説明

感熱転写方式を用いた画像形成方法

【課題】高速プリントを行った場合も、サーマルヘッドとインクシートとの融着およびインクシートと受像シートとの融着がなく、ムラ、皺などの故障の無い良好な画質であり、かつ画像堅牢性の優れたプリントが得られる画像形成方法を提供する。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に熱転写可能な色材を含有する熱転写層を有し、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートと、
支持体上に、ポリエステルおよび/またはポリカーボネート系ポリマーを含む少なくとも1層の受容層を有する感熱転写受像シートとを、
該熱転写シートの熱転写層と該感熱転写受像シートの受容層とが接するよう重ねあわせ、サーマルヘッドから画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成する画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写方式を用いた画像形成方法に関し、特に、高速プリントを行った場合も、サーマルヘッドとインクシートとの融着およびインクシートと受像シートとの融着がなく、ムラ、皺などの故障の無い良好な画質であり、かつ画像堅牢性の優れたプリントが得られる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも染料拡散転写記録方式は、銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。しかも、銀塩写真に比べて、ドライであること、デジタルデータから直接可視像化できる、複製作りが簡単であるなどの利点を持っている。
【0003】
この染料拡散転写記録方式では、色素を含有する感熱転写シート(以下、インクシートともいう。)と感熱転写受像シート(以下、受像シートともいう。)とを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによってインクシートを加熱することでインクシート中の色素を受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を転写記録することができる。
【0004】
この方式の新たな用途として開拓された利用分野の一つとして、例えばPOS(Point Of Sales)システム用の熱転写記録ラベル又は熱転写記録タグが挙げられる。従来の食品用ラベル用途や衣料タグ用途では長期間過酷な条件下で使用されることは比較的稀であったが、配送用ラベルや航空バゲッジタグ等の流通管理用途で使用される機会が増加しており、バーコード等の精密記録が必要で、高画質であることが要望されている。また、記録体が過酷な条件に曝されることがあり、熱転写記録用受像紙の紙力強度の改良が要望されている。
これに対して、例えば特許文献1には、支持体としてクレープ紙またはクルパック紙を用いることが開示されている。しかし、クレープ紙やクルラップ紙を支持体として用いた場合、塗布から乾燥までの間に紙中に水分が吸収されてしまい、しかも乾燥後も紙中に水分が残存して、受容層の経時による鮮鋭性の低下を引き起こすという問題があった。
【特許文献1】特開平9−220863号公報
【非特許文献1】「情報記録(ハードコピー)とその材料の新展開」,(株)東レリサーチセンター発行,1993年,p.241−285
【非特許文献2】「プリンター材料の開発」,(株)シーエムシー発行,1995年,p.180
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱転写シートによりサーマルヘッドで画像形成を行う際に高速で処理を行うと、サーマルヘッドが高温に加熱されている為、基材フイルムがポリエステルフイルム等の熱可塑性フイルムである場合には、サーマルヘッドがインクシートの基材フイルムに融着し、サーマルヘッドの良好な走行性が阻害され、熱転写シートに破損、皺等が発生するという問題がある。また、画像形成を行う際に高速で処理を行なうとサーマルヘッドの加熱時間が不十分で、転写した色素が受容層中に十分に拡散せず、受容層表層付近に存在し、画像光堅牢性が悪化するという問題がある。
従って、本発明は、高速プリントを行った場合も、サーマルヘッドとインクシートとの融着およびインクシートと受像シートとの融着がなく、ムラ、皺などの故障の無い良好な画質であり、かつ画像堅牢性の優れたプリントが得られる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、高速で処理してもサーマルヘッドとインクシートの融着およびインクシートと受像シートの融着が発生することなく、プリントの高速化が達成できることを見い出した。また、このように高速で処理する際にも、ポリエステル及び/又はポリカーボネート系ポリマーを含有する受像シートであれば、画像堅牢性の優れた画像を形成することができることがわかった。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0007】
上記課題は下記の手段により達成された。
(1)基材フィルムの一方の面に熱転写可能な色材を含有する熱転写層を有し、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートと、
支持体上に、ポリエステルおよび/またはポリカーボネート系ポリマーを含む少なくとも1層の受容層を有する感熱転写受像シートとを、
該熱転写シートの熱転写層と該感熱転写受像シートの受容層とが接するよう重ねあわせ、サーマルヘッドから画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
(2)前記耐熱滑性層が、2個以上のイソシアネート基を有する化合物とポリマーとの反応で得られたポリマーを含有することを特徴とする(1)に記載の画像形成方法。
(3)前記耐熱滑性層の厚みが0.1〜2.0μmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の画像形成方法。
(4)前記熱転写シートに、下記一般式(7)又は(8)で表される少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(7)中、R51およびR52は各々独立に置換基を表す。n8は0〜5の整数を表す。n9は0〜4の整数を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(8)中、R61は置換基を表し、R62、R63およびR64は各々独立に水素原子または置換基を表す。n10は0〜4の整数を表す。)
(5)前記熱転写シートに、下記一般式(9)、(10)又は(11)のいずれかで表される少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0012】
【化3】

【0013】
(一般式(9)中、R71およびR73は各々独立に水素原子または置換基を表す。R72およびR74は各々独立に置換基を表す。n11は0〜4の整数を表す。n12は0〜2の整数を表す。)
【0014】
【化4】

【0015】
(一般式(10)中、R81は水素原子または置換基を表す。R82およびR84は各々独立に置換基を表す。n13は0〜4の整数を表す。n14は0〜2の整数を表す。)
【0016】
【化5】

【0017】
(一般式(11)中、R91は水素原子または置換基を表す。R92は置換基を表す。R93およびR94は各々独立に水素原子または置換基を表す。n15は0〜2の整数を表す。Z1およびZ2は、どちら一方が=N−であり、他方が=C(R95)−を表す。Z3およびZ4は各々独立に=N−または=C(R95)−を表す。ここで、R95は水素原子または置換基を表す。)
(6)前記感熱転写シートに、下記一般式(12)又は(13)で表される少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0018】
【化6】

【0019】
(一般式(12)中、R101およびR102は各々独立に置換基を表す。R103およびR104は各々独立に水素原子または置換基を表す。n16およびn17は各々独立に0〜4の整数を表す。)
【0020】
【化7】

【0021】
(一般式(13)中、R111およびR113は各々独立に水素原子または置換基を表す。R112およびR114は各々独立に置換基を表す。n18は0〜4の整数を表す。n19は0〜2の整数を表す。)
(7)画像形成時の前記感熱転写受像シートの搬送速度が125mm/秒以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、高速で処理してもサーマルヘッドとインクシートの融着およびインクシートと受像シートの融着が発生することなく、ムラ、皺などの故障の無い良好な画質であり、かつ画像堅牢性の優れたプリントを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感熱転写受像シートは、基材上に染料受容層(受容層)が形成されている。受容層と支持体との間には下地層が形成されていることが好ましく、例えば白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層が形成される。また、下地層と基材との間には断熱層が形成されていることが好ましい。さらに、基材の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていることが好ましい。各層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行われる。
【0024】
[受容層ポリマー]
本発明の受容層に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル・ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー・ポリ酢酸ビニル・エチレン酢酸ビニル共重合体・塩化ビニル酢酸ビニル共重合体・ポリアクリルエステル・ポリスチレン・ポリスチレンアクリル等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール・ポリビニルブチラール・ポリビニルアセタール等のアセタール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン(プラクセルH−5、ダイセル化学(株)製)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、特開平04−296595号公報や特開2002−264543号公報に記載セルロース系樹脂やセルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、CAB321−0.1、以上、イーストマンケミカル製)等のセルロース系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィンン系樹脂、尿素樹脂・メラミン樹脂・ベンゾグアナミン樹脂等のポリアミド系樹脂、等が挙げられる。これらの樹脂は、相溶する範囲内で任意にブレンドし、用いることもできる。特開昭57-169370号、同57-207250号、同60-25793号公報等にも受容層を形成した樹脂が開示されている。上記ポリマー中でもポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルおよびその共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトンまたはこれらの混合物を含有することが好ましく、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよびその共重合体またはこれらの混合物がさらに好ましく、ポリカーボネート、ポリエステルまたはこれらの混合物が特に好ましい。
本発明は、受容層にポリエステルおよび/またはポリカーボネート系ポリマーを含有するものである。
これらのポリマーは単独で使用しても、混合物として用いてもよい。
【0025】
[ポリエステル系樹脂]
本発明の受容層に用いるポリエステル系樹脂について、さらに詳しく説明する。
ポリエステルはジカルボン酸成分(その誘導体含む)とジオール成分(その誘導体を含む)との重縮合により得られるものである。ポリエステル樹脂は、芳香環および/または脂環を含有する。脂環式ポリエステルの技術については、特開平5−238167号公報に記載の技術が染料取り込み能と像の安定性の点で有効である。
【0026】
ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、トリメリット酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、それらの2種以上の混合物から選ばれる。好ましくは、イソフタル酸、トリメリット酸、テレフタル酸、またはそれらの2種以上の混合物から選ばれる。ジカルボン酸成分として脂環族を有するものを含有させることは、耐光性向上の観点からより望ましい。より好ましくは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸およびイソフタル酸を使用する。ジカルボン酸成分は、イソフタル酸50〜100mol%、トリメリット酸0〜1mol%、テレフタル酸0〜50mol%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸0〜15mol%の割合で、合計100mol%となるように使用する。
【0027】
ジオール成分は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノール、またはそれらの2種以上の混合物から選ぶことができる。好ましくは、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリシクロデカンジメタノールから選ばれる。ジオール成分として脂環成分を含ませるようにすると、耐光性向上の観点からより望ましい。トリシクロデカンジメタノール以外にもシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール等の脂環式ジオール成分を使用することができる。好ましい脂環式ジオール成分はトリシクロデカンジメタノールである。ジオール成分は、エチレングリコール0〜50mol%、ポリエチレングリコール0〜10mol%、トリシクロデカンジメタノール0〜90mol%、好ましくは30〜90mol%、より好ましくは40〜90mol%、1,4−ブタンジオール0〜50mol%、ビスフェノールA 0〜50mol%の割合で、合計100mol%となるように使用する。
【0028】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、上記少なくともジカルボン酸成分およびジオール成分を使用し、分子量(質量平均分子量(Mw))約11000以上、好ましくは約15000以上、より好ましくは約17000以上有するように重縮合したものを使用する。分子量があまり低いものを使用すると、形成される受容層の弾性率が低くなり、また耐熱性も足りなくなるので、熱転写シートと受像シートとの離型性を確保することが難しくなる。分子量は、弾性率を上げる観点から大きいほど望ましく、受容層形成時に塗布液溶媒に溶かすことができなくなるとか、受容層を塗布乾燥後に基材シートとの接着性に悪影響が出る等の弊害が生じない限り、特に限定されないが、好ましくは約25000以下、高くても約30000程度となる。なお、エステル樹脂の合成法は、従来公知の方法を使用すればよい。
【0029】
飽和ポリエステルとしては例えばバイロン200、バイロン290、バイロン600等(以上、東洋紡(株)製)、KA−1038C(荒川化学(株)製)、TP220、TP235(以上、日本合成(株)製)等が用いられる。
【0030】
[ポリカーボネート]
本発明の受容層に用いるポリカーボネート樹脂について、さらに詳しく説明する。
ポリカーボネートは、炭酸とジオールをユニットとするポリエステルを意味し、ジオールにホスゲンを反応させる方法あるいは炭酸エステルを反応させる方法等により合成できる。
【0031】
ジオール成分としては、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ノナンジオール、4,4’−ビシクロ(2,2,2)ヘプト−2−イリデンビスフェノール、4,4’−(オクタヒドロ−4,7−メタノ−5H−インデン−5−イリデン)ビスフェノール及び2,2’,6,6’−テトラクロロビスフェノールAが挙げられ、ビスフェノールA、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールが好ましく、ビスフェノールA、エチレングリコール、ブタンジオールがより好ましく、ビスフェノールA、エチレングリコールが特に好ましい。本発明で使用するポリカーボネートは、少なくとも上記の1種のジオール成分を使用するが、複数のジオールを混合して使用してもよい。
【0032】
本発明のポリカーボネートの特に好ましい態様であるビスフェノール−Aポリカーボネートについて、詳しく説明する。ビスフェノール−Aポリカーボネートを中心とする未変性のポリカーボネートの技術は米国特許第4,695,286号明細書に記載されている。本発明のポリカーボネートは分子量(質量平均分子量(Mw))約1000以上、好ましくは約3000以上、より好ましくは約5000以上、特に好ましくは約10000以上の重縮合したものを使用する。Makrolon−5700(Bayer AG)及びLEXAN−141(General Electric社)等のポリカーボネートを例として挙げることができる。
【0033】
ビスフェノールAとエチレングリコールのようなジオールを混合して変性ポリカーボネートの技術が米国特許第4,927,803号明細書に記載されている。ポリエーテルブロック単位は、炭素原子数2〜約10個の線状脂肪族ジオールから形成することができるが、エチレングリコールから形成されたものが好ましい。本発明の好ましい実施態様では、ポリエーテルブロック単位は数分子量約4,000〜約50,000を有し、またビスフェノール−Aポリカーボネートブロック単位は数分子量約15,000〜約250,000を有する。ブロックコポリマー全体の分子量は、約30,000〜約300,000であることが好ましい。Makrolon KL3−1013(Bayer AG)を例として挙げることができる。
【0034】
これらの未変性および変性ビスフェノール−Aポリカーボネートを混合することも好ましく、未変性ビスフェノール−Aポリカーボネートとポリエーテル変性ポリカーボネートとを質量比80:20〜10:90で配合することが好ましく、耐指紋性向上の観点から質量比50:50〜40:60の質量比が特に好ましい。未変性および変性ビスフェノール−Aポリカーボネートのブレンド技術に関しては特開平6−227160号公報にも記載されている。
【0035】
本発明の受容層に使用される熱可塑性樹脂の好ましい実施態様として、上記ポリカーボネートと上記ポリエステルのブレンド系をあげることができる。このブレンド系では、ポリカーボネートとポリエステルの相溶性が確保できることが好ましい。ポリエステルは、好ましくは、約40〜約100℃のTgを示し、またポリカーボネートは約100〜約200℃のTgを示す。ポリエステルは、好ましくは、ポリカーボネートよりも低いTgを示し、そしてポリカーボネートに対してポリマー可塑剤として作用する。最終のポリエステル/ポリカーボネートブレンドのTgは、好ましくは40℃〜100℃である。より高いTgのポリエステル及びポリカーボネートのポリマーも、可塑剤を添加することで有用となりうる。
【0036】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、未変性ビスフェノール−Aポリカーボネートとポリエステルポリマーとを、最終ブレンドのTgを望ましい値にし、しかもコストを最小限に抑えるような質量比でブレンドする。ポリカーボネートとポリエステルポリマーとは、約75:25〜25:75の質量比で都合よく配合することができるが、約60:40〜約40:60の質量比で配合するとより好ましい。特開平6−227161号公報にはポリカーボネートとポリエステルとのブレンド系の技術が開示されている。
【0037】
本発明の受容層に用いるポリカーボネートにおいて、ポリマー末端が少なくとも2個のヒドロキシル基を有する平均分子量約1000〜約10,000ポリカーボネートとヒドロキシル基と反応する架橋剤との反応により、受容層に架橋ポリマー網状構造を形成させてもよい。特開平6−155933号公報に記載のように、多官能性イソシアネートなどの架橋剤を技術も開示され、転写後の色素供与体への粘着性を改良できる。さらに特開平8−39942号公報に開示の技術のように、ポリカーボネートとイソシアネートの架橋反応の際、ジブチル錫ジアセテートを用いた感熱色素転写用色素受容要素を構成とする技術が開示されており、架橋反応の促進のみならず画像安定性や耐指紋性などを改良できる。
【0038】
本発明の受容層は、溶剤塗布によらずに、上記ポリマー樹脂の溶融物を押し出しコーティングすることによってキャストすることができる。この押し出しコーティングの技術はエンサイクロピィーディアオブポリマーサイエンスアンドテクニークス(Encyclopedia of Polymer Science and Enginieering)第3巻(John Wiley, New York)、1985年563頁や、第6巻1986年608頁に記載されている。特開平7−179075号公報にも感熱色素転写材用に関する技術が開示されており、本技術も好適に使用することができる。ポリマー樹脂としては、シクロヘキサンジカルボキシレートとエチレングリコール/ビスフェノール−A−ジエタノールの50/50モル%混合物(COPOL;登録商標)とを縮合して得られたコポリマーが特に好ましい。
【0039】
なお色素の染着性の程度については以下のようにして定義される。受像シートにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を256階調のベタ画像を形成するよう出力し、得られた画像の反射濃度を測定して、最も反射濃度の高いものを染着性が良い受容ポリマーと定義する。なお、受容ポリマーの染着性は、プリンター、インクシートによって異なり得るので注意が必要である。
【0040】
本発明に用いられるバインダーは、加工脆性と画像保存性の点でガラス転移温度(Tg)が−30℃〜100℃の範囲のものが好ましく、より好ましくは0℃〜90℃の範囲、さらに好ましくは30℃〜80℃の範囲である。バインダーとして2種以上のポリマーをブレンドして用いることも可能で、この場合、組成分を考慮し加重平均したTgが上記の範囲に入ることが好ましい。また、相分離した場合やコア−シェル構造を有する場合には加重平均したTgが上記の範囲に入ることが好ましい。
【0041】
このガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は「Polymer Handbook(3rd Edition)」(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用できる。
バインダーに用いられるポリマーの重合方法は、一括重合法、モノマー(連続・分割)添加法、エマルジョン添加法が好ましい。
【0042】
<離型剤>
また、受容層には、画像形成時に熱転写シートとの熱融着を防ぐために、離型剤を配合することもできる。離型剤は、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類;シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他当該技術分野で公知の離型剤を使用することができ、フッ素系界面活性剤等に代表されるフッ素系化合物、シリコーン系界面活性剤、シリコーンオイル及び/又はその硬化物等のシリコーン系化合物が好ましく用いられる。離型剤の添加量は、受容ポリマーに対して0.2〜30質量部が好ましい。
【0043】
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、および変性シリコーンオイルやその硬化物が使用できる。ストレートシリコーンオイルには、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルがあり、ジメチルシリコーンオイルとしては、KF96−10、KF96−100、KF96−1000、KF96H−10000、KF96H−12500、KF96H−100000(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等を挙げられ、ジメチルシリコーンオイルとしては、KF50−100、KF54、KF56(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0044】
変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルに分類できる。反応性シリコーンオイルには、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシ変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性・異種官能基変性がある。アミノ変性シリコーンオイルとしては、KF−393、KF−857、KF−858、X−22−3680、X−22−3801C、KF−8010、X−22−161A、KF−8012(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性シリコーンオイルとしては、KF−100T、KF−101、KF−60−164、KF−103、X−22−343、X−22−3000T(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。カルボキシル変性シリコーンオイルとしては、X−22−162C(商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、ヒドロキシ変性シリコーンオイルとしては、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176D、X−22−176DF(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、メタクリル変性シリコーンオイルとしては、X−22−164A、X−22−164C、X−24−8201、X−22−174D、X−22−2426(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0045】
反応性シリコーンオイルとしては、硬化させて使用することもでき、反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等に分類できる。このなかで反応硬化型のシリコーンオイルが特に好ましく、反応硬化型シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイルとエポキシ変性シリコーンオイルとを反応硬化させたものが好ましい。また、触媒硬化型あるいは光硬化型シリコーンオイルとしては、KS−705F−PS、KS−705F−PS−1、KS−770−PL−3〔触媒硬化型シリコーンオイル:いずれも商品名、信越化学工業(株)製〕、KS−720、KS−774−PL−3〔光硬化型シリコーンオイル:いずれも商品名、信越化学工業(株)製〕等が挙げられる。これら硬化型シリコーンオイルの添加量は受容層を構成する樹脂の0.5〜30質量%が好ましい。離型剤は、ポリエステルおよびポリカーボネート系ポリマーを合計したものの100質量部に対して2〜4質量%、好ましくは2〜3質量%程度使用する。その量が少なすぎると、離型性を確実に確保することができず、また多すぎると保護層が受像シートに転写しなくなってしまう。
【0046】
非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、フッ素変性等がある。ポリエーテル変性シリコーン(KF−6012、商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられ、メチルスチル変性シリコーンシリコーンオイルとしては、(24−510、KF41−410、いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。また、下記一般式1〜3のいずれかで表される変性シリコーンも使用することができる。
【0047】
【化8】

【0048】
一般式1中、Rは水素原子、またはアリール基、若しくはシクロアルキル基で置換されても良い直鎖または分岐のアルキル基を表す。m、nは2000以下の整数を表し、a、bは30以下の整数を表す。
【0049】
【化9】

【0050】
一般式2中、Rは水素原子、またはアリール基、若しくはシクロアルキル基で置換されても良い直鎖または分岐のアルキル基を表す。mは2000以下の整数を表し、a、bは30以下の整数を表す。
【0051】
【化10】

【0052】
一般式3中、Rは水素原子、またはアリール基、若しくはシクロアルキル基で置換されても良い直鎖または分岐のアルキル基を表す。Rは単結合または2価の連結基を表し、Eは置換基を有してもよいエチレン基を表し、Pは置換基を有してもよいプロピレン基を表す。m、nは2000以下の整数を表し、a、bは30以下の整数を表す。
【0053】
上記のようなシリコーンオイルは「シリコーンハンドブック」(日刊工業新聞社刊)に記載されており、硬化型シリコーンオイルの硬化技術として、特開平8−108636号公報や特開2002−264543号公報に記載の技術が好ましく使用できる。
【0054】
(下地層)
受容層と支持体との間には下地層が形成されていることが好ましく、例えば白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層が形成される。これらの層については、例えば特許第3585599号明細書、特許第2925244号明細書などに記載されたものと同様にして形成することができる。
【0055】
(基材シート)
本発明の基材シートとしては、紙類、プラスチックフィルム等が使用でき、紙類では、各種紙単体もしくは加工紙等いずれも使用可能で、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙等の他、樹脂エマルジョンや合成ゴムラテックス等の含浸紙、合成樹脂内添紙などが挙げられ、合成紙では、ポリスチレン系合成紙やポリオレフィン系合成紙等が良好に使用できる。
【0056】
また、プラスチックフィルムでは、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルム、硬質ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリアリレートフィルムなどが使用できる。これらのプラスチックフィルムでは透明なフィルムだけではなく、白色顔料や、充填剤等を加えて成膜した白色不透明のフィルム、或いは発泡させたフィルムも使用できる。尚、これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよい。
【0057】
基材として透明性を有する基材を用いることができ、この場合は実用上、延伸したポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが良い。それによって、OHP投影機にかけて、使用できたり、また、シールタイプでは貼着される対象物の表面の外観が損なわれることなく、透過できるものが得られる。尚、この場合はもちろん、色材受容層、粘着剤層等、熱転写受像シートの貼着する部分は透明性を有していることが望ましい。
【0058】
また、上記の基材シートの表面及びまたは裏面に易接着処理した基材シートも使用できる。本発明では、特に限定されないが、帯電性の高いプラスチックベースの基材シートを用いることが好ましい。熱転写受像シートの基材シートの厚みは、通常3〜300μm程度であり、本発明においては、機械的適性等を考慮し、75〜175μmの基材シートを用いるのが好ましい。また、基材シートとその上に設ける層との密着性が乏しい場合には、その表面に易接着処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0059】
次に、本発明に用いられる感熱転写シート(インクシート)について説明する。
熱転写画像形成の際に、上述した感熱転写受像シートと併せて使用されるインクシートは、支持体上に拡散転写染料を含む色素層を設けたものである。色素層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行われる。
【0060】
インクシート基材の材質は、ポリエステルフイルム、ポリスチレンフイルム、ポリスルフォンフイルム、ポリイミドフイルム、ポリビニルアルコールフイルム若しくはセロファン等のプラスチックフイルムが適している。本発明の好ましい実施態様では、熱転写色素供与材料はポリエチレンテレフタレート支持体上にシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を逐次繰返し領域で塗布したものからなり、前記熱転写工程を各色素毎に逐次実施して三色の転写画像を形成する。勿論、この熱転写工程を単色で実施した際には、モノクロームの転写画像が得られる。
【0061】
(熱転写層)
本発明に用いられるインクシートの熱転写層(色素層)には、イエロー色素として前記一般式(7)又は(8)で表される少なくとも1種の色素を含むことが好ましく、マゼンタ色素として前記一般式(9)、(10)又は(11)で表される少なくとも1種の色素を含むことが好ましく、シアン色素として前記一般式(12)又は(13)で表される少なくとも1種の色素を含むことが好ましい。
以下に上記の好ましい色素を説明する。
最初に、一般式(7)で表される色素について、詳細に説明する。
【0062】
【化11】

【0063】
一般式(7)中、R51およびR52は各々独立に置換基を表す。n8は0〜5の整数を表し、n9は、0〜4の整数を表す。
【0064】
一般式(7)中、R51およびR52は各々独立に水素原子または置換基を表す。
ここで該置換基をさらに詳しく説明する。該置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基(環数は問わない)を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基(環数は問わない)を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アルキアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基を有していても良い。
【0065】
以下に、前記R51およびR52をさらに詳しく説明する。
51およびR52で表されるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0066】
51およびR52で表されるアルキル基にはシクロアルキル基およびビシクロアルキル基が含まれる。アルキル基としては直鎖、分岐の置換もしくは無置換のアルキル基が含まれる。直鎖、分岐の置換もしくは無置換のアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、または2−エチルヘキシルを挙げることができる。シクロアルキル基としては置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシルを挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例として、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
51およびR52で表されるアルケニル基にはシクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイルを挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルが挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イルを挙げることができる。
【0067】
51およびR52で表されるアルキニル基は、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル、またはプロパルギルが挙げられる。
【0068】
51およびR52で表されるアリール基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルが挙げられる。
【0069】
51およびR52で表されるヘテロ環基は、5又は6員の置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基が好ましく、それらはさらに縮環していてもよい。更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示(すなわち、環として例示)すると、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。
【0070】
51およびR52で表されるアルコキシ基は、置換もしくは無置換のアルコキシ基が含まれる。置換もしくは無置換のアルコキシ基としては、炭素原子数が1〜30のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシおよび3−カルボキシプロポキシなどを挙げることができる。
【0071】
51およびR52で表されるアリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシなどを挙げることができる。
【0072】
51およびR52で表されるホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
【0073】
51およびR52で表されるカルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシなどを挙げることができる。
【0074】
51およびR52で表されるアルコキシカルボニルオキシ基は、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
【0075】
51およびR52で表されるアリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシなどを挙げることができる。
【0076】
51およびR52で表されるアミノ基はアルキアミノ基、アリールアミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、ヒドロキシエチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、スルフォエチルアミノ、3,5−ジカルボキシアニリノなどを挙げることができる。
【0077】
51およびR52で表されるアシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノなどを挙げることができる。
【0078】
51およびR52で表されるアミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノなどを挙げることができる。
【0079】
51およびR52で表されるアルコキシカルボニルアミノ基は、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
【0080】
51およびR52で表されるアリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
【0081】
51およびR52で表されるスルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノなどを挙げることができる。
【0082】
51およびR52で表されるアルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基が好ましい。アルキルスルホニルアミノ基およびアリールスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノなどを挙げることができる。
【0083】
51およびR52で表されるアルキルチオ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオなどを挙げることができる。
【0084】
51およびR52で表されるスルファモイル基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)などを挙げることができる。
【0085】
51およびR52で表されるアルキルもしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基が好ましい。アルキルもしくはアリールスルフィニル基の例には、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニルなどを挙げることができる。
【0086】
51およびR52で表されるアルキルもしくはアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基が好ましい。アルキルもしくはアリールスルホニル基の例には、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニルなどを挙げることができる。
【0087】
51およびR52で表されるアシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。アシル基の例には、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニルなどを挙げることができる。
【0088】
51およびR52で表されるアリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニルなどを挙げることができる。
【0089】
51およびR52で表されるアルコキシカルボニル基は、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルなどを挙げることができる。
【0090】
51およびR52で表されるカルバモイル基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイルなどを挙げることができる。
【0091】
51およびR52で表されるアリールもしくはヘテロ環アゾ基は、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾなどを挙げることができる。
【0092】
51およびR52で表されるイミド基は、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミドなどを挙げることができる。
【0093】
51およびR52は、好ましくは各々独立水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基である。
【0094】
51は、好ましくは、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基である。最も好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0095】
52の例には、好ましくは、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のカルバモイル基であり、最も好ましくは置換カルバモイル基である。
【0096】
一般式(7)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0097】
一般式(8)で表される色素について、詳細に説明する。
【0098】
【化12】

【0099】
一般式(8)中、R61は置換基を表す。R62、R63およびR64は各々独立に水素原子または置換基を表す。R61〜R64における置換基としては前述したR51およびR52で説明したものが挙げられる。n10は0〜4の整数を表す。
【0100】
61の例には、好ましくは、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基である。最も好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
62、R63の例には、好ましくは水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基である。より好ましくは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基である。
64の例には、好ましくは各々独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0101】
一般式(8)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0102】
一般式(9)または(10)で表される色素について、詳細に説明する。
【0103】
【化13】

【0104】
一般式(9)中、R71およびR73は各々独立に水素原子または置換基を表し、R72およびR74は各々独立に置換基を表す。n11は0〜4の整数を表す。n12は0〜2の整数を表す。R71〜R74における置換基としては、前述したR51、R52で説明したものが挙げられる。
【0105】
71、R73の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0106】
72、R74の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられる。好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシであり、より好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基である。各基は置換基を有していてもよい。
【0107】
【化14】

【0108】
一般式(10)中、R81は水素原子または置換基を表す。R82、R84は各々独立に置換基を表す。n13は0〜4の整数を表し、n14は0〜2の整数を表す。R81、R82、R84における置換基としては、前述したR51、R52で説明したものが挙げられる。
【0109】
81の例としては、R51、R52で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0110】
82、R84の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられる。好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシであり、より好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基である。各基は置換基を有していてもよい。
【0111】
一般式(9)または(10)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0112】
一般式(11)で表される色素について、詳細に説明する。
【0113】
【化15】

【0114】
一般式(11)中、R91は水素原子または置換基を表す。R93およびR94は各々独立に水素原子または置換基を表す。R92は置換基を表す。n15は0〜2の整数を表す。Z1、Z2は、どちら一方が=N−であり、他方が=C(R95)−を表す。Z3、Z4は各々独立に=N−または=C(R95)−を表す。R95は水素原子または置換基を表す。R91〜R95における置換基としては、前述したR51、R52で説明したものが挙げられる。
【0115】
91は、好ましくは、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基、置換もしくは無置換のアミノであり、より好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基である。
【0116】
92の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは、水素原子、置換または無置換のアルキル基である。
【0117】
93、R94の例としては、R51、R52で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基である。
【0118】
95の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは、水素原子、置換または無置換のアルキル基である。
【0119】
一般式(11)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0120】
一般式(12)または(13)で表される色素について、詳細に説明する。
【0121】
【化16】

【0122】
101およびR102は各々独立に置換基を表し、R103およびR104は各々独立に水素原子または置換基を表す。R101〜R104における置換基としては、前述したR51、R52で説明したものが挙げられる。n16およびn17は各々独立に0〜4の整数を表す。
【0123】
101の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくはアミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基であり、さらに好ましくはアシルアミノ基である。
102の例としては、一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは、置換または無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基である。
103、R104の例としては、R51、R52で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、さらに好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基である。
【0124】
【化17】

【0125】
一般式(13)中、R111およびR113は各々独立に水素原子または置換基を表す。R112およびR114は各々独立に置換基を表す。n18は、0〜4の整数を表し、n19は、0〜2の整数を表す。R111〜R114における置換基としては、前述したR51、R52で説明したものが挙げられる。
【0126】
111、R113の例としては、R51、R52で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基である。
【0127】
112、R114の例としては、水素原子や一般式(7)のR51で述べたような置換基が挙げられ、好ましい範囲も同じである。より好ましくは水素原子である。
【0128】
一般式(12)または(13)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0129】
以下に、一般式(7)〜(13)で表される色素の具体例を以下に示すが本発明に用いられる色素は、下記の例に限定されるものではない。
【0130】
【化18】

【0131】
【化19】

【0132】
【化20】

【0133】
【化21】

【0134】
【化22】

【0135】
【化23】

【0136】
これらの各々の色素は熱転写層(色素層)中にそれぞれ10〜90質量%含有されることが好ましく、20〜80質量%含有されることがより好ましい。
また熱転写層の塗布量は、0.1〜1.0g/m2(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましく、更に好ましくは0.15〜0.60g/m2である。熱転写層の膜厚は0.1〜2.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0μmである。
【0137】
熱転写層のバインダーとしては、好ましいものを例示すれば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中で、耐熱性、色素の移行性等の観点から、ブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂等が特に好ましい。
より好ましいポリエステル樹脂は、酸成分の2分の1以上がテレフタル酸であり、更に好ましくは酸成分の3分の2以上がテレフタル酸であり、最も好ましくは酸成分の4分の3以上がテレフタル酸である。これにより、感熱転写受像シートとの融着を防ぐことができる。本発明のポリエステルは特開平9−295389号公報に記載の方法などにより得ることができる。
【0138】
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートは基材の一方の面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングや印字しわ等の悪影響を防止するため、耐熱滑性層を設ける。該耐熱滑性層にはバインダーとしてポリマーを含有することが好ましい。該ポリマーは好ましくはポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂或はこれらのシリコーン変性物等が用いられ、これらの中で特に好ましい樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂或はこれらのシリコーン変性物の如くイソシアネート基と反応する水酸基を有する樹脂である。
【0139】
本発明の好ましい実施形態では、耐熱滑性層に耐熱性、塗膜性及び基材との密着性を付与させる目的でイソシアネート基を2個以上持った化合物(2個以上のイソシアネート基を有する化合物)を架橋剤として併用することが好ましい。これらのイソシアネートとしては従来公知の塗料、接着剤、ポリウレタンの合成等に使用されているいずれのイソシアネート化合物でもよい。これらのイソシアネート化合物は、例えば、タケネート(武田薬品製)、バーノック(大日本インキ化学製)、コロネート(日本ポリウレタン製)、ヂュラネート(旭化成工業製)、ディスモジュール(バイエル製)等の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0140】
該イソシアネート化合物の添加量は、耐熱滑性層を構成するポリマーバインダー(樹脂バインダー)100質量部に対し5〜200質量部の範囲が適当である。NCO/OHの比では0.8〜2.0程度の範囲が好ましい。イソシアネート化合物の含有量が少なすぎると架橋密度が低く耐熱性が不十分で、一方、多すぎると形成される塗膜の収縮が制御できない、硬化時間が長くなる、未反応のNCO基が耐熱滑性層中に残存し空気中の水分と反応する等マイナスに働く。
【0141】
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加あるいは上塗りする滑り性付加剤としては、リン酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、アクリロシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及びリン酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
【0142】
また、本発明では上記の材料から耐熱滑性層を形成するに当り、耐熱滑性層のスリップ性を向上させる目的でワックス、高級脂肪酸アミド、エステル、界面活性剤等の熱離型剤や滑剤或いはフッ素樹脂のような有機粉末、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子を包含させることができる。
【0143】
耐熱滑性層を形成するには、上記の如き材料をアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の適当な溶剤中に溶解又は分散させて塗工液を調製し、この塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の塗工手段により塗工及び乾燥し、次いで加熱処理によって架橋処理することによって形成される。その塗工量即ち耐熱滑性層の厚みも重要であって、本発明では固形分基準で、好ましくは2.0g/m以下、より好ましくは0.1〜2.0g/m、さらに好ましくは0.1〜1.0g/mの厚みで充分な性能を有する耐熱滑性層を形成することができる。
【0144】
本発明の画像形成方法は、熱転写シートの熱転写層と感熱転写受像シートの受容層とが接するよう重ねあわせ、サーマルヘッドから画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成する。
熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンター(例えば、日立製作所製、商品名、ビデオプリンターVY−100)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって所期の目的を十分に達成することができる。画像形成方法は例えば特開2005−88545号公報などに記載された方法と同様にして行うことができる。
本発明では、消費者にプリント物を提供するまでの時間を短縮するという観点から、1枚のプリント時間は8秒未満が好ましく、3〜8秒がより好ましい。
本発明は、感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。
一方、画像形成時の感熱転写受像シートの搬送速度においては、本発明では、好ましくは125mm/秒以上、より好ましくは125mm/秒以上200mm/秒以下、さらに好ましくは125mm/秒以上190mm/秒以下、最も好ましくは125mm/秒以上175mm/秒以下である場合に、極めて効果的に本発明の効果を奏する。なお、感熱転写受像シートの搬送速度とは、画像形成時の感熱転写受像シートの搬送速度とは、感熱転写受像シートがサーマルヘッドの下を往復するときの速度である。
【0145】
熱昇華記録または熱転写記録を行なうように構成されたサーマルプリンターにおいて、具体的に説明する。
例えば、図1では、搬送ローラー28により矢印方向に搬送して使用済みの熱転写シートをリボンカートリッジ内で巻き取りつつサーマルヘッド10の発熱部11への通電による感熱転写記録を行なうように構成されている。熱転写シートの熱転写層には、各色材層イエロー、マゼンタ、シアンが各々感熱転写受像シートの記録面の面積に対応して順次形成されている関係上、搬送ローラー28の回転方向の切り替えにより、感熱転写受像シートはサーマルヘッド10の下を往復し、各色が表面に施されることとなる。画像形成時の感熱転写受像シートの搬送速度とは、感熱転写受像シートが発熱部11の下を往復するときの速度である。
【0146】
また、本発明の感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
【0147】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【実施例】
【0148】
(比較例101)
(インクシート101の作製)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を基材フィルムとして用いた。その表面側に下記組成のイエロー、マゼンタ、シアン組成物をそれぞれ単色に塗布(乾膜時の塗布量1g/m2)した。
【0149】
<染料層組成液>
イエローインキ
色素(7)−1 2.5部
色素(8)−1 2.0部
ポリエステル1 4.5部
メチルエチルケトン/トルエン (1/1) 90部
マゼンタインキ
色素(9)−1 1.0部
色素(10)−1 1.0部
色素(11)−1 2.5部
ポリエステル1 4.5部
メチルエチルケトン/トルエン (1/1) 90部
シアンインキ
色素(12)−1 2.0部
色素(13)−1 2.5部
ポリエステル1 4.5部
メチルエチルケトン/トルエン (1/1) 90部
【0150】
上記ポリエステル1は下記の組成のものである。
ポリエステル1
下記の酸成分およびジオール成分を下記モル比で重合させることで得られる数平均分子量2000のポリエステル。
イソフタル酸 5
テレフタル酸 45
エチレングリコール 5
ジエチレングリコール 45
【0151】
(比較例102)
(インクシート102の作製)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を基材フィルムとして用いた。そのフィルム背面側に耐熱滑性層(乾膜時の膜厚1.0μm)を形成し、それ以外は試料101と同様に作製した。
【0152】
<耐熱滑性層組成液1>
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製 13.6部
リン酸エステル(プライサーフA208S 第一工業製薬(株)製) 0.8部
メチルエチルケトン 42.9部
トルエン 42.9部
【0153】
(本発明103)
(インクシート103の作製)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を基材フィルムとして用いた。そのフィルム背面側に耐熱滑性層(乾膜時の膜厚1.0μm)を形成し、それ以外は試料101と同様に作製した。
【0154】
<耐熱滑性層組成液2>
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製) 13.6部
ポリイソシアネート硬化剤(タケネートD218 武田薬品工業(株)製) 0.6部
リン酸エステル(プライサーフA208S 第一工業製薬(株)製) 0.8部
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
【0155】
(受像シートの作成)
(比較例201)
(受像シート201の作製)
支持体として合成紙(ユポFPG200、厚さ200μm、商品名、ユポコーポレーション社製)を用い、この一方の面に下記組成の受容層を塗布した。受容層4.0g/mとなるように塗布を行い、乾燥は各層110℃で、30秒間行った。
【0156】
受容層用塗工液1
(組成)
ポリブチルアクリレート(Aldrich社製) 30部
ポリメチルメタクリレート(Aldrich社製) 70部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X−22−343) 3部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 KF−393) 3部
トルエン/メチルエチルケトン(1部/1部) 500部
(塗布量) 20ml/m
【0157】
(本発明202)
(受像シート202の作製)
受容層の塗工液を以下のものに変えた以外は、受像シート201と同様とした。
受容層用塗工液2
(組成)
ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 バイロン200) 100部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X−22−343) 3部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 KF−393) 3部
トルエン/メチルエチルケトン(1部/1部) 500部
【0158】
(本発明203)
(受像シート203の作製)
受容層の塗工液を以下のものに変えた以外は、受像シート201と同様とした。
受容層用塗工液3
(組成)
ポリカーボネート樹脂(General Electric社製 LEXAN−141) 30部
ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 バイロン200) 70部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X−22−343) 3部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 KF−393) 3部
塩化メチレン 500部
【0159】
(画像形成)
上記インクシートと、上記受像シートを用いて、熱転写型プリンターA(DPB1500 日本電産コパル(株)製)又は熱転写型プリンターB(特開平5−278247号公報の図6に記載のプリンター)により152mm×102mmサイズ画像の出力を行った。なお、プリンターAの搬送速度は73mm/秒であった。熱転写型プリンターBは、画像形成時の感熱転写受像シートの搬送速度を125mm/秒に設定してプリントを行った。この際、熱転写型プリンターAでプリントした時と同等の濃度階調が得られるようサーマルヘッドの発熱量を調節した。黒ベタ画像を連続10枚出力し、出力画像に融着やインク剥がれの有無を以下のランクで評価した。
5 融着やインク剥がれなどが見られずほとんどムラがない
4 若干のムラが見られるが、融着やインク剥がれは見られず実用上問題ない
3 融着やインク剥がれは見られないが、明らかなムラが見られ、実用上問題である
2 融着やインク剥がれがみられるが受像シートはプリンターから排出される
1 インクシートと受像シートが融着し、プリンターから排出されない
【0160】
また、皺の発生は、以下のランクで評価した。
○ 皺の発生が見られない
△ 若干の皺の発生が見られる
× 皺の発生が多く、実用上問題がある
【0161】
(耐光性試験)
上記画像試料に、370nmでの光透過率50%の紫外線カットフィルターおよび熱線カットフィルターを介してキセノン光(10万lxキセノン光照射器)を14日間照射した。シアン初期濃度1.0での曝露後の残存率を算出し、評価した。なお、濃度は分光光度計(グレタグマクベス(株)社 SpectroEye)を用いて反射濃度を求めた。
残存率(%)=[照射後の光学濃度/照射前の光学濃度]×100(%)
◎:平均残存率が80%以上
○:平均残存率が70%以上80%未満
△:平均残存率が60%以上70%未満
×:平均残存率が60%未満
【0162】
【表1】

【0163】
上記表1から、本発明のインクシートと受像シートの組み合わせが、融着等、耐光性、皺の点で優れており、しかも搬送速度が速い場合にこの効果が顕著であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の感熱転写記録に用いられる熱記録装置の説明図である。
【符号の説明】
【0165】
10 サーマルヘッド
11 発熱素子アレイ
14 記録紙(感熱転写受像シート)
15 インクフイルム(感熱転写シート)
25 プラテンドラム
26 クランプ部材
27 パルスモーター
28,29 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に熱転写可能な色材を含有する熱転写層を有し、他方の面に耐熱滑性層が形成されている熱転写シートと、
支持体上に、ポリエステルおよび/またはポリカーボネート系ポリマーを含む少なくとも1層の受容層を有する感熱転写受像シートとを、
該熱転写シートの熱転写層と該感熱転写受像シートの受容層とが接するよう重ねあわせ、サーマルヘッドから画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記耐熱滑性層が、2個以上のイソシアネート基を有する化合物とポリマーとの反応で得られたポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記耐熱滑性層の厚みが0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記熱転写シートに、下記一般式(7)又は(8)で表される少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【化1】

(一般式(7)中、R51およびR52は各々独立に置換基を表す。n8は0〜5の整数を表す。n9は0〜4の整数を表す。)
【化2】

(一般式(8)中、R61は置換基を表し、R62、R63およびR64は各々独立に水素原子または置換基を表す。n10は0〜4の整数を表す。)
【請求項5】
前記熱転写シートに、下記一般式(9)、(10)又は(11)のいずれかで表される少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【化3】

(一般式(9)中、R71およびR73は各々独立に水素原子または置換基を表す。R72およびR74は各々独立に置換基を表す。n11は0〜4の整数を表す。n12は0〜2の整数を表す。)
【化4】

(一般式(10)中、R81は水素原子または置換基を表す。R82およびR84は各々独立に置換基を表す。n13は0〜4の整数を表す。n14は0〜2の整数を表す。)
【化5】

(一般式(11)中、R91は水素原子または置換基を表す。R92は置換基を表す。R93およびR94は各々独立に水素原子または置換基を表す。n15は0〜2の整数を表す。Z1およびZ2は、どちら一方が=N−であり、他方が=C(R95)−を表す。Z3およびZ4は各々独立に=N−または=C(R95)−を表す。ここで、R95は水素原子または置換基を表す。)
【請求項6】
前記感熱転写シートに、下記一般式(12)又は(13)で表される少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【化6】

(一般式(12)中、R101およびR102は各々独立に置換基を表す。R103およびR104は各々独立に水素原子または置換基を表す。n16およびn17は各々独立に0〜4の整数を表す。)
【化7】

(一般式(13)中、R111およびR113は各々独立に水素原子または置換基を表す。R112およびR114は各々独立に置換基を表す。n18は0〜4の整数を表す。n19は0〜2の整数を表す。)
【請求項7】
画像形成時の前記感熱転写受像シートの搬送速度が125mm/秒以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−237631(P2007−237631A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65173(P2006−65173)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】