説明

感放射線性樹脂組成物およびそれに用いる重合体

【課題】 解像性能に優れ、かつ、MEEFが小さくLWRの小さい化学増幅型レジストを形成可能な感放射線性樹脂組成物およびそれに用いる重合体を提供することである。
【解決手段】 分子鎖の末端に脂環式炭化水素基を有し、かつ下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体と、(A)該重合体および(B)溶剤とを有することを特徴とする、感放射線性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、その他のフォトリソグラフィー工程に使用される感放射線性樹脂組成物に関するものである。より具体的には、KrFエキシマレーザー・ArFエキシマレーザー等の波長250nm以下の遠紫外線や電子線を露光光源とするフォトリソグラフィー工程に好適に用いることができる、化学増幅型の感放射線性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーに代表される遠紫外線や電子線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする化学反応により、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成させる組成物である。
【0003】
例えば、より短波長で微細加工が可能になるArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料としては、193nm領域に大きな吸収を有しないこと、エッチング耐性が高いことの理由から脂環式炭化水素を骨格中に有する重合体が多く用いられている。一般的にポジ型レジストには酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂が含まれ、この樹脂には酸の作用により脱離するユニット(保護基)として脂環式炭化水素基を有するものが提案されている(特許文献1)。特許文献1にもある通り、このような樹脂の合成には開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」とも表記)を用いることが多い。この場合、樹脂の末端の少なくとも一方はイソブチロニトリル基となる。一方、開始剤をAIBNからジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)や2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)に変えた技術が開示されている(特許文献2,3)。特許文献3では85nmラインアンドスペースでのラインエッジラフネス、プロファイル、現像欠陥が改良されたことが開示されている。また、樹脂の末端構造を、連鎖移動剤を用いてアルコール末端にしたり(特許文献4)、直鎖アルキル末端にしたり(特許文献5)、ラクトン骨格末端にした技術が開示されている(特許文献6)。特許文献6ではアルコール末端やラクトン骨格末端にすることで基盤との密着性が改良されパターン倒れを抑制できることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−073173号公報
【特許文献2】特開2000−019737号公報
【特許文献3】特開2010−002762号公報
【特許文献4】特開2002−351079号公報
【特許文献5】国際公開2004/067592号公報
【特許文献6】特開2004−250377号公報
【0005】
しかしながら、レジストパターンの微細化が線幅80nm以下のレベルまで進展している現在にあっては、単に解像性の向上、フォーカスや露光量マージンの拡大、パターンの倒れ性能の向上といった基本特性の向上のみならず、他の性能も要求されるようになってきている。例えば、現在、レジストパターンの微細化技術の一つとして、液浸露光の実用化が進められており、この液浸露光にも対応可能なレジスト材料が求められている。具体的には、マスクエラー許容度を表す指標であるMEEF(Mask Error Enhanced Factor)の低減、パターンのガタツキを表す指標であるLWR(Line Width Roughness)の低減等の要求特性を満足させる材料の開発が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解像性能に優れ、かつ、MEEFが小さくLWRの小さい化学増幅型レジストを形成可能な感放射線性樹脂組成物および重合体の開発が急務になっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構造を末端に有する重合体を含有する感放射線性樹脂組成物によって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、
[1] (A)分子鎖の末端に脂環式炭化水素基を有し、かつ下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう)を有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)と、
(B)溶剤(以下、「溶剤(B)」ともいう)とを有することを特徴とする、感放射性樹脂組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示し、RおよびRは、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示すか、あるいはRとRが相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0010】
[2] 重合体(A)が分子鎖の末端に有する脂環式炭化水素基が、シクロヘキサン構造を含む基である[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
[3] 重合体(A)が、脂環式炭化水素基を有するラジカル重合開始剤および連鎖移動剤から選ばれる少なくとも一種を用い、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう)を含む単量体を重合させて得られる重合体を含む、[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(I)中、R、R、RおよびRは、前記一般式(1)に同じ。)
【0013】
[4] 分子鎖の末端に脂環式炭化水素基を有し、繰り返し単位(1)を有する重合体。
[5] 重合体が末端に有する脂環式炭化水素基がシクロヘキサン構造を含む基である[4]に記載の重合体。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の感放射線性樹脂組成物は、特定構造の末端を含有し、特定構造の繰り返し単位を有する重合体および溶剤を含有することで、従来の感放射線性樹脂組成物と比べ、優れた解像度、MEEFおよびLWRを発揮することができる。従って、短波長の活性放射線に感応する化学増幅型感放射線性樹脂組成物として、微細加工時の加工性に優れ、今後さらに微細化が進行すると予想される集積回路素子等の分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、分子鎖(主鎖)の少なくとも一方の末端に脂環式炭化水素基を有し、かつ前記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する重合体(A)と、溶剤(B)とを含有する。
前記一般式(1)中の−COO−CRで表される基は、酸の存在下で−CRが解離して、−COOHとなるため、酸の作用前にはアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性を示す重合体(A)は、酸の作用後にはアルカリ易溶性を示す。重合体(A)は、分子鎖の末端に脂環式炭化水素基を含有することで、未露後部の現像液に対する親和性が抑えられ、かつ剛直性も高めることができ、微細なパターンでの解像度やMEEF、LWR等のリソグラフィー性能に優れた感放射線性樹脂組成物を得ることができると考えられる。また、該脂環式炭化水素基がシクロヘキサン構造を含む基である場合、上記現像液親和性の程度が好適となり、より一層好適であると考える。さらに、溶剤を含むことにより均一なレジスト膜をウエハー上に形成可能である。
【0017】
なお、本明細書にいう「アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性」とは、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト被膜の代わりに[A]成分の重合体のみを用いた被膜を現像した場合に、被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。また、本明細書にいう「感放射線性樹脂組成物」および「感放射線性酸発生体」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
重合体(A):
本発明の感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体(A)は、本発明の重合体であり、分子鎖の少なくとも一方の末端に脂環式炭化水素基を有する。なお、ここで言う「分子鎖」とは重合体主鎖を示す。すなわち、重合体(A)は、例えば下記一般式(a)で表される構造を有する。なお、重合体(A)の主鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0019】
【化3】

【0020】
(一般式(a)中、A、AおよびAは重合体中の各構造単位を示し、XおよびYは1価の有機基を示す。但し、XおよびYの少なくともひとつは、脂環式炭化水素基を有する有機基である。)
【0021】
重合体(A)の末端に存在する脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等の有橋脂環式炭化水素基が挙げられる。これらのうち、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が好ましく、シクロプロピル基、シクロヘキシル基が特に好ましい。
上記脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、i−アミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ラウリル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等の脂環式炭化水素基;ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキソ基等の極性基で置換された基等が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、連結基を介して重合体の分子鎖に結合していてもよい。該連結基としては、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−で表される2価の基や、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、t−ブチレン基、i−ブチレン基、n−ペンチレン基、t−ペンチレン基、i−ペンチレン基、ネオペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ドデシレン基等の2価の炭化水素基が挙げられる。
【0022】
重合体(A)の末端に結合する脂環式炭化水素基含有構造の具体例としては、下記式(a−1)〜(a−9)で示す基が挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、*は重合体との結合位置を示す。)
【0025】
これらの中で特に好ましいものとしては、(a−1)、(a−2)、(a−3)、(a−4)、(a−6)、(a−7)、(a−8)および(a−9)が挙げられる。
【0026】
上記脂環式炭化水素基含有構造は、該構造を含むラジカル重合開始剤を用いて重合体(A)を合成するか、または該構造を含む連鎖移動剤を用いて重合体(A)を合成するか、少なくともいずれかの方法によって、重合体(A)に導入することができる。
【0027】
前記ラジカル重合開始剤としては、下記式(a1−1)〜(a1−3)で表される化合物等を挙げることができる。これらの開始剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
【化5】

【0029】
また、前記連鎖移動剤としては、下記式(a2−1)〜(a2−6)で表される化合物等を挙げることができる。
【0030】
【化6】

【0031】
これらのうち、特に好ましいものは、(a2−1)、(a2−2)、(a2−3)、(a2−4)および(a2−5)であり、特に好ましくは(a2−2)、(a2−3)および(a2−5)である。
【0032】
また、本発明の重合体(A)の重合に用いることができるその他のラジカル重合開始剤としては、公知のものを挙げることができ、具体的には、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。これらのラジカル重合開始剤は、上述した脂環式炭化水素基を有するラジカル重合開始剤と併用することができるとともに、上述した連鎖移動剤を用いる場合に、ラジカル重合開始剤として用いることができる。
【0033】
重合体(A)の合成法としては、ラジカル重合の常法に従って合成することができる。例えば、(1)単量体およびラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(2)単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(3)各々の単量体を含有する、複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;等の方法で合成することが好ましい。
【0034】
また、連鎖移動剤を用いる場合は、例えば、(1)単量体およびラジカル開始剤、連鎖移動剤を含有する溶液を、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(2)単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤および連鎖移動剤を含有する溶液とを各別に、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(3)単量体および連鎖移動剤を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(4)各々の単量体を含有する、複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液と、連鎖移動剤を含有する溶液を各別に、反応溶剤または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;等の方法で合成することが好ましい。
【0035】
なお、単量体溶液に対して、単量体溶液を滴下して反応させる場合、滴下される単量体溶液中の単量体量は、重合に用いられる単量体総量に対して30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。
【0036】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常、30〜180℃であり、40〜160℃が好ましく、50〜140℃が更に好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1〜5時間が更に好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1〜6時間が更に好ましい。
【0037】
ラジカル開始剤の用いる量は、単量体総量に対して好ましくは0.1モル%〜30モル%以下、更に好ましくは0.1モル%〜25モル%以下、特に好ましくは0.1モル%〜20モル%以下である。連鎖移動剤の用いる量は、開始剤量に対して70モル%以下が好ましく、50%以下が特に好ましい。このような範囲とすることにより、重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)が、1,000〜100,000となる。重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、重合体のMwが100,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。ただし、上記範囲以外のMwでもレジストとしたときのリソグラフィー性能が優れる場合には、この限りではない。Mwは、1,000〜30,000であることが更に好ましく、1,000〜20,000であることが特に好ましい。
【0038】
重合溶剤としては、重合を阻害する溶剤(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶剤であって、その単量体を溶解可能な溶剤であれば使用することができる。例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル・ラクトン類、ニトリル類およびその混合溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。即ち、重合反応終了後、重合液を再沈溶剤に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶剤としては、前記重合溶剤として例示した溶剤を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。即ち、重合反応終了後、重合溶液を適宜濃縮して、例えば、メタノール/ヘプタンなどの2液に分離する溶剤系を選択して加え、重合体溶液から低分子成分を除去し適宜必要な溶剤系(プロピレングリコールモノメチルエーテル等)に置換し、目的の重合体を溶液として回収する。
【0040】
なお、重合体(A)には、単量体由来の低分子量成分が含まれるが、その含有率は、重合体(A)の総量(100質量%)に対して、0.1質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以下であることが更に好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
【0041】
この低分子量成分の含有率が0.1質量%以下である場合には、この重合体(A)を使用してレジスト膜を作製し、液浸露光を行う際に、レジスト膜に接触した水への溶出物の量を少なくすることができる。更に、レジスト保管時に、レジスト中に異物が析出することがなく、レジスト塗布時においても塗布ムラが発生することない。従って、レジストパターン形成時における欠陥の発生を十分に抑制することができる。
【0042】
なお、本明細書において、単量体由来の「低分子量成分」というときは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と記す場合がある。)が、Mw500以下の成分を意味するものとする。具体的には、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等の成分である。この「低分子量成分」は、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法、化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法とを組み合わせた方法等により除去することができる。
【0043】
また、この低分子量成分は、重合体(A)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析で定量することができる。なお、重合体(A)は、低分子量成分の他、ハロゲン、金属等の不純物が少ないほど好ましく、それにより、レジストとしたときの感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等を更に改善することができる。
【0044】
重合体(A)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する。
上記一般式(1)中のR、RおよびRが示す炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができ、中でもメチル基、エチル基、i−プロピル基が好ましい。また、R、RおよびRが示す炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。さらに、RとRが相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、上記1価の脂環式炭化水素基から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0045】
繰り返し単位(1)としては、下記一般式(1−1)〜(1−20)で示される繰り返し単位が特に好ましい。これらは一種単独でも、二種以上が含まれていてもよい。
【0046】
【化7】

【0047】
(式中、Rの定義は上記式(1)と同じである。)
【0048】
繰り返し単位(1)の含有率は、重合体[A]を構成する全繰り返し単位に対して、1モル%以上80モル%以下が好ましく、1モル%以上70モル%以下がより好ましく、5モル%以上70モル%以下が特に好ましい。繰り返し単位(1)の含有率が上記範囲であることで、当該感放射線性樹脂組成物は、解像度、MEEFおよびLWRが高度にバランスされたレジスト特性を発揮することができる。1モル%未満の場合、あるいは80モル%を超える場合、レジストとしての解像性能が劣化する恐れがある。
【0049】
重合体(A)は、ラクトン骨格または環状カーボネート骨格を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」ともいう)を1種以上含有することが好ましい。繰り返し単位(2)としては、下記式で表される繰り返し単位が好ましいものとして挙げられる。
【0050】
【化8】

(前記一般式中、RおよびRは相互に独立に水素またはメチル基を示し、Rは水素原子またはメトキシ基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはシアノ基を示し、Aは単結合またはメチレンを示し、Bはメチレンまたは酸素を示し、l,mは0または1の整数である。)
【0051】
繰り返し単位(2)としては、下記式で示される繰り返し単位が特に好ましい。
【0052】
【化9】

【0053】
重合体(A)において、繰り返し単位(2)の含有率は、重合体(A)を構成する全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(2)の総量が、0〜70モル%であることが好ましく、20〜60モル%であることが更に好ましい。このような含有率とすることによって、レジストとしての現像性、欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性等を向上させることができる。一方、70モル%を超えると、レジストとしての解像性、LWR、が低下するおそれがある。
【0054】
また、重合体(A)は下記式で表される極性基を有する繰り返し単位を1種類以上含有してもよい。
【0055】
【化10】

【0056】
さらに、重合体(A)は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等のアルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を含有してもよい。
【0057】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記重合体(A)を単独または2種以上併用してもよい。また、重合体(A)と、分子鎖の末端に脂環式炭化水素骨格を含有しない他の重合体とを混合して用いてもよい。この場合、全重合体における重合体(A)の割合は5質量%以上、好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。5質量%未満では、解像度、MEEFおよびLWRが高度にバランスされたレジスト特性を発揮することができない恐れがある。
【0058】
溶剤(B):
本発明の感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有する。該溶剤は、少なくとも上記の重合体(A)、および任意成分を溶解可能であれば、特に限定されない。例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤およびその混合溶剤等が挙げられる。
【0059】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0060】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0061】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0062】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、iso−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール等が挙げられる。
【0063】
エステル系溶剤としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0064】
その他の溶剤としては、例えば、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、iso−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶剤;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶剤を挙げることができる。
【0065】
これらの溶剤のうちでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンおよびγ−ブチロラクトン、乳酸エチルが好ましい。これらの溶剤は、単独または2種以上を併用できる。これらの溶剤を用いると、レジストとしての塗布性、保存安定性、レジスト膜形成後のレジスト膜中の残溶剤率がバランスされたものとなる。
【0066】
任意成分
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の重合体(A)および溶剤(B)に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として酸発生体、フッ素含有樹脂、脂環式骨格含有化合物、界面活性剤、酸拡散制御体、増感剤等を含有することができる。任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0067】
(酸発生体)
酸発生体は、露光により酸を発生する成分である。その酸により重合体(A)中に存在する酸解離性基が解離し、その結果、重合体(A)がアルカリ現像液に易溶性となる。酸発生体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、後述するような遊離の化合物の形態でも、重合体(A)または前述の他の重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0068】
上記酸発生体としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの酸発生体のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0069】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む。)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。これらのオニウム塩化合物のうち、スルホニウム塩が好ましい。
【0070】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートおよびトリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましく、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネートがより好ましい。
【0071】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネートおよび1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0072】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0073】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0074】
酸発生体は、単独または2種以上を併用できる。酸発生体を用いる場合の使用量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上9質量部以下である。この場合、酸発生体の使用量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方10質量部を超えると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンを得られ難くなる傾向がある。
【0075】
(酸拡散制御体)
酸拡散制御体は、露光により酸発生体から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御する成分である。具体的には、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、その結果、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態でも、重合体(A)または前述の他の重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0076】
酸拡散制御体としては、一般に、非露光領域で塩基性を示す化合物が用いられる。具体的には、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩等の窒素含有塩基性化合物;窒素原子に−COOR基(但し、Rは酸解離性基を示す)が結合した構造を有する化合物;露光により弱酸を生じることにより塩基性を喪失するオニウム塩等を挙げることができる。
酸拡散抑制体は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。低分子の酸拡散制御剤の含有割合は、全重合体100質量部に対して、5質量部未満が好ましく、1質量部未満が更に好ましい。合計使用量が5質量部を超えると、レジストとしての感度が著しく低下する傾向にある。
【0077】
(フッ素含有樹脂)
フッ素含有樹脂は、特に液浸露光においてレジスト膜表面に撥水性を発現させる作用を示す。また、レジスト膜から液浸液への成分の溶出を抑制する効果を奏し、さらに高速スキャンにより液浸露光を行ったとしても液滴を残さない為、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制する効果がある。
【0078】
フッ素含有樹脂の構造としては、例えば、
それ自体が現像液に不溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に可溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に不溶で、アルカリの作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂;
それ自体が現像液に可溶であり、アルカリの作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂等を挙げることができる。
【0079】
フッ素含有樹脂としては、フッ素含有繰り返し単位を有する重合体が好ましい。フッ素含有繰り返し単位を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0080】
フッ素含有樹脂としては、例えば、上記フッ素含有繰り返し単位と、重合体(A)を構成する繰り返し単位とを有する共重合体等が好ましい。これらのフッ素含有樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0081】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0082】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等を挙げることができる。これらの脂環式骨格含有化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0083】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0084】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名で、KP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学社)、エフトップEF301(トーケムプロダクツ社)、エフトップEF303(トーケムプロダクツ社)、エフトップEF352(トーケムプロダクツ社)、メガファックF171(大日本インキ化学工業社)、メガファックF173(大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430(住友スリーエム社)、フロラードFC431(住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382(旭硝子工業社)、サーフロンSC−101(旭硝子工業社)、サーフロンSC−102(旭硝子工業社)、サーフロンSC−103(旭硝子工業社)、サーフロンSC−104(旭硝子工業社)、サーフロンSC−105(旭硝子工業社)、サーフロンSC−106(旭硝子工業社)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0085】
(増感剤)
増感剤は、酸発生体に吸収される放射線のエネルギー以外のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを電子やラジカル等の形で酸発生体に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0086】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0087】
(その他の任意成分)
その他の任意成分としては、例えば、染料、顔料、接着助剤、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等が挙げられる。これらのうち、例えば、染料または顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善できる。これらのその他の任意成分は、単独または2種以上を併用できる。
【0088】
(フォトレジストパターンの形成方法)
フォトレジストパターンの形成方法は、例えば、以下に示す方法が一般的である。感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程(以下、工程(i)ともいう。)、形成されたフォトレジスト膜に、必要に応じて液浸媒体を介し、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射して露光する工程(以下、工程(ii)ともいう。)、基板(露光されたフォトレジスト膜)を加熱する工程(以下、工程(iii)ともいう。)、現像工程(以下、工程(iv)ともいう。)を経て、フォトレジストパターンを形成することができる。
【0089】
工程(i)では、感放射線性樹脂組成物またはこれを溶剤に溶解させて得られた組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、基板(シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等)上に所定の膜厚となるように樹脂組成物溶液を塗布し、次いでプレベークすることにより塗膜中の溶剤を揮発させることにより、フォトレジスト膜を形成する。
【0090】
工程(ii)では、工程(i)で形成されたフォトレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光させる。なお、この際、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選択して照射する。ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。
【0091】
工程(iii)は、PEBと呼ばれ、工程(ii)でフォトレジスト膜の露光された部分において、酸発生体[B]から発生した酸が重合体を脱保護する工程である。PEBは、通常50℃から180℃の範囲で適宜選択して実施される。
【0092】
工程(iv)では、露光されたフォトレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0093】
また、液浸露光を行う場合は、工程(ii)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(iv)の前に溶剤により剥離する、溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報参照)、工程(iv)の現像と同時に剥離する、現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0094】
このようにして得られるレジストパターンは、トップロスが防止されて矩形性が良好であり、LWRおよびパターン倒れも抑制されているので、リソグラフィー技術を応用した微細加工に好適である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例における各測定・評価は、下記の要領で行った。
【0096】
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。
【0097】
ポリスチレン換算数平均分子量(Mn):
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。
【0098】
13C−NMR分析:
それぞれの重合体の13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(商品名:JNM−ECX400、日本電子社製)を使用し、測定した。
【0099】
<重合体(A)の合成>
重合体(A−1)〜(A−4)は、各合成例において、下記の単量体(M−1)〜(M−6)を用いて合成した。
【0100】
(M−1):1−イソプロピルシクロヘキシルメタクリレート
(M−2):1−イソプロピルアダマンチルメタクリレート
(M−3):2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(M−4):4−オキサ−5−オキソトリシクロ[4,2,1,03,7]ノナン−2−イルメタクリレート
(M−5):2−(1,1,1−トリフルオロエチル)メタクリレート
【0101】
実施例1:重合体(A−1)の合成
単量体(M−1)11.51g(40モル%)、単量体(M−3)1.91g(10モル%)、単量体(M−4)14.66gを2−ブタノン60gに溶解し、溶解した単量体溶液を準備した。また、開始剤として上記式(a1−1)で示される構造を有する日油株式会社製 パーロイルTCP6.06g(純度100%換算:10モル%)を2−ブタノン35gに溶解し、溶解した開始剤溶液を準備した。
【0102】
温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに10gの2−ブタノンを投入後、単量体(M−2)1.92gを溶解させ、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液および開始剤溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、480gのメタノール、120gの水の混合溶液に投入し、析出した白い粉末をろ別した。別された白色粉末を200gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体19.2g(収率64.0%)を得た。この共重合体を重合体(A−1)とした。この共重合体は、Mwが3,070であり、Mw/Mnが1.24であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位:化合物(M−3)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位の含有比率が38.1:5.0:8.1:48.8(モル%)の共重合体であった。
【0103】
実施例2:重合体(A−2)の合成
単量体(M−1)11.51g(40モル%)、単量体(M−3)1.91g(10モル%)、単量体(M−4)14.66gを2−ブタノン60gに溶解し、溶解した単量体溶液を準備した。また、開始剤としてAIBN2.41g(10モル%)および連鎖移動剤としてシクロヘキサンチオール(上記式(a2−2)で示される化合物)0.51g(3モル%)を2−ブタノン35gに溶解し、溶解した開始剤溶液を準備した。
【0104】
温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに10gの2−ブタノンを投入後、単量体(M−2)1.92gを溶解させ、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液および開始剤溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、480gのメタノール、120gの水の混合溶液に投入し、析出した白い粉末をろ別した。別された白色粉末を200gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体19.5g(収率65.0%)を得た。この共重合体を重合体(A−2)とした。この共重合体は、Mwが3,520であり、Mw/Mnが1.27であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位:化合物(M−3)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位の含有比率が38.0:5.1:8.1:48.8(モル%)の共重合体であった。
【0105】
合成例1:重合体(A−3)の合成
単量体(M−1)11.51g(40モル%)、単量体(M−3)1.91g(10モル%)、単量体(M−4)14.66gを2−ブタノン60gに溶解し、溶解した単量体溶液を準備した。また、開始剤としてAIBN2.41g(10モル%)を2−ブタノン35gに溶解し、溶解した開始剤溶液を準備した。
【0106】
温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに10gの2−ブタノンを投入後、単量体(M−2)1.92gを溶解させ、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液および開始剤溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、480gのメタノール、120gの水の混合溶液に投入し、析出した白い粉末をろ別した。別された白色粉末を200gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体20.2g(収率67.0%)を得た。この共重合体を重合体(A−3)とした。この共重合体は、Mwが4,030であり、Mw/Mnが1.29であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位:化合物(M−3)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位の含有比率が38.7:4.4:8.2:48.7(モル%)の共重合体であった。
【0107】
合成例2:重合体(A−4)の合成
単量体(M−1)11.51g(40モル%)、単量体(M−3)1.91g(10モル%)、単量体(M−4)14.66gを2−ブタノン60gに溶解し、溶解した単量体溶液を準備した。また、開始剤としてジアシルパーオキサイド構造を有する日油株式会社製 パーロイルSA4.30g(純度100%換算:10モル%)を2−プロパノール17.5g、2−ブタノン17.5gの混合溶剤に溶解し、溶解した開始剤溶液を準備した。
【0108】
温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに10gの2−ブタノンを投入後、単量体(M−2)1.92gを溶解させ、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液および開始剤溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、480gのメタノール、120gの水の混合溶液に投入し、析出した白い粉末をろ別した。別された白色粉末を200gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体20.0g(収率66.8%)を得た。この共重合体を重合体(A−4)とした。この共重合体は、Mwが15,610であり、Mw/Mnが1.62であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−2)由来の繰り返し単位:化合物(M−3)由来の繰り返し単位:化合物(M−4)由来の繰り返し単位の含有比率が40.6:4.5:8.0:46.9(モル%)の共重合体であった。
【0109】
合成例3:重合体(A−5)の合成
単量体(M−1)36.58g(70モル%)、単量体(M−5)13.42g(30モル%)を2−ブタノン50gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.90g(8モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。
【0110】
次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、150gのヘキサン、600gのメタノール、30gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(重合体溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した重合体溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液158.0gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は20.2%、収率は64%であった。この共重合体を重合体(A−5)とした。この共重合体は、Mwが7,000であり、Mw/Mnが1.34であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の繰り返し単位:化合物(M−5)由来の繰り返し単位の含有比率が79.5:30.5(モル%)の共重合体であった。
【0111】
(感放射線性樹脂組成物の調製)
上記実施例および合成例にて合成した重合体(A−1)〜(A−5)以外の感放射線性樹脂組成物を構成する各成分(酸発生剤(C)、溶剤(E))について以下に示す。
【0112】
<酸発生剤(C)>
(C−1):下記式で示される化合物
【0113】
【化11】

【0114】
(C−2):トリフェニルスルホニウム サリチル酸塩
【0115】
<溶剤(E)>
(E−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E−2):シクロヘキサノン
(E−3):γ−ブチロラクトン
【0116】
実施例3
実施例1で得られた重合体(A−1)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−5)3質量部、酸発生剤として、(C−1)12質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン100質量部を添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(J−1)とした。
【0117】
実施例4
実施例2で得られた重合体(A−2)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−5)3質量部、酸発生剤として、(C−1)12質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン100質量部を添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(J−2)とした。
【0118】
比較例1
合成例1で得られた重合体(A−3)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−5)3質量部、酸発生剤として、(C−1)12質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン100質量部を添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(H−1)とした。
【0119】
比較例2
合成例2で得られた重合体(A−4)100質量部、合成例3で得られた重合体(A−5)3質量部、酸発生剤として、(C−1)12質量部、(C−2)6.2質量部を混合し、この混合物に、溶剤(E)として、(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2900質量部、(E−2)シクロヘキサノン1250質量部および(E−3)γ−ブチロラクトン100質量部を添加し、上記混合物を溶解させて混合溶液を得、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。この感放射線性樹脂組成物を組成物(H−2)とした。
【0120】
[評価方法]
得られた実施例1および比較例1の感放射線性樹脂組成物について、ArFエキシマレーザーを光源として、感度、MEFおよびLWRについて評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0121】
最適露光量(感度)(単位:mJ/cm):
まず、下層反射防止膜(「ARC66」、日産化学社製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、感放射線性樹脂組成物によって、膜厚75nmの被膜を形成し、120度で60秒間ソフトベーク(SB)を行った。次に、この被膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(「NSR S610C」、NIKON社製)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Annularの条件により、マスクパターンを介して露光した。露光後、組80℃で60秒間ポストベーク(PEB)を行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、50nmライン100nmピッチのパターン形成用のマスクを介して線幅50nmの1:1のラインアンドスペースを形成する露光量を最適露光量とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(「CG−4000」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0122】
焦点深度(DOF)(単位:μm):
上記最適露光量の評価法に従い、最適露光量にて焦点を0.02μmずつ変量してパターンを形成した。このとき、パターンのスペース部位に残渣が確認されない焦点の範囲をDOFとして算出した。なお、確認には走査型電子顕微鏡(「CG−4000」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0123】
MEF(マスクエラーファクター):
上記最適露光量の評価法に従い、最適露光量にて42nmライン58nmピッチ、46nmライン54nmピッチ、50nmライン100nmピッチのパターン形成用マスクをそれぞれ介して、ピッチ100nmのLSパターンを形成した。このとき、設計上のラインサイズ(nm)を横軸に、形成された各ライン幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEFとして算出した。MEF(直線の傾き)は、その値が1に近いほどマスク再現性が良好である。
【0124】
LWR(パターンウィズスラフネス)(単位:nm):
前記走査型電子顕微鏡を用い、最適露光量にて解像した50nm1L/1Sのパターンをパターン上部から観察し、任意の10点ポイントで線幅を測定した。線幅の測定値の3シグマ値(ばらつき)をLWRとした。このLWRの値が小さいほど、形成されたパターン形状が良好であると評価することが出来る。
【0125】
最小倒壊寸法(単位:nm):
上記最適露光量の評価法に従い、50nmライン100nmピッチのパターン形成用のマスクを介して露光量を1mJ/cmずつ変量してパターンを形成した。露光量が増加するに従いパターンのライン幅は小さくなる。続いてパターン倒れが生じる。パターン倒れが生じない最小のライン幅を最小倒壊寸法とした。
【0126】
【表1】

表1に示されたように、本重合体を用いた本感放射線性樹脂組成物は、感度、MEF、LWR、最小倒壊寸法共に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザー、およびArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料として好適に用いることができる。また、液浸露光にも対応可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖の末端に脂環式炭化水素基を有し、かつ下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体と、
(B)溶剤とを有することを特徴とする、感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示し、RおよびRは、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示すか、あるいはRとRが相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を示す。)
【請求項2】
(A)重合体が分子鎖の末端に有する脂環式炭化水素基が、シクロヘキサン構造を含む基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)重合体が、脂環式炭化水素基を有するラジカル重合開始剤および連鎖移動剤から選ばれる少なくとも一種を用い、下記一般式(I)で表される化合物を含む単量体を重合させて得られる重合体を含む、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】

(一般式(I)中、R、R、RおよびRは、前記一般式(1)に同じ。)
【請求項4】
分子鎖の末端に脂環式炭化水素基を有し、かつ下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体。
【化3】

(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示し、R、Rは、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示すか、あるいはR、Rが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を示す。)
【請求項5】
重合体が末端に有する脂環式炭化水素基がシクロヘキサン構造を含む基である請求項4に記載の重合体。

【公開番号】特開2011−215430(P2011−215430A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84496(P2010−84496)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】