説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、リードフレームの製造方法、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】光感度、テント信頼性、密着性及び解像度に優れた感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、プリント配線板の製造方法、リードフレームの製造方法およびプリント配線板の提供。
【解決手段】(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)増感色素、を含有し、上記(B)成分がジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含み、上記(D)成分がピラゾリン化合物を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、リードフレームの製造方法、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造分野においては、エッチングやめっき等に用いられるレジスト材料としての感光性樹脂組成物や、この感光性樹脂組成物を含有する層(以下、「感光性樹脂層」という)を支持フィルム上に形成し、感光性樹脂層上に保護フィルムを配置させた構造を有する感光性エレメント(積層体)が広く用いられている。
【0003】
従来、プリント配線板は、上記感光性エレメントを用いて、例えば以下の手順で製造されている。すなわち、まず、感光性エレメントの感光性樹脂層を銅張り積層板などの回路形成用基板上にラミネートする。このとき、感光性樹脂層の支持フィルムに接触している面(以下、感光性樹脂層の「下面」という)とは反対側の面(以下、感光性樹脂層の「上面」という)が、回路形成用基板の回路を形成する面に密着するようにする。そのため、保護フィルムを感光性樹脂層の上面に配置している場合、このラミネートの作業を保護フィルムを剥がしながら行う。また、ラミネートは、感光性樹脂層を下地の回路形成用基板に加熱圧着することにより行う(常圧ラミネート法)。
【0004】
次に、マスクフィルムなどを通して感光性樹脂層をパターン露光する。このとき、露光前又は露光後の何れかのタイミングで支持フィルムを剥離する。その後、感光性樹脂層の未露光部を現像液で溶解又は分散除去する。次に、エッチング処理又はめっき処理を施してパターンを形成させ、最終的に硬化部分を剥離除去する。
【0005】
ところで、上述のパターン露光の手法としては、近年、マスクフィルムを通さずにデジタルデータを用いて活性光線を画像状に直接照射する、レーザ直接描画法が実用化されている。直接描画法に用いられる光源としては、安全性や取扱い性等の面から、YAGレーザ及び半導体レーザ等が使用され、最近では、長寿命で高出力な窒化ガリウム系青色レーザ等を使用した技術が提案されている。
【0006】
さらに近年、プリント配線板における高精細化、高密度化に伴い、従来よりもファインパターンが形成可能なDLP(Digital Light Processing)露光法と呼ばれる直接描画法が取り入れられている。一般的に、DLP露光法では青紫色半導体レーザを光源とした波長390〜430nmの活性光線が使用される。
【0007】
また、主に汎用のプリント配線板において少量多品種に対応可能な、YAGレーザを光源とした波長355nmのポリゴンマルチビームを使用した露光法も用いられている。
【0008】
このような各種のパターン露光方法の開発に伴い、各露光波長に対応するため、感光性樹脂組成物には様々な増感剤の適用が検討されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−301996号公報
【特許文献2】特開2005−107191号公報
【特許文献3】特開2005−215142号公報
【特許文献4】特開2007−101941号公報
【特許文献5】特開2007−101940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
レジストパターンにおいては、近年ますます微細化が進むなか、特にエッチング工程において十分なテント信頼性を有すると共にL/S(ライン幅/スペース幅)=20/20(単位:μm)以下のパターン形成という高解像度性を同時に満足することが要求されている。
ここでテント信頼性とは、スルーホールをレジスト膜で覆ったときに、現像処理などのレジスト剥離工程前までの段階においてレジスト膜が破断し難い性能をいう。
【0011】
また、レジストパターンを形成するための感光性樹脂層については密着性も要求されている。密着性の向上には感光性樹脂層を柔軟化することが有効であり、これにより基材の凹凸への追従性が向上する。しかしながらその結果、剥離工程でのレジストの剥離に長く時間を要することになり生産効率が低下する場合がある。また、感光性樹脂層の柔軟化は、感光性エレメントを巻き取った製品ロールの端部から感光性樹脂層が染み出す現象(エッジフュージョン)を発生させることにもなり、ラミネートロールの汚染が懸念される。
【0012】
また、感光性樹脂層の解像度を向上させるためには、感光性樹脂層の薄膜化が有効である。しかしながら、プリント配線板形成時にある程度の回路厚(銅厚等)が必要な場合、エッチング工法では、エッチング時のテント信頼性が不足しやすくなる傾向にあるため、スルーホールを被覆する部分のレジスト膜が欠落しやすくなる。よって、感光性樹脂層を薄くすることによってレジストパターンの幅を狭くし解像度を高める方法には限界がある。
【0013】
更に、レーザを高速移動させて露光する直接描画法は、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯及びキセノンランプ等の紫外線を有効に放射する光源を用いて一括露光する従来の露光方法と比較すると、スポット当たりの露光エネルギー量が小さく、生産効率が低くなる。従って、直接描画法においては、より高感度な感光性樹脂組成物が要求されている。
【0014】
そこで、光感度を向上させるために、感光性樹脂組成物中に含まれる光開始剤や増感剤を増量すると、感光性樹脂層の表層部で局所的に光反応が進行し、層底部の硬化性が低下するため、光硬化後に得られる解像度及びレジスト形状が悪化する傾向にある。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像度を向上させることが可能な感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの製造方法、リードフレームの製造方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、(A)成分としてバインダーポリマー、(B)成分としてエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物、(C)成分として光重合開始剤、(D)成分として増感色素を含み、上記(B)成分がジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含み、上記(D)成分がピラゾリン化合物を含む感光性樹脂組成物とすることで、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像度を向上させることが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0017】
また、本発明は、支持体と、上記支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層と、を有する感光性エレメントに関する。これにより、上記特性に優れた感光性エレメントを提供することができる。
【0018】
さらに、本発明は、基板上に上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、上記感光性樹脂層の少なくとも一部に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、上記感光性樹脂層の未硬化部分を基板上から現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの製造方法に関する。これにより、上記特性に優れたレジストパターンを形成することができる。
【0019】
また、本発明は、上記レジストパターンの製造方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含むプリント配線板の製造方法およびこれにより得られるプリント配線基板に関する。用いる感光性樹脂組成物は、上記特性に優れているため、プリント配線板の高密度化に適した製造法を提供できる。
【0020】
さらに、本発明は、上記レジストパターン形成方法によりレジストパターンが形成された基板をめっき処理して導体パターンを形成する工程を含むリードフレームの製造方法に関する。用いる感光性樹脂組成物は、上記特性に優れているため、リードフレームの高密度化に適した製造法を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像性に優れる感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、リードフレームの製造方法、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0024】
また本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
さらに本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0025】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感色素を含有してなる。
以下、本発明の感光性樹脂組成物で用いられる各成分についてより詳細に説明する。
【0026】
[(A)成分:バインダーポリマー]
本発明で用いることのできる(A)成分:バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、及びフェノール系樹脂が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記(A)バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のα−位若しくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、α−クロルアクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(IV)
【0028】
C=C(R)−COOR (IV)
【0029】
〔式(IV)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す〕で表される化合物、及びこれらの化合物のアルキル基が水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等で置換された化合物が挙げられる。
上記一般式(IV)中のRで示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ベンジル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0030】
上記一般式(IV)で表される単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、及び(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、本発明における(A)成分であるバインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を含有することが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が好ましく、中でもメタクリル酸がより好ましい。
【0032】
上記(A)バインダーポリマーのカルボキシル基含有量(使用する全重合性単量体に対するカルボキシル基を有する重合性単量体の配合率)は、アルカリ現像性とアルカリ耐性のバランスの見地から、12〜50質量%であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。このカルボキシル基含有率が12質量%以上ではアルカリ現像性が向上し、50質量%以下ではアルカリ耐性に優れる傾向がある。
【0033】
なお、上記(A)バインダーポリマー中におけるカルボキシル基を有する重合性単量体に由来する構造単位の含有率は、上記カルボキシル基含有の単量体の配合率に相関し、よって12〜50質量%であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0034】
また、本発明における(A)成分であるバインダーポリマーは、密着性及び耐薬品性の見地からスチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有させることが好ましい。
上記スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分とした場合のその含有量(使用する全重合性単量体に対するスチレン又はスチレン誘導体の配合率)は、密着性及び耐薬品性を良好にする見地から、(A)成分全体の固形分に対して10質量%〜60質量%含むことが好ましく、15質量%〜50質量%含むことがより好ましい。この含有量が10質量%以上では、密着性が向上する傾向にあり、50質量%以下では剥離片が大きくなることによる剥離に要する長時間化が抑えられる。
【0035】
なお、上記(A)バインダーポリマー中におけるスチレン又はスチレン誘導体に由来する構造単位の含有率は、スチレン又はスチレン誘導体の上記配合率に相関し、10質量%〜60質量%であることが好ましく、15質量%〜50質量%であることがより好ましい。
【0036】
これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、及び異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。
【0037】
上記(A)バインダーポリマーは、通常の方法によって製造することができる。具体的には例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、スチレン等とをラジカル重合させることにより製造することができる。
【0038】
上記(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスの見地から、20,000〜300,000であることが好ましく、40,000〜150,000であることがより好ましく、40,000〜120,000であることが更に好ましく、50,000〜80,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が、20,000以上では耐現像液性に優れる傾向があり、300,000以下では現像時間が長くなるのが抑えられる傾向がある。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0039】
上記(A)バインダーポリマーの含有量は、(A)成分及び後述の(B)成分の総量100質量部に対して、30質量部〜80質量部とすることが好ましく、40質量部〜75質量部とすることがより好ましく、50質量部〜70質量部とすることが更に好ましい。(A)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の塗膜性及び光硬化物の強度がより良好となる。
【0040】
[(B)成分:エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物]
本発明で用いられる(B)成分としてのエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物は、解像度及びテント信頼性をバランスよく向上させる見地から、少なくともジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む。ここで、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレートとは、ジペンタエリスリトールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化物を意味するものとし、当該エステル化物には、アルキレンオキシ基で変性された化合物を含有するものと定義する。また、一分子中におけるエステル結合の数は、6であることが好ましいが、エステル結合の数が1〜5の化合物が混合していてもよい。
【0041】
ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、より具体的には、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化1】

【0042】
一般式(I)中、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、複数存在するAは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜20の整数である。
【0043】
一般式(I)中、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、感度、密着性及び解像度をより向上させる観点からメチル基であることが好ましい。
【0044】
一般式(I)中、Aは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、炭素数2〜5のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましい。
【0045】
一般式(I)中、nは0〜20の整数であり、0〜15であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがより好ましい。
【0046】
また、上記ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、テント信頼性及び解像性のバランスの見地から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して3質量部〜25質量部であることが好ましく、5質量部〜20質量部であることがより好しい。
【0047】
(B)成分は、上記ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物のほかに、その他の光重合性化合物を用いることができる。
その他の光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシブタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0048】
上記の中でも、テント信頼性及び解像性をバランスよく向上させる点で、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0049】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパンは,BPE−200(新中村化学工業(株)製、製品名)として、商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、製品名)又はFA−321M(日立化成工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。さらに2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0050】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の含有率は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、5質量%〜25質量%であるが好ましく、7質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0051】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が1〜21であるトリメチロールプロパンポリエチレントリ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が1〜21であるテトラメチロールメタンポリエチレントリ(メタ)アクリレート、及びエチレン基の数が1〜30であるテトラメチロールメタンポリエチレンテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0052】
上記の中でも、テント信頼性及び解像性に優れる点では、エチレン基の数が1〜21であるトリメチロールプロパンポリエチレントリ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0053】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物の含有率は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、5質量%〜25質量%であるが好ましく、7質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0054】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
なお、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0055】
EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−11が挙げられる。また、EO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−13が挙げられる。また、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−21が挙げられる。なかでもテント信頼性をより向上させる見地から、イソシアヌル環骨格を有するウレタンモノマーが好ましく、トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレートであるUA−21(新中村化学工業(株)製、製品名)がより好ましい。
【0056】
イソシアヌル環骨格を有するウレタンモノマーの含有率は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、5質量%〜25質量%であるが好ましく、7質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0057】
上記その他の光重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0058】
上記(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、20質量部〜60質量部とすることが好ましく、30質量部〜55質量部とすることがより好ましく、35質量部〜50質量部とすることが特に好ましい。(B)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の光感度及び塗膜性がより良好となる。
【0059】
[(C)成分:光重合開始剤]
(C)成分である光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1などの芳香族ケトン、アルキルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾインアルキルエーテルなどのベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾインなどのベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールなどのベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
上記の中でも、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を含有することが好ましい。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、及び2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。中でも、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体であることが好ましい。
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾールは,B−CIM(保土ヶ谷化学製、製品名)として、商業的に入手可能である。
【0061】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01質量部〜30質量部であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、1質量部〜7質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜20質量部であることがより好ましく、2質量部〜6質量部であることがさらに好ましく、3質量部〜5質量部であることが特に好ましい。この配合量が0.1質量部以上では光感度、解像度又は密着性が向上する傾向があり、10質量部以下ではレジスト形状に優れる傾向がある。
【0062】
[(D)成分:増感色素]
(D)成分である増感色素は、ピラゾリン化合物を含有する。光重合性化合物としてジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と組み合わせて用いることで、光感度に優れ、形成したレジスト膜のテント信頼性や密着性及び形成したレジストパターンの解像性に優れる感光性樹脂組成物が得られる。
【0063】
ピラゾリン化合物としては、増感色素として用いられるものを適用することができる。例えば、ピラゾリン環にスチリル基、チエニル基、フリル基、ビフェニル基、又はナフチル基を含有する基を有する化合物が挙げられ、スチリル基、チエニル基及びフリル基から選択される少なくとも1つを含有する基を有することが好ましい。
ピラゾリン環上のスチリル基、チエニル基又はフリル基を含有する基が結合する位置は、1位〜5位のいずれであってもよく、3位及び5位の少なくとも一方で結合することがより好ましい。
【0064】
ピラゾリン化合物は、更にフェニル基を有することが好ましい。ピラゾリン環上のフェニル基の置換位置は、1位〜5位のいずれであってもよく、1位であることがより好ましい。
【0065】
上記ピラゾリン化合物としては、下記一般式(II)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0066】
【化2】

【0067】
上記一般式(II)中、R及びRはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のフェニル基、チエニル基又はフリル基を示し、解像度をより向上させる観点から、置換若しくは無置換のフェニル基であることが好ましい。
【0068】
及びRで表されるフェニル基、チエニル基又はフリル基の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜10のエステル基が挙げられ、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数3〜8のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0069】
及びRで表されるフェニル基、チエニル基又はフリル基の置換基がアルキル基の場合には、該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、分岐アルキル基であることがより好ましい。
及びRで表されるフェニル基、チエニル基又はフリル基の置換基がアルコキシ基の場合には、該アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。
【0070】
又はRが置換のフェニル基の場合には、フェニル基における置換基の結合位置はパラ位(4位)であることが好ましい。
【0071】
一般式(II)におけるRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜10のエステル基を示し、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数3〜8のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0072】
で表される上記炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、及びtert−オクチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
一般式(II)におけるmは0〜5の整数を示し、0〜4であることが好ましく、0〜3であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
なお、mが2〜5のとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0074】
一般式(II)中のaは、0〜2の整数を表し、1であることがより好ましい。
一般式(II)中のbは、0〜2の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0075】
また、一般式(II)中のa及びbの和は1〜4であり、1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0076】
上記一般式(II)で表される化合物としては、例えば、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチニル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(2−チエニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2−チエニル)エテニル−5−(2−チエニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2−チエニル)−5−(2−チエニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2−チエニル)−5−スチリルピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、及び1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0077】
上記一般式(II)で表される化合物のなかでも、合成の容易さ及び光感度を向上させる観点からは、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリンが特に好ましく、合成の容易さ及び溶媒への溶解性を向上させる観点からは、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)ピラゾリンが特に好ましい。
【0078】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度に、上記一般式(II)で表される化合物以外の増感色素を併せて配合することができる。
【0079】
上記一般式(IV)で表される化合物以外の増感色素としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、トリアゾール類、スチルベン類、トリアジン類、チオフェン類、ナフタルイミド類、及びトリアリールアミン類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0080】
(D)成分である増感色素中における、上記一般式(II)で表される化合物の含有割合は、(D)成分の総量中、10質量%〜100質量%であることが好ましく、30質量%〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることが特に好ましい。この配合量が、10質量%以上では、高感度化及び高解像度化しやすい傾向がある。
【0081】
(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01質量%〜10質量部とすることが好ましく、0.05質量%〜5質量部とすることがより好ましく、0.1質量%〜3質量部とすることがさらに好ましい。この含有量が0.01質量部以上では光感度及び解像度が得られやすい傾向があり、10質量部以下では、十分に良好なレジスト形状が得られやすい傾向がある。
【0082】
[その他の成分]
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、及びメチルバイオレット等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、o−クロロアニリン及びターシャリブチルカテコール等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤、重合禁止剤などを(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01質量部〜20質量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。上記有機溶剤としては通常用いられる有機溶剤を特に制限はなく用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
例えば、上記(A)バインダーポリマーと、(B)重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)増感色素とを上記有機溶剤に溶解して固形分30質量%〜60質量%程度の溶液(以下、「塗布液」という)として用いることができる。
尚、固形分とは、上記溶液(感光性樹脂組成物)から揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
【0084】
上記塗布液は、例えば以下のようにして感光性樹脂層の形成に用いることができる。上記塗布液を後述する支持フィルム、金属板などの支持体の表面上に塗布し、乾燥させることにより、上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層を支持体上に形成することができる。
金属板としては、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金が挙げられる。
【0085】
形成される感光性樹脂層の厚みは、その用途により異なるが、乾燥後の厚みで1μm〜100μm程度であることが好ましい。感光性樹脂層の支持体に対向する面とは反対側の面(表面)を、保護フィルムで被覆してもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどが挙げられる。
【0086】
<感光性エレメント>
本発明の感光性エレメント10は、図1にその一例の略断面図を示すように、支持体2と、上記支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層4と、を備え、必要に応じて設けられる保護フィルム6等のその他の層を備えて構成される。
【0087】
[支持体]
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
上記支持体(以下、「支持フィルム」ということがある)の厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが更に好ましい。支持体の厚みが1μm以上であることで、支持フィルムを剥離する際に支持フィルムが破れることを抑制できる。また100μm以下であることで解像度の低下が抑制される。
【0088】
[保護フィルム]
上記感光性エレメント10は、必要に応じて、感光性樹脂層4の支持体2に対向する面とは反対側の面(表面)を被覆する保護フィルム6をさらに備えてもよい。
【0089】
上記保護フィルムとしては、感光性樹脂層に対する接着力が、支持フィルムの感光性樹脂層に対する接着力よりも小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。
ここで、「フィッシュアイ」とは、保護フィルムを構成する材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものを意味する。すなわち、「低フィッシュアイ」とは、フィルム中の上記異物等が少ないことを意味する。
【0090】
具体的に、保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとしては、王子製紙社製アルファンMA‐410、E−200C、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製PS−25等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。なお、保護フィルムは上記支持体と同一のものでもよい。
【0091】
保護フィルムの厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましく、15μm〜30μmであることが特に好ましい。保護フィルムの厚みが1μm以上であることで、保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂層及び支持フィルムを基板上にラミネートする際、保護フィルムが破れることを抑制できる。また100μm以下であることで生産性が向上する。
【0092】
[製造方法]
本発明の感光性エレメントは、例えば以下のようにして製造することができる。(A)バインダーポリマーと、(B)重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)増感色素とを上記有機溶剤に溶解した塗布液を準備する工程と、上記塗布液を支持体上に塗布して塗布層を形成する工程と、上記塗布層を乾燥して感光性樹脂層を形成する工程と、を含む製造方法で製造することができる。
【0093】
上記塗布液の支持体上への塗布は、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ、スプレーコータ等の公知の方法で行うことができる。
【0094】
また、上記塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。例えば、70℃〜150℃、5分〜30分程度で行うことができる。乾燥後、感光性樹脂層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0095】
感光性エレメントにおける感光性樹脂層の厚みは、用途により適宜選択することができるが、乾燥後の厚みで1μm〜200μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上する。200μm以下の場合には、本発明の効果が充分に得られて、光感度が高く、レジスト底部の光硬化性に優れる傾向がある。
【0096】
本発明の感光性エレメントは、必要に応じて、更にクッション層、接着層、光吸収層、又はガスバリア層等の中間層などを有していてもよい。
【0097】
本発明の感光性エレメントの形態は特に制限されない。例えば、シート状であってもよく、又は巻芯にロール状に巻き取った形状であってもよい。
ロール状に巻き取る場合、支持フィルムが外側になるように巻き取ることが好ましい。
巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、又はABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
【0098】
このようにして得られたロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0099】
本発明の感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの製造方法に好適に用いることができる。
【0100】
<レジストパターンの製造方法>
本発明のレジストパターンの製造方法は、(i)基板上に上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、(ii)上記感光性樹脂層の少なくとも一部に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、(iii)上記感光性樹脂層の未硬化部分を基板上から現像により除去する現像工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を含んでもよい。
【0101】
(i)感光性樹脂層形成工程
感光性樹脂層形成工程においては、基板上に上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層が形成される。上記基板としては特に制限されないが、通常、絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備えた回路形成用基板、又は合金基材等のダイパッド(リードフレーム用基材)が用いられる。
【0102】
基板上に感光性樹脂層を形成する方法としては、例えば、上記感光性エレメントが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを除去した後、感光性エレメントの感光性樹脂層を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより行うことができる。これにより、回路形成用基板と感光性樹脂層と支持体とをこの順に備える積層体が得られる。
【0103】
この感光性樹脂層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の加熱は、70℃〜130℃の温度で行うことが好ましい。また圧着は、0.1MPa〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で行うことが好ましいが、これらの条件には必要に応じて適宜選択される。なお、感光性樹脂層を70℃〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、密着性及び追従性をさらに向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0104】
(ii)露光工程
露光工程においては、基板上に形成された感光性樹脂層の少なくとも一部に活性光線を照射することで、活性光線が照射された露光部が光硬化して、潜像が形成される。
この際、感光性樹脂層上に存在する支持体(支持フィルム)が活性光線に対して透過性である場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することができるが、支持フィルムが遮光性である場合には、支持フィルムを除去した後に感光性樹脂層に活性光線を照射する。
【0105】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法や、DLP(Digital Light Processing)露光法などの直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0106】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ及び窒化ガリウム系青紫色レーザ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いてもよい。
【0107】
本発明の感光性樹脂組成物は、活性光線の光源を特に制限することなく使用できるが、直接描画露光用途へ応用することが好ましい。
【0108】
(iii)現像工程
現像工程においては、上記感光性樹脂層の未硬化部分が基板上から現像により除去されることで、上記感光性樹脂層が光硬化した硬化物からなるレジストパターンが基板上に形成される。
感光性樹脂層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去してから、上記露光部分以外の未露光部分の除去(現像)を行う。現像方法には、ウエット現像とドライ現像とがある。
【0109】
ウエット現像の場合は、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッピング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0110】
現像液の構成は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、及び有機溶剤系現像液が挙げられる。
【0111】
アルカリ性水溶液は、現像液として用いられる場合、安全且つ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩が用いられる。
【0112】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1質量%〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0113】
上記水系現像液は、例えば、水又はアルカリ性水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる現像液である。ここで、アルカリ性水溶液の塩基としては、先に述べた物質以外に、例えば、ホウ砂やメタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2ーアミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1、3−ジアミノプロパノール−2、及びモルホリンが挙げられる。水系現像液のpHは、現像が充分に行われる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
【0114】
水系現像液に用いる有機溶剤としては、例えば、3−アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。水系現像液における有機溶剤の濃度は、通常、2質量%〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。
【0115】
有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、及びγ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1質量%〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
【0116】
本発明では、現像工程において未露光部分を除去した後、必要に応じて60℃〜250℃程度の加熱又は0.2J/cm〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化して用いてもよい。
【0117】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターンの製造方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板をエッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含み、必要に応じてレジスト除去工程等のその他の工程を含んで構成される。本発明の感光性樹脂組成物は、レジストパターンの製造に好適に使用できるが、中でも、めっき処理により導体パターンを形成する製造方法への応用がより好適である。
【0118】
エッチング処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。
【0119】
エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、エッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液が挙げられ、エッチファクターが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが望ましい。
【0120】
一方、めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層上に銅及び半田などをめっきする。めっき処理の後、硬化レジストを除去し、更にこのレジストによって被覆されていた導体層をエッチングして、導体パターンを形成する。
【0121】
めっき処理の方法としては、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよいが、無電解めっき処理が好ましい。無電解めっき処理としては、例えば、硫酸銅めっき及びピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき及びスルファミン酸ニッケルめっき等のニッケルめっき、ハード金めっき及びソフト金めっき等の金めっきが挙げられる。
【0122】
上記エッチング処理又はめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去される。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液により剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1質量%〜10質量%水酸化カリウム水溶液が用いられる。なかでも、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1質量%〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0123】
レジストパターンの剥離方式としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0124】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、さらにエッチング処理によってレジストで被覆されていた導体層をエッチングし、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。この際のエッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0125】
本発明のプリント配線板の製造方法によって製造されるプリント配線板は、単層プリント配線板のみならず多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【0126】
<リードフレームの製造方法>
本発明のリードフレームの製造方法は、上記レジストパターン形成方法によって、レジストパターンが形成された基板をめっき処理して導体パターンを形成する工程を含み、必要に応じて、レジスト除去工程、エッチング処理工程等のその他の工程を含んで構成される。
【0127】
上記基板としては、例えば、基板としては合金基材等のダイパッド(リードフレーム用基材)が用いられる。本発明においては、支持体上に形成されたレジストパターンをマスクとして、支持体にめっき処理が行われる。
【0128】
めっき処理の方法としては、前述のプリント配線板の製造方法で説明したものが挙げられる。上記めっき処理の後、支持体上のレジストパターンは除去される。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液により剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、前述のプリント配線板の製造方法で説明したものが挙げられる。
【0129】
レジストパターンの剥離方式としては、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。レジストパターンを除去した後、さらにエッチング処理を行って、不要な金属層を除去することでリードフレームを製造することができる。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0132】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
まず、表1に示すバインダーポリマー(A−1)を合成例1、(A−2)を合成例2に従って合成した。
【0133】
<合成例1>
共重合単量体としてメタクリル酸125g、メタクリル酸メチル275g及びスチレン100gと、アゾビスイソブチロニトリル1.0gとを混合して、溶液aを調製した。
また、メチルセロソルブ60g及びトルエン40gの配合液(質量比6:4)100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.0gを溶解して、溶液bを調製した。
【0134】
一方、撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比6:4であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物400gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。
【0135】
ここに上記溶液aを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃で2時間保温した。次いで、このフラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。さらに、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃に昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A−1)の溶液を得た。このバインダーポリマー(A−1)の溶液に、アセトンを加えて不揮発成分(固形分)が50質量%になるように調製した。
【0136】
<合成例2>
共重合単量体としてメタクリル酸125g、メタクリル酸メチル25g、ベンジルメタクリレート125g及びスチレン225gと、アゾビスイソブチロニトリル1.5gとを混合して、溶液cを調製した。
また、メチルセロソルブ60g及びトルエン40gの配合液(質量比6:4)100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解して、溶液dを調製した。
【0137】
一方、撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比6:4であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物400gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。
【0138】
ここに上記溶液cを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃で2時間保温した。次いで、このフラスコ内の溶液に、上記溶液dを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。さらに、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃に昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A−2)の溶液を得た。このバインダーポリマー(A−2)の溶液に、アセトンを加えて不揮発成分(固形分)が50質量%になるように調製した。
【0139】
バインダーポリマー(A−1)の重量平均分子量は60,000であり、酸価は163mgKOH/gであった。また、バインダーポリマー(A−2)の重量平均分子量は50,000であり、酸価は163mgKOH/gであった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件は、以下に示す。
【0140】
−GPC条件−
ポンプ:日立 L−6000型[(株)日立製作所製]
カラム:Gelpack GL-R420+Gelpack GL-R430+Gelpack GL-R440(計3本)[以上、日立化成工業(株)製、製品名]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI[(株)日立製作所製、製品名]
【0141】
<感光性樹脂組成物の調製>
次に、表1に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物を得た。なお表中の数値は、配合部数(質量基準)を示す。また、(A)成分及び(B)成分は、固形分での質量を表す。
【0142】
【表1】

【0143】
上表における各成分は、以下を表す。
【0144】
−(A)成分:バインダーポリマー−
*1:(A−1)メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=25/55/20(重量比)、重量平均分子量=60,000、50質量%メチルセルソルブ/トルエン=6/4(重量比)溶液
*2:(A−2)メタクリル酸/メタクリル酸メチル/ベンジルメタクリレート/スチレン=25/5/25/45(重量比)、重量平均分子量=50,000、50質量%メチルセルソルブ/トルエン=6/4(重量比)溶液
【0145】
−(B)成分:光重合性化合物−
*3:(B−1)
一般式(I)においてn=0、Rがメチル基である化合物。
*4:TMPT [新中村化学(株)製、製品名]
トリメチロールプロパントリアクリレート
*5:FA−321M [日立化成工業(株)製、製品名]
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン
*6:TMPT−21 [日立化成工業(株)製、製品名]
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート
*7:UA−21 [新中村化学(株)製、製品名]
トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレート
【0146】
−(C)成分:光重合開始剤−
*8:B−CIM [保土ヶ谷化学製、製品名]
2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾール
【0147】
−(D)成分:増感色素−
*9:(D−1)
1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン
*10:(D−2)
1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)ピラゾリン
*11:(D−3)
1−フェニル−3−(4−tert−ブチルスチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン
*12:EAB [保土ヶ谷化学製、製品名]
4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0148】
<感光性エレメントの調製>
上記で得られた感光性樹脂組成物を、それぞれ厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製、製品名「HTF01」)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して、乾燥後の膜厚が10μmである感光性樹脂層を形成した。
この感光性樹脂層上に、ポリプロピレン製の保護フィルム(王子製紙(株)製、製品名「E200C」)を貼り合わせ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持フィルム)と、感光性樹脂層と、保護フィルムとがこの順に積層された感光性エレメントを得た。
【0149】
<積層体の作製>
厚み12μmの銅箔を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(基板、日立化成工業(株)製、製品名「MCL−E−67」)の銅表面を、#600相当のブラシを備える研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥した。研磨後の銅張積層板を80℃に加温し、保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂層が銅表面に接するように、上記で得られた感光性エレメントをそれぞれラミネートした。ラミネートは110℃のヒートロールを用いて、0.40MPaの圧着圧力、1.5m/分のロール速度で行った。
こうして、銅張積層板、感光性樹脂層、支持フィルムの順に積層された積層体をそれぞれ得た。得られた積層体は、以下に示す試験における試験片として用いた。
【0150】
<評価>
(光感度の測定試験)
上記で得られた試験片の支持フィルム上に、日立41段ステップタブレットを置いて、波長355nmの半導体レーザを光源とする直接描画露光装置(日本オルボテック(株)製、商品名Paragon−9000m)を用いて、所定のエネルギー量で露光した。
【0151】
次に、支持フィルムを剥離し、30℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を45秒間スプレーし、未露光部分を除去して現像処理を行った。
現像処理後、銅張積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定し、現像後の残存ステップ段数が17.0段となるエネルギー量(mJ/cm)を求めた。感光性樹脂組成物の光感度は、上記エネルギー量(mJ/cm)が少ないほど、光感度が高いことを示す。結果を表2に示す。
【0152】
(密着性及び解像度の評価)
上記で得られた試験片の支持体フィルム上に、解像度評価用パターンとしてライン幅/スペース幅が5/5〜47/47(単位:μm)の配線パターンを有する描画データを使用し、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、上記光感度の測定試験と同様の現像処理を行った。
【0153】
現像処理後、光学顕微鏡を用いてレジストパターンを観察した。レジストパターンのスペース部分(未露光部)が完全に除去され、且つライン部分(露光部)が蛇行、カケを生じることなく形成されたレジストパターンのうち、ライン幅間のスペース幅が最小となるものを決定し、密着性(μm)及び解像度(μm)として評価した。この数値が小さいほど密着性及び解像度が良好であることを示す。結果を表2に示す。
【0154】
(テント信頼性の評価)
0.4mm厚の銅張積層板に直径1mmの丸穴が7mm間隔で空いている銅張積層板上に、上記で得られた感光性エレメントを両面にラミネートし、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、光感度の測定試験と同様の現像液を用い、30秒間スプレーして現像処理を行った。
現像後、合計320個の丸穴における感光性エレメントの破れ数(個)を測定し、下記数式によるテント破れ率を算出し、これをテント信頼性とした。結果を表2に示す。
【0155】
テント破れ率=(穴破れ数(個)/)×100
【0156】
【表2】

【0157】
表2に示すように、実施例1〜4の感光性樹脂組成物から調製した感光性エレメントは、比較例1〜4に比べて、光感度、テント信頼性、密着性及び解像度に優れた特性を示した。特に、比較例2は、(B)成分の光重合性化合物としてジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を用いているが、(D)成分の増感色素としてピラゾリン化合物を用いておらず、この場合には、実施例1及び2に比べて光感度に劣るだけでなく、テント信頼性にも劣る結果となった。
以上から、実施例1〜4の感光性樹脂組成物は、直接描画露光法によるエッチング工法において、光感度、テント信頼性、密着性及び解像度に優れたプリント配線板の形成が可能であることが判明した。
【0158】
[実施例5〜9]
実施例1において(D)成分の増感色素の種類を下記表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを作製し、これを用いて上記方法により評価を行った。結果を表3に示す。尚、表3には、比較のために上記比較例2の評価結果も掲載した。
【0159】
【表3】



【0160】
上記表中の各成分は、以下を表す。
(D−4):1−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン
(D−5):1−フェニル−3−(2−チエニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン
(D−6):1−フェニル−3−(2−チエニル)エテニル−5−(2−チエニル)ピラゾリン
(D−7):1−フェニル−3−(2−チエニル)−5−(2−チエニル)ピラゾリン
(D−8):1−フェニル−3−(2−チエニル)−5−スチリルピラゾリン
【0161】
表3に示すように、(D)成分の増感色素の種類を変えても、ピラゾリン化合物(特に一般式(II)に該当する化合物)の場合には、光感度、テント信頼性、密着性及び解像度に優れた特性を示した。他方、ピラゾリン化合物に該当しない増感色素を用いた比較例2では、光感度に劣るだけでなく、テント信頼性にも劣るものとなっていた。
【0162】
[実施例10〜13]
実施例2において(B)成分の光重合性化合物の種類を下記表4に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法で感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを作製し、これを用いて上記方法により評価を行った。結果を表4に示す。
【0163】
【表4】

【0164】
上記表中の各成分は、以下を表す。
*13:(B−2)
一般式(I)においてn=1、AO=エチレンオキシド基、Rがメチル基である化合物。
*14:(B−3)
一般式(I)においてn=5、AO=エチレンオキシド基、Rがメチル基である化合物。
*15:(B−4)
一般式(I)においてn=1、AO=プロピレンオキシド基、Rがメチル基である化合物。
*16:(B−5)
一般式(I)においてn=5、AO=プロピレンオキシド基、Rがメチル基である化合物。
【0165】
表4に示すように、(B)成分の光重合性化合物の種類を変えても、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(特に一般式(I)に該当する化合物)の場合には、光感度、テント信頼性、密着性及び解像度に優れた特性を示した。
【符号の説明】
【0166】
2 支持体
4 感光性樹脂層
6 保護フィルム
10 感光性エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:バインダーポリマー、(B)成分:エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物、(C)成分:光重合開始剤、及び(D)成分:増感色素、を含有し、前記(B)成分がジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含み、前記(D)成分がピラゾリン化合物を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
支持体と、
前記支持体上に形成された請求項1に記載の感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層と、
を有する感光性エレメント。
【請求項3】
基板上に、請求項1に記載の感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、
前記感光性樹脂層の少なくとも一部に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、
前記感光性樹脂層の未硬化部分を基板上から現像により除去する現像工程と、
を有するレジストパターンの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレジストパターンの製造方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のレジストパターン形成方法によりレジストパターンが形成された基板をめっき処理して導体パターンを形成する工程を含むリードフレームの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の製造法により製造されるプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−48202(P2012−48202A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136640(P2011−136640)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】