説明

感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性フィルム及び永久レジスト

【課題】高感度及び優れたアルカリ現像性を両立可能な感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性フィルム及び永久レジストを提供すること。
【解決手段】(A)バインダーポリマーと、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)亜リン酸エステル化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性フィルム及び永久レジストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造業界では、従来から、プリント配線板上にソルダーレジストを形成することが行われている。このソルダーレジストは、実装部品をプリント配線板に接合するためのはんだ付け工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ役割を有している他、実装部品接合後のプリント配線板の使用時においては導体層の腐食を防止したり導体層間の電気絶縁性を保持したりする永久レジスト(永久マスク)としての役割も有している。
【0003】
ソルダーレジストの形成方法としては、例えば、プリント配線板の導体層上に熱硬化性樹脂をスクリーン印刷する方法が知られている。しかし、このような方法ではレジストパターンの高解像度化に限界があるため、近年のプリント配線板の高密度化に対応させることが困難になってきている。
【0004】
そこで、レジストパターンの高解像度化を達成するために、フォトレジスト法が盛んに用いられるようになってきている。このフォトレジスト法は、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を形成し、この感光性樹脂組成物層を所定パターンの露光により硬化させ、未露光部分を現像により除去して所定パターンの硬化膜を形成するものである。
【0005】
また、このような方法に使用される感光性樹脂組成物は、作業環境保全、地球環境保全の点から、炭酸ナトリウム水溶液等の希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型のものが主流になってきている。このような感光性樹脂組成物としては、液状レジストインキ組成物(例えば、特許文献1を参照)や、感光性熱硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献2を参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平01−141904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、さらなるプリント配線板の高密度化の観点から、マスクを必要とせず、CAD(computer−aided design)で作成したパターンをレーザー光により直接描画する方法である、LDI(laser direct imaging)方式へ対応可能な感光性硬化性樹脂組成物が望まれている。
【0008】
LDI方式では、スループット向上等の観点から、高感度の感光性樹脂組成物が必要となる。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されている従来の感光性樹脂組成物では、LDI方式に対応し得る十分な光感度を有しておらず、LDI方式へ適用が困難であった。
【0009】
感光性樹脂組成物を高感度化する手法として、例えば、光重合開始剤や増感剤の含有量、種類及び組合せ等を最適化する方法が考えられる。しかし、この手法を用いて高感度化させた場合、感光性樹脂組成物の加工中(特にラミネート工程)にかかる熱履歴により、感光性樹脂組成物の一部が反応してしまい、アルカリ現像が困難となる問題があった。また、アルカリ現像性を良好にするため、従来の重合禁止剤を添加することも考えられるが、この場合には、現像残りを防ぐことはできるが、感度が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、LDI方式に対応可能な高感度及び優れたアルカリ現像性を両立可能な感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性フィルム及び永久レジストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)バインダーポリマーと、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)亜リン酸エステル化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、LDI方式に対応可能な高感度及び優れたアルカリ現像性を両立可能である。
【0013】
ところで、ソルダーレジストには、一般的に、解像度、はんだ耐熱性、めっき耐性(耐めっき性)、温度サイクル試験(TCT)に対する耐熱衝撃性(クラック耐性)や、超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対する微細配線間での耐性(HAST耐性)も求められている。また、作業性の観点からは、感光性樹脂組成物のタック性(溶剤乾燥後の表面べとつき)が小さいことも望まれる。本発明の感光性樹脂組成物はタック性に優れ、またその硬化物は、解像度、はんだ耐熱性、耐めっき性、クラック耐性及びHAST耐性にも優れる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物においては、(D)亜リン酸エステル化合物として、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の炭化水素基を示す。
【0019】
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の炭化水素基を示す。
【0020】
式(3)中、Rは、炭素数30以下の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の2価の炭化水素基を示す。Lは、直接結合又は2価の基を示す。
【0021】
(D)亜リン酸エステル化合物が、このような化合物であると、感光性樹脂組成物の感度をより高く保つことができる。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物においては、(A)バインダーポリマーとして、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体単位として含む共重合体を含有することが好ましい。
【0023】
(A)バインダーポリマーが、このようなポリマーを含有すると、アルカリ現像性及びタック性がより一層向上する。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)熱硬化剤を更に含有することが好ましい。
【0025】
感光性樹脂組成物が、このようなものを含有すると、はんだ耐熱性、耐めっき性、クラック耐性、HAST耐性が一層向上する。
【0026】
また、本発明は、支持体と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルムを提供する。
【0027】
このような、感光性フィルムは、上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備えるため、タック性に優れ、また、LDI方式に対応可能な高感度及び優れたアルカリ現像性を両立可能であり、解像度、はんだ耐熱性、耐めっき性、クラック耐性及びHAST耐性に優れるソルダーレジストを容易に形成可能である。
【0028】
さらに、本発明は、プリント配線板用の基板上に形成された、上記感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久レジストを提供する。
【0029】
このような永久レジストは、上記感光性樹脂組成物の硬化物からなるため、解像度、はんだ耐熱性、耐めっき性、クラック耐性及びHAST耐性に優れる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、LDI方式に対応可能な高感度及び優れたアルカリ現像性を両立可能である感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性フィルム及び永久レジストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係る感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタアクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を意味する。
【0033】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマーと、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)亜リン酸エステル化合物と、を含有する。このような感光性樹脂組成物は、タック性に優れ、かつLDI方式に対応可能な高感度及び優れたアルカリ現像性を両立可能である。また、このような感光性樹脂組成物は、解像度、はんだ耐熱性、耐めっき性、クラック耐性及びHAST耐性に優れた硬化膜が形成可能である。以下、各成分について、より詳細に説明する。
【0034】
[(A)バインダーポリマー(以下、場合により「(A)成分という」)]
(A)成分としては、アルカリ水溶液に可溶で皮膜形成可能なものが好ましい。(A)成分としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。中でも、アルカリ現像性に優れる点でアクリル樹脂を含むことが好ましい。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
(A)成分としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する単量体(重合性単量体)を重合(ラジカル重合等)して得られたものが挙げられる。このようなエチレン性不飽和基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体;ジアセトンアクリルアミド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらは単独でホモポリマーとして、又は二種類以上を組み合わせてコポリマーとしても使用することができる。
【0036】
中でも、タック性及びアルカリ現像性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体単位として含む共重合体が好ましく、メタクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分として得られるビニル系共重合化合物がより好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0038】
(A)成分が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体単位として含む共重合体である場合、共重合体全量に対する(メタ)アクリル酸の単量体単位の含有量は、6〜31mol%であることが好ましく、8〜29mol%であることがより好ましく、9〜28mol%であることが更に好ましく、共重合体全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体単位の含有量は、69〜94mol%であることが好ましく、71〜92mol%であることがより好ましく、72〜91mol%であることが更に好ましい。
【0039】
(A)成分がアクリル樹脂である場合、アルカリ現像性を良好にする観点から、(A)成分の酸価は、40〜200mgKOH/gであることが好ましく、50〜190mgKOH/gであることがより好ましく、60〜180mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0040】
ここで、酸価は、次のようにして測定することができる。まず、酸価を測定すべき樹脂の溶液約1gを精秤した後、この樹脂溶液にアセトンを30g添加し、これを溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式(α)により酸価を算出する。
【0041】
A=10×Vf×56.1/(Wp×I) …(α)
式(α)中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは測定した樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0042】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、感光性樹脂組成物のタック性及びアルカリ現像性を良好にする観点から、5000〜200000であることが好ましく、10000〜170000であることがより好ましく、20000〜150000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレンによる換算を行うことにより測定できる。
【0043】
上記感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の有機化合物固形分全量を基準として、20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
【0044】
[(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、場合により「B成分」という)]
(B)成分としては、光架橋可能であれば特に制限はないが、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられる。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO及びPO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
【0047】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
【0048】
上述の化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)は、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0049】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニルが挙げられる。なお、このような化合物を得るためのα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0050】
ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物が挙げられる。また、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO及び/又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等も使用できる。
【0051】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられる。
【0052】
環境への負荷を低減する観点からは、上述の(B)成分の中でも、ハロゲンフリーのものが好ましい。
【0053】
(B)成分の含有量は、感度及び解像度に優れる点では、感光性樹脂組成物の有機化合物固形分全量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、タック性に優れる点では、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
[(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)]
(C)成分としては、使用する露光機の光波長と、(C)成分の機能発現に必要な波長とがあうものを選択すれば、特に制限はないが、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
例えば、感光性樹脂組成物を405nm付近に波長域をもつ活性光線の露光によって硬化させる場合、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1と1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンとを組み合わせて使用すると、より少ない露光量で硬化させることができるため、好ましい。また、9−フェニルアクリジンを1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンの代わりに用いても同様に好ましい。
【0056】
(C)成分の含有量は、光感度が一層良好となる観点から、感光性樹脂組成物の有機化合物固形分全量を基準として0.1〜15質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0057】
[(D)亜リン酸エステル化合物(以下、場合により「(D)成分」という)]
(D)成分は、亜リン酸エステル化合物である。中でも、(D)成分は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。(D)成分がこのような成分を含むと、感光性樹脂組成物の感度をより高く保つことができる。
【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の炭化水素基を示す。
【0062】
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の炭化水素基を示す。
【0063】
式(3)中、Rは、炭素数30以下の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の2価の炭化水素基を示す。Lは、直接結合又は2価の基を示す。
【0064】
〜Rで示される炭素数30以下の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基が挙げられる。なお、当該フェニル基は1種又は複数種の置換基を有してもよい。
【0065】
炭素数30以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0066】
フェニル基が有する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0067】
置換基を有するフェニル基の、具体例としては、例えば、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジプロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ジイソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、アミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、イソオクチルフェニル基、2−エチルヘキシルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、イソデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、テトラデシルフェニル基、ヘキサデシルフェニル基、オクタデシルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルメチルフェニル基が挙げられる。
【0068】
及びRで示される炭素数30以下の2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30のアルキレン基、フェニレン基が挙げられる。なお、当該フェニレン基は1種又は複数種の置換基を有してもよい。
【0069】
炭素数30以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、イソデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基が挙げられる。
【0070】
フェニレン基が有する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0071】
における2価の基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基が挙げられる。
【0072】
式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。
【0073】
式(1)で表される化合物においては、R、R及びRのうちの少なくとも2つは、置換基を有してもよいフェニル基であることが好ましく、当該フェニル基は、置換基として、少なくとも2つのtert−ブチル基を有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記構造式で表されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。
【0074】
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:
【化7】

【0075】
式(2)で表される化合物としては、例えば、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0076】
式(2)で表される化合物において、R及びRは、置換基を有してもよいフェニル基であることが好ましく、当該フェニル基は、置換基として、少なくとも2つのtert−ブチル基を有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記構造式で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0077】
ビス(2,6−ジ−tert−ブチル4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト:
【化8】

【0078】
式(3)で表される化合物においては、Rがアルキル基であり、R及びRが、置換基を有してもよいフェニレン基であることが好ましい。なお、当該フェニレン基は、置換基として、少なくとも2つのtert−ブチル基を有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記構造式で表される2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[(2−エチルヘキサン−1−イル)オキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシンが挙げられる。
【0079】
2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[(2−エチルヘキサン−1−イル)オキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン:
【化9】

【0080】
(D)成分は、市販品を利用することもできる。このような市販品としては、例えば、ADEKA株式会社製のPEP−8、PEP−36、HP−10、2112等や、城北化学株式会社製のJPM−308、JPM−311、JPM−313、JPP−13、JPP−31などが挙げられる。
【0081】
(D)成分は、上述の化合物を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
(D)成分の含有量は、アルカリ現像性に優れる点では、感光性樹脂組成物の有機化合物固形分全量を基準として0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、光感度に優れる点では、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0083】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述の(A)〜(D)成分に加えて、(E)熱硬化剤(以下、場合により「(E)成分」という)を更に含有することが好ましい。感光性樹脂組成物が、このような成分を含有するとはんだ耐熱性、耐めっき性、クラック耐性、HAST耐性が一層向上する。
【0084】
(E)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性の化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型三級脂肪酸変性ポリオールエポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等のジグリシジルアミン類が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
また、(E)成分として、潜在性の熱硬化剤であるブロックイソシアネート化合物を使用することもできる。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0086】
ここで、ブロック剤によりブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4−ジフェニルメタンジシソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。中でも、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0087】
保存安定性及びHAST耐性に一層優れる観点から、(E)成分としては、スミジュールBL−3175(住友バイエルウレタン社製、商品名)を含有することが好ましい。
【0088】
上記感光性樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、はんだ耐熱性及び絶縁信頼性に優れる点では、感光性樹脂組成物の有機化合物固形分全量を基準として5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、タック性に優れる点では、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系及びアゾ系等の有機顔料、二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、前記した充填剤、有機顔料又は無機顔料等の湿潤分散剤、難燃剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤などを含有させることができる。これらの成分を含有する場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の有機化合物固形分全量を基準として0.01〜70質量%程度であることが好ましい。またこれらの成分は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0091】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、例えば、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布してから乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して使用することができる。本実施形態の感光性樹脂組成物はまた、後述する感光性フィルムの形態で使用することもできる。
【0092】
(感光性フィルム)
次に、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルムについて説明する。図1は、本実施形態に係る感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上の支持体10とは反対側の面上に設けられた保護フィルム30と、を備える。感光性樹脂組成物層20は、本実施形態の感光性樹脂組成物からなる層である。なお、図1に示す感光性フィルム1は、保護フィルム30を備えるが、保護フィルム30はあってもなくてもよい。
【0093】
感光性樹脂組成物層20は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体10上に塗布して形成することが好ましい。
【0094】
感光性樹脂組成物層20の厚みは、用途により異なるが、工業的な塗工に優れる点では、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。また、本発明により奏される上述の効果が一層大きくなるとともに、解像度及び可とう性に優れる点では、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。
【0095】
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。
【0096】
支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みを5μm以上とすることで現像前に支持体を剥離する際に当該支持体が破れにくくなる傾向があり、また、100μm以下とすることで解像度及び可撓性がより良好となる傾向がある。
【0097】
保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。また、保護フィルム30の厚みは、通常、10〜50μm程度である。
【0098】
支持体10と感光性樹脂組成物層20の2層からなる感光性フィルム、又は、支持体10と感光性樹脂組成物層20と保護フィルム30の3層からなる感光性フィルムは、そのまま貯蔵してもよく、巻芯にロール状に巻き取って保管してもよい。
【0099】
感光性フィルム1は、レジストパターンの形成に用いることができる。レジストパターンは、例えば、感光性フィルム1を回路形成用基板上に積層する積層工程と、活性光線を感光性樹脂組成物層の所定部分に照射して、感光性樹脂組成物層に硬化部を形成させる露光工程と、該硬化部以外の感光性樹脂組成物層を除去する現像工程と、を備える製造方法により製造することができる。
【0100】
上記レジストパターンの製造方法は、感光性フィルム1が保護フィルム30を有する場合、感光性フィルム1から保護フィルム30を除去する除去工程を、積層工程の前に更に備える。また、上記積層工程においては、感光性樹脂組成物層の支持体とは反対側の面と回路形成用基板とが接するように積層する。すなわち、感光性フィルム1を、回路基板上に感光性樹脂組成物層20、支持体10の順に積層されるように、積層する。
【0101】
上記回路形成用基板とは、絶縁層と、絶縁層上に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる)とを備えた基板をいう。
【0102】
上記積層工程における積層方法としては、例えば、感光性樹脂組成物層を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより積層する方法が挙げられる。このようにして積層する場合、密着性及び追従性等の見地から減圧下で積層することが好ましい。積層される表面は、通常、回路形成用基板の導電体層の面であるが、当該導電体層以外の面であってもよい。
【0103】
ここで、感光性樹脂組成物層の加熱温度は50〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa以下とすることがより好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光性樹脂組成物層を前記のように50〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必ずしも必要ではないが、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0104】
このようにして積層が完了した後、露光工程において感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して硬化部を形成させる。硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。また、LDI方式、DLP(Digital Light Processing)露光法等のマスクパターンを有さない直接描画法による露光も可能である。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持体が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができる。支持体が不透明の場合には、支持体を除去した後に感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する。
【0105】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、半導体レーザー等の紫外線を有効に放射する光源を使用することができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射する光源を使用することもできる。
【0106】
次いで、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去した後、現像工程において、ウエット現像、ドライ現像等で硬化部以外の感光性樹脂組成物層を除去して現像し、レジストパターンを形成させる。
【0107】
ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像することができる。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等が用いられる。
【0108】
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、例えば、プリント配線板のソルダーレジストとして使用する場合は、前記現像工程終了後、ソルダーレジストとしてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射やオーブンによる加熱を行うことが好ましい。
【0109】
紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば、0.2〜10J/cm程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに、紫外線照射と加熱とを両方実施してもよく、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。
【0110】
また、前記の形成方法により得られたレジストパターンはプリント配線板上に形成される永久レジストとして使用されると好ましい。本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜は、優れた信頼性を有するので、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ねる、プリント配線板の永久レジストとして有効である。
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
[感光性フィルムの作製]
以下の表1に示す各成分を、同表に示す固形分の配合比(質量基準)で混合することにより、感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、下記表1に示す各成分の詳細については、以下のとおりである。また、これらの感光性樹脂組成物には、希釈剤としてメチルエチルケトンを加えた。
【0114】
<(A)成分:バインダーポリマー>
アクリル樹脂:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの共重合体(17質量%/62質量%/21質量%、重量平均分子量100000、酸価110mgKOH/g)
【0115】
<(B)成分:エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物>
(B−1):ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名BPE−10)
(B−2):トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名TMPT)
【0116】
<(C)成分:光重合開始剤>
(C−1):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名I−369)
(C−2):1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン(ADEKA株式会社製、商品名N−1717)
【0117】
<(D)成分:亜リン酸エステル化合物>
(D−1):ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA株式会社製、商品名PEP−36)
(D−2):2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[(2−エチルヘキサン−1−イル)オキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン(ADEKA株式会社製、商品名HP−10)
(D−3):トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA株式会社製、商品名2112)
【0118】
ここで、(D−1)〜(D−3)は、下記式で表される化合物である。なお、(D−1)は、上記式(2)で表される化合物に相当し、(D−2)は、上記式(3)で表される化合物に相当し、(D−3)は、上記式(1)で表される化合物に相当する。
【0119】
【化10】

【0120】
【化11】

【0121】
【化12】

【0122】
<(E)成分:熱硬化剤>
BL−3175:ブロック型イソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製、商品名スミジュールBL−3175)
【0123】
<その他の成分>
AW−500:フェノール系重合禁止剤(川口化学工業株式会社製、商品名アンテージW500)
B-30:硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、商品名バリエースB30)
【0124】
【表1】

【0125】
ここで、表1中の値は、各成分の固形分の配合比である。また、表中記号「−」は、該当する成分を含有していないことを示す。
【0126】
次に、これらの感光性樹脂組成物の溶液を、それぞれ支持体である16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名G2−16)上に均一に塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥することにより、支持体上に感光性樹脂組成物層を形成した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、30μmであった。
【0127】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持層と接している側と反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名NF−15)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルムを得た。
【0128】
[特性評価]
実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した感光性フィルムを用いて、それぞれ以下の各試験を行い、各感光性フィルムを用いた場合のタック性、耐めっき性、はんだ耐熱性、クラック耐性、HAST耐性、及び解像度について評価した。結果を表2に示す。
【0129】
(タック性)
まず、各感光性フィルムを用いて、以下のようにして評価用基板を作製した。すなわち、まず、12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業株式会社製、商品名E−679)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗した後、乾燥した。このプリント配線板用基板上にプレス式真空ラミネータ(株式会社名機製作所製、商品名MVLP−500)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、感光性フィルムのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。評価用積層体に対し、露光を行わずに、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、その塗膜表面に指を軽く押し付け、指に対する張り付き程度を次の基準で評価した。すなわち、指に対する張り付きが認められない、又は、ほとんど認められないものは「A」とし、指に対する張り付きが若干認められるものは「B」とし、指に対する張り付きが顕著なものは「C」とした。
【0130】
(エネルギー量、アルカリ現像性)
ラミネート後の評価用積層体を、常温(25℃)で1時間静置した後、405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス株式会社製、製品名DE−1AH)を用いて、前記評価用積層体の上から、格子状のパターンを有する描画データを使用し、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が6となるエネルギー量で露光を行った。それぞれの評価用積層体に照射したエネルギー量は表2中に記載した。なおエネルギー量が少ないほど、高感度な感光性樹脂組成物であることを意味する。
【0131】
露光後、評価用積層体上のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最少現像時間(未露光部が現像される最少時間)の1.7倍の時間でスプレー現像を行った。これにより、感光性樹脂組成物層が硬化されてなるパターンを形成した。
【0132】
パターン形成された基板を目視で観察し、未露光部が現像で完全に除去されているものは「A」とし、未露光部が現像で完全に除去できず現像残りがある場合は「C」とした。
【0133】
(解像度)
ラミネート後の評価用積層体を、常温で1時間静置した後、405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス株式会社製、製品名DE−1AH)を用いて、前記評価用積層体の上から、ライン幅/スペース幅が6/6〜47/47(単位:μm)の配線パターンを有する描画データを使用し、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が6となるエネルギー量で露光した。
【0134】
露光後の評価用積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最少現像時間(未露光部が除去される最少時間)の1.7倍の時間でスプレー現像を行い、未露光部を除去して解像度の評価を行った。解像度の値は、現像処理によって未露光部を完全に除去できたスペース幅(μm)のうち最も小さい値で表され、この数値が小さい程、解像度が高いことを示す。
【0135】
(耐めっき性)
上記パターン形成後の評価用積層体を用いて、株式会社オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、さらに、160℃で60分間加熱処理を行うことにより、プリント配線板用基板上にソルダーレジストが形成された評価用基板を得た。
【0136】
上記評価用基板に対し、無電解ニッケルめっき(上村工業株式会社製、商品名ニムデンNPR−4)を施し(15分間処理)、さらに、無電解金めっき(上村工業株式会社製、商品名ゴブライトTAM−55)を施した(10分間処理)。
【0137】
このようにしてめっきが施された評価用基板に対し、ソルダーレジスト底部へのめっき液の染み込み並びに基板からのソルダーレジストの浮き及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジスト底部への染み込みが認められず、ソルダーレジストの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「C」とした。また、ソルダーレジスト底部へ僅かに染み込みが認められるものの実用上全く問題ないものは実施例間での差を明らかにするために「B」とした。
【0138】
(はんだ耐熱性)
上述の「耐めっき性」試験と同様にして得られたソルダーレジストを有する評価用基板を用い、以下のようにしてはんだ耐熱性の評価を行った。すなわち、評価用基板に対し、ロジン系フラックス(タムラ化研株式会社製、商品名MH−820V)を塗布した後、288℃のはんだ浴中に30秒間浸漬するはんだ処理を行った。
【0139】
このようにしてはんだめっきを施された評価用基板上のソルダーレジストのクラック発生状況並びに基板からのソルダーレジストの浮き程度及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察した。その結果を、次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジストのクラックの発生が認められず、ソルダーレジストの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「C」とした。
【0140】
(クラック耐性)
前記「耐めっき性」試験と同様にして得られたソルダーレジストを有する評価用基板に対し、−55℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、125℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルを200回繰り返す試験を行った。
【0141】
試験後、評価用基板のソルダーレジスト(永久レジスト膜)のクラック及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジストのクラック及び剥離を観察できなかったものは「A」とし、それらのいずれかを確認できたものは「C」とした。
【0142】
(HAST耐性)
まず、12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業(株)製、商品名E−679)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが50μm/50μmのくし型電極に加工した。これを、評価用配線板とした。
【0143】
この評価用配線板におけるくし型電極上に、前記「耐めっき性」試験と同様にしてレジストの硬化物からなるソルダーレジストを形成し、これを評価用基板とした。この評価用基板を、130℃/85%/5Vの条件で超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に100時間晒した。試験後、各評価用基板におけるマイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジスト(永久レジスト膜)に大きなマイグレーションが発生しなかったものは「A」とし、大きくマイグレーションが発生したものは「C」とした。マイグレーションとは、銅電極からソルダーレジストへ銅が溶出し、析出することにより、電極周辺のソルダーレジストの変色や絶縁抵抗の低下が起こる現象である。
【0144】
【表2】

【0145】
ここで、表2中、比較例1及び2では、アルカリ現像が困難であったため、その後の工程における特性評価は行っていない。
【0146】
表2中、比較例1〜3に示されるように、高感度の感光性樹脂組成物においては、アルカリ現像性に優れることが1つの課題となるが、実施例1〜3の感光性樹脂組成物によれば、高感度のまま優れたアルカリ現像性を有するほか、タック性、耐めっき性、はんだ耐熱性、クラック耐性、及びHAST耐性に優れた感光性樹脂組成物が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0147】
1…感光性フィルム、10…支持体、20…感光性樹脂組成物層、30…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマーと、
(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)亜リン酸エステル化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)亜リン酸エステル化合物として、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】


【化2】


【化3】


[式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の炭化水素基を示す。]
[式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の炭化水素基を示す。]
[式(3)中、Rは、炭素数30以下の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数30以下の2価の炭化水素基を示す。Lは、直接結合又は2価の基を示す。]
【請求項3】
(A)バインダーポリマーとして、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体単位として含む共重合体を含有する、請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)熱硬化剤を更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルム。
【請求項6】
プリント配線板用の基板上に形成された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久レジスト。

【図1】
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【公開番号】特開2011−170098(P2011−170098A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33772(P2010−33772)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】