説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造法及びプリント配線板の製造法

【課題】微細配線が形成可能、現像液汚染物の低減、めっき液への耐性が良好、めっき後のレジスト剥離が容易になる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造法、プリント配線板の製造法を提供する。
【解決手段】(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(B)成分が、オキシアルキレン鎖の繰り返し単位が異なる二種のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造法及びプリント配線板の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の軽薄短小化、少量多品種化の傾向が進むにつれ、ICチップを基板上に搭載するために用いられるBGA(Ball Grid Array)等の半導体パッケージも多ピン化、狭小化が進み、これらを搭載するプリント配線板も高密度化が要求されている。
【0003】
従来、プリント配線板の製造分野においては、エッチングやめっき等に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物を支持体に積層して保護フィルムで被覆した感光性エレメントが広く用いられている。
【0004】
プリント配線板は、感光性エレメントを用いて以下のようにして製造される。
感光性エレメントの保護フィルムを剥離しながら、感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層(ラミネート)する。次に、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を硬化させる。支持体フィルムを剥離除去した後、未露光部を基板上から除去(現像)することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンが形成される。レジストパターンを形成した回路形成用基板に対し、エッチング処理又はめっき処理を施して基板上に回路を形成した後、最終的にレジストを剥離除去することでプリント配線板が製造される。
【0005】
半導体パッケージ搭載基板の製造法においては、微細回路形成のため、レジストパターン形成後、めっき処理、レジスト剥離、エッチングを行うセミアディティブ工法(SAP)が主流になっている。
【0006】
一方、露光方法としては、従来、水銀灯を光源としてフォトマスクを介して一括露光する方法が用いられている。また、近年、DLP(Digital Light Processing)やLDI(Laser Direct Imaging)と呼ばれる、パターンのデジタルデータを直接感光性樹脂組成物層に描画する直接描画露光法が実用化されている。直接描画露光法はフォトマスクを介した一括露光法よりも位置合わせ精度が良好であり、高精細なパターンが得られることから、高密度パッケージ基板作製のために導入されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−042526号公報
【特許文献2】特開2001−092124号公報
【特許文献3】特開2006−030765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SAPに要求される感光性樹脂組成物の特性としては、微細配線が形成可能、現像液汚染物の低減、めっき液への耐性が良好、めっき後のレジスト剥離が容易であることが挙げられる。微細配線形成及びめっき液への耐性向上手法としては、レジストに疎水性化合物を付与する技術が一般的であるが、さらなる疎水性向上により、現像スカムの発生、レジストの剥離残渣付着が問題となってきている。この問題解決のため、親水性化合物を付与した検討を実施したが、レジストの密着性及びめっき耐性の低下がみられ、SAPに要求されるレジスト特性の両立が課題となっている。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、微細配線が形成可能、現像液汚染物の低減、めっき液への耐性が良好、めっき後のレジスト剥離が容易になる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造法及びプリント配線板の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(A)バインダーポリマー、
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び
(C)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(B)成分が、一般式(I)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の(a)m+nが2〜6の化合物と、(b)m+nが8〜16の化合物をそれぞれ含有する感光性樹脂組成物に関する。
【0011】
【化1】

(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を示す。なお、式中、複数存在するXはそれぞれ同一であっても異なってもよい)
【0012】
また、本発明は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対し、(A)成分の配合量が40〜90質量部、(B)成分の配合量が10〜60質量部及び(C)成分の配合量が0.01〜5質量部であり、(B)成分の(a)の配合量が5〜20質量部、(b)の配合量が5〜40質量部である感光性樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、上記感光性樹脂組成物を支持体上に塗布、乾燥し、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備える感光性エレメントに関する。
【0014】
また、本発明は、上記感光性エレメントを、回路形成用基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化させ、未露光部を現像により除去することを特徴とするレジストパターンの製造法に関する。
【0015】
また、本発明は、上記のレジストパターンの製造法により、レジストパターンの製造された回路形成用基板をめっきすることを特徴とするプリント配線板の製造法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微細配線が形成可能で、現像液汚染物が低減でき、めっき液への耐性が良好であり、めっき後のレジスト剥離が容易になる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの製造法及びプリント配線板の製造法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマーと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する。以下、(A)〜(C)成分につき、詳細に説明する。
【0019】
本発明の(A)バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物、これらの化合物のアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換した化合物などが挙げられる。
【0021】
【化2】

上記一般式(II)中、R12は水素原子又はメチル基を示し、R13は炭素数1〜12のアルキル基を示す。R13で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0022】
上記一般式(II)で表される単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明の(A)バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を含有させることが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が好ましい。その他の重合性単量体としては、上記一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。また、上記(A)バインダーポリマーは、耐水性の向上、可とう性の見地からスチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有することが好ましい。
【0024】
これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用するもできる。
【0025】
本発明で用いる(B)分子内に少なくとも1つ以上の重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、一般式(I)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の(a)m+nが2〜6の化合物と、(b)m+nが8〜16の化合物をそれぞれ含有するものである。
【0026】
【化3】

【0027】
上記一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であるが、いずれもメチル基であることが好ましい。また、Xは炭素数2〜6のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等)であるが、めっき耐性及び解像度を良好にする観点から、Xはエチレン基又はプロピレン基(更にはイソプロピレン基)であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。m及びnが、2以上の場合、隣り合った2つ以上のXはそれぞれ同一であっても異なってもよい。また、Xが2種以上のアルキレン基である場合、−(X−O)−の構造単位はランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0028】
また、一般式(I)中の(a)において、m+n=2未満では、(A)成分との相溶性低下による外観異常や現像汚染物が増加する傾向がある。また、一般式(I)中の(b)において、m+n=16を超えると、めっき耐性が低下する傾向がある。
【0029】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、そのうち、R及びRはいずれもメチル基であり、Xはいずれもエチレン基であり、m+n=4であるビスフェノールA系メタクリレートは、BPE−200(新中村化学工業株式会社製、商品名)として、また、m+n=10である化合物は、BPE−10(新中村化学工業工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0030】
一般式(I)中の(a)の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、5〜20質量部とすることが好ましく、5〜15質量部にすることがより好ましい。この配合量が5質量部未満の場合、レジスト密着性やめっき耐性が不十分になる傾向があり、20質量部を超えると、現像汚染物の発生や、剥離時間が極端に長くなる傾向がある。また、一般式(I)中の(b)の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、5〜40質量部とすることが好ましく、10〜30質量部にすることがより好ましい。この配合量が5質量部未満の場合、解像度が不十分になる傾向があり、40質量部を超えると、光硬化後のレジストが脆くなる傾向がある。
【0031】
上記(B)光重合性化合物は、一般式(I)で表される化合物を必須として含有していれば、本発明の効果を損ねない程度に、それ以外の成分を含有させてもよい。
このような成分としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0032】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0033】
本発明で使用する(C)光重合開始剤として、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0034】
なお、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。また、本実施形態に係る(C)成分は、密着性及び感度の見地から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を含むことが好ましい。
【0035】
上記(A)バインダーポリマーの配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、40〜90質量部であることが好ましく、45〜75重量部であることがより好ましく、50〜70重量部であることがさらに好ましい。この配合量が40重量部未満では光硬化物が脆くなり易く、感光性エレメントとして用いた場合に塗膜性が劣る傾向があり、900質量部を超えると光感度が不充分となる傾向がある。
【0036】
上記(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(エチレン性不飽和光重合性モノマ)の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、15〜55質量部であることがより好ましく、30〜50質量部であることがさらに好ましい。この配合量が20質量部未満では光感度が不充分となる傾向があり、60質量部を超えると光硬化物が脆くなる傾向がある。
【0037】
上記(C)光重合開始剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4.5質量部であることがより好ましく、1〜4質量部であることがより好ましい。この配合量が0.01質量部未満では光感度が不充分となる傾向があり、5質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0038】
上記感光性樹脂組成物には、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモメチルフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0039】
上記感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0040】
上記感光性樹脂組成物は、特に制限はないが、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布して乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いるか、感光性エレメントの形態で用いられることが好ましい。また、感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度であることが好ましい。
【0041】
上記感光性エレメントは、例えば、支持体として、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルム上に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥することにより得ることができる。上記塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。また、乾燥は、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。
【0042】
これらの重合体フィルムの厚みは、1〜100μmとすることが好ましい。
また、上記感光性エレメントは、感光性樹脂組成物層、支持体及び保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0043】
上記感光性エレメントは、例えば、そのまま又は感光性樹脂組成物層の他の面に保護フィルムをさらに積層して円筒状の巻芯に巻きとって貯蔵される。なお、この際支持体が外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
上記巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0044】
上記感光性エレメントを用いてレジストパターンを製造するに際しては、上記の保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去後、感光性樹脂組成物層を70〜130℃程度に加熱しながら回路形成用基板に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することにより積層する方法などが挙げられ、減圧下で積層することも可能である。積層される表面は、通常金属面であるが、特に制限はない。
このようにして積層が完了した感光性樹脂組成物層は、ネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線が画像状に照射される。上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。
【0045】
次いで、露光後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去した後、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して現像し、レジストパターンを製造することができる。
【0046】
上記アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。上記アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0047】
現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化して用いてもよい。
本発明の感光性エレメントを用いてプリント配線板を製造する場合、現像されたレジストパターンをマスクとして銅めっき(無電解銅めっき、電気銅めっき、これらの組み合わせ等)で処理する。次いで、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。上記強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。上記剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
(感光性樹脂組成物溶液の調製)
表1及び表2に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物溶液を得た。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
なお、表2において使用した材料を下記に示す。
BPE−200:2,2−ビス(4−(メタアクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(一般式(I)でm+n=4、新中村化学工業株式会社製、商品名)
BPE−10:2,2−ビス(4−(メタアクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(一般式(I)でm+n=10、新中村化学工業株式会社製、商品名)
SR−454:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
APG−400:ポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名)
M−113:下記式(III)で示される化合物(東亜合成株式会社製、商品名)
【0053】
【化4】

【0054】
(感光性エレメントの作製)
次に、得られた感光性樹脂組成物の溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名「G2−16」)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥した後、保護フィルム(ポリエチレン)で保護し感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は15μmであった。
【0055】
(レジストパターンの形成)
次に、プリント配線板用銅張積層板(日立化成工業株式会社製、商品名「MCL−E679」)の銅表面を粗化、アルカリ脱脂、酸洗浄、水洗を実施後、空気流で乾燥し、得られた基材を80℃に加温し、その銅表面上に上記感光性樹脂組成物層を保護フィルムを剥がしながら100℃のヒートロールを用い1m/分の速度でラミネートし、評価用積層体を得た。
【0056】
<光感度の評価>
上記評価用積層体上に、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを密着させ、高圧水銀灯ランプを有する露光機(株式会社オーク製作所製、商品名「EXM−1201」)を用いて露光を行った。
【0057】
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥離し、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレーし(スプレー(現像)時間:最少現像時間の2倍)、未露光部分を除去した後、銅張積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数(X/21)を測定し、ST=5/21(21段中5段目)を示す露光量(mJ/cm)を光感度の値とした。この数値が小さいほど、光感度が高いことを示す。
【0058】
<密着性の評価>
上記評価用積層体上にネガとしてライン幅が5〜30(単位:μm)の配線パターンを有するガラス製フォトツールを密着させ、現像後の残存ステップ段数がST=5/21となるエネルギー量によりパターン露光し、上記現像液により現像した後、光学顕微鏡を用いて観察し、密着性の評価を行った。密着性の値は、現像処理によって剥離せずに残ったライン幅(μm)のうち最も小さい値で表され、この数値が小さいほど、密着性が高いことを示す。
【0059】
<解像性の評価>
上記評価用積層体上にネガとしてライン幅/スペース幅が5/5〜30/30(単位:μm)の配線パターンを有するガラス製フォトツールを密着させ、現像後の残存ステップ段数がST=5/21となるエネルギー量によりパターン露光し、上記現像液により現像した後、光学顕微鏡を用いて観察し、解像性の評価を行った。解像性の値は、現像処理によって未露光部を完全に除去できたスペース幅(μm)のうち最も小さい値で表され、この数値が小さい程、解像性が高いことを示す。
【0060】
<めっき耐性の評価>
上記評価用積層体上にネガとして5/5〜30/30(単位:μm)の配線パターンを有するガラス製フォトツールを密着させ、現像後の残存ステップ段数がST=5/21となるエネルギー量によりパターン露光し、上記現像液により現像して評価用基板を得た。
上記評価用基板に酸脱脂、水洗、硫酸ディップを順に実施し、硫酸銅めっき液を用いて1A/dmの条件でめっき厚みが10μmになるまで銅めっき処理を行った。水洗、乾燥後、レジストを剥離し、上方から光学顕微鏡を用いて、めっきもぐり幅を測定した。めっき耐性の値は、めっきもぐり幅で評価され、数値が小さいほどめっき耐性が良好であることを示す。
【0061】
<剥離時間の評価>
上記評価用積層体を45cm×60cm四方の大きさに切断し、現像後の残存ステップ段数がST=5/21となるエネルギー量によりベタ露光した後、上記現像液により現像を行った。このようにして得られた試験片を、50℃の2質量%水酸化ナトリウム水溶液中に、撹拌子で撹拌しながら浸漬し、試験片のレジスト表面を目視により観察した。剥離時間の値はレジストの剥離が始まる時間(秒)を表し、ストップウォッチを用いて測定した。剥離時間は短いほど、剥離特性が良好であることを示す。
【0062】
<現像スカム性の評価>
【0063】
現像スカム性(現像スラッジ発生性)は、感光性樹脂組成物層を0.6m取り出し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に加え、攪拌機を用い30℃で90分間攪拌した。この液の外観を下記の指標にて評価した。
○:スカムなし
△:スカム微量発生
×:スカム発生大
以上の結果をまとめて表3に示した。
【0064】
【表3】

【0065】
表3から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例1〜3は、めっき耐性に優れながらも、現像スカムが少なく、充分な剥離特性、光感度、密着性及び解像性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマー、
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び
(C)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(B)成分が、一般式(I)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の(a)m+nが2〜6の化合物と、(b)m+nが8〜16の化合物をそれぞれ含有する感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を示す。なお、式中、複数存在するXはそれぞれ同一であっても異なってもよい)
【請求項2】
(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対し、(A)成分の配合量が40〜90質量部、(B)成分の配合量が10〜60質量部及び(C)成分の配合量が0.01〜5質量部であり、(B)成分の(a)の配合量が5〜20質量部、(b)の配合量が5〜40質量部である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又2記載の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布、乾燥し、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備える感光性エレメント。
【請求項4】
請求項3記載の感光性エレメントを、回路形成用基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化させ、未露光部を現像により除去することを特徴とするレジストパターンの製造法。
【請求項5】
請求項4記載のレジストパターンの製造法により、レジストパターンの製造された回路形成用基板をめっきすることを特徴とするプリント配線板の製造法。

【公開番号】特開2012−163603(P2012−163603A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21609(P2011−21609)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】