説明

感光性樹脂組成物および感光性ドライフィルムレジスト

【課題】高解像度、高密着性で、かつテント膜信頼性に優れた感光性樹脂組成物およびそれを用いてなる感光性ドライフィルムレジストの提供。
【解決手段】カルボキシル基含有ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、エチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物(B1)を含有してなる感光性樹脂組成物、及びそれを用いた感光性ドライフィルムレジスト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、リードフレーム、半導体パッケージ等のパターン形成に用いられる感光性樹脂組成物およびそれを用いてなる感光性ドライフィルムレジストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板やリードフレーム等の製造において、微細な回路パターンや形状パターンを形成する際には、感光性樹脂組成物を層形成してなる感光性ドライフィルムレジストが用いられている。
上記感光性ドライフィルムレジストとしては、通常、感光性樹脂組成物層の片面に光透過性の支持体フィルムが、また感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムが積層された多層構造のフィルムが用いられている。そして、上記感光性ドライフィルムレジストを用いた回路パターンの形成は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、基板上に銅箔を積層した回路基板用基材を準備し、保護フィルム(カバーフィルム)層を剥がしながら、上記基板面に感光性樹脂組成物層を貼着させる。その上にパターンマスクを載置し、露光工程、現像工程、エッチング工程を経由させることにより回路パターンを形成する。
【0003】
ところで、近年では、高密度配線パターン製造でのレジストに対する信頼性の要求が年々高まっており、且つ、微細化が益々進行している。
従来の感光性樹脂組成物では、高解像度を有するタイプは、耐薬品(現像液)性は良好なものの、機械強度に乏しく、テント膜が破れるなどの問題が生じる。テンティング性を有するタイプは、膜強度は優れるものの、耐薬品(現像液)性に乏しく、高解像度・高密着性が得られ難いのが実情である。
また、レジスト膜厚を薄くすることで、高解像度および高密着性が得られやすいことが分かっているが、膜厚が薄くなることで、スルーホールエッジ部分への埋まり込みからその部分の厚みがさらに薄くなりテント膜破れなどの欠損を生じる可能性が考えられる。
【0004】
これらの対応として、例えば、バインダー成分、モノマー成分及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、モノマー成分としてウレタン構造を有する2官能のエチレン性不飽和基化合物を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−290266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スルーホールの形状については円形だけでなく、楕円形や他の異形な形状のスルーホールも実際の回路基板上では存在することがあり、円形では均等なテント膜を有するが、異形スルーホールではテント膜に歪が生じ、弱い部分で欠損を生じる可能性もあることを考慮すると、更なるテント膜信頼性が要求されているところである。
【0006】
一方、テント膜信頼性を向上させるために、ポリオレフィンオキサイド骨格をもつエチレン性不飽和化合物を用いると逆に解像度や密着性が低下する傾向にあり、解像度、密着性、テント膜信頼性のいずれにも優れた感光性樹脂組成物は得られていない。
上記特許文献1の開示技術においても、必要十分なテント膜信頼性は得られているものの、解像度及び密着性の点においては、更なる改良が求められるものであった。
【0007】
そこで、本発明では、このような背景下において、高解像度、高密着性で、かつテント膜信頼性に優れた感光性樹脂組成物およびそれを用いてなる感光性ドライフィルムレジストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、エチレン性不飽和化合物として、特定のウレタン構造を有する3官能モノマーであって、ポリオレフィンオキサイド骨格の比較的長いエチレン性不飽和化合物を用いることにより、高解像度、高密着性で、かつテント膜信頼性に優れた感光性樹脂組成物及びそれを用いた感光性ドライフィルムレジストが得られることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、カルボキシル基含有ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、エチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物(B1)を含有してなる感光性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
【化1】


(式中、Aは、水素又は置換あるいは非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示す。X、Yは、それぞれ2価のアルキレンオキサイド基を示し、互いに同一であっても異なっていても良い。Zは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を示す。kは、0又は1の整数を示す。l1、l2、l3は、0以上の整数で、l1+l2+l3は、19〜90の整数を示す。m1、m2、m3は、0以上の整数で、m1+m2+m3は、3〜25の整数を示す。n1、n2、n3は、0以上の整数で、n1+n2+n3は3〜30の整数を示す。R1は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。R2は水素又はメチル基を示す。)
【0011】
また、本発明は、上記感光性樹脂組成物が、支持体フィルムに積層されてなる感光性ドライフィルムレジスト、更には、保護フィルムを感光性樹脂組成物側に積層してなる感光性ドライフィルムレジストに関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性ドライフィルムレジストは、カルボキシル基含有ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、エチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物(B1)を含有してなる感光性樹脂組成物を用いてなるため、高解像度、高密着性で、かつテント膜信頼性に優れた効果を発揮し、プリント配線板、リードフレーム、半導体パッケージ等のパターン形成に有効に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、エチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも、前記一般式(1)で示される化合物(B1)を含有してなることが最大の特徴である。
【0014】
上記カルボキシル基含有ポリマー(A)は、特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸を必須成分とし、これに(メタ)アクリル酸エステルとその他の共重合可能なモノマーを共重合させてなるアクリル系重合体を用いることが好ましい。中でも芳香族ビニル系単量体を共重合成分として含むことが耐現像液性に優れる点で好ましい。
【0015】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもできる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0017】
上記芳香族ビニル系単量体としては、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、中でも特にスチレンが耐現像液性に優れる点で好ましい。
【0018】
更に、芳香族ビニル系単量体以外のその他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
【0019】
エチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の共重合可能なモノマーの含有割合としては、エチレン性不飽和カルボン酸5〜50重量%、(メタ)アクリル酸エステル1〜90重量%、その他の共重合可能なモノマー0〜70重量%であることが好ましく、特にはエチレン性不飽和カルボン酸10〜40重量%、(メタ)アクリル酸エステル5〜80重量%、その他の共重合可能なモノマー0〜50重量%であることが好ましく、更にはエチレン性不飽和カルボン酸20〜30重量%、(メタ)アクリル酸エステル10〜60重量%、その他の共重合可能なモノマー2〜20重量%が好ましい。
【0020】
また、芳香族ビニル系単量体を含有する場合においては、エチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル系単量体、その他の共重合可能なモノマーの含有割合としては、エチレン性不飽和カルボン酸5〜50重量%、(メタ)アクリル酸エステル1〜90重量%、芳香族ビニル系単量体1〜80重量%、その他の共重合可能なモノマー0〜70重量%、更にはエチレン性不飽和カルボン酸5〜50重量%、(メタ)アクリル酸エステル5〜80重量%、芳香族ビニル系単量体1〜50重量%、その他の共重合可能なモノマー0〜50重量%が好ましい。
【0021】
かくしてカルボキシル基含有ポリマー(A)が得られるが、かかるガラス転移温度としては20〜200℃であることが好ましく、特には30〜150℃、更には40〜110℃であることが好ましい。かかるガラス転移温度が下限値未満では感光性ドライフィルムレジストをロール状態で保存する場合に、ロールの端面から感光性樹脂がしみ出す現象(コールドフロー)が起こる傾向があり、上限値を超えるとレジストの凹凸追従性が低下する傾向がある。
【0022】
また、カルボキシル基含有ポリマー(A)の重量平均分子量としては10,000〜500,000であることが好ましく、特には10,000〜200,000、更には30,000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量が下限値未満では、ラミネート性の低下やラミネート時のカット屑が発生するなどフィルム付与性が低下する傾向があり、逆に上限値を超えると解像度が低下する傾向がある。
【0023】
更に、カルボキシル基含有ポリマー(A)の酸価としては10〜300mgKOH/gであることが好ましく、特には50〜200mgKOH/g、更には80〜150mgKOH/gであることが好ましい。かかる酸価が下限値未満では解像度が低下する傾向があり、酸価が300mgKOH/gを超えると硬化レジストの耐現像液性が低下し、細線密着性の低下を招く傾向がある。
【0024】
上記カルボキシル基含有ポリマー(A)とともに用いられるエチレン性不飽和化合物(B)は、少なくとも上記の一般式(1)で表される化合物(B1)を含有するものであれば特に限定するものではない。
【0025】
本発明で用いる一般式(1)の特徴は、(メタ)アクリロイル基を3個有する3官能モノマーであり、更に、X、Yは、2価のアルキレンオキサイド基であり、特にXの繰り返し単位が比較的長いものを用いるのが特徴である。
【0026】
中でも上記一般式(1)において、Aは水素が好ましく、R1で表される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、−(CH25−が好ましく、R2はメチル基が好ましく、X、Yは−CH2CH(CH3)O−、−CH(CH3)CH2O−又は−CH2CH2O−が好ましく、更には、Xは−CH2CH(CH3)O−が好ましく、Yは−CH2CH2O−が好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、Zで表される炭素数2〜20の2価の炭化水素基としては、例えば、−(CH26 −の他、下記に示すものがあげられる。なかでも、−(CH26 −が好ましい。
【0028】
【化2】

【0029】
上記一般式(1)において、kは0が好ましく、l1+l2+l3は20〜60の整数が好ましく、m1+m2+m3は3〜25の整数が好ましく、n1+n2+n3は3〜25の整数が好ましい。
【0030】
そして上記一般式(1)で表される化合物(B1)のなかでも最も好ましいものとしては、A=水素、R1=−(CH25−R2=−CH3 、X=−CH2 CH(CH3 )O−、Y=−CH2 CH2 O−、Z=−(CH26 −、k=0、l1+l2+l3=24〜50の整数、m1+m2+m3=10〜15の整数、n1+n2+n3=15〜20の整数で表される化合物が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)で表される化合物(B1)以外のエチレン性不飽和化合物(B)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチルジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーがあげられる。
【0032】
また、上記多官能モノマーとともに単官能モノマーを適当量併用することもでき、このような単官能モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等があげられる。
【0033】
上記一般式(1)で表される化合物(B1)の含有量は、エチレン性不飽和化合物(B)全体に対して3〜70重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。上記化合物(B1)の含有量が下限値未満であると、スルーホールへのテント膜信頼性が低下する傾向となり、逆に上限値を超えると、解像力や細線密着性が低下する傾向となる。
【0034】
そして、上記カルボキシル基含有ポリマー(A)とエチレン性不飽和化合物(B)の混合比(重量比)は、カルボキシル基含有ポリマー(A)/エチレン性不飽和化合物(B)=10/90〜90/10の範囲が好ましく、特に好ましくは20/80〜80/20、更に好ましくは30/70〜70/30である。すなわち、該混合重量比が下限値未満であるとフィルム形成性が困難となる傾向にあり、逆に上限値を超えると、解像力や細線密着性の低下の傾向にある。
【0035】
そして上記カルボキシル基含有ポリマー(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)とともに用いられる光重合開始剤(C)としては、例えば、ロフィン二量体、ケトン類、キサントン類、トリアジン類、アクリジン誘導体、Nアリールアミノ酸類等があげられる。なかでも、深部硬化性の点で、ロフィン二量体およびケトン類を併用することが好ましい。
また、露光波長に吸収を持つ増感色素を併用しても良い。
【0036】
上記ロフィン二量体は、ロフィン(2,4,5−トリフェニルイミダゾール)の二量体であれば特に限定はなく、例えば、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−フルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,4,2′,4′−ビス〔ビ(p−メトキシフェニル)〕−5,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メチルチオフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)−1,1′−ビイミダゾール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾールが好ましい。
【0037】
上記ロフィン二量体の含有量は、上記カルボキシル基含有ポリマー(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計量100重量部に対して、1〜10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜6重量部である。すなわち、下限値未満であると、感度が低くなる傾向にあり、逆に上限値を超えると、現像槽に析出し汚染が生じる傾向にある。
【0038】
上記ケトン類としては、例えば、p−アミノフェニルケトン類があげられ、具体的には、N,N′−テトラアルキル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ベンジルジメチルケタール、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等があげられる。なかでも、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0039】
上記ケトン類の含有量は、上記バインダー成分(A)とモノマー成分(B)の合計量100重量部に対して、0.02〜0.5重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.3重量部である。すなわち、下限値未満であると、感度、解像度が低下し、逆に上限値を超えると、密着性が低下する傾向にある。
【0040】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、上記カルボキシル基含有ポリマー(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)および光重合開始剤(C)に加えて、更に染料(色素、変色剤)、熱重合禁止剤、可塑剤、密着付与剤、酸化防止剤、溶剤、表面張力改質剤、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤等を配合しても差し支えない。上記色素としては、例えば、ロイコクリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等があげられる。
【0041】
かくして得られる感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成するが、普通、積層構造の感光性のドライフィルムレジストとして用いられる。該ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物が支持体フィルムに積層されてなるものであり、好ましくは、更に感光性樹脂組成物層側に保護フィルムが積層されてなるものである。
【0042】
上記支持体フィルムとしては特に限定はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム(OPP)等があげられ、好ましくはPETフィルムである。
【0043】
上記保護フィルムは、感光性ドライフィルムレジストをロール状にして用いる場合に、粘着性を有する感光性樹脂組成物層の支持体フィルムへの転着等を防止する目的で使用されるものであり、例えば、ポリエチレン(PE)フィルム、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム(OPP、CPP)、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)フィルム、ナイロンフィルム等があげられ、好ましくはPEフィルムである。
【0044】
本発明の感光性ドライフィルムレジストは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記支持体フィルムの片面に、本発明の感光性樹脂組成物を均一に塗布し、適正温度域に設定されたオーブンにて、乾燥して感光性樹脂組成物層を形成する。ついで、上記感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムを加圧積層することにより、感光性樹脂組成物層の片面に支持体フィルムが、また感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムがそれぞれ積層されてなる3層構造の感光性ドライフィルムレジストを作製することができる。
【0045】
本発明の感光性ドライフィルムレジストにおいて、感光性樹脂組成物層の厚みは、50μm以下が好ましく、特に好ましくは10〜40μmである。感光性樹脂組成物層の厚みが上限値を超えると、充分な解像度を得ることが困難となる傾向にある。また、上記支持体フィルムの厚みは、通常、5〜25μmであり、好ましくは12〜20μmである。支持体フィルムの厚みが下限値未満では、フィルムが柔軟すぎて取り扱いに不便であり、逆に25μmを超えると、解像度が低下したり、コストアップとなる傾向にある。上記保護フィルムの厚みは、通常、10〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0046】
本発明の感光性ドライフィルムレジストは、例えば、プリント配線板,リードフレーム等の製造や、金属の精密加工等に用いられる。本発明の感光性ドライフィルムレジストを用いたプリント配線板の製法について、以下に説明する。
【0047】
〔露光〕
感光性ドライフィルムレジストによって画像を形成させるには、感光性樹脂組成物層の表面から保護フィルムを剥離した後、その感光性樹脂組成物層の表面を、銅張基板や42アロイ、SUS等の金属面に貼り付ける。ついで、上記感光性樹脂組成物層の反対側面の支持体フィルム上にパターンマスクを密着させて露光、あるいは、直接描画露光する。上記露光は、通常、紫外線照射により行い、その際の光源としては、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ等が用いられ、直接描画露光の光源としては、アルゴンレーザー、YAGレーザーの第3高調波、YVO4レーザーの第3高調波、半導体レーザー、青紫色半導体レーザー等が用いられる。なお、必要に応じて、紫外線照射後に加熱を行い、硬化の完全を図ることも可能である。
【0048】
〔現像〕
露光後は、上記感光性樹脂組成物層上の支持体フィルムを剥離除去してから現像を行う。上記感光性樹脂組成物が稀アルカリ現像型である場合、露光後の現像は、炭酸ソーダ、炭酸カリウム等の0.3〜2重量%程度のアルカリ水溶液を用いて行う。なお、上記アルカリ水溶液中には、界面活性剤,消泡剤や、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0049】
〔エッチング、めっき〕
エッチングは、通常、塩化第二銅−塩酸水溶液や、塩化第二鉄−塩酸水溶液等の酸性エッチング液を用いて、常法に従って行う。希にアンモニア系のアルカリエッチング液も用いられる。めっき法は、脱脂剤、ソフトエッチング剤等のめっき前処理剤を用いて前処理を行った後、めっき液を用いてめっきを行う。
【0050】
〔硬化レジストの剥離除去〕
エッチングまたはめっき工程後、残っている硬化レジストの剥離を行う。硬化レジストの剥離除去は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の0.5〜5重量%程度の濃度のアルカリ水溶液あるいはエタノールアミン類等を含有する水溶液からなるアルカリ剥離液を用いて行う。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0052】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
〔カルボキシル基含有ポリマー(A−1)〕
メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=55/18/22/5(重量比)の割合で重合させて得られた共重合体(重量平均分子量=70,000、分散度2.5、ガラス転移温度72℃、酸価143.4mgKOH/g)の40%(メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=9/1)溶液
【0053】
〔カルボキシル基含有ポリマー(A−2)〕
メタクリル酸メチル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/スチレン=35/25/10/30 (重量比)の割合で重合させて得られた共重合体(重量平均分子量=60,000、分散度2.2、ガラス転移温度116℃、酸価163mgKOH/g)の40%(メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=9/1)溶液
【0054】
〔エチレン性不飽和化合物(B)〕
(B1−i)
前記一般式(1)において、下記で表される化合物
A:水素、X:−CH2CH(CH3 )O−、Y:−CH2CH2O−、Z:−(CH2)6−、k:0、
l1+l2+l3=24、m1+m2+m3=12、n1+n2+n3=18、R1:−(CH25−、R2:−CH3
【0055】
(B1−ii)
前記一般式(1)において、下記で表される化合物
A:水素、X:−CH2CH(CH3 )O−、Y:−CH2CH2O−、Z:−(CH2)6−、k:0、
l1+l2+l3=50、m1+m2+m3=12、n1+n2+n3=18、R1:−(CH25−、R2:−CH3
【0056】
(B−i)
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製、「THE−330」)
【0057】
(B−ii)
2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン(新中村化学社製、「BPE−500」)
【0058】
(B−iii)
2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸(共栄社化学社製、「HOA−MPE」)
【0059】
(B−iv)
下記一般式(2)において、R=−CH3 、X=−CH2CH2 O−、Y=−CH2CH(CH3)O−、Z=−(CH26 −、k=15、m=6、n=4で表される化合物
【0060】
【化2】

【0061】
〔光重合開始剤(C)〕
(C−i);2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール
(C−ii);4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0062】
〔その他添加剤〕
LCV;ロイコクリスタルバイオレット
MG;マラカイトグリーン
【0063】
〔希釈溶剤〕
MEK;メチルエチルケトン
【0064】
(実施例1,2及び比較例1〜3)
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で溶剤(メチルエチルケトン)に溶解して、感光性樹脂組成物溶液を調製した。ついで、この感光性樹脂組成物を、ギャップ6ミルのアプリケーターを用いて厚み16μmのPETフィルム(支持体フィルム)上に均一に塗布し、室温で90秒間、続いて60℃のオーブンで3分間、さらに90℃のオーブンで2分間乾燥して、厚み35μmの感光性樹脂組成物層を形成した。さらに、この感光性樹脂組成物層の他面に、厚み25μmのPEフィルム(保護フィルム)を積層し、これを1日放置して、感光性ドライフィルムレジストを得た。
【0065】
一方、厚み35μmの銅箔を貼り合わせてなるガラスエポキシ銅張基板(厚み1.6mm、大きさ250mm×200mm)を準備し、銅箔表面をスコッチブライトSF(住友スリーM社製)を用いてバフロール研磨し、水洗した後、空気流で乾燥させ整面し、これをオーブンで60℃に予熱した。そして、この銅箔表面に、上記感光性ドライフィルムレジストのPEフィルム(保護フィルム)を剥離しながら、PETフィルム(支持体フィルム)と感光性樹脂組成物層からなるフィルムの感光性樹脂組成物層面を銅箔表面に接するようにハンド式ロールラミネーターを用いてラミネートした(ラミネート条件:ホットロール温度100℃、ロール圧約0.3MPa、ラミネート速度1.5m/min)。

【0066】
【表1】

【0067】
このようにして得られた実施例品および比較例品を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、下記の表2に示した。
【0068】
〔解像性〕
上記銅張基板上にラミネートした感光性樹脂組成物層の表面に、ライン/スペース=1/1(10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm)の各々のパターンマスク(ガラスクロム乾板製)を真空密着させた。ついで、2kW超高圧水銀ショートアーク灯(平行光)でストーファー21段ステップタブレットの7段相当量の露光量で露光し、最小現像時間の2倍相当で現像後にレジスト画像が解像される最小ライン幅を調べた。
【0069】
〔密着性〕
上記銅張基板上にラミネートした感光性樹脂組成物層の表面に、ライン幅(10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm)の独立細線の各々のパターンマスク(ガラスクロム乾板製)を密着させ、上記と同様にして現像を行い、密着性良好な独立細線部の最小ライン幅を調べた。
【0070】
〔テント膜信頼性〕
(1)テント膜強度
直径4.5mmのスルーホールを有する厚み1.6mmの基材を準備し、その表面に、上記感光性ドライフィルムレジストのPEフィルム(保護フィルム)を剥離しながら、PETフィルム(支持体フィルム)と感光性樹脂組成物層からなるフィルムを貼り付けた。そして、上記と同様の条件で露光ならびに現像を行った後、直径2mmのテンションゲージを用いてテント膜強度を測定した。
【0071】
(2)テント膜破れ率(円形)
直径5mmのスルーホールを100穴有する厚み1.6mmの基材を準備し、上記と同様の条件にてフィルムを貼り付け、上記と同様の条件で露光を行った。そして、PETフィルム(支持体フィルム)を剥離し、最小現像時間の4倍相当で現像を5回繰り返した際のスルーホールの破れ率を調べた。
なお、評価は、破れ率が0%の場合を◎、0.1%以上〜10%未満を○、10%以上〜30%以下を△、30%を超える場合は×とした。
【0072】
(3)テント膜破れ率(楕円形)
幅5mm,長さ12mmの楕円形スルーホールを100穴有する厚み1.6mmの基材を準備し、上記と同様の条件にてフィルムを貼り付け、ならびに、露光と現像を行い、上記と同様に現像を5回繰り返した際のスルーホールの破れ率を調べた。
なお、評価は、破れ率が0%の場合を◎、0.1%以上〜10%未満を○、10%以上〜30%以下を△、30%を超える場合は×とした。
【0073】
【表2】

【0074】
上記表2の結果から、実施例では、高解像度で、密着性に優れるうえ、テント膜信頼性にも優れる。これに対して、比較例1は、エチレン性不飽和化合物(B)として、上記一般式(1)で表される化合物(B1)とは異なる化合物を用いているため、密着性が不十分であり、比較例2では上記一般式(1)で表される化合物(B1)を用いていないため、テント膜強度が低く、異形のスルーホールにおけるテント膜信頼性に劣ることがわかる。なお、比較例1においては、密着性の点で実施例と5μm程度の差異であるが、感光性樹脂組成物層35μmにおける密着性5μmの差異は数値以上に大きな差異であって、プリント回路配線基板製造の歩留まり向上に大きく寄与するものであり、更に、比較例1に対して実施例では15μmや20μmといった非常に線幅の細い高密度化、高精細化が可能となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物はカルボキシル基含有ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、エチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも、前記一般式(1)で示される化合物(B1)を含有してなるため、解像度、密着性、テント膜信頼性に優れた効果を有するものであり、特にプリント配線板、リードフレーム、半導体パッケージ、ディスプレイ等のパターン形成用の感光性樹脂組成物として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、エチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物(B1)を含有してなることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】


(式中、Aは、水素又は置換あるいは非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示す。X、Yは、それぞれ2価のアルキレンオキサイド基を示し、互いに同一であっても異なっていても良い。Zは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を示す。kは、0又は1の整数を示す。l1、l2、l3は、0以上の整数で、l1+l2+l3は、19〜90の整数を示す。m1、m2、m3は、0以上の整数で、m1+m2+m3は、3〜25の整数を示す。n1、n2、n3は、0以上の整数で、n1+n2+n3は3〜30の整数を示す。R1は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。R2は水素又はメチル基を示す。)
【請求項2】
請求項1記載の感光性樹脂組成物が、支持体フィルムに積層されてなることを特徴とする感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項3】
更に、保護フィルムを感光性樹脂組成物側に積層してなることを特徴とする請求項2記載の感光性ドライフィルムレジスト。



【公開番号】特開2007−114234(P2007−114234A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302418(P2005−302418)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(597175673)ニチゴー・モートン株式会社 (22)
【Fターム(参考)】