説明

感圧材料

圧力の変化を光学的に検地し得る高分子材料を提供する。
この材料はポリウレタン、ポリアクリレート、及びシリコーンから選ばれるエラストマーを、光化学システムとの組み合わせで含む。この光化学システムは、エキシプレックス(エキシプレックス)あるいは蛍光共鳴エネルギー移動の形態であってもよい。両方の光化学システムは相互に可逆的なプロセスである。このエラストマーの合成と光化学システムは、圧力の増大時に励起した電荷移動錯体を形成し、圧力の減少時には電荷移動錯体の形成が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面圧力の定量的な測定のために有用な高分子材料に関するものである。より具体的には、本発明は、圧力変化に対して光学的に検知可能性な応答を示すナノ材料の合成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非機器的な光学的方法によって包括的な表面圧力データを得ることは、多年にわたり求められてきたところである。これらのデータを得るために使用されてきた技術は、ラマン分光法から感圧塗料と通称される材料にまで及んでいる。伝統的に、感圧塗料は、その中にいろんな発色団のうちの一つが封入されているホストマトリックス(母材)からなっている。このホストマトリックスは、多くの場合、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の如き高分子材料であるが、ゾル‐ゲルのような他の物質も使用されてきた。これまでに使用されてきた伝統的な発色団は、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)及びルテニウムをベースとする錯体である。この感圧塗料の機能性は、酸素による発色団のルミネッセンス発光の動的消光に依存する。この動的消光を効果的にするためには、ホストマトリックスは塗料を通して発色団へ酸素の拡散を許容するものでなければならない。酸素拡散を必要とする先行技術の一例は、ゴーターマン(Gouterman)に付与された米国特許第5,665,632号であり、それにはアクリル及びフルオロアクリルポリマーの接着剤を含む感圧塗料が教示されている。このポリマーマトリックス中には感圧性の色素が溶解又は分散されている。この色素は酸素分子の存在下で発光する。同様に、先行する非関連出願であるケリーら(Kelley et. al.)の出願で使用されている感圧性材料は、ホストポリマーと該ホストポリマーに付着した蛍光を発する化合物とを有するものであ。このホストポリマーは、ゴム状エラストマーよりも「ゴムのような」特徴を持つ。さらに、ケリーらは、ポリウレタンやゴム状にしたポリメタクリレートの代わりに、ポリスチレンの使用に焦点を当てているが、それは該ポリマーには酸素が含まれないことによる。したがって、先行技術の感圧塗料では酸素に対する感受性が制約となっている。
【0003】
酸素による動的消光は、スターン・ボルマーの式として知られる関係に従う。この式では、発光強度の変化、I、と局所的な酸素分圧、Po、との関係は、I/Io=A+B(P/Po)であらわされる。ここで、A=Ka/(Ka+KaPo)であり、B=KaPo/(Ka+KaPo)である。これらの数式におけるIoは入射励起光の強さ、Koは酸素不存在下での固有の脱励起速度、Kqは酸素との衝突による消光速度、Pは分圧である。さらに、A+B=1である。発光強度における変化と局所的な酸素分圧との関係の典型的なプロットは、図1に示される。高速テスト(例えば超音速)で通常に採用される条件の下では、スターン・ボルマーの式に従う系は、圧力のわずかな変化でも発光強度に比較的大きな変化をもたらす。しかしながら、同じ系を低速の(例えば大気中の)テストに用いると、大きな圧力変化でも発光強度の変化は非常に小さい。このことは、発光強度の小さい変化と圧力の大きな変化におけるスターン・ボルマーの式を示す図2に示されている。加えて、スターン・ボルマーの式に従う系では、圧力の増大によって発光強度が低減することを示している。したがって、このことは、信号対ノイズ比が真空又は真空に近い条件での最大信号対ノイズ比に比べてより低くなるという結果を招く。
【0004】
これらの系は、圧力変化による発光強度の変化が酸素消失に依存しているため、ホストマトリックスでの何らかの酸素透過性の変動が感圧塗料の性能を変化させることになり、例えば、湿度及び/又は温度が感圧塗料の性能に影響する。悪いことに、人の肌に通常見られる油類でさえ、いくつかの伝統的な感圧塗料組成の性能に影響を及ぼし、該塗料が塗布された検査品の取り扱いを困難にしている。それ故、酸素に対する感受性が軽減された感圧性材料に対するニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、圧力の変化を光学的に検出可能な応答を表すべく適用されるナノ‐材料を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面では、圧力を検知するための高分子材料が提供される。この材料は、脂肪族ジイソシアネート、ヒドロキシル末端のポリオール、鎖伸張ジオールを持つように修飾された光化学系(フォトケミカルシステム)の群から選ばれるポリウレタンエラストマーを包含する。加えて、この材料は、イソシアネートのヒドロキシに対するモル比が約1ないし2の範囲にあるもの、そして、ジオール混合物のモル比が約10:1ないし1:2の範囲にあるもの合を含む。前記光化学系は、エキシプレックス(励起錯体)又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)であってもよい。前記脂肪族ジイソシアネートは、イソフォロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートであってもよい。また、前記ヒドロキシ末端ポリオールは、ポリプロピレングルコール又はポリテトラメチレングリコールの形をとっていてもよい。このポリウレタンエラストマーは、好適には、圧力増大時における励起状態の電荷移動錯体の形成及び圧力減少時の励起が少ない電荷移動錯体の形成に適用される。励起した電荷移動錯体は、好ましくは、圧力変化に応答して光学的に検知可能なルミネッセンス発光をもたらす。このポリウレタンエラストマーは、圧力を受けたときの変形を測定するためのプローブを分子鎖中に含んでいてもよい。このプローブは、スペクトルの発光の変化を通じて分子鎖中の変化をレポートするものが好ましい。さらなる実施態様では、ポリウレタンエラストマーは、エラストマー濃度が重量にして約3%ないし10%である溶液状に調製されていてもよい。この溶液は、スプレー装置により二次表面に前記材料を付与できることが好ましい。
【0007】
本発明の第2の側面では、ポリアクリレート及びシリコーンの群から選ばれる1種のエラストマーが、光化学系と組み合わせて、圧力検出のために使用される。ポリアクリレートエラストマーは、ブチルアクリレート、及びメチルメタアクリレートからなる群から選ばれる。ブチルアクリレート、メチルメタアクレート及びシリコーンの重量含有率は、約20%ないし約90%が好ましく、また、該光化学系は、ポリマー10グラム当り約1ミリグラムないし100ミリグラムの範囲で色素分子を含む。この光化学系は、好適には、エキシプレックス(励起錯体)又は蛍光共鳴エネルギー移動すなわちFRETである。エキシプレックスの分子の組み合わせには、アントラセンとジメチルアニリン、ぺリレンとジメチルアニリン、又は、ピレンとペリレンの組み合わせが含まれる。前記FRETのドナー−アクセプター系は、蛍光ドナーとローダミンアクセプターが好適である。前記ポリアクリレートエラストマーは、好適には、重量にして約3%ないし約10%の溶液からなる。この溶液は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、アセトン及び/又はトルエンの如き溶媒を含むことができる。これらの溶媒の目的は、蒸発速度、塗布厚み、及びスペクトル応答の如き特性を好適にコントロールすることにある。この溶液は、スプレー装置を通して二次表面に付与されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
従来技術を超える利点
ゴーターマン(Gouterman)に係る従来技術は、圧力変化に伴う発光強度を変えるために、酸素による動的消失の光化学プロセスを利用しており、酸化成分への依存が材料の感度に寄与している。ケリーら(Kelley et. al.)に係る従来技術は、光化学系を利用し、そして応用範囲が限定されるポリスチレンにおいてのみそれらの系を用いることに焦点を当てている。本出願人は、上記の材料を使用することで、酸素に起因する不利益をまねくことなく、ポリスチレン使用の場合にみられる制限を克服することができる。本発明の好ましい実施態様においては、光化学系、すなわち、エキシプレックス又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、は圧力感度への酸素依存性を除去するために利用される。これらエキシプレックス及びFRETの両者は圧力変化に迅速に応答する。したがって、圧力変化を検知する上で影響する酸素への依存を除去することができ、かつ、この材料の応用において感度を増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の他の実施形態及び利点は、本発明の現時点における好適な実施形態についての以下の説明ならびに添付図面から明らかとなろう。
【0010】
概要
本発明の最初の実施態様は、ナノ・スケールの高分子物質の設計、合成、そしてアッセンブリーに関する。蛍光距離を検知するプローブ分子は、ポリマー合成中に該ポリマー分子鎖中に共重合される。プローブの選択、プローブの比、該ポリマーの濃度、該ポリマー分子鎖における配置及び溶媒の種類等は、その材料の性能に影響する不可欠なパラメータである。前記距離プローブは、本発明において荷重(圧力)下に置かれたときの該高分子材料のナノ‐変形の計測に使用される。この材料がマクロ・スケールで圧縮されたり膨張したとき、ポリマー鎖は荷重に応答してポリマー分子鎖がそれ自身を認識し、プローブがその動きをレポートする。したがって、この動きはレポートされ、そして該ポリマーの発光スペクトルの変化によって検知される。
【0011】
技術的な詳細
1.光化学系
本発明で使用される光化学系は2つの型、すなわち、エキシプレックス(励起状態の錯体)と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)とがある。両方の光化学系は互いに可逆的で互換性がある。エキシプレックスは励起された状態にある蛍光プローブと消光剤の間に電荷移送錯体が形成された結果である。図3はエキシプレックス形成系の典型的なスペクトル応答を示すグラフである。エキシプレックスの形成において、励起状態の蛍光プローブ、例えばアントラセン又はペリレンは、脂肪族又は芳香族アミン(例えばジメチルアニリン)によって消光される。図4は、ペリレンの発光データ及びエキシプレックスの発光データを示すグラフである。励起状態の蛍光プローブのアクセプターはドナーのアミンから1個の電子を受け入れ、そして、エキシプレックスからの蛍光は、蛍光プローブからシフトした広い特徴の無いピークの赤として観察される。したがって、このエキシプレックスはドナー又はアクセプターからの特異的な蛍光発光スペクトルを有する。
【0012】
このエキシプレックスの形成過程は距離に依存する。臨界的な分子間のアクセプターからドナーへの距離(〜2オングストローム)は、当該錯体の発光が起きるような距離にしなければならない。この過程は、固体マトリックスと同様に、溶液濃度にも依存する。したがって、ドナー濃度、アクセプター濃度ならびにアクセプターのドナーに対する比は、発光スペクトルに影響するパラメータとなる。
【0013】
FRETは、他のエキシプレックスからの距離に依存する系である。FRETにおいて、励起状態のエネルギー移動が最初に励起されたドナー(D)からアクセプター(A)へと生じる。電子に関連して命名されたエキシプレックス系とは反対に、これらのドナーとアクセプターの標示はエネルギーに関連する。アクセプターの吸収スペクトルはFRETが起るためにドナーの蛍光発光スペクトルと重複すべきことが要求される。FRETに必要とされる分子間の距離は20ないし60オングストロームのオーダーであり、それが高分子物質の移動をプローブ(検出)する上で有利である。FRETにおけるエネルギー移動は、発光及び光子の再吸収なしに生起し、そして、それは、もっぱらドナーとアクセプターとの間の双極子間相互作用の結果である。FRETにおける最も通常のドナー‐アクセプター系の1つは、フルオレセイン(Fl,ドナー)とローダミンB(Rh,アクセプター)である。FRET発光スペクトルの一例が図6に示されている。
【0014】
フルオレセインとローダミンBの系は、感圧塗料に対する距離依存性のエネルギー移動系としてポテンシャルを有する。フルオレセインとローダミンBの系で通常使用される励起波長は470nmで、それは現在の感圧塗料と両立できるものである。フルオレセインとローダミンBの各発光波長は信号の検知中に光学的に分離できるほどに十分に遠く離れている。材料設計で、発光物質は、当該材料の特性に悪影響を与えない程度の低いパーセンテージで共重合することができる。したがって、FRETは前記エキシプレックスに比べいくつかの利点が付加された有利な材料特性を有する。
【0015】
2.材料
ここで述べたルミネッセンス圧力センサーは、ポリウレタン、ポリアクリレート及びシリコーンの如きポリマー類をベースとするコーティング(塗膜)である。エキシプレックス又はFRETシステムに特有のスペシャリティーモノマーはポリマー合成中にコーティング(塗装)され共重合される。本発明のために選択されるこれらの材料は、エラストマー弾性、すなわちゴム状の性質を有しかつ大きくかつ可逆的な弾性変形を経験し得る能力、を有する。それ故、当該材料のエラストマー弾性は可逆的な光化学プロセスとの組み合わせにより、当該材料が圧力増加に曝されたときには励起した電荷移動錯体又はFRETを形成し、圧力が減じたときには励起した電荷移動錯体又はFRETが減少する。
【0016】
本発明では、蛍光性モノマーがエラストマーの分子鎖に接触・付着するため、以下のような顕著な利点を有する:すなわち、1)センサーの使用中に、蒸発、昇華、環境への移動等による色素の損失が無い。2)色素の凝集が防止される。3)ドナー−アクセプター比とともに材料の性質が圧力に対する検知能力を決定し、そして、ルミネッセンス圧力センサーの応答性を決定する。
【0017】
圧力検知性コーティングのためのポリウレタンエラストマーの組成は、それらに限定されるものではないが、脂肪族ジイソシアネート、例えばイソフォロンジイソシアネート(IPDI)又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリテトラメチレングリコール(PTMO又はPTMEG)の如きポリヒドロキシ末端のポリオール、そして鎖伸張性ジオールに修飾されたエキシプレックス又はFRET関与分子等が包含される。ブタンジオールのような他の鎖伸張剤はポリウレタンの一部となり得る。ウレタンコーティングの特性(例えば、モジュラス、接着性、溶液粘度、等々)は構成成分のタイプ、量、ポリマー合成における重量割合等を調整することで改変することができる。
【0018】
本発明では、トータルのイソシアネート基とヒドロキシル基のモル比(NCO:OH)が1ないし2の範囲内にある。比の値が1に近いときは線状分子のエラストマーとなり、2に近くなると水分で硬化して架橋したコーティング(塗膜)を形成するプレポリマーとなる。本発明では、ジオール混合物のモル比(ポリオールに対する鎖伸張剤)は10:1ないし1:2の範囲をとることができる。
【0019】
圧力検知性を有するコーティング(塗膜)のためのポリアクリレートの組成は、それらに限定されないが、ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)及びアクリレート重合にあわせて修飾したエキシプレックス又はFRET関与分子である。ポリアクリレートのコーティングの物理的性質は、ポリマー合成においてメチルメタクリレート又はエキシプレックスに対するブチルアクリレートの重量比を調節することで調整できる。本発明におけるブチルアクリレートの典型的な重量パーセントは20%ないし90%の範囲である。残りの重量割合はメチルメタクリレート又はアクリレートモノマー形成性のエキシプレックスで構成することができる。エキシプレックスに代えてFRETを使用するポリアクリレート組成物では、アクリレート色素を形成するFRETのごく少量のみ(ポリマー10グラムに対して色素1ミリグラムの単位から約1ミリグラム)がアクリレートの合成に必要とされる
【0020】
圧力検知性のコーティング(塗膜)のためのシリコーンは、それらに限定されないが、GEシリコーン TSE‐399及び高粘度のシリコン・シール剤であり、シリコン重合のために修飾されたエキシプレックス又はFRET関与分子である。シリコーンのコーティングの物理的性質は、シリコーンと光化学系との重量割合を調節することで調整可能である。
【実施例】
【0021】
ポリウレタン感圧材料の合成例:
PPG(分子量:2000グラム/モル;8グラム、0.004モル)及びジメチルアニリンジオール(DMAD)(分子量:209.29グラム/モル;1.672グラム、0.008モル)からなるモノマー混合物が125mlの三つ口フラスコに、触媒としてのジブチル錫のラウレート40uLとともに加えた。このフラスコとしてはコンデンサー、乾燥窒素導入口及び添加用じょうごを備えるものを用いた。このフラスコをオイルバス中に浸し、内容物を乾燥窒素で覆った。これに無水テトラヒドロフラン(THF,20ml)を、添加用じょうごを通じて添加し、このフラスコを徐々に70℃まで加熱した。70℃の反応温度にて、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)(分子量:222.29グラム/モル;2.67グラム、0.0012モル)及び5mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を、添加用じょうごを通じてゆっくりと加えた。反応混合物は5時間攪拌し、その後冷却した。減圧で溶媒を除去することにより、およそ12グラムの固体のエラストマー状生成物を得た。
【0022】
ポリアクリレート感圧材料の製造例:
ブチルアクリレート(BA)及びメチルメタクリレート(MMA)を、重量比70:30(7グラムのBA、3グラムのMMA)にて、過酸化べンゾイル(BPO、5重量%、50ミリグラム)、ローダミンBアクリレートモノマー(0.8ミリグラム)及び30mLのエタノールとともに容量125mLの三つ口フラスコに入れた。このフラスコはコンデンサーと乾燥窒素導入口を有しており、このフラスコをオイルバス中に入れた。反応成分を徐々に90度まで加熱して反応が進行するようにその温度に維持した。合計の反応時間は48時間であった。減圧下で溶媒を除去することにより、固体のゴム状弾性を有する生成物約10グラムを得た。
【0023】
3.材料の加工
本発明においてポリウレタンをベースとする感圧材料は、スプレー可能な溶液に処方される。反応後の混合物は、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロパノール、メタノール及びメチルエチルケトン等の溶媒を用いて、固形分含量3%ないし10%(重量/容量)の溶液になるよう希釈される。この溶液には、蒸発速度、塗膜厚み及び塗膜の品質をコントロールするため、処方に際し、上に列挙した溶媒のいくつか又は全てを含ませてもよい。また、この処方には、塗膜特性やセンサーの応答をコントロールするために可塑剤を添加してもよい。
【0024】
本発明におけるアクリレート又はシリコーンベースの感圧材料の処方も、前記ポリウレタンと同様である。反応後の混合物は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、アセトン及びトルエン等の溶媒を用いて、固形分含量5%ないし10%(重量/容量)の溶液となるよう希釈される。本発明では、蒸発速度及び塗膜の品質をコントロールするため、処方に際し上に列挙した溶媒のいくつか又は全てを(処方製剤中に種々の割合で)含むことができる。また、本発明において、前記処方は従来のエアースプレー機器を用いて15ないし40psiの範囲でスプレー可能なものである。
【0025】
その他の実施態様
ここでは例示の目的で本発明の特定の実施態様について詳述したが、本発明の精神及び範囲を離脱しない限り、種々の改変が可能であることが理解されるであろう。特に、他のタイプの距離依存性の光化学系やホストマトリックス又はホストマトッリクス構成成分を感圧材料中に導入可能である。したがって、本発明の保護範囲は、単に、以下の請求項及びその均等物に限定されるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術のグラフであって、ルミネッセンス発光の強度変化と酸素の局所的分圧の変化との関係を示すものである。
【図2】従来技術のグラフであって、圧力変化が小さいときと大きいときにおけるスターン・ボルマー式をプロットしたものである。
【図3】エキシプレックス形成システムの典型的なスペクトル応答を示すグラフである。
【図4】圧力変化に対するスペクトル応答の変化を示すグラフである。
【図5】従来技術のグラフであって、レシオメトリックな感圧塗料の圧力変化に対する応答を示すものである。
【図6】本発明の好適な実施態様に従うFRET発光スペクトルを示すグラフであり、発行される特許の最初のページに印刷されることが示唆されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネート、ヒドロキシ末端ポリオール及び鎖伸張ジオール類となるように修飾された蛍光距離プローブ分子を含む光化学系からなる群から選ばれる、ポリウレタンエラストマー、
イソシネートのヒドロキシに対するモル比が約1ないし2の範囲にあり、そして、
前記鎖伸張ジオール混合物のモル比が約10:1ないし約1:2の範囲にあること、
を含んでなる、圧力を検知するための高分子材料。
【請求項2】
前記光化学系が、エキシプレックス及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)からなる群から選ばれる請求項1の高分子材料。
【請求項3】
前記エラストマー及び光化学系が、荷重の変化に対応して光学的に検出できる材料を製造するために適用される請求項1の高分子材料。
【請求項4】
前記脂肪族ジイソシアネートが、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなるから群から選ばれる請求項1の高分子材料。
【請求項5】
前記ヒドロキシ末端ポリオールが、ポリプロピレングルコール(PPG)及びポリテトラメチレングリコール(PTMO又はPTMG)からなる群から選ばれる請求項1の高分子材料。
【請求項6】
前記ポリウレタンエラストマーが、荷重増加時に励起した電荷移動錯体を形成し、荷重低下時に励起が減少した電荷移動錯体を形成するために適用される請求項1の高分子材料。
【請求項7】
前記励起電荷移動錯体が、ルミネッセンス発光を起こすため適用される請求項6の高分子材料・
【請求項8】
前記ポリウレタンエラストマーが、荷重時の変形を測定するために適用されるプローブをその分子鎖中に有する請求項1の高分子材料。
【請求項9】
前記プローブが、前記ポリマー分子鎖における動きを発光スペクトルの変化を通じてレポートする請求項8の高分子材料。
【請求項10】
前記ポリウレタンエラストマーが、二次表面に施される溶液に処方されるために適用され、当該溶液中の該エラストマーを前記溶液の重量にして約3%ないし約10%含む請求項1の高分子材料。
【請求項11】
前記溶液が、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロパノール、メタノールメチルエチルケトンからなる群から選ばれる請求項10の高分子材料。
【請求項12】
前記溶媒には、さらにコーティングの性質及びセンサーの応答をコントロールするために適用される可塑剤を含む請求項10の高分子材料。
【請求項13】
前記溶液が、約15psiないし約40psiの範囲の圧力で前記溶液を施すための空気加圧スプレー装置を通じて二次表面に施される請求項10の高分子材料。
【請求項14】
エキシプレックス分子の組み合せが、アントラセンとジメチルアニリン、ペリレンとジメチルアニリン、及び、ピレンとペリレンの組み合わせからなる群から選ばれる請求項2の高分子材料。
【請求項15】
FRETドナー−アクセプター系が、フルオレセイン・ドナーとローダミンB・アクセプターである請求項2の高分子材料。
【請求項16】
ポリアクリレート及びシリコーンからなる群から選ばれるエラストマー、
重合のために修飾された光化学系、そして
前記光化学系は、ポリマー100グラム当り1ミリグラムないし約100ミリグラムの色素分子を有することを、
含んでなる、圧力を検知するための高分子材料。
【請求項17】
前記光化学系が、エキシプレックス及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)からなる群から選ばれる請求項16の高分子材料。
【請求項18】
前記エラストマーの合成及び荷重の変化に対応して光学的に検出できる材料を生成する光化学系を含む請求項16の高分子材料。
【請求項19】
前記ポリアクリレートエラストマーが、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートからなるから選ばれる請求項16の高分子材料。
【請求項20】
前記シリコーンエラストマーが、GEシリコーンTSE−399c及び高粘度シリコーンのシール剤なる群から選ばれる請求項16の高分子材料。
【請求項21】
前記エラストマー及び前記光化学系が、二次表面に施すための溶液に処方される請求項16の高分子材料。
【請求項22】
ブチルアクリレート重量のパーセンテージが、約20%ないし約90%の範囲である請求項16の高分子材料。
【請求項23】
前記エラストマーが、溶液の重量にして約3%ないし約10%を構成する請求項16の高分子材料。
【請求項24】
前記溶液が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、エチルケトン、アセトン及びトルエンからなる群から選ばれる請求項21の高分子材料。
【請求項25】
前記溶媒の前記混合物のための前記選択が、蒸発速度、コーティング厚み、コーティング品質からなる群から選ばれる溶液混合物の特性をコントロールするために適用される請求項24の高分子材料。
【請求項26】
前記溶液が、約15psiないし約40psiの範囲の圧力で前記溶液を施すための空気加圧スプレー装置を通じて二次表面に施すために適用される請求項21の高分子材料。
【請求項27】
エキシプレックス分子の組み合せが、アントラセンとジメチルアニリン、ペリレンとジメチルアニリン、及び、ピレンとペリレンの組み合わせである請求項17の高分子材料。
【請求項28】
FRETドナー−アクセプター系が、フルオレセイン・ドナーとローダミンB・アクセプターである請求項17の高分子材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネート、ヒドロキシ末端ポリオール及び鎖伸張ジオール類となるように修飾された蛍光距離プローブ分子を含む光化学系からなる群から選ばれる、荷重の変化を検知するために適用されるポリウレタンエラストマー、
イソシネートのヒドロキシに対するモル比が約1ないし2の範囲にあり、そして、
ポリオールを含むジオール混合物及び前記鎖伸張ジオール類のモル比が約10:1ないし約1:2の範囲にあること、
を含んでなる、圧力を検知するための高分子材料。
【請求項2】
前記光化学系が、エキシプレックス及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)からなる群から選ばれる請求項1の高分子材料。
【請求項3】
さらに、前記エラストマーの合成及び荷重の変化に対応して光学的に検出できる材料を生成する光化学系を有する請求項1の高分子材料。
【請求項4】
前記脂肪族ジイソシアネートがイソフォロンジイソシアネート(IPDI)及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなるから選ばれる請求項1の高分子材料。
【請求項5】
前記ヒドロキシ末端ポリオールが、ポリプロピレングルコール(PPG)及びポリテトラメチレングリコール(PTMO又はPTMG)からなる群から選ばれる請求項1の高分子材料。
【請求項6】
さらに、前記ポリウレタンエラストマーから荷重増加時に励起した電荷移動錯体を形成し、荷重低下時に励起が減少した電荷移動錯体を有する請求項1の高分子材料。
【請求項7】
前記励起電荷移動錯体が、ルミネッセンス発光を起こすため適用される請求項1の高分子材料・
【請求項8】
さらに、前記ポリウレタンエラストマー分子鎖中に、荷重時の変形を測定するために適用されるプローブを有する請求項1の高分子材料。
【請求項9】
前記プローブが、前記ポリマー分子鎖における動きを発光スペクトルの変化を通じてレポートする請求項8の高分子材料。
【請求項10】
前記ポリウレタンエラストマーが、二次表面に施される溶液に処方されるために適用され、当該溶液中の該エラストマーを前記溶液の重量にして約3%ないし約10%含む請求項1の高分子材料。
【請求項11】
前記溶液が、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロパノール、メタノールメチルエチルケトンからなる群から選ばれる請求項10の高分子材料。
【請求項12】
前記溶媒は、さらにコーティングの性質及びセンサーの応答をコントロールするために適用される可塑剤を含む請求項10の高分子材料。
【請求項13】
前記溶液が、約15psiないし約40psiの範囲の圧力で前記溶液を施すための空気加圧スプレー装置を通じて二次表面に施される請求項10の高分子材料。
【請求項14】
前記エキシプレックス分子の組み合せが、アントラセンとジメチルアニリン、ペリレンとジメチルアニリン、及び、ピレンとペリレンの組み合わせからなる群から選ばれる請求項10の高分子材料。
【請求項15】
FRETドナー−アクセプター系が、フルオレセイン・ドナーとローダミンB・アクセプターである請求項2の高分子材料。
【請求項16】
ポリアクリレート及びシリコーンからなる群から選ばれるエラストマー、
重合のために修飾された光化学系、そして
前記光化学系は、ポリマー100グラム当り1ミリグラムないし約100ミリグラムの色素分子を有する、
ことを含んでなる、圧力を検知するための高分子材料。
【請求項17】
前記光化学系が、エキシプレックス及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)からなる群から選ばれる請求項16の高分子材料。
【請求項18】
前記エラストマーの合成及び荷重の変化に対応して光学的に検出できる材料を生成する光化学系を含む請求項16の高分子材料。
【請求項19】
前記ポリアクリレートエラストマーが、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートからなるから選ばれる請求項16の高分子材料。
【請求項20】
前記シリコーンエラストマーが、GEシリコーンTSE−399c及び高粘度シリコーンのシール剤なる群から選ばれる請求項16の高分子材料。
【請求項21】
前記エラストマー及び前記光化学系が、二次表面に施すための溶液に処方される請求項16の高分子材料。
【請求項22】
ブチルアクリレート重量のパーセンテージが、約20%ないし約90%の範囲である請求項16の高分子材料。
【請求項23】
前記エラストマーが、溶液の重量にして約3%ないし約10%を構成する請求項16の高分子材料。
【請求項24】
前記溶液が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、エチルケトン、アセトン及びトルエンからなる群から選ばれる請求項21の高分子材料。
【請求項25】
前記溶媒の前記混合物のための前記選択が、蒸発速度、コーティング厚み、コーティング品質からなる群から選ばれる溶液混合物の特性をコントロールするために適用される請求項24の高分子材料。
【請求項26】
前記溶液が、約15psiないし約40psiの範囲の圧力で前記溶液を施すための空気加圧スプレー装置を通じて二次表面に施すために適用される請求項21の高分子材料。
【請求項27】
エキシプレックス分子の組み合せが、アントラセンとジメチルアニリン、ペリレンとジメチルアニリン、及び、ピレンとペリレンの組み合わせである請求項17の高分子材料。
【請求項28】
FRETドナー−アクセプター系が、フルオレセイン・ドナーとローダミンB・アクセプターである請求項17の高分子材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−508205(P2006−508205A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551810(P2004−551810)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035401
【国際公開番号】WO2004/044865
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505166580)リーテック,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】