説明

感光性転写材料、隔壁及びその形成方法、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに表示装置

【課題】インクジェット法によりインクを付与して着色領域を形成するための隔壁の欠け欠陥の発生を防止し、カラーフィルタを作製する際に生じる混色を防止する。
【解決手段】仮支持体上に熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とを有し、感光性樹脂層の100℃における溶融粘度ηと熱可塑性樹脂層の100℃における溶融粘度ηCuとがη/ηCu>2の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法を利用したカラーフィルタ作製用隔壁の形成に好適な感光性転写材料、並びにこれを用いた隔壁及びその形成方法、カラーフィルタ及びその製造方法、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、特に大画面液晶テレビの発達に伴ない、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、カラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっており、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、及び青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、及びBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、及びBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行なわれるものである。
【0004】
従来のカラーフィルタ製造方法としては、例えば染色法が知られている。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、及びBの着色画素(カラーフィルタ)を形成することができる。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、及びBの着色画素(カラーフィルタ)を形成する。
【0006】
さらに他の方法として、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、及びBの3回印刷を行なった後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0007】
上記したいずれの方法も、例えばR、G、及びBの3色を着色するためには、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。したがって、これらの問題を解決する方法として、インクジェット方式を利用して着色インクを吹き付けることにより着色画素を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【特許文献1】特開昭59−75205号公報
【特許文献2】特開平2004−339332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにインクジェット方式を利用して着色画素を形成しようとする場合、あらかじめ各色の画素を形成しようとする領域を区画する壁を形成しておき、壁で囲まれた領域に着色インクを吐出して画素形成することができる。しかしながら、この壁を熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層を有する転写材料を用いて形成する場合、転写材料を所望の支持体に圧着してラミネートする際に壁に欠け欠陥が発生して混色を招くことがある。混色は、カラーフィルタの色特性や表示性能を悪化させる一因となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、インクジェット法によりインクを付与して着色領域を形成するための隔壁の欠け欠陥の発生を防止し、カラーフィルタを作製する際に生じる混色を防止することができる感光性転写材料、並びに、欠け欠陥の発生が防止された隔壁及びその形成方法、混色が防止されたカラーフィルタ及びその製造方法、及び表示特性の良好な表示装置を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 仮支持体上に、該仮支持体側から順に少なくとも熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とを有する隔壁形成用の感光性転写材料であって、前記感光性樹脂層の100℃における溶融粘度ηと、前記熱可塑性樹脂層の100℃における溶融粘度ηCuとがη/ηCu>2の関係を満たす感光性転写材料である。
<2> 前記溶融粘度ηは、1000000Pa・s>η>2000Pa・sを満たすことを特徴とする前記<1>に記載の感光性転写材料である。
<3> 前記溶融粘度ηCuは、200Pa・s<ηCu<3000Pa・sを満たすことを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の感光性転写材料である。
<4> 前記感光性樹脂層が顔料を含むことを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性転写材料である。
<5> 前記熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含むことを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料である。
【0011】
<6> 前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の感光性転写材料を、感光性樹脂層が永久支持体に接するように、該永久支持体に圧着する工程を有する隔壁の形成方法である。
<7> 圧着後の少なくとも前記感光性樹脂層を露光し、現像する工程を有することを特徴とする前記<6>に記載の隔壁の形成方法である。
<8> 前記<6>又は<7>に記載の隔壁の形成方法により形成された隔壁である。
<9> 前記<6>又は<7>に記載の隔壁の形成方法により隔壁を形成する工程と、形成された隔壁間に着色領域を形成する工程とを有するカラーフィルタの製造方法である。
<10> 前記着色領域の形成は、着色液体組成物をインクジェット法により前記隔壁間に付与する方法により行なうことを特徴とする前記<9>に記載のカラーフィルタの製造方法である。
<11> 前記<9>又は<10>に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタである。
<12> 前記<11>に記載のカラーフィルタを備えた表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェット法によりインクを付与して着色領域を形成するための隔壁の欠け欠陥の発生を防止し、カラーフィルタを作製する際に生じる混色を防止することができる感光性転写材料を提供することができる。
また、本発明によれば、欠け欠陥の発生が防止された隔壁及びその形成方法、混色が防止されたカラーフィルタ及びその製造方法、並びに表示特性の良好な表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のインクジェット法を利用したカラーフィルタ作製用隔壁の形成に用いられる感光性転写材料、並びにこれを用いた隔壁及びその形成方法、カラーフィルタ及びその製造方法、表示装置について詳細に説明する。
【0014】
<感光性転写材料>
本発明の感光性転写材料は、インクジェット方式により着色領域(以下、「画素」ともいう。)を形成する際に永久支持体上のインクを付与する領域を区画する隔壁を形成するための転写材料である。
【0015】
本発明の感光性転写材料は、仮支持体上に、該仮支持体側から順に少なくとも、熱可塑性樹脂層と、感光性樹脂層とを少なくとも有し、感光性樹脂層の100℃における溶融粘度(η)と熱可塑性樹脂層の100℃における溶融粘度(ηCu)とがη/ηCu>2の関係を満たすように構成されたものである。
また、感光性転写材料は、必要に応じて、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間に中間層などの他の層を有していてもよい。
【0016】
本発明の感光性転写材料においては、構成層である感光性樹脂層と熱可塑性樹脂層との100℃における溶融粘度の比η/ηCuの値を2よりも大きくする。η/ηCuの値が2より大きいと、形成された隔壁の壁の一部が欠けてできる欠陥(欠け欠陥)の発生を防止でき、安定に隔壁を製造することができる。
前記η/ηCuの値は、欠け欠陥の発生を防止する点で、4以上であることが好ましく、より好ましくは6以上である。また、η/ηCuの上限値としては、感光性樹脂層と基板との密着が良好である点で、5000未満であることが好ましく、500未満がより好ましく、50未満がより好ましい。
【0017】
このように本発明においては、感光性転写材料を構成する感光性樹脂層と熱可塑性樹脂層との100℃における溶融粘度の比η/ηCuの値を2よりも大きくする、すなわち所定の範囲に感光性樹脂層を硬くし熱可塑性樹脂層を柔らかくすることで、形成される隔壁の欠け欠陥の発生を防止することができる。これにより、インクを隔壁で取り囲まれた領域内にインクジェット付与する際に生ずる混色が防止され、色純度及び色相が良好なカラーフィルタ、ひいてはで表示特性に優れた表示装置を作製することができる。
【0018】
溶融粘度の測定は、下記の方法で行なうことができる。
感光性樹脂層形成用の塗布液及び熱可塑性樹脂層形成用の塗布液をそれぞれガラス板に塗布し、80〜100℃のオーブン中で約2分乾燥し、5〜20μm程度の膜厚の乾燥膜を作製し、それをさらに約40℃で6時間程度真空乾燥を行なう。真空乾燥時の真空度としては0.1〜80mmHgが好ましく、1〜50mmHgがより好ましく、5〜30mmHgが最も好ましい。真空乾燥後、ガラス板から剥がし試料とする。きれいに剥がせない場合は削り取って集めることで測定試料とできる。
塗布液が手に入らない場合には、感光性転写材料から感光性樹脂層及び熱可塑性樹脂層をそれぞれ剥がし取り、測定試料とする。
測定は、Jasco International Co.Ltd製の粘弾性測定装置DynAlyser DAS-100を用いて測定温度100℃、周波数1Hzで測定する。
【0019】
比η/ηCuの値を2よりも大きくする方法としては、感光性樹脂層を硬くする硬化方法と熱可塑性樹脂層を柔らかくする軟化方法とがある。これらの方法の詳細については各層の項において後述する。
【0020】
また、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層には、隔壁の欠け欠陥をより効果的に防止する点から、それぞれ独立に好ましい粘度範囲がある。なお、必ずしもこの独立に好ましい粘度範囲を満たす必要はなく、これらの好ましい粘度範囲を外れていても前記η/ηCu>2の関係を満たすように熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層のバランスを図ることにより、安定に隔壁を形成することが可能である。
これらの独立に好ましい粘度範囲については後述する。
【0021】
−熱可塑性樹脂層−
本発明の感光性転写材料は、少なくとも一層の熱可塑性樹脂層を有する。
熱可塑性樹脂層は、アルカリ現像を可能とし、転写時にはみ出した熱可塑性樹脂層自身による被転写体の汚染防止を可能とする点から、アルカリ可溶性であることが好ましい。
また、後述する感光性樹脂層を被転写体上に転写する際に、被転写体上に存在する凹凸に起因して発生する転写不良を効果的に防止するクッション材としての機能を有し、感光性転写材料を被転写体上に加熱密着させた際の被転写体上の凹凸に対応して変形可能な層である。
【0022】
本発明においては、熱可塑性樹脂層の層厚は、2〜50μmであることが転写性の観点から好ましい。層厚が前記範囲内であると、転写時の仮支持体からの剥離を剥離面を損なうことがなく良好に行なえ、厚み変動による露光不良に伴なって精細なパターン形成が可能となる。層厚は、より好ましくは5〜40μmである、特に好ましくは10〜30μmである。
【0023】
熱可塑性樹脂層は、少なくとも熱可塑性樹脂を用いて構成することができ、必要に応じて更に適宜他の成分を用いて構成することができる。
【0024】
熱可塑性樹脂は、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、エチレンとアクリル酸エステル共重合体とのケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等との(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のケン化物、等より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
上記以外に更に、「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することもできる。
熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂層の実質的な軟化点が80℃以下になるものが好ましい。
【0026】
これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。充分なクッション性と転写後の除去のしやすさの点で、異なる2種類の特性を有する樹脂(好ましくは後述のポリマーP及びポリマーP)を混合して用いることが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称し、その誘導体の場合も同様である。
【0027】
熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の中でも、好ましくは、重量平均分子量が5万〜50万(Tg=0〜140℃)の範囲である樹脂であり、更に好ましくは重量平均分子量が6万〜20万(Tg=30〜110℃)の範囲である樹脂である。これらの樹脂の具体例としては、特公昭54−34327号、特公昭55−38961号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭61−134756号、特公昭59一44615号、特開昭54−92723号、特開昭54−99418号、特開昭54−137085号、特開昭57−20732号、特開昭58−93046号、特開昭59−97135号、特開昭60−159743号、特開昭60−247638号、特開昭60−208748号、特開昭60−214354号、特開昭60−230135号、特開昭60−258539号、特開昭61−169829号、特開昭61−213213号、特開昭63−147159号、特開昭63−213837号、特開昭63−266448号、特開昭64−55551号、特開昭64一55550号、特開平2−191955号、特開平2−199403号、特開平2−199404号、特開平2−208602号、特開平5−241340号の各公報に記載の、アルカリ水溶液に可溶な樹脂を挙げることができる。
特に好ましいのは、特開昭63−147159号公報に記載の、メタクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体である。
【0028】
また、種々の熱可塑性樹脂のうち低分子側では、好ましくは、重量平均分子量が3千〜3万(Tg=30〜170℃)の範囲である樹脂、更に好ましくは、重量平均分子量が4千〜2万(Tg=60〜140℃)の範囲である樹脂である。これらの好ましい具体例としては、上記の公報に記載されているものの中から選ぶことができるが、特に好ましくは、特公昭55−38961号、特開平5−241340号の各公報に記載のスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体である。
【0029】
更には、上記のように異なる2種類の特性を有する樹脂、具体的には、高分子量ポリマーPと低分子量ポリマーPとを混合して用いることが好ましい。ここで、低分子量ポリマーとは、重量平均分子量が3,000以上12000未満のポリマーであり、高分子量ポリマーとは重量平均分子量が12000以上のポリマーである。
好ましい形態は、充分なクッション性と転写後の除去のしやすさの点で、重量平均分子量が5000以上10000未満のPと重量平均分子量が50000以上120000未満のPとを混合して用いる場合であり、好ましい例として、メタクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(P)とスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(P)とを混合して用いる場合が挙げられる。
【0030】
熱可塑性樹脂層には、前記熱可塑性樹脂以外に他の成分として、仮支持体との接着力を調節する目的で、実質的に軟化点が80℃を超えない範囲内で各種ポリマー、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、離型剤等を添加することができる。これらによるTgの調整も可能である。また、軟化点が80℃以上の有機高分子化合物も、その有機高分子化合物中に該高分子物質と相溶性のある各種可塑剤を添加することで、実質的な軟化点を80℃以下に下げて用いることもできる。
【0031】
好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂とポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアネートとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアネートとポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、フタル酸ジエステル類、ビスフェノールAとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの縮合反応生成物を挙げることができる。
【0032】
前記熱可塑性樹脂と前記可塑剤との組み合わせして、好ましくは、1)メタクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ビスフェノールAとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの縮合反応生成物の組み合わせ、2)メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ビスフェノールAとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの縮合反応生成物の組み合わせ、3)メタクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、フタル酸ジエステル類の組み合わせ、4)メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、フタル酸ジエステル類の組み合わせ、などを挙げることができる。
【0033】
可塑剤の熱可塑性樹脂層中における量は、熱可塑性樹脂に対して、200質量%以下が一般的であり、熱可塑性樹脂層の軟化を容易に制御できる点で、20〜100質量%の範囲が好ましい。
【0034】
前記界面活性剤としては、熱可塑性樹脂と混ざり合うものであれば使用可能である。
好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報の段落[0015]〜[0024]、特開2003−177522号公報の段落[0012]〜[0017]、特開2003−177523号公報の段落[0012]〜[0015]、特開2003−177521号公報の段落[0010]〜[0013]、特開2003−177519号公報の段落[0010]〜[0013]、特開2003−177520号公報の段落[0012]〜[0015]、特開平11−133600号公報の段落[0034]〜[0035]、特開平6−16684号公報に記載の界面活性剤が好適に挙げられる。
【0035】
仮支持体との接着性をより高めるためには、フッ素系界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコーン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいはこれらの2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。
【0036】
また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えば、エフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF−780−F、F171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。また、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0037】
熱可塑性樹脂層の100℃における溶融粘度(ηCu)は、η/ηCu>2の関係を満たす範囲で選択することができる。その中でも、ηCuは、200Pa・s〜3000Pa・sが好ましく、より好ましくは200Pa・s〜2000Pa・sであり、最も好ましくは500Pa・s〜2000Pa・sである。
ηCuが前記範囲内であると、ラミネートにより形成される隔壁の欠け欠陥の発生防止に有効であると共に、転写時の熱可塑性樹脂層のはみ出し及びこれによるラミネートのヒートロールの汚染を防止して良好に転写が行なえ、基板上の凹凸に対する追従性を確保して永久支持体への密着を良好にすることができる。
【0038】
熱可塑性樹脂層の溶融粘度ηCuを上記の範囲に調整する手段としては、熱可塑性樹脂層を構成するポリマーの中の低分子量ポリマーの含有率と可塑剤の含有率とを調整する方法等がある。熱可塑性樹脂層を柔らかく軟化する場合には、(1)可塑剤を添加量を高め
る、(2)低分子量ポリマーの含有率を高めて高分子量成分の割合を低くする、等の方法
により調整できる。
【0039】
熱可塑性樹脂層を構成するポリマーの中の高分子量ポリマーPと低分子量ポリマーPとの含有比(P/P)としては、10/90以上70/30未満が好ましく、12/88以上60/40未満がより好ましく、15/85以上50/50未満が最も好ましい。これらの含有比が前記範囲内であると、ラミネートにより形成される隔壁の欠け欠陥の発生防止に有効であると共に、剥離性とクッション性を確保することができる。
【0040】
可塑剤を添加する場合の添加量としては、熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂成分及び可塑剤の固形分量に対して、28〜43質量%が好ましく、より好ましくは30〜40質量%であり、32〜38質量%が特に好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、ラミネートして転写形成される隔壁の欠け欠陥の発生を防止し得る程度に熱可塑性樹脂層の粘度を低減するのに有効であると共に、クッション性を確保でき、転写時の熱可塑性樹脂層のはみ出し及びこれによるラミネートのヒートロールの汚染を防止することができる。
【0041】
−感光性樹脂層−
本発明の感光性転写材料は、仮支持体上に設けられた前記熱可塑性樹脂層の仮支持体と対向しない側に少なくとも一層の感光性樹脂層を有してなる。感光性樹脂層は、隔壁等の樹脂構造物を形成する場合に該樹脂構造物を構成する層であり、後述するようなブラックマトリクス形成用の組成物を好適に用いることができる。
【0042】
感光性樹脂層の100℃における溶融粘度(ηCu)は、η/ηCu>2の関係を満たす範囲で選択することができる。その中でも、ηは、2000Pa・s〜1000000Pa・sが好ましく、より好ましくは4000Pa・s〜50000Pa・sであり、最も好ましくは10000Pa・s〜50000Pa・sである。
ηが前記範囲内であると、ラミネートにより形成される隔壁の欠け欠陥の発生が効果的に抑えられると共に、永久支持体への密着を確保できる。
【0043】
感光性樹脂層の溶融粘度ηを上記の範囲に調整する手段としては、(1)モノマー/バインダーポリマーの比率を調節する、(2)感光性樹脂層の固形分中の顔料割合を調整する、(3)バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)を調整する、等の方法が挙げられる。
特に、感光性樹脂層を硬くする硬化方法としては、(1')モノマー(M)/バインダーポリマー(B)の比率(M/B)を小さく(好ましくは0.8≦M/B≦0.5)する、(2')感光性樹脂層に顔料を添加して固形分中の顔料割合を高める、(3)Tgの高い(好ましくはTg≧80)バインダーポリマーを選択する、等が挙げられる。中でも、(3)の方法が、感光性樹脂層のベーク処理後の物性に影響を与えることが少ない点で特に好ましい。
【0044】
隔壁形成用の本発明の感光性転写材料の感光性樹脂層は、隔壁を形成した際にブラックマトリクスなどの遮光機能を持つように構成されることが好ましい。隔壁は、公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材を用いて作製することができる。公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスとしては、例えば、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクス、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020]や特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどである。
【0045】
感光性樹脂層の構成を詳細に説明する。
感光性樹脂層は、色材、バインダーポリマー、モノマー、及び重合開始剤を含んでなり、必要に応じて更に、重合禁止剤、界面活性剤などを用いて構成することができる。
【0046】
前記色材としては、赤色、青色、緑色、黒色など、目的に応じた色相の公知の顔料を適宜選択して用いることができる。感光性樹脂層は遮光機能を有していることが好ましく、この場合は顔料として黒色顔料が好適に用いられる。
黒色顔料としては、炭素質黒(カーボンブラック、グラファイトなど)、金属化合物(チタンブラックなど)等が挙げられる。カーボンブラックの例としては、Pigment Black(ピグメント・ブラック)7(カーボンブラック C.I.No.77266)が好適である。チタンブラックの例としては、TiO、TiO、TiNやこれらの混合物がある。これら黒色顔料の中でも、遮光性に優れる点で、カーボンブラックが好ましい。
【0047】
感光性樹脂層は、アルカリ水溶液により現像可能なものと、有機溶剤で現像可能なものとがある。安全性と現像液のコストの点で、アルカリ水溶液現像可能なものが好ましい。更には、感光性樹脂層は、感光性を有し、アルカリ水溶液で現像可能なものがより好ましく、光重合性組成物を用いて構成することができる。
「感光性を有し、アルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂層」を構成する光重合性組成物としては、主成分として、カルボン酸基などの酸基を含有するアルカリ可溶性のバインダーと、多官能アクリルモノマーなどの重合性もしくは架橋性化合物と、光重合開始剤とを含むものが挙げられ、露光されると光重合開始剤からラジカルなどの開始種が発生し、重合性もしくは架橋性化合物の重合、架橋反応を生起、進行させ、露光領域が硬化する特性を有する。
【0048】
前記重合性もしくは架橋性化合物としては、多官能アクリルモノマーが好適である。多官能アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類が好ましく挙げられる。
前記カルボン酸基等の酸基を含有するバインダーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和有機酸化合物とメチルアクリレート、エチルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の不飽和有機酸エステル化合物の共重合体が好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば、ハロメチルオキサジアゾール系化合物又はハロメチル−s−トリアジン系化合物を好適に挙げられる。
【0049】
また、それぞれの成分の感光性樹脂層中における好ましい含有量は、全固形分中の質量%で表すと、顔料は10%〜50%であり、多官能アクリレートモノマーは10%〜50%であり、カルボン酸基含有バインダーは20%〜60%であり、光重合開始剤は1%〜20%である。
但し、本発明に使用可能な光重合性組成物は上記に限定されるものではなく、公知のものの中から適宜選択することできる。
【0050】
感光性樹脂層の層厚としては、混色防止の点で、0.5〜10μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。
【0051】
−その他−
本発明の感光性転写材料は、前記の熱可塑性樹脂層や感光性樹脂層以外に、必要に応じて中間層や保護フィルムを有してもよい。
感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体、中間層、及び保護フィルム、並びに転写材料の作製方法の詳細については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066]に記載のものを好適なものとして適用することができる。
【0052】
感光性転写材料は、特開平5−72724号公報に記載の感光性樹脂転写材料、すなわち一体型に構成されたフィルムに構成されることが好ましい。一体型フィルムの構成例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/保護フィルムの順に積層された構成が挙げられる。
【0053】
<隔壁及びその製造方法>
本発明の隔壁は、前記本発明の感光性転写材料を用い、この感光性転写材料を、感光性樹脂層が永久支持体に接するように、該永久支持体に圧着する工程(以下、「転写工程」ということがある。)を設けて形成される。
本発明の隔壁は、好ましくは、本発明の感光性転写材料をその感光性樹脂層が永久支持体に接するように該永久支持体に圧着する工程(転写工程)と、圧着後の少なくとも前記感光性樹脂層を露光し、現像する工程(以下、「パターニング工程」ということがある。)とを設けて形成される。
【0054】
永久支持体に圧着する工程(転写工程)では、少なくとも隔壁を形成する感光性樹脂層を永久支持体に転写形成(ラミネータなどによって貼付)する。すなわち、感光性転写材料を感光性樹脂層が永久支持体に接するように永久支持体に圧着し、永久支持体上の感光性樹脂層を所望のパターン状に露光し、さらに現像することにより好適に作製することができる。また、必要に応じて、ポスト露光する工程やポストベークする工程などの他の工程を設けてもよい。仮支持体は、転写後パターン状に露光する前に除去してもよいし、パターン状に露光した後に除去してもよい。
【0055】
転写工程としては、特開2006−23696号公報の段落番号[0037]に記載の方法や、WO2006−4225に記載のラミネータを用いて転写する方法が、本発明においても好適である。また、パターン状に行なう露光、現像、ポスト露光やポストベークなどの工程については、特開2006−23696号公報の段落番号[0038]〜[0051]に記載の方法を適用することができる。
【0056】
本発明の隔壁は、前記本発明の感光性転写材料を用いて形成されるので、壁欠けの欠陥(欠け欠陥)の発生が防止されており、インクジェット法によりインクを付与した際のインクの混色が効果的に防止され、色特性の良好なカラーフィルタ、ひいては表示特性に優れた表示装置が得られる。また、感光性樹脂転写材料を用いた転写によるので、コスト削減の観点でも好ましい。
【0057】
隔壁は、本発明の感光性転写材料を用いた転写法により得られるものであればいずれのものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は隔壁がブラックマトリクスなどの遮光機能を有していることが好ましい。
【0058】
また、隔壁は、付与されたインクジェットインクの混色を防ぐために、撥インク処理が施されてもよい。撥インク処理については、例えば、(1)撥インク性物質を隔壁に練りこむ方法(例えば、特開2005−36160号公報参照)、(2)撥インク層を新たに設ける方法(例えば、特開平5−241011号公報参照)、(3)プラズマ処理により撥インク性を付与する方法(例えば、特開2002−62420号公報参照)、(4)隔壁の壁上面に撥インク材料を塗布する方法(例えば、特開平10−123500号公報参照)、などが挙げられ、特に(3)基板上に形成された隔壁にプラズマ処理により撥インク性を付与して隔壁を撥インク化処理する方法が好ましい。
【0059】
隔壁の高さとしては、混色防止の点で、0.5〜10μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。
【0060】
隔壁の光学濃度は、高い遮光性を有する隔壁(例えばブラックマトリックス)を形成できる点で、3〜5であることが好ましい。
隔壁の光学濃度は、分光光度計UV−2100〔(株)島津製作所製〕を用いて、隔壁(例えばブラックマトリクス)が形成された隔壁付き基板の透過光学濃度(OD)を波長555nmで測定すると共に、各隔壁付き基板に用いた基材(例えばガラス基材)の透過光学濃度(OD)を同様の方法で測定し、ODからODを差し引いた透過濃度OD(=OD−OD)を光学濃度として測定できる。
【0061】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
本発明のカラーフィルタの製造方法は、本発明の隔壁を形成する工程と、形成された隔壁間に着色領域を形成する工程(以下、「着色領域形成工程」ということがある。)とを設けて構成される。「本発明の隔壁を形成する工程」は、既述の本発明の隔壁の製造方法により隔壁を形成するものであり、転写工程を有し、好ましくは転写工程とパターニング工程とを有して構成されるものである。
【0062】
本発明のカラーフィルタの製造方法では、既述のように本発明の隔壁を形成した後、永久支持体上に形成された隔壁で挟まれた隔壁間、具体的には例えばマトリックス状のカラーフィルタを形成する場合は隔壁で囲まれた凹状の領域に、着色液体組成物(以下、インクともいう)を、(好ましくはインクジェット方式により)付与して着色領域を形成する(着色領域形成工程)。着色領域は、カラーフィルタを形成したときの赤色(R)、緑色(G)、青色(B)等の個々の着色画素をなすものである。
【0063】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、着色領域形成工程以外に、好ましくは更に、形成された少なくとも1色の着色領域を活性エネルギー線の照射により硬化する硬化工程や、所望の色相の着色領域の少なくとも1つ又は全てを形成した後に熱により硬化する硬化工程を有する。
【0064】
−着色領域形成工程−
着色領域形成工程では、形成された隔壁間に着色領域を形成する。この着色領域の形成は、上記のように、着色液体組成物(インク)をインクジェット法により隔壁間に付与する方法により行なうことが好ましい。この場合、基板上に形成された隔壁で取り囲まれた凹状の部分に、着色画素(例えばRGB3色の画素パターン)を形成するためのインクジェットインクを吐出して侵入させることで、2色以上の複数の着色画素で構成されるようにカラーフィルタを作製することができる。
【0065】
カラーフィルタのパターン形状については、特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0066】
インクジェット法としては、帯電したインクジェットインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。具体的には、インクジェットヘッドを用いてインクを吐出する方法が好適である。
【0067】
インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう。)には、公知のものを適用することができ、コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。
ドットオンデマンドタイプのうち、サーマル型ヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾ型ヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを用いることができる。これらの中で、インクジェットインクに対する熱の影響を少なくすることができ、使用可能な溶剤の選択が広いことから、ピエゾヘッドがより好ましい。
【0068】
ヘッドは、インクの温度が管理できるように温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は、5〜30mPa・sとなるように射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるようにインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。
【0069】
ヘッドのノズルの形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形、矩形など形状には制限はない。ノズル径は、10〜100μmの範囲であることが好ましい。なお、ノズルの開口部自身必ずしも真円とは限らないが、その場合にはノズル径とは、開口部の面積と同等の円を仮定しその径とする。
【0070】
インクジェットインクの射出条件としては、特に制限はなく、室温で行なってもよい。インクジェットインクを30〜60℃に加熱し、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。有機系インクジェットインクは、概して水性インクより粘度が高いため、温度変動による粘度変動幅が大きい。粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こしやすいため、インクジェットインク温度をできるだけ一定に保つことが重要である。
【0071】
なお、着色液体組成物(インク)をインクジェット法により付与する場合、隔壁を有する永久支持体を固定配置し、インクジェットヘッドを1次元方向に平行移動させてもよいし、逆にインクジェットヘッドを固定配置し、永久支持体を1次元方向に平行移動させてもよく、あるいはインクジェットヘッドを1次元方向に平行移動させると共にこの方向と略直交する1次元方向に隔壁を有する永久支持体を平行移動させてもよい。
【0072】
本発明におけるカラーフィルタは、RGBを含む少なくとも3色のインクを吹き付けて少なくとも3色の着色領域(すなわち着色画素)からなる群(画素群)で構成された形態が好ましい。
【0073】
本発明における着色液体組成物(インク)は、着色剤、有機溶剤、及びモノマーを少なくとも含有することができ、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
インクの物性値は、25℃の粘度としては10〜100mPa・sが好ましく、25℃の表面張力としては10〜50mN/mが好ましい。
【0074】
本発明に用いるインクは、油性及び水性のいずれであってもよい。また、そのインクに含まれる着色剤は、染料、顔料ともに使用することができ、耐久性の面からは顔料の使用が好ましい。また、公知のカラーフィルタの作製に用いられる塗布方式の着色インク(例えば、特開2005−3861号公報の段落[0034]〜[0063]や[0076]〜[0078]などに記載の着色樹脂組成物)や、特開平10−195358号公報の段落[0009]〜[0026]や、特開2004−339332号公報や特開2002−372615号公報に記載のインクジェット用組成物を使用することができる。
【0075】
本発明におけるインクには、着色領域形成後の工程を考慮し、加熱によって硬化する、又は紫外線などのエネルギー線によって硬化する成分を添加することもできる。
加熱によって硬化する成分としては、各種の熱硬化性樹脂が広く用いられ、また、エネルギー線によって硬化する成分としては、例えばアクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体に光反応開始剤を添加したものが挙げられる。特に耐熱性を考慮すると、アクリロイル基、メタクリロイル基を分子内に複数有するものがより好ましい。これらのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体は水溶性のものが好ましく使用でき、水に難溶性のものでもエマルション化するなどして使用できる。
【0076】
本発明においては、インクを隔壁間に付与(例えば吐出)後、液滴に含まれる溶剤を除去してインク残部とした後に、前記インク残部を加熱(いわゆるベーク処理)することでインク残部を硬化させて着色層を形成するようにすることができる。ここでの加熱は、1段階で行なうことも、多段階で行なうことも可能である。
1段階での加熱とは、溶剤除去してインク残部とした後、初めから完全にインクを硬化させる所定の温度にて加熱することであり、多段階での加熱とは、初めは比較的低温で加熱を開始し、その後順次加熱温度を上げて最終的に完全にインクを硬化させる所定の温度で加熱することである。
【0077】
加熱の方法としては、ホットプレート、電気炉、乾燥器等による加熱、あるいは赤外線を照射することによる方法が挙げられるが、これに制限されるものではない。
この加熱前に、インク残部を活性エネルギー線で硬化させる工程を設けてもよい。
【0078】
加熱時の加熱温度及び加熱時間は、インクジェットインクの組成や着色領域の厚みに依存するが、一般に充分な画素強度、耐溶剤性、耐アルカリ性などを確保する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0079】
本発明においては、着色領域形成工程から加熱を行なう加熱工程までを24時間以内で行なうことが好ましく、12時間以内で行なうことがより好ましく、6時間以内に行なうことがさらに好ましい。着色領域を形成した後長時間放置せずに前記時間範囲内で加熱を開始することにより、インク中の顔料の凝集や各種バインダー等の析出を防止でき、面状の良好な着色領域(すなわち着色画素)を形成することができる。
【0080】
上記のように、隔壁及び着色領域(着色画素)を形成してカラーフィルタを作製した後には、耐性向上の目的で、着色領域及び隔壁の全面を覆うようにオーバーコート層を形成することができる。
【0081】
オーバーコート層は、R,G,B等の着色領域及び隔壁を保護すると共に、カラーフィルタの表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える点からは、設けないことが好ましい。
【0082】
オーバーコート層は、樹脂(OC剤)を用いて構成することができる。樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性に優れ、着色液体組成物(インク)の樹脂成分が通常アクリル系樹脂を主成分としたものであって密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品として、JSR社製のオプトマーSS6699Gが挙げられる。
【0083】
本発明のカラーフィルタは、既述の本発明のカラーフィルタの製造方法により作製されたものであり、例えば、テレビ、パーソナルコンピューター、液晶プロジェクター、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの用途に特に制限なく好適に適用できる。本発明のカラーフィルタにおいては、隔壁(例えばブラックマトリクスとして機能する隔壁)が既述の本発明の感光性転写材料で構成されていればよく、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、白色(W)、紫色(V)等の任意の色画素を形成して構成することができる。
【0084】
<表示装置>
本発明の表示装置は、既述の本発明のカラーフィルタを備えるものであれば、特に限定するものではない。本発明の表示装置には、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置が含まれる。
【0085】
表示装置の定義や各表示装置の説明は、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
【0086】
本発明の表示装置としては、中でも液晶表示装置であることが特に好ましい。液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。液晶表示装置には、特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置が適用できる。
本発明の表示装置は、特にカラーTFT方式の液晶表示装置に構成されるのが有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに、本発明の表示装置は、IPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置にも適用できる。これらの方式については、例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
【0087】
液晶表示装置は、カラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルムなど、様々な部材を用いて構成される。これらの部材については、例えば、「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場
(島 健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉、(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
【0088】
本発明の表示装置は、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest Host)のような様々な表示モードが採用できる。
【0089】
本発明の表示装置は、既述のように本発明の感光性転写材料を用いることにより混色を抑えて色純度及び色相の良好なカラーフィルタを備えるので、テレビ、モニターに搭載したときに、色ムラ等の表示ムラがなく、広い色再現域と高コントラスト比を有する画像を表示することができる。また、ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の表示装置等にも好適である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。下記実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は、本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができ、したがって本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、特に断りのない限り、「%」及び「部」はいずれも質量基準であり、分子量は重量平均分子量を表す。
【0091】
(実施例1)
[隔壁形成用の濃色組成物の調製]
下記表1に記載の量のK顔料分散物1、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150r.p.m.で10分間
攪拌し、攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダー2、フェノチアジン、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスジエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、及び界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150r.p.m.で30分間攪拌することによって、濃色組
成物K1を得た。
なお、下記表1に記載の量は質量部であり、各成文の詳細は下記の通りである。
【0092】
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0093】
【化1】

【0094】
<B顔料分散物1>
・商品名:CFブルーEX3357(御国色素(株)製)
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) ・・・27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・73%<バインダー3>
・ポリマー ・・・27%(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート(=36/22/42[モル比])のランダム共重合物、重量平均分子量3.8万)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・73%<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD
DPHA) ・・・76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・24%<界面活性剤1>
・下記構造物1 ・・・30%
・メチルエチルケトン ・・・70%
【0095】
【化2】



【0096】
【表1】



【0097】
[隔壁の形成]
(感光性転写材料K1の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させて熱可塑性樹脂層を形成した。次に、下記処方P1からなる中間層用塗布液を、熱可塑性樹脂層の上にさらに塗布、乾燥させて中間層(酸素遮断膜)を形成した。この中間層上にさらに、前記濃色組成物K1を塗布、乾燥させて感光性樹脂層K1を形成した。
このようにして、PET仮支持体の上に、乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.3μmの感光性樹脂層K1を積層し、この感光性樹脂層K1の表面に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。
以上のようにして、仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層と感光性樹脂層K1とが一体となった感光性転写材料K1を作製した。
【0098】
ここで、下記処方Hの熱可塑性樹脂層用塗布液を別に用意したガラス板に塗布し、80℃のオーブン中で2分間乾燥し、約10μmの膜厚の乾燥膜を作製した。さらに、約15mmHgの真空度にて40℃で6時間真空乾燥を行ない、ガラス板から剥がして試料とした。Jasco International Co.Ltd製の粘弾性測定装置DynAlyser DAS-100を用いて、測定温度100℃、周波数1Hzで測定したところ、1800Pa・sであった。また、上記とは別に、上記の濃色組成物K1を別のガラス板に塗布し、80℃のオーブン中で2分間乾燥した後、約10μmの膜厚の乾燥膜を作製した。さらに、約15mmHgの真空度にて40℃で6時間真空乾燥を行ない、ガラス板から剥がして試料とした。Jasco International Co.Ltd製の粘弾性測定装置DynAlyser DAS-100を用いて、測定温度100℃、周波数1Hzで測定したところ、3800Pa・sであった。
よって、上記の感光性転写材料K1における溶融粘度の比η/ηCuは、2.1であった。
【0099】
<熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1>
・メタノール ・・・11.1部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・6.36部
・メチルエチルケトン ・・・52.4部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、分子量=10万、Tg≒70℃) ・・・6.80部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=63/37、平均分子量=1万、
Tg≒100℃) ・・・10.2部
・2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン
(新中村化学工業(株)製) ・・・9.1部
・前記界面活性剤1 ・・・0.54部
【0100】
<中間層用塗布液:処方P1>
・PVA205 ・・・32.2部
(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550)
・ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製、K−30)・・・14.9部
・蒸留水 ・・・524部
・メタノール ・・・429部
【0101】
次に、無アルカリガラス基板(以下、単に「ガラス基板」ともいう。)を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながら、ナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、さらに純水でシャワー洗浄した。その後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置により100℃で2分間加熱した。
【0102】
得られたシランカップリング処理ガラス基板に、上記より得た感光性転写材料K1から保護フィルムを除去し、除去後に露出した感光性樹脂層K1を、その表面がシランカップリング処理ガラス基板の表面と接するように重ね合わせ、WO2006−4225のFig.24に記載の大型二丁貼ラミネータを用いてラミネートした。このとき、ラミネータの詳細については、以下の通りである。
【0103】
【表2】



【0104】
続いて、PET仮支持体を、熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、仮支持体を除去した。仮支持体を剥離後、ミラープロジェクション型露光機(MPA−8800CF、キャノン(株)製)により、露光量100mJ/cmにてパターン露光した。
【0105】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30%含有、商品名:T−PD2(富士写真フイルム(株)製)を純水で12倍(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合)に希釈した液)を30℃で50秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
【0106】
引き続き、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士写真フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、感光性樹脂層K1を現像し、パターン像を得た。
【0107】
引き続き、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD1(富士写真フイルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、更にナイロン毛を有する回転ブラシにより、形成されたパターン像を擦って残渣除去を行ない、所望の隔壁パターンを得た。
【0108】
その後、メタルハライドランプを有するウシオ電気(株)製の露光機で3000mJ/cm2の露光量にて隔壁パターンが形成されたガラス基板に対して両面からポスト露光を行なった後、220℃で20分間熱処理し、光学濃度4.0、膜厚2.0μm、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0109】
[撥インク化プラズマ処理]
隔壁が形成されたガラス基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を施した。
(条件)
・使用ガス :CF
・ガス流量 :80sccm
・圧力 :40Pa
・RFパワー:50W
・処理時間 :30sec
【0110】
[着色液体組成物の調製]
下記の成分のうち、先ず、顔料、高分子分散剤及び溶剤を混合し、3本ロールとビーズミルを用いて顔料分散液を得た。その顔料分散液をディソルバー等で十分攪拌しながら、その他の材料を少量ずつ添加し、赤色(R)画素用の着色液体組成物(インクR)を調製した。
【0111】
〈赤色画素用の着色液体組成物の組成〉
・顔料(C.I.ピグメントレッド254) ・・・5部
・高分子分散剤(AVECIA社製のソルスパース24000) ・・・1部
・バインダー ・・・ 3部
(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=72/28[モル比])のランダム共重合物、重量平均分子量3.7万)
・第一エポキシ樹脂 ・・・2部
(ノボラック型エポキシ樹脂、油化シェル社製エピコート154)
・第二エポキシ樹脂(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル) ・・・5部
・硬化剤(トリメリット酸) ・・・ 4部
・溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル ・・・80部
【0112】
さらに、前記組成中のC.I.ピグメントレッド254をこれと同量のC.I.ピグメントグリーン36に代えた以外は、前記赤色画素用の着色液体組成物と同様にして、緑色(G)画素用の着色液体組成物(インクG)を調製した。
また更に、前記組成中のC.I.ピグメントレッド254をこれと同量のC.I.ピグメントブルー15:6に代えた以外は、赤色画素用の着色液体組成物と同様にして、青色(B)画素用の着色液体組成物(インクB)を調製した。
【0113】
[インクジェット法による画素の形成]
インクジェットヘッドとしてDimatix社製のSE−128を、吐出制御装置としてDimatix社製のApolloIIを用い、以下の形態でインクを打滴した。
インクジェットヘッドを自動2次元移動ステージ(駿河精機製KS211−200)上に搭載し、隔壁が形成されたガラス基板の隔壁で囲まれた凹部に所定インク量が吐出されるように、ステージを移動させながら吐出制御装置によるヘッドからの吐出を同期させた。ここで、インクR、インクG、及びインクBの3色のインクは、各々別のヘッドに充填されており、各ヘッドはXYステージ上に固定され、各々のインクが所定の位置に着弾するように、吐出制御装置により3つのヘッドを独立に制御した。
打滴は、所望の濃度になるまで各色のインクを吐出し、吐出完了後、ホットプレートで100℃で2分間加熱乾燥させた後、さらに230℃のオーブン中で30分間ベーク処理することにより、隔壁及び着色画素(R画素、G画素、及びB画素)ともに良好に硬化されたカラーフィルタを作製した(以下、これを「カラーフィルタ基板」という。)。
【0114】
〜カラーフィルタの評価〜
得られたカラーフィルタ基板における混色の程度を以下の方法により評価した。
カラーフィルタを光学顕微鏡を用いて観察し、カラーフィルタから任意に選択した3000画素について、インク混色の発生の有無を観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。結果は下記表5に示す。なお、実用上許容可能なランクは、Aランク、Bランク、及びCランクである。
〈評価基準〉
Aランク:全く混色がなかった。
Bランク:混色が1〜2箇所認められた。
Cランク:混色が3〜4箇所認められた。
Dランク:混色が5〜10箇所認められた。
Eランク:混色が11箇所以上認められた。
【0115】
[表示装置の作製]
上記より得たカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びに隔壁の上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)透明電極をスパッタリングにより形成した。別途、対向基板としてガラス基板を用意し、同様にITO透明電極をスパッタリングにより形成した。そして、前記ITO透明電極上の隔壁の上方に相当する部分にフォトスペーサを設け、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0116】
−液晶配向分割用突起の形成−
下記処方Aよりなる突起用感光性樹脂層用塗布液を、上記と同様のスリットコーターによりカラーフィルタ上のITO透明電極の上に塗布し、乾燥させて突起用感光性樹脂層を形成した。
次に、突起用感光性樹脂層上に前記処方P1よりなる中間層用塗布液を用いて、乾燥膜厚が1.6μmの保護層を設けた。
【0117】
〈突起用感光性樹脂層用塗布液:処方A〉
・ポジ型レジスト液 ・・・53.3部
(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製、FH−2413F)
・メチルエチルケトン ・・・46.7部
・前記界面活性剤1 ・・・ 0.04部
【0118】
次に、フォトマスクの位置が突起用感光性樹脂層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティー露光機を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cmにてプロキシミティー露光した。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間、突起用感光性樹脂層に噴霧しながら現像し、突起用感光性樹脂層の不要部(露光部)を現像除去した。すると、カラーフィルタのITO透明電極の上の、R画素、G画素、及びB画素の上方に位置する部分に、所望形状にパターニングされた突起が形成された。次いで、この突起が形成されたカラーフィルタ基板を240℃下で50分間ベーク処理することにより、カラーフィルタ基板上に高さ1.5μm、縦断面形状(ガラス基板面の法線方向と平行な面の形状)が蒲鉾様の配向分割用突起を形成することができた。
【0119】
その後、カラーフィルタの画素群の周囲を取り囲むように設けられた隔壁外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、MVAモード用液晶を滴下して対向基板と貼り合わせ、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを得た。この液晶セルの両面に(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付け、次いで冷陰極管のバックライトを構成して前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0120】
〜表示装置の評価〜
表示装置に通電して表示画像を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。結果は下記表5に示す。
〈評価基準〉
正常 :色ムラ等の表示ムラはなかった。
ムラ有り:色ムラが認められた。
【0121】
(実施例2〜13、比較例1〜2)
実施例1において、濃色組成物K1の組成、熱可塑性樹脂層用塗布液の組成(処方H1)をそれぞれ、下記表3、表4のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、カラーフィルタ及び液晶表示装置を作製すると共に、粘度測定、混色の評価を行なった。測定、評価の結果は下記表5に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
【表4】



【0124】
(実施例14)
実施例7において、ラミネータの、上ラミロール(仮支持体に接触するローラー)の温度を120℃、下ラミロール(基板に接触するローラー)の温度を120℃に変更したこと以外、実施例7と同様にして、カラーフィルタ及び液晶表示装置を作製すると共に、粘度測定、混色の評価を行なった。測定、評価の結果は下記表5に示す。
【0125】
【表5】



【0126】
前記表5に示すように、実施例では、混色の発生が抑えられ、表示された画像は色ムラ等がなく正常な画像であった。これに対し、比較例では、混色が発生し、表示された画像には色ムラが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体上に、該仮支持体側から順に少なくとも熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とを有する隔壁形成用の感光性転写材料であって、
前記感光性樹脂層の100℃における溶融粘度ηと、前記熱可塑性樹脂層の100℃における溶融粘度ηCuとがη/ηCu>2の関係を満たす感光性転写材料。
【請求項2】
前記溶融粘度ηは、1000000Pa・s>η>2000Pa・sを満たすことを特徴とする請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記溶融粘度ηCuは、200Pa・s<ηCu<3000Pa・sを満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記感光性樹脂層が顔料を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写材料を、感光性樹脂層が永久支持体に接するように、該永久支持体に圧着する工程を有する隔壁の形成方法。
【請求項7】
圧着後の少なくとも前記感光性樹脂層を露光し、現像する工程を有することを特徴とする請求項6に記載の隔壁の形成方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の隔壁の形成方法により形成された隔壁。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の隔壁の形成方法により隔壁を形成する工程と、形成された隔壁間に着色領域を形成する工程とを有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
前記着色領域の形成は、着色液体組成物をインクジェット法により前記隔壁間に付与する方法により行なうことを特徴とする請求項9に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルタを備えた表示装置。

【公開番号】特開2008−107779(P2008−107779A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114568(P2007−114568)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】