説明

感染性医療廃棄物処理装置

【課題】特別管理産業廃棄物である感染性医療廃棄物を混在する塩化物を含んだ状態で滅菌を優先順位の最優先とし、滅菌後に破砕して熱分解による油化と残渣物を燃料化させることは可能か。
【解決手段】処理物をペール缶に収容したまま滅菌させた後に破砕し、さらに熱分解させることで脱塩させ、脱塩による塩化水素ガスは中和または接触酸化を促進させて処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病院内で発生する感染性医療廃棄物及び一般医療廃棄物を原料として、殺菌後に破砕させて熱分解による油化での採油と残渣物の固形燃料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
病院内に於いて発生する医療廃棄物の内、問題視されているのは感染性医療廃棄物である。特に今年平成21年後半は日本に於いても若年者の患者の増加と死亡率が上昇する緊迫状態が高まっている。
この特別管理産業廃棄物も殺菌させると一般廃プラスチック扱いとなるが、プラズマ等で焼却処分または埋め立てられていて資源として再利用されなかった。
【0003】
再利用を阻んできた原因はプラスチック製造時に添加剤を加えることにあり、軽くて強い、加工が容易、着色が可能、熱に強い、透明である、太陽や光に曝されても酸化防止させる等、これらを機能させるため可塑剤を入れることで解決を図っている。
その中で特に塩素が含まれているプラスチックが問題視されてきた。熱処理をすると塩化水素ガスが発生して空中に飛散し、空気中の湿気に吸収されて塩酸になる問題があり埋め立てによって処分されてきた。
【0004】
医療廃棄物中にも多量の塩化ビニルが混入していて今日迄再利用がされなかったがその原因は塩素である。医療廃棄物の透析に使用しているチューブが塩化ビニルであり、又点滴薬が塩水のため全体混入比率は15%以上20%程度の塩の混入率である。
これらの処理現状はペール缶を人手によって破砕機に投入し、ペール缶内に収容した感染性医療廃棄物を破砕後殺菌して一般廃プラスチック扱いで焼却または埋め立てていた。
【0005】
この医療廃棄物を熱分解させて凝縮により採油させると60%程度の廃プラスチック油が取れ、残渣物は固形燃料として再利用が可能である。
問題になるのは塩化水素の処理である。処理方法としてはアルカリ溶液を塩化水素ガス中に噴霧させたり液中にガスを押し込んだり、または消石灰に反応させる方法が取られているが、残渣物中に石灰が残るため固形燃料としては不適切であり、処理後に管理型処理場へ持ち込むことが問題として残る。
【0006】
問題を解決する方法としてはアルカリによる中和か塩化水素の酸化能力を除去または低減させる方法がある。
また医療廃棄物の完全殺菌を破砕以前に行うことで作業員や周囲の空間汚染を防止させることに役立つため、感染性医療廃棄物の収容容器を開封しないままでの滅菌を可能とし、さらに分解させた油中と固形燃料中の塩素の量を低減させる。
【0007】
この改善策としてペール缶内を滅菌させた後破砕機により破砕して小片化させることで油化時間を短縮させる利点があり、空間感染防止が図られる。
もう1つは液化させた油への混入塩素量を500PPM以下に低減させて燃料油としての利用を可能とし、残り残渣物中の塩素量を1000PPM以下として固形燃料として7000kcalを保持させる必要がある。
【特許文献1】特開2005−81092号公報
【特許文献2】特開平7−216129号公報
【非特許文献1】廃棄物のやさしい化学 廃油と廃プラスチック 株式会社日報 アイビー
【非特許文献2】やさしい分離技術 分離技術会30周年記念出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は感染性医療廃棄物中に混在している塩化物が熱分解手段により塩化水素ガスとして発生し、作業員に健康上の問題が起きる。
また折角特別管理産業廃棄物と位置づけられた感染性医療廃棄物がペール缶を破砕しないまま滅菌不可として処理されている。
以上の問題の解決として滅菌を先行程で出来ないか、また色々な院内廃棄物より液体燃料や固形燃料の再生は可能か。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は処理しようとする感染性医療廃棄物を収容した容器を破砕することなく、全ての工程よりも最優先に滅菌させた後、破砕工程、熱分解、脱塩、フタル酸除去に至る手段でもって解決を図る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療廃棄物処理装置は特別管理産業廃棄物を収容した容器を破壊させること無く滅菌させた後、破砕させて熱分解させることで感染性の菌による空間汚染と作業員に対する感染防止と拡散防止に効力がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まずは感染性医療廃棄物を収容するペール缶内を滅菌させた後、ペール缶と内容物を破砕して油化させることである。
【実施例】
【0012】
図1は本発明の装置の実施例で、感染性医療廃棄物の供給より滅菌、粗破砕、細破砕を経て破砕物を規定供給し、熱分解させての油と固形燃料の製造に至る工程を示す系統構成図である。
【0013】
感染性医療廃棄物を内蔵したペール缶2.を搬送コンベヤ1.で搬送繰り上げて、終端に於いては3方を囲って入口にゲートを設け、滅菌高温蒸気の吹き出しを防止して室内温度の保持を図る。
【0014】
ペール缶を所定位置に停止させて可動滅菌室4.を降下させ、ペール缶を外部より包み込むと同時に可動滅菌室と共に上下動させるノズル5.より電磁誘導加熱により飽和蒸気を昇温させた過熱蒸気を噴出させてペール缶に穿孔させ、ペール缶内部に500℃以上の過熱蒸気を挿入させて滅菌する。高温滅菌は瞬時に行われてペール缶の外壁は壊れない。
【0015】
前記IHにて飽和蒸気から高温過熱蒸気を作り出す装置は発明者名にて既に出願されているので省略する。
滅菌後は可動滅菌室の上昇と共に搬送コンベヤにより粗破砕室7.にペール缶を供給し、粗破砕、8.細破砕後、二次搬送設備9.によってベルトコンベヤ10.に乗り継ぎ、高所に設置した供給ホッパー11.へ送り込む。
【0016】
供給ホッパーに送られた医療廃棄物のプラスチック片はホッパー下部に接合したロータリーバルブ12.内に落下し、ロータリーバルブ機構の動きにより一次熱分解機13.に送り込まれる。
ロータリーバルブ内に送り込まれる廃プラスチックと同伴する空気は真空ポンプにて抜き取る。これらの動きは発明者名に於いて出願されているので省略する。
一次熱分解機胴体と底部とに連続してIHコイルを巻く。この出力は発振器出力に対してIHコイルの巻き長さとコイル間ピッチとコイルを巻きつけた面積とコイルと被加熱体間の距離により、被加熱体の温度分布と最高温度が違ってくるがこの件についての詳細は省略する。
【0017】
一次熱分解機の槽内加熱温度は固体である廃プラスチックを溶融させる温度で加熱すると固体に含まれた塩素分が塩化水素としてガス化する。
一次分解はあくまで固体よりの脱塩であり、好ましくは廃プラスチックを構成する油分は分解させない方が良いがある程度は共にガス化する。
【0018】
ガス化したガスは図2熱分解機13.より段塔18.に入気させて塔内トレーにて、分子の大きい突沸物を除去する汚れ系のトレーを上下に設けて除去する。
この段塔に於いては高温により段塔底部でのものしか油は抜き取らない。凝縮しないガスは塔頂より充填塔19.塔頂に至り、充填物と化合または反応しながらガス温度が降下し凝縮して液化する。
【0019】
充填塔の出口温度300℃にてフタル酸の除去装置20.と連通し、フタル酸除去装置多重管内にて晶析操作により結晶を析出させる。手段については発明者名にて出願しているので省略する。
【0020】
塩化水素ガスの処理とテレフタル酸の除去手段ののち全熱塔21.または2重管内でガスを冷却させてノックアウトドラム22.で完全に凝縮させ、ノックアウトドラムに設けたブーツより最終の液液分離ののち、シールドラム23.で安全の確保をしながら最後にオフガスを水槽25.内に納めた真空ポンプ24.によって大気に放出する。
【0021】
以上が塩化水素ガスの処理手段を講じたもので、残りの一次熱分解における溶融物は二次熱分解機14.に流下させ、一次側よりも分解温度を上げて分解させる。但し580℃より高温にすると重質油の量が多くなる。
二次側の油化操作は排気温度が高いだけで一次側と変わらない。
一次分解も二次分解も共に残渣物は分解機底部のバルブの開閉にて下垂パイプ内を流下し、水中に設置した掻き揚げ機16.にて固形燃料を掻き揚げる。この操作に於いて大気の侵入を防止するためにシールパイプ15.を水中下挿入させる。
【0022】
一次熱分解固形物処理用水槽17.内の清水は連続処理と共にpH値が少しずつ酸性に傾いて臭気を発生するので適宜中和させる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
特別管理産業廃棄物である感染性医療廃棄物だけでなく、一般廃プラスチックの処理と廃プラスチックに非廃プラスチックが混入している場合に於いても処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】感染性医療廃棄物処理装置の滅菌と破砕工程の実施方法を示した説明図である。
【図2】感染性医療廃棄物処理装置の脱塩と脱塩処理の実施方法を示した説明図である。
【図3】感染性医療廃棄物処理装置の油化させる二次処理の実施方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 搬送コンベヤ
2 ペール缶(感染性医療廃棄物)
3 滅菌室
4 可動滅菌室
5 過熱蒸気発生器とノズル
6 防熱板
7 一次破砕機(粗破砕)
8 二次破砕機(細破砕)
9 二次搬送コンベヤ
10 ベルトコンベヤ
11 供給ホッパー
12 ロータリーバルブ
13 一次熱分解機(脱塩熱分解機)
14 二次熱分解機(油化熱分解機)
15 シールパイプ
16 掻き揚げ機
17 冷却水槽
18 段塔
19 充填塔
20 フタル酸除去装置
21 全熱塔
22 ノックアウトドラム
23 シールドラム
24 真空ポンプ
25 水槽
26 油タンク
27 油タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特別管理産業廃棄物である感染性医療廃棄物を収容した容器を、搬送させるコンベヤの一部をトンネル状に囲んだトンネル内に搬送させて更に容器の外周を囲み、前記容器の外部より容器内部に電磁誘導過熱蒸気を噴出させて滅菌させ、滅菌後に収容容器を破砕機で破砕させたのち電磁誘導加熱を用いて熱分解させる医療廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記記載の破砕機の後工程に細破砕機と破砕機下部に破砕物を搬送させる搬送設備と一時貯蔵するホッパーと脱気手段を備えた定量供給ロータリーバルブと円筒状の一次熱分解機を設けて連通させ、熱分解機胴体と底板に電磁誘導コイルを巻きつけて底部底板に設けた排出バルブと前記熱分解機同様に電磁誘導コイルを巻きつけた二次熱分解機とを結合させ、二次熱分解機底部排出バルブの端部を水中に浸漬させた請求項1の医療廃棄物処理装置。
【請求項3】
一次熱分解機と二次熱分解機よりの排ガスを段塔と充填塔と接触酸化塔とフタル酸除去器と熱交換器とシールドラムに順次導入させた請求項1と2の医療廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−110550(P2011−110550A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286914(P2009−286914)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(509301770)
【Fターム(参考)】