説明

感光性樹脂組成物

【課題】優れた塗布性と優れた撥インク性とを併せ持つ感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、フッ素系界面活性剤(C)と、を含有し、前記フッ素系界面活性剤(C)は、フッ素化アルケニル基と親媒性基とを側鎖に有する。フッ素系界面活性剤(C)としては、質量平均分子量が5000〜30000の重合体が好ましく、フッ素化アルケニル基としては、パーフルオロアルケニル基であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示体は、互いに対向して対となる電極が形成された2枚の基板の間に、液晶層を挟む構造となっている。そして、一方の基板の内側には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)等の各色からなる画素領域を有するカラーフィルタが形成されている。このカラーフィルタでは、通常、コントラスト向上や光漏れ防止等のため、R、G、B各色の画素領域を区画するようにマトリクス状に配されたブラックマトリクスが形成されている。
【0003】
従来は、カラーフィルタは、リソグラフィ法によりブラックマトリクスを形成し、当該ブラックマトリクスによって区画された各領域に、R、G、B各色の感光性樹脂組成物毎に、塗布、露光、現像を繰り返すことで、各色のパターンを所定の位置に形成することで製造されてきた。近年は、生産性を向上させるために、インクジェット方式でカラーフィルタを製造する方法が検討されている。このインクジェット方式では、形成したブラックマトリクスによって区画された各領域にR、G、B各色のインクをインクジェットノズルから吐出し、溜められたインクを熱又は光で硬化させることにより、カラーフィルタを製造する。
【0004】
ところで、このインクジェット方式においてブラックマトリクスを形成するために用いられる感光性樹脂組成物には、隣接する画素領域間でのインクの混色等を防止するため、水やキシレン等のインク溶剤に対する撥溶剤性である、いわゆる撥インク性が要求されている。
【0005】
このような撥インク性を有する感光性樹脂組成物として、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(ただし、上記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を有する重合単位と、エチレン性二重結合を有する重合単位とを有する重合体からなる撥インク剤を含有させたネガ型感光性樹脂組成物(特許文献1)等が提案されている。このネガ型感光性樹脂組成物では、撥インク剤のフッ素化アルキル基によって撥インク性が得られる。また、撥インク剤がエチレン性二重結合を有する重合単位を有しているため、光照射によって硬化し、撥インク性が持続する。
【特許文献1】国際公開第2004/042474号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているネガ型感光性樹脂組成物は、優れた撥インク性を奏するが、塗布性に問題を有する。本発明者らは塗布性を向上するために、塗布性を向上するのに有効と考えられている界面活性剤を添加することに思い至った。そこで、撥インク剤をパーフルオロアルキル基含有フッ素系界面活性剤に置き換えた感光性樹脂組成物を開発したところ、塗布性は向上したが、撥インク性に問題を有することが判明した。
【0007】
本発明は、以上の課題にかんがみてなされたものであり、優れた塗布性と優れた撥インク性とを併せ持つ感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の構造を有するフッ素系界面活性剤を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
本発明は、光重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、フッ素系界面活性剤(C)と、を含有する感光性樹脂組成物であって、前記フッ素系界面活性剤(C)は、フッ素化アルケニル基と親媒性基とを側鎖に有する感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、優れた塗布性と優れた撥インク性とを併せ持つ。このため、例えばカラーフィルタのブラックマトリクスに代表される枠組み(格子状構造物)を形成する際の使用に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、フッ素系界面活性剤(C)と、を含有するものである。以下、それぞれの成分について説明する。
【0012】
[光重合性化合物(A)]
光重合性化合物(A)は、紫外線等の光の照射を受けて重合し、硬化する物質である。光重合性化合物(A)としては、エチレン性不飽和基を有する樹脂又はモノマーが好ましく、これらを組み合わせることがより好ましい。エチレン性不飽和基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有するモノマーとを組み合わせることにより、硬化性を向上させ、パターン形成を容易にすることができる。なお、本明細書では、エチレン性不飽和基を有する化合物のうち、質量平均分子量が1000以上のものを「エチレン性不飽和基を有する樹脂」と称し、質量平均分子量が1000未満のものを「エチレン性不飽和基を有するモノマー」と称することとする。
【0013】
≪エチレン性不飽和基を有する樹脂≫
エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を用いることができる。
【0014】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、エポキシ化合物(a1)と、エチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)との反応物を、さらに多塩基酸無水物(a3)と反応させることにより得られる樹脂を好ましく用いることができる。
【0015】
<エポキシ化合物(a1)>
エポキシ化合物(a1)としては、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾール型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニル型エポキシ樹脂は、主鎖に下記式(a1−1)で表されるビフェニル骨格を1つ以上有し、エポキシ基を1つ以上有している。また、エポキシ化合物(a1)としては、エポキシ基を2つ以上有するものが好ましい。このエポキシ化合物(a1)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0016】
【化1】

【0017】
式(a1−1)中、複数のR1aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいフェニル基を示し、lは1〜4の整数を示す。
【0018】
ビフェニル型エポキシ樹脂のうち、下記式(a1−2)で表されるエポキシ樹脂が好ましく用いられ、特に下記式(a1−3)で表されるエポキシ樹脂が好ましく用いられる。式(a1−3)のエポキシ樹脂を用いることにより、感度及び溶解性のバランスに優れ、さらには画素エッジのシャープ性、密着性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
【化2】

【0020】
式(a1−2)、(a1−3)中、複数のR2aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいフェニル基を示し、pは1〜4の整数を示す。qは平均値であって0〜10の数を示し、1未満であることが好ましい。
【0021】
また、ビフェニル型エポキシ樹脂のうち、下記式(a1−4)で表されるエポキシ樹脂も好ましく用いられる。式(a1−4)のエポキシ樹脂を用いることにより、感度及び溶解性のバランスに優れ、さらには画素エッジのシャープ性、密着性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
【化3】

【0023】
式(a1−4)中、複数のR3aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいフェニル基を示す。rは平均値であって0〜10の数を示し、1未満であることが好ましい。
【0024】
<エチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)>
エチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)としては、分子中にアクリル基やメタクリル基等の反応性のエチレン性二重結合を含有するモノカルボン酸化合物が好ましい。このようなエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸等が挙げられる。このエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)とを反応させる方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)とを、トリエチルアミン、ベンジルエチルアミン等の3級アミン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ピリジン、トリフェニルホスフィン等を触媒として、有機溶剤中、反応温度50〜150℃で数〜数十時間反応させる方法が挙げられる。
【0026】
エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)との反応における使用量比は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ当量とエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)のカルボン酸当量との比で、通常1:0.5〜1:2、好ましくは1:0.8〜1:1.25、より好ましくは1:1である。上記の範囲とすることにより、架橋効率が向上する傾向があり好ましい。
【0027】
<多塩基酸無水物(a3)>
多塩基酸無水物(a3)は、2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸の無水物であって、ベンゼン環を少なくとも2個有する化合物を含む。このような多塩基酸無水物(a3)としては、例えば、下記式(a3−1)で表されるようなビフェニル骨格を有する酸無水物、下記式(a3−2)で表されるような2個のベンゼン環が有機基で結合された酸無水物が挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
式(a3−2)中、R4aは炭素数1〜10の置換基を有してもよいアルキレン基を示す。
【0030】
上記2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸の無水物を用いることにより、光重合性化合物(A)中に、ベンゼン環を少なくとも2個導入することができる。
【0031】
また、多塩基酸無水物(a3)は、上記ベンゼン環を少なくとも2個有する酸無水物のほかに、他の多塩基酸無水物を含んでいてもよい。他の多塩基酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−エチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−エチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。これらの多塩基酸無水物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)とを反応させた後、さらに多塩基酸無水物(a3)を反応させる方法としては、公知の方法を用いることができる。また、使用量比は、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)との反応物中のOH基のモル数と、多塩基酸無水物(a3)の酸無水物基の当量比で、通常1:1〜1:0.1であり、好ましくは1:0.8〜1:0.2である。上記の範囲とすることにより、現像液への溶解性が適度となる傾向があり好ましい。
【0033】
エポキシ化合物(a1)と、エチレン性不飽和基含有カルボン酸化合物(a2)との反応物を、さらに多塩基酸無水物(a3)と反応させることにより得られる樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは70〜110mgKOH/gである。樹脂の酸価を10mgKOH/g以上にすることにより現像液に対する充分な溶解性が得られ、また150mgKOH/g以下にすることにより充分な硬化性を得ることができ、表面性を良好にすることができる。
【0034】
また、樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、より好ましくは2000〜30000である。質量平均分子量を1000以上にすることにより耐熱性、膜強度を向上させることができ、また40000以下にすることにより現像液に対する十分な溶解性を得ることができる。
【0035】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、分子内にカルド構造を有する樹脂を好ましく用いることができる。カルド構造を有する樹脂は耐熱性や耐薬品性が高いため、光重合性化合物(A)に用いることによって感光性樹脂組成物の耐熱性及び耐薬品性を向上させることができる。例えば、下記式(a4−1)で表される樹脂を好ましく用いることができる。
【0036】
【化5】

【0037】
式(a4−1)中、Xは下記式(a4−2)で示される基である。
【0038】
【化6】

【0039】
また、式(a4−1)中、Yは無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等のジカルボン酸無水物からカルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基である。
【0040】
また、式(a4−1)中、Zは無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物から2個のカルボン酸無水物基を除いた残基である。
また、式(a4−1)中、sは0〜20の整数である。
【0041】
≪エチレン性不飽和基を有するモノマー≫
エチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート等と2−ビドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
このエチレン性不飽和基を有するモノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲である。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向があり、好ましい。
【0044】
光重合性化合物(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲である。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向があり、好ましい。
【0045】
[光重合開始剤(B)]
光重合開始剤(B)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等が挙げられる。中でも、オキシム系の光重合開始剤を用いることが、感度の面で特に好ましい。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
光重合開始剤(B)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、光硬化不良を抑制することができる。
【0047】
[フッ素系界面活性剤(C)]
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有されるフッ素系界面活性剤(C)は、フッ素化アルケニル基と親媒性基とを側鎖に有する重合体である。
【0048】
フッ素系界面活性剤(C)がフッ素化アルケニル基を含むことにより、フッ素化アルキル基を含む場合と比較して、高い撥液性を奏する。
【0049】
フッ素化アルケニル基の炭素数は2〜20が好ましく、炭素数6〜10のフッ素化アルケニル基であることがより好ましい(トランス体及びシス体を包含するものとする。)。具体的には、パーフルオロ−2−ヘキセン−2−イル基、パーフルオロ−2−ヘプテン−2−イル基、パーフルオロ−(2−,3,又は4−)オクテン−2−イル基、パーフルオロ−(2−,3−,又は4−)ノネン−2−イル基、パーフルオロ−(2−,3−,又は4−)デセン−2−イル基、パーフルオロ−2−エチル−1−ブテン−1−イル基、パーフルオロ−4−メチル−3−イソプロピル−2−ペンテン−2−イル基、パーフルオロ(2−イソプロピル−1,3−ジメチル−1−ブテニル)基、パーフルオロ(1−エチル−2−メチル−1−プロペニル)基、パーフルオロ−2−メチル−2−ペンテン−3−イル基等が挙げられる。
これらの中でも、分岐鎖状であることがより好ましい。分岐鎖状であることにより、撥液性が向上する。さらに、フッ素化の割合については、アルケニル基中の水素原子の25%以上がフッ素原子に置換されていることが好ましく、50%以上がフッ素原子に置換されていることが好ましく、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルケニル基であることが特に好ましい。
【0050】
このようなフッ素化アルケニル基のうち、特に下記(c1−1)又は(c1−2)で表されるものが好ましい。
【0051】
【化7】

【0052】
このようなフッ素化アルケニル基を含むモノマーとしては、下記式(c1−3)で表されるモノマー(以下、「モノマー(c1)」ともいう。)が好ましい。フッ素系界面活性剤(C)がこのようなモノマー(c1)を繰り返し単位として有する重合体であることにより、高い撥インク性を奏することができる。
【0053】
【化8】

【0054】
式(c1−3)中、R1cは水素原子又はメチル基を示し、Rfは上述したフッ素化アルケニル基を示す。R2cは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0055】
親媒性基としては、従来公知のノニオン系界面活性剤に含まれるものが挙げられるが、エーテル結合、エステル結合、又はカルボニル基により中断されたアルキレン基を含むものが好ましい。その中でも、ポリアルキレンオキシ基(ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリブチレンオキシ基等)を含むものが好ましい。
【0056】
フッ素系界面活性剤(C)は、上記フッ素化アルケニル基を有するモノマーと上記親媒性基を有するモノマーとを少なくとも重合させることにより得ることができる。親媒性基を有するモノマーとしては、エチレン性不飽和基及び下記式(c2−1)で表される構造を有するモノマー(以下、「モノマー(c2)」ともいう。)が好ましい。
【0057】
【化9】

【0058】
このモノマー(c2)は、エチレン性不飽和基及び下記式(c2−2)で表される構造を有するものがより好ましい。
【0059】
【化10】

【0060】
式(c2−1)、(c2−2)中、R3cは炭素数1〜5のアルキレン基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、エチレン基が最も好ましい。R4cは水素原子、水酸基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。上記置換基としては、カルボキシル基、水酸基、炭素数1〜5のアルコキシ基等が挙げられる。xは1以上の整数を示し、1〜60の整数が好ましく、1〜12の整数がより好ましい。
【0061】
このようなモノマー(c2)としては、下記式(c2−3)で表される化合物等が挙げられる。これらのモノマー(c2)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
【化11】

【0063】
式(c2−3)中、R5cは水素原子又はメチル基を示す。R3c、R4c、xは上記式(c2−1)、(c2−2)と同義である。
【0064】
フッ素系界面活性剤(C)におけるフッ素化アルケニル基と親媒性基とのモル比、すなわち上記フッ素化アルケニル基を有するモノマー(c1)と上記親媒性基を有するモノマー(c2)とのモル比は、1:99〜50:50が好ましく、1:99〜25:75がより好ましく、5:95〜25:75が最も好ましい。
【0065】
これらの中でも、上記式(c1−3)におけるRfがパーフルオロアルケニル基であるモノマー(c1)と上記モノマー(c2)とを重合させたフッ素系界面活性剤が好ましく、その具体例としては、フタージェント730FL(上記式(c1−3)におけるRfが上記式(c1−1)で表されるアクリルモノマー:上記式(c2−3)においてエチレンオキサイド基を有するアクリルモノマー=3:97(モル比))、フタージェント710FL(上記式(c1−3)におけるRfが上記式(c1−1)で表されるアクリルモノマー:上記式(c2−3)においてエチレンオキサイド基を有するアクリルモノマー=9:91(モル比))、フタージェント703FL(上記式(c1−3)におけるRfが上記式(c1−1)で表されるアクリルモノマー:上記式(c2−3)においてエチレンオキサイド基を有するアクリルモノマー(c1)=25:75(モル比))(いずれも株式会社ネオス製)等が挙げられる。
【0066】
このフッ素系界面活性剤(C)は、ランダム重合体、ブロック重合体、及びグラフト重合体のいずれであってもよいが、グラフト重合体であることが好ましい。グラフト重合体とすることにより、光重合性化合物(A)との相溶性を保ちながら、塗布性をより高めることができる。また、グラフト重合体の場合には、含有量を増やしても白濁する虞が少ない。
【0067】
このフッ素系界面活性剤(C)の質量平均分子量は、5000〜30000が好ましく、10000〜20000がより好ましい。また、フッ素系界面活性剤(C)の含有量は、光重合性化合物(A)に対して1000〜20000質量ppmであることが好ましく、2000〜8000質量ppmであることがより好ましい。上記の範囲のような少ない添加量でも、撥インク性に優れた感光性樹脂層を得ることができる。
【0068】
なお、本発明に係る感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の他の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0069】
[着色剤(D)]
本発明に係る感光性樹脂組成物は、着色剤を含有させてもよい。着色剤(D)としては、カーボンブラックやチタンブラック等の遮光剤が挙げられる。また、Cu、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、V、Zn、Se、Mg、Ca、Sr、Ba、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Pb、Bi、Si及びAl等の各種金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、又は金属炭酸塩等の無機顔料も用いることができる。
【0070】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができるが、特にチャンネルブラックは遮光性に優れることから好適に用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを用いることもできる。具体的には、カーボンブラックとカーボンブラック表面に存在するカルボキシル基、水酸基、カルボニル基と反応性を有する樹脂とを混合し、50〜380度で加熱して得た樹脂被覆カーボンブラックや、水−有機溶剤混合系又は水−界面活性剤混合系にエチレン性モノマーを分散し、重合開始剤の存在下でラジカル重合又はラジカル共重合させて得た樹脂被覆カーボンブラック等が挙げられる。この樹脂被覆カーボンブラックは樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタとして用いた場合に電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力のディスプレイが形成できる。
【0071】
着色剤として、上記の無機顔料に補助顔料として有機顔料を加えてもよい。有機顔料は無機顔料の補色を呈するものを適切に選択して加えることにより、次のような効果が得られる。例えば、カーボンブラックは赤みがかった黒色を呈する。したがって、カーボンブラックに補助顔料として赤色の補色である青色を呈する有機顔料を加えることにより、カーボンブラックの赤みが消え、全体としてより好ましい黒色を呈する。有機顔料は、無機顔料と有機顔料との合計に対して10〜80質量%の範囲で用いると好ましく、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲である。
【0072】
上記の無機顔料及び有機顔料としては、分散剤を用いて顔料を適当な濃度で分散させた溶液を用いることができる。例えば、無機顔料としては、御国色素社製のカーボン分散液CFブラック(カーボン濃度20%含有)、御国色素社製のカーボン分散液CFブラック(高抵抗カーボン24%含有)、御国色素社製のチタンブラック分散液CFブラック(黒チタン顔料20%含有)を挙げることができる。また、有機顔料としては、例えば、御国色素社製のブルー顔料分散液CFブルー(ブルー顔料20%含有)、御国色素社製のバイオレット顔料分散液(バイオレット顔料10%含有)等を挙げることができる。また、分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤が好ましく用いられる。
【0073】
着色剤(D)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して10〜70質量%であることが好ましい。含有量を70質量%以下にすることにより光硬化不良を抑制することができ、また10質量%以上にすることにより十分な遮光性を得ることができる。また、着色剤の濃度は、後述するように本発明の感光性樹脂組成物を用いてブラックマトリクスを成膜した際に、膜厚1μmあたりのOD(Optical Density)値が1.5以上となるように調整することが好ましい。膜厚1μmあたりのOD値が1.5以上あれば、液晶ディスプレイのブラックマトリクスに用いた場合に、十分なコントラストを得ることができる。
【0074】
[溶剤(S)]
本発明に係る感光性樹脂組成物は、希釈のための溶剤を含むことが好ましい。この溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
溶剤(S)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して50〜500質量部であることが好ましい。
【0076】
[その他の成分]
本発明に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を含有させることができる。添加剤としては、熱重合禁止剤、消泡剤、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、光増感剤、分散剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等が挙げられる。
【0077】
[感光性樹脂組成物の調製方法]
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記各成分を全て撹拌機で混合することにより得られる。なお、得られた混合物が均一なものとなるようフィルタを用いて濾過してもよい。
【0078】
[本発明に係る感光性樹脂組成物の適用例]
上述のように、本発明に係る感光性樹脂組成物は優れた塗布性と優れた撥インク性とを併せ持つため、例えばカラーフィルタのブラックマトリクスに代表される枠組み(格子状構造物)を形成する際の使用に適している。そこで、一適用例として、本発明に係る感光性樹脂組成物を使用したカラーフィルタの製造方法について以下に記載する。
【0079】
〔カラーフィルタの製造方法〕
先ず、本発明に係る感光性樹脂組成物をロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて基板上に塗布する。基板は、光透過性を有する基板が用いられる。
【0080】
次いで、塗布された感光性樹脂組成物を乾燥させて塗膜を形成する。乾燥方法は特に限定されず、例えば(1)ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間乾燥する方法、(2)室温にて数時間〜数日放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分〜数時間入れて溶剤を除去する方法、のいずれの方法を用いてもよい。
【0081】
次いで、この塗膜に、ネガ型のマスクを介して紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。照射するエネルギー線量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば30〜2000mJ/cm程度が好ましい。
【0082】
次いで、露光後の膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は特に限定されず、例えば浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0083】
次いで、現像後のパターンを200℃程度でポストベークを行う。この際、形成されたパターンを全面露光することが好ましい。以上により、所定のパターン形状を有するブラックマトリクスを形成することができる。
【0084】
次いで、ブラックマトリクスによって区画された各領域にR、G、B各色のインクをインクジェットノズルから吐出し、溜められたインクを熱又は光で硬化させる。これにより、カラーフィルタを製造することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
光重合性化合物(A)としては、下記の樹脂(A−1)と、モノマー(A−2)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)とを用いた。樹脂(A−1)の合成方法は、以下のとおりである。
[樹脂(A−1)の合成]
ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂235g(エポキシ当量235)とテトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−tertブチル−4−メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gとを、25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90℃から100℃で加熱して溶解させた後、120℃までゆっくりと昇温させた。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで約12時間加熱撹拌を続けた。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【0087】
次いで、得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)350gを加えて溶解させた後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、110〜115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、樹脂(A−1)を得た。なお、酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。得られた樹脂(A−1)は、GPCで測定した質量平均分子量が5000であり、酸価が80mgKOH/gであった。この樹脂(A−1)は、3−メトキシブチルアセテートにて固形分濃度55質量%に調整した。
【0088】
光重合開始剤(B)としては、CGI242(B−1、チバスペシャルティケミカル社製)を用いた。
【0089】
界面活性剤(C)としては、フタージェント710FL(C−1、上記式(c1−3)におけるRfが上記式(c1−1)で表されるアクリルモノマー:上記式(c2−3)においてエチレンオキサイド基を有するアクリルモノマー=9:91(モル比)の重合体、質量平均分子量20000)を用いた。
【0090】
着色剤(D)としては、黒色顔料(D−1、御国色素社製、CFブラック:カーボンブラック25質量%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)を用いた。
【0091】
溶剤(S)としては、3−メトキシブチルアセテート:シクロヘキサノン=60:40(質量比)の混合溶剤(S−1)を用いた。
【0092】
上記各成分及び溶剤を全体の固形分濃度が22質量%となるように配合し、撹拌機で2時間混合した後、5μmメンブレンフィルターで濾過して、感光性樹脂組成物を調製した。各成分及び溶剤の配合量は表1に示すとおりである。
【0093】
<実施例2、3、比較例1、2>
下記の表1に記載の組成に変えて感光性樹脂組成物を調製した。表1における樹脂(A−3)の合成方法は、以下のとおりである。
[樹脂(A−3)の合成]
エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量192)を400g、トリフェニルホスフィン4g、アクリル酸153g、3−メトキシブチルアセテート600gを混合し、90〜100℃で反応させた。その後、多塩基酸無水物としてテトラヒドロ無水フタル酸40g、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物360gを加え、さらに反応させることによりビフェニル骨格を有する樹脂(A−3)を得た。この樹脂(A−3)は、GPCで測定した質量平均分子量が7000であり、酸価が90mgKOH/gであった。なお、この樹脂(A−3)は、3−メトキシブチルアセテートにて固形分濃度50質量%に調整した。
【0094】
また、表1における界面活性剤(C−2)は、KL−600(共栄社化学社製、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート含有重合体を有するフッ素系界面活性剤)であり、界面活性剤(C−3)は、BYK−310(ビックケミー・ジャパン社製、シリコン系界面活性剤)である。
【0095】
<評価>
上記実施例1〜3、比較例1〜2で調製した感光性樹脂組成物をそれぞれガラス基板上に塗布した後、90℃で2分間乾燥して約2μmの膜厚を有する感光層を得た。次いで、この感光層にネガマスクを介して露光量200mJ/cmで紫外線を選択的に照射し、現像液としてN−a3K(東京応化工業株式会社製):純水=1:25の溶液を用いて25℃で60秒間スプレー現像することによりパターンを形成した。その後、形成されたパターンに対して220℃で30分間ポストベークを施すことにより、線幅20μmの格子状ブラックマトリクスパターンを形成した。そして、パターン上の溶剤接触角をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、1,3ブチレングリコールジアセテート(1,3−BGDA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)及び純水について測定した。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から、フッ素化アルケニル基と親媒性基とを側鎖に有するフッ素系界面活性剤を用いることにより(実施例1〜3)、パーフルオロアルキル基含有界面活性剤(比較例1)やシリコン系界面活性剤(比較例2)を用いる場合と比較して、優れた撥液性が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、フッ素系界面活性剤(C)と、を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記フッ素系界面活性剤(C)は、フッ素化アルケニル基と親媒性基とを側鎖に有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記フッ素系界面活性剤(C)が質量平均分子量5000〜30000の重合体である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記フッ素化アルケニル基がパーフルオロアルケニル基である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記フッ素化アルケニル基が分岐鎖状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記フッ素化アルケニル基が下記式(c1−1)又は(c1−2)で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

【請求項6】
前記フッ素化アルケニル基と前記親媒性基とのモル比が1:99〜50:50である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記フッ素系界面活性剤(C)の前記光重合性化合物(A)に対する含有量が1000〜20000質量ppmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに着色剤(D)を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−128129(P2010−128129A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302050(P2008−302050)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】