説明

感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント及びレジストパターンの形成方法

【課題】 優れた解像度(特に20μm以下)を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 2以上のエチレン性不飽和結合を分子内に有する(A)光重合性化合物と、前記(A)光重合性化合物の光重合反応を開始させる(B)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)光重合性化合物の分子内には、該(A)光重合性化合物を130〜250℃の温度条件で加熱した場合に切断される結合を有する特性基が更に含まれていることを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法並びに光硬化物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造分野において、エッチングやめっき等に用いられるレジスト材料としては、感光性樹脂組成物やこれを支持フィルムに積層して保護フィルムで被覆することにより得られる感光性エレメントが広く用いられている。
【0003】
プリント配線板を製造する方法としては、以下の方法が一般的である。すなわち、まず感光性樹脂組成物を回路形成用基板(銅基板等)上に積層(ラミネート)し、感光性樹脂組成物の所定部分に活性光線を照射(パターン露光)して露光部を光硬化させ、次いで未硬化部分を現像液で除去(現像)することによりレジストパターンを形成させる。そして、レジストパターンを形成させた基板にエッチング又はめっき処理を施してパターンを形成させた後、硬化部分(レジストパターン)を基板上から剥離除去する。
【0004】
ここで、未硬化部分の除去は、主に現像液としてアルカリ性水溶液を用いて行われる。このアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液や0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液等が用いられる。現像処理の主目的は未硬化部分の溶解除去であるが、硬化部分についても溶解はしないものの現像液に対して膨潤する。このような硬化部分の膨潤は、レジストパターンの密着不良や線幅太りを発生させ、解像度低下の主要因となっている。したがって、解像度を向上させるためには、アルカリ性水溶液に対して膨潤しにくい硬化部分を形成可能な感光性樹脂組成物の設計が有効である。
【0005】
一方、硬化部分(レジストパターン)は、現像に用いたアルカリ性水溶液よりもさらに強アルカリ性の水溶液で剥離除去される。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10重量%水酸化ナトリウム水溶液や1〜10重量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。硬化部分の除去の原理は、膨潤による応力発生と、基板との密着性低下である。したがって、硬化部分の除去性を向上させるためには、アルカリ性水溶液に対して膨潤しやすい硬化部分を形成可能な感光性樹脂組成物の設計が有効である。
【0006】
すなわち、解像度と除去性とは互いにトレードオフの関係にあるため、これらの特性を高い水準で両立させることが困難であった。特に、スペース幅やライン幅が20μm以下のレジストパターンを形成することが可能な優れた解像度を有しつつ、このレジストパターンを確実に除去することが可能な感光性樹脂組成物を得ることが困難であった。
【0007】
ところで、近年、感光性樹脂組成物の構成材料について様々な検討がなされており、例えば、加熱により再可溶化できる光架橋型高分子及びそれを形成するための組成物が提案されている(非特許文献1参照)。また、熱硬化性樹脂の分野では、熱等の外部刺激によって解離する性質を有する架橋性高分子及びそれを形成するための組成物についての報告がなされている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】白井正充、「未来材料」、第2巻、9号、p.20−25、2002年
【非特許文献2】大塚英幸、他2名、「高分子学会予稿集」、第48巻、8号、p.1635−1636、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1に記載されている組成物は、エポキシ基を有するモノマーを架橋剤として用いたものであり、高密度及び高解像度(特に20μm以下)が要求されるプリント配線板等を製造する用途に用いた場合、感度、解像度、現像性において不十分であり、さらに、かかる組成物により形成される光架橋型高分子では、除去性についても不十分であることを本発明者らは見出した。
【0010】
また、上記非特許文献2に記載されている組成物は、重合開始剤としてAIBNを用いた熱硬化性樹脂組成物であり、かかる組成物は活性光線の照射により光硬化部を形成させるレジストパターンの形成方法やプリント配線板の製造方法において使用することが困難であった。
【0011】
ところで、感光性樹脂組成物の分野では、形成したレジストパターンをさらに硬化させるために、後加熱処理を行うことが知られている。後加熱を行うことで、感光性樹脂組成物中の化合物の重合をさらに進行させて、より硬く、基板に対する密着性のよいレジストパターンを形成することができる。しかし、その一方で、かかる後加熱処理により硬化したレジストパターンは、基板からの除去性が低下してしまう。
【0012】
そのため、例えば、上記特許文献1又は2に記載されているような組成物を用いてレジストパターンを形成した場合、かかるレジストパターンの加熱による分解と重合との競争反応が起こり、結果として解像度や除去性の向上に関して十分な効果が得られず、単に製造工程を複雑化してしまうだけであった。特に、スペース幅やライン幅が20μm以下のレジストパターンを形成し、且つ、このレジストパターンを確実に除去することが困難であった。
【0013】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた解像度(特に20μm以下)を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能な感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法並びに光硬化物の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の加熱温度で分解する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物であれば、上記目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、2以上のエチレン性不飽和結合を分子内に有する(A)光重合性化合物と、上記(A)光重合性化合物の光重合反応を開始させる(B)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(A)光重合性化合物の分子内には、該(A)光重合性化合物を130〜250℃の温度条件で加熱した場合に切断される結合を有する特性基が更に含まれていることを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
かかる感光性樹脂組成物であれば、基板に対する密着性が高く、現像液に対して膨潤しにくい光硬化物を形成することが可能であり、優れた解像度を得ることができる。そして、形成した光硬化物の除去性については、上記の光重合性化合物を用いているため、光硬化物を所定の温度で加熱することにより分解せしめることができ、基板に対する密着性を低下させ、硬化物を除去するための溶液に対して膨潤しやすくすることができる。このとき、本発明の感光性樹脂組成物であれば、光硬化物の加熱による重合の進行速度に対して、加熱による分解の進行速度を飛躍的に高めることができ、光硬化物の除去性を飛躍的に向上させることができる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物によれば、解像度と除去性とのトレードオフの関係を解消し、優れた解像度を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能となる。特に、スペース幅やライン幅(解像度)が20μm以下のレジストパターンを形成することが可能な優れた解像度と、このレジストパターンを確実に除去することが可能な優れた除去性とを同時に得ることができる。
【0017】
ここで、(A)光重合性化合物における「130〜250℃の温度条件で加熱した場合に切断される結合を有する特性基」とは、(A)光重合性化合物を含む感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層、及び、該感光性樹脂組成物層を光硬化せしめてなる光硬化物のうちいずれかの状態のものを130〜250℃の温度条件で加熱した場合に、充分に切断されうる結合を有している基をいう。なお、この加熱時には、酸が存在していてもよい。また、前記特性基は、そのすべての結合が上述の条件で切断される必要はなく、本発明の効果を充分に得ることが可能な量が切断されうるものであればよい。
【0018】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(C)130℃以上の加熱又は活性光線の照射により酸を発生する化合物を更に含有していることが好ましい。
【0019】
かかる感光性樹脂組成物であれば、基板に対する密着性が高く、現像液に対して膨潤しにくい光硬化物を形成することが可能であり、かつ、形成する感光性樹脂組成物層の薄膜化が可能であるため、優れた解像度を得ることができる。そして、形成した光硬化物の除去性については、上記の光重合性化合物を用いているため、光硬化物を所定の温度で加熱することにより分解せしめることができ、さらには、130℃以上の加熱又は活性光線の照射により酸を発生する化合物から生じた酸の触媒作用により光硬化物を加熱した際の光硬化物の分解が促進されるため、基板に対する密着性を低下させ、光硬化物を除去するための溶液に対して膨潤しやすくすることができる。このとき、本発明の感光性樹脂組成物であれば、光硬化物の加熱による重合の進行速度に対して、加熱による分解の進行速度を飛躍的に高めることができ、光硬化物の除去性を飛躍的に向上させることができる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物によれば、解像度と除去性とのトレードオフの関係を従来技術では不可能であった充分に高い水準で解消し、優れた解像度を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能となる。特に、スペース幅やライン幅(解像度)が20μm以下のレジストパターンを形成することが可能な優れた解像度と、このレジストパターンを確実に除去することが可能な優れた除去性とを同時に得ることができる。
【0020】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(D)バインダーポリマーを更に含有していることが好ましい。また、上記(A)光重合性化合物の重量平均分子量が、5,000〜300,000であることが好ましい。
【0021】
これらの感光性樹脂組成物であれば、基板に対する密着性が高く、現像液に対して膨潤しにくい光硬化物を形成することが可能であり、優れた解像度を得ることができる。特に、これらの感光性樹脂組成物は、(D)バインダーポリマー、及び、重量平均分子量が5,000〜300,000である(A)光重合性化合物の少なくとも一方を含んだ構成を有しているため、感光性樹脂組成物の塗膜性を向上させることができるとともに、光硬化物の脆さを十分に抑えることができる。そして、形成した光硬化物の除去性については、上記の光重合性化合物を用いているため、光硬化物を所定の温度で加熱することにより分解せしめることができ、基板に対する密着性を低下させ、硬化物を除去するための溶液に対して膨潤しやすくすることができる。このとき、本発明の感光性樹脂組成物であれば、光硬化物の加熱による重合の進行速度に対して、加熱による分解の進行速度を飛躍的に高めることができ、光硬化物の除去性を飛躍的に向上させることができる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物によれば、解像度と除去性とのトレードオフの関係を解消し、優れた解像度を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能となる。特に、スペース幅やライン幅(解像度)が20μm以下のレジストパターンを形成することが可能な優れた解像度と、このレジストパターンを確実に除去することが可能な優れた除去性とを同時に得ることができる。
【0022】
ここで、上述した本発明の効果をより十分に得る観点から、上記(D)バインダーポリマーの重量平均分子量は5,000〜300,000であることが好ましく、また、酸価は10〜300mgKOH/gであることが好ましい。
【0023】
また、本発明の感光性樹脂組成物において、上記(A)光重合性化合物中の上記特性基は、下記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を有していることが好ましい。
【0024】
【化1】



[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【0025】
【化2】



[式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【0026】
【化3】



[式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは二価の有機基を示す。]
【0027】
【化4】



[式(4)中、R及びR10はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【0028】
このような構造を有する特性基を分子内に含む(A)光重合性化合物であれば、130〜250℃の加熱により上記特性基中の結合が確実に切断されるとともに、優れた除去性を得ることが可能となる傾向がある。したがって、上述した本発明の効果をより十分に得ることが可能となる傾向がある。
【0029】
なお、このような上記一般式(1)で表される特性基において、加熱により切断される結合とは、例えば、O−C−O(Cは一般式(1)中、R及びRが結合している炭素原子)におけるO−C間及び/又はC−O間の結合であると考えられる。かかる結合が切断されることにより、上記一般式(1)で表される特性基からは、例えば、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物や下記一般式(6)で表される構造を有する化合物が生成すると予想される。
【0030】
【化5】



【0031】
【化6】



【0032】
また、上記一般式(2)又は(4)で表される特性基において、加熱により切断される結合とは、例えば、C−O−C’(C’は一般式(2)中ではR及びRが、一般式(4)中ではR及びR10が結合している方の炭素原子)におけるO−C’間の結合であると考えられる。かかるO−C’間の結合が切断されることにより、上記一般式(2)で表される特性基からは、例えば、上記一般式(5)で表される構造を有する化合物や下記一般式(7)で表される構造を有する化合物が、上記一般式(4)で表される特性基からは、例えば、下記一般式(8)で表される構造を有する化合物や下記一般式(9)で表される構造を有する化合物が、それぞれ生成すると予想される。
【0033】
【化7】



[式(7)中、R3’は、Rを構成する炭素原子のうち上記C’に隣接する炭素原子から水素原子が1つ取れた基である。]
【0034】
【化8】



【0035】
【化9】



[式(9)中、R9’は、Rを構成する炭素原子のうち上記C’に隣接する炭素原子から水素原子が1つ取れた基である。]
【0036】
上記一般式(1)、(2)又は(4)で表される特性基が切断された結果、光硬化物は上記一般式(5)又は(8)で表されるカルボキシル基を有することとなり、アルカリ性水溶液等の光硬化物を除去するための溶液に対して膨潤しやすくなり、光硬化物の除去性が飛躍的に向上することとなる。
【0037】
また、上記一般式(3)で表される特性基において、加熱により切断される結合とは、例えば、O−C−O(Cは一般式(3)中でR及びRが結合している炭素原子)におけるO−C間及び/又はC−O間の結合であると考えられる。かかる結合が切断されることにより、上記一般式(3)で表される特性基からは、例えば、下記一般式(10)で表される構造を有する化合物や下記一般式(11)で表される構造を有する化合物が生成すると予想される。
【0038】
【化10】



[式(10)中、Xは二価の有機基を示す。]
【0039】
【化11】



【0040】
上記一般式(3)で表される特性基が切断された結果、光硬化物は上記一般式(10)で表される水酸基を有することとなるため、アルカリ性水溶液等の光硬化物を除去するための溶液に対して膨潤しやすくなり、光硬化物の除去性が飛躍的に向上することとなる。
【0041】
本発明はまた、支持フィルムと、該支持フィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備えることを特徴とする感光性エレメントを提供する。
【0042】
かかる感光性エレメントは、上述した効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備えているため、解像度と除去性を高い水準で両立させることができるとともに、当該感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する際の作業性及び歩留まりを向上させることができる。
【0043】
本発明は更に、回路形成用基板上に、上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層又は上記感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を積層し、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、露光部以外の部分を除去することを特徴とするレジストパターンの形成方法を提供する。
【0044】
かかるレジストパターンの形成方法によれば、上述した効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物又は本発明の感光性エレメントを用いるため、優れた解像度が得られるとともに、除去性の優れたレジストパターンを形成することができる。
【0045】
本発明はまた、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンの形成された回路形成用基板を、エッチング又はめっきする回路形成工程と、レジストパターンを、130〜250℃に加熱した後又は加熱しながら、回路形成用基板上から除去する除去工程と、を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法を提供する。
【0046】
かかる製造方法によれば、上記本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンを除去する際に、130〜250℃に加熱した後又は加熱しながら除去を行うことによって、光重合性化合物における上記特性基中の結合が加熱により容易に切断され、レジストパターンの回路形成用基板との密着性を低下させるとともに、現像液に対して膨潤しやすくすることができ、レジストパターンを容易に且つ確実に除去することが可能となる。特に、スペース幅やライン幅が20μm以下のレジストパターンを形成した場合に、これを確実に除去することが可能となる。
【0047】
ここで、上記の効果をより確実に得る観点から、除去工程におけるレジストパターンの除去は、アルカリ性水溶液を用いて行われることが好ましく、また、レジストパターンの加熱時間は、1分以上であることが好ましい。
【0048】
本発明はさらに、上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層又は上記感光性エレメントにおける上記感光性樹脂組成物を支持基板上に積層し、活性光線を照射して前記感光性樹脂組成物層を光硬化せしめた光硬化物を、130〜250℃に加熱した後又は加熱しながら支持基板上から除去することを特徴とする光硬化物の除去方法を提供する。
【0049】
かかる光硬化物の除去方法は、上述のプリント配線板の製造方法への適用に限定されず、感光性樹脂組成物を光硬化せしめた後にこれを除去する必要がある用途に特に制限なく適用することができる。そして、かかる光硬化物の除去方法によれば、上述した効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物又は本発明の感光性エレメントを用いているため、130〜250℃に加熱した後又は加熱しながら除去を行うことにより、支持基板上から容易に且つ確実に除去することができる。
【0050】
ここで、上記の効果をより確実に得る観点から、光硬化物の除去は、アルカリ性水溶液を用いて行われることが好ましく、また、光硬化物の加熱時間は、1分以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、優れた解像度を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能な感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法並びに光硬化物の除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0054】
(感光性樹脂組成物)
上述のように、本発明の感光性樹脂組成物は、以下の(A)及び(B)成分:
(A)2以上のエチレン性不飽和結合を分子内に有する光重合性化合物、
(B)上記(A)光重合性化合物の光重合反応を開始させる光重合開始剤、
を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(A)光重合性化合物の分子内には、該(A)光重合性化合物を130〜250℃の温度条件で加熱した場合に切断される結合を有する特性基が更に含まれていることを特徴とするものである。
【0055】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分及び(B)成分の他に、更に以下の(C)成分及び/又は(D)成分:
(C)130℃以上の加熱又は活性光線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という)、
(D)バインダーポリマー、
を含有するものであることが好ましい。
【0056】
以下、これら(A)〜(D)成分について詳細に説明する。
【0057】
まず、(A)光重合性化合物について説明する。
【0058】
(A)光重合性化合物は、上記構成を有する化合物であり、当該化合物を130〜250℃の温度条件で加熱することにより、上記特性基中の結合が切断される。
【0059】
ここで、130〜250℃の温度条件で(A)光重合性化合物を加熱することで切断される結合を有する特性基は、上記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0060】
上記一般式(1)中のRは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることが特に好ましい。また、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、水素原子又は炭素数が1〜10(更には1〜5)のアルキル基であることが好ましい。
【0061】
上記一般式(2)中のR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。また、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、水素原子又は炭素数が1〜10(更には1〜5)のアルキル基であることが好ましい。
【0062】
上記一般式(3)中のRは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることが特に好ましい。また、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、水素原子又は炭素数が1〜10(更には1〜5)のアルキル基であることが好ましい。更に、Xは二価の有機基であることが必要であるが、この二価の有機基は炭素数1〜12のアルキレン基、又はフェニレン基であることが好ましい。
【0063】
上記一般式(4)中のR及びR10は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基であることが必要であるが、このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
【0064】
また、(A)光重合性化合物は、上記特性基中の結合が切断される加熱温度が130〜250℃であることが必要であるが、130〜220℃であることが好ましく、150〜200℃であることがより好ましい。上記結合が130℃未満の加熱温度で切断される場合、感光性樹脂組成物層を形成する際の溶剤乾燥等の意図しない工程で結合が切断される恐れがあるため好ましくない。また、上記結合の切断に250℃を超える加熱温度を必要とする場合、かかる加熱により、形成された回路等の熱的損傷が発生したり、作業の安全性が低下したりといった問題が生じる。
【0065】
ここで、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物としては、例えば、以下のようにして合成されるものを用いることができる。
【0066】
上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第1の合成例としては、1分子中に1つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、1分子中に2つ以上のビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0067】
1分子中に1つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルスクシネート、β−カルボキシエチルアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。
【0068】
1分子中に2つ以上のビニルエーテル基を有する化合物としては、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル等が挙げられる。これらは、アイエスピージャパン(株)やBASF(株)等から商業的に入手可能である。また、これら以外にも、ビスフェノールやフェノール樹脂等のポリフェノール類とハロゲン化アルキルビニルエーテルとの縮合物、並びに、ポリイソシアネート化合物とヒドロキシエチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルーテルとの反応物等が挙げられる。
【0069】
上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例としては、1分子中に1つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0070】
1分子中に1つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第1の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0071】
1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、上述した1分子中に1つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーのカルボキシル基中にあるヒドロキシル基を塩素で置換した化合物と、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル等の1つ以上のヒドロキシル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との反応によって合成される。
【0072】
上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第3の合成例としては、1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物と、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0073】
1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸等の炭素数2〜22の脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の脂環式ポリカルボン酸;1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂、アクリル樹脂、マレイン化ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0074】
1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0075】
上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第4の合成例としては、カルボン酸含有単量体を必須共重合成分とする高分子化合物と、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0076】
上記カルボン酸含有単量体を必須共重合成分とする高分子化合物としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの中でもアクリル系樹脂が特に好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
上記アクリル系樹脂は、カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体とその他のラジカル重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられるが、メタクリル酸が特に好ましい。
【0078】
上記その他のラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、これらの構造異性体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
また、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0081】
上記一般式(2)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物としては、例えば、1分子中に1つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーのカルボキシル基中にあるヒドロキシル基を塩素で置換した化合物と、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールなどの1分子中に2つ以上の3級ヒドロキシル基を有する化合物との付加反応によって合成されるものを用いることができる。
【0082】
上記一般式(3)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第1の合成例としては、1分子中に2つ以上のフェノール性又はアルコール性水酸基を有する化合物と、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0083】
1分子中に2つ以上のフェノール性又はアルコール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビフェノール、ビフェノールのエチレングリコール付加物、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’,1’’−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、(2−ヒドロキシ−5−メチル)−1,3−ベンゼンジメタノール、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、α’,α’’,α’’’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルゼンなどが挙げられる。
【0084】
また、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0085】
上記一般式(3)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例としては、1分子中に1つのフェノール性又はアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0086】
1分子中に1つのフェノール性又はアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0087】
また、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0088】
上記一般式(3)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第3の合成例としては、1分子中に1つのフェノール性又はアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、1分子中に2つ以上のビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0089】
1分子中に1つのフェノール性又はアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、上記一般式(3)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第2の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0090】
1分子中に2つ以上のビニルエーテル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第1の合成例において先に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0091】
上記一般式(3)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第4の合成例としては、フェノール性又はアルコール性水酸基含有単量体、或いはカルボキシル基含有単量体を必須共重合成分とする高分子化合物と、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基及び1つのビニルエーテル基を有する化合物との付加反応が挙げられる。
【0092】
上記フェノール性水酸基含有単量体を必須共重合成分とする高分子化合物としては、例えば、パラヒドロキシスチレン樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。また、アルコール性水酸基含有単量体を必須共重合成分とする高分子化合物としては、例えば、側鎖にヒドロキシアルキル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。更に、カルボキシル基含有単量体を必須共重合成分とする高分子化合物としては、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
上記一般式(4)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物としては、例えば、1分子中に1つのイソシアネート基を有する(メタ)アクリルモノマーと、1分子中に2つ以上の3級ヒドロキシル基を有する化合物との付加反応によって合成されるものを用いることができる。
【0094】
1分子中に1つのイソシアネート基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、イソシアネートエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0095】
1分子中に2つ以上の3級ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,7−ジメチル−2,7−オクタンジオール、2,9−ジメチル−2,9−デカンジオール、2,11−ジメチル−2,11−ドデカンジオール、などが挙げられる。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物において、これらの(A)光重合性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
また、本発明の感光性樹脂組成物において、(A)光重合性化合物として上記一般式(1)で表される構造の特性基を有する(A)光重合性化合物の第4の合成例により合成される化合物を用いる場合、その重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は5,000〜300,000であることが好ましい。この重量平均分子量が5,000〜300,000である(A)光重合性化合物は、バインダーポリマーとしての役割を果たすものであることが好ましい。更に、この(A)光重合性化合物の重量平均分子量は、20,000〜300,000であることがより好ましく、25,000〜150,000であることが特に好ましい。なお、この(A)光重合性化合物を用いるとともに、後述する(D)バインダーポリマーを更に用いてもよい。
【0098】
本発明の感光性樹脂組成物は、このような(A)光重合性化合物以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、分子内にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する他の光重合性化合物を含有してもよい。他の光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0099】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。ここで、上記EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。また、上記POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。
【0100】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(商品名、新中村化学工業(株)製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業(株)製)として商業的に入手可能である。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンの1分子中のエチレンオキサイド基の数は4〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましい。
【0101】
上記分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等)との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、たとえば、UA−11(商品名、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、たとえば、UA−13(商品名、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0102】
上記ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレート等が挙げられる。
【0103】
上記フタル酸系化合物としては、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロルオキシアルキル−o−フタレート等が挙げられる。
【0104】
次に、(B)光重合開始剤について説明する。
【0105】
(B)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0106】
次に、(C)酸発生剤について説明する。
【0107】
(C)酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン及びその誘導体等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミドスルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物等が挙げられる。
【0108】
次に、(D)バインダーポリマーについて説明する。
【0109】
(D)バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
上記バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0111】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、及びこれらの構造異性体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
上記バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を有することが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とをラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、メタクリル酸が好ましい。
【0113】
また、バインダーポリマーは、密着性及び除去性の見地からスチレン及び/又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有していることが好ましい。上記スチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有する場合には、密着性及び除去性を共に良好にする観点から、3〜30質量%含有することが好ましく、4〜28質量%含有することがより好ましく、5〜27質量%含有することが特に好ましい。この含有量が3質量%未満では密着性が劣る傾向があり、30質量%を超えると除去時間(剥離開始時間)が長くなる傾向がある。
【0114】
バインダーポリマーの酸価は、10〜300mgKOH/gであることが好ましく、30〜200mgKOH/gであることがより好ましく、45〜150mgKOH/gであることが特に好ましい。この酸価が10mgKOH/g未満では現像時間が長くなる傾向があり、300mgKOH/gを超えると光硬化したレジストの耐現像液性が低下する傾向がある。また、現像工程として溶剤現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体を少量に調製することが好ましい。
【0115】
バインダーポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は、5,000〜300,000であることが好ましく、20,000〜300,000であることがより好ましく、25,000〜150,000であることが特に好ましい。この重量平均分子量が、5,000未満では耐現像液性が低下する傾向があり、300,000を越えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0116】
また、バインダーポリマーは必要に応じて感光性基を有していてもよい。
【0117】
これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる重合性単量体からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマー等が挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0118】
本発明の感光性樹脂組成物が(D)バインダーポリマーを含有するものである場合、当該感光性樹脂組成物における(D)バインダーポリマーの配合量は、(A)光重合性化合物及び(D)バンダーポリマーの総量を100質量部として40〜80質量部であることが好ましく、45〜70質量部であることがより好ましい。この配合量が前記下限値未満では光硬化物が脆くなりやすく、また、感光性エレメントとして用いた場合には塗膜性が劣る傾向があり、前記上限値を超えると光感度が不十分となるとともに、光硬化物の除去性が低下する傾向がある。
【0119】
また、(B)光重合開始剤の配合量は、(A)光重合性化合物及び(D)バインダーポリマーの総量100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。この配合量が前記下限値未満では光感度が不十分となる傾向があり、前記上限値を超えると露光の際に感光性樹脂組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不十分となる傾向がある。
【0120】
更に、本発明の感光性樹脂組成物が(C)酸発生剤を含有するものである場合、当該感光性樹脂組成物における(C)酸発生剤の配合量は、(A)光重合性化合物及び(D)バインダーポリマーの総量100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。この配合量が前記上限値を超えると保存安定性が低下する傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物が前記上限値以下の配合量で(C)酸発生剤を含有することにより、特性基中の結合が切断される温度を低くすることができる傾向がある。
【0121】
本発明の感光性樹脂組成物には更に、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等を含有させることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0122】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0123】
また、感光性樹脂組成物は、特に制限はないが、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布して乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いるか、以下に述べる感光性エレメントの形態で用いられることが好ましい。
【0124】
このようにして用いられる場合の感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、溶剤を除去した後の厚みで1〜100μm程度であることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。この厚みが1μm未満では、工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると、厚みが上記範囲内である場合と比較して本発明の効果が小さくなり、接着力及び解像度が低下する傾向がある。
【0125】
(感光性エレメント)
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持フィルム10と、該支持フィルム10上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層14と、を備えるものである。
【0126】
上記支持フィルム10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムが挙げられる。
【0127】
ここで、上記重合体フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜60μmであることがより好ましく、8〜50μmであることが更に好ましく、10〜40μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満では現像前の支持体剥離の際に破ける傾向があり、100μmを超えると解像度が低下する傾向がある。
【0128】
感光性樹脂組成物層14は、上記感光性樹脂組成物を溶剤に溶解して塗布液とした後、これを上記支持フィルム上に塗布し、乾燥することにより得ることができる。上記塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。また、乾燥は、使用する(A)重合性化合物中の結合が切断されない範囲で、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0129】
本発明の感光性エレメントにおいては、上記重合体フィルムの一つを感光性樹脂組成物層14の支持フィルム10として、他の一つを感光性樹脂組成物の保護フィルム(図示せず)として感光性樹脂組成物層14の両面に積層してもよい。このとき、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層14の支持フィルム10と反対側の面F1を被覆することとなる。保護フィルムとしては、感光性樹脂組成物層14と支持フィルム10との接着力よりも、感光性樹脂組成物層14と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。
【0130】
上記保護フィルムの厚みは、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。この厚みが5μm未満ではラミネートの際に保護フィルムが破れる傾向があり、50μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0131】
また、感光性エレメント1は、感光性樹脂組成物層14、支持フィルム10及び保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0132】
感光性エレメント1は、例えば、そのままの状態で又は感光性樹脂組成物層14の他の面に保護フィルムを更に積層して円筒状の巻芯にロール状に巻き取った状態で貯蔵される。なお、この際支持フィルムが最も外側になるように巻き取られることが好ましい。ロール状に巻き取った感光性エレメントの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0133】
上記巻芯の材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチック等が挙げられる。
【0134】
(レジストパターンの形成方法)
本発明のレジストパターンの形成方法は、回路形成用基板上に、上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層又は上記感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を積層し、該感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、該露光部以外の部分を除去することによりレジストパターンを形成する方法である。
【0135】
感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する方法としては、感光性樹脂組成物を溶媒に溶解して塗布液を調製し、これを回路形成用基板上に塗布して乾燥する方法等が挙げられる。ここで、使用する溶媒、塗布方法、及び乾燥時の条件等については、感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を形成する場合と同様である。
【0136】
また、感光性エレメントを用いて感光性樹脂組成物層を積層する方法としては、保護フィルムが存在している場合には、この保護フィルムを除去した後、感光性樹脂組成物層を70〜130℃程度に加熱しながら回路形成用基板に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することにより積層する方法等が挙げられ、減圧下で積層することも可能である。なお、回路形成用基板の積層される表面は、通常金属面であるが、特に制限はない。
【0137】
これらの方法により積層が完了した感光性樹脂組成物層に対して、マスクパターンを通して活性光線を所定部分(所望の画像状)に照射(パターン露光)し、露光部を光硬化せしめる。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持フィルムが透明の場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することができるが、支持フィルムが不透明の場合には、支持フィルムを除去した後に活性光線を照射する必要がある。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光等を有効に放射するものが用いられる。また、マスクパターンを用いない露光法である、レーザ直接描画露光法やDLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画法を用いることもできる。
【0138】
次いで、パターン露光後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去した後、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して現像し、レジストパターンを形成することができる。
【0139】
上記アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。上記アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0140】
また、現像後の処理として、必要に応じて0.2〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンを更に硬化させてもよい。
【0141】
(プリント配線板の製造方法)
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンの形成された回路形成用基板を、エッチング又はめっきする回路形成工程と、上記レジストパターンを、130〜250℃に加熱した後又は加熱しながら、回路形成用基板上から除去する除去工程と、を含む方法である。
【0142】
回路形成工程は、現像されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の表面を、公知の方法によりエッチング又はめっきすることによって行われる。
【0143】
上記めっきとしては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等がある。また、金属面のエッチングには、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液等を用いることができる。
【0144】
除去工程において、レジストパターンの除去は、該レジストパターンを加熱した後又は加熱しながら行われる。レジストパターンの加熱は、使用する(A)光重合性化合物や感光性樹脂組成物に応じて、130〜250℃の温度条件で行われる必要があるが、140〜220℃の温度条件で行われることが好ましく、150〜200℃の温度条件で行われることがより好ましい。この加熱温度が130℃未満である場合には、特性基中の結合の切断が十分に行われず、レジストパターンの除去が不十分となる。また、加熱温度が250℃を超えると、形成された回路等の熱的損傷が発生したり、作業の安全性が低下したりといった問題が生じる。
【0145】
また、加熱時間は、特性基中の結合を十分に切断し、レジストパターンを確実に除去する観点から、30秒以上1時間以内が好ましく、1分以上30分以内がより好ましく、5分以上20分以内が特に好ましい。
【0146】
更に、感光性樹脂組成物中に酸発生剤を含有させている場合、加熱の前に活性光線を照射してもよい。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光等を有効に放射するものが用いられる。
【0147】
除去工程におけるレジストパターンの除去は、0.1〜10重量%炭酸ナトリウムの水溶液、0.1〜10重量%炭酸カリウムの水溶液、0.1〜10重量%水酸化ナトリウムの水溶液、0.1〜10重量%水酸化カリウム水溶液等の、有機アミンや有機溶媒を含有していてもよいアルカリ性水溶液を用いて行われることが好ましい。また、除去方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられる。なお、除去工程は、加圧下で行ってもよい。
【0148】
(光硬化物の除去方法)
本発明の光硬化物の除去方法は、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層又は本発明の感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を支持基板上に積層し、活性光線を照射して感光性樹脂組成物層を光硬化せしめた光硬化物を、130〜250℃に加熱した後又は加熱しながら支持基板上から除去する方法である。かかる除去方法は、プリント配線板等の製造分野以外においても適用可能である。また、上記支持基板は、感光性樹脂組成物層を積層可能なものであれば特に制限されない。
【0149】
支持基板上に積層された光硬化物を除去する方法は、上述したプリント配線板の製造方法における除去工程においてレジストパターンを除去する場合と同様の方法を用いることができ、光硬化物の加熱温度や加熱時間、並びに、除去に用いる溶液や除去方式等についても同様である。
【実施例】
【0150】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0151】
[(A)光重合性化合物の合成]
<(A)光重合性化合物A−1の合成>
メタクリル酸861質量部、ジエチレングリコールジビニルエーテル791質量部及びリン酸2−エチルヘキシル5.3質量部をサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌することで、光重合性化合物A−1を得た。なお、この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(12)で表される化合物であることが確認された。
【化12】



【0152】
<(A)光重合性化合物A−2の合成>
アクリル酸721質量部、ジエチレングリコールジビニルエーテル791質量部及びリン酸2−エチルヘキシル5.3質量部をサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌することで、光重合性化合物A−2を得た。なお、この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にアクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(13)で表される化合物であることが確認された。
【化13】



【0153】
<(A)光重合性化合物A−3の合成>
2−アクリロイロキシエチルスクシネート2162質量部、ジエチレングリコールジビニルエーテル791質量部及びリン酸2−エチルヘキシル5.3質量部をサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌することで、光重合性化合物A−3を得た。なお、この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にアクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(14)で表される化合物であることが確認された。
【化14】



【0154】
<(A)光重合性化合物A−4の合成>
2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート2703質量部、ジエチレングリコールジビニルエーテル791質量部及びリン酸2−エチルヘキシル5.3質量部をサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌することで、光重合性化合物A−4を得た。なお、この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にアクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(15)で表される化合物であることが確認された。
【化15】



【0155】
<(A)光重合性化合物A−5の合成>
2−アクリロイロキシプロピルフタレート2783質量部、ジエチレングリコールジビニルエーテル791質量部及びリン酸2−エチルヘキシル5.3質量部をサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌することで、光重合性化合物A−5を得た。なお、この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にアクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(16)で表される化合物であることが確認された。
【化16】



【0156】
<(A)光重合性化合物A−6の合成>
ハイドロキノン55mmol、4−ビニロキシブチルメタクリレート100mmol、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩0.25mmol及びジメチルホルムアミド20gをサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌した。これを分液ロートに移し、酢酸エチル100gを加えた後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、油層を分離し、この油層中に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別して除去し、更に減圧下で溶剤を留去することで、光重合性化合物A−6を得た。なお、この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(17)で表される化合物であることが確認された。
【化17】



【0157】
<(A)光重合性化合物A−7の合成>
ビスフェノールAを55mmol、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート((株)日本触媒製)100mmol、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩0.3mmol及びジメチルホルムアミド30gをサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌した。これを分液ロートに移し、酢酸エチル100gを加えた後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、油層を分離し、この油層中に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別して除去し、更に減圧下で溶剤を留去することで、光重合性化合物A−7を得た。この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(18)で表される化合物であることが確認された。
【化18】



【0158】
<(A)光重合性化合物A−8の合成>
ハイドロキノン55mmol、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート((株)日本触媒製)100mmol、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩0.25mmol及びジメチルホルムアミド20gをサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌した。これを分液ロートに移し、酢酸エチル100gを加えた後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、油層を分離し、この油層中に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別して除去し、更に減圧下で溶剤を留去することで、光重合性化合物A−8を得た。この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(19)で表される化合物であることが確認された。
【化19】



【0159】
<(A)光重合性化合物A−9の合成>
1,4−シクロヘキサンジメタノール55mmol、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート((株)日本触媒製)100mmol、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩0.25mmol及びジメチルホルムアミド20gをサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌した。これを分液ロートに移し、酢酸エチル100gを加えた後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、油層を分離し、この油層中に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別して除去し、更に減圧下で溶剤を留去することで、光重合性化合物A−9を得た。この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(20)で表される化合物であることが確認された。
【化20】



【0160】
<(A)光重合性化合物A−10の合成>
トリフェノールメタン45mmol、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート((株)日本触媒製)120mmol、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩0.5mmol及びジメチルホルムアミド30gをサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌した。これを分液ロートに移し、酢酸エチル100gを加えた後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、油層を分離し、この油層中に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別して除去し、更に減圧下で溶剤を留去することで、光重合性化合物A−10を得た。この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を3個有していることが確認され、下記一般式(21)で表される化合物であることが確認された。
【化21】


【0161】
<(A)光重合性化合物A−11の合成>
2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(東京化成工業(株)製)60mmol、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製)55mmol及びジメチルホルムアミド20gをサンプル瓶中に入れ、室温で2日間ミックスローターにて撹拌した。これを分液ロートに移し、酢酸エチル100gを加えた後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、油層を分離し、この油層中に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別して除去し、更に減圧下で溶剤を留去することで、光重合性化合物A−11を得た。この化合物についてNMRスペクトルを測定して構造を解析したところ、1分子中にメタクリロイル基を2個有していることが確認され、下記一般式(22)で表される化合物であることが確認された。
【化22】



【0162】
<(A)光重合性化合物A−12の合成>
メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(質量比:40/35/25、重量平均分子量:55,000)2870質量部をメトキシエタノール/トルエン混合溶剤(質量比:3/2)3507質量部に溶解させた溶液、4−ビニロキシブチルメタクリレート(甲陽化学(株)製)921質量部及びリン酸2−エチルヘキシル5.3質量部をサンプル瓶中に入れ、70℃で1日間ミックスローターにて撹拌することで、光重合性化合物A−12を得た。なお、この化合物は酸価滴定により、95%以上の4−ビニロキシブチルメタクリレートがメタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン共重合体中のメタクリル酸に付加したものであることが確認された。
【0163】
[分子内の結合が切断される温度の測定]
光重合性化合物として、上述のようにして合成した(A)光重合性化合物A−1〜A−12、及び、比較としてテトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:4G)をそれぞれ100質量部準備した。これらの光重合性化合物に、光重合開始剤としての2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名:Irg−369)1質量部をアセトン20質量部に溶解させた溶液を加え、13種類の塗布液を作製した。この塗布液を、5インチダミーシリコンウエハ上にスピンコータで塗工した後、100℃で5分間乾燥してアセトンを除去し、塗膜を形成した。得られた塗膜に、厚さ20μmのPETフィルムを被せ、PETフィルム上からプロキシミティ露光機UX−1000SM−XJ01(ウシオ電機社製)にて、全波長の合計で3J/cmの露光量となるように露光し、厚さ約40μmのフィルム状サンプル1〜13を作製した。
【0164】
得られたフィルム状サンプル1〜13をそれぞれ10mg採取し、これらについてDSCにより発熱ピーク温度を、TG−DTAにより重量減少開始温度を、それぞれ測定した。なお、DSCによる発熱ピーク温度の測定は、測定機器としてDSC6200(セイコー社製)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲50〜250℃の測定条件で行った。また、TG−DTAによる重量減少開始温度の測定は、測定機器としてTG/DTA6200(セイコー社製)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲50〜350℃の測定条件で行った。光重合性化合物の分子内の結合が切断される温度は、DSCにおいては発熱ピーク温度で示され、TG−DTAにおいては重量減少開始温度で示される。これらの測定結果を表1に示す。なお、本発明における(A)光重合性化合物は、DSCにおける発熱ピーク温度、及びTG−DTAにおける重量減少開始温度の少なくとも一方が130〜250℃の範囲内であればよいが、DSCにおける発熱ピーク温度とTG−DTAにおける重量減少開始温度との両方が130〜250℃の範囲内であることが好ましい。
【0165】
【表1】



【0166】
[実施例1〜12及び比較例1]
表2及び表3に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を、同表に示す溶剤と共に混合し、実施例1〜12及び比較例1の感光性樹脂組成物溶液をそれぞれ得た。なお、各成分の配合量(g)は同表に示す通りである。
【0167】
【表2】



【0168】
【表3】



【0169】
得られた感光性樹脂組成物溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥し、感光性エレメントを得た。得られた感光性エレメントの感光性樹脂組成物層の膜厚は25μmであった。
【0170】
次に、銅箔(厚さ35μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(日立化成工業(株)製、商品名:MCL−E−67)の銅表面を、#600相当のブラシを持つ研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥させた。
【0171】
こうして得られた銅張積層板を80℃に加温した後、上記で得られた感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層が銅表面上に密着するようにして、120℃で0.4MPaの圧力下で積層した。
【0172】
次いで、感光性エレメントが積層された銅張積層板を冷却し、23℃になった時点で、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が6/6〜35/35(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとをポリエチレンテレフタレート面に密着させ、5kWショートアークランプを光源とする平行光露光機(オーク(株)製、商品名:EXM−1201)を用いて、上記41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が14段、17段、20段となる露光量で露光を行った。ここで、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17段となる露光量を、それぞれの感光性エレメントの感度とした。
【0173】
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で24秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。
【0174】
解像度は、現像処理によって未露光部をきれいに除去することができ、かつ、ラインが蛇行、カケを生じることなく生成されたライン幅間のスペース幅の最も小さい値により評価した。感度及び解像度の評価は、いずれも数値が小さいほど良好な値である。
【0175】
光硬化物の剥離開始時間は以下のように測定した。すなわち、それぞれの感度に相当する露光量(17/41段)を照射した試料を、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液にて現像した。1昼夜放置後、この光硬化物を170℃の熱風対流式乾燥機で20分間加熱し、室温まで冷却した後、3質量%水酸化ナトリウム水溶液を45℃に保ち撹拌しながら試料を浸漬し、光硬化物の剥離が始まる時間(秒)を測定した。剥離開始時間は短い方が好ましい。実施例1〜12及び比較例1についての感度、解像度及び剥離開始時間を表4及び5に示す。
【0176】
【表4】



【0177】
【表5】



【産業上の利用可能性】
【0178】
以上説明したように、本発明によれば、優れた解像度を維持したまま除去性を十分に向上させることが可能な感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法並びに光硬化物の除去方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0179】
1…感光性エレメント、10…支持フィルム、14…感光性樹脂組成物層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のエチレン性不飽和結合を分子内に有する(A)光重合性化合物と、
前記(A)光重合性化合物の光重合反応を開始させる(B)光重合開始剤と、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)光重合性化合物の分子内には、該(A)光重合性化合物を130〜250℃の温度条件で加熱した場合に切断される結合を有する特性基が更に含まれていることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(C)130℃以上の加熱又は活性光線の照射により酸を発生する化合物を更に含有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)バインダーポリマーを更に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記特性基が、下記一般式(1)で表される構造を有していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】



[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【請求項5】
前記特性基が、下記一般式(2)で表される構造を有していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】



[式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【請求項6】
前記特性基が、下記一般式(3)で表される構造を有していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】



[式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは二価の有機基を示す。]
【請求項7】
前記特性基が、下記一般式(4)で表される構造を有していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】



[式(4)中、R及びR10はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を示す。]
【請求項8】
支持フィルムと、該支持フィルム上に形成された請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備えることを特徴とする感光性エレメント。
【請求項9】
回路形成用基板上に、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層し、該感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、該露光部以外の部分を除去することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
回路形成用基板上に、請求項8記載の感光性エレメントにおける前記感光性樹脂組成物層を積層し、該感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、該露光部以外の部分を除去することを特徴とするレジストパターンの形成方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−224558(P2010−224558A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111377(P2010−111377)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【分割の表示】特願2005−513446(P2005−513446)の分割
【原出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】