説明

感熱性粘着剤及び粘着材料

【課題】従来の感熱性粘着剤に見られる欠点を克服し、ダンボールのような粗面に対する粘着力と、耐ブロッキング性に優れた感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料を提供することにあり、特に、ダンボールに対して経時で剥れてこない感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料を提供する。
【解決手段】少なくとも熱可塑性樹脂、加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とした感熱性粘着剤において、該熱溶融性物質が下記の式(1)から選ばれた少なくとも一種のベンゾフェノン系モノマー(a)、及び共重合可能なビニルモノマー(b)を必須成分として重合して得られる高分子熱溶融性物質を含有することを特徴とする感熱性粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では非粘着性であるが加熱により粘着性が発現し、しかも粘着性発現後も粘着性が持続する感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ラベル用粘着材料を、物流用ラベル、価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、計量表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等のラベル用途として使用することが増加している。その記録方式もインクジェット記録方式、感熱記録方式、感圧記録方式等様々な方式がある。従来より、ラベルの情報記録面とは反対面に、粘着剤層と剥離紙を積層した構成の一般的な粘着シートが、貼り合わせ時に剥離紙を剥がし加圧のみで簡便に貼り合わせることができるため広く使用されている。
【0003】
しかし、一般的な構成の粘着材料は、剥離紙を剥離して使用するが、剥離された剥離紙は回収されて再利用され難く、ほとんどの場合廃棄処分されている。そこで近年では、常温では粘着性を示さず剥離紙を必要としない感熱性粘着材料が注目されている。
【0004】
また、感熱性粘着剤は、「接着便覧」第12版、第(131〜135)頁、昭和55年、高分子刊行会発行(非特許文献1)に記載されているように、基本的には熱可塑性樹脂と固体可塑剤のような熱溶融性物質及び必要に応じて粘着付与剤を含有してなるものである。熱可塑性樹脂は粘着力、接着力を付与するものであり、また熱溶融性物質は、常温(24℃)では固体であるため、樹脂に可塑性は与えないが、加熱により溶融して樹脂を膨潤又は軟化させて粘着性を発現させるものである。また、粘着付与剤は粘着性を向上させる働きもする。感熱性粘着剤中の熱溶融性物質は加熱により溶融した後はゆっくりと結晶化するために、熱源を取り除いた後も粘着性を長時間持続させる。しかしながら、従来の感熱性粘着剤は、粘着性発現後の粘着力が経時的に低下するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特開平6−57226号公報(特許文献1)、特開平6−57233号公報(特許文献2)においては、熱可塑性樹脂として、ガラス転移点が0℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体又はガラス転移点が−5℃以上の熱可塑性樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体を除く)等を用いることが提案されている。しかし、これらはステンレス板等に対する粘着力は比較的良好な結果が得られるものの、塩化ビニルラップやポリオレフィンラップ等に対する粘着力は、未だ実用レベルに達していないものであった。
【0006】
感熱性粘着剤の用途は特に限定されないが、例えば基材の片面に感熱性粘着剤からなる層を設けた粘着材料、さらに感熱性粘着剤層に加えて、基材の他の面に感熱発色層を設けた感熱性粘着材料を挙げることができる。これらは、各種食料品をラップで包装し、そのラップの上に貼るいわゆる食品POS用として期待が高まっている。
【0007】
しかし、従来の感熱性粘着剤は、塩化ビニルラップ及びポリオレフィンラップ等に対する粘着力が不充分であるために、感熱性粘着材料自体の実用化の妨げになっている。また、特開平9−265260号公報(特許文献3)には、基材と感熱発色層の間に非発泡中空粒子を含有させたアンダーコート層を設けてなる感熱性粘着材料であって、フタル酸ジシクロヘキシルを固体可塑剤とする感熱性粘着剤を用いたものが提案されている。この感熱性粘着材料はアンダーコート層が設けられているため、感熱発色層の熱感度向上と熱活性化時に生じ得る感熱発色層の地肌発色防止の点でほぼ満足できるレベルであるが、該粘着材料を重ね合わせる際に発生するブロッキング性に関して、それが40℃程度で発生してしまい、実用化レベルには達していないものである。
【0008】
特開2003−206455号公報(特許文献4)、特開2002−38123号公報(特許文献5)には、ベンゾフェノンを固体可塑剤に用いた感熱性粘着剤(ディレードタック型粘着剤)が提案されているが、ポリオレフィンやガラスのような鏡面に対する粘着力はあるものの、ダンボールのような粗面に対する粘着力が弱く、ダンボールに貼り付け後、経時で接着力の低下をもたらす問題があり宅配便等の物流用での使用には実用上大きな障害となっている。また、60℃の環境下でブロッキングが発生するといった問題がある。
【0009】
特許第3556414号公報(特許文献6)には、ベンゾトリアゾールを固体可塑剤に用いたディレードタック糊が提案されている。このものは、ブロッキング特性に比較的優れ、被着体として、紙、ガラス、金属等の様な材質、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのいわゆるポリオレフィン樹脂に対してであれば長期に安定した接着力が持続するが、ダンボールのような粗面に対する粘着力が弱く、ダンボールに貼り付け後、経時で接着力の低下をもたらす問題があり、宅配便等の物流用での使用には実用上大きな障害となっている。
【0010】
【特許文献1】特開平6−57226号公報
【特許文献2】特開平6−57233号公報
【特許文献3】特開平9−265260号公報
【特許文献4】特開2003−206455号公報
【特許文献5】特開2002−38123号公報
【特許文献6】特許第3556414号公報
【非特許文献1】「接着便覧」第12版、第(131〜135)頁、昭和55年、高分子刊行会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来の感熱性粘着剤に見られる欠点を克服し、ダンボールのような粗面に対する粘着力と、耐ブロッキング性に優れた感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料を提供することにあり、特に、ダンボールに対して経時で剥れてこない感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式で示される化合物を用いることにより、上記課題が解決できるということを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
すなわち、上記課題は本発明の下記(1)〜(7)によって解決される。
(1)「少なくとも熱可塑性樹脂、加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とした感熱性粘着剤において、該熱溶融性物質が下記の式(1)から選ばれた少なくとも一種のベンゾフェノン系モノマー(a)、及び共重合可能なビニルモノマー(b)を必須成分として重合して得られる高分子熱溶融性物質を含有することを特徴とする感熱性粘着剤。
【0013】
【化1】


(式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基又はオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、またはウレタン結合を示す。)」;
(2)「該高分子熱溶融性物質が熱可塑性樹脂(粘着剤)100部に対し、50〜500部含有されることを特徴とする前記第(1)項に記載の感熱性粘着剤」;
(3)「該感熱性粘着剤中に、さらに粘着付与剤を含有することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の感熱性粘着剤」;
(4)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の感熱性粘着剤からなる層を基材の片面に設けてなることを特徴とする感熱性粘着材料」;
(5)「前記基材の該感熱性粘着剤層の反対面にロイコ染料と顕色剤を主成分とする感熱記録層が設けられたことを特徴とする前記第(4)に記載の感熱性粘着材料」;
(6)「該感熱性粘着剤層と基材との間に、微小中空粒子とバインダーを主成分とする中間層が設けられたことを特徴とする前記第(4)項又は第(5)項に記載の感熱性粘着材料」;
(7)「ラベル状、シート状、及びロール状のいずれかである前記第(4)項乃至第(6)項のいずれかに記載の感熱性粘着材料」。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の感熱性粘着剤に見られる欠点を克服し、ダンボールに対する粘着性、特に経時での粘着性が改善され、耐ブロッキング性に優れた感熱性粘着剤、感熱性粘着ラベルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
感熱性粘着剤は、一般に加熱により粘着力、接着力を付与する主な成分である熱可塑性樹脂及び加熱により溶融し、粘着剤に粘着性を発現させる作用を有する高分子熱溶融性物質(共重合体)を主成分とするものである。
【0016】
本発明の感熱性粘着剤は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質からなる感熱性粘着剤において、熱溶融性物質として下記のモノマー(a)及び(b)を必須成分として共重合して得られる、高分子熱溶融性物質(共重合体)を含有することで各被着体、特にダンボールに対する粘着力が強く経時で剥れにくく、かつ耐ブロッキング性が良好となる。
モノマー(a);式(1)で表わされるベンゾフェノン系モノマーから選ばれる少なくとも一種のモノマー。
【0017】
【化2】


(式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基又はオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0018】
上記のように、本発明で用いるモノマー(a)は、前記式(1)で示されるベンゾフェノン系モノマーから選択された少なくとも一種である。
式(1)において、炭素数1〜6のアルキル基(R11)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4(さらに好ましくは1〜2)のアルキル基が挙げられる。また、炭素数1〜6のアルコキシル基(R11)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4(さらに好ましくは1〜2)のアルコキシル基が挙げられる。R11としては水素原子が好ましい。
【0019】
11は、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環において、どの部位に置換していてもよく、好ましいR11の置換位置は3位又は5位である。
【0020】
また、式(1)において、炭素数1〜10のアルキレン基(R12)としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基(さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基)が挙げられる。炭素数1〜10のオキシアルキレン基(R12)としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基などが挙げられる。
【0021】
12は、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環において、どの部位に置換していてもよく、好ましいR12の置換位置は4位又は5位であり、特に4位が好ましい。
【0022】
低級アルキル基(R13)としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的には、前記例示のアルキル基のうち炭素数が1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0023】
はエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示しており、具体的には、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−O−、−NHCOO−、−COONH−などである。
【0024】
は0又は1を示しており、例えば、mが0の場合は、Xが、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環に、R12を介さず、直接結合していることを意味している。すなわち、mが0の場合は、R12が存在していないことを意味している。一方、mが1の場合は、R12が存在していることを意味し、例えば、XがR12と結合していることを意味している。
【0025】
前記式(1)で示されるベンゾフェノン系モノマー(a)としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0026】
モノマー(a)は、公知材料であり、例えば、特開2003−40937号、特開2002−363226号、特開2005−42019号公報他に公開されている。また、市販されており、例えば、一方社油脂工業(株)より入手することができる。さらに、モノマー(a)は、2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格および官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基など)を有する化合物と、官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基など)を有する共重合性ビニル化合物(アクリル酸やメタクリル酸など)とを、反応させて結合させること(エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合など)により調製することができる。
前記モノマー(a)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
共重合可能なビニルモノマー(b)としては、上記モノマー(a)と共重合可能なものであれば、特に制限されず、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。上記のモノマー(a)に、重合性ビニルモノマー(b)を共重合することにより、熱可塑性樹脂との相溶性が向上し、経時安定性が良好となる。また、熱溶融性物質中に、重合性ビニルモノマー(b)を含有させることにより、ポリマーの分子量の調整が容易となる。
【0028】
共重合可能なビニルモノマー(b)は、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができ、例えば、その重合量は、重合体全体に対して、20〜80質量%、好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲である。
【0029】
本発明で用いることができる共重合可能なビニルモノマー(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸酸2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル系モノマー:酢酸ビニル等の酢酸ビニル系モノマー;α,β−不飽和多塩基性酸モノアルキルエステル、α,β−不飽和多塩基性酸ジアルキルエステル等の多塩基酸エステル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル系モノマー;アルコキシポリエチレングリコール(n=1〜20)(メタ)アクリル酸エステル及びフェノキシポリエチレングリコール(n=1〜20)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なかでも、アクリル酸エステル系モノマーやメタクリル酸エステル系モノマーが好ましく、特にアクリル酸やメタクリル酸の−C1−4アルキルエステルが好ましい。
【0030】
高分子熱溶融性物質(共重合体)の重量平均分子量(Mw)の値は、1,000〜100,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が1,000未満の場合は、ダンボール被着体に貼り付け後、高分子熱溶融性物質(重合体)が熱可塑性樹脂からブリードアウトし易くなり、経時粘着力が低下する。一方、重量平均分子量(Mw)が100,000よりも大きい場合は、高分子熱溶融性物質(共重合体)と熱可塑性樹脂との相溶性が低下するため、初期粘着力が低下する。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算分子量である。
【0031】
本発明の高分子熱溶融性物質(共重合体)は、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など従来から公知の重合方法で製造することができる。例えば、溶液重合法により調製する場合、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤にモノマー成分(モノマー(a)と重合性ビニルモノマー(b))を加え、重合開始剤の存在下、重合を行なうことにより調製することができる。当該溶液重合で用いられる有機溶剤や重合開始剤等は、特に制限されず、公知のものを広く用いることができる。
【0032】
また、乳化重合法により調製する場合は、必要に応じて乳化剤を用いて、上記のモノマー成分を乳化させ、重合開始剤の存在下、乳化重合を行なうことにより調製することができる。当該乳化重合で用いられる乳化剤や重合開始剤等は、特に制限されず、公知のものを広く用いることができる。
【0033】
該高分子熱溶融性物質(共重合体)は、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明の感熱性粘着剤において、感熱性粘着剤中の熱溶融性物質である上記化合物の含有量は、粘着剤100部に対し50〜500部であり、さらに好ましくは100〜400部の範囲で用いられる。熱溶融性物質である上記化合物の含有量が粘着剤100部に対し500部以上の場合には、粘着力の低下を来たすことがある。また、低Tg樹脂と組合せた場合、上記一般式化合物の含有量が粘着剤100部に対し50部未満と少ないと、通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど保存上の不具合が生じる。
【0034】
本発明の感熱性粘着剤で好ましく併用される熱可塑性樹脂としては、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、天然ゴムラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、合成ゴム、酢酸ビニル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、ビニルピロリドン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等の高分子樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
感熱性粘着剤中の熱可塑性樹脂の含有率は、好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは15〜50重量%である。熱可塑性樹脂の含有率が10重量%未満及び60重量%を超えた場合、いずれも粘着力の低下となるので望ましくない。また、低Tg樹脂の含有率が60重量%を超えた場合には、通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど保存上の不具合が生じる。
【0036】
さらに、感熱性粘着剤の粘着力を向上させるために、上記成分に一般的な粘着剤に用いられる粘着付与剤であるロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂を用いることができる。
【0037】
本発明の感熱性粘着剤に特に好ましく用いられる粘着付与剤としては、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂)が挙げられる。これらの粘着付与剤は、熱可塑性樹脂及び本発明の熱溶融性物質と相溶し、感熱性粘着剤の粘着力が著しく向上する。
【0038】
また、感熱性粘着剤中の粘着付与剤の融点又は軟化点は、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは80〜200℃である。80℃未満になると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)が生じる。また、感熱性粘着剤中の粘着付与剤の含有率は、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。5重量%未満であると、粘着力が低下し、30重量%を超えると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)が生じる。
【0039】
本発明の感熱性粘着剤においては、上記成分以外に、ブロッキング防止のために、酸化チタン、アルミナ、コロイダルシリカ、カオリン、タルク等の無機物や、ステアリン酸金属塩、パラフィン、天然ワックス、合成ワックス、天然油脂、ポリスチレン粉末等の有機物を、さらに必要に応じて分散剤、消泡剤、増粘剤等を使用することもできる。
【0040】
本発明の感熱性粘着剤を基材の片面に塗布することにより、塩化ビニルラップやポリオレフィンラップ、特にダンボールに対する粘着力が強く、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着材料を得ることができる。
【0041】
支持体に塗工若しくは印刷の際の乾燥条件は、使用される熱溶融性物質が融解しない温度範囲で乾燥されなければならない。乾燥の手段としては熱風乾燥の他に赤外線、マイクロ波、高周波による熱源を利用した乾燥方法が使用できる。
【0042】
感熱性粘着剤層の塗布量は、乾燥塗工量で通常2〜35g/m、好ましくは5〜25g/mの範囲で塗布される。感熱性粘着剤層の塗工量が2g/m未満であると、加熱による接着を行なう際に充分な接着力が得られない。また、35g/mを越えると接着機能が飽和し経済上好ましくない。
【0043】
本発明の感熱記録層においては、基材上にロイコ染料及び顕色剤を主成分とする感熱記録層を形成させることができる。
【0044】
本発明の感熱記録層において用いられるロイコ染料としては、一般にこの種のロイコ系記録材料において知られているロイコ染料が適用され、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。
【0045】
このようなロイコ染料の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3’−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、6’−ブロモ−3’−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−クロルフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−ニトロフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジエチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−メチルフェニル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(2’−メトキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−4’−クロル−5’−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−メトキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−p−クロロフェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−ベンジルオキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−フェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノ−フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,3−ビス{2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル}−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−ビス{1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル}−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリドフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオランスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン等を挙げることができる。
【0046】
また、本発明の感熱記録層においては、顕色剤として電子受容性の種々の化合物、例えばフェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸、及びその金属塩等を適用することができる。
【0047】
その具体例としては、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、3,4’−イソプロピリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4,4’−ジフェノールスルホン、4,2’−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジロキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフェノールスルホキシド、P−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、P−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサヘプタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、5−クロロ−サリチルアニリド、サリチル−o−クロロアニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、2−アセチルオキシ−3−ナフトエ酸の亜鉛塩、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸の亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属塩、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、4−{β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4’−ジフェノールスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジフェノールスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエンチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、3,4−ヒドロキシ−4’−メチル−ジフェニルスルホン、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)等が挙げられる。
【0048】
本発明の感熱記録層を形成させるためには、ロイコ染料及び顕色剤を基材上に結合支持させればよい。この場合の結合剤としては、慣用の種々の結合剤を適宜用いることができる。
【0049】
このような結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉、及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス類等を挙げることができる。
【0050】
また、本発明により感熱記録層を形成させる場合は、填料として種々の熱可融性物質を使用することができる。
その具体例としては、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチルエステル、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ジベンジルエステル、テレフタル酸ジメチルエステル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジルオキシナフタレン、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ビス(フェノキシ)ブタン、1,4−ビス(フェノキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ビス(フェニルチオ)ブタン、1,4−ビス(フェニルチオ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、1,3−ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−(ベンジルオキシ)ベンジルアルコール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、蓚酸ジベンジルエステル、1,5−ビス(p−メトキシフェニルオキシ)−3−オキサペンタン等が挙げられる。
【0051】
また、本発明においては、必要に応じ、この種の感熱記録層に慣用される補助添加成分、例えば、界面活性剤、滑剤等を併用することができる。この場合、滑剤としては、高級脂肪酸、及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類等が挙げられる。
【0052】
なお、本発明においては、必要に応じ、基材と感熱記録層との間にアンダーコート層を設けたり、また感熱記録層の上に画像信頼性を向上させる目的等で、例えば水溶性樹脂を主成分とする保護層を設けたりすることもできる。この場合、これらの層を構成する成分としては、上記の填料、結合剤、熱可融性物質、界面活性剤等を用いることができる。さらに、保護層上及び保護層を設けない場合は、直接感熱記録層の上に、印刷画像を形成することができ、印刷インクとしては、例えばUV硬化性インクが用いられる。
【0053】
本発明の感熱記録層は、一般に知られている方法により形成することができる。例えば、先ず、ロイコ染料、顕色剤を別々に結合剤水溶液と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により、分散粒径が1〜3μmになるまで粉砕分散した後、必要に応じて填料、熱可融性物質(増感剤)分散液等と共に、一定処方で混合して感熱記録層塗布液を調製し、基材に塗布することによって感熱記録層を形成することができる。
【0054】
本発明の感熱性粘着剤を種々の基材上に塗布することによって、感熱性粘着材料が得られるが、上記のように、基材と感熱性粘着剤層との間に中間層又は感熱発色層が設けられた粘着材料の場合には、基材と感熱発色層の間にアンダーコート層を設けることができる。これらの中間層及び/又はアンダーコート層を設ける場合には、断熱性であることが好ましく、このような層を設けることによって感熱発色層の熱感度が向上し、かつ熱活性時における感熱発色層の地肌発色が防止でき、熱活性時の熱エネルギーを効率よく活用することができる。上記の中間層及び/又はアンダーコート層が断熱性である場合は、以下、断熱層という。断熱層としては、熱可塑性樹脂を殼としてなる中空度30〜95%程度の微小中空粒子又はポーラスな顔料を用いた非発泡性断熱層及び発泡性フィラーを用いた発泡性断熱層が挙げられる。
【0055】
断熱層に用いられる熱可塑性樹脂を殼としてなる中空度30〜95%程度の微小中空粒子は、内部に空気その他の気体を含有するもので、すでに発泡状態となっている微小中空粒子である。この微小中空粒子の平均粒子径は、0.2〜20μmのものが好ましく、より好ましくは0.5〜10μmの微小中空粒子が好ましい。この平均粒子径(粒子外径)が0.2μmより小さいものは、技術的に中空にするのが難しいことや断熱層の役割が不充分となる。
【0056】
また、逆に20μmより大きいものは、塗布乾燥後の表面の平滑性が低下するため、感熱性粘着剤層の塗布が不均一になり、さらに均一にするために必要量以上の感熱性粘着剤を塗布しなければならない。従って、このような微小中空粒子の分布は粒子径が上記の範囲にあると同時に、バラツキの少ない分布スペクトラムの均一なものが望ましい。
【0057】
さらに、本発明において、微小中空粒子は、中空度が30%以上のものが使用できるが、50%以上のものがより好ましい。中空度が30%未満のものは、断熱性が不充分なため、熱エネルギーが基材を通じて外へ放出され、粘着剤活性時の熱の効率が悪くなるので望ましくない。
ここでいう前記中空度とは、中空微粒子の外径基準の体積と内径基準の体積の比である。
【0058】
本発明で用いる微小中空粒子は上述のように、熱可塑性樹脂を殼とするものであるが、この熱可塑性樹脂としては、特に塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
【0059】
また、本発明の断熱層に用いられるポーラスな顔料としては、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の有機顔料やシラス土等の無機顔料があるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0060】
本発明の非発泡性断熱層を形成させるには、上記の微小中空粒子やポーラスな顔料をバインダーと共に水に分散し、これを基材上に塗布し、乾燥することによって得られる。この場合、微小中空粒子の塗布量は支持体1m当たり少なくとも1g以上であり、さらに好ましくは2〜15g程度が好ましい。また、バインダー樹脂の塗布量は、断熱層を基材に強く結合させるに足る量でよく、通常は該微小中空粒子とバインダー樹脂との合計量に対して、2〜50重量%である。
【0061】
非発泡性断熱層を形成する際に使用されるバインダーとしては、従来公知の水溶性高分子及び/又は水性高分子エマルジョンから適宜選択される。
その具体例としては、水溶性高分子として、例えばポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0062】
また、水性高分子エマルジョンとしては、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックスや酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョン等が挙げられる。
【0063】
また、本発明において用いる発泡性フィラーは、熱可塑性樹脂を殼とし、内部に低沸点溶媒の発泡剤を含有する中空状のプラスチックフィラーであり、種々のものが適用されるが、その粒子直径に関しては、未発泡の状態の場合、2〜50μmであり、発泡状態では10〜100μm、好ましくは10〜50μmである。このプラスチックフィラーの殼となる熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、又はそれらの共重合体が挙げられる。また、殼内に含まれる発泡剤としては、プロパンやブタンその混合物等が一般的に用いられる。
【0064】
基材上に発泡性断熱層を形成させるには、上記した発泡性プラスチックフィラーを、結着剤と共に支持体上に塗布乾燥した後、その塗布面に熱板を密着させ、プラスチックフィラーを加熱発泡させればよい。プラスチックフィラーの塗布量は、支持体1mに対し未発泡フィラーとして、少なくとも1g以上であり、好ましくは2〜5g程度である。また、結着剤の使用量は発泡性断熱層を支持体上に対し、強く結着させるような量であればよく、通常は未発泡フィラーと結着剤の合計量に対し、5〜50重量%である。また、加熱発泡温度は、フィラーの殼を構成する熱可塑性樹脂を軟化させる温度である。発泡倍率は、通常2〜4倍、好ましくは2〜3倍程度であり、上記の発泡が達成されるように、適宜選択される。
【0065】
上記のようにし、基材上に形成された発泡性断熱層の表面は、かなり凹凸が生じているために、発泡性断熱層形成後(加熱発泡後)キャレンダー処理により平面を平滑にすることが好ましく、また、必要に応じて、発泡性断熱層の表面又は下面に1層又は複数のアンダーコート層を設けることもできる。
【0066】
なお、本発明の断熱層においては、上記微小中空粒子、ポーラスな顔料又は発泡性フィラー及びバインダーと共に、必要に応じて、フィラー、熱可融性物質(増感剤)、界面活性剤等を併用することができる。
この場合、フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂等の有機系の微粉末を挙げることができ、また、熱可融性物質(増感剤)としては、例えば、高級脂肪酸又はそのエステル、アミドもしくは金属塩の他、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、安息香酸フェニルエステル、高級直鎖グリコール、3,4−エポキシ−ヘキサヒドロフタル酸ジアルキル、高級ケトン、p−ベンジルビフェニル他の熱可融性有機化合物等50〜200℃程度の融点を持つものが挙げられる。
【0067】
また、本発明で使用する基材としては、特に限定されず、上質紙、アート紙、コート紙等、紙以外でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム或いはこれらを貼り合わせたフィルム等を使用することができる。
【0068】
上記塗工層を設ける塗工方法として、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本あるいは5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法、等公知の塗工方法が利用可能である。
【0069】
本発明の感熱性粘着材料は、その感熱性粘着剤層の熱活性化時(加熱時)の前又は後でカットされて好適に使用することができ、この場合、該感熱性粘着材料に、予め切れ目が形成されていてもよい。これらの場合、該感熱性粘着材料を、ラベル、タグ等の様々な用途に好適に用いることができる点で有利である。
【0070】
本発明の感熱性粘着材料の形状としては、特に制限はなく、ラベル状、シート状、ロール状などが好適に挙げられる。
【0071】
本発明の感熱性粘着材料が貼付される被着体としては、特に制限はなく、目的に応じてその大きさ、形状、構造、材質等を適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂板、SUS、アルミニウム等の金属板、封筒、ダンボール等の紙製品、ポリオレフィン製のラップ類、ポリ塩化ビニル製のラップ類、ポリエチエレン製不織布(封筒等)などが好適に挙げられる。
【0072】
これらの中でも、前記ダンボールは、一般に感熱性粘着材料を貼付することが難しいが、本発明の感熱性粘着材料の場合、経時により強い粘着力を発現させることができるため、該ダンボールであっても強固に貼付することができる点で有利である。
【0073】
本発明の感熱性粘着材料における前記感熱性粘着層を熱活性化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば熱風による活性化方法、熱ロールによる活性化方法、サーマルヘッドによる活性化方法などが挙げられる。
【0074】
これらの中でも、サーマルヘッドによる活性化方法が好ましく、以下の本発明の感熱性粘着材料の熱活性化方法が特に好ましい。この場合、既存の感熱記録プリンタ装置を用いて前記感熱粘着材料の両面を加熱することにより、前記感熱記録層への記録と、前記感熱性粘着剤層の熱活性化とを行なうことができる点で有利である。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下に示す部及び%は、いずれも重量基準である。
【0076】
[実施例1]
(熱溶融性物質P−1の製造)
ジムロート、滴下ロート、温度計、窒素導入管、攪拌装置を備えた300mlのセパラブルフラスコに、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン45g、メタクリル酸メチル50g、n−ドデシルメルカプタン1.5g、酢酸エチル80gを加え、窒素導入管から窒素を吹き込みながら50℃まで昇温、攪拌した。
その後、酢酸エチル20gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3gを添加し、1時間攪拌した。攪拌終了後70℃まで昇温し、8時間反応を行なった。
重合終了後、1kgのメタノール中に重合物を投入し、ホモミキサーで30分間攪拌した。攪拌後、No.2の濾紙にて吸引濾過し、濾物を60℃の温風循環式乾燥機で24時間乾燥し、共重合体を調製した。この共重合体の質量平均分子量(Mw)は2.0万であった。
【0077】
〔A液〕熱溶融性物質分散液
熱溶融性物質P−1 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
上記組成からなる混合物を、平均粒径が1.0μmとなるようにサンドミルを用いて分散して分散液〔A液〕を得た。
【0078】
〔B液〕感熱性粘着剤液
メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン 20部
(Tg−62℃、不揮発分50%)
熱溶融性物質分散液〔A液〕 33.3部
上記組成からなる感熱性粘着剤分散液〔B液〕を80g/mの片面コート紙の裏面に乾燥重量16g/mとなるように塗布乾燥し、感熱性粘着シートを得た。
【0079】
[実施例2〜4]
(熱溶融性物質P−2の製造)
ジムロート、滴下ロート、温度計、窒素導入管、攪拌装置を備えた300mlのセパラブルフラスコに、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン45g、メタクリル酸メチル50g、n−ドデシルメルカプタン1.5g、酢酸エチル80gを加え、窒素導入管から窒素を吹き込みながら50℃まで昇温、攪拌した。
その後、酢酸エチル20gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3gを添加し、1時間攪拌した。攪拌終了後70℃まで昇温し、8時間反応を行なった。
重合終了後、1kgのメタノール中に重合物を投入し、ホモミキサーで30分間攪拌した。攪拌後、No.2の濾紙にて吸引濾過し、濾物を60℃の温風循環式乾燥機で24時間乾燥し、共重合体を調製した。この共重合体の質量平均分子量(Mw)は1.5万であった。
【0080】
(熱溶融性物質P−3の製造)
ジムロート、滴下ロート、温度計、窒素導入管、攪拌装置を備えた300mlのセパラブルフラスコに、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン45g、アクリル酸メチル50g、n−ドデシルメルカプタン1.5g、酢酸エチル80gを加え、窒素導入管から窒素を吹き込みながら50℃まで昇温、攪拌した。
その後、酢酸エチル20gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3gを添加し、1時間攪拌した。攪拌終了後70℃まで昇温し、8時間反応を行なった。
重合終了後、1kgのメタノール中に重合物を投入し、ホモミキサーで30分間攪拌した。攪拌後、No.2の濾紙にて吸引濾過し、濾物を60℃の温風循環式乾燥機で24時間乾燥し、共重合体を調製した。この共重合体の質量平均分子量(Mw)は3.5万であった。
【0081】
(熱溶融性物質P−4の製造)
ジムロート、滴下ロート、温度計、窒素導入管、攪拌装置を備えた300mlのセパラブルフラスコに、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン45g、アクリル酸メチル50g、n−ドデシルメルカプタン1.5g、酢酸エチル80gを加え、窒素導入管から窒素を吹き込みながら50℃まで昇温、攪拌した。
その後、酢酸エチル20gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3gを添加し、1時間攪拌した。攪拌終了後70℃まで昇温し、8時間反応を行なった。
重合終了後、1kgのメタノール中に重合物を投入し、ホモミキサーで30分間攪拌した。攪拌後、No.2の濾紙にて吸引濾過し、濾物を60℃の温風循環式乾燥機で24時間乾燥し、共重合体を調製した。この共重合体の質量平均分子量(Mw)は1.2万であった。
【0082】
実施例1の熱溶融物質をP−1をP−2〜P−4に代えた以外は実施例1と同様にして感熱性粘着シートを得た。
【0083】
[実施例5]
実施例1において〔B液〕を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔B液〕感熱性粘着剤液
メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン 20部
(Tg−62℃、不揮発分50%)
熱溶融性物質分散液〔A液〕 17部
【0084】
[実施例6]
実施例1において〔B液〕を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔B液〕感熱性粘着剤液
メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン 20部
(Tg−62℃、不揮発分50%)
熱溶融性物質分散液〔A液〕 166部
【0085】
[実施例7]
実施例1において〔B液〕を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔B液〕感熱性粘着剤液
メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン 20部
(Tg−62℃、不揮発分50%)
熱溶融性物質分散液〔A液〕 10部
【0086】
[実施例8]
実施例1において〔B液〕を下記組成に変更した以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔B液〕感熱性粘着剤液
メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン 20部
(Tg−62℃、不揮発分50%)
熱溶融性物質分散液〔A液〕 170部
【0087】
[実施例9]
実施例1において〔B液〕の代わりに下記〔C液〕を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔C液〕感熱性粘着剤分散液
メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン 20部
(Tg−62℃、不揮発分50%)
熱溶融性物質分散液〔A液〕 33.3部
重合ロジンエマルジョン(軟化点145℃、不揮発分50%) 6.5部
【0088】
[実施例10]
〔E液〕断熱層用塗液
微小中空粒子分散体
塩化ビニリデン/アクリロニトリルを主体とする共重合樹脂
(固形分濃度32%、平均粒子径3.0μm、中空度92%) 30部
スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス(Tg+4℃) 10部
水 60部
上記組成からなる混合物を攪拌分散して断熱層用塗液〔E液〕を調製した.
【0089】
<感熱発色層液の調整>
〔F液〕発色剤分散液
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 20部
ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液) 10部
水 70部
【0090】
〔G液〕顕色剤分散液
4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン 10部
ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液) 25部
炭酸カルシウム 15部
水 50部
上記組成からなる混合物を、それぞれ平均粒径が1.5μm程度となるようにサンドミルを用いて分散して〔F液〕と〔G液〕を調製し、次に〔F液〕:〔G液〕=1:8となるように混合攪拌して感熱発色層液〔H液〕を得た。
【0091】
上記〔E液〕を、基材の表面に乾燥後重量が4g/mとなるように塗布乾燥して断熱層を設けた。
この上に、上記〔H液〕を乾燥後重量が5g/mとなるように塗布乾燥して感熱発色層を設けた。
【0092】
<保護層液の調整>
[保護層一次分散液]
水酸化アルミニウム 20部
10%PVA水溶液 20部
水 40部
次いで、上記保護層一次分散液を使って、下記組成の保護層液を調製した。
【0093】
[保護液の調整]
保護層一次分散液 10部
10%PVA水溶液 20部
12.5%エピクロヒドリン水溶液 5部
30%ステアリン酸亜鉛分散液 2部
上記組成の混合物を縦型サンドミルで平均粒径が1μm以下になるように粉砕、分散化して保護層一次分散液を調製した。
【0094】
上記感熱発色層上に、上記保護層液を乾燥時の重量が約3g/mとなるように塗布、乾燥を行ない、さらに王研式平滑度が2000秒になるようにスーパーキャレンダー処理して感熱記録紙を得た。
【0095】
実施例1の片面コ−ト紙の代わりに、上記感熱発色層の裏面に実施例2と同様にして感熱性粘着剤層を設けて感熱性粘着シートを得た。
【0096】
[実施例11]
〔H液〕中間層塗布液
微小中空粒子(アクリロニトリル/
塩化ビニリデン/メタクリル酸メチル共重合体) 14.6部
(固形分濃度41%、平均粒子径3.6μm、中空度90%)
2−エチルヘキシルアクリレート/
メチルメタアクリレート/スチレンの共重合体(Tg−65℃) 21.7部
(固形分濃度55.4%、昭和高分子製)
界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
水 63.6部
上記組成からなる混合物を攪拌分散して、中間層塗布液〔H液〕を調製した。
【0097】
80g/mの片面コート紙の裏面に上記〔H液〕を乾燥後重量が5g/mとなるように塗布乾燥して中間層を設けた。この中間層上に、前記実施例1に記載の感熱性粘着剤分散液〔I液〕を乾燥重量16g/mとなるように塗布乾燥し、感熱性粘着ラベルを得た。
【0098】
[比較例1]
実施例1において、〔A液〕を下記〔J液〕に代えたものを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔J液〕熱溶融性物質分散液
2−(2−ヒドロキシ−5−t−
オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
【0099】
[比較例2]
実施例1において、〔A液〕を下記〔K液〕に代えたものを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔K液〕熱溶融性物質分散液
2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−
ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
【0100】
[比較例3]
実施例1において、〔A液〕を下記〔L液〕に代えたものを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔L液〕熱溶融性物質分散液
5−クロル−2−(3,5−ジ−t−ブチル
−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
【0101】
[比較例4]
実施例1において、〔A液〕を下記〔L液〕に代えたものを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔L液〕熱溶融性物質分散液
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
【0102】
[比較例5]
実施例1において、〔A液〕を下記〔L液〕に代えたものを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔L液〕熱溶融性物質分散液
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
【0103】
[比較例6]
実施例1において、〔A液〕を下記〔L液〕に代えたものを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱性粘着シートを得た。
〔L液〕熱溶融性物質分散液
2,2’−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン 30.0部
ポリビニルアルコール(30%水溶液) 5.0部
界面活性剤(アルキル−アリルスルホン酸塩) 0.15部
水 64.85部
【0104】
<粘着特性>
1)粘着力測定
本発明の感熱性粘着シートを40mm×150mmの長方形にカットし感熱性粘着ラベルとし、大倉電気製感熱印字装置TH−PMDを用いて、ヘッド条件:各エネルギー0.5mJ/dot、印字スピード4ms/line、プラテン圧6kgf/lineの条件にて熱活性化させた。次いで、ダンボールに加圧2kgのゴムローラで長手方向に貼り付けて、2分後に剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で剥離させた。そのときの粘着力をフォースゲージで測定し、0.1秒間隔でデータを読み取り平均化した数値を表1に示した。なお、単位はgf/40mmである。この試験を常温環境(22℃、65%RH)で実施した。
【0105】
2)経時粘着力測定
本発明の感熱性粘着シートを40mm×150mmの長方形にカットし感熱性粘着ラベルとし、大倉電気製感熱印字装置TH−PMDを用いて、ヘッド条件:各エネルギー0.5mJ/dot、印字スピード4ms/line、プラテン圧6kgf/lineの条件にて熱活性化させた。ついでダンボールに加圧2kgのゴムローラで長手方向に貼り付けて、40℃dry30日間保管後に剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で剥離させた。そのときの粘着力をフォースゲージで測定し、0.1秒間隔でデータを読み取り平均化した数値を表1に示した。なお、単位はgf/40mmである。この試験を常温環境(24℃、65%RH)で実施した。
【0106】
<ブロッキング性>
同一サンプルの表面と感熱性粘着剤層面とを接触させ、200g/cmの圧力で60℃、Dry条件下で24時間試験した後、室温で放置後サンプルを剥し、そのときのブロッキング性を表1のようなランクで評価した。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例1〜11、比較例1〜6について、その粘着特性、ブロッキング性の測定結果について表2に示す。
なお、粘着力ランクは、
○ : 500gf/40mm以上
△ : 100gf/40mm〜500gf/40mm
× : 100gf/40mm以下とした。
【0109】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱可塑性樹脂、加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とした感熱性粘着剤において、該熱溶融性物質が下記の式(1)から選ばれた少なくとも一種のベンゾフェノン系モノマー(a)、及び共重合可能なビニルモノマー(b)を必須成分として重合して得られる高分子熱溶融性物質を含有することを特徴とする感熱性粘着剤。
【化1】


(式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基又はオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、またはウレタン結合を示す。)
【請求項2】
該高分子熱溶融性物質が熱可塑性樹脂(粘着剤)100部に対し、50〜500部含有されることを特徴とする請求項1に記載の感熱性粘着剤。
【請求項3】
該感熱性粘着剤中に、さらに粘着付与剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱性粘着剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱性粘着剤からなる層を基材の片面に設けてなることを特徴とする感熱性粘着材料。
【請求項5】
前記基材の該感熱性粘着剤層の反対面にロイコ染料と顕色剤を主成分とする感熱記録層が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の感熱性粘着材料。
【請求項6】
該感熱性粘着剤層と基材との間に、微小中空粒子とバインダーを主成分とする中間層が設けられたことを特徴とする請求項4又は5に記載の感熱性粘着材料。
【請求項7】
ラベル状、シート状、及びロール状のいずれかである請求項4乃至6のいずれかに記載の感熱性粘着材料。




【公開番号】特開2006−342208(P2006−342208A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166987(P2005−166987)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】