説明

感放射線性樹脂組成物、感放射線性カバーレイおよびフレキシブルプリント配線板

【課題】解像性が高く、優れた屈曲性および難燃性を有する膜が得られる感放射線性樹脂組成物、この感放射線性樹脂組成物から得られる感放射線性カバーレイ、およびこの感放射線性カバーレイから得られる保護膜を有するフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】上記の課題は、下記(A)成分〜(D)成分を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物によって解決される。(A)成分:ノボラック型エポキシアクリレート樹脂(B)成分:ビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂(C)成分:水酸基を有さずかつホスファゼン構造を有する6官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(D)成分:光重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板におけるカバーレイの材料として好適な感放射線性樹脂組成物、この感放射線性樹脂組成物から得られる感放射線性カバーレイ、およびこの感放射線性カバーレイから得られる保護膜を有するフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板においては、一般に、表面に形成された回路(導体パターン)を外部環境から保護するために、ソルダーレジストと称される保護膜が設けられており、近年、回路の微細化・高密度化の要請から、保護膜を形成するための材料として、感放射線樹脂組成物が用いられている(特許文献1参照。)。
このような感放射線樹脂組成物においては、高い解像性を有し、得られる膜が、曲げられた状態でもクラックが発生しない屈曲性を有することが求められており、このような感放射線樹脂組成物としては、例えばアクリロニトリルブタジエンゴム粒子を含有してなるものが提案されている(特許文献2および特許文献3参照。)。
また、近年、各種工業製品における難燃化の規制が厳しく、プリント配線板等に使用される材料についても難燃化が求められており、難燃性を有する膜を形成することができる感放射線樹脂組成物としては、ホスファゼンオリゴマー、リン酸メラミン化合物、ビフェニルホスフェート化合物などの有機リン化合物を含有してなる感放射線樹脂組成物(特許文献4参照。)や、フェノキシホスファゼン化合物を含有してなる感放射線樹脂組成物(特許文献5参照。)などが提案されている。
しかしながら、解像性、屈曲性および難燃性の全ての性能を満足する感放射線樹脂組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−017644号公報
【特許文献2】特開平09−186462号公報
【特許文献3】特開2006−259268号公報
【特許文献4】特開2005−283762号公報
【特許文献5】特開2008−107458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、解像性が高く、優れた屈曲性および難燃性を有する膜が得られる感放射線性樹脂組成物、この感放射線性樹脂組成物から得られる感放射線性カバーレイ、およびこの感放射線性カバーレイから得られる保護膜を有するフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、下記(A)成分〜(D)成分を含有することを特徴とする。
(A)成分:ノボラック型エポキシアクリレート樹脂
(B)成分:ビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂
(C)成分:水酸基を有さずかつホスファゼン構造を有する6官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物
(D)成分:光重合開始剤
【0006】
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、前記(A)成分と前記(B)成分との含有量の合計を100質量部とするとき、前記(C)成分の含有量が5〜40質量部であることが好ましい。
また、前記(A)成分と前記(B)成分との含有量の合計を100質量部とするとき、前記(A)成分の含有量が50〜90質量部、前記(B)成分の含有量が10〜50質量部であることが好ましい。
本発明の感放射線性樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線板用のカバーレイの材料として好適である。
【0007】
本発明の感放射線性カバーレイは、上記の感放射線性樹脂組成物がシート状に成形されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記の感放射線性カバーレイによって得られる保護膜が、回路を形成する金属箔上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解像性が高く、優れた屈曲性および難燃性を有する膜が得られる感放射線性樹脂組成物および感放射線性カバーレイを提供することができ、このような感放射線性カバーレイは、フレキシブルプリント配線板用として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[感放射線性樹脂組成物]
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂よりなる(A)成分と、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂よりなる(B)成分と、水酸基を有さずかつホスファゼン構造を有する6官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物よりなる(C)成分と、光重合開始剤よりなる(D)成分とを含有してなるものである。
【0011】
〔(A)成分〕
(A)成分を構成するノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂におけるオキシラニル基を(メタ)アクリル酸と反応させてエステル化することによって得られるものであり、更に、生成した水酸基に酸無水物を付加させることによって酸変性されたものであってもよい。
かかるノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビフェニルノボラック型(メタ)アクリレート樹脂、ナフトールノボラック型(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの中では、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビフェニルノボラック型(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
また、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価は、アルカリ水溶液よりなる現像液に対する溶解性の観点から、10〜120mgKOH/gであることが好ましい。
ここで、酸価は、JIS K 0070 化学製品の酸化、けん化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法に従って手順によって測定することができる。
【0012】
〔(B)成分〕
(B)成分を構成するビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂におけるオキシラニル基を(メタ)アクリル酸と反応させてエステル化することによって得られるものであり、更に、生成した水酸基に酸無水物を付加させることによって酸変性されたものであってもよい。
かかるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などを挙げることができる。
また、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価は、アルカリ水溶液よりなる現像液に対する溶解性の観点から、10〜120mgKOH/gであることが好ましい。
【0013】
〔(A)成分と(B)成分との割合〕
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、(A)成分と(B)成分との含有量の合計を100質量部とするとき、(A)成分の含有量が50〜90質量部、(B)成分の含有量が10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは、(A)成分の含有量が60〜80質量部、(B)成分の含有量が20〜40質量部である。
(A)成分の割合が過小である場合には、得られる膜は難燃性が低いものとなることがある。一方、(B)成分の割合が過小である場合には、得られる膜は屈曲性(柔軟性)が低いものとなることがある。
【0014】
〔(C)成分〕
(C)成分は、感放射線性モノマーであって、水酸基を有さずかつホスファゼン構造を有する6官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(以下、「特定の多官能化合物」という。)よりなるものである。
ここで、感放射線性モノマーとして、(C)成分である特定の多官能化合物の代わりにホスファゼン構造を有さない化合物を用いる場合には、十分に高い架橋密度が得られず、また、難燃性も不十分なものとなる。
また、感放射線性モノマーとして、(C)成分である特定の多官能化合物の代わりに(メタ)アクリロイル基が5個以下の化合物を用いる場合にも、十分に高い架橋密度が得られず、また、難燃性も不十分なものとなる。
このような特定の多官能化合物としては、2,2,4,4,6,6−ヘキサ[2−(メタクリロイルオキシ)−エトキシ]−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン、2,2,4,4,6,6ヘキサ[2−(アクリロイルオキシ)−エトキシ]−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリンなどを用いることができる。
また、本発明の感放射線性樹脂組成物においては、(C)成分を構成する特定の多官能化合物以外の感光性モノマー(以下、「その他の感光性モノマー」という。)が含有されていてもよく、その種類、官能基数は特に限定されないが、使用量としては、(C)成分1質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましい。その他の感光性モノマーの使用量が過大である場合には、解像性、特に難燃性が著しく低下することがある。
【0015】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(A)成分と(B)成分との含有量の合計を100質量部とするとき、(C)成分の含有量が5〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。
(C)成分の割合が過小である場合には、十分な放射線硬化性が得られず、解像性が低下することがある。一方、(C)成分の割合が過大である場合には、得られる硬化膜が脆いものとなり、十分な屈曲性が得られないことがある。
【0016】
〔(D)成分〕
(D)成分を構成する光重合開始剤としては、放射線の照射により(C)成分である特定の多官能化合物を重合し得るものが用いられ、その具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノンなどを挙げることができる。
【0017】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(D)成分である光重合開始剤の含有量は、(C)成分1質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量部である。(D)成分の含有量が過小または過大である場合には、光透過性が低下するため、底部が十分に硬化された膜を得ることが困難となることがある。
【0018】
〔(E)成分〕
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、取り扱い性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節したりするために、(E)成分として溶剤を添加することができる。
このような溶剤としては、特に制限されず、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;
ブチルカルビトール等のカルビトール類;
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類; 酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;
N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
γ−ブチロラクン等のラクトン類などを用いることができる。
これらの溶剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(E)成分である溶剤の使用量は、(E)成分以外の成分の合計100質量部に対して、40〜900質量部であることが好ましく、より好ましくは60〜400質量部である。(E)成分の使用量が過小である場合には、当該組成物の粘度が高くなりすぎて、塗布性、塗工性が低下することがある。一方、(E)成分の使用量が過大である場合には、当該組成物の粘度が低下しすぎて、必要な膜厚に塗工することが困難となることがある。
【0020】
〔その他の成分〕
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、上記の(A)成分〜(E)成分以外に、必要に応じて、架橋剤、難燃剤、無機フィラー、増感剤、レベリング剤・界面活性剤、クエンチャーなどを、本発明の感放射線性樹脂組成物の特性を損なわない程度に含有させることができる。
【0021】
前記架橋剤は、(A)成分および(B)成分を構成するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂と反応する架橋成分(硬化成分)として作用するものであれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、オキシラニル基含有化合物、チイラン環含有化合物、イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む)等を用いることができる。
前記オキシラニル基含有化合物は、オキシラニル基を分子内に含有しているものであれば特に制限されないが、具体的にはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が挙げられる。
これらの架橋剤は、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの架橋剤のなかでも、オキシラニル基含有化合物が好ましい。
本発明の感放射線性樹脂組成物において、架橋剤の使用量は、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは5〜50質量部である。このような使用量で架橋剤が含有されることにより、硬化反応が十分に進行し、得られる硬化膜は、解像度が高くて良好なパターン形状を有し、耐熱性、電気絶縁性に優れるため好ましい。
【0022】
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン等の臭素系難燃剤;
トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)等のリン系難燃剤;
三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤;
などを用いることができる。
これらの難燃剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
また上記レベリング剤・界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の塗布性を向上させるために添加される。このようなレベリング剤・界面活性剤としては、特に限定されないが、その具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系レベリング剤・界面活性剤;
エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、株式会社トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−381、同S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(以上、旭硝子株式会社製)、フタージェント250、同251、同222F、FTX−218(以上、株式会社ネオス製)等のフッ素系レベリング剤・界面活性剤;
オルガノシロキサンポリマーKP341、X−70−092、X−70−093(以上、信越化学工業株式会社製)、SH8400(東レ・ダウコーニング製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75、同No.77、同No.90、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業株式会社製)が挙げられる。
これらのレベリング剤・界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記レベリング剤・界面活性剤の使用量は、感放射線性樹脂組成物中、1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは50〜1000ppm、更に好ましくは100〜800ppmである。このような使用量でレベリング剤・界面活性剤が含有されることにより、本発明の感放射線性樹脂組成物の段差基板上への均一塗布性が良好となり、かつ硬化後の基板への密着性が向上するため好ましい。
【0024】
以上のような感放射線性樹脂組成物は、解像性が高く、優れた屈曲性および難燃性を有する膜が得られるものであるため、フレキシブルプリント配線板用のカバーレイの材料として好適である。
【0025】
[感放射線性カバーレイ]
本発明の感放射線性カバーレイは、前述した感放射線性樹脂組成物がシート状に成形されてなるものであって、フレキシブルプリント配線板における回路(導体パターン)を形成する金属箔を保護する保護膜を形成するためのものである。
本発明の感放射線性カバーレイの厚みは、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜60μmである。
また、本発明の感放射線性カバーレイには、少なくとも一面に離型フィルムが設けられていてもよく、このような感放射線性カバーレイにおいては、離型フィルムを適宜剥離して使用される。
離型フィルムを構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂を用いることができる。
また、離型フィルムの厚みは、10〜50μmであることが好ましい。
このような感放射線性カバーレイは、感放射線性樹脂組成物を例えば離型フィルムに塗布して乾燥処理することによって得られる。
【0026】
[フレキシブルプリント配線板]
本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記の感放射線性カバーレイによって得られる保護膜が、回路を形成する金属箔上に設けられてなるものである。
本発明のフレキシブルプリント配線板における基板材料としては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどを用いることができ、これらの中では、難燃性、電気絶縁性、耐熱性、弾性率等の点で、ポリイミドフィルムが好ましい。
また、本発明のフレキシブルプリント配線板における基板は、多層構造のものであってもよい。
また、金属箔としては、例えば、銅箔や銀箔等の通電素材を用いることができる。
【0027】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、所要の回路(導体パターン)が形成された基板の表面に、上記の感放射線性カバーレイを熱圧着する。次いで、この熱圧着された感放射線性カバーレイに対して、放射線照射処理(露光処理)することにより、当該感放射線性カバーレイにおける一部を硬化し、更に、現像処理を施すことにより、感光性カバーレイにおける未露光部分を除去する。そして、残存する露光部分に対して必要に応じてポストキュアを施すことにより、所期の保護膜が形成され、以て、本発明のフレキシブルプリント配線板が得られる。
以上において、感放射線性カバーレイを熱圧着する手段としては、例えば加熱ロール装置を用いることができ、ロール温度、ロール線圧、ロール速度などの具体的な条件は、感放射線性カバーレイを構成する感放射線性樹脂組成物の種類や、感放射線性カバーレイの厚みなどに応じて適宜設定される。
露光処理工程においては、例えば超高圧水銀ランプ光源UV照射機等を用い、光透過部および非光透過部が所要のパターンで形成されたフォトマスクを介して、感放射線性カバーレイに放射線が照射される。
現像処理工程においては、現像剤として適宜の温度に調整したアルカリ水溶液よりなる現像剤を用いることができる。具体的な現像処理方法としては、スプレー法、浸漬法等を利用することができる。
このようなフレキシブルプリント配線板は、例えば、ICチップ実装用の所謂チップオンフレキ用フレキシブルプリント配線板として好適である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例および比較例において、感放射線性樹脂組成物における各成分として、下記のものを使用した。
【0029】
[(A)成分]
樹脂(A−1):
クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名;CCR−1291H,酸価=84.6mgKOH/g)
樹脂(A−2):
ビフェニルノボラック型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名;ZCR−1642H,酸価=99.8mgKOH/g)
【0030】
[(B)成分]
樹脂(B−1):
ビスフェノールA型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名;ZAR−1035,酸価=98.6mgKOH/g)
樹脂(B−2):
ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名;ZFR−1401,酸価=100.0mgKOH/g)
【0031】
[(C)成分]
化合物(C−1):
2,2,4,4,6,6−ヘキサ[2−(メタクリロイルオキシ)−エトキシ]−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン(共栄社化学(株)製、商品名;PPZ)
[(C’)成分:比較用重合性化合物]
化合物(CR−1):
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名;ライトアクリレートDPE−6A)
【0032】
[(D)成分:光重合開始剤]
開始剤(D−1):
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
開始剤(D−2):
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4‘−モルフォリノブチロフェノン
【0033】
[(E)成分]
溶剤(E−1):2−ブタノン
溶剤(E−2):2−ヘプタノン
【0034】
〈実施例1〉
(A)成分として樹脂(A−1)80質量部、(B)成分として樹脂(B−1)20質量部、(C)成分として化合物(C−1)10質量部、および(D)成分として開始剤(D−1)1質量部を、(E)成分である溶剤(E−1)100質量部に溶解・分散させることにより、本発明の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0035】
〈実施例2〜4および比較例1〜6〉
(A)成分〜(E)成分およびそれらの使用量を下記表1に示す配合に従って変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0036】
〈比較例7〉
(C)成分の代わりに、(C’)成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0037】
【表1】

【0038】
[感放射線性樹脂組成物の評価]
実施例1〜4および比較例1〜7に係る感放射線性樹脂組成物の各々の特性を、下記の方法に従って評価した。結果は下記表2に記載のとおりである。
(1)解像性
10cm角のポリイミド基板に、感放射線性樹脂組成物をアプリケーターバーを用いて塗布し、オーブンで80℃、10分間加熱処理することにより、厚みが30μmの均一な塗膜を形成した。その後、得られた塗膜に対して、アライナー(Karl Suss社製 「MA−100」)を用い、パターンマスクを介して、高圧水銀灯から波長350nmの紫外線を、露光量が3,000〜5,000J/m2 となるように露光処理を行った。次いで、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、23℃、180秒間の条件で、塗膜を浸漬現像処理することにより、ポリイミド基板上にパターンを形成した。
この操作を、ポリイミド基板を交換し、順次寸法の小さいパターンマスクを用いて繰り返して行い、抜けのないパターンが得られるパターンマスクの最小寸法を測定した。
【0039】
(2)屈曲性(柔軟性)試験
離型ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、アプリケーターバーを用いて感放射線性樹脂組成物を塗布し、オーブンで80℃、10分加熱処理することにより、30μmの均一な厚みを有する塗膜を形成した。その後、得られた塗膜に対して、アライナー(Karl Suss社製 「MA−100」)を用い、塗膜全面に、高圧水銀灯から波長350nmの紫外線を、露光量が5,000J/m2 となるように露光処理を行った。次いで、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、23℃、180秒間の条件で、塗膜を浸漬現像処理した後、イオン交換水で水洗し、更に、170℃で、1時間加熱処理した。そして、離型PETフィルムを除去することにより、厚みが30μmのシートを得た。
得られたシートを幅5mm×長さ10cmに切り取り、試験片を得た。この試験片の中央に200gのおもりを乗せた後、反対に折り返して再度200gのおもりを乗せ、試験片の折り目を目視により観察し、折り目上にクラックが発生していない場合を○、折り目上にクラックが発生している場合を×として評価した。
【0040】
(3)難燃性試験
ポリイミドフィルム上に、アプリケーターバーを用いて感放射線性樹脂組成物を塗布し、オーブンで80℃、10分加熱処理することにより、30μmの均一な厚みを有する塗膜を形成した。その後、得られた塗膜に対して、アライナー(Karl Suss社製 「MA−100」)を用い、塗膜全面に、高圧水銀灯から波長350nmの紫外線を、露光量が5,000J/m2 となるように露光処理を行った。次いで、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、23℃、180秒間の条件で、塗膜を浸漬現像処理した後、イオン交換水で水洗し、更に、170℃で、1時間加熱処理した。そして、ポリイミドフィルム上に形成された硬化膜を用い、ASTM D4804に準拠して、試験片を作製して難燃線試験を実施した。ここで、試験条件は、接炎時間が3秒/2回、炎長が20mmとした。 そして、試験片の接炎後の燃焼時間を測定し、10秒間以下のものをVTM−0、30秒間以下のものをVTM−1、30秒間を超えるものをNGとして判定した。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜4に係る感放射線性樹脂組成物によれば、解像性、得られる膜の屈曲性および難燃性の全てにおいて優れたものであることが確認された。
これに対して、比較例1、比較例2および比較例5に係る感放射線性樹脂組成物においては、(B)成分であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有されていないため、良好な屈曲性が得られなかった。
また、比較例3、比較例4および比較例6に係る感放射線性樹脂組成物においては、(A)成分であるノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有されていないため、良好な難燃性が得られなかった。
また、比較例7に係る感放射線性樹脂組成物においては、(C)成分の代わりにホスファゼン構造を有さない6官能アクリレート化合物が含有されているため、良好な難燃性が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分〜(D)成分を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
(A)成分:ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
(B)成分:ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
(C)成分:水酸基を有さずかつホスファゼン構造を有する6官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物
(D)成分:光重合開始剤
【請求項2】
前記(A)成分と前記(B)成分との含有量の合計を100質量部とするとき、前記(C)成分の含有量が5〜40質量部であることを特徴とする請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分と前記(B)成分との含有量の合計を100質量部とするとき、前記(A)成分の含有量が50〜90質量部、前記(B)成分の含有量が10〜50質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
フレキシブルプリント配線板用のカバーレイの材料として用いられるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感放射線性樹脂組成物がシート状に成形されてなることを特徴とする感放射線性カバーレイ。
【請求項6】
請求項5に記載の感放射線性カバーレイによって得られる保護膜が、回路を形成する金属箔上に設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2011−17804(P2011−17804A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161320(P2009−161320)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】