる。これらは、感光性樹脂組成物の用途や要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
本発明の組成物を基材に塗布する際の作業性等の観点から、組成物中に溶媒を配合してもよい。溶媒としてはトルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いることができ、塗布作業時に組成物が最適粘度となるよう適当量使用する。
【0048】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、着色用顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤等の公知の添加剤を添加してもよい。また、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物を画像形成用として使用する場合には、通常、基材に公知の方法で塗布・乾燥し、露光して硬化塗膜を得た後、未露光部分をアルカリ水溶液に溶解させてアルカリ現像を行う。
【0050】
現像に使用可能なアルカリの具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等の水溶性有機アミン類が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物は、液状のものを直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムに塗布して乾燥させたドライフィルムの形態で使用することもできる。この場合、ドライフィルムを基材に積層し、露光前または露光後にフィルムを剥離すればよい。
【0052】
また、印刷製版分野で最近多用されているCTP(Computer To Plate)システム、すなわち、露光時にパターン形成用フィルムを使用せず、デジタル化されたデータによってレーザー光を直接塗膜上に走査・露光して描画する方法を採用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下の説明では特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0054】
合成例1(実施例1)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、「jER(登録商標)834」(ジャパンエポキシレジン社製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂:エポキシ当量248)248部、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−2−ブタノール58.9部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート94.3部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.4部を仕込み、120℃で3時間反応させ、エポキシ基定量によりエポキシ基とフェノール性ヒドロキシル基との反応終了を確認した。
【0055】
次いで、メタクリル酸61.1部、メチルハイドロキノン0.8部、トリフェニルホスフィン1.1部を添加し、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が3になったことを確認した。
【0056】
さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート94.3部、ピロメリット酸二無水物32.7部を加え、110℃で3時間反応させて、酸価45mgKOH/gの感光性樹脂A−1を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0057】
合成例2(実施例2)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、上記「jER(登録商標)834」248部、p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール41.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90.2部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.4部を仕込み、120℃で3時間反応させ、エポキシ基定量によりエポキシ基とフェノール性ヒドロキシル基との反応終了を確認した。
【0058】
次いで、メタクリル酸61.1部、メチルハイドロキノン0.8部、トリフェニルホスフィン1.1部を添加し、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が4になったことを確認した。
【0059】
さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90.2部、ピロメリット酸二無水物32.7部を加え、110℃で3時間反応させて、酸価47mgKOH/gの感光性樹脂A−2を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0060】
合成例3(実施例3)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、上記「jER(登録商標)834」248部、p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール55.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート94部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.4部を仕込み、120℃で3時間反応させ、エポキシ基定量によりエポキシ基とフェノール性ヒドロキシル基との反応終了を確認した。
【0061】
次いで、メタクリル酸52.5部、メチルハイドロキノン0.8部、トリフェニルホスフィン1.1部を添加し、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が3になったことを確認した。
【0062】
さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート94部、ピロメリット酸二無水物43.6部を加え、110℃で3時間反応させて、酸価59mgKOH/gの感光性樹脂A−3を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0063】
合成例4(実施例4)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、上記「jER(登録商標)834」248部、p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール41.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート95.1部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.4部を仕込み、120℃で3時間反応させ、エポキシ基定量によりエポキシ基とフェノール性ヒドロキシル基との反応終了を確認した。
【0064】
次いで、メタクリル酸61.1部、メチルハイドロキノン0.8部、トリフェニルホスフィン1.1部を添加し、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が4になったことを確認した。
【0065】
さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート95.1部、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物53.7部を加え、110℃で3時間反応させて、酸価45mgKOH/gの感光性樹脂A−4を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0066】
合成例5(比較例1)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、上記「jER(登録商標)834」248部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート91.6部、メタクリル酸87部、メチルハイドロキノン0.8部、トリフェニルホスフィン1部を仕込み、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が5になったことを確認した。
次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート91.6部、ピロメリット酸二無水物54.5部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.3部を加え、110℃で6時間反応させて、酸価79mgKOH/gの比較用感光性樹脂B−1を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0067】
合成例6(比較例2)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、「エポトート(登録商標)YD−901」(東都化成社製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂:エポキシ当量463.9)232部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート69.9部、メタクリル酸43.5部、メチルハイドロキノン0.6部、トリフェニルホスフィン0.8部を仕込み、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が3になったことを確認した。
【0068】
次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート69.9部、ピロメリット酸二無水物21.8部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.3部を加え、110℃で6時間反応させて、酸価41mgKOH/gの比較用感光性樹脂B−1を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0069】
合成例7(比較例3)
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、「エポトート(登録商標)YDCN−703」(東都化成社製;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:エポキシ当量200)200部、p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール41.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート89.1部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.3部を仕込み、120℃で5時間反応させ、エポキシ基定量によりエポキシ基とフェノール性ヒドロキシル基との反応終了を確認した。次いで、メタクリル酸61.1部、メチルハイドロキノン0.8部、トリフェニルホスフィン0.9部を添加し、120℃で20時間反応させて、反応物の酸価が3になったことを確認した。さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート89.1部、テトラヒドロ無水フタル酸76.1部を加え、110℃で4時間反応させて、酸価78mgKOH/gの比較用感光性樹脂B−3を68%含むジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0070】
[感光性樹脂組成物の調製]
上記で得られた各感光性樹脂溶液100部と、DPHA(日本化薬社製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)10部、光重合開始剤として、「イルガキュアー(登録商標)907」(チバ・ジャパン社製;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロペン−1−オン)5部を混合し、感光性樹脂組成物を得た。下記の各種特性評価を行い、評価結果を表1に示す。
【0071】
[タックフリー性]
各樹脂組成物を、脱脂洗浄した厚さ1.6mmの銅張積層板上に20〜30μmの厚さに塗布し、熱風循環式乾燥炉中において80℃で30分間乾燥させ、塗膜を得た。この塗膜のタックフリー性を指触により下記基準で評価した。
○:全くタックが認められない
△:わずかにタックが認められる
×:顕著にタックが認められる。
【0072】
[現像性]
タックフリー性評価のときと同様に乾燥塗膜を形成した。次いで1%炭酸ナトリウム水溶液を使用して30℃で60秒間現像を行い、残存する樹脂塗膜の存在を下記基準で目視で評価した。
○:現像性良好(銅面上に付着物が全くない)
×:現像性不良(銅面上に付着物が著しく残る、あるいは全く現像されない)。
【0073】
[光硬化性]
タックフリー性評価のときと同様に乾燥塗膜を形成し、1kWの超高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2 の光量を照射し、塗膜を硬化させた。次いで1%炭酸ナトリウム水溶液を使用して30℃で120秒間現像を行い、塗膜の残存度合いにより光硬化性を下記基準で目視で評価した。尚、前記現像性評価で×(現像性不良)であったものについては、評価しなかった。
○:塗膜に影響なし(光硬化性良好)
×:塗膜に剥がれあり(光硬化性不良)。
【0074】
〔耐煮沸性評価〕
タックフリー性評価のときと同様に乾燥塗膜を形成し、1kWの超高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2 の光量を照射し、塗膜を硬化させた。次いで、高温条件として150℃で30分間加熱した後、さらに、煮沸しているイオン交換水中に1分間浸漬した。浸漬後の塗膜の状態を下記基準で目視で評価した。
○:塗膜の外観に異常なし
×:塗膜の一部に膨潤、剥離あり。
【0075】
[耐屈曲性]
各樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥後の膜厚が100μmになるように塗布した後、80℃で30分間乾燥させ、塗膜を得た。次いで、紫外線露光装置を用いて2J/cmの露光を行った後、さらに、160℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化塗膜を剥離して試験片を得た。この試験片を用い、室温(23℃)下、10mmφの心棒で、JIS K 5400-1990の8.1に準じて耐屈曲性評価を行い、クラックの発生の有無について下記基準で目視で評価した。
○:クラック発生なし
×:クラック発生
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明の感光性樹脂組成物は、タックフリー性を有し、現像性、光硬化性にも優れている。また、硬化塗膜については優れた耐水性、耐屈曲性を示すことが確認できた。従って、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能な画像形成用感光性樹脂組成物として、例えば、エッチングレジスト、無電解メッキレジスト、ビルドアップ法プリント配線板の絶縁層、印刷製版、液晶表示板製造用等の各種の用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、アルコール性ヒドロキシル基を有するフェノール化合物、および不飽和一塩基酸を反応させて得られる硬化性樹脂に、多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂であって、前記エポキシ樹脂として2官能エポキシ樹脂を用い、前記多塩基酸無水物の少なくとも一部として一分子中に複数の酸無水物基を有するものを用いることを特徴とする感光性樹脂。
【請求項2】
上記感光性樹脂の酸価が20〜70mgKOH/gである請求項1に記載の感光性樹脂。
【請求項3】
上記一分子中に複数の酸無水物機を有する多塩基酸無水物が四塩基酸二無水物である請求項1または2に記載の感光性樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂と光重合開始剤とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2009−155360(P2009−155360A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331393(P2007−331393)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】