説明

感光性樹脂印刷版原版およびその製造方法

【課題】感熱マスク層の高い描画感度と遮光性を両立する感光性樹脂印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体上に、少なくとも感光性樹脂層(A)、および顔料を含有する感熱マスク層(B)をこの順に有する感光性樹脂印刷版原版であって、前記顔料を含有する感熱マスク層(B)が、OD(UV)/OD(K)≧1.2を満たすことを特徴とする感光性樹脂印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂印刷版原版およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、コンピューター製版技術で樹脂凸版印刷版を作製する際に使用される感光性樹脂印刷版原版およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種印刷の分野において、デジタル画像形成技術として知られているコンピューター製版技術(コンピューター・トゥ・プレート(CTP)技術)は、一般的なものとなってきている。CTP技術の一つとして、感光性樹脂層上に紫外光に対して不透明な感熱マスク層をあらかじめ設けておき、感熱マスク層に赤外レーザーを照射して感熱マスク層を融除し、画像マスクを形成する方法がある。
【0003】
CTP技術に用いられる感光性樹脂印刷版原版として、支持体上に、水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する感光性樹脂層、および赤外線吸収物質を含有する水不溶性の感熱マスク層がこの順に積層されていることを特徴とする感光性樹脂印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、基板、化学線により架橋可能な層、感赤外線層、および剥離可能な保護層を順次有し、感赤外線層が化学線範囲において2.5以上の光学濃度を示す凸版印刷板(例えば、特許文献2参照)や、少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層されてなる感光性凸版印刷原版であって、感熱マスク層が、カーボンブラックと、その分散バインダーとしてブチラール樹脂、並びに極性基含有ポリアミドを含有することを特徴とする感光性凸版印刷原版(例えば特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−163925号公報
【特許文献2】特開平9−171247号公報
【特許文献3】特許第4247725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CTP技術に用いられる感光性樹脂印刷版原版は、紫外光により硬化反応する感光性樹脂層の上に紫外光を遮蔽する感熱マスク層を設けることにより、硬化反応を制御する。紫外光を照射する露光工程の前に、あらかじめ感熱マスク層に画像を描画しておく。感熱マスク層が融除された部分は、露光工程で感光性樹脂層に紫外光が到達し硬化する。一方、感熱マスク層が融除されていない部分は、紫外光が遮蔽され感光性樹脂層は硬化しない。感熱マスク層の遮光性が低い場合、紫外光を感光性樹脂層に透過させてしまい、意図しない部分の硬化が生じ(曝光)、良好な印刷版が得られない。よって、感熱マスク層には十分な遮光性が求められている。これに対し、感熱マスク層を厚くすると遮光性は高まるが、描画感度が低下し、描画時間が長くなる、すなわち生産性が低下するというトレードオフの課題が発生する。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、感熱マスク層の高い描画感度と遮光性を両立する感光性樹脂印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。すなわち、支持体上に、少なくとも感光性樹脂層(A)、および顔料を含有する感熱マスク層(B)をこの順に有する感光性樹脂印刷版原版であって、前記顔料を含有する感熱マスク層(B)が、OD(UV)/OD(K)≧1.2を満たすことを特徴とする感光性樹脂印刷版原版である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、感熱マスク層の高い描画感度と遮光性を両立する感光性樹脂印刷版原版を得ることができる。本発明の感光性樹脂印刷版原版によれば、原画フィルムを必要とすることなくレリーフ像を形成することが可能であり、製版工程での曝光欠点の発生を低減するとともに、高い描画感度も維持することができる。このため、品位の高い印刷物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、支持体上に、少なくとも感光性樹脂層(A)、および感熱マスク層(B)をこの順に有する。各層を2層以上有してもよい。
【0011】
本発明における支持体に使用される素材は特に限定されないが、寸法安定なものが好ましく使用される。例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属板、ポリエステル(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやこれらをガラスファイバーなどで補強したもの、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムなどが挙げられる。これらの中でも、PETフィルムやスチール板が好ましく用いられる。
【0012】
支持体の形態は、感光性樹脂層(A)がシート状であるかスリーブ状であるかによって適したものを使用すればよい。また、感光性樹脂層(A)との接着性を向上させるため、表面に接着層を有してもよい。支持体の厚みは特に限定されないが、取扱いの面から50μm〜1mmが好ましい。
【0013】
本発明における感光性樹脂層(A)とは、波長300nm〜500nmの光、好ましくは300nm〜400nmの紫外光を照射することにより光硬化する層のことを言う。少なくとも、担体樹脂、エチレン性不飽和モノマー、および光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0014】
感光性樹脂層(A)中の担体樹脂は、使用するインキによって使い分けられるのが一般的である。水性インキやUVインキを使用するフレキソ印刷版に用いられる印刷版原版の場合には、担体樹脂として、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリル酸共重合体などのジエン類の共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン類の共重合体などのエラストマーが使用される。油性インキやUVインキを使用するレタープレス版に用いられる印刷版原版の場合は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリ酢酸ビニル(部分鹸化ポリビニルアルコール)、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキサイドなどの親水性基を導入したポリアミド樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、およびこれら樹脂の変性体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、担体樹脂として親水性樹脂を用いることで、水現像性を付与することができることから、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、親水性基を導入したポリアミド樹脂、およびこれら樹脂の変性体が好ましく用いられる。
【0015】
担体樹脂の含有量は、感光性樹脂層(A)の全固形分中、10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。また、80重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。担体樹脂の含有量がかかる範囲内であれば、印刷版の柔軟性、耐刷性および現像性を適度な範囲で両立することができる。
【0016】
感光性樹脂層(A)中のエチレン性不飽和モノマーとは、ラジカル重合により架橋可能な化合物である。ラジカル重合により架橋可能な化合物であれば、特に限定されるものではないが、一般に、アクリル基および/またはメタクリル基を有する化合物を挙げることができる。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンなどの活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なお、文中の(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを意味する。
【0017】
エチレン性不飽和モノマーの含有量は、感光性樹脂層(A)の全固形分中、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。エチレン性不飽和モノマーの含有量が10重量%以上であれば、光重合によって架橋構造が十分に形成され、インキの希釈溶剤や希釈モノマーに対して膨潤しにくくなり、印刷中のベタ部の膨潤破壊や印刷不良を抑制することができる。一方、80重量%以下が好ましく、55重量%以下がより好ましい。エチレン性不飽和モノマーの含有量を80重量%以下とすることにより、光重合により形成される架橋密度が過剰とならないために、印刷中にレリーフにクラックが入ることを抑制することができる。
【0018】
感光性樹脂層(A)中の光重合開始剤は、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば特に限定されない。なかでも、光吸入によって、自己開裂や水素引き抜きによりラジカルを生成する機能を有するものが好ましい。このような光重合開始剤として、例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0019】
これら光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全固形分中、0.01重量%〜10重量%が好ましい。
【0020】
感光性樹脂層(A)には、その他の成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類を含有してもよく、相溶性や柔軟性を向上させることができる。また、例えば、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などの従来公知の重合禁止剤を含有してもよく、熱安定性を向上させることができる。また、染料、顔料、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤などを含有することもできる。
【0021】
感光性樹脂層の膜厚は、被印刷体や印刷機、レタープレス版かフレキソ版かによって異なるが、0.2mm〜6.0mmが好ましい。0.2mm以上とすることで、レリーフ印刷版を形成するに足る段差の凹凸を容易に形成できる。一方、6.0mm以下とすることで、版材コスト面で有利であるためでなく、印刷版の重量を抑制することができ、取扱いが容易になる。なお、感光性樹脂層の膜厚は、例えば触診式の膜厚測定器(例えば、マイクロメーター)により測定することができる。
【0022】
本発明における感熱マスク層(B)は、(1)紫外光を実用上遮蔽する機能を有し、(2)赤外レーザーを効率よく吸収して、その熱によって瞬間的に該層の一部または全部が蒸発または融除し、レーザーの照射部分と未照射部分とで、紫外光の光学濃度に差が生じる、すなわち照射部分で紫外光の光学濃度の低下が起こる機能を有するものである。
【0023】
光学濃度は一般に以下の式で定義されるODで表され、ある波長の光に対する吸光度のことを言う。
OD=log10(100/T)=log10(I/I)
(ここで、Tは透過率(単位は%)、Iは透過率測定の際の入射光強度、Iは透過光強度である。)
【0024】
光学濃度の測定には、入射光強度を一定にして透過光強度の測定値から算出する方法と、ある透過光強度に達するまでに必要な入射光強度の測定値から算出する方法が知られているが、本発明における光学濃度は前者の透過光強度から算出した値をいう。光学濃度は、マクベス透過濃度計「TR−927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollmorgen Instruments Corp.)社製)により、透過モードで測定することができる。入射光の光源は、各色のフィルターを介したランプ光源で波長を限定する機能を有しており、例えば、オルソクロマチックフィルターを介することで全光線光源に対する透過濃度OD(K)を測定することができ、UV用フィルターを介することで紫外光に対する透過濃度OD(UV)を測定できる。
【0025】
OD(K)は光源の入射光強度が強いため測定精度が高いこともあり、銀塩フィルムなどの黒色体の黒色濃度を測定するために慣用されており、通常OD値といえばOD(K)のことを言う場合が多い。それに対し、OD(UV)は紫外光に対する遮蔽性を直接的に測定するものである。本発明ではOD(K)とOD(UV)に着目し、OD(K)に対してOD(UV)の高い感熱マスク層(B)を提案する。
【0026】
全光線(K)は主に可視光(VIS)と紫外光(UV)とからなり、その吸光度をそれぞれOD(K)、OD(VIS)、OD(UV)で表すと、OD(K)はOD(VIS)とOD(UV)の加重平均値である。可視光から紫外光の各波長に対する吸光度(あるいは透過率)が同一の層に対しては、OD(VIS)=OD(UV)、すなわちOD(K)=OD(UV)の関係が成立し、OD(K)で紫外光に対する遮蔽性を評価することができる。銀塩ネガフィルムや通常のカーボンブラックを含有する感熱マスク層がこれに当てはまる。これに対し、光の波長に対する吸光度依存性がある層の場合、例えば可視光に対する吸光度が低く、紫外光に対する吸光度が高い層の場合、OD(UV)>OD(K)>OD(VIS)となる。つまり本発明は、そのような層を設計することで、紫外光遮蔽性が向上した感熱マスク層(B)を提案するものである。
【0027】
感熱マスク層(B)の遮光性を高める手法の1つとして、感熱マスク層(B)を厚くすることが考えられる。しかしながら、この場合には描画感度が低下し、生産性が低下する課題が生じる。なお、OD(UV)、OD(K)ともに感熱マスク層(B)の膜厚に比例するため、感熱マスク層(B)を厚くすると、OD(K)は増加する。本発明は、高い描画感度を実現するため、できるだけ薄い膜厚で、すなわちOD(K)は小さくしながら、感熱マスク層(B)が紫外光を遮光する機能を高くしようとするものであり、つまりOD(UV)/OD(K)≧1.2となる感熱マスク層(B)により、高い紫外光遮光性と描画感度を両立することができる。OD(UV)/OD(K)≧1.3であることがより好ましい。
【0028】
露光工程で一般的に使用される露光機からは紫外光が照射されるが、その中でも感光性樹脂層(A)の硬化に適した光の波長の一例として、365nmを挙げることができる。感熱マスク層(B)に使用される一般的な樹脂の屈折率はおよそ1.5であるので、波長365nmの光は、感熱マスク層(B)中ではおよそ240nmの波長と計算できる。本発明における感熱マスク層(B)は顔料を含有するが、特に粒径240nm以上の顔料を含有することにより、露光工程に用いられる紫外光、少なくとも365nmの紫外光に対する遮光性を高めることができる。均一な感熱マスク層(B)を形成するに当たり、ある程度の顔料微細化は必要であり、顔料の粒度分布を適切に管理することが好ましい。本発明においては、顔料の粒度分布において、粒径240nm以上の顔料が20%以上であることが好ましく、描画感度と遮光性をより高いレベルで両立することができる。30%以上であることがより好ましい。ここで、粒径とは顔料が凝集した2次粒子の直径を指す。感熱マスク層中の顔料の粒度分布は、感熱マスク層を電子顕微鏡により250倍で観察し、視野中に観察される各球状粒子(2次粒子)12個以上の直径を測定することにより求められる。粒度分布における%は個数%を意味する。また、顔料の粒度分布において、粒径150nm以上300nm以下の範囲に極大値を有することが好ましい。200nm以上250nm以下の範囲に極大値を有することがより好ましい。
【0029】
前記の粒度分布を有する顔料を得る方法は特に限定されず、例えば、一旦微分散させた顔料を再凝集させることで、均一な膜が塗工可能で、上記粒度分布を有する顔料塗剤を得ることができる。また、顔料塗剤の調製にあたり撹拌数を過剰にする方法や、顔料塗剤を加熱処理するなどの方法でも達成できる。
【0030】
感熱マスク層(B)中の顔料は特に限定されないが、好ましくは少なくとも300nm〜400nmの波長領域に吸収を有する紫外光遮光性の化合物である。例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック等の黒色顔料や、カーボングラファイト、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、アリールアルミニウム金属塩類、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステンなどの金属酸化物、これら化合物の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、スズ、テルル、鉄、アルミニウムの金属粉などの金属系化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なかでも、紫外線遮蔽性、経済性、取扱い性、および後述する赤外光熱変換機能の面から、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックは、その製造方法からファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどに分類されるが、ファーネスブラックが粒径その他の面で様々なスペックのものが市販されており、商業的にも安価であるため、好ましく使用される。
【0031】
感熱マスク層(B)中の顔料の含有量は、紫外光遮光性をより高める観点から、感熱マスク層(B)の全固形分中、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。一方、感熱マスク層(B)の耐傷性の観点から、75重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。
【0032】
感熱マスク層(B)は、前記(1)の機能を得るため、紫外光遮蔽物質である顔料を含有するが、前記(2)の機能を得るため、赤外光を光熱変換する赤外線吸収物質を含有する。また、赤外線レーザーに対する描画感度をより向上させるため、熱によって蒸発または融除する熱分解性化合物を含有してもよい。
【0033】
赤外線吸収物質は、赤外光を吸収して熱に変換し得る物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系などの緑色顔料、ローダミン色素、ナフトキノン系色素、ポリメチン系染料、ジイモニウム塩、アゾイモニウム系色素、カルコゲン系色素、紫外線遮蔽性の顔料として例示した金属系化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらのなかでも、光熱変換効率、経済性、取扱い性および前述した紫外光遮蔽性の観点から、カーボンブラックが特に好ましい。
【0034】
本発明において、感熱マスク層(B)における赤外線吸収物質の含有量は、光熱変換効率の観点から、感熱マスク層(B)の全固形分中、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。一方、感熱マスク層(B)の耐傷性の観点から、75重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。
【0035】
熱分解性化合物としては、例えば、熱分解しやすい高分子化合物やニトロ化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、および紫外線遮蔽性の顔料として例示した金属系化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0036】
塗工性の観点などから高分子化合物が好ましく、例えば、アクリル樹脂が挙げられる。アクリル樹脂は比較的熱分解しやすく、一般的なアクリル樹脂の熱分解温度は190℃〜250℃である。アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる1つ以上のモノマーの重合体あるいは共重合体のことをいう。アクリル樹脂の中でも、水やアルコールに溶解しないグレードを選択することによって、下層の感光性樹脂層(A)への物質移動を抑制することができるので、水/アルコール不溶型のアクリル樹脂がさらに好ましく用いられる。
【0037】
本発明において、感熱マスク層(B)における熱分解性化合物の含有量は、感熱マスク層(B)の全固形分中、50重量%以下が好ましい。
【0038】
本発明においては、感熱マスク層(B)に、紫外光遮蔽性物質や赤外線吸収物質として、カーボンブラックなどの顔料を含有するので、その分散を行いやすくするため、可塑剤、界面活性剤や分散助剤を含有してもよい。
【0039】
なお、感熱マスク層(B)の膜厚は0.5〜5.0μmが好ましい。膜厚を0.5μm以上とすることで、紫外光遮蔽性をより向上させることができる。一方、膜厚を5.0μm以下とすることで、描画感度をより向上させることができ、生産コスト的にも有利である。感熱マスク層の膜厚の測定方法としては、例えば、単位面積当たりの膜重量により測定する方法や、触診式の膜厚測定器(例えば、マイクロメーター)により測定する方法が挙げられる。
【0040】
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、支持体上に、少なくとも前記感熱性樹脂層(A)、感熱マスク層(B)をこの順に有する。必要により、感熱性樹脂層(A)と感熱マスク層(B)の層間に中間層(C)を設けてもよい。また、感熱マスク層(B)の上に、さらにカバーフィルム(D)を設けてもよい。
【0041】
中間層(C)を有することにより、感熱性樹脂層(A)と感熱マスク層(B)の密着性を向上させることができる。中間層(C)に使用される材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、親水性基を有するポリアミドやそれらの混合物などが挙げられる。
【0042】
カバーフィルム(D)を有することにより、感熱マスク層(B)を外傷から保護することができる。カバーフィルム(D)は、感熱マスク層(B)から剥離可能なものが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムや、シリコーンなどが塗布された剥離紙などが挙げられる。
【0043】
カバーフィルム(D)の膜厚は、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。膜厚が25μm以上であれば、取り扱いが容易であり、また、感熱マスク層(B)を外傷から容易に保護することができる。また、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。膜厚が200μm以下であれば、生産コスト的に有利である。カバーフィルム(D)の膜厚は、触診式の膜厚測定器(例えば、マイクロメーター)により簡便に測定することができる。
【0044】
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、感熱マスク層(B)とカバーフィルム(D)の間に、さらに剥離補助層(E)を有してもよい。剥離補助層(E)は、感光性樹脂印刷版原版からカバーフィルム(D)のみ、またはカバーフィルム(D)と剥離補助層(E)の両方を容易に剥離せしめる機能を有することが好ましい。カバーフィルム(D)と感熱マスク層(B)が直接積層されており両層間の接着力が強いと、カバーフィルム(D)を剥離できない、または、感熱マスク層(B)ごと剥離してしまう可能性がある。
【0045】
したがって、剥離補助層(E)は、感熱マスク層(B)との接着力が強く、カバーフィルム(D)との接着力が剥離可能な程度に弱い物質、あるいは感熱マスク層(B)との接着力が剥離可能な程度に弱く、カバーフィルム(D)との接着力が強い物質から構成されことが好ましい。なお、カバーフィルム(D)を剥離した後、剥離補助層(E)は感熱マスク層(B)側に残留し最外層になる場合があるので、取り扱いの面から粘着質でないことが好ましい。また、剥離補助層(E)を通して紫外光露光されるため、実質的に透明であることが好ましい。
【0046】
剥離補助層(E)に使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂などの、水に溶解または分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
【0047】
剥離補助層(E)は、さらに、赤外線で融除しやすくするために、赤外線吸収物質および/または熱分解性化合物を含有してもよい。赤外線吸収物質や熱分解性化合物としては、感熱マスク層(B)の成分として前述したものを使用することができる。また、塗工性や濡れ性向上のために界面活性剤を含有してもよい。
【0048】
剥離補助層(E)の膜厚は、下層の感熱マスク層(B)のレーザー融除性を維持する観点から、6μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。一方、剥離補助層(E)を容易に形成する観点から、0.03μm以上が好ましい。膜厚は、単位面積当たりの膜重量により簡便に測定できる。
【0049】
感光性樹脂印刷版原版からカバーフィルム(D)を200mm/分の速度で剥離する時、幅1cm当たりの剥離力が0.5g(0.49N/m)以上が好ましく、1g(0.98N/m)以上がより好ましい。この範囲であれば、作業中の保護層(D)の剥離を抑制することができる。一方、カバーフィルム(D)の剥離を容易に行う観点から、20g(19.6N/m)以下が好ましく、15g(14.7N/m)以下がより好ましい。
【0050】
次に本発明の感光性樹脂印刷版原版の好ましい製造方法を記載する。本発明の感光性樹脂印刷版原版の製造方法は、支持体上に、少なくとも感光性樹脂組成物(A)を形成する工程と、感熱マスク層(B)を形成する工程とを有する。
【0051】
まず、支持体上に感光性樹脂層(A)を形成する方法としては、例えば、担体樹脂、必要によりその他の樹脂を溶媒に溶解した後に、エチレン性不飽和モノマー、光重合開始剤および必要によりその他添加剤を添加して充分撹拌し、感光性樹脂層用の塗工液組成物を得て、この感光性樹脂層用の塗工液組成物から溶媒を除去した後に、好ましくは接着剤を塗布した支持体上に溶融押し出しすることにより得ることができる。あるいは一部溶媒が残存している感光性樹脂層用の塗工液組成物を、接着剤を塗布した支持体上に溶融押し出しし、残存している溶媒を経時によって自然乾燥させることによっても得ることができる。感光性樹脂層用の塗工液組成物に用いられる溶媒は、感光性樹脂層(A)の成分を溶解することができれば特に限定されないが、水、アルコールまたはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0052】
感光性樹脂層(A)または感熱マスク層(B)上に中間層(C)を形成する方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、中間層(C)成分を溶媒に溶解した感光性樹脂層用の塗工液組成物を感光性樹脂層(A)または感熱マスク層(B)上に塗布し、溶媒を除去する方法が好ましく用いられる。中間層(C)の形成に用いられる溶媒は、中間層(C)成分を溶解することができれば特に限定されないが、水、アルコールまたはこれらの混合物が好ましく用いられる。感熱マスク層(B)が水不溶性である場合、水やアルコールを用いることにより、感熱マスク層(B)上に感光性樹脂層用の塗工液組成物を塗布しても、感熱マスク層(B)が浸食されないため好ましい。また、大気圧下における溶媒の沸点は、塗布中の揮発を抑制する観点から80℃以上が好ましい。一方、溶媒の除去を容易に行う観点から、200℃以下が好ましい。
【0053】
次に、感熱マスク層(B)を形成する方法としては、例えば、感光性樹脂層(A)上に、顔料を含有する感熱マスク層用の塗工液組成物を塗布する方法が挙げられる。塗工液組成物が溶媒を含有する場合、塗布後に溶媒を除去する。また、必要により熱硬化させてもよい。感熱マスク層用の塗工液組成物は、例えば、カーボンブラックなどの顔料を溶媒や樹脂中に分散させた分散液を用意し、その他の感熱マスク層用の成分をそのまま、あるいは適当な溶媒に溶解させた溶液と混合することにより得ることができる。感熱マスク層(B)の形成に用いられる溶媒は、感熱マスク層(B)成分を溶解、あるいは良分散することができれば特に限定されないが、大気圧下における沸点が80℃以上200℃以下であるものが好ましい。
【0054】
感熱マスク層中の顔料の粒度分布は、塗工液組成物中の粒度分布に依存する。すなわち、感熱マスク層中の顔料の粒度分布は塗工液組成物中の粒度分布と同等であると考えられるため、塗工液組成物中の顔料の粒度分布において、粒径240nm以上の顔料が20%以上であることが好ましい。このような粒度分布を得るために、感熱マスク層用の塗工液組成物を加熱処理することが好ましい。加熱条件は40℃で1時間以上が好ましく、50℃で2日以上がより好ましい。なお、塗工液組成物中の顔料の粒度分布は、例えば、日機装株式会社製のマイクロトラック9340upaなどの公知の粒度分布測定装置により求めることができる。
【0055】
感熱マスク層(B)またはカバーフィルム(D)上に剥離補助層(E)を形成する方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、剥離補助層(E)成分を溶媒に溶解した剥離補助層用の塗工液組成物を感熱マスク層(B)またはカバーフィルム(D)上に塗布し、溶媒を除去する方法が好ましく用いられる。剥離補助層(E)の形成に用いられる溶媒は、剥離補助層(E)成分を溶解することができれば特に限定されないが、水、アルコールまたはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0056】
前記各層を積層することにより、本発明の感光性樹脂印刷版原版を得ることができる。
【0057】
本発明の感光性樹脂印刷版原版の第1の例は、支持体上に感光性樹脂層(A)、中間層(C)、感熱マスク層(B)、剥離補助層(E)およびカバーフィルム(D)を順次積層した構造を有する原版である。例えば、カバーフィルム(D)上に順次塗布法で、層(E)、層(B)および層(C)を積層した感熱マスク層(B)を有する感熱マスクシートと、支持体上に層(A)を積層した感光性樹脂シートとをラミネートすることによって得ることができる。ラミネート方法としては特に限定されず、例えば、層(A)あるいは層(C)の表面を水および/またはアルコールで膨潤させ、感熱マスクシートと感光性樹脂シートとを貼り合わせる方法、層(A)と同じ、あるいは類似組成の高粘度の液体を、感光性樹脂シートと感熱マスクシートの間に流し込んで両者を貼り合わせる方法、常温下であるいは加熱しながらプレス機でプレスする方法などが挙げられる。
【0058】
第2の例は、支持体上に感光性樹脂層(A)、中間層(C)および感熱マスク層(B)を順次積層した構造を有する原版である。例えば、支持体上に感光性樹脂層(A)を積層した感光性樹脂シートに、層(C)用の塗工液組成物を塗布し、乾燥させて、次いで、感熱マスク層(B)用の塗工液組成物を塗布し、加熱して硬化させることによって得ることができる。別の方法として、剥離紙に同様の塗布法で層(B)および層(C)を順次積層した感熱マスク層(B)を有する感熱マスクシートと、支持体上に層(A)を積層した感光性樹脂シートとを用意し、次いで、層(A)が層(C)と接するように両者をラミネートした後、剥離紙を剥離することによって得ることもできる。剥離した剥離紙は、同目的で再利用できるという利点がある。
【0059】
第3の例は、支持体上に感光性樹脂層(A)、中間層(C)、感熱マスク層(B)、剥離補助層(E)を順次積層した構造を有する原版である。この原版は、例えば、第1の例で得られた原版からカバーフィルム(D)を剥離することによって得ることができる。この例では、カバーフィルム(D)を再利用できるという利点がある。
【0060】
第4の例は、支持体上に感光性樹脂層(A)、中間層(C)、感熱マスク層(B)、カバーフィルム(D)を順次積層した構造を有する原版である。例えば、カバーフィルム(D)上に順次塗布法で層(B)および層(C)を積層した感熱マスクシートと、支持体上に層(A)を積層した感光性樹脂シートとをラミネートすることによって得ることができる。
【0061】
以上のようにして得られた感光性樹脂印刷版原版は、少なくとも(1)上述の感光性樹脂印刷版原版を用い、(2)赤外レーザーで感熱マスク層(B)に像様照射することによって画像マスク(B’)を形成する工程、(3)形成された画像マスク(B’)側から紫外光を用いて露光し、感光性樹脂層(A)に潜像を形成する工程、(4)現像処理し、画像マスク(B’)および紫外光未露光部の感光性樹脂層(A)を除去する工程を経て、樹脂凸版印刷版を製造することができる。
【0062】
層(E)および/または層(D)が存在する場合には、少なくとも層(D)を剥離した後、感熱マスク層(B)に赤外レーザーを画像状に像様照射して、画像マスク(B’)を形成することが好ましい。より好ましくは、層(E)と層(D)が存在し、層(E)のみを剥離した後、層(D)を介して感熱マスク層(B)に赤外レーザーを画像状に像様照射して、画像マスク(B’)を形成することである。
【0063】
(2)赤外レーザーで感熱マスク層(B)に像様照射して画像マスク(B’)を形成する工程とは、赤外レーザーを画像データに基づきON/OFFさせて、感熱マスク層(B)に対して走査照射する工程のことである。感熱マスク層(B)は、赤外レーザーが照射されると赤外線吸収物質の作用で熱が発生し、その熱の作用で熱分解性化合物が分解して感熱マスク層(B)が除去、すなわちレーザー融除される。レーザー融除された部分は、光学濃度が大きく低下し、紫外光に対して実質的に透明になる。画像データに基づき、感熱マスク層(B)を選択的にレーザー融除する事によって、感光性樹脂層(A)に潜像を形成しうる画像マスク(B’)が得られる。
【0064】
赤外レーザー照射には、発振波長が750nm〜3000nmの範囲にあるものが用いられる。このようなレーザーとしては、例えば、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ペロブスカイトレーザー、Nd−YAGレーザーやエメラルドガラスレーザーなどの固体レーザー、InGaAsP、InGaAsやGaAsAlなどの半導体レーザー、ローダミン色素などの色素レーザーなどが挙げられる。またこれらの光源をファイバーにより増幅させるファーバーレーザーも用いることができる。なかでも、半導体レーザーは近年の技術的進歩により、小型化し、経済的にも他のレーザー光源よりも有利であるので好ましい。また、Nd−YAGレーザーも高出力であり、歯科用や医療用に多く利用されており、経済的にも安価であるので好ましい。
【0065】
(3)画像マスク(B’)側から紫外光を用いて露光し、感光性樹脂層(A)に潜像を形成する工程とは、上記の方法でレーザー照射された感光性樹脂印刷版原版に、紫外光を、好ましくは300〜400nmの波長の紫外光を、レーザーにより画像が形成された画像マスク(B’)を通して全面に露光し、画像マスク(B’)におけるレーザー融除部の下部の感光性樹脂層(A)を選択的に光硬化する工程である。
【0066】
露光の際、感光性樹脂印刷版原版の側面からも紫外光が入り込むので、紫外光が透過しないカバーで側面を覆うようにしておくのが良い。300〜400nmの波長を露光できる光源として、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などが使用できる。紫外光で露光された部分の感光性樹脂層(A)は、現像液により溶出分散できない物質に変化する。
【0067】
(4)現像処理し、画像マスク(B’)および紫外光未露光部の感光性樹脂層(A)を除去する工程は、例えば、感光性樹脂層(A)を溶解または分散可能な現像液を持つブラシ式洗い出し機を用いて現像することで達成される。感光性樹脂層(A)の担体樹脂として親水性樹脂を用いる場合、現像液は水を主成分とするものが好ましい。この工程を経て、紫外光で露光された部分が残存し、レリーフ像を有する樹脂凸版印刷版が得られる。剥離補助層(E)が残存している場合は、この現像工程で除去されることが好ましい。
【0068】
水を主成分とする現像液には、水道水、蒸留水、水のいずれかを主成分とし、炭素数1〜6のアルコールを含有してもよい。ここで、主成分とは、70重量%以上であることを言う。また、これらの液に感光性樹脂層(A)、中間層(C)、感熱マスク層(B)や剥離補助層(E)の成分が混入したものも使用できる。
【0069】
その後、必要に応じ、版面に付着している現像液を乾燥する処理、樹脂凸版印刷版の後露光や粘着性除去処理等を行うこともできる。
【0070】
本発明の感光性樹脂印刷版原版を用いて製造された樹脂凸版印刷版は、印刷機に装着できる樹脂凸版印刷版として好ましく使用される。
【実施例】
【0071】
各実施例・比較例における評価は次の方法で行った。
【0072】
<感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料の粒度分布>
感熱マスク層用の塗工液組成物を採取し、日機装株式会社製の粒度分布測定装置マイクロトラック9340upaを用いて測定した。
【0073】
<感熱マスク層中の顔料の粒度分布>
感熱マスク要素の感熱マスク層を電子顕微鏡により250倍で観察し、視野中に観察される各球状粒子(2次粒子)12個の直径を測定することにより求めた。
【0074】
<感熱マスク層の光学濃度>
マクベス透過濃度計「TR−927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollmorgen Instruments Corp.)社製)を用いて測定した。OD(UV)の測定にはオルソクロマチックフィルターを、OD(K)の測定にはウルトラバイオレットフィルターを用いた。OD(UV)、OD(K)ともに、5cm角の感熱マスク要素の感熱マスク層上で、あるいは5cm角の印刷版原版のカバーフィルム(D)を剥離して露出した面上で、それぞれランダムに3点ずつ測定し、平均値を算出した。
【0075】
<描画感度>
感光性樹脂印刷版原版からカバーフィルム(D)を剥離した後、赤外に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、支持体側がドラムに接するように装着した。レーザー出力11.5W、ドラム回転数700rpmの条件で、解像度150線のテストパターンとベタ部を有する画像を描画した。描画した感光性樹脂印刷版原版の表面をルーペで観察し、描画残りの有無を観察した。描画残りが認められない場合、描画感度を○(描画感度は高い)と評価し、軽微な描画残りが認められる場合を△、描画残りが認められる場合を×(描画感度は低い)と評価した。
【0076】
<遮光性>
印刷版のレリーフをルーペで観察し、曝光欠点の有無を観察した。曝光欠点が認められない場合、遮光性は高い(○)と評価し、曝光欠点が認められる場合、遮光性は低い(×)と評価した。
【0077】
<合成例1:変性ポリビニルアルコール1の合成>
冷却管をつけたフラスコ中に、部分鹸化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”(登録商標)KL−05(JIS K6726(1994)に示す方法で測定した鹸化度78.5%〜82.0%、日本合成化学工業(株)製)50重量部、無水コハク酸2重量部およびアセトン10重量部を入れ、60℃で6時間加熱した後、冷却管を外してアセトンを揮発させた。その後、100重量部のアセトンで未反応の無水コハク酸を溶出させる精製工程を2回行った後、60℃で減圧乾燥を5時間行い、水酸基にコハク酸がエステル結合した、変性ポリビニルアルコール1を得た。
【0078】
<合成例2:水溶性ポリアミド樹脂1の合成>
ε−カプロラクタム10重量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩90重量部および水100重量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、次いで水分を除去して水溶性ポリアミド樹脂1を得た。
【0079】
<合成例3:水溶性ポリアミド樹脂2の合成>
数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレンとアジピン酸との等モル塩60重量部、ε−カプロラクタム20重量部およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩20重量部を溶融重合して、相対粘度(ポリマー1gを抱水クロラール100mlに溶解し、25℃で測定した粘度)2.5の水溶性ポリアミド樹脂2を得た。この水溶性ポリアミド樹脂2は、主鎖に親水性基であるポリエチレングリコールセグメントを有する。
【0080】
<感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1の調製>
撹拌ヘラおよび冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、合成例2で得られた水溶性ポリアミド樹脂1を7.5重量部、合成例1で得られた変性ポリビニルアルコール1を47.5重量部、ジエチレングリコールを11重量部、水を38重量部およびエタノールを44重量部入れ、撹拌しながら110℃で30分間、次いで70℃で90分間加熱しポリマーを溶解させた。ついで、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日油(株)製)3重量部を添加し、70℃で30分間撹拌した。さらに“ブレンマー”GMR(グリシジルメタクリレートのメタクリル酸付加物、日油(株)製)12重量部、“ライトエステル”G201P(グリシジルメタクリレートのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)5重量部、“エポキシエステル”70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)6重量部、“NKエステル”A−200(平均分子量200のポリエチレングリコールのジアクリレート、新中村化学工業(株)製)5重量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルジメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)0.1重量部、“イルガキュア”184(α−ヒドロキシケトン、チバ・ガイギー(株)製)1.5重量部、“SuminolFastCyanineGreenGconc.”(酸性染料、カラーインデックスC.I.AcidGreen25、住友化学工業(株)製)0.01重量部、“ダイレクトスカイブルー6B”(浜本染料(株)製)0.01重量部、“フォーマスタ”(消泡剤、サンノプコ(株)製)0.05重量部、“チヌビン”(登録商標)327(紫外線吸収剤、チバ・ガイギー(株)製)0.015重量部、“TTP−44”(ビス−{2−(2−エトキシエトキシカルボニル)エチルチオ}オクチルチオ ホスフィン、淀化学(株)製)0.2重量部および“Q−1300”(アンモニウム N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、和光純薬工業(株)製)0.005重量部を添加して30分間撹拌し、流動性のある感光性樹脂層(A1)の塗工液組成物1を得た。
【0081】
<感光性樹脂層(A2)用の塗工液組成物2の調製>
撹拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、合成例3で得られた水溶性ポリアミド樹脂2を50重量部、水を34重量部およびエタノールを22重量部入れ、撹拌しながら90℃で2時間加熱し、水溶性ポリアミド樹脂2を溶解させた。70℃に冷却した後、“ブレンマー”G(グリシジメタクリレート、日油(株)製)1.5重量部を添加し、30分間撹拌した。さらに、“ブレンマー”GMR(グリセリンジメタクリレート、日油(株)製)8重量部、HOA−MPE(2−アクロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、共栄社化学(株)製)24重量部、PEG#400(ポリエチレングリコール、ライオン(株)製)5重量部、N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシ−3−メタアクロイルオキシプロピル)−m−キシレンジアミン5重量部、“NKエステル”A−TMM−3(テトラメチロールメタントリアクリレート 、新中村化学(株)製)4重量部、“イルガキュア”651(ベンジルジメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)1.3重量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.01重量部を添加して30分間撹拌し、感光性樹脂層(A2)用の塗工液組成物2を得た。
【0082】
<感光性樹脂シート1の製造>
250μmのポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製)にポリエステル系接着剤(“バイロン”(登録商標)30SS(共重合ポリエステル、東洋紡積(株)製)100重量部と“コロネート”(登録商標)L(多価イソシアネート、日本ポリウレタン工業(株)製)3重量部を混合した溶液)を乾燥後20μmの厚みになるようにバーコーターで塗布し、90℃で10分間乾燥させ、接着層を有する支持体を得た。
【0083】
前記支持体上に感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1を流延し、60℃のオーブン中で5時間乾燥し、支持体を含めて厚さ950μmの感光性樹脂シート1を得た。感光性樹脂シート1の厚さは、支持体上に所定厚のスペーサーを設置し、スペーサーからはみ出ている部分の感光性樹脂層用(A1)の塗工液組成物1を、水平な金尺で掻き出すことによって調整した。
【0084】
<感光性樹脂シート2の製造>
前記感光性樹脂シート1の製造に記載の方法により、接着層を有する支持体を得た。前記支持体上に、感光性樹脂層(A2)用の塗工液組成物2を流延し、60℃のオーブン中で2時間乾燥し、支持体を含めて厚さ950μmの感光性樹脂シート2を得た。感光性樹脂シート2の厚さは、支持体上に所定厚のスペーサーを設置し、スペーサーからはみ出ている部分の感光性樹脂層(A2)用の塗工液組成物2を、水平な金尺で掻き出すことによって調整した。
【0085】
<剥離補助層(E1)用の塗工液組成物1の調製>
“ゴーセノール”AL−06(鹸化度91%〜94%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)11重量部を水55重量部、メタノール14重量部、n−プロパノール10重量部およびn−ブタノール10重量部を80℃で撹拌して溶解させ、剥離補助層(E1)用の塗工液組成物1を得た。
【0086】
<剥離補助層(E2)用の塗工液組成物2の調製>
部分鹸化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KL−05(JIS K6726(1994)に示す方法で測定した鹸化度78.5モル%〜82.0モル%、日本合成化学工業(株)製)11重量部を水55重量部、メタノール14重量部、n−プロパノール10重量部およびn−ブタノール10重量部を80℃で撹拌して溶解させ、剥離補助層(E2)用の塗工液組成物2を得た。
【0087】
<感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1の調製>
“MA100”(カーボンブラック、1次粒径(カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径)24nm、三菱化学(株)製)23重量部、“ダイヤナール”(登録商標)BR−95(アルコール不溶性のアクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製)15重量部、可塑剤ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、(株)ジェイ・プラス製)6重量部およびメチルイソブチルケトン30重量部をあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液1を調製した。分散液1に“アラルダイト”6071(エポキシ樹脂、旭チバ(株)製)20重量部、“ユーバン”(登録商標)2061(メラミン樹脂、三井化学(株)製)27重量部、“ライトエステル”P−1M(リン酸モノマー、共栄社化学(株)製)0.7重量部およびメチルイソブチルケトン140重量部を添加し室温で30分間撹拌した。その後、固形分濃度が33重量%になるようにさらにメチルイソブチルケトンを添加した分散液を、50℃で6日間加熱処理して感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1を得た。前記方法により顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が35%、粒度分布の極大値における粒径が243nmであった。
【0088】
<感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2の調製>
“MA100”(カーボンブラック、三菱化学(株)製)23重量部、“ダイヤナール”BR−95(アルコール不溶性のアクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製)15重量部、可塑剤ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、(株)ジェイ・プラス製)1重量部およびメチルイソブチルケトン30重量部をあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液2を調製した。分散液2にAER6071(エポキシ樹脂、旭化成ケミカルズ(株)製)1重量部、“ユーバン”20SE60(メラミン樹脂、三井化学(株)製)1重量部、“ライトエステル”P−1M(リン酸モノマー、共栄社化学(株)製)0.05重量部およびメチルイソブチルケトン100重量部を添加し室温で30分間撹拌した。さらに、50℃で6日間加熱処理して感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2を得た。前記方法により顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が35%、粒度分布の極大値における粒径が243nmであった。
【0089】
<感熱マスク層(B3)用の塗工液組成物3の調製>
分散液の加熱処理を50℃で2日間とする以外は感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1と同様の方法で感熱マスク層(B3)用の塗工液組成物3を得た。前記方法により顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が22%、粒度分布の極大値における粒径が145nmであった。
【0090】
<感熱マスク層(B4)用の塗工液組成物4の調製>
分散液の加熱処理を50℃で2日間とする以外は感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2と同様の方法で感熱マスク層(B4)用の塗工液組成物4を得た。顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が22%、粒度分布の極大値における粒径が145nmであった。
【0091】
<感熱マスク層(B5)用の塗工液組成物5の調製>
分散液の加熱処理を行わない以外は感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1と同様の方法で感熱マスク層(B5)用の塗工液組成物5を得た。顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が4%、粒度分布の極大値における粒径が122nmであった。
【0092】
<感熱マスク層(B6)用の塗工液組成物6の調製>
分散液の加熱処理を行わない以外は感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2と同様の方法で感熱マスク層(B6)用の塗工液組成物6を得た。顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が4%、粒度分布の極大値における粒径が122nmであった。
【0093】
<中間層(C1)用の塗工液組成物1の調製>
合成例1で得られた変性ポリビニルアルコール1 5重量部を水47.5重量部および炭素数1〜4のアルコール混合液47.5重量部に溶解させ、中間層(C1)用の塗工液組成物1を得た。
【0094】
<中間層(C2)用の塗工液組成物2の調製>
“ゴーセノール”L−17(鹸化度50%程度のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)3.2重量部と合成例3で得られた水溶性ポリアミド樹脂2 11.9重量部を水38.0重量部および炭素数1〜4のアルコール混合液46.9重量部に溶解させ、中間層(C2)用の塗工液組成物2を得た。
【0095】
<感熱マスク要素1の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、剥離補助層(E1)用の塗工液組成物1を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(E1)/カバーフィルム(D)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(E1)側に、感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が1.0μmになるように塗布し、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(B1)/剥離補助層(E1)/カバーフィルム(D)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(B1)側に、中間層(C1)用の塗工液組成物1を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布し、180℃で30秒間乾燥し、中間層(C1)/感熱マスク層(B1)/剥離補助層(E1)/カバーフィルム(D)の積層体である感熱マスク要素1を得た。この感熱マスク要素1の感熱マスク層(B1)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=2.8、OD(K)=2.0であり、OD(UV)/OD(K)=1.4であった。前記方法により顔料粒度分布を測定したところ、粒径240nm以上の割合が33%、粒度分布の極大値における粒径が243nmであった。すなわち、感熱マスク層中の顔料粒度分布が感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布と同等であることが分かった。
【0096】
<感熱マスク要素2の製造>
感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1、中間層(C1)用の塗工液組成物1、剥離補助層(E1)用の塗工液組成物1にかえて、それぞれ感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2、中間層(C2)用の塗工液組成物2、剥離補助層(E2)用の塗工液組成物2を用いた以外は感熱マスク要素1と同様の方法で、中間層(C2)/感熱マスク層(B2)/剥離補助層(E2)/カバーフィルム(D)の積層体である感熱マスク要素2を得た。この感熱マスク要素2の感熱マスク層(B2)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=2.8、OD(K)=2.0であり、OD(UV)/OD(K)=1.4であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、感熱マスク層中の顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が35%、粒度分布の極大値における粒径が243nmであると推測できる。
【0097】
<感熱マスク要素3の製造>
感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1にかえて感熱マスク層(B3)用の塗工液組成物3を用いた以外は感熱マスク要素1と同様の方法で、中間層(C1)/感熱マスク層(B3)/剥離補助層(E1)/カバーフィルム(D)の積層体である感熱マスク要素3を得た。この感熱マスク要素3の感熱マスク層(B3)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=2.4、OD(K)=2.0であり、OD(UV)/OD(K)=1.2であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、感熱マスク層中の顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が22%、粒度分布の極大値における粒径が145nmであると推測できる。
【0098】
<感熱マスク要素4の製造>
感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2にかえて感熱マスク層(B4)用の塗工液組成物4を用いた以外は感熱マスク要素2と同様の方法で、中間層(C2)/感熱マスク層(B4)/剥離補助層(E2)/カバーフィルム(D)の積層体である感熱マスク要素4を得た。この感熱マスク要素4の感熱マスク層(B4)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=2.4、OD(K)=2.0であり、OD(UV)/OD(K)=1.2であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、感熱マスク層中の顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が22%、粒度分布の極大値における粒径が145nmであると推測できる。
【0099】
<感熱マスク要素5の製造>
感熱マスク層(B1)用の塗工液組成物1にかえて感熱マスク層(B5)用の塗工液組成物5を用いた以外は感熱マスク要素1と同様の方法で、中間層(C1)/感熱マスク層(B5)/剥離補助層(E1)/カバーフィルム(D)の積層体である感熱マスク要素5を得た。この感熱マスク要素5の感熱マスク層(B5)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=2.2、OD(K)=2.0であり、OD(UV)/OD(K)=1.1であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、感熱マスク層中の顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が4%、粒度分布の極大値における粒径が122nmであると推測できる。
【0100】
<感熱マスク要素6の製造>
感熱マスク層(B2)用の塗工液組成物2にかえて感熱マスク層(B6)用の塗工液組成物6を用いた以外は感熱マスク要素2と同様の方法で、中間層(C2)/感熱マスク層(B6)/剥離補助層(E2)/カバーフィルム(D)の積層体である感熱マスク要素6を得た。この感熱マスク要素6の感熱マスク層(B6)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=2.2、OD(K)=2.0であり、OD(UV)/OD(K)=1.1であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、感熱マスク層中の顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が4%、粒度分布の極大値における粒径が122nmであると推測できる。
【0101】
<感熱マスク要素7の製造>
感熱マスク層の乾燥膜厚が1.8μmとなるようにした以外は感熱マスク要素5と同様の方法で感熱マスク要素7を得た。この感熱マスク要素7の感熱マスク層(B5’)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=3.9、OD(K)=3.5であり、OD(UV)/OD(K)=1.1であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、感熱マスク層中の顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が4%、粒度分布の極大値における粒径が122nmであると推測できる。
【0102】
<感熱マスク要素8の製造>
感熱マスク層の乾燥膜厚が1.8μmとなるようにした以外は感熱マスク要素6と同様の方法で感熱マスク要素8を得た。この感熱マスク要素8の感熱マスク層(B6’)の光学濃度を測定したところ、OD(UV)=3.9、OD(K)=3.5であり、OD(UV)/OD(K)=1.1であった。感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布から、顔料粒度分布は、粒径240nm以上の割合が4%、粒度分布の極大値における粒径が122nmであると推測できる。
【0103】
感熱マスク要素の構成、感熱マスク層用の塗工液組成物加熱処理条件、感熱マスク層用の塗工液組成物中の顔料粒度分布、感熱マスク層の光学濃度を表1にまとめた。
【0104】
【表1】

【0105】
(実施例1)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素1を中間層(C1)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、支持体/感光性樹脂層(A1)/中間層(C1)/感熱マスク層(B1)/剥離補助層(E1)/カバーフィルム(D)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版1を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版1からカバーフィルム(D)を剥離した後の積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
【0106】
感光性樹脂印刷版原版1を用いて、前記方法により描画感度を評価したところ、ベタ部の感熱マスク層(B1)が実質上融除され、感熱マスク層の残りによる描画不良(描画残り)は発生していなかった。また、感熱マスク層(B1)は架橋されているため外傷に強く、プレートセッターへの装着などの取り扱いが容易であった。
【0107】
続いて、感熱マスク層(B1)に形成された画像マスク(B1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(極大波長:365nm、露光量:1000mJ/cm)。次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW430II(東レ(株)製)により25℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、剥離補助層(E1)、画像マスク(B1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像され、露光により硬化したレリーフが残り、画像マスク(B1’)に対してネガティブなレリーフを忠実に再現していた。
【0108】
さらに、得られたレリーフを60℃で10分間乾燥し、その後、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光(露光量:1000mJ/cm)して、印刷版1を得た。得られた印刷版1のOD(UV)/OD(K)を前記方法により測定したところ1.4であり、前記方法により遮光性を評価したところ、曝光欠点は発生していなかった。
【0109】
(実施例2)
感光性樹脂シート1にかえて感光性樹脂シート2を、感熱マスク要素1にかえて感熱マスク要素2を用いた以外は実施例1と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版2および印刷版2を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0110】
(実施例3)
感熱マスク要素1にかえて感熱マスク要素3を用いた以外は実施例1と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版3および印刷版3を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0111】
(実施例4)
感熱マスク要素2にかえて感熱マスク要素4を用いた以外は実施例2と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版4および印刷版4を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0112】
(比較例1)
感熱マスク要素1にかえて感熱マスク要素5を用いた以外は実施例1と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版5および印刷版5を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0113】
(比較例2)
感熱マスク要素2にかえて感熱マスク要素6を用いた以外は実施例2と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版6および印刷版6を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0114】
(比較例3)
感熱マスク要素1にかえて感熱マスク要素7を用いた以外は実施例1と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版7および印刷版7を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0115】
(比較例4)
感熱マスク要素2にかえて感熱マスク要素8を用いた以外は実施例2と同様の手法で感光性樹脂印刷版原版8および印刷版8を得た。感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0116】
(比較例5)
Flint Group製“Nyloprint”(登録商標)WF95HDの感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0117】
(比較例10)
東洋紡積(株)製“Printight”(登録商標)QF95JCの感熱マスク層の光学濃度、描画感度と遮光性を評価した結果を表2に示す。
【0118】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも感光性樹脂層(A)、および顔料を含有する感熱マスク層(B)をこの順に有する感光性樹脂印刷版原版であって、前記顔料を含有する感熱マスク層(B)が、OD(UV)/OD(K)≧1.2を満たすことを特徴とする感光性樹脂印刷版原版。
【請求項2】
前記感熱マスク層(B)中の顔料粒度分布において、粒径240nm以上の顔料が20%以上であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項3】
支持体上に、少なくとも感光性樹脂層(A)を形成する工程、および粒径240nm以上の顔料が20%以上である粒度分布を有する顔料を含有する感熱マスク層用の塗工液組成物を用いて感熱マスク層(B)を形成する工程を有することを特徴とする請求項1または2記載の感光性樹脂印刷版原版の製造方法。
【請求項4】
前記感熱マスク層用の塗工液組成物が、40℃以上の温度で1時間以上加熱処理されていることを特徴とする請求項3記載の感光性樹脂印刷版原版の製造方法。

【公開番号】特開2012−68423(P2012−68423A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213046(P2010−213046)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】