説明

感光性樹脂組成物

【課題】パターニングが可能で硬化後も粘着性を示す感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(1)側鎖にカルボキシル基および反応性二重結合を有し、酸価が65〜180KOHmg/gであり、かつ、反応性二重結合の含有量がポリマー中の全モノマー単位の含有量を100mol%として0.5〜18mol%である(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(2)光重合開始剤0.5〜10質量部と、を含む感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物に関し、より詳細には、露光・現像によってパターニングが可能であり、パターニング後も粘着性を発現することができる感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体製造技術やプリント配線板製造技術においては、金属を所定形状にパターニングするために、通常感光性樹脂組成物が使用されている。このような感光性樹脂組成物のうち、ドライフィルムレジストと称される樹脂組成物は、溶剤を含まないフィルム状の製品で提供される。このようなドライフィルムレジストは、例えばプリント配線板製造の際に用いるには、塗布・乾燥の工程が省略でき、連続工程に適用でき、取り扱いが簡便であるなどの多数の利点を有しているために、広範に使用されている。ドライフィルムレジストに関連する従来技術として、例えば、カラーフィルターの保護膜またはプリント配線板製造に適用可能な活性エネルギー線硬化性樹脂が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、硬化後の皮膜の弾性率が、2.3GPaである活性エネルギー線硬化性樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−300266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示されるような、ドライフィルムレジストに使用可能な活性エネルギー線硬化性樹脂は、いったん露光して架橋させると非常に硬い皮膜を形成するため、このような層をはがしたり、位置を調整したりといった作業はできないものであった。このように、従来、ドライフィルムレジストが粘着性を発現することはなく、また、ドライフィルムレジストに粘着性を付与することはほとんど試みられていなかった。
【0006】
一方で、通常の粘着シートは、粘着剤を被接着物に完全に転写することができるのみで、パターニングをすること自体が想定されていないという現状がある。
【0007】
そこで、本発明は、露光・現像によってパターニングが可能であり、かつパターニング後も粘着性を発現することができる感光性樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、(1)側鎖にカルボキシル基および反応性二重結合を有し、酸価が65〜180KOHmg/gであり、かつ、反応性二重結合の量がポリマー中のポリマー中の全モノマー単位の含有量を100mol%として0.5〜18mol%である(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、(2)光重合開始剤0.5〜10質量部と、を含む感光性樹脂組成物により上記課題が解決することを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、露光および現像によってパターニングでき、かつ、パターニングされた後でも粘着性を発現することができる感光性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(1)側鎖にカルボキシル基および反応性二重結合を有し、酸価が65〜180KOHmg/gであり、かつ、反応性二重結合の含有量がポリマー中の全モノマー単位の含有量を100mol%として0.5〜18mol%であるポリマー100質量部と、(2)光重合開始剤0.5〜10質量部と、を含む感光性樹脂組成物である。
【0011】
従来、ドライフィルムレジスト等のレジストに含まれるポリマー自身は、通常、反応性二重結合をほとんど有していないため、それ自身はほとんど架橋しない。その代わりに、従来のレジストでは、通常、架橋剤としてオリゴマーが添加されており、これにより、放射線、例えば、紫外線を照射することにより、該架橋剤同士が結合し、細かい網目構造を構成する。ポリマーは、この架橋剤の網目にからめとられるような状態で固定され、架橋後はほとんど流動できなくなる。この場合の架橋点間の分子の長さ、すなわち架橋点間分子量は、オリゴマーの分子量と同程度かそれより小さくなり、紫外線照射後の硬化物の弾性率は、照射前に比べて飛躍的に高くなる。中には、紫外線照射後に10Pa程度の高い弾性率を示すものも存在する。このように、ドライフィルムレジストは、その構成上、架橋後に粘着性を有することは非常に難しい。
【0012】
これに対し、本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、側鎖に特定量の反応性二重結合を含む。よって、通常のフォトレジストと同様に、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、紫外線が照射された部分は反応性二重結合同士がラジカル生成によって結合し、硬化する。紫外線が照射されていない部分は、硬化せず、特定の範囲の酸価を有することからアルカリ可溶性を示し、通常のフォトレジストと同様にアルカリ現像液によって除去され、その結果パターンが形成される。
【0013】
その際、前記(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖の反応性二重結合の含有量を、ポリマー中の全モノマー単位の含有量を100mol%として0.5〜18mol%とすることにより、露光によって架橋(硬化)するだけではなく、本発明の感光性樹脂組成物は、架橋・パターニング後においても粘着性を有している。そのメカニズムは以下のように考察されるが、以下の考察は本発明に限定を加えるものではない。
【0014】
本発明において、反応性二重結合は、線状のポリマーの側鎖に存在している。紫外線照射によって反応性二重結合が開裂してラジカルが生じ、近くに存在する反応性二重結合部分と互いに結合して、ポリマー自体が網目状の構造を形成してゆくと考えられる。その際、反応性二重結合の含有量が上記の範囲に制御されていると、反応性二重結合同士が結合した部分、すなわち架橋点間の分子の長さ(架橋点間分子量)が適当に制御され、粘着性が発現すると考えられる。
【0015】
粘着性の目安となるタックの発現は、弾性率と相関があることが一般的に知られている。常温の環境において、粘着性を示すポリマーの弾性率の上限の値は、おおまかに10〜10Paであるとされ、これを上回る桁の弾性率を示す場合には、そのポリマーは、一般的に粘着性はないとされる。したがって、本発明においては、(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖の反応性二重結合の含有量を特定の範囲に制御することによって、架橋点間分子量、ひいては弾性率を間接的に制御することができ、感光性と共に粘着性を有する樹脂組成物を得ることが可能になるのである。また、同時に架橋後の感光性樹脂は、適度なクッション性を有することにもなる。本発明者らは、鋭意検討した結果、良好なパターニング性と仮止め等に適した粘着性とを実現するポリマーの反応性二重結合量を見出したものである。
【0016】
したがって、本発明は粘着性およびパターニングが必要とされる様々な用途に適用できる。例えば、ICチップなどの細かい部品の位置決めや仮止め、また、製造工程においていったん接着した後にはがす必要のある用途に適用できる。また、LCDパネルとタッチパネルの貼合のように製品中に粘着性の樹脂が接触しないことが好ましい領域があれば、その部分を避けるようにパターニングできるという利点がある。また、本発明の感光性樹脂組成物は、架橋後は適度なクッション性を示すので、隙間の充填を兼ねたり、間に応力が生じる可能性のある2の部材を接着するために用い、間のひずみを吸収する役割を果たすこともできる。
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を、発明を構成する各要素に分けて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に制限されない。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)の語を含む化合物等も同様に、化合物名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有しない化合物の総称である。
【0018】
[(メタ)アクリル系ポリマー]
<酸価>
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、架橋後にアルカリ現像液で所定のパターンに現像するため、65〜180KOHmg/gの酸価を有している。より好ましくは、酸価は85〜170KOHmg/gであり、さらに好ましくは90〜160KOHmg/gである。酸価が65KOHmg/gを下回ると、(メタ)アクリル系ポリマーがアルカリ現像液に不溶となる恐れがあり、また、180KOHmg/gを超えると、架橋度を上げてもアルカリ現像液への溶解や樹脂層の脱落が発生する。
【0019】
ポリマーの酸価を上記の範囲に制御するには、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーとして使用するカルボキシル基含有モノマーの、重合時の仕込み量を適宜設定すればよい。本発明において酸価は、ポリマー中の全モノマーに対するカルボキシル基を有するモノマーの仕込み量から算出した計算値である。
【0020】
<反応性二重結合の含有量>
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、反応性二重結合の含有量が、ポリマー中の全モノマー単位の含有量を100mol%として0.5〜18mol%である。反応性二重結合の含有量は、より好ましくは0.7〜15mol%であり、さらに好ましくは1〜12mol%である。反応性二重結合の含有量が0.5mol%を下回ると、露光後の架橋が不十分となり、架橋後のポリマーが柔らかくなりすぎ、また、現像時にも架橋部分(露光部分)が溶解する。一方、反応性二重結合の含有量が18mol%を上回ると、露光部の皮膜が硬くなりすぎ、粘着性が低下する。
【0021】
本発明における反応性二重結合の含有量は、ポリマーを構成するモノマー組成を基に算出する。反応性二重結合をポリマーに導入する方法としては、例えば、反応性官能基含有モノマーを用いて、カルボキシル基含有モノマーと共重合を行う。次いで、得られたポリマーを、前記反応性官能基含有モノマー中の反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物と反応させ、側鎖に反応性二重結合を導入する方法が挙げられる。その際、使用した反応性官能基含有モノマーの量から、反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物が、反応性官能基含有モノマー中の反応性官能基と全て反応したとみなして、反応性二重結合の含有量を算出する。
【0022】
上述のように、本発明の感光性樹脂組成物で用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基含有モノマーと、反応性官能基含有モノマーとを重合させたポリマーに、前記反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物を反応させて得られるポリマーであることが好ましい。以下、各モノマーについて詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
<カルボキシル基含有モノマー>
本発明の感光性樹脂組成物の酸価を実現するためには、ポリマーを構成するモノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを用いることが好適である。カルボキシル基含有モノマーは、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和モノマーである。
【0024】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、以下に制限されないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。これらカルボキシル基含有モノマーは、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0026】
本発明において、カルボキシル基含有モノマーの量は、8〜24質量部であることが好ましく、より好ましくは11〜23質量部、さらに好ましくは12〜22質量部である。また、後述する反応性官能基含有モノマーの反応性官能基がカルボキシル基である場合には、8.5〜39質量部が好ましく、より好ましくは11.7〜37質量部、さらに好ましくは12.8〜35質量部である。かような範囲であればアルカリ溶解性を発現することができる。
【0027】
<反応性官能基含有モノマー>
上述のように、本発明の感光性樹脂組成物に用いるポリマーに反応性二重結合を導入するには、反応性官能基含有モノマーを用いることが好ましい。反応性官能基含有モノマーと、後述する反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物とは、反応性等を考慮して適合性のある組み合わせで選択することが好ましい。反応性官能基含有モノマーは、単官能性であっても多官能性であってもよいが、反応の制御しやすさなどの点から単官能性が好ましい。多官能性の場合は、この反応性官能基と、後述する反応性官能基と反応しうる基とのモル数を考慮する。
【0028】
反応性官能基含有モノマーとしては、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー、イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基含有(メタ)アクリレル系モノマー、エポキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられる。なお、反応性官能基含有モノマーとして、前記カルボキシル基モノマーを用いてもよく、その場合には、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価および反応性二重結合の含有量が上記の範囲を満たすように、反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物の使用量が決定される。なお、反応性官能基含有モノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。また、合成品を使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0029】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーは、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル系モノマーである。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、以下に制限されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。 イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸2−イソシアネートエチルアクリレート、(メタ)アクリル酸3−イソシアネートプロピル、(メタ)アクリル酸4−イソシアネートブチル等が例示される。市販品としては、カレンズAOI(登録商標)(アクリル酸2−イソシアネートエチル)、カレンズMOI(登録商標)(メタクリル酸2−イソシアネートエチル)(昭和電工社製)などが例示できる。
【0030】
アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等があげられる。
【0031】
エポキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等があげられる。
【0032】
カルボキシル基含有モノマーとしては、上記したモノマーと同様のものが例示される。
【0033】
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。 反応性官能基含有モノマーの使用量は、0.5〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.7〜14質量部、さらに好ましくは0.8〜13質量部である。また、反応性官能基含有モノマーの反応性官能基がカルボキシル基である場合には、上記のカルボキシル基含有モノマーに含まれるため、反応性官能基含有モノマーは0質量部と考える。かような範囲であれば架橋性を発現することができる。
【0034】
<反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物>
反応性二重結合を有するとは、光重合開始剤および紫外線照射によりその二重結合が開裂し新たな化学結合が形成されうることを指す。このような反応性二重結合を有する化合物とは、分子内にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル基(CH=CH−基)、メタアクリル基(CH=C(CH)−基)、ビニル基(CH=CH−基)等が挙げられる。反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物は、説明のために、以下、反応性二重結合導入化合物と称する。
【0035】
反応性二重結合導入化合物は、反応性二重結合と共に、上記のポリマー主鎖を構成するモノマーが有する反応性官能基と反応しうる基を有し、反応性官能基含有モノマー中の反応性官能基との反応によってポリマーの側鎖に反応性二重結合を導入する。反応性官能基反応しうる基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基が挙げられる。
【0036】
ポリマーに反応性二重結合を導入するため、ポリマー側の反応性官能基と、反応性二重結合導入化合物の反応性官能基と反応しうる基を、互いが反応する組み合わせで選択することが必要である。すなわち、(ポリマーの反応性官能基、反応性二重結合導入化合物の反応性官能基)の組み合わせとしては、(ヒドロキシ基、イソシアネート基)、(ヒドロキシ基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(イソシアネート基、ヒドロキシ基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(アミノ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。このうち、反応の制御しやすさから(ヒドロキシ基、イソシアネート基)および(カルボキシル基、エポキシ基)の組み合わせが好ましい。なお、反応性二重結合導入化合物は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。また、合成品を使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0037】
イソシアネート基を有する反応性二重結合導入化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(メタ)アクリル酸2−イソシアネートエチルアクリレート、(メタ)アクリル酸3−イソシアネートプロピル、(メタ)アクリル酸4−イソシアネートブチル等が例示される。市販品としては、カレンズAOI(登録商標)(アクリル酸2−イソシアネートエチル)、カレンズMOI(登録商標)(メタクリル酸2−イソシアネートエチル)(昭和電工株式会社製)などが例示できる。
【0038】
ヒドロキシ基を含有する反応性二重結合導入化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。市販品としては、東亞合成株式会社製のアロニックス M−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日油株式会社製のブレンマー(登録商標)PE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800等が挙げられる。
【0039】
アミノ基を含有する反応性二重結合導入化合物としては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等があげられる。
【0040】
エポキシ基を含有する反応性二重結合導入化合物としては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられ、より具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−エチルグリシジルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等があげられる。市販品としては、ダイセル化学工業株式会社製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
【0041】
カルボキシル基を含有する反応性二重結合導入化合物としては、上記したカルボキシル基含有モノマーと同様のものが例示される。市販品としては、東亞合成株式会社製のアロニックスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レイヨン株式会社製のアクリエステルPA、HH、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートHOA−HH、新中村化学工業株式会社製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
【0042】
反応性二重結合導入化合物の使用量は、前記反応性官能基含有モノマー中の反応性官能基(a)と、該反応性二重結合導入化合物中の前記反応性官能基と反応しうる基(b)とのモル比が、好ましくは(a)/(b)=0.7〜1.3、より好ましくは(a)/(b)=0.8〜1.2となるように設定すればよい。
【0043】
なお、上記したように、前記カルボキシル基含有モノマーが反応性官能基含有モノマーを兼ねる場合、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価および反応性二重結合の含有量が上記の範囲を満たすように、反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物の使用量が決定される。この場合には、反応性官能基含有モノマーの機能を兼ねるカルボキシル基含有モノマーのうち、一部が反応性官能基含有モノマーとしての役割を担い反応性二重結合導入化合物と結合し、残部がカルボキシル基含有モノマーとしての役割を担いカルボキシル基としてポリマー中に存在することになる。カルボキシル基として残存するモノマーと反応性二重結合を導入するために反応するモノマーとの比率は、反応性二重結合導入化合物の使用量によって制御することができるが、好ましくは、反応性二重結合を導入するために使用されるモノマー/カルボキシル基として残存するモノマー の比率が、1/50〜75/50である。
【0044】
<他の共重合可能なモノマー>
本発明の感光性樹脂組成物に使用させる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、上記のカルボキシル基含有モノマーおよび反応性官能基含有モノマーを特定の範囲で含んでいれば、他の共重合可能なモノマーがさらに含まれていてもよい。他の共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アミド基を有するアクリル系モノマー、ウレタン基を有するアクリル系モノマー、フェニル基を有するアクリル系ビニルモノマー、シラン基を有するビニルモニマーが挙げられる。このうち、粘着性発現および制御の観点から、特に好ましいものは(メタ)アクリル酸エステルモノマーである。なお、他の共重合可能なモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。また、合成品を使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、分子中にヒドロキシ基を有さない(メタ)アクリル酸のエステルである。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、以下に制限されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、がより好ましい。特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがよい。
【0047】
アミド基を有するアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0048】
ウレタン基を有するアクリル系モノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
フェニル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
シラン基を有するビニルモニマーとしては、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
その他、スチレン、クロロスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等を使用することもできる。
【0052】
これら他の共重合可能なモノマーの量は、91.5〜61質量部であることが好ましく、88.3〜63質量部であることがより好ましく、87.2〜65質量部であることがさらに好ましい。かかる範囲であると粘着物性を制御しやすい。上記の中でも、特に、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが好ましい。
【0053】
なお、上記のカルボキシル基含有モノマー、反応性官能基含有モノマー、および他の共重合可能なモノマーの合計量は100質量部であることが好ましい。
【0054】
上記のような構成を有する(メタ)アクリル系ポリマーを製造する方法は、特に制限されないが、第1段階として、カルボキシル基含有モノマー、反応性官能基含有モノマー、および他の共重合可能なモノマーを用いて重合する工程と、次いで、第2段階として、反応性二重結合導入化合物を反応させることにより、側鎖に反応性二重結合を導入する工程と、を含む製造方法が好ましい。
【0055】
第1段階でのモノマーの重合方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも重合開始剤を使用する溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。例えば、溶剤として酢酸エチル(エチルアセテート)、トルエン、メチルエチルケトン等をモノマーの合計量100質量部に対して、好ましくは70〜160質量部用い、重合開始剤を、モノマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.50質量部を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度60〜110℃、好ましくは60〜75℃で、3〜10時間反応させることで得られる。なお、重合開始剤の添加は2度以上に分けて行ってもよい。
【0056】
前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。このうち、特にアゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
【0057】
第2段階としては、上記のように製造したポリマー溶液中に、反応性二重結合導入化合物を添加し、その後反応が進行する温度、好ましくは60〜120℃で、好ましくは4〜12時間反応させる。このようにして、反応性二重結合を側鎖に有する(メタ)アクリル系ポリマーが得られる。
【0058】
第2段階では、反応速度を調整するために触媒を添加することもできる。触媒は、反応性官能基の組み合わせに応じて適宜選択する。例えば、カルボキシル基とエポキシ基との付加反応にはアミン系触媒、カルボキシル基とアミノ基との反応にはイミド系触媒、さらにヒドロキシ基とイソシアネート基との反応には金属系触媒などを用いることができる。
【0059】
<ガラス転移点>
かような構成を有する本発明の(メタ)アクリル系ポリマーを含む感光性樹脂組成物は、架橋後も粘着性を示す。粘着性の指標の一つに(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点がある。前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点(以下Tgとも称する)は、−60〜−25℃であることが好ましい。より好ましくは−60〜−30℃、さらに好ましくは−55〜−35℃である。一般的に、ポリマーの物性は、ガラス転移点前後で大きく変化し、特に弾性率は10倍も変化する場合がある。ガラス転移点を超えた環境温度では粘着性を示すポリマーが多く、この性質はアクリル系ポリマーにおいて特によく知られている。本発明の感光性樹脂組成物は、架橋後は、使用が想定される環境温度、例えば気温の季節変化などから想定される0〜40℃よりも低いガラス転移点を有していることが好ましい。
【0060】
本発明におけるガラス転移点は、Fox式により算出された値を採用する。具体的には、ガラス転移点(Tg)は、下記式で求められる。
【0061】
【数1】

【0062】
式中、Tgはポリマーのガラス転移点(単位は絶対温度)、Wはモノマーiの質量分率、Tgはモノマーiから構成されるホモポリマーのガラス転移点(単位は絶対温度)を表す。本発明におけるガラス転移点は、上式で計算されるガラス転移点を絶対温度(K)から摂氏温度(℃)に換算して求めた値を用いる。
【0063】
<重量平均分子量>
本発明の前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が10000〜300000であることが好ましく、より好ましくは10000〜250000であり、さらに好ましくは20000〜200000である。上述の範囲であれば、硬化(架橋)後も十分な粘着性を有しうる。
【0064】
なお、本発明において、重量平均分子量は、下記の方法により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0065】
【表1】

【0066】
[光重合開始剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線照射によって架橋反応を開始するために、光重合開始剤を含む。光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)とは、紫外線照射、特に波長365nm以下の紫外線で活性化し得るラジカル重合開始剤をいう。
【0067】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;安息香酸エステル誘導体;アシロインエーテル誘導体;アセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;キサントンおよびチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類等の含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;アクリジン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物等が挙げられる。
【0068】
より詳細には、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4−モルフォリノブチルフェノン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン、1,7−(9−アクリジニル)ヘプタン、及び2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。このうち、特に2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましく用いられる。これらの光重合開始剤は、1種のみ又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0069】
市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(登録商標)907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(登録商標)369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(登録商標)819、日本曹達株式会社製ニッソキュアーMABP、保土谷化学工業株式会社製EAB、日本化薬株式会社製カヤキュア(登録商標)EPA、インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB、インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA、日本化薬株式会社製カヤキュア(登録商標)DMBI、Van Dyk社製Esolol 507等が挙げられる。特に、イルガキュア(登録商標)907が好ましい。
【0070】
組成物中の光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、好ましくは1.0〜6.0質量部である。光重合開始剤の含有量が0.5質量部を下回ると、酸素によるラジカルの失活の影響(感度の低下)を受けやすくなり、10質量部を上回ると、組成物への相溶性が低下したり、組成物の保存安定性が低下する虞がある。
【0071】
[架橋助剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに架橋助剤を含んでもよい。本発明では、(メタ)アクリル系ポリマーが側鎖に反応性二重結合を有し、この反応性二重結合が紫外線照射によって互いに結合するため、架橋助剤は必ずしも必要ではない。しかしながら、上述のように本発明では架橋点間の分子量が比較的大きいため、架橋反応を促進、すなわち架橋反応の効率を向上するためには、架橋助剤は有効である。言い換えれば、本発明における架橋助剤は、感光性樹脂組成物の紫外線等に対する感度を向上させるために加えられる。架橋助剤の使用によって、例えば、紫外線の照射量を少なくできコストを下げることができる。また、架橋反応が促進されるために製造工程が短時間で済むメリットもある。
【0072】
架橋助剤としては、分子内に反応性二重結合を少なくとも1個有する化合物であり、以下のものが例示される。すなわち、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、メチルメタクリレートシラップ、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、テトラドデシルアクリレート、トリシクロデカンメタノールジメタクリレート等が挙げられる。
【0073】
架橋助剤は、上記の化合物を合成して使用してもよいが、ドライフィルムレジスト用に市販されているものから適宜選択することもできる。このような市販品としては、新中村化学工業株式会社製NKエステルA−DPH、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートTMP−A、共栄社化学株式会社製ライトエステルTMP、新中村化学工業株式会社製NKエステルTMMT、新中村化学工業株式会社製NKエステルD−TMP、東亞合成株式会社製アロニックスM−315、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPE−4A、三井化学株式会社製CX1033、三菱レイヨン株式会社製アクリエステルIBX、日立化成株式会社製FA−513M、日本油脂株式会社製ブレンマー(登録商標)CHMA、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートIBX−A、日立化成株式会社製FA−513A、三井化学株式会社製TDA、新中村化学工業株式会社製NKエステルDCP等が挙げられる。
【0074】
架橋助剤は、感光性樹脂組成物の感度を調整するために使用する場合は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、1〜20質量部で使用することが好ましく、3〜15質量部がより好ましく、さらに好ましくは3〜15質量部である。この範囲であれば、架橋反応効率向上の効果が十分に発揮されうる。
【0075】
[その他添加剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、硬化促進剤、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、粘度調整剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤および溶剤が挙げられる。
【0076】
これらのうち、硬化促進剤としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、JCS−50(城北化学工業株式会社製)、フォーメートTK−1(三井武田ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(登録商標)1010、イルガノックス(登録商標)1035FF、イルガノックス(登録商標)565(いずれも、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0078】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸およびロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂ならびに石油樹脂等が挙げられる。
【0079】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
上記添加剤を使用する場合の、添加剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
【0081】
[製造方法]
本発明の感光性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー、光重合開始剤、および必要に応じて架橋助剤やその他の添加剤を添加し、攪拌・混合することにより得られる。特に、前記(メタ)アクリル系ポリマーを、溶液重合法を用いて得た場合には、(メタ)アクリル系ポリマーを単離・精製することなく、そのまま溶液の状態で感光性樹脂組成物の製造に用いることができ好適である。充填材や顔料を添加する場合にはディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて、これらの成分を分散、混合させればよい。また、必要に応じて、さらにメッシュ、メンブレンフィルター、カートリッジフィルターなどを用いて各成分または得られる組成物をろ過してもよい。
【0082】
[粘着フィルム]
本発明の感光性樹脂組成物は、可とう性を有するベースフィルム上に塗布・乾燥して感光性の塗膜(粘着層)を形成して得られる粘着フィルムとして好適に用いられる。感光性の塗膜上には、カバーフィルムをさらに積層してもよい。
【0083】
前記ベースフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂フィルムが使用できる。ベースフィルムの厚さは、好ましくは10〜150μmの範囲である。
【0084】
前記カバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの剥離処理をした樹脂フィルムが使用できる。カバーフィルムの厚さは、好ましくは10〜150μmの範囲である。
【0085】
また上記ベースフィルムとカバーフィルムを使用した構成の他に、剥離力を変えた2種のカバーフィルム間に塗膜を形成してもよい。つまり、剥離力の大きいカバーフィルムの上に感光性樹脂組成物を塗布・乾燥して後、カバーフィルムをさらに積層する事により得られる構成としてもよい。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物をベースフィルム上に塗布する際の塗工方法は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、ベーカーアプリケーターおよびグラビアコーター等の装置を用いる種々の塗工方法が挙げられる。また、本発明の感光性樹脂組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ)は、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは10〜120μmであり、より好ましくは15〜100μmである。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物の粘度は、特に制限されないが、塗工のしやすさ、該組成物から形成される層の膜厚の制御のしやすさなどを考慮すると、25℃における粘度が好ましくは0.5〜10Pa・s、より好ましくは1〜8Pa・sである。
【0088】
上記粘着フィルムを用いた被処理基板への塗膜(粘着層)の形成方法および塗膜(粘着層)の処理方法は特に制限されないが、例えば、下記のような方法が挙げられる。
【0089】
被処理基板への塗膜(粘着層)の転写方法としては、転写ローラーやラミネーターによる方式が好ましい。また、真空下で圧着する真空圧着方法を用いてもよい。被処理基板は、目的に応じて任意に選択できるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂フィルムやガラス、シリコンウェファー、ステンレスなどの金属板などを用いることができる。
【0090】
次いで、転写された塗膜(粘着層)上に、所望のパターンを形成したフォトマスクを配置し、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などの放射線を照射し現像することにより、所望のパターンにパターニングすることができる。放射線照射量は特に制限されず適宜選択できるが、好ましくは200〜1200mJ/cm、より好ましくは300〜1000mJ/cmである。製造コストの点からは、紫外線照射量は少ないことが好ましい。放射線ランプとしては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。
【0091】
その後、架橋した樹脂層をアルカリ現像液によって現像し、水で洗浄し、乾燥させて、不要な非露光部を溶解、除去し、露光部のみを残存させ、パターニングされた粘着性のある樹脂層が得られる。アルカリ現像液は、通常のフォトレジストの現像で使用される現像液を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム等のアルカリ金属塩類;アンモニア;エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等のアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;ピロール、ピペリジン等の複素環式アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類;コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物のうち、少なくとも一種以上を溶解したアルカリ性水溶液を挙げることができる。
【0092】
また、上記アルカリ性水溶液にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像時間は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗膜の厚さなどによって異なるが、通常30〜360秒間である。また、現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー法、シャワー現像法などのいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、エアーガンなどを用いて風乾させたり、ホットプレート、オーブンなどで乾燥させることが好ましい。
【0093】
上記のような方法で得られた塗膜は、前記の放射線照射のみでも、十分に硬化させることができるが、用途に応じてさらに、追加の放射線照射や加熱などの後処理によってさらに硬化させることができる。後露光としては、上記の放射線照射方法と同様の方法で行なうことができる。また、加熱する際の方法は、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて、所定の温度、例えば60〜100℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜30分間、オーブン中では5〜60分間加熱処理をすればよい。この後処理によって、さらに良好な特性を有するパターン状の硬化膜を得ることができる。
【0094】
このような本発明の感光性樹脂組成物は、ICチップの貼合、LCDパネルとタッチパネルの貼合などの用途に用いることができる。
【実施例】
【0095】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0096】
(実施例1)
(グリシジルメタクリレートによるメタクリレート基(反応性二重結合)導入)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート 87質量部、およびアクリル酸 13質量部、溶媒としてメチルエチルケトン 100質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら72℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.2質量部を加え、72℃を維持しつつ7時間重合を行った。その後、窒素置換を止め、グリシジルメタクリレート 0.9質量部および反応触媒としてテトラn−ブチルアンモニウムブロミド 1.0部を添加した。添加後、80℃に加熱し、6時間反応させ、ポリマー溶液を得た。
【0097】
上記のようにして得られたポリマー溶液に、光重合開始剤としてイルガキュア(登録商標)907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部、架橋助剤としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルA−DPH)を投入し、混合し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0098】
次いで、得られた感光性樹脂組成物を、ベースフィルムである125μm厚のPET(東洋紡績株式会社製、A4100)上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布した。塗布後、80℃×2分の乾燥条件で乾燥させた。乾燥後、カバーフィルムとして38μm厚の剥離用PET(藤森工業株式会社製、38E0010BD)を貼合した。
【0099】
カバーフィルムの上に、ライン/スペース=100μm/100μmのフォトマスクを載せ、フォトマスク側から紫外線照射を行なった。紫外線照射は、ウシオ電機株式会社製 PM25C−200を使用した。照度計は、アイ紫外線積算照度計 UVPF−A1(36ヘッド)(アイグラフィックス株式会社製)を使用した。
【0100】
紫外線照射後、カバーフィルムを剥がし、アルカリ現像液 NMD−3(東京応化工業株式会社製)を用いて現像した。その後、水洗浄、乾燥を行い、得られた樹脂層のパターン性および粘着性の有無を以下のように観察した。評価結果は、各材料の配合量と共に、後掲の表2に示す。表2中、TgはFoxの式により算出した。また、酸価および反応性二重結合の含有量は、配合組成から算出した。
【0101】
(粘着性評価)
得られた粘着層の触感を直接確認し、粘着性の評価とした。タック(べたつき)がある場合は○、ない場合は×とした。
【0102】
(パターン性評価)
現像によるパターン性を、得られた粘着層の外観の観察により評価した。10倍の光学顕微鏡により、形成されたパターンに脱落した部分はないか、パターンに不溶の部分が残っていないかを確認した。脱落は架橋不足に起因し、不溶部分は過度の架橋に起因する。それらが観察されなければ○とし、観察された場合には×とした。
【0103】
(実施例2〜7)
実施例2〜7は、後掲の表2に示す配合量の材料を使用した以外は、実施例1と同様にして、本発明の感光性樹脂組成物を製造し、評価を行った。評価結果は配合量と併せて表2に示す。
【0104】
(比較例1〜4)
比較例1〜4では、後掲の表3に示す配合量の材料を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を製造し、評価を行った。評価結果は配合量と併せて表3に示す。
【0105】
(実施例8)
(カレンズMOI(登録商標)によるメタクリレート基(反応性二重結合)導入)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート 85質量部、アクリル酸 15質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート 5質量部、溶媒としてメチルエチルケトン75質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら72℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.2質量部を加え、72℃を維持しつつ7時間重合を行った。その後、窒素置換を止め、ヒドロキシ基と当量となるイソシアネート基含有(メタ)アクリレート系モノマー(カレンズMOI(登録商標)、昭和電工株式会社製)6.7質量部を添加した。添加後、65℃で6時間反応させ、ポリマー溶液を得た。
【0106】
上記のようにして得られたポリマー溶液に、光重合開始剤としてイルガキュア(登録商標)907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部、架橋助剤としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルA−DPH)を投入し、混合し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0107】
次いで、得られた感光性樹脂組成物を、ベースフィルムとして125μm厚のPET(東洋紡績株式会社製、A4100)に、乾燥後の厚さが20μmになるよう塗布した。感光性樹脂組成物を塗布後、80℃×2分の乾燥条件で乾燥させた。乾燥後、カバーフィルムとして38μm厚の剥離用PET(藤森工業株式会社製、38E0010BD)を貼合した。
【0108】
カバーフィルム上に、ライン/スペース=100μm/100μmのフォトマスクを載せ、フォトマスク側から紫外線照射を行なった。紫外線照射は、ウシオ電機株式会社製 PM25C−200を使用した。紫外線照射後、カバーフィルムを剥がし、アルカリ現像液 NMD−3(東京応化工業株式会社製)を用いて現像した。その後、水洗浄、乾燥を行い、得られた樹脂層の外観および粘着性の有無を実施例1と同様にして観察した。評価結果は、各材料の配合量と共に、後掲の表2に示す。表2中、TgはFoxの式により算出した。また、酸価およびアクリレート基数は配合組成から算出した。
(実施例9〜11)
実施例9〜11は、後掲の表2に示す配合量の材料を使用した以外は、実施例8と同様にして、本発明の感光性樹脂組成物を製造し、評価を行った。評価結果は配合量と併せて表2に示す。
(比較例5〜8)
比較例5〜8では、後掲の表3に示す配合量の材料を使用した以外は、実施例8と同様にして、感光性樹脂組成物を製造し、評価を行った。評価結果は配合量と併せて表3に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
表2および表3の結果から分かるように、実施例1〜11ではいずれも良好なパターン性および粘着性を示した。実施例1、2、7を順に見ていくと、反応性二重結合の含有量が増加するにつれて、紫外線照射量が少なくなり、少ないエネルギーでパターニングができるようになることが分かる。すなわち、紫外線照射量に応じて最適な組成を選択することができる。また、架橋助剤を使用していない実施例5でも、組成を適当に選ぶことにより、十分なパターン性および粘着性が実現されている。
【0112】
一方、酸価が本発明の範囲から外れる比較例1〜2では、それぞれパターン性、粘着性が不十分な結果となった。また、反応性二重結合の含有量が本発明の範囲から外れる比較例3〜4では、パターン性および粘着性が共に不十分な結果となった。また、酸価が本発明の範囲から外れている比較例5〜8のうち、酸価が低い比較例5〜6ではパターン性が不十分であり、酸価が高い比較例7〜8では、粘着性が不十分となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)側鎖にカルボキシル基および反応性二重結合を有し、酸価が65〜180KOHmg/gであり、かつ、反応性二重結合の含有量がポリマー中の全モノマー単位の含有量を100mol%として0.5〜18mol%である(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、
(2)光重合開始剤0.5〜10質量部と、
を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーのFox式により求められるガラス転移点が−60〜−25℃である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が10000〜300000である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、
カルボキシル基含有モノマー8.0〜24質量部、反応性官能基含有モノマー0.5〜15質量部、ならびに前記カルボキシル基含有モノマーおよび前記反応性官能基含有モノマーと共重合可能なモノマー91.5〜61質量部を共重合させたポリマーに、前記反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物を反応させて得られるポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性官能基含有モノマーがヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーである請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物がイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル系化合物である請求項4または5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、
カルボキシル基含有モノマー8.5〜39質量部、および前記カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なモノマー91.5〜61質量部を共重合させたポリマーに、カルボキシル基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物を反応させて得られるポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記反応性官能基と反応しうる基および反応性二重結合を有する化合物がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル系化合物である請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに架橋助剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いた、粘着フィルム。

【公開番号】特開2011−221463(P2011−221463A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93422(P2010−93422)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】