説明

感熱記録媒体

【課題】偽造防止の効果を向上することができる感熱記録媒体を提供する。
【解決手段】全面にホログラム又は回折格子パターンを有する光回折構造形成層20Aと、この裏面に所定の絵柄のパターン反射層20Bを設けることにより光回折構造層20を形成し、また、光回折構造層20の表面側に、加熱発色前の状態が透明又は半透明であり、その発色が異なる感熱記録層3A,3Bを積層し、さらに、光回折構造層20の裏面側に、光回折構造形成層Aと略同一の屈折率を有する接着層を設け、基材10と接着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録層を備えた感熱記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードもしくは預貯金用カード等の各種のカード、交通機関の定期券、または身分証明書等には、通常、所有者各人の氏名や番号、有効期間、もしくは乗車区間等の情報が用途に合わせて選択され、目視情報として記録されている。情報を目視情報として記録する際には、記録に要する時間が短く、大型の装置を要しない感熱発色方式が利用されることが多い。感熱発色方式としては、通常、不可逆なものが用いられるため、改ざんは難しいものの、得られる目視情報は解像度があまり高くなく、発色濃度も一定であるため、カラー複写機等による偽造が試みられる可能性がある。
【0003】
従来、カラー複写機による偽造を防止する意味で、2色性の色素を用いた特殊なインキを用いたり、肉眼では見えるが複写機の解像度では複写されない微細な地紋を形成する、等の高度な印刷技術を利用する試みが行われている。しかし感熱発色方式による情報を目視情報として記録する際には、発色色相が素材により予め決まっているし、解像度を高くすることが難しいから、上記のようなカラー複写機による偽造の防止策を採用することは難しい。
【0004】
偽造防止カードとして、基材、反射層、及びパターン状のサーモトロピック性高分子液晶層を順に形成し、サーモトロピック性高分子液晶層を加熱加圧して仕上げることにより液晶性を持たせ、偏光フィルムを介するとサーモトロピック性高分子液晶層のパターンが見えるよう構成したものが提案されている。(特許文献1。)。
【0005】
特許文献1記載の偽造防止用カードは、肉眼では見えない潜像を有し、偏光フィルムを介することにより、その潜像が顕像化され、また、特有な色が見えることによる、真偽の判定を可能としたものであるとされている。しかしながら、感熱発色により記録が施される感熱記録層に、特許文献1記載のようなパターン状のサーモトロピック性高分子液晶層を隣接させて積層し、加熱加圧して仕上げようとすると、感熱記録層も発色する恐れがある。また、感熱記録層への記録の際にサーモトロピック性高分子液晶層にも同じ記録を潜像として施すことは可能だが、感熱記録層には個別情報が記録されることが普通であるから、一定の潜像を持たせることは難しくなり、真偽の判定用としては好ましくない。
【特許文献1】特開2004−122566号公報(請求項1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、偽造防止の効果を向上することができる感熱記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、ホログラム又は回折格子パターンが設けられた光回折構造形成層、及び前記光回折構造形成層の裏面に設けられた反射層を有する光回折構造層と、前記光回折構造層に積層され、加熱により発色する感熱記録層と、を備えた感熱記録媒体である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の感熱記録媒体において、前記光回折構造形成層は、前記ホログラム又は前記回折格子パターンが全面に施されていること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の感熱記録媒体において、前記反射層は、透明又は半透明であること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3に記載の感熱記録媒体において、前記反射層は、前記光回折構造形成層の裏面に部分的に設けられた部分反射層であること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項5の発明は、請求項4に記載の感熱記録媒体において、前記部分反射層は、平面形状が所定の絵柄から形成されたパターン反射層であること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5に記載の感熱記録媒体において、前記光回折構造形成層の裏面に設けられ、前記光回折構造形成層と略同一の屈折率を有する屈折率同一層を備えること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、前記感熱記録層は、発色の異なる2つ以上の層を備えること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、前記感熱記録層は、加熱発色前の状態が透明又は半透明であること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、前記感熱記録層及び前記光回折構造層よりも裏面側に積層されたシート状基材と、前記シート状基材の裏面側に積層され、被着体に対して貼付可能な接着層とを備えること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項10の発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、前記感熱記録層及び前記光回折構造層よりも裏面側に積層され、被着体に対して貼付可能な接着層と、前記感熱記録層及び前記光回折構造層よりも表面側に積層され、剥離可能に設けられたシート状基材とを備え、前記被着体に対して、前記感熱記録層及び前記光回折構造層を転写することができること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項11の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、インキを受像する受像層を備えること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項12の発明は、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、偽造防止の地紋が印刷された地紋印刷層を備えること、を特徴とする感熱記録媒体である。
請求項13の発明は、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、磁気記録層及び/又はICチップからなる機械読み取り及び/又は書き込み可能な情報記録部を備えること、を特徴とする感熱記録媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、光回折構造層が、ホログラム又は回折格子パターンが設けられた光回折構造形成層と、光回折構造形成層の裏面に設けられた反射層とを有している。感熱記録層は、光回折構造層に積層され、加熱により発色する。
これにより、光回折構造形成層は、見る角度に応じて、パターンや色相が変化するので、感熱情報媒体の真偽を識別することができ、また、コピー機等による偽造を防止することができる。さらに、感熱記録層に文字等の情報を、サーマルプリンタ等を用いて、記録することができる。
【0010】
(2)本発明は、ホログラム又は回折格子パターンが光回折構造形成層の全面に施されているので、全面にホログラムの効果を発現させることができる。
【0011】
(3)本発明は、反射層が、透明又は半透明であるので、反射層よりも裏面側に配置された層に印刷された文字、模様等を視認することができる。
【0012】
(4)本発明は、反射層が、光回折構造形成層の裏面に部分的に設けられた部分反射層であるので、光回折構造形成層の全面にホログラム又は回折格子パターンが全面に設けられていても、部分反射層が形成された範囲のみ、ホログラム等の効果を発現することができる。
【0013】
(5)本発明は、部分反射層の平面形状が、所定の絵柄から形成されたパターン反射層であるので、(4)の効果に加えて、所定の絵柄を形成することができる。
【0014】
(6)本発明は、光回折構造形成層の裏面に設けられ、光回折構造形成層と略同一の屈折率を有する屈折率同一層を備えるので、光回折構造形成層と屈折率同一層とが直接接触する範囲において、ホログラム等の効果をほぼなくすことができる。(但し、微妙なホログラム等は、確認することができる。)。
【0015】
(7)本発明は、感熱記録層が、発色の異なる2つ以上の層を備えるので、文字、記号等の記録を2色以上にして、複雑な視覚効果を得ることができる。これにより、感熱記録媒体の偽造防止の効果を、より向上することができる。
【0016】
(8)本発明は、感熱記録層が、加熱発色前の状態で透明又は半透明であるので、感熱記録層よりも、裏面側に形成された各層の文字、記号、ホログラム等を視認することができる。
【0017】
(9)本発明は、感熱記録層及び光回折構造層よりも裏面側に積層されたシート状基材と、シート状基材の裏面側に積層され、被着体に対して貼付可能な接着層とを備えるので、感熱記録媒体ラベルとして使用することができる。
【0018】
(10)本発明は、被着体に対して貼付可能な接着層が、感熱記録層及び光回折構造層よりも裏面側に積層され、また、シート状基材が、感熱記録層及び光回折構造層よりも表面側に積層され、剥離可能に設けられている。そして、被着体に対して、感熱記録層及び光回折構造層を転写することができる。
これにより、感熱記録媒体転写シートとして用いることができる。
【0019】
(11)本発明は、インキを受像する受像層を備えるので、印字特性、印刷強度等を向上することができる。
【0020】
(12)本発明は、偽造防止の地紋が印刷された地紋印刷層を備えるので、感熱記録媒体の偽造防止効果をより向上することができる。
【0021】
(13)本発明は、磁気記録層及び/又はICチップからなる機械読み取り及び/又は書き込み可能な情報記録部を備えるので、磁気記録層に不可視情報を記憶させたり、ICチップへの情報の書き込み、読み取りをすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の感熱記録媒体の積層構造を示す図であり、図2は、本発明の感熱記録媒体を対象物品(被着体)に適用するのに適した形態を示す図であり、図3,図4は、本発明を適用した感熱記録媒体の実施態様を示す図である。
【0023】
図1(a)に示すように、本発明の感熱記録媒体1は、基本的にはホログラムもしくは回折格子パターンを与える光回折構造層2上に感熱記録層3が積層したものであり、光回折構造層2は下面側に光回折構造の微細凹凸を有する光回折構造形成層2A及び微細凹凸に沿って形成された反射層2Bとからなるものである。図1(b)に示すように、本発明の感熱記録媒体1は、感熱記録層3としては光回折構造層2側より感熱記録層A(符号;3A)及び感熱記録層B(符号;3B)の2層から構成されたものであってもよく、あるいは図示はしないが、感熱記録層3が3層以上から構成されたものであってもよい。光回折構造層2の細部は、図1(a)を引用して説明したものと同様である。
【0024】
光回折構造層2の光回折構造形成層2Aは、透明な合成樹脂からなる層の片面、通常は汚染や損傷をさける意味で、図の下面側にホログラムもしくは回折格子パターンを与えるための微細な凹凸が設けられている。あるいは、体積ホログラムの場合であれば、透明な合成樹脂からなる層の内部にホログラムもしくは回折格子パターンを与えるための回折格子が設けられているものであり、いずれにせよ基本的には透明なものである。
【0025】
光回折構造形成層2Aとしては、微細な凹凸を有する前者の方が、熱プレス等の方式で量産するのに適している。ホログラム及び回折格子パターンとしては、平面ホログラム、体積ホログラムのいずれも使用でき、レリーフホログラム、リップマンホログラム、フレネルホログラム、フラウンホウファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、レーザー再生ホログラム(イメージホログラム等)、白色光再生ホログラム(レインボーホログラム)、カラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラクム、ホログラフィック回折格子、電子線直接描画等の機械的に形成された回折格子が挙げられる。
【0026】
光回折構造形成層2Aを構成する素材としては、ホログラムもしくは回折格子パターンの凹凸を注型や型押しで再現できる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、あるいは、光回折パターン情報に応じて硬化部と未硬化部とを成形することができる感光性樹脂組成物が利用できる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、またはトリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂であり、それぞれの単独、熱可塑性樹脂同士、または熱硬化性樹脂同士の混合、もしくは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合等であってもよい。ラジカル重合性不飽和基を有し、熱成形性を有するものや、ラジカル重合性不飽和モノマーを添加した電離放射線硬化性樹脂組成物も利用できる。光回折構造形成層2Aの厚みは1〜2μm程度であることが好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物等の塗料組成物を使用するときは、透明な合成樹脂のフィルムを被塗布体として使用するとよい。
【0027】
反射層2Bは、光回折構造形成層2A単独では、光回折パターンの視認性が得られないか、得られたとしてもごく低い視認性しか得られないために、光回折構造形成層2Aの裏面に設けられた層である。反射層2Bとしては、アルミニウム等の金属からなる反射性の金属薄膜を設けるか、光回折構造形成層2Aとは、光の屈折率が異なる物質からなる透明な薄膜を設ける。金属薄膜は、通常の厚み、例えば50nm程度であれば、不透明であるので、下層を隠蔽する。これらの金属薄膜及び透明な薄膜は反射層2Bとして機能し、いずれも、蒸着等の気相法で形成することができる。透明な薄膜の例としては、光回折構造形成層2Aよりも屈折率の高いZnS、TiO2、Al23、Sb23、もしくはSiO等、または光回折構造形成層2Aよりも屈折率の低いLiF、MgF2、もしくはAlF3がある。アルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが20nm以下になると、透明性が出てくるため、上記のような光回折構造形成層2Aとは光の屈折率が異なる物質の透明な薄膜と同じ効果を発揮できる。さらには、光回折構造形成層2Aとは光の屈折率の異なる透明な合成樹脂を使用してもよい。この場合、反射層2Bは、光回折構造形成層2Aの裏面に、例えば、印刷等により形成することができる。
反射層2Bを透明もしくは不透明のいずれとするかは、下層に設けられた画像等の視認性を確保すべきかどうかによって決める。すなわち、反射層2Bを、透明又は半透明することにより、反射層2Bよりも裏面側に配置された層に印刷された文字、模様等を視認することができる。
【0028】
光回折構造形成層2Aを構成する合成樹脂としては、硬く、耐摩耗性や耐汚染性の優れたものを選択して使用することが望ましいが、これらの合成樹脂は、ホログラム等の形成性を第一に選択されるため、さらに一層の強化を図る意味で、必要に応じて、別の層として透明な保護層であるOP層(図示せず。)を光回折構造層2の上面に積層することが好ましい。OP層を形成する樹脂としては、熱可塑性のものも使用し得るが、熱硬化性樹脂を使用する熱硬化性樹脂組成物、あるいは紫外線又は電子線照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂組成物等の硬化性の化合物を用い、塗布後に加熱したり、電離放射線を照射して架橋硬化させることにより、さらに物理的、化学的な諸性能を向上させることができる。OP層の厚みは保護機能の強化と、一方で厚みを減らしたい要望とから、2μm程度とすることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂組成物としては、分子中に重合性不飽和結合または、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜に混合したものである。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常は、紫外線又は電子線を用いる。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂組成物中のプレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物が挙げられる。これらのプレポリマー、オリゴマーに、多官能モノマー、又は単官能モノマーを必要に応じて1種若しくは2種以上を混合して用いるが、電離放射線硬化性樹脂組成物に通常の塗布適性を与えるために、前記のプレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオール化合物を95重量%以下とするのが好ましい。
【0030】
電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーが要求されるときは、モノマー量を減らすか、官能基の数が1又は2のアクリレートモノマーを使用するとよい。電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させたときの耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤性が要求されるときは、官能基の数が3つ以上のアクリレートモノマーを使う等、電離放射線硬化性樹脂組成物の設計が可能である。ここで、官能基が1のものとして、2−ヒドロキシアクリレ−ト、2−ヘキシルアクリレ−ト、フェノキシエチルアクリレ−トが挙げられる。官能基が2のものとして、エチレングリコールジアクリレート、1,6ーヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。官能基が3以上のものとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート等が挙げられる。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布後の硬化が紫外線照射により行われるときは、光重合開始剤や光重合促進剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
【0032】
光回折構造形成層2Aの形成を行なうには、適宜な塗布対象に塗布した後、ホログラムもしくは回折格子パターンを与える微細な凹凸を型面に有する複製用型を用いて、ホログラムもしくは回折格子パターンの微細な凹凸を賦型し、賦型後、硬化性樹脂の場合であれば硬化の手段を講じて硬化させ、感光性樹脂組成物を用いた場合には、適宜な現像液により現像して、微細な凹凸を現出させることによる。
以上の構成により、光回折構造層2は、見る角度に応じて、パターンや色相が変化するので、感熱記録媒体1の真偽を識別することができ、また、コピー機等による偽造を防止することができる。
【0033】
感熱記録層3は、加熱により発色する材料から形成され、サーマルプリンタ等を用いて印字される。感熱記録層3は、例えば、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物を主成分として構成されたものである。電子供与性染料前駆体としては、ロイコ染料としてこの種の感熱材料に適用されているものが任意に適用され、用途に合わせて、イエロー系、マゼンタ系、もしくはシアン系、またはその他の色相系に発色するものが選ばれる。例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。
【0034】
電子受容性化合物は、電子供与性染料前駆体と組み合わせて顕色剤として用いられるものであり、具体的には、例えば、以下のような酸性物質が挙げられる。即ち、ビスフェノールA等のフェノール性物質、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、もしくはエイコシルホスホン酸等、α−ヒドロキシオクタノイック酸、α−ヒドロキシドデカノイック酸、α−ヒドロキシテトラデカノイック酸、α−ヒドロキシヘキサデカノイック酸、もしくはα−ヒドロキシオクタデカノイック酸等の有機酸、金属錯体化合物、チオジフェニル尿素、またはキノン類である。
【0035】
上記の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物は、バインダー樹脂中に分散されて感熱記録層3を構成する。バインダー樹脂としては、デンプン類、セルロース類、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール類、無水マレイン酸共重合体、アクリル類、スチレンブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、もしくはポリウレタン樹脂等を用いることができ、必要に応じて各種助剤、例えば、消泡剤としてポリエチレンワックス、もしくはグリオキザール、増感剤としてステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、シュウ酸ジベンジル、もしくはトリルビフェニルエーテル等、または顔料、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、スチレン、もしくはシリカ等である。以上の素材からなる感熱記録層3は、通常、無色透明もしくは若干ヘイズのある層であるが、厚みが過大にならない限り、透視性を損なうものではなく、その意味で透明性を有するものである。すなわち、感熱記録層3よりも裏面に形成された光回折構造層2のホログラム等を、視認することができる。
【0036】
感熱記録層3を2層以上設けるときは、層を構成する素材を各層の発色色相が異なるように選定し、2色以上の発色を行なわせることができる。感熱記録層3を2層以上設けるときは、各層が発色するのに要するエネルギーが異なるよう、感熱記録層3を構成する素材を選定して形成する。なお、感熱記録層3を互いに接する2以上の層として積層形成する場合には、例えば、後に設ける方の感熱記録層を形成するのに用いるインキ中の溶剤の作用に基づいて、既に設けてある方の感熱記録層中の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とが反応して発色する恐れがあるので、2以上の異なる感熱記録層同士、もしくは他の層と感熱記録層との間には、層間を隔離する目的の樹脂等からなる中間層を設けてもよい。中間層を設けることにより、2以上の異なる感熱記録層の各々が発色するのに要するエネルギーの差、即ちエネルギーギャップを作ることができるので、各々の層を選択的に発色させ、しかも、各々の層を発色させたときの境界を明瞭化させる、即ち、コントラストをはっきりさせることができる。
【0037】
図2(a)は、本発明を適用した感熱記録媒体ラベル4を示す図である。
感熱記録媒体ラベル4は、図2(a)に示すように、シート状基材5の表面に、光回折構造層2及び感熱記録層3(すなわち、感熱記録媒体1)、保護層7が順に積層され、また、シート状基材5の裏面に、接着剤層6が積層されている。すなわち、感熱記録媒体ラベル4は、感熱記録層3及び光回折構造層2よりも裏面側に積層されたシート状基材5と、シート状基材5の裏面側に積層され、対象物品(被着体)に対して貼付可能な接着剤層6(接着層)とを備えているので、ラベルとして使用することができる感熱記録媒体である。
シート状基材5は、光回折構造層2や感熱記録層3を形成する際の形成対象として、また、感熱記録媒体ラベル4に機械的強度を付与する意味で存在する方が好ましいが、省略することもできる。また、保護層7は感熱記録媒体ラベル4が接着剤層6を利用して対象物品に適用された後の耐久性を増加させるためのものであるが、やはり省略することもできる。
さらに、図2(b)に示すように、感熱記録媒体ラベル4における光回折構造層2と感熱記録層3とは、図2(a)を引用して説明した場合とは逆に、シート状基材5側から感熱記録層3、光回折構造層2の順に積層されたものであってもよい。
また、シート状基材5が透明な場合には、シート状基材5を最上層として、上側からシート状基材5、感熱記録層3、光回折構造層2、及び接着剤層6の順に積層してもよく、その場合、シート状基材5の上側に保護層7が積層されていてもよい。勿論、シート状基材5を最上層として、上側からシート状基材5、光回折構造層2、感熱記録層3、及び接着剤層6の順に積層してもよく、その場合、シート状基材5の上側に保護層7が積層されていてもよい。
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【0038】
図2(c)は、本発明を適用した感熱記録媒体転写シート8を示す図である。
図2(c)においては、シート状基材5の裏面に剥離可能に保護層7が積層され、さらに、感熱記録層3及び光回折構造層2(すなわち、感熱記録媒体1)、接着剤層6が順に積層されている。すなわち、感熱記録媒体転写シート8は、感熱記録層3及び光回折構造層2よりも裏面側に積層され、対象物品(被着体)に対して貼付可能な接着剤層6(接着層)と、感熱記録層3及び光回折構造層2よりも表面側に積層され、剥離可能に設けられたシート状基材5とを備えとを備えているので、転写シートとして使用することができる感熱記録媒体である。
接着剤層6は、転写の際に対象物品の表面に接着剤層を形成するのであれば、感熱記録媒体転写シート8に設けないことも可能である。また、保護層7は、接着剤層6を利用して対象物品に転写を行った後の表面の耐久性を増加させるためのものであるが、やはり省略することもできる。
さらに、図2(d)に示すように、感熱記録媒体転写シート8における光回折構造層2と感熱記録層3とは、シート状基材5側から光回折構造層2、感熱記録層3の順に積層されたものであってもよい。この場合にも接着剤層6、保護層7は、省くことができる。
【0039】
図2(a)から図2(d)を引用して説明したように、感熱記録媒体ラベル4及び感熱記録媒体転写シート8において、光回折構造層2と感熱記録層3の積層順は任意でよい。また、各層間には、必要に応じて接着剤層を介在させることができる。
【0040】
シート状基材5は、光回折構造層2や感熱記録層3を形成する際の形成対象として、また、感熱記録媒体転写シート8に機械的強度を付与する意味である方が好ましいが、省略することもできる。
【0041】
シート状基材5としては、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や真偽判定用媒体を製造する際の加工に耐える耐溶剤性及び耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン・ビニルアルコール、等の各種のプラスチックフィルムもしくはプラスチックシートを例示することができる。
【0042】
接着剤層6は、光回折構造層2、感熱記録層3(すなわち、感熱記録媒体1)等を有する感熱記録媒体ラベル4,感熱記録媒体転写シート8等を対象物品に適用するためのもので、接着剤層6を構成する接着剤としては、感熱接着剤もしくは感圧接着剤を用いることができる。感熱記録媒体ラベル4の場合には、圧のみで貼り付けが可能な感圧接着剤を用いることが多く、また、感熱記録媒体転写シート8の場合には、熱及び圧で瞬時に転写可能とさせる意味で、感熱接着剤を用いることが多い。
【0043】
保護層7は、光回折構造層2、感熱記録層3等の一般的な保護に加えて、感熱記録層3への記録を行なう際にもたらされる熱と圧力による表面の変形の防止、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、ヘッドマッチング性等の向上のほか、透明性向上の目的でも用いられる。保護層7を構成する素材としては、感熱記録層3を構成するバインダー樹脂として既に挙げたもののうち、表面保護層として所望の物性を有する樹脂組成を選定する。特に、表面の耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性を要する場合は熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂が通常よく用いられる。感熱記録層3への記録の際の、感熱記録媒体ラベル4,感熱記録媒体転写シート8とサーマルヘッドとの相対的な走行を円滑に行わせるため、保護層7は離型性を有していることが好ましい。このため、保護層7中にシリコーン等の離型性物質を配合したり、または離型性物質を含む素材で保護層の表面を被覆しておくことが好ましい。保護層7はまた、感熱記録媒体が使用された後、不正な書き変えができないよう、感熱転写リボンを用いた印字を施すことがあるので、印字性と滑り性を共に有することが要求されることがある。この場合には、印字性を有する層をまず形成した後、離型性物質を含む素材を用いて、例えば、0.1mm程度の径の点、0.1mm程度の幅の線を、0.2mm程度あるいはそれ以上の間隔で配置して形成する等して、離型性を有する部分と印字性を有する部分とを密に並べることにより、両方の性質を持たせることができる。
【0044】
感熱記録媒体転写シート8においては、感熱記録媒体1がシート状基材5と剥離可能に積層されていることが好ましい。保護層7やそのほかの層が介在するときには、シート状基材5と、シート状基材5に接する層との間の剥離性が確保されればよい。剥離性とは言っても、転写の寸前までは、剥離しない程度の接着強度が必要である。シート状基材5としてPETフィルムを用いる場合には、ほとんどの塗料もしくはインキ中のバインダー樹脂は、PETフィルムと強固には接着しないので、転写の際の剥離が可能である。必要に応じて接着性の高いバインダー樹脂を加えて剥離強度を上げる、もしくは剥離性のあるバインダー樹脂や素材、例えばワックス等を添加して剥離強度を下げる等を行なってもよい。
【0045】
図3は、本発明の感熱記録媒体9の実施態様の一つを示す図である。図3(a)に示すように、感熱記録媒体9は、下側から光回折構造層2、感熱記録層3(すなわち、感熱記録媒体1)、及び保護層7からなる積層体が基材10上に、反射層2B側が接するようにして積層されており、基材10の下面側に磁気記録層11が積層されている。なお、図3(b)に示すように、感熱記録媒体9は、下側から感熱記録層3、光回折構造層2(すなわち、感熱記録媒体1)、及び保護層7からなる積層体が基材10上に、感熱記録層3側が接するようにして積層し、基材10の下面側に磁気記録層11が積層してもよい。
【0046】
図3(b)に示すような感熱記録媒体9の感熱記録層3に熱記録を行ったものは、感熱記録層3の記録により発色した部分(=記録部分)が、感熱記録層3よりも上に積層された光回折構造層2の作用により、図の上面側から眺めると、記録部分の色が変化して見える効果が生まれる。例えば、感熱記録層3が黒色発色用及び赤色発色用の2層を有しているときは、熱記録を行うことにより、赤色に発色した記録部及び黒色に発色した記録部と発色していない無地部分とが生じるが、赤色に発色した記録部上、黒色に発色した記録部上、及び発色していない無地部分上が、それぞれ色が変化して見える複雑な視覚効果が生まれる。このように複雑な視覚効果が得られるものは偽造を行ないにくく、あるいは偽造を行ないにくいと思わせることが可能となり、カラーコピー機を使用したコピー等を抑制することができる。
【0047】
図4は、本発明の実施態様の一つである感熱記録媒体9を示す図である。
感熱記録媒体9は、下面側から磁気記録層11、基材10、中間層12A、感熱記録層A(符号3A)、中間層12B、感熱記録層B(符号3B)、光回折構造層2、及び保護層7が積層されたものである。中間層B(符号12B)の役割は既に説明した通りであるが、中間層Aの役割は、基材10と感熱記録層Aとの積層の際に、感熱記録層Aが発色しないよう、基材10と感熱記録層Aとの間を熱的に遮断することである。
【0048】
基材10と磁気記録層11からなる積層体は、クレジットカードもしくは預貯金用カード等の各種のカード、交通機関の定期券、または身分証明書等に広く用いられているもので、磁気記録層11には、種々の情報が不可視情報として記録され、読み取り手段を用いて記録されている情報を読み取り、所定のステップを実行して、購入代金の精算、現金の預け入れもしくは引き出し、またはゲートの通過許可、等が行なわれる。
【0049】
基材10は、用途に応じた強度、厚みを有するもので、前記したシート状基材5を構成する素材と同様のプラスチックフィルムもしくはプラスチックシート、もしくは紙等で構成し、必要に応じて、2〜3枚、もしくはそれ以上を複合したものであってもよい。
【0050】
磁気記録層11は、(1)磁性剤粉末を含有する物質を添加し混練して調製した磁気塗料を用いて基材10に直接に塗布して設けたもの、(2)基材10とは別の薄いプラスチックフィルム等に塗布し、ストライプ状にカットしてカード基材10に貼り付けて設けたもの、もしくは(3)仮の基材に剥離可能に積層して準備された磁気記録層転写シートを用い、転写法により、基材10に転写して形成されたものである。磁気記録層11としては、基材10に対して、磁性物質の蒸着やスパッタリング等により気相状態で磁性物質の薄膜として形成されたものや、そのような薄膜の形成を、磁気記録媒体の基材とは別の基材上に行ない、その後、ストライプ状にカットして貼るか、転写により適用したものであってもよい。
【0051】
感熱記録媒体9の感熱記録3には、例えば、所有者各人の氏名や番号、有効期間、乗車区間、もしくは金額等の情報が目視情報として記録され、目視による判定が可能になるよう構成されている。
【0052】
また、上記の例の感熱記録媒体9の光回折構造層2は、見る角度により色相が変化する効果を有するから、カラー複写による複製が困難である印象を与え、偽造を防止する効果が生じる。
【0053】
上記の例の感熱記録媒体9においては、基材10に情報記録手段として磁気記録層11が設けられているが、この磁気記録層11をICチップに置き換えてもよいし、あるいは磁気記録層11とICチップの両方が設けられているものであってもよい。
【0054】
本発明の感熱記録媒体9には、感熱記録層3を利用して行なう目視情報の記録以外に、発行団体名、カードの名称、注意書き、説明文、もしくは金券として利用するための金額等の情報や、任意の図柄、もしくは彩紋等が施されていてもよく、これらの情報、図柄、もしくは彩紋の形成は印刷等の任意の手段によって行なえ、形成する部分としては、感熱記録層3への記録を妨げない範囲であれば、いずれの部分でもよく、また、先に説明した感熱記録媒体1、感熱記録媒体ラベル4、もしくは感熱記録媒体転写シート8のいずれかの部分であってもよい。
【0055】
以上、反射層2Bを光回折構造形成層2Aの裏面全面に設けた形態の説明をしたが、以下、反射層を光回折構造形成層2Aの裏面に部分的にパターニングして設けた感熱記録媒体の説明をする。なお、前述した感熱記録媒体9等と同様な機能を果たす部分は、同一の符号を付し、重複する説明を適宣省略し、主に変更箇所について説明する。また、感熱記録媒体に記録された、感熱記録層に記録された印字、光回折構造形成層に記録されたホログラム等を視認できる面を表面、その反対の面を裏面、と定義して以下説明する。
図5は、光回折構造層20が積層された感熱記録媒体100を示す断面図である。
感熱記録媒体100は、図5に示すように、保護層7、感熱記録層3、基材10、磁気記録層11(以上は前述した)と、光回折構造形成層20Aとパターン反射層20Bとから構成される光回折構造層20と、接着層30とを備えている。
感熱記録媒体100は、パターン反射層20Bが存在する範囲にのみ、積極的にホログラム等の効果が発現するように形成されている。また、感熱記録媒体100は、後述するように、接着層30として、光回折構造形成層20Aと同等の屈折率を有する材料を用いることにより、接着層30と光回折構造形成層20Aとが、直接接触する範囲(すなわち、パターン反射層20Bの存在しない範囲)において、ホログラム等の効果をほぼなくすことができる。以下、感熱記録媒体100の各層について、詳しく説明する。
【0056】
光回折構造層20は、図5に示すように、ホログラム又は回折格子パターンが全面に施された光回折構造形成層20Aと、その裏面に所定の絵柄がパターニングして設けられたパターン反射層20Bとから構成される。
光回折構造形成層20Aは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化樹脂等の各種樹脂材料が選択可能である。例えば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独、若しくは2種以上の共重合体として使用される。また、これらの樹脂は単独、若しくは2種以上を各種イソシアネート樹脂や、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱あるいは紫外線硬化剤を配合してもよい。また、電離放射線硬化型樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。このような電離放射線硬化型樹脂に架橋構造、粘度の調整等を目的として、他の単官能又は多官能モノマー、オリゴマー等を抱合させることができる。
【0057】
パターン反射層20Bは、光回折構造形成層20Aを通過してきた光線の全部又は一部を反射するための層である。パターン反射層20Bの反射する光線の量が多いときは、光回折構造層20が不透明タイプのホログラムとなり、一方通過する光線の量が多いときは、光回折構造層20が透明タイプのホログラムとなる。ここで、不透明タイプのホログラムとは、ホログラムの部分よりも裏面側の層が見えにくいホログラムをいい、一方、透明タイプのホログラムとは、ホログラムの部分よりも裏面側の層が見えやすいホログラムをいう。すなわち、ホログラムよりも裏面側に、例えば、印刷層等があった場合、不透明タイプは、表面から印刷内容等を確認することができないが、これに対して透明タイプは、印刷内容等を視認することができる。パターン反射層20Bは、昇華、真空蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気メッキ、印刷等の方法で形成することができる。
【0058】
光回折構造層20を不透明タイプのホログラムに形成するときは、パターン反射層20Bを厚く形成して、反射する光線の量を多くする。この場合、パターン反射層20Bを、例えば、Al、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属及びその酸化物、窒素物等を単独若しくは2種類以上組み合わせて形成する。上記、金属薄膜の中でも、Al、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、望ましくは2〜200nmの範囲である。
【0059】
一方、光回折構造層20を透明タイプのホログラムに形成するときは、パターン反射層20Bに、屈折率差が大きい透明な物質を用いるか、あるいは、金属薄膜を用いて通過する光線の量を多くする。
パターン反射層20Bに透明な物質を用いる場合は、光回折構造形成層20Aとは屈折率が異なる透明樹脂材料等を用いて、印刷等によって形成する。透明樹脂材料の屈折率は、光回折構造形成層20Aの樹脂の屈折率よりも大きくても、小さくてもよいが、屈折率の差は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が最適である。
パターン反射層20Bに、透明樹脂以外の金属性反射膜を用いる場合は、光透過性を持たせるために20nm以下に薄く形成するのが好適である。好適に使用される透明タイプ反射層としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等が挙げられる。
【0060】
パターン反射層20Bは、例えば、水洗い方式、エッチング方式等を用いて、形成される。
水洗い方式は、光回折構造形成層20Aの裏面に、水溶性インキをパターン状に設け、さらに、例えば、蒸着等の手法を用いて金属層を設ける。すなわち、水溶性インキを用いて、光回折構造形成層20Aの裏面をマスキングして、金属層を設ける。これを、水洗いすることにより、水溶性インキとこの上に設けられた金属層のみが洗浄除去され、水溶性インキの存在しなかった部分の金属層を残存させることにより、パターン反射層20Bを形成することができる。
エッチング方式は、光回折構造形成層20Aの裏面の全面に金属層を設けた後、耐酸性、耐アルカリ性の樹脂によりパターン層(レジスト層)を設け、エッチングする。この場合、レジスト層が存在する部分にパターン状に金属層を残存させることにより、パターン反射層20Bを形成することができる。
【0061】
接着層30は、他の層である基材10と光回折構造層20とを接着するための層である。接着層30は、光回折構造形成層20Aと略同一の屈折率を有するものを選択することにより、光回折構造形成層20Aと略同一の屈折率を有する層(以下「屈折率同一層」という。)を形成し、光回折構造形成層20Aから通過してきた光線の大部分を通過させることができる。これにより、接着層30(屈折率同一層)と光回折構造形成層20Aとが接触する範囲で、ホログラム等の効果をほぼなくすことができる。但し、この範囲においても、光回折構造形成層20Aには、ホログラム又は回折格子パターンが全面に施されている。従って、感熱記録媒体100は、測定器等を用いることにより、微妙なホログラム等を確認することができ、真偽を判定することができる。
【0062】
図6は、以上説明した感熱記録媒体100の一例である感熱記録媒体100Aの一部を表面から示す図である。
感熱記録媒体100Aは、その基材10が、例えば、白色である。感熱記録層3は、透明又は半透明な材質であり、円環がサーマルプリンタ等によって印刷され、この円環の範囲が、例えば、赤色に発色している。光回折構造層20は、光回折構造形成層20Aに「DNP」という文字がパターニングされており、また、パターン反射層20Bは、平面形状(表面側から見た形状)が星印(所定の絵柄)になるようにパターニングされている。
【0063】
感熱記録媒体100Aの見え方を説明すると、感熱記録層3は、表面側に他の印刷層が形成されていないので、円環の全範囲が欠けることなく赤色に発色している。光回折構造形成層20Aの「DNP」とパターニングされた範囲と、パターン反射層20Bの星印とが重なる範囲(図中、黒塗りの範囲)においては、光回折構造層20がホログラム等の効果を発現する。一方、光回折構造形成層20Aの「DNP」と、パターン反射層20Bの星印とが重ならない範囲(図中、破線の範囲)においては、接着層30の作用によってホログラム等の効果がほぼなくなり、その周囲の範囲と同様に、基材10の表面を視認することができる。また、パターン反射層20Bが設けられた範囲は、星印の絵柄を確認することができる。
【0064】
図7は、感熱記録媒体転写シート200を示す断面図である。
感熱記録媒体転写シート200は、感熱記録媒体100を被着体に接着できるようにした転写シートである。
感熱記録媒体転写シート200は、感熱記録媒体100に対して、保護層7の表面(すなわち、感熱記録層3及び光回折構造層20よりも表面側)に、剥離層とシート状基材5を積層させ、そして、基材10の裏面(すなわち、感熱記録層3及び光回折構造層20よりも裏面側)に、接着層30を積層したものである。これにより、感熱記録媒体転写シート200は、被着体に感熱記録媒体100を転写することができる。
なお、基材10は、例えば、感熱記録媒体転写シート200の機械的強度が充分である等の理由によって、不要であれば用いなくてもよい。
また、図7に示すように、光回折構造層20と、これに接触する層(図7の場合は、基材10)との間には、これらが直接接合可能である場合、接着層を設けなくてもよい。この場合、光回折構造層20に接触する層(基材10)を、透明又は半透明な材料から形成して屈折率同一層とすることにより、前述した効果と同様な効果を得ることができる。
また、磁気記録層11についても、必要がなければ、設けなくてもよい。
【0065】
図8〜図11に示す感熱記録媒体300〜600は、図5に示す感熱記録媒体100の構成を変更した例を示す断面図である。
図8に示す感熱記録媒体300は、感熱記録媒体100に対して、2色の感熱記録層3A、3Bと中間層12A,12Bとを設け、例えば、黒色、赤色の発色をすることができるようにしたものである。
【0066】
図9に示す感熱記録媒体400は、感熱記録媒体300に対して、光回折構造層20を感熱記録層3A、3Bよりも表面側に変更したものである。
感熱記録媒体400は、光回折構造層20と感熱記録層3Bとの間に、各層間の接着のためにアンカー層41を設けている。この場合、アンカー層41と光回折構造形成層20Aとの屈折率を略同一とすることにより、アンカー層41は、屈折率同一層として機能して、これら2つの層が直接接触する範囲におけるホログラム等の効果をほぼなくすことができる。
また、アンカー層41は、光回折構造層20と感熱記録層3Bとが、直接接合可能な場合は、削除してもよい。この場合にも、光回折構造形成層20Aと感熱記録層3Bとの屈折率を同等として、感熱記録層3Bを屈折率同一層として機能させることにより、前述した効果と同様な効果が得られる。
なお、感熱記録媒体400は、保護層(感熱記録媒体300等の保護層7参照)を設けていない。これは、感熱記録媒体400は、表面の損傷、汚れ付着等に問題がないためである。
【0067】
図10に示す感熱記録媒体500は、感熱記録媒体300に対して、表面側、裏面側に印字層等を設けたものである。磁気記録層11の裏面側には、インキの印刷強度等を向上するためプライマー42Aが塗布されている。そして、感熱記録媒体500の使用方法等(例えば、定期券であれば「定期券使用上の注意」等)を説明するための説明文印刷層43が、シルク印刷、オフセット印刷等を用いて設けられ、さらに裏面側に、保護層7Aが設けられている。
保護層7Bの表面側には、プライマー42Bと、印刷強度等を向上するための受像層44とが順に設けられ、その表面に、例えば、コピー機等を用いた複写による偽造を防止するために、細かい模様である地紋が印刷された地紋印刷層45がシルク印刷、オフセット印刷等により設けられている。地紋印刷層45の表面には、潤滑層46が積層され、印字層47を形成するためのインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ等の送り機構と感熱記録媒体500との摩擦、インクジェットヘッドと感熱記録媒体500との摩擦等を低減している。印字層47は、感熱記録媒体500の表面に設けられた印字層であり、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ等を用いて、有効期限を過ぎた定期券に「無効」と印刷される。
【0068】
図11に示す感熱記録媒体600は、感熱記録媒体400の表面側、裏面側にOP層48、印字層等(説明文印刷層43、地紋印刷層45、印字層47)を設けたものである。印字層等を設けるための構成は、感熱記録媒体500と同様なので省略する。OP層48は、光回折構造層20の種類によって、材料の強度が異なったり、上層との接着性が異なるために設けられている。
【0069】
以上説明したように、感熱記録媒体100A等は、星印(所定の絵柄)から形成されたパターン反射層20Bを有する。これにより、光回折構造形成層20Aの全面に、ホログラム又は回折格子パターンが形成されていても、パターン反射層20Bの範囲のみホログラム等の効果を発現させて、偽造防止の効果を向上することができ、また、表面から見たときに、星印を視認することができる。
また、感熱記録媒体100等は、光回折構造形成層20Aの裏面に設けられ、光回折構造形成層20Aと略同一の屈折率を有する屈折率同一層を備えるので、光回折構造形成層20Aと屈折率同一層とが直接接触する範囲において、ホログラム等の効果をほぼなくすことができる。
さらに、感熱記録媒体300等は、加熱発色前の状態が透明又は半透明であり、また、感熱記録層3A,3Bが発色の異なる層である。このため、感熱記録層3A,3Bよりも裏面側に形成された層のホログラム、印刷等を視認することができる。また、文字、記号等の記録を2色以上にして、複雑な視覚効果を得ることができるので、感熱記録媒体の偽造防止の効果を、より向上することができる。
【実施例1】
【0070】
厚みが188μmのPETフィルムの表面に、磁性塗料(バリウムフェライト:ウレタン樹脂:カーボン=36:12:2の50%溶剤溶液(溶剤;トルエン:MEK:MIBK=20:15:15)を塗布して乾燥させ、温度;80℃でエージングを行ない、磁気記録層を形成し、PETフィルム/磁気記録層の構成からなる積層シートを得た。なお、記号「/」は、この記号の前後のものが互いに積層していることを意味する。
【0071】
上記のものとは別に、厚みが25μmのPETフィルムの表面に、下記組成のホログラム層形成用組成物をグラビアコート法により塗布し、厚み2μmのホログラム形成用樹脂膜を形成した。
(ホログラム層形成用組成物)
・アクリル樹脂………………………………………………………………40質量部
・メラミン樹脂………………………………………………………………10質量部
・シクロヘキサノン…………………………………………………………50質量部
・メチルエチルケトン………………………………………………………50質量部
【0072】
ホログラム形成用樹脂膜に対し、ホログラムの干渉縞を凹凸状に形成した金属版を用いてエンボス加工し、ホログラムの凹凸を付与し、ホログラム層を形成した。その後、凹凸の付与された樹脂面にアルミニウムを厚み30nmになるよう蒸着して反射層とした。
続いて反射層上に、下記組成のヒートシール層形成用組成物をグラビアコート法により塗布し、厚み2μmのヒートシール層を形成し、PETフィルム/ホログラム層/反射層/ヒートシール層の構成からなる転写シートを得た。
(ヒートシール層形成用組成物)
・塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂…………………………………20質量部
・アクリル樹脂………………………………………………………………10質量部
・酢酸エチル…………………………………………………………………20質量部
・トルエン……………………………………………………………………50質量部
【0073】
先に作製したPETフィルム/磁気記録層の構成からなる積層シートのPETフィルム側に、上記で得られた転写シートのヒートシール層側が接するようにして配置し、熱板の温度;140℃、圧力;20Kg/cm2の条件で転写を行ない、転写後、転写シートのPETフィルムを剥離し、ホログラム層/反射層/ヒートシール層/PETフィルム/磁気記録層の構成からなる積層シートを得た。
【0074】
得られた積層シートのホログラム層上に、黒色発色用及び赤色発色用の2層の感熱記録層及び保護層を順次形成して、感熱記録媒体を得た。黒色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、3−(N−エチル−N−アシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、ビスフェノールA、及びバインダー溶液(ポリビニルアルコール10%水溶液)からなるものを用い、赤色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3,3−ジクロロフェニルチオ尿素、及びバインダー溶液(ポリビニルアルコール10%水溶液)からなるものを用い、さらに保護層形成用塗料としてはウレタンアクリレート系樹脂溶液を用いた。
【実施例2】
【0075】
厚みが188μmのPETフィルムの表面に、磁性塗料(バリウムフェライト:ウレタン樹脂:カーボン=36:12:2の50%溶剤溶液(溶剤;トルエン:MEK:MIBK=20:15:15)を塗布して乾燥させ、温度;80℃でエージングを行ない、磁気記録層を形成し、PETフィルム/磁気記録層の構成からなる積層シートを得た。
【0076】
上記のものとは別に、厚みが25μmのPETフィルムの表面に、下記組成のホログラム層形成用組成物をグラビアコート法により塗布し、厚み2μmのホログラム形成用樹脂膜を形成した。
(ホログラム層形成用組成物)
・アクリル樹脂………………………………………………………………40質量部
・メラミン樹脂………………………………………………………………10質量部
・シクロヘキサノン…………………………………………………………50質量部
・メチルエチルケトン………………………………………………………50質量部
【0077】
ホログラム形成用樹脂膜に対し、ホログラムの干渉縞を凹凸状に形成した金属版を用いてエンボス加工し、ホログラムの凹凸を付与し、ホログラム層を形成した。その後、凹凸の付与された樹脂面にアルミニウムを厚み30nmになるよう蒸着して反射層とした。
【0078】
得られた積層シートの反射層上に、赤色発色用の感熱記録層、中間層(1)、黒色発色用の感熱記録層、及び中間層(2)を順次形成して、感熱記録媒体を得た。赤色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3,3−ジクロロフェニルチオ尿素、及びバインダー溶液(ポリビニルアルコール10%水溶液)からなるものを用い、黒色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、3−(N−エチル−N−アシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、ビスフェノ−ルA、及びバインダー溶液(ポリビニルアルコール10%水溶液)からなるものを用いた。また、2つの中間層(1)及び(2)の形成用塗料としてはウレタンアクリレート系樹脂溶液を用いた。
【0079】
続いて中間層(2)上に、下記組成のヒートシール層形成用組成物をグラビアコート法により塗布し、厚み2μmのヒートシール層を形成し、PETフィルム/ホログラム層/反射層/感熱記録層(赤)/中間層(1)/感熱記録層(黒)/中間層(2)/ヒートシール層の構成からなる転写シートを得た。
(ヒートシール層形成用組成物)
・塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂…………………………………20質量部
・アクリル樹脂………………………………………………………………10質量部
・酢酸エチル…………………………………………………………………20質量部
・トルエン……………………………………………………………………50質量部
【0080】
先に作製したPETフィルム/磁気記録層の構成からなる積層シートのPETフィルム側に、上記で得られた転写シートのヒートシール層側が接するようにして配置し、熱板の温度;140℃、圧力;20Kg/cm2の条件で転写を行ない、転写後、転写シートのPETフィルムを剥離し、ホログラム層/反射層/感熱記録層(赤)/中間層(1)/感熱記録層(黒)/中間層(2)/ヒートシール層/PETフィルム/磁気記録層の構成からなる積層シートを得た。
【実施例3】
【0081】
次に、本発明を適用した感熱記録媒体の実施例3の製造方法について説明する。
実施例3の感熱記録媒体Aは、パターン反射層を有する記録媒体であり、保護層/感熱記録層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/接着層/基材/磁気記録層から構成される。
(基材フィルムの作製)
PETフィルム(基材)に磁性材料(バリウムフェライト:ウレタン樹脂:カーボン=36:12:2)を塗布乾燥し、80℃でエージングして基材/磁気記録層から構成される基材フィルムを作製した。
【0082】
(転写フィルムAの作製)
別のPETフィルムから形成されるシート状基材に剥離層/OP層/光回折構造形成層をコーティングし、ホログラム加工を行った。この光回折構造形成層の裏面に水性インキで絵柄(パターン)を印刷することによりマスキングした後、蒸着を行った。これを、水洗いし、水性インキを落とすことにより、水洗インキが印刷されていない部分にパターン反射層を形成した。これにより、シート状基材/剥離層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)から構成される転写フィルムAを作製した。
【0083】
(基材フィルムと転写フィルムAとの接着)
以上により作製した基材フィルムの基材表面と、転写フィルムAの光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)の裏面との間に、接着層を設けて接着して、さらに、シート状基材を剥離することにより、OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/接着層/基材/磁気記録層から構成される積層シートAを作製した。
(感熱記録層の形成)
積層シートAの表面、すなわちOP層の表面に、感熱記録層(黒染料3−(N−エチル−Nアシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)、顕色剤(ビスフェノールA、溶剤(ポリビニルアルコール10%水溶液)、保護層(ウレタンアクリレート)を形成した。
【0084】
以上の工程により、保護層/感熱記録層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/接着層/基材/磁気記録層から構成される感熱記録媒体Aを作製することができた。
【実施例4】
【0085】
次に、本発明を適用した感熱記録媒体の実施例4の製造方法について説明する。
実施例4の感熱記録媒体Bは、実施例3で作製した感熱記録媒体Aの表面、裏面にさらに層を追加したものであり、受像層/保護層/感熱記録層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/接着層/基材/磁気記録層/説明文印刷層/保護層から構成される。
(受像層、説明文印刷層の形成)
受像層は、実施例3で作製した感熱記録媒体Aの表面、すなわち、保護層(RLプライマー:XEL(D)硬化剤:AF−WAX307=400:20:9)の表面に塗布することにより形成した。
説明文印刷層は、感熱記録媒体Aの裏面、すなわち、磁気記録層の裏面に、説明文を印刷することにより形成した。保護層は、説明文印刷層の裏面に、ウレタンアクリレートを塗布することにより形成した。
【0086】
以上により得られた、受像層/保護層/感熱記録層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/接着層/基材/磁気記録層/説明文印刷層/保護層から構成されるシートを、乾燥、エージングすることにより、感熱記録媒体Bを作製することができた。
【実施例5】
【0087】
次に、本発明を適用した感熱記録媒体の実施例5の製造方法について説明する。
実施例5の感熱記録媒体Cは、受像層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/感熱記録層(赤)/中間層/感熱記録層(黒)/保護層/接着層/基材/磁気記録層/説明文印刷層/保護層から形成される。
以下、感熱記録媒体A,Bに対する相違点について、主に説明する。
【0088】
(基材フィルムの作製)
実施例3と同様であるため、省略する。
(転写フィルムCの作製)
最初に、実施例3と同様に、シート状基材/剥離層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)から構成されるフィルムC(実施例3における転写フィルムA)を作製した。
次に、フィルムCの裏面、すなわち、光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)の裏面に、感熱記録層(赤)を形成するために、感熱記録層(赤染料3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン)、顕色剤(3,3−ジクロロフェニチオ尿素)、溶剤(ポリビニルアルコール10%水溶液)を積層した。さらに、実施例3と同様な工程を経て感熱記録層(黒)を形成し、シート状基材/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/感熱記録層(赤)/中間層/感熱記録層(黒)/保護層から構成される転写フィルムCを作製した。なお、この場合において、光回折構造形成層と感熱記録層(赤)とは、これらが直接接触する範囲におけるホログラムの効果をほぼなくすために、屈折率が同等のものを選択した。
【0089】
(基材フィルムと転写フィルムCとの接着)
基材フィルムの基材表面と、転写フィルムCの保護層の裏面とを、接着層を設けて接着して、シート状基材を剥離することにより、OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/感熱記録層(赤)/中間層/感熱記録層(黒)/保護層/接着層/基材/磁気記録層から構成される積層シートCを作製した。
(受像層、説明文印刷層の形成)
実施例4と同様な工程により、受像層、説明文印刷層、保護層を形成した。
【0090】
以上の工程により得られた、受像層/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/感熱記録層(赤)/中間層/感熱記録層(黒)/保護層/接着層/基材/磁気記録層/説明文印刷層/保護層から構成されるシートを、乾燥、エージングすることにより、感熱記録媒体Cを作製することができた。
【実施例6】
【0091】
次に、本発明を適用した感熱記録媒体の実施例6の製造方法について説明する。
実施例6の感熱記録媒体Dは、OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/アンカー層/感熱記録層(赤)/感熱記録層(黒)/保護層/接着層/基材/磁気記録層から構成される。
感熱記録媒体Dは、主に、光回折構造層の製造工程が、感熱記録媒体A等と異なる。
【0092】
(基材フィルムの作製)
実施例3と同様であるため、省略する。
(転写フィルムDの作製)
最初に、PETフィルムから形成されるシート状基材に剥離層、OP層、光回折構造形成層を設け、光回折構造形成層にホログラムのエンボス加工を施した。光回折構造形成層の裏面をコロナ処理し、水性インキで絵柄を印刷した後、コロナ処理、蒸着、水洗いを行い、パターン反射層を形成した。これにより、シート状基材/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)から構成されるデメタライズホログラム原反Dを作製した。
次に、デメタライズホログラム原反Dの裏面に、アンカー層を塗布し、感熱記録層(赤染料3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン)、顕色剤(3,3−ジクロロフェニチオ尿素)、溶剤(ポリビニルアルコール10%水溶液)、感熱記録層(黒染料3−(N−エチル−Nアシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン)、顕色剤(ビスフェノ−ルA、溶剤(ポリビニルアルコール10%水溶液)、保護層(ウレタンアクリレート)を形成した。これにより、シート状基材/OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/アンカー層/感熱記録層(赤)/感熱記録層(黒)/保護層から構成される転写フィルムDを作製した。
(基材フィルムと転写フィルムDとの接着)
基材フィルムの基材表面と、転写フィルムDの保護層の裏面とを、接着層を設けて接着して、シート状基材を剥離した。
【0093】
以上の工程により、OP層/光回折構造層(光回折構造形成層/パターン反射層)/アンカー層/感熱記録層(赤)/感熱記録層(黒)/保護層/接着層/基材/磁気記録層から構成される感熱記録媒体Dを作製することができた。
【実施例7】
【0094】
実施例3〜実施例6で作製した感熱記録媒体A〜Dを、必要に応じて層を追加し、断裁することにより、カード、交通機関の定期券のサンプルを作成した。
また、パターン反射層の絵柄と、パターン反射層が形成された範囲のみ、ホログラムの効果が積極的に発現することを、目視にて確認することができた。
【0095】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)実施例1,2において、エンボス加工をするために金属版を用いた例を示したが、これに限定されない。エンボス加工ができる版であればよいので、例えば、樹脂版を用いてもよい。
【0096】
(2)実施例3等において、反射層は、所定の絵柄を有するパターン反射層である例を示したが、これに限定されない。反射層は、所定の絵柄を有するものでなくてもよい。例えば、光回折構造形成層の裏面に、部分的に設けた反射層(部分反射層)でもよい(図6に示す部分反射層20C参照)。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の感熱記録媒体1を示す図である。
【図2】本発明の感熱記録媒体を対象物品に適用する形態を示す図である。
【図3】本発明の感熱記録媒体9を示す図である。
【図4】本発明の感熱記録媒体9を示す図である。
【図5】本発明の感熱記録媒体100を示す図である。
【図6】本発明の感熱記録媒体100Aを表面から示す図である。
【図7】本発明の感熱記録媒体転写シート200を示す図である。
【図8】本発明の感熱記録媒体300を示す図である。
【図9】本発明の感熱記録媒体400を示す図である。
【図10】本発明の感熱記録媒体500を示す図である。
【図11】本発明の感熱記録媒体600を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,9 感熱記録媒体
2 光回折構造層
2A 光回折構造形成層
2B 反射層
3 感熱記録層
4 感熱記録媒体ラベル
5 シート状基材
7 保護層
8 感熱記録媒体転写シート
10 基材
11 磁気記録層
20 光回折構造層
20A 光回折構造形成層
20B パターン反射層
30 接着層
43 説明文印刷層
45 地紋印刷層
47 印字層
48 OP層
100,100A,300〜600 感熱記録媒体
200 感熱記録媒体転写シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム又は回折格子パターンが設けられた光回折構造形成層、及び前記光回折構造形成層の裏面に設けられた反射層を有する光回折構造層と、
前記光回折構造層に積層され、加熱により発色する感熱記録層と、
を備えた感熱記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の感熱記録媒体において、
前記光回折構造形成層は、前記ホログラム又は前記回折格子パターンが全面に施されていること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の感熱記録媒体において、
前記反射層は、透明又は半透明であること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の感熱記録媒体において、
前記反射層は、前記光回折構造形成層の裏面に部分的に設けられた部分反射層であること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項5】
請求項4に記載の感熱記録媒体において、
前記部分反射層は、平面形状が所定の絵柄から形成されたパターン反射層であること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の感熱記録媒体において、
前記光回折構造形成層の裏面に設けられ、前記光回折構造形成層と略同一の屈折率を有する屈折率同一層を備えること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
前記感熱記録層は、発色の異なる2つ以上の層を備えること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
前記感熱記録層は、加熱発色前の状態が透明又は半透明であること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
前記感熱記録層及び前記光回折構造層よりも裏面側に積層されたシート状基材と、
前記シート状基材の裏面側に積層され、被着体に対して貼付可能な接着層とを備えること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
前記感熱記録層及び前記光回折構造層よりも裏面側に積層され、被着体に対して貼付可能な接着層と、
前記感熱記録層及び前記光回折構造層よりも表面側に積層され、剥離可能に設けられたシート状基材とを備え、
前記被着体に対して、前記感熱記録層及び前記光回折構造層を転写することができること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
インキを受像する受像層を備えること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
偽造防止の地紋が印刷された地紋印刷層を備えること、
を特徴とする感熱記録媒体。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の感熱記録媒体において、
磁気記録層及び/又はICチップからなる機械読み取り及び/又は書き込み可能な情報記録部を備えること、
を特徴とする感熱記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−82545(P2006−82545A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231811(P2005−231811)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】