説明

感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、およびパターン、カラーフィルタ、並びに画像表示装置

【課題】仮支持体上に熱可塑性樹脂層と、感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂組成物を用いたパターンを形成する方法において、先行パターン等による凹凸が基板に存在しても、パターン欠陥、現像残渣、および異物の付着がない感光性樹脂組成物を用いたパターンを、現像工程が簡易であり、且つ短い現像時間で得られる、生産効率の高いパターン形成方法を提供する。
【解決手段】感光性樹脂転写材料を、基板上にラミネートする工程、画像様の露光と仮支持体の剥離とをこの順又はこの逆順で行う工程、および、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去(前記感光性樹脂組成物がネガ型である場合)または露光部分の除去(前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合)とを1種類の処理液で行う工程を、この順で有する感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、およびパターン、カラーフィルタ、並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のカラーフィルタや、プリント配線基板のパターニングレジストとして感光性樹脂組成物が一般的に使用されている。これらのカラーフィルタや、プリント配線基板は、(1)感光性樹脂組成物層を基板上に塗布する方法、あるいは感光性樹脂組成物層を有する転写材料を用いて基板上に転写する方法等によって、基板上に感光性樹脂組成物層を形成したのち、(2)形成されるパターンに対応したフォトマスクを介して、あるいは走査機能を有するレーザー光により直接、画像様の露光を行い、露光部分の感光性樹脂組成物層に潜像を形成し、(3)露光部分以外(ネガ型の感光性樹脂組成物の場合)、あるいは露光部分(ポジ型の感光性樹脂組成物の場合)を処理液を用いて現像することにより、除去してパターンを形成したのち、必要に応じて全面露光やベーク処理を行って、得ることができる。このような方法で作成される感光性樹脂組成物のパターンは、液晶表示装置に使用されるカラーフィルタのブラックマトリクス、着色画素、平坦化層、液晶配向制御用突起、及びスペーサなどにも使用される。
【0003】
また近年、銀行のATM、切符発券機、携帯端末などにみられるようにタッチパネルを搭載した液晶表示装置の需要が拡大している。タッチパネルの方式としては、超音波方式、抵抗膜方式、静電容量方式などが知られているが、耐久性の観点から静電容量方式のタッチパネルの需要がさらに拡大すると見込まれている。静電容量方式タッチパネル素子は、透明電極パターン間に絶縁層を挟持してコンデンサを形成し、さらにオーバーコート層等でカバーして作製する。その作製工程では、溶剤、酸、またはアルカリ溶液などによる表示素子の浸漬処理が行なわれ、また、配線電極層形成用のスパッタリングをする際には、表面が局部的に高温に曝される。このような処理によって素子が劣化あるいは損傷することを防止するために、これらの処理に対して耐性を有する透明な絶縁層及びそれに積層させるオーバーコート層が必要とされる。上記オーバーコート層や、透明電極パターン間に設置する絶縁層も感光性樹脂組成物のパターンで形成されるものとして挙げることができる。
【0004】
このような感光性樹脂組成物のパターンを作製するためには、パターンが形成される基板の少なくとも一つの面に、感光性樹脂組成物層を設けることが必要である。基板上に感光性樹脂組成物層を設ける方法としては、感光性樹脂組成物を、スリット状ノズル等を用いて基板上に直接塗る方法が知られている。また、予め仮支持体上に感光性樹脂組成物層を設けた転写材料を、感光性樹脂組成物層を基板に対向させて、ラミネートロールを用いて基板に転写して基板上に感光性樹脂組成物層を形成する方法も提案されている。転写による方法は、溶剤を使用しないため作業現場の溶剤臭が無く、好適な作業環境を維持できる、ロール状の基板に感光性樹脂組成物のパターンを連続して形成することが容易である、等の特徴を有する。
【0005】
仮支持体上に感光性樹脂組成物層を設けた転写材料を、感光性樹脂組成物層を基板に対向させて、ラミネートロールを用いて基板に転写して基板上に感光性樹脂組成物層を形成する方法については、特許文献1および2等に液晶表示装置のカラーフィルタの作製方法として記載されている。また特許文献3および4等には、プリント配線版用のレジストパターン作製方法としてこの方法が記載されている。
【0006】
感光性パターンを形成する基板は、必ずしも平坦とは限らず、前工程で予め作製した段差を有する基板に、感光性樹脂組成物層を転写する必要が生じることがある。液晶表示装置の場合は、最初に遮光材料であるブラックマトリクスを形成したのち、RGBに対応する着色画素をブラックマトリクスの開口部分に形成する方法が一般的に使用される。この場合、ブラックマトリクスは平坦な基板上に形成されるが、RGB等の感光性樹脂組成物層は、予めパターンを有する、すなわち凹凸のある基板に転写されることになる。同様に、RGBの着色画素形成後にカラーフィルタ上に設置されるフォトスペーサ用の感光性樹脂組成物層等も、凹凸のある基板に転写されることになる。
【0007】
静電容量方式のタッチパネルの場合は、基板自体を絶縁層とし基板の両面に互いに直行する一対の電極パターンを形成する方法と、基板の片面側に交差する一対の電極パターンを積層する方法がある。後者の方法では、交差する電極間に設置した絶縁層パターンが通常1μm〜3μmの厚みを有するため、上部電極形成のためのレジストパターンや、最上層のオーバーコート層となる感光性樹脂組成物層は、凹凸のある基板上に転写されることになる。
【0008】
プリント配線板に関しても、近年は小型化を目的とした多層構造のものが提案されている。複数の導電層を絶縁するための中間層を設ける場合、上部に位置する導電層を形成するためのレジストパターン用感光性樹脂組成物層は、凹凸のある基板上に転写されることになる。
【0009】
しかしながら、上記のような凹凸のある基板に感光性樹脂組成物層を転写しようとした場合、感光性樹脂組成物層が基板の凹凸を完全に埋めきれず、基板上に予め存在しているパターン(先行パターンと呼ぶ)の周辺に、ラミネート時に気泡が発生するという問題があった。
【0010】
転写した感光性樹脂組成物層の一部に気泡が存在すると、その部分の基板に対する密着性が確保できず、ラミネート後の露光工程において気泡周辺を露光し、硬化させても、現像時に気泡周辺のパターンが脱落し、パターンに欠陥を生じる。液晶表示装置のカラーフィルタの場合は、パターンの脱落部分は光が透過してしまい、画像を正しく表示させることができない。また、プリント配線基板用レジスト等の非永久膜の場合でも、欠陥部分ではエッチングで除去すべき金属膜の保護がなされないため、本来はエッチングで残すべき金属膜が除去されてしまい、回路の断線を引き起こす等の問題を生じる。
【0011】
このような、ラミネート時の気泡発生を抑制する手段としては、ラミネート時の圧力やロール温度を高くしたり、ラミネート速度を低くすることで、感光性樹脂組成物層の先行パターンへの追随性を高める試みがなされている。しかし、ラミネート時の熱の影響で、感光性樹脂組成物層の硬化(熱による部分的な重合)が発生し、基板上に残渣が発生する弊害をもたらしたり、ラミネートのスループットが低下し生産性を下げるという問題がある。
【0012】
これに対し、特許文献1等には、熱可塑性樹脂層を、感光性樹脂組成物層と仮支持体との中間に設置し、ラミネート時の先行パターンの影響を吸収する提案がなされている。このような熱可塑性樹脂層としては、軟化点80℃以下のものが好ましいとされている。
通常、感光性樹脂組成物層は、アルカリ性現像液を用いて現像することによって、未露光部分(ネガ型の感光性樹脂組成物の場合)、または露光部分(ポジ型の感光性樹脂組成物の場合)の除去を行うため、感光性樹脂組成物層のパターンを形成する感光性樹脂組成物層と仮支持体との間に設置した熱可塑性樹脂層を感光性樹脂組成物層の現像に先立って現像で除去する必要がある。
【0013】
特許文献1および2では、熱可塑性樹脂層の現像による除去と、感光性樹脂組成物層の現像による除去とを別々にして、熱可塑性樹脂層の現像と、感光性樹脂組成物層の現像とを異なる処理液で行うことが開示されている。そのため、現像処理装置が大きくなり、生産コストを引き上げるという製造上の問題があった。また、複数の処理液(現像液)を使用するので、通常希釈して用いられる処理液の調製装置が複数必要になるなど、処理液の管理が煩雑となるという問題も併せ持っている。
【0014】
また現像に使用する処理液としては、例えばアルカリ成分が炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドであり、ノニオン系界面活性剤を含む処理液(特許文献5参照)、有機アルカリと無機アルカリとの混合物にノニオン系界面活性剤を含む処理液(特許文献6参照)、アルカリ成分とビニルピロリドン系化合物とを含む処理液(特許文献7参照)、アルカリ性物質にアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の混合物を含む処理液(特許文献8参照)、およびアルカノールアミンを用いる処理液(特許文献9参照)などが知られている。
しかしながら、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を基板上に転写して、露光したのち、これらの処理液を用いて熱可塑性樹脂層の除去と感光性樹脂組成物層の潜像の現像処理とを行ってパターン形成しても、先行パターン等による凹凸を有する基板上に、パターン欠陥、現像残渣、および異物の付着がない感光性樹脂組成物層のパターンを短い現像時間で設けることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許3800513号明細書
【特許文献2】特開2007−304403号公報
【特許文献3】特開2008−102326号公報
【特許文献4】特開2009−91458号公報
【特許文献5】特開平9−171261号公報
【特許文献6】特開平7−120935号公報
【特許文献7】特許2748057号明細書
【特許文献8】特開平5−188602号公報
【特許文献9】特開平2007−304403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、以上のような背景に基づいてなされたものである。本発明の課題は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層と、感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂組成物を用いたパターンを形成する方法であって、先行パターン等による凹凸が基板に存在しても、パターン欠陥、現像残渣、および異物の付着がない感光性樹脂組成物を用いたパターンを、簡易な現像工程により、短い現像時間で得られる、生産効率の高いパターン形成方法を提供することにある。
さらに、本発明の課題は、前記パターン形成方法により形成された感光性樹脂組成物のパターン、該パターンを備えたカラーフィルタ、および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、以下の手段によって達成される。
<1> 感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法であって、
仮支持体上に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層と、少なくとも1層の感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を、基板上にラミネートする工程、
画像様の露光と仮支持体の剥離とをこの順又はこの逆順で行う工程、および
前記感光性樹脂組成物がネガ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去とを1種類の処理液で行う工程、または前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去とを1種類の処理液で行う工程
を、この順で有する方法。
【0018】
<2> 前記処理液が、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤を含有する<1>に記載の方法。
【0019】
<3> 前記処理液に含まれる、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤の、現像に使用する際の処理液における各含有量が、処理液の全量に対し、下記の範囲である<2>に記載の方法。
有機アルカリ成分 0.5〜15質量%
無機アルカリ成分 0.2〜10質量%
アニオン系界面活性剤 0.1〜10質量%
ノニオン系界面活性剤 0.01〜2質量%
【0020】
<4> 前記処理液に含まれる、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤の、現像に使用する際の処理液における各含有量が、処理液の全量に対し、下記の範囲である<2>または<3>のいずれか1項に記載の方法。
有機アルカリ成分 1〜10質量%
無機アルカリ成分 0.5〜5質量%
アニオン系界面活性剤 0.2〜5質量%
ノニオン系界面活性剤 0.02〜1質量%
【0021】
<5> 前記処理液に含まれる有機アルカリ成分が、アルカノールアミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、およびアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種である<2>〜<4>のいずれか1項に記載の方法。
【0022】
<6> 前記処理液に含まれる無機アルカリ成分が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種である<2>〜<5>のいずれか1項に記載の方法。
【0023】
<7> 前記基板が、可撓性支持体である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の方法。
<8> 前記可撓性支持体が、連続して搬送されるウエブ状である<7>に記載の方法。
【0024】
<9> 前記処理液が、さらに、重合性化合物、およびカルボキシ基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する<2>〜<8>のいずれか1項に記載の方法。
<10> 前記重合性化合物、およびカルボキシ基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種の化合物の、現像に使用する際の処理液における各含有量が、処理液の全量に対し、0.01質量%〜20質量%である、<9>に記載の方法。
<11> 前記感光性樹脂組成物が、(A)側鎖に酸性基を有する樹脂、(B)重合性化合物、および(C)光重合開始剤を含む、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の方法。
<12> 前記(A)側鎖に酸性基を有する樹脂が、さらに分岐および/または脂環構造を有する基を有する側鎖とエチレン性不飽和基を有する基とを含む、<11>に記載の方法。
<13> <1>〜<12>のいずれか1項に記載の方法により形成されたパターン。
【0025】
<14> <13>に記載のパターンを備えるカラーフィルタ。
<15> <14>に記載のカラーフィルタを具備する画像表示装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、仮支持体上に熱可塑性樹脂層と、感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂組成物層を用いたパターンを形成する方法であって、先行パターン等による凹凸が基板に存在しても、パターン欠陥、現像残渣、および異物の付着がない感光性樹脂組成物を用いたパターンを、簡易な現像工程により、短い現像時間で得られる、生産効率の高いパターン形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記パターン形成方法により形成された感光性樹脂組成物のパターン、該パターンを備えたカラーフィルタ、および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のパターン形成方法は、感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法であって、仮支持体上に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層と、少なくとも1層の感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を、基板上にラミネートする工程、画像様の露光と仮支持体の剥離とをこの順又はこの逆順で行う工程、および前記感光性樹脂組成物がネガ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去とを1種類の処理液で行う工程、または前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去とを1種類の処理液で行う工程を、この順で有する方法である。
本発明においては、通常、少なくとも2種類又は3種類の異なる処理液を用いて複数回に分けて行う現像を、1種類の処理液で行うことができる。
【0028】
まず、感光性樹脂組成物がネガ型である場合は、熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去、または感光性樹脂組成物がポジ型である場合は、熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去と、を行う際に用いられる処理液について、説明する。
本発明で使用可能な処理液は、熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層の未露光部分(ネガ型の感光性樹脂組成物の場合)の除去、または熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層の露光部分(ポジ型の感光性樹脂組成物の場合)の除去を、1種類の処理液で行うことができ、熱可塑性樹脂層の除去と感光性樹脂組成物層の未露光部分の除去、または熱可塑性樹脂層の除去と感光性樹脂組成物層の露光部分の除去が可能な処理液であれば、処理液の種類、処理液に含まれる成分はどのようなものでもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂層および感光性樹脂組成物層には後述のように酸成分を有しているものが使用され得るので、処理液としては、有機アルカリ成分として有機アルカリ性化合物を含むもの、無機アルカリ成分として無機アルカリ性化合物を含むもの、およびこれらの混合物を含むものが好ましく使用できる。
さらに、本発明に用いる処理液は、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。
【0030】
本発明における処理液に含まれる有機アルカリ性化合物としては、例えばアルカノールアミン(更に好ましくは、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン);テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、またはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、およびモノアルキルアミンなどが挙げられる。これらの中でも好ましいものとしては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0031】
また、無機アルカリ性化合物としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0032】
本発明における処理液に含まれるアニオン系界面活性剤は、特に限定されずどのようなアニオン系界面活性剤であってもよい。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホこはく酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホこはく酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脚油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪族モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、およびナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等を挙げることができる。これらのアニオン系界面活性剤は一種単独でも使用でき、またこれら二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0033】
これらの中でも、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類等が特に好ましい。
【0034】
硫酸エステル塩系界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩(例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ステアリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、オクチルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、第二ナトリウムアルキルサルフェートなど)、およびグリセリンモノエステル硫酸塩(例えば、CH(OCOR)CH(OH)CH(OSONa)[但し、Rはアルキル基である]など)を挙げることができる。
【0035】
また、スルホン酸塩系界面活性剤としては、アリールスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ジナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩など)、アルキルアミドスルホン酸塩(例えば、C1735CON(CH)−CHCHSONaなど)、二塩基脂肪族エステルのスルホン酸塩(例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステルなど)、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物(例えば、ジブチルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物など)、およびベンゾイミダゾールスルホン酸アルカリ金属塩を骨格とする化合物などを挙げることができる。
【0036】
また、燐酸エステル塩系界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコール燐酸エステル塩(例えば、セチルアルコール燐酸エステルのナトリウム塩など)を挙げることができる。
【0037】
スルホン酸アルカリ金属塩系界面活性剤の具体例として、例えば、下記の化合物を挙げることができる。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
本発明において使用される処理液に含まれてもよいノニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、どのようなノニオン系界面活性剤であってもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、およびトリアルキルアミンオキシド類等を挙げることができる。
その中でも、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類等が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類でアルキル部位に水酸基を有するものが、特に好ましい。
これらのノニオン系界面活性剤は一種単独でも使用でき、またこれら二種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、トリエタノールアミンと炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、アルキルナフタレンスルホン酸塩類とポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとの組み合わせ、トリエタノールアミンと炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩とポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとの組み合わせなどが挙げられる。
【0042】
本発明に用いる処理液としては、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤が含まれていることが好ましい。これらの各成分は一種単独で含まれていてもよいし、二種以上含まれていてもよい。
現像に使用する際の処理液における各成分の含有量としては、処理液の全量に対し、有機アルカリ成分が0.5〜15質量%、無機アルカリ成分が0.2〜10質量%、アニオン系界面活性剤が0.1〜10質量%、およびノニオン系界面活性剤が0.01〜2質量%の範囲内であることが好ましく、処理液の全量に対し、有機アルカリ成分が1〜10質量%、無機アルカリ成分が0.5〜5質量%、アニオン系界面活性剤が0.2〜5質量%、およびノニオン系界面活性剤が0.02〜1質量%であることがより好ましい。
【0043】
有機アルカリ成分が上記範囲内であると、熱可塑性樹脂層の溶解が速くなり、感光性樹脂組成物層を含めた全体の現像時間が短くなる。15質量%以下であれば効果が飽和しにくく、現像廃液処理の負荷が増えにくい。
無機アルカリ成分が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物層の未露光部(ネガ型の場合)の溶解が速くなり、現像時間が短くなって好ましい。10質量%以下であれば処理液に分散されて溶解している感光性樹脂組成物層に含まれる重合性化合物などが析出しにくく、この析出物が基板上に再付着するという問題を生じにくい。
アニオン系界面活性剤が0.1質量%以上であると、現像後のパターンエッジ周辺の残渣が少なくなり、10質量%以下であると、処理液が泡立ち、泡の影響で現像装置内の基板搬送が不安定になるという問題が起きにくい。
ノニオン系界面活性剤が0.01質量%以上の場合は、現像後のパターンエッジ周辺の残渣が少なくなり、2質量%以下であると、界面活性剤の種類や現像液の温度にもよるが、液が濁り現像性を低下させるという問題を生じにくい。
【0044】
また、本発明における処理液は、感光性樹脂組成物の項で述べる重合性化合物、およびカルボキシル基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの化合物を含むことで、処理液の変動を小さくすることができるので、現像時間等の現像条件の制御を容易にでき、得られた感光性樹脂組成物層のパターンのサイズ、形状を一定の範囲に容易にすることが可能となり、好ましい。
重合性化合物、およびカルボキシル基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種の化合物の現像に使用する際の処理液における各含有量は、処理液の全量に対し、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0045】
本発明においては、仮支持体上に熱可塑性樹脂層と、感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂組成物層のパターンを形成する方法中で、感光性樹脂転写材料を基板上に転写して、露光したのち、熱可塑性樹脂層の除去と感光性樹脂組成物層の潜像の現像とを、1種類の処理液で現像処理することにより行ってパターン形成する。つまり、熱可塑性樹脂層の除去と感光性樹脂組成物層の潜像の現像は、同一組成の処理液を用いて行われる。これによって、先行パターン等による凹凸を有する基板上に、パターン欠陥、現像残渣、および異物の付着がない感光性樹脂組成物層のパターンを、簡易な現像工程により短い現像時間で得られるので、生産効率の高いパターン形成方法を提供することができる。
【0046】
特に、前記処理液が、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤を含むことにより、これらの相乗効果によって、上記の効果が顕著なものとなる。
この効果が発現する機構は、不明であるが、以下のように推測される。
処理液がまず接する熱可塑性樹脂層は、無機および有機アルカリ成分によって、溶解するが、一般的には溶解に時間を要する。しかし、本発明においては、部分的に溶解した部分に有機アルカリ成分が浸透し、熱可塑性樹脂の溶解を促進する。アニオン系、およびノニオン系の界面活性剤が有機アルカリ成分の浸透を補助し、有機アルカリ成分の浸透が促進され、熱可塑性樹脂層の溶解が促進される。一方、無機アルカリ成分は有機アルカリ成分よりアルカリ性が強いので、熱可塑性樹脂を速く溶解させる。熱可塑性樹脂に浸透した有機アルカリ成分は、アニオン系、およびノニオン系の界面活性剤、特にアニオン系界面活性剤の補助を得て、感光性樹脂組成物層に浸透し、感光性樹脂組成物を膨潤させ、溶解させる。膨潤した感光性樹脂組成物層に強アルカリである無機アルカリ成分が接触し、感光性樹脂組成物層を溶解させる。アニオン系、およびノニオン系の界面活性剤、特にノニオン系界面活性剤は、溶解した熱可塑性樹脂および感光性樹脂組成物を乳化させ、溶解を安定化させ、基板への再付着を防止する。以上のメガにズムにより効果が得られるのではないかと考えられる。
【0047】
次に、本発明における、仮支持体、熱可塑性樹脂層、感光性樹脂組成物層、およびこれらの層を有する感光性樹脂転写材料について説明し、本発明の感光性樹脂組成物層のパターンの形成方法、さらに得られた感光性樹脂組成物パターンを有する液晶表示装置について詳細に説明する。
【0048】
〔仮支持体〕
感光性樹脂転写材料の仮支持体としては、例えば、特許第3800513号明細書の段落〔0016〕に記載されている可撓性物質が使用できる。
具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標)など)、およびポリエチレン等が例として挙げられる。
また、これらの仮支持体は必要に応じて、下塗り層や帯電防止層を具備していてもよい。
【0049】
〔熱可塑性樹脂層〕
感光性樹脂転写材料の仮支持体上に設けられる熱可塑性樹脂層としては、例えば、特許第3800513号明細書の〔0019〕〜〔0022〕に記載されている構成のものが使用可能である。
熱可塑性樹脂層の厚みとしては1μm以上が好ましく、更に好ましくは3μm以上である。1μm以上であれば、先行パターンの影響を排除するのが容易である。
【0050】
感光性樹脂転写材料においては、熱可塑性樹脂層と後述する感光性樹脂組成物層との間に必要に応じて中間層を設けてもよい。このような中間層としては、例えば、特許第3800513号明細書の〔0023〕〜〔0024〕に記載されている構成のものが使用できる。
【0051】
〔感光性樹脂組成物層〕
感光性樹脂組成物層としては、ネガ型、ポジ型の両方の感光性樹脂組成物層が使用可能である。
ポジ型の感光性樹脂組成物層としては、例えば、特開平7−43899号公報等に記載のアルカリ可溶性ノボラック樹脂系を使用することができる。また、例えば、特開平6−148888号公報、および特開平5−262850号公報に記載の組成物も使用可能である。
【0052】
ネガ型の感光性樹脂組成物層としては、詳細には後述するが、例えば、特開2004−240039号公報に記載されている構成のものが使用できる。これらに記載の感光性樹脂組成物層は着色剤を含むものであるが、本発明においては、着色剤である顔料や染料を含まない透明な感光性樹脂組成物層も同様に使用可能である。
【0053】
また、感光性樹脂組成物層の上には、保管時の汚染や損傷から保護するために薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムには仮支持体と同じかまたは類似の材料を用いることができるが、感光性樹脂組成物層から容易に分離される必要がある。
保護フィルムの材質としては、例えば、シリコーンシート、ポリオレフィンフィルム、およびポリテトラフルオロエチレンシートなどが挙げられる。
【0054】
以下に、感光性樹脂転写材料における感光性樹脂組成物層に用いることが好ましいネガ型感光性樹脂組成物の例を説明する。
ネガ型感光性樹脂組成物は、例えば、(A)側鎖に酸性基を有する樹脂、(B)重合性化合物、および(C)光重合開始剤を含み、さらに、所望により、その他の成分を含んでいてもよい。
【0055】
(A)側鎖に酸性基を有する樹脂
感光性樹脂組成物は、(A)側鎖に酸性基を有する樹脂〔以下、適宜、(A)特定樹脂と称する〕を含有していてもよい。
(A)特定樹脂は、側鎖に酸性基を有するものであれば特に制限はないが、酸性基Y(yモル%)を有する側鎖の他、さらに、分岐および/または脂環構造を有する基X(xモル%)を有する側鎖、および/またはエチレン性不飽和基を有する基Z(zモル%)を有する側鎖を含有することが好ましい。必要に応じてその他の基L(lモル%)を有していてもよい。また、(A)特定樹脂中のひとつの基の中にX、Y、及びZが複数組み合わされて含まれていてもよい。
【0056】
前記酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、リン酸基、およびフェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、またはフェノール性水酸基であることが好ましい。
【0057】
前記(A)特定樹脂の側鎖に酸性基を導入するために用いられる単量体(酸性基を有する単量体)としては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、および(メタ)アクリルアミド類などに上記カルボキシ基等の酸性基を導入したものが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、および(メタ)アクリルアミド類に酸性基を導入したものが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類に酸性基を導入したものである。
なお、本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリレート」と、それぞれ表記することがある。
【0058】
前記酸性基を有する単量体としては、公知のものの中から適宜選択することができる。その具体例としては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、およびω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0059】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で、(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0060】
(A)特定樹脂における酸性基を有する単量体の導入量は、(A)特定樹脂の合成に用いられる全単量体に対し、5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。酸性基を有する単量体の(A)特定樹脂への導入量が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
【0061】
また、(A)特定樹脂の酸価の好ましい範囲は、とりうる分子構造により変動するが、一般的には20mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、70〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、絶縁性、透明性、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性に優れた絶縁層及びオーバーコート層が得られる。このため、酸価が上記範囲内となるように、(A)特定樹脂における酸性基を有する単量体の導入量を決定すればよい。
【0062】
また、(A)特定樹脂は、既述のように、さらに、分岐および/または脂環構造を有する基、および/またはエチレン性不飽和基を側鎖に有していてもよい。
即ち、本発明における(A)特定樹脂は、前記分岐および/または脂環構造を有する基X(xモル%)と、酸性基を有する基Y(yモル%)と、エチレン性不飽和基を有する基Z(zモル%)とをそれぞれ別の共重合単位に有する少なくとも3元共重合以上の共重合体であることが、形成される樹脂パターンの絶縁性、透明性、耐水性、耐アルカリ性、および耐酸性の改善、現像残渣低減、ならびにレチキュレーション発生の防止の観点から好ましい。具体的には、(A)特定樹脂としては、前記Xを有する単量体、前記Yを有する単量体,前記Zを有する単量体の各々を、少なくとも1つずつ共重合させてなる共重合体が好ましい。
【0063】
以下、分岐および/または脂環構造を有する基について説明する。
分岐を有する基としては、例えば、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、およびt−オクチル等が挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、およびイソペンチル基等が好ましく、さらにi−プロピル基、s−ブチル基、およびt−ブチル基等が好ましい。
【0064】
脂環構造を有する基としては、例えば、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基が挙げられる。その具体例としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、およびトリシクロペンタニル基等が好ましく、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、およびトリシクロペンテニル基等が更に好ましい。
【0065】
前記分岐および/または脂環構造を有する基を含有する単量体としては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、および(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、および(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0066】
前記分岐構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、および(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、およびメタクリル酸t−ブチル等が好ましく、さらに好ましくは、メタクリル酸i−プロピル、およびメタクリル酸t−ブチル等である。
【0067】
次に、前記脂環構造を有する基を含有する単量体の具体例としては、例えば、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン−2−イル)、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸1−メチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチルビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸2,2,5−トリメチルシクロヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、などが挙げられる。
これら(メタ)アクリル酸エステルのなかでも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸1−メチル、および(メタ)アクリル酸トリシクロデシルなどが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、および(メタ)アクリル酸2−アダマンチルが特に好ましい。
【0068】
前記(A)特定樹脂の前記各成分の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定され、一概に言えないが、(A)特定樹脂における分岐および/または脂環構造を有する単量体の導入量は、(A)特定樹脂の合成に用いられる全単量体に対し、10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%が更に好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。分岐および/または脂環構造を有する単量体の導入量が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液耐性も良好である。
【0069】
前記エチレン性不飽和基としては、特に制限はないが、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、エチレン性不飽和基と単量体との連結はエステル基、アミド基、カルバモイル基などの2価の連結基を介したものであれば特に制限はない。側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法は公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ化合物(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸等)にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシ基を持つ基(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等)にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、およびイソシアネート基を持つ基にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
【0070】
その中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有するものであれば特に制限はない。
【0071】
前記(A)特定樹脂におけるエチレン性不飽和基を有する単量体の導入量は、(A)特定樹脂中の全単量体に対して、10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。エチレン性不飽和基を有する単量体の導入量が前記範囲内であると、現像性及び硬化性も良好である。
【0072】
(A)特定樹脂には、前記3種の繰り返し単位(前記Xを有する単量体に由来する繰り返し単位、前記Yを有する単量体に由来する繰り返し単位、前記Zを有する単量体に由来する繰り返し単位)の他、他の単量体に由来する繰り返し単位を含んでもよい。そのような他の単量体としては、特に制限はなく、例えば、分岐および/または脂環構造をもたない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物、ビニルエステル、炭化水素アルケニル等が挙げられる。
【0073】
前記ビニルエーテルとしては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
前記二塩基酸無水物としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
前記ビニルエステルとしては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニルなどが挙げられる。
前記炭化水素アルケニルとしては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
【0074】
前記(A)特定樹脂におけるその他の単量体の導入量としては、(A)特定樹脂の合成に用いられる全単量体に対し、0〜30mol%であることが好ましく、0〜20mol%であることがより好ましい。
【0075】
(A)特定樹脂の具体例としては、例えば、特開2008−146018号公報の段落番号〔0057〕〜〔0063〕に記載される化合物P−1〜P−35で表される化合物が挙げられる。
【0076】
前記(A)特定樹脂は、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から作られてもよい。(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって行われ、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、または配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、または溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより好ましい。
【0077】
(A)特定樹脂として好適な前記共重合体の重量平均分子量は、10,000〜10万が好ましく、12,000〜6万が更に好ましく、15,000〜4.5万が特に好ましい。重量平均分子量が10,000以上であると、樹脂の強度が大きくなり、絶縁層及びオーバーコート層が凝集破壊しがたくなる。また現像速度が速くなりすぎず、樹脂パターンが基板から脱落しがたくなる。重量平均分子量が10万以下であると現像残渣が少なくなり好ましい。
【0078】
(A)特定樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることがより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な絶縁性、透明性、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性に優れた絶縁層及びオーバーコート層が得られる。
【0079】
前記(A)特定樹脂のガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が10,000〜100,000であることが良好な絶縁性、透明性、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性に優れた絶縁層及びオーバーコート層が得られる点で好ましい。
更に、前記(A)特定樹脂は、その分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のいずれもが前記好ましい範囲内にある樹脂であることがより好ましい。
【0080】
前記(A)特定樹脂の含有量としては、前記感光性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
なお、ここで全固形分とは、感光性樹脂組成物において溶剤を除いた他の成分の合計量を指す。
感光性樹脂組成物は、(A)特定樹脂の他に、本発明の効果を損なわない限りにおいて、側鎖に酸性基を有する樹脂以外の樹脂(他の樹脂)を含有してもよい。他の樹脂を含有する場合、その含有量は、(A)特定樹脂の含有量100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、効果の観点からは、樹脂として(A)特定樹脂のみを含む態様がより好ましい。
【0081】
(B)重合性化合物
感光性樹脂組成物は、下記一般式(b1)で表される重合性化合物を含むことが好ましい。感光性樹脂組成物は、これらとは構造の異なる他の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0082】
(X−O−CH−C−O−C(CH−O−X) ・・・(b1)
【0083】
(前記一般式(b1)中、Xは、水素原子又はHC=C(R)−C(O)−を表す。複数存在するXは互いに同じでも異なっていてもよい。但し、一分子中のXのうち、少なくとも4個はHC=C(R)−C(O)−を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
【0084】
〔一般式(b1)で表される重合性化合物〕
一般式(b1)で表される重合性化合物における、Xは水素原子又はHC=C(R)−C(O)−を表し、重合性化合物一分子中に含まれるHC=C(R)−C(O)−は4個以上である。より好ましくは5個以上であり、最も好ましいのは、5.5個及び6個である。なお、この数は平均値で示す場合があり、例えば、一分子中にHC=C(R)−C(O)−を5個含むものと6個含むものとの等量混合物は、HC=C(R)−C(O)−を一分子中に5.5個含むものとされる。
また、Rは水素原子であるか、又は、メチル基など炭素数4以下の低級炭化水素基である。より好ましくは、Rは、水素原子又はメチル基など炭素数2以下の低級炭化水素基であり、最も好ましいのは、水素原子又はメチル基である。一分子中に含まれるHC=C(R)−C(O)−における複数のRは、互いに同じでも異なっていてもよいが、合成適性上は同じであることが好ましい。
一般式(b1)で示される重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びこれらの混合物が挙げられる。
なかでもジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びこれらの混合物がより好ましい。
【0085】
−他の重合性化合物−
感光性樹脂組成物は、前記一般式(b1)で表される重合性化合物とは構造の異なる他の重合性化合物を含んでいてもよい。ここで、他の重合性化合物としては、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号〔0011〕に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号〔0040〕〜〔0049〕に記載した成分であって、前記一般式(b1)で表される重合性化合物に包含されないものが挙げられる。
そのような重合性化合物としては、例えば、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。
具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタ
エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;およびトリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートなどが挙げられる。
また、市販品を用いてもよく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、新中村化学工業株式会社製 U−6HA、U−6LPA、UA−1100H、UA−53H、UA−33H、U−200PA、UA−4200、UA−7100、UA−32P、およびUA−7200(以上、商品名)を挙げることができる。
【0086】
前記(A)特定樹脂との関係において、感光性樹脂組成物に含まれる重合性化合物の総量の、(A)特定樹脂の含有量に対する質量比率〔重合性化合物の総含有量/(A)の含有量〕が0.45〜1.6であることが好ましい。
感光性樹脂組成物をガラス基板等の最終基板に塗布してパターンを形成する場合には、〔重合性化合物の総含有量/(A)の含有量〕は、0.5〜1.2であることがより好ましく、0.55〜0.9であることが特に好ましい。〔重合性化合物の総含有量/(A)の含有量〕比が上記範囲内において、現像速度が適切に維持され、現像残渣の増加が抑制され、且つ、パターン欠けやパターンの脱落が生じがたく、150℃以下でベークした場合においても、形成された樹脂パターンと基板との密着が良好となる。
【0087】
(C)光重合開始剤
感光性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。(C)光重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。好ましい開始剤としては、例えば、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキシム系開始剤、アセトフェノン系開始剤、チタノセン系開始剤、およびアシルフォスフィンオキサイド系開始剤などが挙げられる。
具体的には、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号〔0012〕〜〔0013〕に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号〔0050〕〜〔0053〕に記載の成分が挙げられる。
【0088】
本発明に使用しうる好ましい(C)光重合開始剤としては、例えば、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、7−{2−[4−(3−ヒドロキシメチルピペリジノ)−6−ジエチルアミノ]トリアジニルアミノ}−3−フェニルクマリン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウム、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンO−アセチルオキシム、およびオキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物等が挙げられる。
【0089】
なかでも、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、7−{2−[4−(3−ヒドロキシメチルピペリジノ)−6−ジエチルアミノ]トリアジニルアミノ}−3−フェニルクマリン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]ブタン−1−オン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンO−アセチルオキシム、およびオキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物が特に好ましいが、これに限定されない。
【0090】
前記(C)光重合開始剤の含有量としては、(B)重合性化合物の総含有量に対する比率〔(C)/(B)〕が、0.6以上5未満が好ましく、0.75以上3以下がより好ましい。比率〔(C)/(B)〕が、上記範囲内において、感光性樹脂組成物パターンの脱落、導電層リフトオフ時のアルカリ耐性の低下が抑制され、且つ、現像残渣の悪化や、パターン露光直後の密着の悪化が抑制され、150℃以下でベークした際にも、感光性樹脂組成物パターンと基板の密着が良好に維持される。
【0091】
−その他の成分−
感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の成分として公知の添加剤などを目的に応じて用いることができる。
その他の成分としては、例えば、有機溶剤(例えば、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−メトキシプロパノール、3−エトキシエチルアセテート、シクロヘキサノンなど)、顔料、染料等の着色剤、顔料分散剤、増感剤、界面活性剤、重合禁止剤、密着剤、架橋剤などが挙げられる。
また、その他の成分としては、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0012]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0050]〜[0053]に記載の成分が挙げられる。
【0092】
<感光性樹脂転写材料>
感光性樹脂転写材料は、仮支持体上に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層と、少なくとも1層の感光性樹脂組成物層とを有する。
感光性樹脂組成物層の膜厚は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、後述するように、0.7μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0093】
感光性樹脂転写材料を作製する場合、感光性樹脂組成物層と仮支持体との間に、転写性を向上させるためのクッション性を有する前述の熱可塑性樹脂層以外に、更に酸素遮断層(以下、「酸素遮断膜」または「中間層」とも言う。)を設けてもよい。これにより露光感度を高めることができる。熱可塑性樹脂層が酸素遮断層を兼ねていてもよい。
【0094】
該感光性樹脂転写材料を形成する仮支持体、熱可塑性樹脂層、酸素遮断層、感光性樹脂組成物層、その他の層や該感光性樹脂転写材料の作製方法については、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0029]〜[0030]に記載された方法を用いることができる。
【0095】
<感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法>
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法は、前述の感光性樹脂転写材料を、基板上にラミネートする工程、画像様の露光と仮支持体の剥離とをこの順又はこの逆順で行う工程、および前記感光性樹脂組成物がネガ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去とを1種類の処理液で現像して行う工程、または前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去とを1種類の処理液で現像して行う工程を、この順で有する方法である。
また、上記方法は、現像により得られたパターン状の感光性樹脂組成物層を加熱する加熱工程を含んでいてもよい。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法によれば、絶縁性、透明性、現像性、耐アルカリ性等の耐性に優れた、タッチパネル素子に用いる絶縁層及びオーバーコート層等の樹脂パターンを容易に製造できる。
【0097】
[感光性樹脂転写材料のラミネート]
本発明のパターン形成方法における感光性樹脂転写材料のラミネート方法としては、例えば、支持体となる基板上に、仮支持体上に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層と少なくとも1層の感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を転写法によりラミネートする方法が好ましい。
前記感光性樹脂転写材料を、加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で基板上に圧着又は加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体を剥離して感光性樹脂組成物層を基板上に転写する。ラミネーター及びラミネート方法としては、具体的には、例えば、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、および特開2002−148794号公報に記載のものが挙げられる。低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0098】
感光性樹脂組成物層の膜厚は0.7μm〜3.0μmが好ましく、0.9μm〜2μmがより好ましい。膜厚が上記範囲内において、感光性樹脂組成物層を形成する際のピンホールの発生、ベーク後の密着の低下、現像残渣の増加が抑制され、適切な現像条件で良好な感光性樹脂組成物のパターンが形成される。
【0099】
〔基板〕
感光性樹脂組成物層を形成する基板としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、および駆動素子(例えば薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。また、基板としては、例えば、可撓性であるシリコン基板、およびポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等のプラスチック基板等も挙げられる。プラスチック基板は、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
基板の厚みとしては、700μm〜1200μmが一般に好ましい。
また、基板としてプラスチック基板等の可撓性支持体を使用する場合には、基板は一定の大きさに裁断されたシート状の基板であってもよいが、連続して搬送されるウエブ状基板であることも好ましい。
【0100】
[露光]
このようにして基板上に転写された感光性樹脂組成物層および熱可塑性樹脂層を有する基板には、画像様の露光が施される。
露光に先立って、仮支持体との剥離を行ってもよいし、露光後に仮支持体との剥離を行ってもよい。
【0101】
画像様の露光においては、所定のマスクパターンを介して露光を行い、潜像を形成する。露光に使用する線源としては、紫外線、各種レーザー光が好ましく、特にg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。液晶表示装置用のカラーフィルタを形成する際には、プロキシミティ露光機、またはミラープロジェクション露光機で、主としてh線、i線を使用した露光を行うことが好ましい。またレーザーによる走査で潜像を形成することも好ましい。
【0102】
また、その他の露光光源としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、各種レーザー光源、等が使用できる。
露光装置としては、特に制限はないが、例えば、市販されているものとしては、Callisto(ブイテクノロジー株式会社製)やEGIS(ブイテクノロジー株式会社製)やDF2200G(大日本スクリーン株式会社製)などが使用可能である。また上記以外の装置も好適に用いられる。
【0103】
−レーザー光源を用いた露光工程−
レーザー光源を用いた露光方式では、照射光は、波長が300nm〜410nmの範囲の紫外光レーザーが好ましく、波長が300nm〜360nmの範囲の紫外光レーザーがさらに好ましい。具体的には、特に出力が大きく、比較的安価な固体レーザーであるNd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)や、エキシマレーザーのXeCl(308nm)、XeF(353nm)を好適に用いることができる。パターン露光量としては、生産性の観点から、1mJ/cm〜100mJ/cmの範囲内であることが好ましく、1mJ/cm〜50mJ/cmの範囲内であることがより好ましい。
【0104】
[現像処理]
本発明のパターン形成方法においては、熱可塑性樹脂層と潜像が形成された感光性樹脂組成物層を有する基板を、1種類の処理液を用いて現像し、熱可塑性樹脂層の除去と感光性樹脂組成物層の未露光部分の除去(ネガ型の場合)、または熱可塑性樹脂層の除去と露光部分の除去(ポジ型の場合)とを行う。
この工程においては、前記基板を搬送する搬送機構の上にシャワーノズルを多数有するシャワー型処理槽を用いるのが好ましい。また、処理液の槽にディップする方法や、基板を揺動させる方法、および/または超音波振動を付与する方法などを併用してもよい。
ここで「1種類の処理液を用いて」とは、感光性樹脂組成物がネガ型である場合は、熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去、または前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合は、熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去とを、同一の組成の処理液で行うことを言う。主として熱可塑性樹脂層の除去のための処理と、主として感光性樹脂組成物がネガ型である場合は露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去、または前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合は露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去のための処理とを、別々の処理装置(浴槽)で行ってもよい。
【0105】
現像処理の時間は、10秒間〜200秒間が好ましく、10秒間〜150秒間がより好ましく、10秒間〜100秒間がさらに好ましい。
また、処理される基板の形状としては、連続して搬送されるウエブ状基板であることが好ましいが。基板は、裁断されたシート状基板であってもよく、この場合は1枚毎に現像処理を行ってもよい。
【0106】
[加熱工程]
上記の工程により、パターン状の感光性樹脂組成物層が得られる。ここで、パターンの強度及び基板との密着性向上のために、得られたパターン状の感光性樹脂組成物層を加熱することが好ましい。
加熱の方法としては、コンベクションオーブンを用いた加熱、ホットプレートを用いた加熱、赤外線加熱等任意の方法を用いることができる。
加熱の条件としては、使用する基板の耐熱性を鑑み、適宜選択することが可能であるが、基板としてガラスを使用する場合は、加熱温度は、150〜250℃の範囲内であることが好ましく、プラスチック基板を使用する場合は、加熱温度は、100〜200℃の範囲内であることが好ましい。加熱処理時間としては10分〜60分が好ましい。
【0107】
このようにして感光性樹脂組成物パターンを形成する本発明のパターン形成方法は、タッチパネル素子の絶縁層、またはオーバーコート層などの形成方法として、あるいは、液晶表示装置等の画像表示装置のカラーフィルタの遮光層、着色画素、またはフォトスペーサなどの形成方法として用いることができる。
以下、タッチパネル素子、液晶表示装置等について述べる。
【0108】
<タッチパネル素子>
パターン形成された絶縁層及びそれに積層させるパターン形成されたオーバーコート層を用いたタッチパネル素子の作製は、例えば以下のようにして行われる。例えば、タッチパネル用基板透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板、薄膜トランジスタ[TFT]を裏面に備えた基板)上に第一導電性層パターン(メタル及びITO等)を形成し、さらに絶縁層パターンを形成し、さらに第二導電性パターンを形成してコンデンサを形成し、引続き、パターン形成されたオーバーコート層を形成してタッチパネル素子を作製することができる。
具体的には、各パターンは、下記のように順次形成される。
【0109】
〜第一導電性層パターン〜
第一導電性層パターン形成方法には、例えば次の2種が挙げられる。
一つはエッチングによる導電性層パターンの形成方法である。基板上にメタル層若しくはITO層を蒸着等により均一製膜した後、レジスト層を有する転写材料を用いてレジスト層を積層させる。続いて、レジスト層を露光し、本発明のパターン形成方法により、現像してパターンを形成する。
【0110】
もう一つはリフトオフによる導電性層パターンの形成方法である。基板上にレジスト層を有する転写材料を用いてレジスト層を積層させる。続いて、レジスト層を露光し、本発明のパターン形成方法により、現像してパターンを形成する。このパターンの形状は逆テーパー状であることが好ましい。
【0111】
〜絶縁層パターン〜
本発明のパターン形成方法を用いて第一導電性層パターンを形成した基板に、感光性樹脂転写材料を加熱・圧着して感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像・ベークを行い、絶縁層パターンを形成する。
【0112】
〜第二導電性層パターン〜
第二導電性層パターンは、絶縁層パターンを形成した基板に、上記第一導電性層パターンの形成方法と同様の方法により形成することができる。
【0113】
〜オーバーコート層〜
オーバーコート層は、第二導電性層パターンを形成した基板に、上記絶縁層パターンの形成方法と同様の方法により形成することができる。
【0114】
<液晶表示装置用基板>
液晶表示装置用基板は、黒色遮蔽部及び着色部並びにフォトスペーサを備えたものであることが好ましい。フォトスペーサは、支持体上に形成されたブラックマトリクス等の黒色遮光部の上、および/またはTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の黒色遮光部とフォトスペーサとの間、および/またはTFT等の駆動素子とフォトスペーサとの間に、ITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。
【0115】
例えば、フォトスペーサが表示用遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、本発明のパターン形成方法を用いて、該支持体に予め配設された表示用遮光部(ブラックマトリクスなど)またはTFT駆動素子を覆うようにして感光性樹脂転写フィルムの感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂組成物層を形成した後、これを露光し、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサを形成することによって、液晶表示装置用基板を作製することができる。
【0116】
<液晶表示素子>
液晶表示素子は、前記液晶表示装置用基板を有する。液晶表示素子の例として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0117】
この場合、液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板であってもよい。このカラーフィルタ基板には、高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサが設けられるため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間にセルギャップムラ(セル厚変動)の発生が抑えられ、色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0118】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサにより所定幅に規制されたものが挙げられる。
【0119】
この場合も、液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板であってもよい。
【0120】
本発明において使用可能な液晶としては、例えば、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、および強誘電液晶が挙げられる。
【0121】
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の画素からなる画素群の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成して作製してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにして作製してもよい。RGB画素の形成については、例えば、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0122】
<液晶表示装置>
液晶表示装置は、前記液晶表示素子およびタッチパネル素子を有する。即ち、液晶表示装置は、互いに向き合うように対向配置されたTFT駆動基板とカラーフィルタ基板間を既述のように、フォトスペーサでセルギャップを所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して得られた液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持された液晶表示素子、およびこの液晶表示素子のTFT駆動基板側に設けられたタッチパネル素子を有する。
【0123】
前記タッチパネル素子は、TFT駆動基板のTFTが設けられた面の反対面に直接、第一導電層パターン、絶縁層パターン、第二導電層パターン、オーバーコート層を順次積層させて作製されるタッチパネル素子でもよい。この場合、タッチパネル素子は、TFT駆動基板とカラーフィルタ基板間に液晶を封入する前の液晶表示装置用基板に、シール材等の耐熱温度以下の温度で作製される必要がある。
【0124】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、例えば、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置における液晶表示モードとしては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2μm〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、およびOCB型表示モードが好ましい。
【0125】
基本的な液晶表示装置としては、例えば、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入してなる液晶表示装置、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入してなる液晶表示装置、等が挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターンを有する液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0126】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置として使用することができる。中でも、本発明の液晶表示装置は、特に、カラーTFT方式の液晶表示装置として使用することが有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0127】
液晶表示装置は、既述の液晶表示素子を備える以外は、一般的に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムなどの様々な部材を用いて構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、および「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0129】
[実施例1]
−タッチパネル用絶縁層及びオーバーコート層用感光性樹脂転写材料の作製−
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方A1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥させた後さらに120℃で1分間乾燥させ、乾燥層厚15μmの熱可塑性樹脂層を形成した。ここで、乾燥条件における温度「100℃」及び「120℃」は、いずれも乾燥風の温度である。以下の乾燥条件における温度も同様である。
【0130】
〔熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A1〕
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=55/11.7/4.5/28.8[mol比]、重量平均分子量90,000)
・・・・58.4部
・スチレン/アクリル酸共重合体(=63/37[mol比]、重量平均分子量8,000)
・・・・・136部
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
・・・・90.7部
・界面活性剤1(下記構造物1のメチルエチルケトン溶液)
・・・・・5.4部
・メタノール ・・・・・111部
・1−メトキシ−2−プロパノール ・・・・63.4部
・メチルエチルケトン ・・・・・534部
【0131】
(界面活性剤1の組成)
・下記構造物1 ・・・・・・30%
・メチルエチルケトン ・・・・・・70%
【0132】
【化4】

【0133】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液を調製し、80℃で1分間乾燥させた後、さらに120℃で1分乾燥させて、乾燥層厚1.6μmの中間層を積層した。
【0134】
〔中間層用塗布液の処方B〕
・ポリビニルアルコール(PVA−205、鹸化度88%、(株)クラレ製)
・・・・3.22部
・ポリビニルピロリドン(PVP K−30、アイエスピー・ジャパン株式会社製)
・・・・1.49部
・メタノール ・・・・42.9部
・蒸留水 ・・・・52.4部
【0135】
次に、形成した中間層上に更に、下記処方1からなる感光性樹脂組成物層用塗布液を塗布した後、100℃で2分間乾燥させた後、更に、120℃で1分間乾燥させて(乾燥条件A)、乾燥層厚1.38μmの透明感光性樹脂組成物層を積層した。
〔感光性樹脂組成物層用塗布液処方1〕
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート・・・・・599部
・メチルエチルケトン ・・・・・238部
・ソルスパース20000(Lubrizol製 ・・・・1.88部
・ポリマー45%溶液(特開2008−146018号公報の段落番号[0061]に記載の構造式P−25:重量平均分子量=3.5万、固形分45%、1−メトキシ−2−プロピルアセテート15%、1−メトキシ−2−プロパノール40%)[(A)特定樹脂]
・・・・・114部
・重合性化合物の混合物:DPHA液(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:48%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:28%、1−メトキシ−2−プロピルアセテート:24%)[(B)一般式(b1)で表される重合性化合物]
・・・・16.3部
・下記の重合性化合物(b2−1):(n=1が85%、n=2及びn=3の成分の合計が15%)
・・・・20.5部
・ウレタン系モノマー(NKオリゴUA−32P 新中村化学(株)製:不揮発分75%、1−メトキシ−2−プロピルアセテート:25%)[(B)その他の重合性化合物]
・・・・7.72部
・2,4−ビス−(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン[(C)光重合開始剤]
・・・・1.27部
・2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール[(C)光重合開始剤]
・・・0.635部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル[溶剤]
・・・0.072部
・メガファックF−784−F(DIC株式会社製[界面活性剤])
・・・・0.51部
【0136】
【化5】

【0137】
上記式中、Xはすべてアクリロイル基であり、n=1〜3の混合物である。
【0138】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂組成物層の積層構造を形成した後、感光性樹脂組成物層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製フィルムを加熱・加圧して貼り付け、感光性樹脂転写材料(1)を得た。
【0139】
(ブリッジ電極の作成)
洗浄したガラス基板にマスクを介して、スパッタ装置(ULVAC製SIH3030)を用いて、厚み36nmのITOスパッタ(main電流;2A、presputter電流;1A、プレヒート温度;100℃、スパッタ温度;100℃、プレヒート時間;30分、Ar流量;80sccm、O流量;6ccm、プレスパッタ時間;2分、スピード;850mm/min、基板温度;100℃)を行ない、ブリッジ電極を作成した。
【0140】
(絶縁層の形成)
カバーフィルムを剥離し、感光性樹脂転写材料(1)の露出した感光性樹脂組成物層を、予め表面温度90℃に加熱した上記ブリッジ電極作成済基板に対向させ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、ラミネート圧力2MPa(富士フイルム製プレスケールで測定)、上ロール90℃、下ロール120℃の加圧・加熱条件下で、搬送速度2m/分にて貼り合わせた。
【0141】
PET仮支持体を剥離し、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、ブリッジ電極の一部を覆うように設計した絶縁層パターン作製用マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)を介し、熱可塑性樹脂層側から露光量i線50mJ/cmにてプロキシミティ露光した。
【0142】
〔処理液A〕
有機アルカリ成分:トリエタノールアミン 30部
無機アルカリ成分:炭酸ナトリウム 11.2部
無機アルカリ成分:炭酸水素ナトリウム 7.1部
アニオン系界面活性剤:ナフタレンスルフォン酸ナトリウム 16部
ノニオン系界面活性剤(アデカ製 商品名ND550) 2部
に純水を加え1000部とした処理液Aを調製した。
【0143】
上記処理液Aを25℃に保温し、同軸上に基板を支持する複数のコロを設けた複数の搬送用ロールを有する現像槽中で基板の搬送を行い、基板の上方から基板面に処理液を噴霧させて現像を行った。ここで、現像槽中における基板が搬送される高さ(コロの上部)を基板搬送ラインと称する。
現像槽中で処理液をシャワー圧0.1MPaで80秒間噴霧した。そののち、純水で10秒間リンスを行い、基板上に残った処理液成分を除去し、乾燥させた。これによりブリッジ電極を部分的に覆う絶縁層パターンが得られた。
【0144】
(センサー電極の形成)
ブリッジ電極形成用マスクとは別のマスクを介して、スパッタ装置(ULVAC製SIH3030を用いて、厚み36nmのITOスパッタ(main電流;2A、presputter電流;1A、プレヒート温度;100℃、スパッタ温度:100℃、プレヒート時間;30分、Ar流量;80sccm、O流量;6ccm、プレスパッタ時間;2分、スピード;850mm/min、基板温度;100℃)を行ない、センサー電極を作成した。センサー電極は、ブリッジ電極の絶縁層に覆われていない部分に重なる要素Aと、絶縁層上にありブリッジ電極に重ならない要素Bとを有し、これにより接触時の位置特定が可能となる。
【0145】
(オーバーコート層の形成)
カバーフィルムを剥離し、感光性樹脂転写材料(1)の露出した感光性樹脂組成物層を、予め表面温度90℃に加熱した上記センサー電極作成済基板に対向させ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、ラミネート圧力2MPa(富士フイルム製プレスケールで測定)、上ロール90℃、下ロール120℃の加圧・加熱条件下で搬送速度2m/分にて貼り合わせた。
【0146】
PET仮支持体を剥離し、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、オーバーコート層パターン作製用マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)を介し、熱可塑性樹脂層側から露光量i線50mJ/cmにてプロキシミティ露光した。
【0147】
前記処理液Aを25℃に保温し、シャワー圧0.1MPaで露光済の基板に80秒間噴霧したのち、純水で10秒間リンスを行い、基板上に残った処理液成分を除去し、乾燥させた。これにより最上層にオーバーコート層を有する、静電容量タッチパネル用センサーが得られた。
【0148】
(処理液B〜処理液Oの調製)
下記表1に記載のような成分の組成(量は部を示す。)に、それぞれ純水を加えて、1000部とし、処理液Aと同様にして処理液B〜処理液Oを調製した。無機アルカリ成分が2種記載のものは、2種を使用したことを示す。
【0149】
【表1】

【0150】
[実施例2]
処理液として、処理液Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0151】
[実施例3]
処理液として、処理液Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0152】
[実施例4]
基材としてガラスを150μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。現像液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0153】
[実施例5]
処理液として処理液Aに、あらかじめ実施例1に記載の感光性樹脂転写材料の1mの面積相当分の感光性樹脂組成物層を溶解させた処理液で現像を行った以外は、実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0154】
[比較例1]
感光性樹脂転写材料の調製において、熱可塑性樹脂層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0155】
[比較例2]
比較例1において、感光性樹脂転写材料の転写条件を、基板予備加熱140℃、ラミネーターの上下ロール温度140℃、ラミネート圧力2MPa(富士フィルム製プレスケールで測定)、搬送速度1m/分で行った以外は実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0156】
[比較例3]
実施例1と同じ感光性樹脂転写材料を用い、絶縁層とオーバーコート層の現像を以下のようにして実施した以外は実施例1と同様の方法で静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0157】
(絶縁層とオーバーコート層の現像)
先ず、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍(T−PD2を1部と純水9部の割合で混合)に希釈した液)を30℃に保温し、シャワー圧力0.1MPaで60秒間噴霧し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水によるリンスを10秒間行った。
引き続き、炭酸ナトリウム系現像液(0.38mol/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47mol/リットルの炭酸ナトリウム、5%のスルホン酸ナトリウム系アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を27℃に保温し、シャワー圧力0.1MPaで45秒間噴霧し、感光性樹脂層の未露光部分を除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水によるリンスを10秒間行った。
【0158】
引き続き、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を33℃に保温し、シャワー圧力0.1MPaで40秒間噴霧しパターン像の周辺の残渣除去を行なった。
【0159】
[実施例6〜17]
処理液として、処理液D〜Oをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例6〜17の静電容量タッチパネル用センサーを作成した。処理液の噴霧時間は絶縁層パターンの大きさや密着性が実施例1と同等になるように調整した。
【0160】
(評価)
得られた実施例及び比較例のタッチパネルセンサーについて、以下のように性能評価を行った。
結果を表2に示す。
【0161】
−現像残渣−
上記絶縁層パターンの形成及びオーバーコート層の形成において、プロキシミティ露光後、各実施例及び比較例の現像条件と同様の方法で現像し、形成した矩形状パターン部分のSEM観察を行い、周辺に残渣が残っているか確認した。実用レベルはC以上である。
【0162】
<評価基準>
A:残渣がまったく見られない。
B:パターンの角の部分に微かな残渣が見られた。
C:パターンエッジ(4辺)に微かな残渣が見られた。
D:パターン近傍の基板上に残渣が見られた。
E:基板上所々に残渣が確認できた。
【0163】
−ラミネート性−
上記絶縁層パターンの形成及びオーバーコート層の形成において、感光性樹脂転写材料をラミネートしたのち、光学顕微鏡観察にて、基板上の泡発生状況を確認した。実用レベルはC以上である。なお先行パターンとは、絶縁層の場合は、ブリッジ電極(パターンの段差厚み36nm)、オーバーコート層の場合は、絶縁層(厚み1.38μm)およびブリッジ電極(パターンの段差厚み36nm)を指す。
【0164】
<評価基準>
A:泡がまったく見られない。
B:先行パターン周辺に微小な泡が見られたが、目視観察では視認できない。
C:先行パターンエッジ(4辺)に微小な泡が見られたが、目視観察では視認できない。
D:先行パターンエッジ周辺の泡が目視観察でも視認できる。
E:基板上の所々に目視観察でも視認できる泡が確認できた。
【0165】
−パターン欠落−
上記絶縁層パターンの形成及びオーバーコート層の形成において、絶縁層のパターンを光学顕微鏡で観察し、パターン10000個当りの脱落数を計測した。実用レベルはC以上である。
<評価基準>
A:欠落なし
B:1個以上5個未満
C:5個以上10個未満
D:10個以上100個未満
E:100個以上
【0166】
−異物付着−
上記絶縁層パターンの形成及びオーバーコート層の形成において、オーバーコート層形成後の基板表面を光学顕微鏡で観察し、1m当りの異物付着数を計測した。実用レベルはC以上である。
<評価基準>
A:異物付着なし
B:1個以上5個未満
C:5個以上10個未満
D:10個以上100個未満
E:100個以上
【0167】
−現像時の搬送性−
上記絶縁層パターンの形成及びオーバーコート層の形成において、現像時の基板搬送状態を目視で観察した。実用レベルはB以上である。
<評価基準>
A:搬送異常なし。
B;処理液の発泡があるが、基板搬送に支障をきたさない。
C:処理液の発泡が、基板搬送ライン上に到達、基板搬送が不安定となる。
表2において、実施例14は激しく泡立ち、基板の搬送が不安定となったが、得られたパターンに異常はなかった。また、実施例16では泡立ちが多いが、基板の搬送には支障がなかった。
【0168】
【表2】

【0169】
表2から、以下のことがわかる。
本発明の感光性樹脂組成物のパターン形成方法によれば、現像残渣が少なく、ラミネート性が良好で、異物の付着が少ないタッチパネル用絶縁膜パターンが得られた。しかも、本発明の感光性樹脂組成物のパターン形成方法は、現像時間が短いので、現像槽の長さを短くでき、生産性の高いパターン形成方法である。
また、処理液の組成を、有機アルカリ成分;0.5〜15質量%、無機アルカリ成分;0.2〜10質量%、アニオン系界面活性剤;0.1〜10質量%、およびノニオン系界面活性剤;0.01〜2質量%に調整することにより、現像残渣やパターン密着性、異物付着をより好適なものにすることができることがわかる。
また、処理液が、重合性化合物、およびカルボキシ基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する実施例5においても、現像残渣が少なく、ラミネート性が良好で、異物の付着が少ないタッチパネル用絶縁膜パターンが得られた。
【0170】
[実施例18]
(液晶表示装置用カラーフィルタのフォトスペーサ用感光性樹脂転写材料の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、前記処方A1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥させた後さらに120℃で1分間乾燥させ、乾燥層厚15μmの熱可塑性樹脂層を形成した。ここで、乾燥条件における温度「100℃」及び「120℃」は、いずれも乾燥風の温度である。以下の乾燥条件における温度も同様である。
【0171】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、前記処方Bからなる中間層用塗布液を塗布し、80℃で1分間乾燥させた後さらに120℃で1分乾燥させて、乾燥層厚1.6μmの中間層を積層した。
【0172】
次に、形成した中間層上に更に、前記処方1からなる感光性樹脂組成物層用塗布液を塗布した後、100℃で2分間乾燥させた後、更に、120℃で1分間乾燥させて(乾燥条件A)、乾燥層厚4.5μmの感光性樹脂組成物層を積層した。
【0173】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂組成物層の積層構造を形成した後、感光性樹脂組成物層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製フィルムを加熱・加圧して貼り付け、フォトスペーサ用感光性樹脂転写材料(2)を得た。
【0174】
(カラーフィルタの作成)
特開2007−304403号公報実施例1に記載の方法で、ブラックマトリクス、赤色画素、緑色画素、青色画素を有するカラーフィルタを作製した。作製したカラーフィルタを洗浄後、スパッタ装置(ULVAC製SIH3030)を用いて、厚み150nmのITOスパッタ(main電流;2A、presputter電流;1A、プレヒート温度;100℃、スパッタ温度;100℃、プレヒート時間;30分、Ar流量;80sccm、O流量;6ccm、プレスパッタ時間;2分、スピード;250mm/min、基板温度;100℃)を行ない、カラーフィルタ上にITO層を積層した。
【0175】
(フォトスペーサの形成)
カバーフィルムを剥離し、感光性樹脂転写材料(2)の露出した感光性樹脂組成物層を、予め表面温度90℃に加熱した上記カラーフィルタおよびITO層が形成された基板に対向させ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、線圧;100N/cm、上ロール;90℃、下ロール;120℃の加圧・加熱条件下で搬送速度;2m/分にて貼り合わせた。
【0176】
PET仮支持体を剥離し、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、フォトスペーサパターン作製用マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)を介し、熱可塑性樹脂層側から露光量i線50mJ/cmにてプロキシミティ露光した。
前記処理液Aを25℃に保温し、シャワー圧0.1MPaで露光済の基板に80秒間噴霧したのち、純水で10秒間リンスを行い、基板上に残った処理液を除去し、乾燥させた。これによりカラーフィルタの所望の場所に、フォトスペーサ用パターンを形成した。
【0177】
[比較例4]
感光性樹脂転写材料の調製において、熱可塑性樹脂層を設けなかった以外は実施例18と同様の方法でフォトスペーサ付きカラーフィルタを作成した。処理液の噴霧時間はフォトスペーサパターンの大きさや密着性が実施例18と同等になるように調整した。
【0178】
[比較例5]
実施例18と同じ感光性樹脂転写材料を用い、絶縁層とオーバーコート層の現像を以下のようにして実施した以外は実施例18と同様の方法でフォトスペーサ付きカラーフィルタを作製した。処理液の噴霧時間はフォトスペーサパターンの大きさや密着性が実施例6と同等になるように調整した。
先ず、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍(T−PD2を1部と純水9部の割合で混合)に希釈した液)を30℃に保温し、シャワー圧力0.1MPaで60秒間噴霧し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水によるリンスを10秒間行った。
引き続き、炭酸ナトリウム系現像液(0.38mol/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47mol/リットルの炭酸ナトリウム、5%のスルホン酸ナトリウム アニオン系界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を28℃に保温し、シャワー圧力0.1MPaで50秒間噴霧し、感光性樹脂組成物層の未露光部分を除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水によるリンスを10秒間行った。
【0179】
引き続き、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン系界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を33℃に保温し、シャワー圧力0.1MPaで40秒間噴霧しパターン像の周辺の残渣除去を行なった。
【0180】
(評価)
得られた実施例18、比較例4、5のカラーフィルタについて、以下のように性能評価を行った。結果を表3にまとめて示す。
−現像残渣−
実施例18の項に記載の「フォトスペーサ付きカラーフィルタの作製」において、プロキシミティ露光後、各実施例の現像条件と同様の方法で現像し、形成したスペーサパターン部分のSEM観察を行い周辺に残渣が残っているか確認した。実用レベルはC以上である。
【0181】
<評価基準>
A:残渣がまったく見られない。
B:パターンの角の部分に微かな残渣が見られた。
C:パターンエッジ(4辺)に微かな残渣が見られた。
D:パターン近傍の基板上に残渣が見られた。
E:基板上所々に残渣が確認できた。
【0182】
−ラミネート性−
実施例18の項に記載の「フォトスペーサ付きカラーフィルタの作製」において、感光性樹脂転写材料をラミネートしたのち、光学顕微鏡観察にて、カラーフィルタ基板上の泡発生状況を確認した。実用レベルはC以上である。なお先行パターンとは、カラーフィルタ上のブラックマトリクスと赤、緑、青画素の厚みがそれぞれ異なることによる、基板上の凹凸、およびブラックマトリクスに一部重なって形成される赤、緑、青画素の画素外周部分(通称、ツノ)の双方を指す。
更に、現像後のフォトスペーサの高さを、触針式膜厚計(TENCOR社製)にて測定した。
【0183】
<評価基準>
A:泡がまったく見られない。かつ現像後のフォトスペーサの高さに異常がない。
B:フォトスペーサ設置部分周辺以外の部分に微小な泡が発生している。かつ、現像後のフォトスペーサの高さに異常がない。
C:フォトスペーサ設置部分周辺近傍に微小な泡が発生しているが、現像後のフォトスペーサの高さに異常がない。
D:フォトスペーサ設置部分周辺近傍に泡が発生し、その部分では現像後のフォトスペーサの高さに異常が発生している。
E:基板上の所々に泡が発生し、現像後のフォトスペーサの高さに異常が発生している。
【0184】
−スペーサ高さ均一性−
TENCOR社製触針式膜厚計(P-10)にてフォトスペーサの底部から頂点までの高さを100個の検体について測定し、その平均値と最大値、最小値を求めた。最大値-最小値で高さ分布のレンジを求め、そのレンジを平均値で割った値(値が小さいほど、均一性が高い)で評価を行った。実用レベルはC以上である。
<評価基準>
A:1%未満
B:1以上2%未満
C:2以上3%未満
D:3以上4%未満
E:4%以上
なお、比較例4では泡発生部分の周辺で、スペーサ高さが極端に高い、または低い現象が発生するとともに、スペーサが脱落する異常が発生した。
【0185】
−パターン欠落−
実施例18の項に記載のフォトスペーサ付きカラーフィルタの作製において、フォトスペーサのパターンを光学顕微鏡で観察し、パターン10000個当りの脱落数を計測した。実用レベルはC以上である。
<評価基準>
A:欠落なし。
B:1個以上5個未満。
C:5個以上10個未満。
D:10個以上100個未満。
E:100個以上。
【0186】
−異物付着−
実施例18の項に記載のフォトスペーサ付きカラーフィルタの作製において、フォトスペーサ形成後の基板表面を光学顕微鏡で観察し、1m当りの異物付着数を計測した。実用レベルはC以上である。
<評価基準>
A:異物付着なし。
B:1個以上5個未満。
C:5個以上10個未満。
D:10個以上100個未満。
E:100個以上。
【0187】
−現像時の搬送性−
実施例18の項に記載のフォトスペーサ付きカラーフィルタの作製において、現像時の基板搬送状態を目視で観察した。実用レベルはB以上である。
<評価基準>
A:搬送異常なし。
B:現像液の発泡があるが、基板搬送に支障をきたさない。
C:現像液の発泡が、基板搬送ライン上に到達、基板搬送が不安定となる。
【0188】
【表3】

【0189】
表3から、以下のことがわかる。
本発明の感光性樹脂組成物のパターン形成方法によれば、現像残渣が少なく、ラミネート性が良好で、スペーサ高さが均一で、異物の付着がないパターンを有するフォトスペーサ付きカラーフィルタが得られた。しかも、本発明の感光性樹脂組成物のパターン形成方法は、現像時間が短いので、現像槽の長さを短くでき、生産性の高いパターン形成方法である。
【0190】
表2の結果も合わせて考えると、本発明の感光性樹脂組成物パターンの形成方法は、ラミネート時に存在する先行パターンの影響の少ない均質な感光性樹脂組成物パターンの実現と、現像時間の短縮ないしは現像槽のスペース削減による高い生産効率とを両立させることに、有効であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法であって、
仮支持体上に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層と、少なくとも1層の感光性樹脂組成物層とを有する感光性樹脂転写材料を、基板上にラミネートする工程、
画像様の露光と仮支持体の剥離とをこの順又はこの逆順で行う工程、および
前記感光性樹脂組成物がネガ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部分の除去とを1種類の処理液で行う工程、または前記感光性樹脂組成物がポジ型である場合は、前記熱可塑性樹脂層の除去と露光後の感光性樹脂組成物層における露光部分の除去とを1種類の処理液で行う工程
を、この順に有する方法。
【請求項2】
前記処理液が、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理液に含まれる、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤の現像に使用する際の処理液における各含有量が、処理液の全量に対し、下記の範囲である請求項2に記載の方法。
有機アルカリ成分 0.5〜15質量%
無機アルカリ成分 0.2〜10質量%
アニオン系界面活性剤 0.1〜10質量%
ノニオン系界面活性剤 0.01〜2質量%
【請求項4】
前記処理液に含まれる、有機アルカリ成分、無機アルカリ成分、アニオン系界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤の現像に使用する際の処理液における各含有量が、処理液の全量に対し、下記の範囲である請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の方法。
有機アルカリ成分 1〜10質量%
無機アルカリ成分 0.5〜5質量%
アニオン系界面活性剤 0.2〜5質量%
ノニオン系界面活性剤 0.02〜1質量%
【請求項5】
前記処理液に含まれる有機アルカリ成分が、アルカノールアミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、およびアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種である請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理液に含まれる無機アルカリ成分が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が、可撓性支持体である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記可撓性支持体が、連続して搬送されるウエブ状である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記処理液が、さらに、重合性化合物、およびカルボキシ基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記重合性化合物、およびカルボキシ基を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種の化合物の、現像に使用する際の処理液における各含有量が、処理液の全量に対し、0.01質量%〜20質量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記感光性樹脂組成物が、(A)側鎖に酸性基を有する樹脂、(B)重合性化合物、および(C)光重合開始剤を含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記(A)側鎖に酸性基を有する樹脂が、さらに分岐および/または脂環構造を有する基を有する側鎖とエチレン性不飽和基を有する基とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の方法により形成されたパターン。
【請求項14】
請求項13に記載のパターンを備えるカラーフィルタ。
【請求項15】
請求項14に記載のカラーフィルタを具備する画像表示装置。

【公開番号】特開2012−252328(P2012−252328A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107665(P2012−107665)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】