説明

感熱性粘着材料

【課題】低エネルギーで粘着力を付与することができ、低温環境から高温環境までの広範囲の温度条件で粘着性を発現させることができ、ダンボールのような粗面被着体への粘着力が長時間に亘って持続し、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着材料の提供。
【解決手段】支持体の片面に、Tgが−70℃〜−10℃の熱可塑性樹脂を含有する粘着アンダー層、熱可塑性樹脂とプラスチック球状中空粒子を含有する中間層、及び、熱可塑性樹脂、熱溶融性物質、粘着付与剤を含有する感熱性粘着剤層を順次設けた感熱性粘着材料において、該感熱性粘着剤層に含まれる熱溶融性物質が、式(1)で示される安息香酸−2−ナフチルエステルを必須成分として含有することを特徴とする感熱性粘着材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では非粘着性であるが、加熱により粘着性が発現する感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着材料、特に、粗面被着体に対しても粘着力に優れ、低エネルギーで熱活性可能な感熱性粘着材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ラベル用粘着シートを、価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、計量表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等のラベル用途として使用することが増加している。その記録方式もインクジェット記録方式、感熱記録方式、感圧記録方式等様々な方式がある。また、従来、ラベルの情報記録面と反対側の面に、粘着剤層と剥離紙を積層した構成の一般的な粘着シートが、貼り合わせ時に剥離紙を剥がし加圧のみで簡便に貼り合わせることができるため広く使用されている。この一般的な構成の粘着シートは、剥離紙を剥離して使用するが、剥離された剥離紙は回収して再利用することが難しく、殆どの場合、廃棄処分されている。
そこで近年、常温では粘着性を示さず剥離紙を必要としない感熱性粘着シートが注目されている。剥離紙を必要としないものとして、例えば特許文献1には、感圧接着剤層の上に光又は熱により活性化して粘着性を発現する障壁層を設けたラベルが、また特許文献2には、熱粘着剤層塗布液中に常温で固体の可塑剤を含有させ、通常は非粘着性で加熱により粘着性を活性化させる熱粘着性ラベルが、更に特許文献3には、熱可塑性樹脂と可塑剤が複合した微粒子を主成分とする感熱性粘着剤からなる感熱性粘着層を有する感熱性粘着シートがそれぞれ提案されている。
【0003】
また、感熱性粘着剤は、非特許文献1にも記載されているように、基本的には熱可塑性樹脂と固体可塑剤のような熱溶融性物質及び必要に応じて粘着付与剤を含有してなるものである。前記特許文献2、3に記載されたものは、このような感熱性粘着剤層を改良したものである。熱可塑性樹脂は粘着力、接着力を付与するものであり、また熱溶融性物質は、常温では固体であって樹脂に可塑性は与えないが、加熱により溶融し樹脂を膨潤又は軟化させて粘着性を発現させるものである。また、粘着付与剤は粘着性を向上させる働きもする。感熱性粘着剤中の熱溶融性物質は加熱により溶融した後はゆっくりと結晶化するために、熱源を取り除いた後も粘着性を長時間持続させる。しかしながら、従来の感熱性粘着剤は、粘着性発現後の粘着力が経時的に低下するという問題があった。また、感熱性粘着剤を熱活性する場合、高い熱エネルギーが必要となっていた。
このような問題を解決するため、層構成の面からは、例えば特許文献4、5において、支持体と感熱性粘着剤との間にプラスチック中空粒子/水溶性結着剤を用いた断熱層を設け、熱活性する熱エネルギーの低減化(高感度化)を提案している。しかし、感熱性粘着剤の熱活性熱エネルギーの低減化については比較的良好な結果が得られるものの、常温で粘着性を示さない水溶性結着剤を用いているため、ダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップに対する粘着力は未だ実用レベルに達していないものである。また、粘着性発現後の粘着力が経時的に低下するという問題も解決されていない。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献6においては、支持体と該感熱性粘着剤層との間にTg(ガラス転移温度)が−70℃〜−10℃の熱可塑性樹脂を主成分とする粘着アンダー層を設けることにより、特許文献7においては、支持体の片面に熱可塑性樹脂と粘着付与剤及び熱溶融性物質を主成分とする感熱性粘着剤層を設けた感熱性粘着ラベルにおいて、支持体と該感熱性粘着剤層との間にJISK6251に規定される100%モジュラスが35kgf/cm以下である樹脂を主成分とした弾性アンダー層を設けることにより、ダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップ等への粘着力に優れ、経時的な粘着力低下がなく、耐ブロッキング性にも優れ、しかも低エネルギーで熱活性可能な感熱性粘着ラベルシートを得ることが提案されているが、依然として低温での粘着力、中でも低温環境下におけるダンボール等の粗面被着体に対する低温での粘着力は大きな問題であった。
【0005】
一方、熱溶融性物質を含有する熱活性層(感熱性粘着剤層)の側から粗面被着体に対する粘着特性を向上させる試みが行なわれている。
ダンボールのような凹凸の大きな表面(粗面)に対して粘着性を発現させるには、感熱性粘着剤に限らず一般の粘着剤も含めて、粘着剤層の厚さを厚くすることが有効であり、その厚さによって被着体表面の凹凸を埋めることが行われてきた。しかしながら、粘着剤層の厚さを厚くすることは、価格的なデメリットが大きいことに加えて、感熱性粘着剤層全体を加熱する際に非常に多くの熱エネルギーを必要とするため非効率であり実用的な方法とは言いがたい。
また、被着体表面の凹凸を埋めるための別の方法としては、感熱性粘着剤を柔らかくすることも考えられる。この場合、感熱性粘着剤を構成する材料中の熱可塑性樹脂と熱溶融性物質(固体可塑剤)によって感熱性粘着剤の柔軟性も変化すると考えられ、粗面の被着体に限らず各種被着体に対する粘着性を向上させる目的で多くの技術が提案されている。
【0006】
例えば特許文献8、9においては、熱可塑性樹脂として、Tgが0℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体又はTgが−5℃以上の熱可塑性樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体を除く)等を用いることが提案されている。
しかし、これらの材料を用いた感熱性粘着剤は、ステンレス板等に対する粘着力については比較的良好な結果が得られるものの、塩化ビニルラップやポリオレフィンラップ等に対する粘着力については、未だ実用レベルに達していないものであった。
特許文献10には、基材と感熱発色層の間に非発泡中空粒子を含有させたアンダーコート層を設けてなる感熱性粘着材料であって、フタル酸ジシクロヘキシルを熱溶融性物質(固体可塑剤)とする感熱性粘着剤を用いたものが提案されている。この感熱性粘着材料はアンダーコート層が設けられているため、感熱発色層の熱感度向上と熱活性化時に生じる感熱発色層の地肌発色防止の点でほぼ満足できるレベルであるが、該感熱性粘着材料を重ね合わせる際に発生するブロッキング(意図しない粘着機能発現)が40℃程度の温度で発生してしまい、実用化レベルには達していないものである。
【0007】
特許文献11、12には、ベンゾフェノンを固体可塑剤に用いた感熱性粘着剤(ディレードタック型粘着剤)が提案されているが、ポリオレフィンやガラスのような鏡面に対する粘着力はあるものの、ダンボールのような粗面に対する粘着力が弱く、ダンボールに貼り付けた後、長時間経過すると接着力の低下をもたらす問題があり、宅配便等の物流用での使用には実用上大きな障害となっている。また、60℃の環境下でブロッキングが発生するといった問題がある。
特許文献13では、2層以上の感熱性粘着剤層を設け、各層の最大粘着力を発現させる温度が相互に異なるようにするという技術が提案されており、低温環境から高温環境まで広い環境下で粘着性を発現させることができるが、これもダンボールのような粗面に対しては粘着力が弱く、比較的低い温度で粘着機能が発現する層の影響でブロッキングが発生することがある。
特許文献14には、ベンゾトリアゾールを固体可塑剤に用いたディレードタック糊が提案されている。このものは、ブロッキング特性に比較的優れ、被着体として、紙、ガラス、金属等のような材質、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのいわゆるポリオレフィン樹脂に対しては長期に安定した接着力が持続するが、低温環境では粘着機能を発現しないことや、ダンボールに貼り付けた後、長時間経過することによって接着力の低下をもたらすという問題があり、宅配便等の物流用での使用には実用上大きな障害となっている。
【0008】
特許文献15では、融点が55〜100℃のリン化合物を固体可塑剤として用いることによって、接着力を向上させる技術が提案されているが、感熱性粘着剤層としての軟化点が40〜60℃程度と低くなるので、ブロッキングが発生しやすく、40℃程度の高温環境下では感熱性粘着剤層が粘性を持たず粘着力が非常に弱くなる。
特許文献16では、フタル酸エステル、リン系化合物、リン酸エステル、ヒンダードフェノール系化合物、トリアゾール系化合物等から選択される複数の固体可塑剤を用い、ブロッキング特性と粘着機能の向上を両立させる技術が提案されている。
しかし、これらの技術では選択する固体可塑剤によって長時間経過による粘着力の消失が生じるし、低温環境から高温環境までの広い温度環境下で粘着性を発現させることができないため、実用上大きな障害となっている。
更に特許文献17については、ダンボールのような凹凸のある面には接着せず、物流分野での運用が難しい。
以上のように、固体可塑剤を中心に感熱性粘着剤に対する検討は多く行われているが、何れも粘着機能の向上とブロッキング防止機能が背反する関係にあるため、両立が十分でないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平9−20079号公報
【特許文献2】特開2001−64603号公報
【特許文献3】特開2002−114955号公報
【特許文献4】特許第2683733号公報
【特許文献5】特開平10−152660号公報
【特許文献6】特開2006−83196号公報
【特許文献7】特開2006−83222号公報
【特許文献8】特開平6−57226号公報
【特許文献9】特開平6−57233号公報
【特許文献10】特開平9−265260号公報
【特許文献11】特開2003−206455号公報
【特許文献12】特開2002−38123号公報
【特許文献13】特開2002−146303号公報
【特許文献14】特許第3556414号公報
【特許文献15】特開2000−103969号公報
【特許文献16】特開2004−117941号公報
【特許文献17】特開2001−234151号公報
【非特許文献1】「接着便覧」第12版、第131〜135頁、昭和55年、高分子刊行会発行、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の感熱性粘着材料に見られる問題を解消し、低エネルギーで粘着力を付与することができ、低温環境から高温環境までの広範囲の温度条件で粘着性を発現させることができ、ダンボールのような粗面被着体への粘着力が長時間に亘って持続し、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、次の1)〜7)の発明によって解決される。
1) 支持体の片面に、Tgが−70℃〜−10℃の熱可塑性樹脂を含有する粘着アンダー層、熱可塑性樹脂とプラスチック球状中空粒子を含有する中間層、及び、熱可塑性樹脂、熱溶融性物質、粘着付与剤を含有する感熱性粘着剤層を順次設けた感熱性粘着材料において、該感熱性粘着剤層に含まれる熱溶融性物質が、式(1)で示される安息香酸−2−ナフチルエステルを必須成分として含有することを特徴とする感熱性粘着材料。
【化5】

2) 熱溶融性物質として、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール〔式(2)〕、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド〔式(3)〕、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト〔式(4)〕のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする1)記載の感熱性粘着材料。
【化6】

【化7】

【化8】

3) 安息香酸−2−ナフチルエステルの含有量が、全熱溶融性物質の50〜75重量%であることを特徴とする1)又は2)記載の感熱性粘着材料。
4) プラスチック球状中空粒子が、中空率70%以上でかつ体積平均粒子径2.0〜5.0μmであることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の感熱性粘着材料。
5) 支持体の感熱性粘着剤層を有する側と反対側の面に、ロイコ染料と顕色剤とを含有する感熱記録層を有することを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の感熱性粘着材料。
6) 支持体の感熱性粘着剤層を有する側と反対側の面に、インクジェット記録又は熱転写記録用インク受容層を有することを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の感熱性粘着材料。
7) ライン型サーマルヘッドによって加熱することにより粘着機能が発現することを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の感熱性粘着材料。
【0012】
以下、上記本発明の特徴及び実施の形態について詳細に説明する。
本発明の感熱性粘着材料は、粘着アンダー層、中間層、以下の特徴を有する感熱性粘着剤層(熱活性層)で構成されており、感熱性粘着剤層は、粘着性を有する熱可塑性樹脂、熱溶融性物質、及び粘着付与剤を含有する。これらの3種類の材料は、感熱性粘着剤層として、加熱時の粘着性発現と非加熱時のブロッキング防止機能の両立を図るためのものであり、感熱性粘着剤層中に占める3種類の材料を併せた割合は、概ね50重量%以上、好ましくは80重量%以上である。50重量%よりも少ないと感熱性粘着剤としての性能を発現することができず、加熱時の粘着性発現と非加熱時のブロッキング防止機能のバランスが崩れることになる。
【0013】
上記のうち熱溶融性物質は、非加熱時に粘着性を発現せずブロッキング現象を起こさないようにするためのもので、常温(25℃)では固体であり、未加熱状態では熱可塑性樹脂を露出させないため粘着性を発現させないが、加熱により溶融して熱可塑性樹脂と相溶し、層全体として粘着性を発現させる。
そして本発明では、上記熱溶融性物質の機能から、安息香酸−2−ナフチルエステルを熱溶融性物質の必須成分として用いることを特徴としている。
安息香酸−2−ナフチルエステルは融点が109℃と低く、低エネルギーで溶融し、表面が粗い被着体にも流動して密着し、熱可塑性樹脂との相溶性が良く、長時間保存時でも粘着力の低下が起こらない特徴を有している。更に保存時にブロッキングが発生しない感熱性粘着材料を形成することができる。
安息香酸−2−ナフチルエステルの含有量は、通常、全熱溶融性物質の40重量%以上が好ましく、中でも、50〜75重量%の範囲が、粘着特性と耐ブロッキング性の点から好ましい。
【0014】
更に粘着力とブロッキング防止の両立を確実にするため、熱溶融性物質として、安息香酸−2−ナフチルエステルに加えて、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトのうち少なくとも一つを加えることが好ましい。
これらの化合物は安息香酸−2−ナフチルエステルとの相溶性及び安定性に優れ、比較的融点が高いため、特に耐ブロッキング性に効果を発揮するが、安息香酸−2−ナフチルエステルの特徴を損なわない範囲で添加する必要があり、全熱溶融性物質量に対し、その含有比率が50重量%を超えない程度の添加量とすることが好ましい。50重量%を超えると特に粗面への粘着力の低下が懸念される。
感熱性粘着剤層中の熱溶融性物質の含有率は、好ましくは、40〜80重量%であり、更に好ましくは、50〜75重量%である。含有率が40重量%未満の場合、通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど保存上の不具合(ブロッキング)が生じ、80重量%を超えた場合には粘着力の低下を来たすことがある。
【0015】
上記熱溶融性物質は、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、ダイノーミル、アトライター、ヘンチェルミキサー等の湿式又は乾式の粉砕機により微粒化され水分散液として用いられるが、従来公知の方法でマイクロカプセル化して使用することも可能である。熱溶融性物質の粒径は10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であるが、実用上からは0.7〜2μmである。
上記熱溶融性物質の分散剤としてはポリビニルアルコール系樹脂が用いられる。このポリビニルアルコール系樹脂としては、公知の方法で製造されるもので良く、ポリ酢酸ビニルの鹸化物以外に、他のビニルエステルと共重合しうる単量体を含有していても良い。
このような単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、あるいはその塩、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩が挙げられる。中でも好ましいのは、オレフィンスルホン酸あるいはその塩の共重合体であり、熱溶融性物質と熱可塑性樹脂との相溶性が良いため、熱溶融時の粘着特性が向上する。
【0016】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の数平均分子量は10000〜40000が好ましい。数平均分子量が10000未満の場合、感熱性粘着剤層の結着力が弱くなり、耐ブロッキング性が低下することがある。一方、40000を超えると、耐ブロッキング性は優れるものの、粗面への粘着力が低下することがある。
ポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度は70%以上が好ましく、70%未満の場合には、自身の水溶性も低下する傾向にあるため、熱溶融性物質を分散しにくくなり、分散工程においてトラブルを引き起こし易くなる。
また、分散剤の添加量は、熱溶融性物質100重量部に対して、2〜10重量部が好ましい。2重量部未満の場合、熱溶融性物質の分散不良となり、生産工程でトラブルとなる。一方、10重量部を超えて添加した場合には粘着力の低下を引き起こす。
分散剤は保護コロイドの機能を果たすが、熱溶融性物質の特性を低い熱エネルギーで引き出すために必要最小量とし、かつ数平均分子量は結着力を損なわない程度に低い方が好ましい。
【0017】
感熱性粘着剤層に用いる熱可塑性樹脂としては、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂のTgは、−70℃〜−30℃であることが好ましい。Tgが−30℃より高くなると粘着性が低下し、−70℃より低くなると耐ブロッキング性が低下することがある。このような熱可塑性樹脂を用いると、熱可塑性樹脂自体のTgが公知の感熱性粘着剤と比較して低いため、いわゆる固体可塑剤といった熱可塑性樹脂そのものを柔軟化させる材料を用いる必要がなくなる。なお、Tgは、剛体振り子法や示差熱分析(DSC)などによって測定可能である。
感熱性粘着剤層中の熱可塑性樹脂の含有率は、好ましくは15〜50重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。含有率が15重量%未満の場合には、粘着力が低下するので望ましくない。また、50重量%を超えた場合には、通常の保存環境温度で期待しない粘着機能が発現するなど保存上の不具合(ブロッキング)が生じる。
【0018】
更に、感熱性粘着剤層には粘着力を向上させる為に、一般的な粘着剤に用いられるロジン誘導体、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂を粘着付与剤として加える。本発明の感熱性粘着剤層に特に好ましく用いられる粘着付与剤としては、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、脂肪酸ダイマー等)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂)等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質と相溶し、感熱性粘着剤の粘着力を著しく向上させる。粘着付与剤の融点又は軟化点は、好ましくは80℃以上、更に好ましくは80〜200℃である。80℃未満になると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)が生じる。感熱性粘着剤層中の粘着付与剤の含有率は、好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。5重量%未満では粘着力が低下し、30重量%を超えると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)が生じる。
【0019】
本発明の感熱性粘着剤層には、上記成分以外に、ブロッキング防止のために酸化チタン、アルミナ、コロイダルシリカ、カオリン、タルク等の無機物や、ステアリン酸金属塩、パラフィン、天然ワックス、合成ワックス、天然油脂、ポリスチレン粉末等の有機物を添加してもよく、更に必要に応じて、分散剤、消泡剤、増粘剤等を使用してもよい。
感熱性粘着剤の塗布量は、乾燥塗布量で通常5〜35g/m、好ましくは10〜25g/mの範囲である。塗布量が5g/m未満では、加熱による接着を行う際に十分な接着力効果が得られない。一方、35g/mを越えると、接着力が飽和したり熱伝達が不十分となることがあり、経済上好ましくない。
【0020】
次に、本発明の粘着アンダー層は、加熱による活性化時に表面に移動することで系全体として良好な粘着力を発現させる機能を有しているが、低温環境下においては、粘着アンダー層の樹脂が移動しにくくなることから、その機能は低下する傾向にある。
本発明では、Tgが−70℃〜−10℃の熱可塑性樹脂を含有する粘着アンダー層を設けているので、Tgが低いほど低温領域における粗面粘着力を向上させる傾向にあるが、逆に耐ブロッキング性を低下させることになる。しかし、上記Tg範囲の樹脂からなる粘着アンダー層を設けただけでは、低温領域における粗面粘着性を実現することはできず、感熱性粘着剤層に含まれる熱溶融性物質として、前記式(1)で示される安息香酸−2−ナフチルエステルを含有させた場合に初めて優れた粘着特性を示す。
粘着アンダー層に用いる熱可塑性樹脂としては、前記感熱性粘着剤層に用いる樹脂と同様のものが挙げられる。
粘着アンダー層材料の塗布量は、乾燥塗布量で通常2〜35g/m、好ましくは4〜25g/mの範囲とする。塗布量が2g/m未満であると、熱活性後に接着を行なう際に十分な接着力が得られない。また、35g/mを越えると接着力や断熱効果が飽和し経済上好ましくない。
【0021】
本発明の中間層は、熱可塑性樹脂とプラスチック球状中空粒子を含有する。これら2種類の材料は、中間層としての断熱性、クッション性によって、その上に積層された感熱性粘着剤層の粘着性発現を助けるものであり、中間層中に占める2種類の材料の割合は、概ね50重量%以上、好ましくは80重量%以上である。50重量%よりも少ないと、中間層としての機能が低下してしまう。
また、プラスチック球状中空粒子とは、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気その他の気体を含有して、既に発泡状態となっているものをいう。なお、ここでいう“中空率”とは、中空粒子の全体の体積に対する中空部(内部空隙部)の体積の比率である。
上記プラスチック球状中空粒子は、低エネルギー熱活性化(高感度熱活性化)の課題を考慮すると、断熱効果を有する体積平均粒子径2.0〜5.0μmで且つ中空率が70%以上のものが好ましく、特に最大粒子径が10.0μm以下のものが好ましい。中空率が低いものは、断熱効果が不充分なためにサーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて外へ放出され、高感度熱活性化効果が劣る。
体積平均粒子径が5.0μmより大きいと、該中空粒子を用いた中間層上に感熱性粘着剤層を設けたとき、大きな粒子により感熱性粘着剤層が形成されない部分ができ、熱活性化した場合に粘着力が低下しやすい。一方、2.0μmより小さいと、中空率70%以上を確保することが困難になり、その結果、低エネルギーでの熱活性化効果が劣る。また、サーマルヘッドを熱源として利用した低エネルギー熱活性化効果を得るには、該中間層に用いる中空粒子の中空率は70%以上が必要となる。
【0022】
上記の条件を満たすプラスチック球状中空粒子を形成する材料としては、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−メタクリル酸メチル共重合体又はアクリロニトリル−メタクリロニトリル−イソボニルメタクリレート共重合体が好ましい。
中間層の熱可塑性樹脂とプラスチック球状中空粒子の比率は中空率によって異なるが、概ね、樹脂:中空粒子=1:0.1〜1.0(重量部)が好ましく、中空粒子が0.1重量部より少ないと高感度熱活性化に劣り、更にブロッキング性が低下する。逆に、プラスチック球状中空粒子が1.0重量部より多くなると、ダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップ等の被着体に対する粘着力が向上せず、上層に設けられた感熱性粘着剤層のみの粘着力となってしまう。
中間層材料の塗布量は、乾燥塗布量で通常0.2〜10g/m、好ましくは1〜5g/mの範囲とする。塗布量が0.2g/m未満では熱活性時の断熱効果が得られない。また、10g/mを越えると接着力や断熱効果が飽和し、経済上好ましくない。
【0023】
支持体の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、感熱性粘着材料の目的用途に応じて適宜選択することができ、形状としては、例えば平板状等が挙げられ、構造としては、単層構造であっても積層構造であってもよい。
支持体として好ましく用いられる原紙は、木材パルプと填料を主成分として構成される。木材パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等のパルプを含み、必要に応じて従来公知の顔料やバインダ及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種装置で支持体の製造が可能であり、酸性、中性、アルカリ性で抄造できる。
また、この原紙は、金属ロールと合成樹脂ロールとからなるカレンダー装置をオンマシン処理しても良い。その際、オフマシン処理しても良く、処理後に、更にマシンカレンダー、スーパーカレンダー等でカレンダー処理を施して平坦性をコントロールしても良い。
【0024】
原紙に含まれる填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのような白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂のような有機顔料等が挙げられる。
原紙に含まれるサイズ剤としては、例えば、酸性抄紙用ロジンサイズ剤、中性抄紙用変性ロジンサイズ剤、AKD、ASA、カチオンポリマー型サイズ剤等が挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、各種変性デンプン、植物ガム、CMC等が挙げられる。
支持体としては更に、グラシン紙、アート紙、コーテッド紙、キャスト紙などの一般紙を用いることができ、填料、サイズ剤、紙力増強剤、染料等、通常抄紙で用いられる原材料を必要に応じて使用することが可能である。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等のプラスチックシート、及びこれらの合成繊維からなる合成紙や不織布、又は合成樹脂を紙に片面、又は両面にラミネートしたラミネート紙、金属箔、又は金属箔と紙、蒸着紙、ホログラム処理を施した不透明シート、合成樹脂フィルムとの貼り合わせ品、マイカ紙、ガラスペーパー等も支持体として使用可能である。
【0025】
本発明では、支持体の感熱性粘着剤層を有する面と反対側の面に、ロイコ染料と顕色剤とを含有する感熱記録層、インクジェット記録又は熱転写記録用インク受容層、電子写真記録層などの各種記録層を設けることができる。
感熱記録層に用いられるロイコ染料としては、一般にこの種のロイコ系記録材料において知られているものが適用され、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等を用いることができる。
顕色剤としては、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸及びその金属塩等の電子受容性の化合物を用いることができる。
ロイコ染料による感熱記録層を設けると、他に記録用のインクなどを必要としないで画像の記録が可能となり、装置の簡略化及びコスト低減といった長所がある。
また、感熱記録層には、必要に応じて、この種の感熱記録層に慣用される補助添加成分、例えば、界面活性剤、滑剤等を併用することができる。滑剤の例としては、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性並びに鉱物性及び石油系の各種ワックス類等が挙げられる。
【0026】
本発明において感熱記録層を形成する際には、慣用の種々のバインダ樹脂を用いることができる。バインダ樹脂の例としては、ポリビニルアルコール;澱粉及びその誘導体;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体の金属塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の金属塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸ブチル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の樹脂が挙げられる。
【0027】
また、感熱記録層を形成する場合に、填料として種々の熱可融性物質を使用することができる。その具体例としては、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類;ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸の金属塩類;p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジルオキシナフタレン、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ビス(フェノキシ)ブタン、1,4−ビス(フェノキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ビス(フェニルチオ)ブタン、1,4−ビス(フェニルチオ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、1,3−ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−(ベンジルオキシ)ベンジルアルコール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、シュウ酸ジベンジル、1,5−ビス(p−メトキシフェニルオキシ)−3−オキサペンタン等が挙げられる。
【0028】
インクジェット記録又は熱転写記録用のインク受容層は、填料、バインダ樹脂、耐水化剤を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。填料は前述の公知のものを使用することができる。
バインダ樹脂としては特に制限はなく、公知の水溶性樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
耐水化剤についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、クロムミョウバン、メラミン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
更に、インク受容層の表面を、キャレンダーなどにより平滑度500秒以上に処理することにより、上記填料による効果に加えて印字品質を一層向上させることができる。
【0029】
上記感熱記録層又はインク受容層は、一般に知られている方法により形成することができる。例えば、先ず、顔料を結合剤水溶液と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により、分散粒径が1〜3μmになるまで粉砕分散した後、必要に応じて填料、熱可融性物質(増感剤)分散液等と共に、一定処方で混合して感熱記録層又はインク受容層用塗布液を調製し、支持体に塗布することによって形成することができる。また、感熱記録層やインク受容層には必要に応じてアンダーコート層や保護層を設けてもよい。
【0030】
感熱性粘着剤層及び感熱記録層又はインク受容層を設けるには、通常の紙塗工に用いられているワイヤーバーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター、バーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、コンマコーター、Uコンマコーター、AKKUコーター、スムージングコーター、マイクログラビアコーター、リバースロールコーター、4本あるいは5本ロールコーター、ディップコーター、落下カーテンコーター、スライドコーター、ダイコーター等、若しくはフレキソ、凸版、グラビア、オフセット等の各種印刷機を用いて、支持体に塗工、印刷すればよい。
支持体に塗工又は印刷する際の乾燥条件は、使用される熱溶融性物質が融解しない温度範囲でなければならない。乾燥の手段としては熱風乾燥の他に赤外線、マイクロ波、高周波による熱源を利用した乾燥方法が使用できる。
また、感熱性粘着剤層の表面(支持体と接する面の反対面)には目的に応じたプレ印刷層も設けることもできるし、センシング手段としてのアイマーク印刷を行うこともできる。印刷方法としては、一般的なUV印刷、EB印刷、フレキソ印刷等が挙げられる。
本発明の感熱性粘着材料は、ラベル状、シート状、ラベルシート状、ロール状などの実施形態で使用される。また、ロール状にする場合には、公知の芯材にロール状に巻き付けてもよく、また芯材を用いずにロール状としてもよい。
【0031】
本発明の感熱性粘着材料が貼付される被着体としては、特に制限はなく、目的に応じてその大きさ、形状、構造、材質等を適宜選択することができるが、材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂板、SUS、アルミニウム等の金属板、封筒、ダンボール等の紙製、ポリオレフィン製のラップ類、ポリ塩化ビニル製のラップ類、ポリエチレン製不織布(封筒等)、などが挙げられる。
中でもダンボールは、一般に感熱性粘着材料を貼付することが難しいが、本発明の感熱性粘着材料の場合、長時間経過しても強い粘着力を維持できるため有利である。
本発明における感熱性粘着剤層を熱活性化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱風による活性化方法、熱ロールによる活性化方法、サーマルヘッドによる活性化方法などが挙げられる。
これらの中でも、ライン型サーマルヘッドによる活性化方法が好ましく、既存の感熱記録プリンタ装置を用いて感熱性粘着材料の両面を加熱することにより、感熱記録層への記録と、感熱性粘着剤層の熱活性化とを簡便に行うことができる点で有利である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来の感熱性粘着材料に見られる欠点を克服し、低エネルギーで粘着力を付与することができ、低温環境(0℃)から高温環境(40℃)まで広範囲の条件で粘着性を発現させることができ、ダンボールのような粗面被着体に対する粘着力が長時間に亘って持続し、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着材料を提供できる。また、低エネルギーでの粘着性発現の結果として、サーマルヘッドによる粘着性発現(熱活性)が可能である。このような感熱性粘着材料は剥離紙を必要とせず、ラベル分野及び環境保全に寄与するところは極めて大きいものである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下に示す部及び%は、何れも重量基準である。
【0034】
<粘着アンダー層塗布液(A液)の調整>
<A−1液>
下記組成の混合物を攪拌して、粘着アンダー層塗布液<A−1液>を調製した。
・2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/スチレンの共重合体
(Tg:−65℃、固形分濃度55.4%、昭和高分子製) 90.3部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
・水 9.6部

<A−2液>
下記組成の混合物を攪拌して、粘着アンダー層塗布液<A−2液>を調製した。
・スチレン/ブタジエンの共重合体ラテックス
(Tg:−55℃、固形分濃度50.5%、JSR製) 99.0部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
・水 0.9部

<A−3液>
下記組成の混合物を攪拌して、粘着アンダー層塗布液<A−3液>を調製した。
・アクリル酸エステル/スチレンの共重合体
(Tg:−10℃、固形分濃度55%、昭和高分子製) 90.9部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
・水 9.0部

<A−4液>
下記組成の混合物を攪拌して、粘着アンダー層塗布液<A−4液>を調製した。
・スチレン/ブタジエンの共重合体ラテックス
(Tg:+4℃、固形分濃度48%、日本エイアンドエル製) 99.9部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部

【0035】
<中間層塗布液(B液)の調製>
<B−1液>
下記組成の混合物を、プラスチック球状中空粒子がなじむまで攪拌し分散して、中間層塗布液<B−1液>を調製した。
・プラスチック球状中空粒子(アクリロニトリル/メタクリロニトリル/イソボルニ
ルメタクリレート共重合体、固形分濃度33%、体積平均粒子径3.6μm、
中空率91%) 18.2部
・2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/スチレンの共重合体
(Tg:−65℃、固形分濃度55.4%、昭和高分子製) 21.7部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
・水 60.0部

<B−2液>
下記組成の混合物を、プラスチック球状中空粒子がなじむまで攪拌し分散して、中間層塗布液<B−2液>を調製した。
・プラスチック球状中空粒子(アクリロニトリル/メタクリロニトリル/イソボルニ
ルメタクリレート共重合体、固形分濃度33%、体積平均粒子径6.0μm、
中空率91%) 18.2部
・2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/スチレンの共重合体
(Tg:−65℃、固形分濃度55.4%、昭和高分子製) 21.7部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
・水 60.0部

<B−3液>
下記組成の混合物を、プラスチック球状中空粒子がなじむまで攪拌し分散して、中間層塗布液<B−3液>を調製した。
・プラスチック球状中空粒子(ローペイクHP−91、固形分27.5%、中空率
50%、体積平均粒子径1μm、ロームアンドハースジャパン製)
12.6部
・2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/スチレンの共重合体
(Tg:−65℃、固形分濃度55.4%、昭和高分子製) 21.7部
・界面活性剤 ダプロW−77(エレメンティスジャパン製) 0.1部
・水 65.6部

【0036】
<熱溶融性物質分散液(C液)の調製>
<C−1液>
下記組成からなる混合物を、平均粒径が1.5μmとなるようにサンドミルを用いて分散して熱溶融性物質分散液<C−1液>を調製した。
・安息香酸−2−ナフチルエステル 30.0部
・ポリビニルアルコール(日本合成化学製L−3266、数平均分子量15000、
鹸化度88%)の10%水溶液 15.0部
・ジアルキルスルホン酸Na塩(日本乳化剤社製、Newcol 290M)
0.15部
・水 54.85部

<C−2液>
熱溶融性物質の安息香酸−2−ナフチルエステルを、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールに変えた点以外は、上記<C−1液>と同様の手順で熱溶融性物質分散液<C−2液>を調製した。

<C−3液>
熱溶融性物質の安息香酸−2−ナフチルエステルを、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドに変えた点以外は、上記<C−1液>と同様の手順で熱溶融性物質分散液<C−3液>を調製した。

<C−4液>
熱溶融性物質の安息香酸−2−ナフチルエステルを、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトに変えた点以外は、上記<C−1液>と同様の手順で熱溶融性物質分散液<C−4液>を調製した。

【0037】
<感熱性粘着剤層塗布液(D液)の調製>
上記熱溶融性物質分散液(C液)を用いて、以下のような感熱性粘着剤層塗布液を調製した。
・メチルメタアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体エマルジョン
(昭和高分子社製、Tg:−65℃、不揮発分50%) 30部
・熱溶融性物質分散液(表−1記載のC液) 70部
・テルペンフェノールエマルジョン(荒川化学社製:タマノルE−100、軟化点
150℃、不揮発分53%) 10部

【0038】
<感熱性粘着材料の形成>
後述する手順により作製した片面に感熱記録層を有する支持体の、感熱記録層を有さない面に、下記表1記載の粘着アンダー層塗布液(A液)、中間層塗布液(B液)、感熱性粘着剤層塗布液(D液)を順に、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の付着量が20g/m、5g/m、16g/mとなるように塗布し乾燥して、感熱性粘着材料を得た。

【表1】

【0039】
上記した感熱性粘着材料の各層の塗布に先立って、支持体〔坪量80g/mの片面コート紙(OKアドニスラフ、王子製紙製)〕の表面に、下記[アンダーコート層形成液]を乾燥後重量が4g/mとなるように塗布乾燥して断熱層を設け、その上に、下記〔感熱記録層形成液〕を乾燥後重量が5g/mとなるように塗布乾燥して感熱記録層を設け、その上に、下記〔保護層形成液〕を乾燥後重量が約3g/mとなるように塗布乾燥し、更に、王研式平滑度が2000秒になるようにスーパーキャレンダー処理を行なって保護層を設け、感熱記録層を有する支持体を得た。

−[アンダーコート層形成液]−
下記組成の混合物を攪拌分散して[アンダーコート層形成液]を調製した。
・微小中空粒子分散体(塩化ビニリデン/アクリロニトリルを主体とする共重合樹脂
固形分濃度32%、平均粒子径3.0μm、中空度91%) 30部
・スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス〔日本エイアンドエル社製:スマーテッ
クスPA−9159、Tg:4℃〕 10部
・水 60部

−[感熱記録層形成液]−
下記組成の〔ロイコ染料分散液〕と[顕色剤分散液]の原料混合物を、それぞれ体積平均粒子径が1.5μm程度となるようにサンドミルを用いて分散し〔ロイコ染料分散液〕と[顕色剤分散液]を調製した。次いで、〔ロイコ染料分散液〕:[顕色剤分散液]=1:8となるように混合攪拌して〔感熱記録層形成液〕を得た。
〔ロイコ染料分散液〕
・3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 20部
・部分ケン化型ポリビニルアルコール
(クラレ社製、重合度1800)の10%水溶液 10部
・水 70部
[顕色剤分散液]
・4−イソプロポキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン 10部
・部分ケン化型ポリビニルアルコール
(クラレ社製、重合度1800)の10%水溶液 25部
・炭酸カルシウム 15部
・水 50部

−[保護層形成液]−
下記組成の[保護層一次分散液]の原料混合物を縦型サンドミルで平均粒径が1μm以下になるように粉砕、分散化して[保護層一次分散液]を調製し、これを用いて、下記組成の〔保護層形成液〕を調製した。
[保護層一次分散液]
・水酸化アルミニウム 20部
・部分ケン化型ポリビニルアルコール
(クラレ社製、重合度1800)の10%水溶液 20部
・水 40部

〔保護層形成液〕
・〔保護層一次分散液〕 10部
・部分ケン化型ポリビニルアルコール
(クラレ社製、重合度1800)の10%水溶液 20部
・エピクロルヒドリンの12.5%水溶液 5部
・ステアリン酸亜鉛の30%分散液 2部

【0040】
<粘着特性の評価>
得られた各感熱性粘着材料を40mm×150mmの長方形にカットし、感熱印字装置(大倉電気株式会社製、TH−PMD)を用いて、ヘッド条件:エネルギー0.50mJ/dot、印字スピード:4ms/line、プラテン圧:6kgf/lineの条件で熱活性化させた。
次いで、0℃30%RH、22℃60%RH、40℃60%RHの3種類の環境条件下に1時間以上放置したダンボール(C5ライナーA段)に対して長手方向に貼り付け(JIS Z 0237記載の180度引きはがし粘着力試験の測定法に準じ、加圧2kgのゴムローラーで20mm/sの速度で2往復させて圧着)、1日間保管後に、剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で剥離させた。その時の粘着力をフォースゲージ(MODEL DPS−5、IMADA製)で測定し、0.1秒間隔でデータを読み取り平均化した数値を求めた。数値の単位はgf/40mmであり、粘着力ランクは、下記のとおりとした。
◎:1000gf/40mm以上
○: 500gf/40mm以上、1000gf/40mm未満
△: 100gf/40mm以上、500gf/40mm未満
×: 100gf/40mm未満
【0041】
<耐ブロッキング性の評価>
得られた各感熱性粘着材料の感熱性粘着剤層面と、感熱記録層の保護層面を接触させ、200gf/cmの圧力を掛けて、50℃、Dry条件下で24時間放置した。次いで、室温で放置した後、サンプルを剥がし、その時の耐ブロッキング性を、下記表2に示す基準で評価した。10段階のランクに分け、ランク10、9を「◎」、ランク8、7を「○」、ランク6、5、4を「△」、ランク3、2、1を「×」とした。
なお、「剥離時の抵抗感」「剥離音」「点状転写」「ハガレ」の順に、ブロッキングの程度が重くなった状態を指しており、「剥離時の抵抗感」とは、粘着性を持たせていないときにも軽くくっつくことを指し、その中の「自重」とは、軽くくっついた場合でも、2枚重ねて上の紙だけを持ったら自然に剥がれ落ちる程度の状態を指す。また、「剥離音」とは、くっついた状態から剥がそうとしたときに音が出ることを指し、「点状転写」とは、感熱性粘着剤層が裏面に点状に転写している状態を指し、「ハガレ」とは、感熱性粘着剤層が裏面と貼り付いてしまって、感熱性粘着剤層が剥れてしまうか、又は、裏面の紙が剥れてしまう(破れる)現象のことを指す。
【表2】

【0042】
上記評価結果を纏めて表3に示す。
表3から、本発明の感熱性粘着材料は、ダンボールなどの粗面被着体に対して、低温から高温領域において高い粘着力を示すとともに、耐ブロッキング性との両立を実現していることが分かる。更に、上記評価においてサーマルヘッドによるエネルギー印加によって高い粘着力を発現していることから、エネルギー面からみた場合、低エネルギーでの熱活性が可能となっており、粘着特性と耐ブロッキング性の機能の両立を達成しており、極めて実用性の高いことが分かる。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に、Tgが−70℃〜−10℃の熱可塑性樹脂を含有する粘着アンダー層、熱可塑性樹脂とプラスチック球状中空粒子を含有する中間層、及び、熱可塑性樹脂、熱溶融性物質、粘着付与剤を含有する感熱性粘着剤層を順次設けた感熱性粘着材料において、該感熱性粘着剤層に含まれる熱溶融性物質が、式(1)で示される安息香酸−2−ナフチルエステルを必須成分として含有することを特徴とする感熱性粘着材料。
【化1】

【請求項2】
熱溶融性物質として、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール〔式(2)〕、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド〔式(3)〕、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト〔式(4)〕のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の感熱性粘着材料。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項3】
安息香酸−2−ナフチルエステルの含有量が、全熱溶融性物質の50〜75重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱性粘着材料。
【請求項4】
プラスチック球状中空粒子が、中空率70%以上でかつ体積平均粒子径2.0〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項5】
支持体の感熱性粘着剤層を有する側と反対側の面に、ロイコ染料と顕色剤とを含有する感熱記録層を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項6】
支持体の感熱性粘着剤層を有する側と反対側の面に、インクジェット記録又は熱転写記録用インク受容層を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項7】
ライン型サーマルヘッドによって加熱することにより粘着機能が発現することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の感熱性粘着材料。

【公開番号】特開2009−1753(P2009−1753A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166589(P2007−166589)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】