説明

感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器

【課題】 本発明の目的は、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
また前記感光性樹脂組成物を用いることにより、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を得ることを目的とする。
【解決手段】 側鎖の一部にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーを含む観光性樹脂組成物を用いて光導波路形成用フィルムを形成し、光を照射して上記ビニルエーテル基および上記マレイミド基を架橋させて得られることを特徴とする光導波路を提供する。また、本発明の光導波路は、屈折率の異なるコア部とクラッド部とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の信号処理量を増加させ、情報処理スピードを向上させるために、半導体デバイスの動作速度及び信号の入出力端子数は、将来に渡って増加の傾向にある。同時にその半導体デバイスを搭載するパッケージ基板と、パッケージ基板や各種電子部品を搭載するプリント配線基板の信号配線数も著しく増大しており、配線密度も高くなる傾向にある。
それに伴って、これらの基板に形成された金属電気配線における信号の減衰及び隣接する配線間のクロストークが顕著に増加し、深刻な問題となっている。
【0003】
この課題を解決するために、半導体デバイスに入出力される電気信号を半導体集積回路の近傍で光信号に変換し、その光信号を基板に形成した光導波路等の光配線によって伝送させる光伝送技術が多方面で検討されている。
光配線を用いた光伝送技術においては、基板の表面及び裏面に形成された光導波路だけでなく、基板の表面と裏面の間に設けた貫通孔を利用した信号光の伝送経路も提案されている。このような伝送経路は、例えば、光導波路に対して垂直に基板を貫通する孔に透明樹脂を充填して形成される。この信号光の光路としての貫通孔を用いることによって、従来の金属電気配線基板と同様に、光信号についても三次元的伝送が可能となる。
【0004】
光導波路は、光周波搬送波の光に対して実質的に透明な第一の媒体と、第一の媒体よりも低屈折率の第二の媒体とを含んでいる。この第一の媒体は、第二の媒体によって取り囲まれているか、もしくは第二の媒体の内側に封入されている。第一の媒体の端部から導入された光は、第二の媒体との境界で内部全反射を起こし、これによって、第一の媒体の軸に沿って導かれる。恐らく、最も頻繁に使用されている光輸送媒体は細長く繊維状に形成されたガラス光ファイバーである。しかしながら、ガラス光ファイバーは、長距離のデータ輸送には便利であるが、回路の高密度化によって使用上の問題を引き起こしたり、高コストになったりするので、煩雑な高密度回路には好ましくない。一方で、ポリマー材料は、合理的コストで、信頼性があり、受動的で実用的なコンポーネントを作成することができ、しかも集積光学に必要な機能が実行できる点で、有望視されている。
【0005】
したがって、近年、光硬化法を利用して、ポリマー材料から光導波路を形成するための研究が活発に行なわれている。光導波路には、特に、光配線で使用される波長領域(850nm付近)における良好な光学物性、さらに、電気・電子部品の実装工程を必要とする製品向けには、高温の半田耐熱性などが要求される。特に、近年、環境保全への配慮から半田鉛フリー化が求められており、半田リフロー温度が高くなることから、高温でも賦形形状を維持できる耐熱性が必要となってきている。
例えば、光学材料として、耐熱性、エッチング耐性、接着性等に優れるマレイミドとノルボルネンの共重合体が研究されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかしながら、ポリマー材料の透明性が不十分で吸収損失が高くなる場合や、形成されるコア形状の均一性に問題があって散乱損失が高くなる場合があり、光導波路の伝播損失が低下する問題があった。また、ポリマー材料が熱に弱く、所望の加工を行えない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−200018号公報
【特許文献2】特開平11−228536号公報
【特許文献3】特開平11−322855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
また前記感光性樹脂組成物を用いることにより、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は下記(1)〜(17)に記載の本発明により達成される。
(1) 側鎖の一部にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2) 前記マレイミド基は、下記式(1)に示される構造である上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(3) 前記マレイミド基は、ジメチルマレイミド基である上記(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4) 前記ビニルエーテル基および前記マレイミド基は、活性エネルギー線照射により架橋するものである上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(5) 前記ポリマーは、前記マレイミド基を有する繰り返し単位および前記ビニルエーテル基を有する繰り返し単位を含むものである上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(6) 前記ポリマーは、環状オレフィン系樹脂である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(7) 前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂である上記(6)に記載の感光性樹脂組成物。
(8) 前記ノルボルネン系樹脂は、付加重合体である上記(7)に記載の感光性樹脂組成物。
(9) 前記ノルボルネン系樹脂は、ビニルエーテルノルボルネンの繰り返し単位およびジメチルマレイミドノルボルネンの繰り返し単位を有するものである上記(8)に記載の感光性樹脂組成物。
(10) 前記ノルボルネン樹脂は、さらに、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランの繰り返し単位を有するものである上記(9)に記載の感光性樹脂組成物。
(11) 上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の前記感光性樹脂組成物は、光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
(12) 上記(11)に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする光導波路形成用フィルム。
(13) 上記(12)に記載の光導波路形成用フィルムに、活性エネルギー線を照射することにより形成されるコア部を有することを特徴とする光導波路。
(14) 前記コア部より低い屈折率を有するクラッド部により、前記コア部を覆ってなるものである上記(13)に記載の光導波路。
(15) 上記(13)又は(14)に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
(16) 電気配線と、上記(15)に記載の光配線とを有することを特徴とする光電気混載基板。
(17) 上記(13)又は(14)に記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伝播損失が低く、熱特性に優れた感光性樹脂組成物を提供することできる。
また、前記感光性樹脂組成物を用いることにより、伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る光導波路を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示す光導波路を製造する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について説明する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、側鎖の一部にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーを含むことを特徴とする。
また、本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物を光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いることを特徴とする。
また、本発明の光導波路形成用フィルムは、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする。
また、本発明の光導波路は、前記光導波路形成用フィルムに、活性エネルギー線を照射することにより形成することを特徴とする。
また、本発明の光配線は、前記光導波路を備えたことを特徴とする。
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、前記光配線とを有することを特徴とする。
また、本発明の電子機器は、前記光導波路を備えたことを特徴する。
【0013】
まず、感光性樹脂組成物について説明する。前記感光性樹脂組成物は、側鎖の一部にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーを含む。これにより、活性エネルギー線の照射により前記ビニルエーテル基及び前記マレイミド基が架橋するため、前記感光性樹脂組成物に高耐熱性を付与することができる。
【0014】
前記マレイミド基は、特に限定されないが、式(1)に示される構造が挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
これらの中でも、Rおよび/またはRがメチル基であるものが好ましい。特に好ましくはRおよびRがメチル基のものである。これにより、光照射により架橋密度が高いポリマーを得ることができ、前記感光性樹脂組成物の耐熱性向上が期待できる。
【0017】
前記ビニルエーテル基は、特に限定されないが、式(2)に示される構造が挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】
これらのなかでも、Bがアルキレン基、nが0又は1のものが好ましい。活性エネルギー線照射により架橋密度の高いポリマーを得ることができ、高屈折率かつ高可撓性の光導波路用フィルムを得ることが期待できる。
【0020】
前記ポリマーは、前記マレイミド基および前記ビニルエーテル基以外の側鎖を含有していてもよい。
前記マレイミド基および前記ビニルエーテル基以外の側鎖としては、無置換であってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。他の基により置換される場合、特に限定されないが、屈折率の高い側鎖(置換基)であることが好ましい。このような屈折率の高い側鎖の含有量を調整することにより、前記ポリマーの屈折率を制御することが容易となる。
【0021】
屈折率の高い側鎖としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、アラルキル基、メルカプト基等が挙げられる。
このなかでも、アリール基は、屈折率が高いだけでなく、疎水性も極めて高く吸水による寸法変化をより確実に防止することができるため好ましい。中でも、ジフェニルメチルメトキシシリル基、フェニルエチル基、ベンジル基等は特に屈折率が高く、かつ、重合性が高いことから、特に好ましい。
【0022】
前記ポリマーの樹脂骨格としては、特に限定されないが、例えば、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリルエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/(メタ)アクリレート共重合体、ポリシアヌレート、脂環式樹脂等、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらのポリマーは1種単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。特に、これらの中でも環状オレフィン樹脂が好ましい。これにより、特に耐熱性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
前記環状オレフィン系樹脂としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性および可撓性に優れているという点から、多環体モノマーの重合体の中から選ばれる環状オレフィン系樹脂が好ましい。さらに、透明性、耐熱性および可撓性に優れることから、ノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。これらのうち、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
なお、重合形態としては、特に限定されないが、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えば、ノルボルネン系樹脂の具体例としては、ノルボルネン系モノマーの(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマ−との共重合体、ノルボルネン系モノマーと非共役ジエンまたは必要に応じて他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン樹脂は、付加重合法、開環重合法、ラジカルまたはカチオンによる重合法等、公知のすべての重合法により製造することが可能であり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(付加重合体)が好ましい。
【0025】
前記側鎖にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーとしては、特に限定されないが、i)前記ビニルエーテル基および前記マレイミド基を有する繰り返し単位で構成されるポリマー、ii)前記ビニルエーテル基および前記マレイミド基を有する繰り返し単位と、それと異なる繰り返し単位とで構成されるポリマー(共重合体)、iii)前記ビニルエーテル基を有する繰り返し単位と、前記マレイミド基を有する繰り返し単位を含む2種以上の繰り返し単位で構成されるポリマー(共重合体)等が挙げられる。この中でも、特に、iii)前記ビニルエーテル基を有する繰り返し単位と、前記マレイミド基を有する繰り返し単位を含む2種以上の繰り返し単位で構成されるポリマー(共重合体)が好ましい。これにより、架橋密度が向上し、前記感光性樹脂組成物の耐熱性を向上することができる。
このような付加重合体としては、特に限定されないが、下記式(3)で表されるようなものが挙げられる。
【0026】
【化3】

【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
具体的には、下記式(8)および(9)で表されるノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
式(8)で表されるノルボルネン系樹脂において、20≦p≦80および20≦q≦80であることが好ましい。これにより、耐熱性に優れた前記感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、式(9)で表されるノルボルネン系樹脂において、10≦p≦50、10≦q≦50および30≦r≦70であることが好ましい。これにより、高い耐熱性および高い屈折率を有した前記感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
以上、前記ポリマーが2〜3種の繰り返し単位を有する場合について説明したが、マレイミド基を有する繰り返し単位およびビニルエーテル基を有する繰り返し単位を含んでいれば、前記ポリマーが有する繰り返し単位の数は特に限定されない。
【0038】
前記ポリマーの重量平均分子量は、50,000〜200,000であることが好ましい。前記上限値より大きいと、成膜後にクラックなどが発生するおそれがある。一方、前記下限値より小さいと、前記感光性樹脂組成物を基材等に塗布する際に、気泡などを巻き込み、平滑な光導波路形成用フィルムを得ることが困難となる。なかでも、80,000〜120,000であることがさらに好ましい。これにより、前記感光性樹脂組成物をろ過する際に最適な粘度領域が得られやすく、前記感光性樹脂組成物の精製を効率よく行うことが出来る。
重量平均分子量の測定方法は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いたものであり、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で示差屈折計を検出器として用いて測定し、重量平均分子量を標準ポリスチレンにより換算した。装置は、HLC−8220(東ソー社製)を使用した。
【0039】
前記感光性樹脂組成物は前記ポリマーの他に、必要に応じて、開始剤等の添加物を含有していてもよい。
【0040】
このような開始剤としては、特に限定されないが、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0041】
前記増感剤の含有量は、前記ポリマー100重量部に対し0.1〜10重量部であることが好ましい。これにより、後述する活性エネルギー線を照射した際に、開始剤の残渣が伝播損失を悪化させることがなく、且つ、開始剤として十分に作用することが出来る。なかでも、0.5〜2重量部であることがさらに好ましい。これにより、短い紫外線照射時間で効率よく露光を完結させることが可能であり、且つ、光導波路の伝播損失を低くすることが出来る。
【0042】
前記感光性樹脂組成物は、前記ポリマーおよび前記開始剤の他に、特に限定されないが、触媒、硬化触媒、酸化防止剤等の添加物を含有していてもよい。ただし、前記感光性樹脂組成物は、側鎖にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーを含み、これは、活性エネルギー線の照射のみにより架橋することができるため、前記添加物や、酸発生剤等のその他の添加物を特に必要としない。また、これらの添加物を含まないことにより、添加物の残渣に由来する光の伝播損失を防止することができる。
【0043】
本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上述したような感光性樹脂組成物を光導波路形成用として用いるものである。
この光導波路形成用感光性樹脂組成物を、適当な溶媒を用いて希釈し、樹脂ワニスを得ることができる。この樹脂ワニスを基板上に塗布・乾燥して光導波路形成用フィルムを得ることができる。特に限定されないが、溶媒としてはトルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、リモネン、デカリン等が挙げられる。これらの溶媒を1種又は2種以上混合して使用してもよい。
【0044】
前記樹脂ワニスにおける前記ポリマーの含有量は、前記樹脂ワニス中で5〜50重量%であることが好ましい。これにより、ワニスに一定の粘性を付与して、塗布性能を向上させることができる。なかでも、10〜30重量%であることがさらに好ましい。これにより、前記感光性樹脂組成物を基材等に塗布する際に、気泡の巻き込みが防止され、かつ、一定の厚みを得るために適した粘度を得ることが出来る。
【0045】
次に、光導波路について説明する。
図1は、光導波路の一例を示す断面図である。 図1に示すように、光導波路10は、板状の第1クラッド部1と、第1クラッド部1の上側面(図1中の上側)に配置された第1クラッド部よりも屈折率の高いコア部2と、コア部2の側面および上面を覆うように配置され、コア部2よりも屈折率の低い第2クラッド部3から形成されている。
このような構成を有することにより、コア部2の一端側に入射された光信号は、第1クラッド部1および第2クラッド部3との界面で全反射し、コア部2の他端側に伝達され、光通信が可能となる。
特に、本発明の光導波路の構成材料として、第1クラッド部1および第2クラッド部3に式(8)で表されるノルボルネン樹脂を用い、コア部2に式(9)で表されるノルボルネン樹脂を用いた場合、第1クラッド部1、コア部2および第2クラッド部3が可撓性に富むこと、また、コア部2に対し、第1クラッド部1および第2クラッド部3の屈折率が十分に低いことから、伝播損失を小さくすることができる。また、第1クラッド部1、コア部2および第2クラッド部3の構成材料の耐熱性が高いため、260℃の半田リフローに対して高い耐性を有している。
【0046】
次に、上述した光導波路10の製造方法について、図2を用いて説明する。
図2(A)に示すように、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aの上方に、開口部が形成されたマスク4を配置し、このマスク4の開口を介して、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aに活性エネルギー線5を照射する。これにより、図2(B)に示すように、活性エネルギー線を照射した領域では、前記ポリマーの側鎖であるマレイミド基およびビニルエーテル基が架橋し、コア部2が形成される。
次に、図2(C)に示すように、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aにおける活性エネルギー線5の未照射領域2bを除去する。
最後に、図2(D)に示すように、コア部2の側面および上部を覆うように第2クラッド部3を形成する。
【0047】
本発明の光導波路形成用フィルムは、上述した光導波路10の第1クラッド部1、コア部2および第2クラッド部3に好適に用いることができるものである。
【0048】
第1クラッド部1、光導波路形成用フィルム(コア部用)2aおよび第2クラッド部3を形成する方法について説明する。はじめに、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かして樹脂ワニスを構成する。樹脂ワニスを平滑な支持基板上に塗布し、これを乾燥させ溶媒を蒸発する。次に、支持基板上で乾燥させた樹脂ワニス全体もしくはその一部に、活性エネルギー線を照射して、前記感光性樹脂組成物に含まれるポリマーの架橋密度を向上させることにより、フィルム状に成形する。最後に、成形物を支持基板上から剥離することにより、光導波路形成用フィルムを得る。
また、支持基板を用いず、形成した第1クラッド部1上に直接光導波路形成用フィルム(コア部用)2aを形成してもよいし、反対に、事前に形成した光導波路形成用フィルム(コア部用)2a上に直接第1クラッド部1を形成してもよい。また、第1クラッド部1と光導波路形成用フィルム(コア部用)2aを個別に作成した後に、接着させてもよい。
第2クラッド部3を形成する場合においては、支持基板上ではなく、図2(D)に示すように、第1クラッド部1の上部に接着されたコア部2の側面及び上部を覆うように樹脂ワニスの塗布を行う。
【0049】
第1クラッド部1および第2クラッド部3を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物は、コア部2を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物より屈折率が低いものであれば、特に限定されない。これにより、コア部2の一端側から入射された光信号は、第1クラッド部1および第2クラッド部3との界面で全反射され他端側に到達し、光損失を小さくすることができる。
さらに、第1クラッド部1および第2クラッド部3を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物中のポリマーは、コア部2を構成する樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物中のポリマーと同種であることが好ましい。これにより、第1クラッド部1、コア部2および第2クラッド部3の界面の密着性が向上し、層間剥離を防止することができる。このため、耐久性に優れた光導波路が得られる。
【0050】
なお、第1クラッド部1および第2クラッド部3を形成するクラッド部形成用樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物は、それぞれ、同一(同種)のものでも、異なるものでもよいが、伝播損失を低減するという点から、これらは、屈折率が同じかまたは近似しているものであることが好ましい。
【0051】
ここで、樹脂ワニスを塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、前述した支持基板としては、光導波路形成用フィルムを剥離しやすいものであれば、特に限定されない。例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が好適に用いられる。
【0052】
前記感光性樹脂組成物に照射する活性エネルギー線5としては、特に限定されないが、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、光導波路のコア部およびクラッド部に対して、300nm未満の十分なエネルギーの活性エネルギー線を供給することができ、前記ポリマーが側鎖として有するビニルエーテル基およびマレイミド基の架橋反応を促進できるため、耐熱性を向上することができる。
【0053】
活性エネルギー線5の未照射領域2bを除去する方法としては、特に限定されないが、現像およびドライエッチング等が挙げられる。作業性の観点から現像液による現像が好ましい方法である。本発明の一実施形態では、コア部の材料そのものが架橋されるため、フォトレジストなどの余計な材料を用いることなく簡便に現像を行うことができる。現像処理は、従来から公知の方法で行うことができる。現像液の例として、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、リモネン、デカリンなどの溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒を、1種又は2種以上混合して使用してもよい。さらに現像液の溶解性をコントロールするために任意の貧溶媒を添加することができる。そのような貧溶媒の例として水やエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類等を挙げることができる。
【0054】
以上の実施形態では、第1クラッド部1および第2クラッド部3の構成材料として感光性樹脂組成物を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、従来から用いられているクラッド部構成材料を用いてもよく、コア部より屈折率が低い材料であれば特に限定されない。従来から用いられているクラッド部構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等のうち、1種または2種以上を組み合わせたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)が挙げられる。
【0055】
次に、光配線、光電気混載基板について簡単に説明する。
本発明の光配線は、上述したような光導波路10を有している。これにより、導波路製造プロセスにおいて現像やRIE(リアクティブイオンエッチング)などを経る必要がないために加工の自由度を向上することができる。
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、上述したような光導波路10を有する光配線とを有している。これにより、従来の電気配線で問題となっていたEMI(電磁波障害)の改善が可能となり、従来よりも信号伝達速度を大幅に向上することができる。
【0056】
また、本発明の電子機器は、上述したような光導波路10を有している。これにより、省スペース化を図ることができる。このような電子機器としては、具体的にはコンピューター、サーバー、携帯電話、ゲーム機器、メモリーテスター、外観検査ロボット等を挙げることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。光導波路を形成するための下記の実施例において使用した各ワニス溶液は感光性材料を含んでいるので、イエローライトの下で調製した。
【0058】
1.コア用感光性樹脂組成物の調製
ジメチルマレイミドノルボルネン/ビニルエーテルノルボルネン/ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランの重合比がモル比で30/30/40であるターポリマーを使用して、コア用ワニス溶液を調製した。
【0059】
調製に当たっては、コア用ベースポリマー100重量部に対し、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを1重量部加え、さらに、コア用ベースポリマーが30重量%になるようにメシチレンを加えて、攪拌し溶解した。得られた溶液を0.2μmの細孔のフィルターでろ過し異物を取り除いた。
【0060】
2.クラッド用ワニス溶液の調製
ジメチルマレイミドノルボルネン/ビニルエーテルノルボルネン/ヘキシルノルボルネンの重合比がモル比で30/30/40であるターポリマーを使用してクラッド用ワニス溶液を調製した。
【0061】
調製に当たっては、クラッド用ベースポリマー100重量部に対し、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン‐1−オンを1重量部加え、さらにクラッド用ベースポリマーが30重量%になるようにメシチレンを加えて、攪拌し溶解した。得られた溶液を0.2μmの細孔のフィルターでろ過し異物を取り除いた。
【0062】
3.光導波路の作製
(1)第一クラッド部1形成
基板(Siウェハ)上に、クラッド用ワニス溶液を、塗布(スピンコータで1000rpm/30sec)し、露光機で全面に紫外線を照射(700mJ/cm)して硬化させ、第1クラッド部1を形成した。
(2)コア部2用感光性光導波路形成用フィルム形成
上記コア用ワニス溶液を、上記第1クラッド部1上に塗布(アプリケーターで乾燥後に35μm厚となるように)し、その後、ホットプレート(50℃/10分)上において乾燥させ光導波路形成用フィルム(コア部用)2aを形成した。
【0063】
(3)UV露光パターニング
クラッド部1上に光導波路形成用フィルム(コア部用)2aを形成した上記サンプルに、導波路パターンのフォトマスク(明部/暗部=35μm/90μmのライン/スペース)越しに紫外線を1000mJ照射して、パターニングを行った。
(4)現像
加熱処理後の上記サンプルを、シクロペンタノンに2分間浸漬し、未露光部分を溶解させた。
(5)乾燥
現像処理後の上記サンプルを、オーブン(150℃/30分)で加熱乾燥させた。
(6)第2クラッド部3形成
上記第1クラッド部1と同様にして、上記サンプル上に第2クラッド部3を形成し、光導波路10を得た。
【0064】
4.伝搬損失の測定
得られた光導波路サンプルの伝搬損失を「カットバック法」を使用して測定した。レーザーダイオードから発生させた光(850nm)を、光ファイバーを通して、各ワニス溶液から形成した導波路のコアの第一の端部に入力した。反対側の第二の端部からの出力を測定した。導波路はある長さを有している。導波路は少なくとも2つの長さに短く「カットバック」され、各長さの導波路に対して第二の端部での光出力を測定した。
各測定での総光損失は下記である。
総光損失(dB) = −10log(Pn/Po)
ここで、「Pn」はP1、P2、…Pnの各長さの導波路の第二の端部で測定された出力であり、「Po」は、光ファイバーを導波路のコアの第一の端部に結合する前の光ファイバーの端部における光源の測定出力である。
また、総光損失は、導波路の長さとの関係により、下記式によっても表わされる。
総光損失(dB)=mx+b
ここで、「x」は導波路の長さ、「m」は伝搬損失、「b」は結合損失(coupling loss)である。
実施例1において作製した導波路に対する「カットバック法」による伝搬損失は、0.05dB/cmであった。
【0065】
5.ガラス転移点測定
フィルムサンプルについて、ガラス転移点を、熱機械測定装置(引っ張り法:荷重30mN、昇温速度5℃/分、空気中)を用いて測定した。測定の結果、ガラス転移点は250℃であった。
【0066】
上記の結果からわかるように、本発明に係る光導波路は低い光伝播損失と優れた耐熱性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかる光導波路は、低い光伝播損失と、優れた耐熱性を有し、特に電子機器等の内部に実装される回路基板等の光配線用途に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 第1クラッド部
2 コア部
2a 光導波路形成用フィルム(コア部用)
2b 未照射領域
3 第2クラッド部
4 マスク
5 活性エネルギー線
10 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖の一部にビニルエーテル基およびマレイミド基を有するポリマーを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記マレイミド基は、下記式(1)に示される構造である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

【請求項3】
前記マレイミド基は、ジメチルマレイミド基である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニルエーテル基および前記マレイミド基は、活性エネルギー線照射により架橋するものである請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリマーは、前記マレイミド基を有する繰り返し単位および前記ビニルエーテル基を有する繰り返し単位を含むものである請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリマーは、環状オレフィン系樹脂である請求項1乃至5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂である請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ノルボルネン系樹脂は、付加重合体である請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ノルボルネン系樹脂は、ビニルエーテルノルボルネンの繰り返し単位およびジメチルマレイミドノルボルネンの繰り返し単位を有するものである請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記ノルボルネン樹脂は、さらに、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランの繰り返し単位を有するものである請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の前記感光性樹脂組成物は、光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする光導波路形成用フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載の光導波路形成用フィルムに、活性エネルギー線を照射することにより形成されるコア部を有することを特徴とする光導波路。
【請求項14】
前記コア部より低い屈折率を有するクラッド部により、前記コア部を覆ってなるものである請求項13に記載の光導波路。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
【請求項16】
電気配線と、請求項15に記載の光配線とを有することを特徴とする光電気混載基板。
【請求項17】
請求項13又は14に記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−17931(P2011−17931A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162904(P2009−162904)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】