説明

慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無に関連する遺伝子、およびその利用

【課題】COPD(慢性閉塞性肺疾患)における急性気道感染症(急性増悪)易罹患性に関する遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域に存在するCOPDにおける急性気道感染症(急性増悪)易罹患性に関連する多型を指標とした、COPDにおいて急性増悪易罹患性か否かを予測判定する方法の提供。
【解決手段】COPD患者における急性気道感染症(急性増悪)易罹患性のリスクファクターである遺伝素因を核酸データベース検索から、感染症一般と関連があると考えられる免疫及び炎症と関わる94遺伝子周辺の200SNPを解析することにより、COPD患者における急性気道感染症(急性増悪)易罹患性が、これらのSNPから生じるCCL1の遺伝子の変換に起因するか否かを検証する。SNP rs2282691(ID:NCBI SNPリファレンス)のように多型部位の塩基種に変異が検出された場合COPD患者において急性増悪易罹患性であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPDと表記する。)における急性増悪(以下、AECOPDと表記することもある。)易罹患性の有無に関連する遺伝子、および、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNAに存在する、AECOPD易罹患性の有無に関連する多型に関する。また、該多型を利用したAECOPDを頻回に来すか否か、あるいはAECOPDの重症度(死亡率)を判定する方法に関する。さらに、AECOPD治療薬または予防薬のスクリーニング方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
COPDは、世界中の疾病罹患率および死亡率のなかでも高い位置を占めている。The global burden of human illnessの最近の概説において、COPDは致死率、および生活の質を低下させる疾病として第12位にあり、2020年までには致死率において第3位、また生活の質を低下させる慢性疾病として第5位に上昇すると予測されている(非特許文献1、2)。
【0003】
COPDの急性憎悪(AECOPD)はCOPD患者において一般的な病態悪化の原因(非特許文献3、4)でありまた最も頻度の高い死亡原因でもあり(非特許文献5、6)、医療資源にとっても莫大な負担である。AECOPDは、現在では個人にとっても社会にとっても重大な結果をもたらすものとして認識されている。生活の質に重点をおいた健康状態調査の評価によると、このような患者にとってこの疾患の悪い影響は、急性憎悪の頻度が高い群において低い群に比べて有意に高い。急性憎悪が病院での治療を受けるほどではなかったとしても同様の結果であることが証明されている(非特許文献7)。また、AECOPDの入院治療がCOPD治療にかかるコストの最も大きい部分でもある。AECOPDによる入院数は老齢人口の増加を反映して近年増加傾向であり、現在の特に冬期における入院ベット数の不足を招来せしめ、日本の医療システムを疲弊させる原因ともなっている。
【0004】
感染はCOPDにおける急性憎悪(AECOPD)の原因のほとんどを占める。AECOPDの原因のうち、ごく一部に肺性心を原因とするものがあるがまれである。従って、COPDにおける急性気道感染症は、AECOPDと実用上はほぼ同義であると捉えることができる。
【0005】
AECOPDは、その根底にある進展のメカニズムにおいて様々な要素からなる疾患と考えられ、そのなかでも次のような理由から、細菌やウィルス等の病原体に対する宿主の防御因子が反復性のAECOPDに重要な役割を果たしている事が示唆される。まず最初に、原因となる病原体に対する細胞性免疫反応及び液性免疫反応が患者によって多様であるであることがあげられる。このような細胞性免疫の反応性の強弱がAECOPDの発生と関連付けられている(非特許文献8、9)。第二に、COPD患者の25〜50%は下気道に慢性的に病原性細菌による細菌叢が常時形成されており、それは宿主の防御メカニズムが破綻している事を示す。COPD患者の下気道におけるこのような病原性細菌叢の存在はAECOPDの頻度と重篤度、およびその病態の表現形のいずれにも影響を持つ可能性が示唆されている(非特許文献10)。第三に、AECOPDの頻度と、痰中のIL−6、IL−8など(非特許文献11)のような炎症性サイトカイン量との間には相関があるが、AECOPDの期間を通じての炎症性マーカー量にはかなりの多様性があり、この事がAECOPDにおける炎症反応の程度の多様性を形成している事が示唆される(非特許文献11、12、13)。
【0006】
COPD患者のAECOPD発症のリスク管理の上で、AECOPDが発症してから変動するマーカーではなく、発症前にリスクを判定できるバイオマーカーの存在は非常に有用である。古典的なものとしては、年齢・BMI・肺機能(特に予測一秒量)等がAECOPDのリスクファクターとして従来より知られていた(非特許文献14)。また、誘発喀痰中のIL−6、IL−8などの炎症性サイトカインとある一定数の患者集団として見た場合のAECOPDの頻度との間に相関は認められるものの(非特許文献11)、サイトカインの個人のベースライン量にはかなりのバラツキがあり、個人のAECOPD発症のリスクを判定するバイオマーカーとして検査に用いることは困難である。
【0007】
前述の理由から、個人のAECOPD易罹患性の少なくとも一部は遺伝的なものであり、それがAECOPDの多様性という特徴に貢献している可能性が考えられ、従って、このような遺伝的なAECOPD易罹患性に関する遺伝子を検査することは、個別の患者の治療方針を決定する上で極めて有用であると考えられる。実際、いくつかの長期的なコホート研究はAECOPDの発症頻度が広いレンジを持つことを示している(非特許文献15、16、17)。急性憎悪の遺伝的な危険因子を持つ患者を予め判定することができれば、当該患者の疾患の発症進展や予後の予測をすることができ、治療の上で大変に有用である。発明者らは鋭意研究を重ね、COPDの急性憎悪(AECOPD)の新たな遺伝的な危険因子を同定した。
【0008】
発明者らが新たな遺伝的な危険因子として発見した遺伝子は、ケモカインCCモチーフリガンド1(CCL1:chemokine cc motif ligand 1)である。ケモカインは白血球走化性を持つ分子量8〜10kDaのサイトカインのグループであり、構造に基づいて4つのサブファミリーに分類される(非特許文献18、19)。ケモカインのサブファミリーは、炎症と免疫のメディエーター、特に免疫的防御の調節と免疫システムのハウスキーピングを含むファミリーを構成する(非特許文献18、19)。炎症性ケモカインは多くの組織細胞により産生される分泌タンパクであり、細菌の毒素やIL−1β、TNF-α、IFN-γなどの炎症性サイトカインに反応して白血球を遊走させる。その効果は局所的でありパラクリン、オートクリンのどちらの形式もある(非特許文献18、19)。白血球を遊走させる働きに加えて、免疫調節(T細胞の活性化と抗原提示機能の両方)にも中心的な役割を果たしており、抗原特異的ヘルパーT1(Th1)の増強、Th2の活性化、細胞分裂と様々なリンフォカインの放出の促進という役割も果している(非特許文献18、19)。
【0009】
ケモカインのうち、CCL11とCCL5はいずれも代表的な好酸球走化性因子であり、安定した軽症のCOPDにおけるAECOPDにおいて重要な役割を果たしているとの報告がある(非特許文献20、21)。病理学的には、COPDは、気道、実質、肺脈管構造のすべてに起きる慢性的な炎症とリモデリングと特徴づけられる(非特許文献22−25)。安定したCOPDでは、増加したCD8+Tリンパ球と単球、マクロファージによる気管粘膜の浸潤という特徴がある(非特許文献26−29)。しかし、軽症のCOPDの急性憎悪では、粘膜において好酸球の集積があり、これは気道上皮でも上皮下のリンパ球や単核球でも強く発現している2つの代表的な好酸球遊走因子である、Eotaxin(CCL11)とRANTES(CCL5)のアップレギュレーションによると報告されている(非特許文献20、21)。マイルドなCOPDの急性憎悪での気道炎症における、この“アレルギー性の”特性は重篤なCOPDの急性増悪における気道中の好中球数の増加に置換されると報告されている。
【0010】
また、CXCL5とCXCL8はいずれも代表的な好中球走化性因子であるが、中等症から重症なCOPDの急性増悪と関連しており、憎悪の特徴である気道中への好中球増多において中心的な役割を果たしていると報告されているが(非特許文献30)、CCL1とAECOPDとの関連、とりわけCOPD患者におけるAECOPD易罹患性との関連は全く知られていない。加えて、憎悪の頻度はCOPDの重篤度に比例して増加する(非特許文献31)。
【0011】
このように、他のケモカインと、気道粘膜の炎症等との関連についてはいくつかの報告があるが、発明者らが新たな遺伝的な危険因子として発見した遺伝子である、単球特異的な走化性因子として知られる遺伝子をコードしているCCL1(非特許文献32)がAECOPDの頻度または重篤度と関連するということは知られていない。
【非特許文献1】Murray CJL, et al. Science. 1996; 274:740-743.
【非特許文献2】Pauwels RA, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2001; 163: 1256-1276.
【非特許文献3】Peters DK et al., Natl Vital Stat Rep. 1998; 47: 1-100.
【非特許文献4】Higgins MW et al., In: Hensley MJ, Saunders NA, eds. Clinical epidemiology of chronic obstructive pulmonary disease. New York, Marcel Dekker, 1990, pp 23-43.
【非特許文献5】Connors AF Jr et al.,Am J Respir Crit Care Med. 1996;154:959-967.
【非特許文献6】Fuso L et al., Am J Med. 1995; 98: 272-277.
【非特許文献7】Seemungal TA et al., Am J Respir Crit Care Med. 1998; 157: 1418-1422.
【非特許文献8】Abe Y et al., Am J Respir Crit Care Med. 2002; 165: 967-971.
【非特許文献9】Bakri F et al.,J Infect Dis. 2002; 185: 632-640.
【非特許文献10】Patel IS et al.,Thorax. 2002; 57:759-764.
【非特許文献11】howmik A et al.,Thorax. 2000; 55: 114-120.
【非特許文献12】Roland M et al., Thorax. 2001; 56: 30-35.
【非特許文献13】Hill AT et al., Eur Respir J. 2000; 15: 886-890.
【非特許文献14】Schols AM et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998; 157: 1791-1797.
【非特許文献15】Seemungal TA et al., Am J Respir Crit Care Med. 2000; 161: 1608-1613.
【非特許文献16】Smith CB et al., Am Rev Respir Dis. 1980; 121: 225-232.
【非特許文献17】Ball P et al., QJM. 1995; 88: 61-68.
【非特許文献18】Baggiolini M et al., J Intern Med. 2001; 250: 91-104.
【非特許文献19】Teran LM et al.,Immunol Today. 2000; 21: 235-242.
【非特許文献20】Zhu J et al., Am J Respir Crit Care Med. 2001; 164: 109-116.
【非特許文献21】Bocchino V et al., Allergy. 2002; 57: 17-22.
【非特許文献22】Jeffery PK et al.,Am J Respir Crit Care Med. 2001; 164: S28-S38.
【非特許文献23】Saetta M et al., Am J Respir Crit Care Med. 2001; 163: 1304?1309.
【非特許文献24】Peinado VI et al., Am J Respir Crit Care Med. 1999; 159: 1605?1611.
【非特許文献25】Arao T et al., J Nucl Med. 2003; 44: 1747-1754.
【非特許文献26】O'Shaughnessy T et al., Am J Respir Crit Care Med. 1997; 155: 852?857.
【非特許文献27】Saetta M et al., Am Rev Respir Dis. 1993; 147: 301?306.
【非特許文献28】Lams BE et al., Eur Respir J. 2000; 15: 512?516.
【非特許文献29】Jeffery PK et al., Chest. 2000; 117: 251s?260s.
【非特許文献30】Qiu Y et al., Am J Respir Crit Care Med. 2003; 168: 968-975.
【非特許文献31】Burge PS et al., BMJ. 2000; 320: 1297-1303.
【非特許文献32】Miiller MD et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1992; 89: 2950-2954.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、COPDにおける急性増悪(AECOPD)易罹患性に関連する遺伝子、および、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域に存在するAECOPD易罹患性に関連する多型を見出すことにある。
【0013】
さらに、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域に存在するAECOPD易罹患性に関連する多型を指標とした、AECOPD易罹患性か否かを予測判定する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、COPD患者における急性増悪(AECOPD)易罹患性の原因となる遺伝子を探索するために、276人の男性COPD患者からのゲノムDNAを使用し、免疫・炎症に関連する94遺伝子の200個の一塩基多型(SNP:Single nucleotide polymorphism)を解析することにより、AECOPD易罹患性が、ケモカインCCモチーフリガンド1(CCL1:chemokine cc motif ligand 1)と関連することを発見した。 即ち、発明者らは、CCL1遺伝子上のSNP rs2282691がAECOPD易罹患性の発症頻度、または、感染症の重篤度(死亡率)に関連している感受性SNPであり、COPD患者における感染症易罹患性がCCL1遺伝子の多型に起因することを見出し、これにより本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、より具体的には以下の(1)〜(19)を提供するものである。
(1)被検者について、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定する方法。
(2)変異が、該遺伝子の発現量の低下もたらすものであるときに慢性閉塞性肺疾患において急性増悪易罹患性であると判定する、請求項1に記載の方法。
(3)変異が一塩基多型変異である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
(4)以下の工程(a)および(b)を含む、被検者について、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定する方法。
(a)被検者におけるCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定する工程。
(b)(a)で決定された多型部位の塩基種において、変異が検出された場合に、被検者は慢性閉塞性肺疾患において急性増悪易罹患性であると判定する工程。
(5)変異が、該遺伝子の発現量の低下をもたらすものであるときに慢性閉塞性肺疾患において急性増悪易罹患性であると判定する、請求項4に記載の方法。
(6)多型部位が、CCL1遺伝子領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位である、請求項4または5に記載の方法。
(7)塩基種の変異が、CCL1遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の塩基種が、TからAに変異したものである、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
(8)被検者由来の生体試料を被検試料として検査に供する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
(9)慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性が、慢性閉塞性肺疾患における急性憎悪の頻度である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
(10)慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性が、慢性閉塞性肺疾患における急性憎悪の重篤度である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
(11)慢性閉塞性肺疾患における急性増悪が、慢性閉塞性肺疾患における急性気道感染症である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
(12)請求項7に記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定するための薬剤。
(13)請求項7に記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定するための薬剤。
(14)請求項7に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定するための薬剤。
(15)慢性閉塞性肺疾患における急性増悪が、慢性閉塞性肺疾患における急性気道感染症である、請求項12から14のいずれかに記載の薬剤。
(16)CCL1遺伝子の発現量もしくは該遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を活性化する物質を選択することを特徴とする、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(17)以下の(a)〜(c)の工程を含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(a)CCL1遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる工程
(b)該CCL1遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、該発現レベルを上昇させる物質を選択する工程
(18)以下の(a)〜(c)の工程を含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(a)CCL1遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験物質を接触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、該発現レベルを上昇させる物質を選択する工程
(19)以下の(a)〜(c)の工程を含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(a)C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチド、およびC/EBPβタンパク質を被験物質と接触させる工程
(b)前記ポリヌクレオチドと転写因子との結合活性を測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記結合活性を増強させる物質を選択する工程
(20)慢性閉塞性肺疾患における急性増悪が、急性気道感染症である、請求項16から19に記載のスクリーニング方法。
(21)CCL1遺伝子の発現量もしくは該遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を活性化する物質を有効成分として含有する、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪予防薬または治療薬。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、COPDにおける急性増悪(AECOPD)に関連する遺伝子、および、該遺伝子上または該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することにより、AECOPDに罹患する頻度および重篤度(本明細書ではAECOPD易罹患性という)を判定する方法が提供された。本発明の遺伝子上または該遺伝子の近傍DNA領域における多型を検出することで、当該COPD患者においてその後AECOPDに罹患し易いか否か、および、より重篤な気道感染症を来たすか否かが予測可能となる。本発明によりCOPDにおける気道感染症に対する予防や治療における、より効率的な戦略(いわゆるオーダーメイド医療)を立てることが可能になる。具体的にはAECOPD易罹患性を診断することにより、AECOPD易罹患性と判定された患者に対しては、インフルエンザワクチンに加え肺炎球菌ワクチンの積極的接種や、去痰薬の処方、予防的な抗生物質の処方などの治療方針を決める際の一助となり、さらにAECOPDを予防するような新たな治療薬の開発にもつながる可能性があり大いに期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者らによって、COPDにおける急性増悪(AECOPD)易罹患性に関連する遺伝子および多型が同定された。AECOPD易罹患性であるCOPD患者においては、有意にこの遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域において変異が見出されることから、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における変異の有無を調べることにより、被検者のAECOPD易罹患性の診断が可能である。
【0018】
本発明において、「COPDにおける急性増悪(AECOPD)易罹患性」とは、COPD患者において急性憎悪(AECOPD)に罹患する頻度、および、感染症による致死率が高いこと示す。AECOPDとは、通常に比較して、喀痰量の増加・色調の変化・粘度の変化に加えて、呼吸困難感の増加、咳嗽の増加、発熱、全身状態の悪化などで総合的に判断されるCOPDの憎悪状態をいう。
【0019】
本発明者らによって、AECOPDと関連することが見出された遺伝子は、CCL1遺伝子(GenBankアクセッション番号:NM_002981)である。
本遺伝子の塩基配列、および本遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に関する情報は、上記のGenBankのアクセッション番号から、容易に取得することが可能である。また当業者においては、上記の遺伝子表記(遺伝子名)を基に、公共の遺伝子データベースあるいは文献データベース等から遺伝子の塩基配列、および該遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に関する情報を容易に入手することが可能である。
【0020】
上記の知見に基づき、本発明は、被検者について、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、AECOPD易罹患性を判定する方法を提供する。
【0021】
本発明において「COPDにおける急性増悪(AECOPD)易罹患性を判定」とは、被検者のCOPD患者において急性気道感染症に2年間に2回以上罹患する可能性が高いか低いか、および、急性気道感染症に罹患し重篤な感染症に進展し死亡する可能性が高いか低いかを判定するための検査が含まれる。本発明の方法においては、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出された場合に、AECOPD易罹患性である、あるいはAECOPD易罹患性の素因を有すると判定される。
一方、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出されない場合に、被検者はAECOPDに対して抵抗性である、あるいは抵抗性の素因を有すると判定される。
【0022】
本発明の方法により、COPDに羅患していない被検者であっても、COPDに羅患した場合のAECOPD易罹患性を判定することができる。また既にCOPDに羅患している被検者の場合のAECOPD易罹患性を判定することにより、より効果的または効率的な治療戦略(いわゆるオーダーメイド医療)を立てることができる。具体的には、AECOPD易罹患性であると判定された患者には、インフルエンザワクチンに加え肺炎球菌ワクチンの積極的接種や、去痰薬の処方、予防的な抗生物質の処方などの治療方針の決定等に利用する事ができる。
【0023】
なお、本明細書で用いられる「治療」とは、通常、薬理学的なおよび/または生理学的な効果を得ることを意味する。効果とは、疾患や症状を完全にあるいは部分的に妨げる点で予防的であってもよく、疾患の症状を完全にあるいは部分的に治療する点で治療的であっても良い。本明細書における「治療」とは、哺乳類、特にヒトにおける疾患の治療すべてを含んでいる。そしてさらに、疾患の素因があるが未だ発病していると診断されていない被検者の発病の予防、疾患の進行を抑制すること、または疾患を軽減させることなどもこの「治療」に含まれる。
【0024】
本発明のCCL1遺伝子のDNA配列、および該遺伝子の近傍DNA配列としては、具体的には、例えば配列番号:1に記載の配列が挙げられる。配列番号:1に記載の配列は、mapping info(NCBI build34)の結果に基づいて作製した配列である。本発明における「遺伝子の近傍DNA領域」とは、通常、該遺伝子の近傍の染色体上の領域を指す。近傍とは、特に制限されるものではないが、通常、本発明の多型部位を含むDNA領域である。
【0025】
上記本発明の検査方法における「変異」の位置は、予め規定することは困難であるが、通常、上記遺伝子のORF中、あるいは上記遺伝子の発現を制御する領域(例えば、プロモーター領域、エンハンサー領域等)中に存在するが、これらに限定されるものではない。また、この「変異」とは、上記遺伝子の発現量を変化させる、mRNAの安定性等の性質を変化させる、あるいは上記遺伝子によってコードされるタンパク質の有する活性を変化させるような変異であることが多いが、特に制限されない。本発明の変異としては、例えば、塩基の付加、欠失、置換、挿入変異等を挙げることができる。
【0026】
本発明者らは、被検者における本発明のCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域において、AECOPD易罹患性に対して有意に関連する多型変異を見出すことに成功した。従って、本発明のCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域上の多型部位について変異の有無を指標とする(塩基種を決定する)ことにより、AECOPD易罹患性か否かの検査を行なうことが可能である。
【0027】
なお、上記の「遺伝子の近傍DNA領域」とは、通常該遺伝子の近傍の染色体上の領域を指す。近傍とは特に制限されるものではないが、通常、本発明の多型部位を含むDNA領域であり、好ましくは多型部位または多型部位を含むLDブロック(連鎖不平衡ブロック)の末端部位から10kb以内の領域を指す。
前後10kbすなわち20kb以内の範囲にある多型は、Gabrielらの報告の通り、連鎖している可能性が高い(Gabriel SB, Schaffner SF, Nguyen H et al. The structure of haplotype blocks in the human genome. Science 296, 2225-9. 2002)。
【0028】
CCL1遺伝子および該遺伝子の近傍のDNA配列の一例を配列番号:1に示す。
【0029】
本発明の好ましい態様においては、本発明のCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型変異(多型部位における塩基種)を検出することを特徴とする、AECOPDに易罹患性か否かを検査する方法である。
【0030】
多型とは、遺伝学的には、人口中1%以上の頻度で存在している1遺伝子におけるある塩基の変化と一般的に定義されるが、本発明における「多型」は、この定義に制限されない。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型、一から数十塩基(時には数千塩基)が欠失あるいは挿入している多型等が挙げられる。さらに、多型部位の数も、1個に限定されず、複数個の多型であってもよい。
【0031】
また本発明は、被検者について、本発明のCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定することを特徴とする、AECOPD易罹患性を検査する方法を提供する。
本発明の方法において決定される「多型部位」は、本発明のCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域に存在する多型であれば、特に制限されない。具体的には、AECOPD罹患性の検査方法に利用可能な多型部位として、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位を挙げることができる。(なお、本明細書においては、これらの多型部位を単に『本発明の多型部位』と記載する場合がある)。
【0032】
略語の定義:NCBI=National Center for Biotechnology Information;
CCL1=ケモカインCCモチーフリガンド1
【0033】
また、当業者においては掲載されたdbSNPデータベースのrs番号をもとに、当該部位についての塩基種の情報を適宜取得することができる。また、NCBI SNPリファレンス欄の記載内容は、先頭にrsが付くものはdbSNPデータベースの登録IDのうちNCBIにより一配列に一意に定まるIDを付与されたものである。また、dbSNPデータベースはウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/index.html)に公開されており、NCBI SNPリファレンス欄に記載された登録ID番号を用いてウェブサイト上で検索することにより、塩基配列におけるSNPsの詳細な情報(例えば、染色体上の位置、多型部位の塩基の種類、前後の配列等)が入手できる。これらの情報を用いた場合、当業者においては、本発明に記載する検査を容易に行うことができる。CCL1多型部位の情報について、一例として配列表1の10001位の多型周辺10kbに存在する多型部位に関する情報を表1A〜Cに示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1A〜Cに示した多型部位の塩基種は配列表に示した配列に対して相補鎖側にある塩基種を示している場合があるが、本明細書において記載された前後配列、あるいは、dbSNPおよびJSNPデータベースにて公開される前後配列を用いれば異同を確認することは当業者にとって容易であり、検査を行うにあたってはプラス鎖とマイナス鎖のどちらを調べても必然的にもう一方の結果を決定することができる。なお、現在ヒトゲノム配列については、ほぼ最終版といわれているヒトゲノム国際プロジェクトbuild35が発表されているが、本明細書に記した配列等はヒトゲノム国際プロジェクトbuild34の結果に基づいている。ただし、当業者においては本明細書に添付した配列表の情報等から容易にbuild35における情報に置き換えることができる。
【0036】
また、当業者においては、通常、本明細書において開示された多型に付与された登録ID番号、例えばdbSNPデータベースにおけるrs番号によって、本発明の多型部位の実際のゲノム上の位置および前後の配列等を容易に知ることができる。これによって、知ることができない場合であっても、当業者においては、配列番号:1で示される塩基配列および多型部位等に関する情報から、適宜、該多型部位に相当する実際のゲノム上の位置を知ることは容易である。例えば、公開されているゲノムデータベース等と照会することにより、本発明の多型部位のゲノム上の位置を知ることができる。即ち、配列表に記載の塩基配列とゲノム上の実際の塩基配列との間に若干の塩基配列の相違がみられた場合であっても、配列表に記載の塩基配列を基にゲノム配列と相同性検索等を行うことにより、本発明の多型部位について、実際のゲノム上の位置を正確に知ることが可能である。また、ゲノム上の位置が特定できない場合でも、本明細書に記載の配列表および多型部位の情報から本発明に記載する検査を行うことは容易である。
【0037】
また、ゲノムDNAは、通常、互いに相補的な二本鎖DNA構造を有している。従って、本明細書においては、便宜的に一方の鎖におけるDNA配列を示した場合であっても、当然の如く、当該配列(塩基)に相補的な配列も開示したものと解釈される。当業者にとって、一方のDNA配列(塩基)が判れば、該配列(塩基)に相補的な配列(塩基)は自明である。
【0038】
本発明のCOPDにおけるAECOPD易罹患性の検査方法においては、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位について塩基種の決定を行なうことが好ましい。
【0039】
また本発明の好ましい態様においては、本発明のCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の塩基種がA(ヘテロ及びホモ)である場合に、AECOPD易罹患性であると判定される。
【0040】
本発明においては、上記多型部位以外であっても、該多型部位とその周辺のDNA領域は強く連鎖しているものと考えられることから、上記多型部位の近傍の多型部位について塩基種を決定することによっても、COPDにおける感染症易罹患性の検査が可能である。即ち、多型部位の塩基種が上記の塩基種であるような、AECOPDを頻発する患者、または、死亡に至るような重篤な感染症を発症した患者を含むヒトの小集団について、この「近傍の多型部位」(例えば、上記表1に記載の多型部位)における塩基種を予め決定する。
【0041】
次いで、この「近傍の多型部位」について被検者における塩基種を決定し、予め決定された前記塩基種と比較することにより、AECOPD易罹患性の検査を行うことができる。予め決定された塩基種と同一の塩基種である場合に、被検者はAECOPD易罹患性であると判定される。本発明の検査方法により、COPD患者がAECOPD易罹患性か否かを判定することができ、治療方針の決定や薬剤投与量の決定等に利用することができる。
【0042】
CCL1遺伝子上の配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位の塩基種がAであるAECOPD易罹患性の患者を含むヒトの小集団について、近傍の多型部位、例えば10043位の多型部位の塩基種を決定する。この部位の塩基種が上記のAECOPD易罹患性であることが判明している人においてGの頻度が、上記COPDにおいてAECOPD易罹患性ではないことが判明している人に比べ高かった場合、被検者について10043位の多型部位の塩基種を調べ、この部位の塩基種が同様にGであった場合には、被検者はCOPDにおいて感染症易罹患性であると判定される。
【0043】
以上のように、本発明により、AECOPD易罹患性に関連する遺伝子上の領域が明らかになったことにより、当業者に過度の負担を強いることなく、上記COPDにおいてAECOPD易罹患性か否かについて検査を行うことができる。
【0044】
本発明の多型部位における塩基種の決定は、当業者においては種々の方法によって行うことができる。一例を示せば、本発明の多型部位を含むDNAの塩基配列を直接決定することによって行うことができる。
【0045】
本発明の検査方法に供する被検試料は、通常、予め被検者から取得された生体試料であることが好ましい。生体試料としては、例えばDNA試料を挙げることができる。本発明におけるDNA試料は、例えば被検者の血液、皮膚、口腔粘膜、手術により採取あるいは切除した組織または細胞、検査等の目的で採取された体液等から抽出した染色体DNA、あるいはRNAを基に調製することができる。
即ち本発明は、通常、被検者由来の生体試料(予め被検者から取得された生体試料)を被検試料として検査に供する方法である。
【0046】
当業者においては、公知の技術を用いて、適宜、生体試料の調製を行うことができる。例えば、DNA試料は、本発明の多型部位を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、染色体DNA、あるいはRNAを鋳型としたPCR等によって調製することができる。
本方法においては、次いで、単離したDNAの塩基配列を決定する。単離したDNAの塩基配列の決定は、当業者においては、DNAシークエンサー等を用いて容易に実施することができる。
【0047】
本発明の多型部位は、通常、その部位の塩基種のバリエーションが既に明らかになっている。本発明における「塩基種の決定」とは、必ずしもその多型部位についてA、G、T、Cのいずれかの塩基種であるかを判別することを意味するものではない。例えば、ある多型部位について塩基種のバリエーションがAまたはGであることが判明している場合には、その部位の塩基種が「Aでない」または「Gでない」ことが判明すれば充分である。
【0048】
予め塩基のバリエーションが明らかにされている多型部位について、その塩基種を決定するための様々な方法が公知である。本発明の塩基種の決定方法は、特に限定されない。例えば、PCR法を応用した解析方法として、TaqMan PCR法、AcycloPrime法、およびMALDI-TOF/MS法等が実用化されている。またPCRに依存しない塩基種の決定法としてInvader法やRCA法が知られている。更にDNAアレイを使って塩基種を決定することもできる。以下に一部の方法について簡単に述べる。ここに述べた方法は、いずれも本発明における多型部位の塩基種の決定に応用できるが、方法を限定するものではない。
【0049】
[TaqMan PCR法]
TaqMan PCR法の原理は次のとおりである。TaqMan PCR法は、アリルを含む領域を増幅することができるプライマーセットと、TaqManプローブを利用した解析方法である。TaqManプローブは、このプライマーセットによって増幅されるアリルを含む領域にハイブリダイズするように設計される。
【0050】
TaqManプローブのTmに近い条件で標的塩基配列にハイブリダイズさせれば、1塩基の相違によってTaqManプローブのハイブリダイズ効率は著しく低下する。TaqManプローブの存在下でPCR法を行うと、プライマーからの伸長反応は、いずれハイブリダイズしたTaqManプローブに到達する。このときDNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性によって、TaqManプローブはその5'末端から分解される。TaqManプローブをレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、TaqManプローブの分解を、蛍光シグナルの変化として追跡することができる。つまり、TaqManプローブの分解が起きれば、レポーター色素が遊離してクエンチャーとの距離が離れることによって蛍光シグナルが生成する。1塩基の相違のためにTaqManプローブのハイブリダイズが低下すればTaqManプローブの分解が進まず蛍光シグナルは生成されない。
【0051】
多型に対応するTaqManプローブをデザインし、更に各プローブの分解によって異なるシグナルが生成されるようにすれば、同時に塩基種の判定を行うこともできる。例えば、レポーター色素として、あるアリルのアリルAのTaqManプローブに6-carboxy-fluorescein(FAM)を、アリルBのプローブにVICを用いる。プローブが分解されない状態では、クエンチャーによってレポーター色素の蛍光シグナル生成は抑制されている。各プローブが対応するアリルにハイブリダイズすれば、ハイブリダイズに応じた蛍光シグナルが観察される。すなわち、FAMまたはVICのいずれかのシグナルが他方よりも強い場合には、アリルAまたはアリルBのホモであることが判明する。他方、アリルをヘテロで有する場合には、両者のシグナルがほぼ同じレベルで検出されることになる。TaqMan PCR法の利用によって、ゲル上での分離のような時間のかかる工程無しで、ゲノムを解析対象としてPCRと塩基種の決定を同時に行うことができる。そのため、TaqMan PCR法は、多くの被検者についての塩基種を決定できる方法として有用である。
【0052】
[AcycloPrime法]
PCR法を利用した塩基種を決定する方法として、AcycloPrime法も実用化されている。AcycloPrime法では、ゲノム増幅用のプライマー1組と、多型検出用の1つのプライマーを用いる。まず、ゲノムの多型部位を含む領域をPCRで増幅する。この工程は、通常のゲノムPCRと同じである。次に、得られたPCR産物に対して、SNPs検出用のプライマーをアニールさせ、伸長反応を行う。SNPs検出用のプライマーは、検出対象となっている多型部位に隣接する領域にアニールするようにデザインされている。
このとき、伸長反応のためのヌクレオチド基質として、蛍光偏光色素でラベルし、かつ3'-OHをブロックしたヌクレオチド誘導体(ターミネータ)を用いる。その結果、多型部位に相当する位置の塩基に相補的な塩基が1塩基だけ取りこまれて伸長反応が停止する。ヌクレオチド誘導体のプライマーへの取りこみは、分子量の増大による蛍光偏光(Fluorescence polarization;FP)の増加によって検出することができる。蛍光偏光色素に波長の異なる2種類のラベルを用いれば、特定のSNPsが2種類の塩基のうちのいずれであるのかを特定することができる。蛍光偏光のレベルは定量することができるので、1度の解析でアリルがホモかヘテロかを判定することもできる。
【0053】
[MALDI-TOF/MS法]
PCR産物をMALDI-TOF/MSで解析することによって塩基種の決定を行うこともできる。MALDI-TOF/MSは、分子量をきわめて正確に知ることができるため、タンパク質のアミノ酸配列や、DNAの塩基配列のわずかな相違を明瞭に識別することができる解析手法として様々な分野で利用されている。MALDI-TOF/MSによる塩基種の決定のためには、まず解析対象であるアリルを含む領域をPCRで増幅する。次いで増幅産物を単離してMALDI-TOF/MSによってその分子量を測定する。アリルの塩基配列は予めわかっているので、分子量に基づいて増幅産物の塩基配列は一義的に決定される。
MALDI-TOF/MSを利用した塩基種の決定には、PCR産物の分離工程などが必要となる。しかし標識プライマーや標識プローブを使わないで、正確な塩基種の決定が期待できる。また複数の場所の多型の同時検出にも応用することができる。
【0054】
[IIs型制限酵素を利用したSNPs特異的な標識方法]
PCR法を利用した更に高速な塩基種の決定が可能な方法も報告されている。例えば、IIs型制限酵素を利用して多型部位の塩基種の決定が行われている。この方法においては、PCRにあたり、IIs型制限酵素の認識配列を有するプライマーが用いられる。遺伝子組み換えに利用される一般的な制限酵素(II型)は、特定の塩基配列を認識して、その塩基配列中の特定部位を切断する。これに対してIIs型の制限酵素は、特定の塩基配列を認識して、認識塩基配列から離れた部位を切断する。酵素によって、認識配列と切断個所の間の塩基数は決まっている。従って、この塩基数の分だけ離れた位置にIIs型制限酵素の認識配列を含むプライマーがアニールするようにすれば、IIs型制限酵素によってちょうど多型部位で増幅産物を切断することができる。
【0055】
IIs型制限酵素で切断された増幅産物の末端には、SNPsの塩基を含む付着末端(conhesive end)が形成される。ここで、増幅産物の付着末端に対応する塩基配列からなるアダプターをライゲーションする。アダプターは、多型変異に対応する塩基を含む異なる塩基配列からなり、それぞれ異なる蛍光色素で標識しておくことができる。最終的に、増幅産物は多型部位の塩基に対応する蛍光色素で標識される。
【0056】
前記IIs型制限酵素認識配列を含むプライマーに、捕捉プライマー(capture primer)を組み合わせてPCR法を行えば、増幅産物は蛍光標識されるとともに、捕捉プライマーを利用して固相化することができる。例えばビオチン標識プライマーを捕捉プライマーとして用いれば、増幅産物はアビジン結合ビーズに捕捉することができる。こうして捕捉された増幅産物の蛍光色素を追跡することにより、塩基種を決定することができる。
【0057】
[磁気蛍光ビーズを使った多型部位における塩基種の決定]
複数のアリルを単一の反応系で並行して解析することができる技術も公知である。複数のアリルを並行して解析することは、多重化と呼ばれている。一般に蛍光シグナルを利用したタイピング方法では、多重化のために異なる蛍光波長を有する蛍光成分が必要である。しかし実際の解析に利用することができる蛍光成分は、それほど多くない。これに対して、樹脂等に複数種の蛍光成分を混合した場合には、限られた種類の蛍光成分であっても、相互に識別可能な多様な蛍光シグナルを得ることができる。更に、樹脂中に磁気で吸着される成分を加えれば蛍光を発するとともに、磁気によって分離可能なビーズとすることができる。このような磁気蛍光ビーズを利用した、多重化多型タイピングが考え出された(バイオサイエンスとバイオインダストリー, Vol.60 No.12, 821-824)。
【0058】
磁気蛍光ビーズを利用した多重化多型タイピングにおいては、各アリルの多型部位に相補的な塩基を末端に有するプローブが磁気蛍光ビーズに固定化される。各アリルにそれぞれ固有の蛍光シグナルを有する磁気蛍光ビーズが対応するように、両者は組み合わせられる。一方、磁気蛍光ビーズに固定されたプローブが相補配列にハイブリダイズしたときに、当該アリル上で隣接する領域に相補的な塩基配列を有する蛍光標識オリゴDNAを調製する。
【0059】
アリルを含む領域を非対称PCRによって増幅し、上記の磁気蛍光ビーズ固定化プローブと蛍光標識オリゴDNAをハイブリダイズさせ、更に両者をライゲーションする。磁気蛍光ビーズ固定化プローブの末端が、多型部位の塩基に相補的な塩基配列であった場合には効率的にライゲーションされる。逆にもしも多型のために末端の塩基が異なれば、両者のライゲーション効率は低下する。その結果、各磁気蛍光ビーズには、試料が当該磁気蛍光ビーズに相補的な塩基種であった場合に限り、蛍光標識オリゴDNAが結合する。
【0060】
磁気によって磁気蛍光ビーズを回収し、更に各磁気蛍光ビーズ上の蛍光標識オリゴDNAの存在を検出することにより、塩基種が決定される。磁気蛍光ビーズは、フローサイトメーターでビーズ毎に蛍光シグナルを解析できるので、多種類の磁気蛍光ビーズが混合されていてもシグナルの分離は容易である。つまり、多種類の多型部位について、単一の反応容器で並行して解析する「多重化」が達成される。
【0061】
[Invader法]
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法も実用化されている。例えば、Invader法では、アリルプローブ、インベーダープローブ、およびFRETプローブの3種類のオリゴヌクレオチドと、cleavaseと呼ばれる特殊なヌクレアーゼのみで、塩基種の決定を実現している。これらのプローブのうち標識が必要なのはFRETプローブのみである。
【0062】
アリルプローブは、検出すべきアリルに隣接する領域にハイブリダイズするようにデザインされる。アリルプローブの5'側には、ハイブリダイズに無関係な塩基配列からなるフラップが連結されている。アリルプローブは多型部位の3'側にハイブリダイズし、多型部位の上でフラップに連結する構造を有する。
【0063】
一方インベーダープローブは、多型部位の5'側にハイブリダイズする塩基配列からなっている。インベーダープローブの塩基配列は、ハイブリダイズによって3'末端が多型部位に相当するようにデザインされている。インベーダープローブにおける多型部位に相当する位置の塩基は任意で良い。つまり、多型部位を挟んでインベーダープローブとアリルプローブとが隣接してハイブリダイズするように両者の塩基配列はデザインされている。
【0064】
多型部位がアリルプローブの塩基配列に相補的な塩基であった場合には、インベーダープローブとアリルプローブの両者がアリルにハイブリダイズすると、アリルプローブの多型部位に相当する塩基にインベーダープローブが侵入(invasion)した構造が形成される。cleavaseは、このようにして形成された侵入構造を形成したオリゴヌクレオチドのうち、侵入された側の鎖を切断する。切断は侵入構造の上で起きるので、結果としてアリルプローブのフラップが切り離されることになる。一方、もしも多型部位の塩基がアリルプローブの塩基に相補的でなかった場合には、多型部位におけるインベーダープローブとアリルプローブの競合は無く、侵入構造は形成されない。したがってcleavaseによるフラップの切断が起こらない。
【0065】
FRETプローブは、こうして切り離されたフラップを検出するためのプローブである。FRETプローブは5'末端側に自己相補配列を有し、3'末端側に1本鎖部分が配置されたヘアピンループを構成している。FRETプローブの3'末端側に配置された1本鎖部分は、フラップに相補的な塩基配列からなっていて、ここにフラップがハイブリダイズすることができる。フラップがFRETプローブにハイブリダイズすると、FRETプローブの自己相補配列の5'末端部分にフラップの3'末端が侵入した構造が形成されるように両者の塩基配列がデザインされている。cleavaseは侵入構造を認識して切断する。FRETプローブのcleavaseによって切断される部分を挟んで、TaqMan PCRと同様のレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、FRETプローブの切断を蛍光シグナルの変化として検知することができる。
【0066】
なお、理論的には、フラップは切断されない状態でもFRETプローブにハイブリダイズするはずである。しかし実際には、切断されたフラップとアリルプローブの状態で存在しているフラップとでは、FRETに対する結合効率に大きな差がある。そのため、FRETプローブを利用して、切断されたフラップを特異的に検出することは可能である。
【0067】
Invader法に基づいて塩基種を決定するためには、アリルAとアリルBのそれぞれに相補的な塩基配列を含む、2種類のアリルプローブを用意すれば良い。このとき両者のフラップの塩基配列は異なる塩基配列とする。フラップを検出するためのFRETプローブも2種類を用意し、それぞれのレポーター色素を識別可能なものとしておけば、TaqMan PCR法と同様の考え方によって、塩基種を決定することができる。
【0068】
Invader法の利点は、標識の必要なオリゴヌクレオチドがFRETプローブのみであることである。FRETプローブは検出対象の塩基配列とは無関係に、同一のオリゴヌクレオチドを利用することができる。従って、大量生産が可能である。一方アリルプローブとインベーダープローブは標識する必要が無いので、結局、ジェノタイピングのための試薬を安価に製造することができる。
【0069】
[RCA法]
PCR法に依存しない塩基種の決定方法として、RCA法を挙げることができる。鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが、環状の1本鎖DNAを鋳型として、長い相補鎖を合成する反応に基づくDNAの増幅方法が、Rolling Circle Amplification(RCA)法である(Lizardri PM et al.,Nature Genetics 19, 225, 1998)。RCA法においては、環状DNAにアニールして相補鎖合成を開始するプライマーと、このプライマーによって生成する長い相補鎖にアニールする第2のプライマーを利用して、増幅反応を構成している。
【0070】
RCA法には、鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが利用されている。そのため、相補鎖合成によって2本鎖となった部分は、より5'側にアニールした別のプライマーから開始した相補鎖合成反応によって置換される。例えば、環状DNAを鋳型とする相補鎖合成反応は、1周分では終了しない。先に合成した相補鎖を置換しながら相補鎖合成は継続し、長い1本鎖DNAが生成される。一方、環状DNAを鋳型として生成した長い1本鎖DNAには、第2のプライマーがアニールして相補鎖合成が開始する。RCA法において生成される1本鎖DNAは、環状のDNAを鋳型としていることから、その塩基配列は同じ塩基配列の繰り返しである。従って、長い1本鎖の連続的な生成は、第2のプライマーの連続的なアニールをもたらす。その結果、変性工程を経ることなく、プライマーがアニールすることができる1本鎖部分が連続的に生成される。こうして、DNAの増幅が達成される。
【0071】
RCA法に必要な環状1本鎖DNAが多型部位の塩基種に応じて生成されれば、RCA法を利用して塩基種の決定をすることができる。そのために、直鎖状で1本鎖のパドロックプローブが利用される。パドロックプローブは、5'末端と3'末端に検出すべき多型部位の両側に相補的な塩基配列を有している。これらの塩基配列は、バックボーンと呼ばれる特殊な塩基配列からなる部分で連結されている。多型部位がパドロックプローブの末端に相補的な塩基配列であれば、アリルにハイブリダイズしたパドロックプローブの末端をDNAリガーゼによってライゲーションすることができる。その結果、直鎖状のパドロックプローブが環状化され、RCA法の反応がトリガーされる。DNAリガーゼの反応は、ライゲーションすべき末端部分が完全に相補的でない場合には反応効率が著しく低下する。従って、ライゲーションの有無をRCA法で確認することによって、多型部位の塩基種の決定が可能である。
【0072】
RCA法は、DNAを増幅することはできるが、そのままではシグナルを生成しない。また増幅の有無のみを指標とするのでは、アリル毎に反応を行わなければ、通常、塩基種を決定することができない。これらの点を塩基種の決定のために改良した方法が公知である。例えば、モレキュラービーコンを利用して、RCA法に基づいて1チューブで塩基種の決定を行うことができる。モレキュラービーコンは、TaqMan法と同様に、蛍光色素とクエンチャーを利用したシグナル生成用プローブである。モレキュラービーコンの5'末端と3'末端は相補的な塩基配列で構成されており、単独ではヘアピン構造を形成する。両端付近を蛍光色素とクエンチャーで標識しておけば、ヘアピン構造を形成している状態では蛍光シグナルが検出できない。モレキュラービーコンの一部を、RCA法の増幅産物に相補的な塩基配列としておけば、モレキュラービーコンはRCA法の増幅産物にハイブリダイズする。ハイブリダイズによってヘアピン構造が解消されるため、蛍光シグナルが生成される。
【0073】
モレキュラービーコンの利点は、パドロックプローブのバックボーン部分の塩基配列を利用することによって、検出対象とは無関係にモレキュラービーコンの塩基配列を共通にできる点である。アリル毎にバックボーンの塩基配列を変え、蛍光波長が異なる2種類のモレキュラービーコンを組み合わせれば、1チューブで塩基種の決定が可能である。蛍光標識プローブの合成コストは高いので、測定対象に関わらず共通のプローブを利用できることは、経済的なメリットである。
【0074】
これらの方法はいずれも多量のサンプルを高速にジェノタイピングするために開発された方法である。MALDI-TOF/MSを除けば、通常、いずれの方法にも何らかの形で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼らない塩基種決定法も古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。
【0075】
RFLPは、制限酵素の認識部位の変異、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内における塩基の挿入または欠失が、制限酵素処理後に生じる断片の大きさの変化として検出できることを利用している。検出対象となる多型を含む塩基配列を認識する制限酵素が存在すれば、RFLPの原理によって多型部位の塩基を知ることができる。
【0076】
標識プローブを必要としない方法として、DNAの二次構造の変化を指標として塩基の違いを検出する方法も公知である。PCR-SSCPでは、1本鎖DNAの二次構造がその塩基配列の相違を反映することを利用している(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。PCR-SSCP法は、PCR産物を1本鎖DNAに解離させ、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、1本鎖DNAの二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移動度の違いとして検出することができる。
【0077】
その他、標識プローブを必要としない方法として、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis: DGGE法)等を例示することができる。DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、DNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法である。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離する。部分的に解離したDNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本鎖DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。
【0078】
具体的には、まずPCR法等によって多型部位を含む領域を増幅する。増幅産物に、塩基配列がわかっているプローブDNAをハイブリダイズさせて2本鎖とする。これを尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、対照と比較する。プローブDNAとのハイブリダイズによってミスマッチを生じたDNA断片では、より低い変性剤濃度位置でDNA断片が一本鎖になり、極端に移動速度が遅くなる。こうして生じた移動度の差を検出することによりミスマッチの有無を検出することができる。
【0079】
更にDNAアレイを使って塩基種を決定することもできる(細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」,秀潤社,2000.4/20発行,pp97-103「オリゴDNAチップによるSNPの解析」,梶江慎一)。DNAアレイは、同一平面上に配置した多数のプローブに対してサンプルDNA(あるいはRNA)をハイブリダイズさせ、当該平面をスキャンすることによって、各プローブに対するハイブリダイズが検出される。多くのプローブに対する反応を同時に観察することができることから、例えば、多数の多型部位について同時に解析するには、DNAアレイは有用である。
【0080】
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することもできる。
【0081】
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インビトロ(in vitro)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
【0082】
オリゴヌクレオチドは、検出すべきSNPsを含む領域に相補的な塩基配列で構成される。基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常10〜100ベースであり、好ましくは10〜50ベースであり、さらに好ましくは15〜25ベースである。更に、一般にDNAアレイ法においては、クロスハイブリダイゼーション(非特異的ハイブリダイゼーション)による誤差を避けるために、ミスマッチ(MM)プローブが用いられる。ミスマッチプローブは、標的塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとのペアを構成している。ミスマッチプローブに対して、完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドはパーフェクトマッチ(PM)プローブと呼ばれる。データ解析の過程で、ミスマッチプローブで観察されたシグナルを消去することによって、クロスハイブリダイゼーションの影響を小さくすることができる。
【0083】
DNAアレイ法によるジェノタイピングのための試料は、被検者から採取された生物学的試料をもとに当業者に周知の方法で調製することができる。生物学的試料は特に限定されない。例えば被検者の血液、末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪から抽出した染色体DNAから、DNA試料を調製することができる。判定すべき多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーを用いて、染色体DNAの特定の領域が増幅される。このとき、マルチプレックスPCR法によって複数の領域を同時に増幅することができる。マルチプレックスPCR法とは、複数組のプライマーセットを、同じ反応液中で用いるPCR法である。複数の多型部位を解析するときには、マルチプレックスPCR法が有用である。
【0084】
一般にDNAアレイ法においては、PCR法によってDNA試料を増幅するとともに、増幅産物が標識される。増幅産物の標識には、標識を付したプライマーが利用される。例えば、まず多型部位を含む領域に特異的なプライマーセットによるPCR法でゲノムDNAを増幅する。次に、ビオチンラベルしたプライマーを使ったラベリングPCR法によって、ビオチンラベルされたDNAを合成する。こうして合成されたビオチンラベルDNAを、チップ上のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さや反応温度等の条件に応じて、適宜調整することができる。当業者は、適切なハイブリダイゼーションの条件をデザインすることができる。ハイブリダイズしたDNAを検出するために、蛍光色素で標識したアビジンが添加される。アレイをスキャナで解析し、蛍光を指標としてハイブリダイズの有無を確認する。
【0085】
上記方法をより具体的に示せば、被検者から調製した本発明の多型部位を含むDNA、およびヌクレオチドプローブが固定された固相、を取得した後、次いで、該DNAと該固相を接触させる。さらに、固相に固定されたヌクレオチドプローブにハイブリダイズしたDNAを検出することにより、本発明の多型部位の塩基種を決定する。
【0086】
本発明において「固相」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な材料を意味する。本発明の固相は、ヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、具体的には、マイクロプレートウェル、プラスチックビーズ、磁性粒子、基板などを含む固相等を例示することができる。本発明の「固相」としては、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。本発明において「基板」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な板状の材料を意味する。また、本発明においてヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。
【0087】
上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、アリル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。アリル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、検出すべき多型部位が存在する領域にハイブリダイズする塩基配列で構成される。ASOを試料DNAにハイブリダイズさせるとき、多型によって多型部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出することもできる。
上記オリゴヌクレオチドのうち、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドは、COPDにおいて感染症易罹患性か否かを検査するための試薬(検査薬)として利用できる。これは遺伝子発現を指標とする検査、または遺伝子多型を指標とする検査に使用される。
【0088】
該オリゴヌクレオチドは、本発明のCCL1遺伝子の多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするものである。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドは、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
【0089】
該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の検査方法におけるプローブやプライマーとして用いることができる。該オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常15bp〜100bpであり、好ましくは17bp〜30bpである。プライマーは、本発明のCCL1遺伝子のいずれかの多型部位を含むDNAの少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されない。
【0090】
本発明は、本発明の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー、および多型部位を含むDNA領域にハイブリダイズするプローブを提供する。
【0091】
本発明において、多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーには、多型部位を含むDNAを鋳型として、多型部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーも含まれる。該プライマーは、多型部位を含むDNAにおける、多型部位の3'側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域と多型部位との間隔は任意である。両者の間隔は、多型部位の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。たとえば、DNAチップによる解析のためのプライマーであれば、多型部位を含む領域として、20〜500、通常50〜200塩基の長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者においては、多型部位を含む周辺DNA領域についての塩基配列情報を基に、解析手法に応じたプライマーをデザインすることができる。本発明のプライマーを構成する塩基配列は、ゲノムの塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列のみならず、適宜改変することができる。
【0092】
本発明のプライマーには、ゲノムの塩基配列に相補的な塩基配列に加え、任意の塩基配列を付加することができる。例えば、IIs型の制限酵素を利用した多型の解析方法のためのプライマーにおいては、IIs型制限酵素の認識配列を付加したプライマーが利用される。このような、塩基配列を修飾したプライマーは、本発明のプライマーに含まれる。更に、本発明のプライマーは、修飾することができる。例えば、蛍光物質や、ビオチンまたはジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーが各種のジェノタイピング方法において利用される。これらの修飾を有するプライマーも本発明に含まれる。
【0093】
一方本発明において、多型部位を含む領域にハイブリダイズするプローブとは、多型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるプローブを言う。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプローブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。従って、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれないが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明における望ましいプローブとして示すことができる。
【0094】
言いかえれば、ゲノムDNA上の本発明の多型部位、または多型部位に隣接する部位にハイブリダイズすることができるプローブは、本発明のプローブとして好ましい。本発明のプローブには、プライマーと同様に、塩基配列の改変、塩基配列の付加、あるいは修飾が許される。例えば、Invader法に用いるプローブは、フラップを構成するゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、多型部位を含む領域にハイブリダイズする限り、本発明のプローブに含まれる。本発明のプローブを構成する塩基配列は、ゲノムにおける本発明の多型部位の周辺DNA領域の塩基配列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。
【0095】
本発明のプライマーまたはプローブは、それを構成する塩基配列をもとに、任意の方法によって合成することができる。本発明のプライマーまたはプローブの、ゲノムDNAに相補的な塩基配列の長さは、通常15〜100、一般に15〜50、通常15〜30である。与えられた塩基配列に基づいて、当該塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成する手法は公知である。更に、オリゴヌクレオチドの合成において、蛍光色素やビオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用して、オリゴヌクレオチドに任意の修飾を導入することもできる。あるいは、合成されたオリゴヌクレオチドに、蛍光色素などを結合する方法も公知である。
【0096】
本発明はまた、本発明のCOPDにおいて感染症易罹患性である(感受性の素因を有する)か否かの検査方法に使用するための試薬(検査薬)を提供する。本発明の試薬は、前記本発明のプライマーおよび/またはプローブを含む。COPDにおいて感染症易罹患性か否かの検査においてはCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーおよび/またはプローブを用いる。
【0097】
本発明の試薬には、塩基種の決定方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいはIIs制限酵素などの、上記の塩基種決定方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。
【0098】
更に本発明の試薬には、多型部位における塩基が明らかな対照を添付することができる。対照は、予め多型部位の塩基種が明らかなゲノム、あるいはゲノムの断片を用いることができる。ゲノムは、細胞から抽出されたものでもよいし、細胞あるいは細胞の分画を用いることもできる。細胞を対照として用いれば、対照の結果によってゲノムDNAの抽出操作が正しく行われたことを証明することができる。あるいは、多型部位を含む塩基配列からなるDNAを対照として用いることもできる。具体的には、本発明の多型部位における塩基種が明らかにされたゲノム由来のDNAを含むYACベクターやBACベクターは、対照として有用である。あるいは多型部位に相当する数百ベースのみを切り出して挿入したベクターを対照として用いることもできる。
【0099】
さらに、本発明における試薬の別の態様は、本発明のCCL1遺伝子の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、AECOPD易罹患性か否かを検査するための試薬である。
これらは本発明の多型部位を指標とする検査に使用される。これらの調製方法に関しては、上述の通りである。
【0100】
また本発明は、被検者(被検者由来の生体試料)におけるCCL1遺伝子の発現量を指標として、AECOPD易罹患性か否か、またはCOPD未罹患の患者において、将来COPDを発症した場合にAECOPD易罹患性の素因を有するか否かの判定を行うことも可能である。即ち本発明は、被検者におけるCCL1遺伝子の発現量が対照と比較して低下している場合に、被検者はCOPDにおいてAECOPD易罹患性、またはAECOPD易罹患性の素因を有するものと判定される、AECOPD易罹患性か否か、またはAECOPD易罹患性の素因を有するか否かを検査する方法を提供する。
【0101】
上記方法においては、通常、被検者由来の生体試料を被検試料とする。該被検試料におけるCCL1遺伝子の発現量の測定は、当業者においては公知の技術を用いて適宜実施することが可能である。なお、上記「対照」とは、通常、健常者由来の生体試料におけるCCL1遺伝子の発現量を指す。なお、本発明におけるCCL1遺伝子の発現とは、CCL1遺伝子から転写されるmRNAの発現、またはCCL1遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の両方を意味するものである。
【0102】
さらに、本発明は、AECOPDの治療薬または予防薬のスクリーニング方法を提供する。発明者らは、AECOPDとの関連を発見したSNP rs2282691部位のリスクアリルがプロテクティブアリルと比較して遺伝子転写のエンハンサーであるC/EBPβを結合しにくい事を実験により確認した。従って、CCL1遺伝子の転写の抑制によりAECOPD罹患のリスクが増大すると考えられ、CCL1遺伝子の発現量もしくはCCL1遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を活性化させる物質を選択すれば、すなわちそれはAECOPDの治療薬または予防薬となる物質となると期待される。
【0103】
本発明の上記方法は、例えば以下の(a)〜(c)の工程を含む、AECOPDの治療薬または予防薬を選択するためのスクリーニング方法である。
(a)CCL1遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる工程
(b)該CCL1遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、該発現レベルを上昇させる物質を選択する工程
【0104】
本方法においては、CCL1遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる。用いられる細胞はヒトをはじめ、動物、昆虫等に由来する細胞を使用することができる。内在性のCCL1遺伝子を持つ細胞を用いることもできるし、内在性のCCL1遺伝子を持つ細胞にさらにCCL1遺伝子を導入することもできる。また、CCL1遺伝子を欠損する細胞に外来性のCCL1遺伝子を導入して実験に用いることもできる。遺伝子導入はベクターを用いて広く知られる一般的な方法で行うことが可能である。
【0105】
本方法に用いる被験物質には特に制限はない。低分子化合物、高分子化合物、天然物、タンパク質、ペプチド等、あるいは細胞抽出液、細胞培養上清等も使用可能であるが、これらに限定されない。
【0106】
本方法において被験物質をCCL1遺伝子を発現する細胞に接触させる方法は、CCL1遺伝子を発現する細胞の培養液に被験物質を添加すること等により可能であるが、この方法に限定されない。
【0107】
CCL1遺伝子の発現レベルの測定は、RT−PCR法等の一般的に知られる測定手法により可能である。また、発現したCCL1タンパクをELIZA法、ウェスタンブロット法等の一般的に知られる測定方法により測定することができる。
次いで、被験物質の非存在下、すなわち被験物質を細胞に接触させない場合を対照として、CCL1遺伝子の発現レベルを上昇させる被験物質を選択する。選択された被験物質は、AECOPD治療薬または予防薬となる。
【0108】
本発明のスクリーニング方法の他の態様として、以下の(a)〜(c)の工程を含む、CCL1の発現量を増加させる物質を選択するためのレポータージーンアッセイを挙げることができる。
(a)CCL1遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験物質を接触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、該発現レベルを上昇させる物質を選択する工程
【0109】
本方法においては、CCL1遺伝子の転写調節領域と、レポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験物質を接触させる。当業者においては、Genbankをはじめとする様々なデータベースよりCCL1遺伝子の転写調節領域の遺伝子配列情報を入手することができる。そして、一般的に知られるレポータージーンアッセイの手法により、転写調節領域に転写因子が結合することによりレポーター遺伝子の発現が誘導されるようにし、レポーター遺伝子の発現量を測定し、被験物質を接触させなかった場合を対照としてレポーター遺伝子の発現量を比較することにより、CCL1遺伝子の転写を促進する被験物質を選択することが可能である。CCL1遺伝子の転写を促進する被験物質は、AECOPDの治療薬または予防薬とすることができる。
【0110】
また、本発明のさらに別の態様として、以下の(a)〜(c)の工程を含む、C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチドとC/EBPβタンパク質の結合活性を指標としたスクリーニング方法を挙げることができる。
(a)C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチド、およびC/EBPβタンパク質を被験物質と接触させる工程
(b)前記ポリヌクレオチドと転写因子との結合活性を測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記結合活性を増強させる物質を選択する工程
【0111】
本方法においては、C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチドとC/EBPβタンパク質、および被験物質とを接触させ、被験物質がC/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチドとC/EBPβタンパク質との結合を促進するか否かを検討することができる。例えば、次に述べる方法に限定はしないが、一般に知られた方法であるEMSA法にてC/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチドとC/EBPβタンパク質に抗C/EBPβタンパク質抗体を添加してインキュベーションする際に被験物質を添加し、被験物質非存在下で出現するバンドの位置や濃度を比較することにより、C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチドとC/EBPβタンパク質との結合活性を変化させる被験物質を選択することが可能である。C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチドとC/EBPβタンパク質との結合活性とを増大させる被験物質は、AECOPDの治療薬または予防薬とすることができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0113】
<研究集団>
2001〜2005年に山形大学附属病院(日本)の外来を受診した日本人COPD患者のうち、遺伝子型決定に関するインフォームドコンセントが書面で得られた後、ゲノムDNAが入手可能であった男性患者276人に対して調査を行った。これらのCOPD患者は、米国胸部疾患学会(American Thoracic Society)により規定された基準に従い診断された(American Thoracic Society. Am J Respir Crit Care Med. 1995; 152: S77-S120.)。すべての患者について不可逆性の慢性気流閉塞をスパイログラムによって確認した。慢性心不全、自己免疫疾患、悪性疾患のような合併症を持つ患者は除外した。栄養補助療法を受けている対象患者はいなかった。すべての対象患者はインフルエンザワクチンの接種を毎冬受けている。前日の夕食後から絶食にし、全患者が、検査当日朝食前に人体計測的測定を受けた。研究プロトコールは、山形大学医学部倫理委員会の承認を受けており、インフォームドコンセントの書面を、全患者から本調査に参加する前に得た。
【0114】
<後向きと前向きのコホート研究>
前向き研究に先立って、登録されたCOPD患者の後向きデータを2001年1月1日から2002年12月31日までにわたり収集した。2003年1月1日の時点で合計276名の男性COPD患者の血液検体と、各々の医療記録からAECOPDの頻度が入手できた。2名の別々の呼吸器科の医師が各患者の過去2年間の医療記録を慎重に評価し、2人の呼吸器科医が共にAECOPDであるとしたケースのみをAECOPDとして計数した。AECOPDの診断は、一般的に行われているように、通常に比較して、喀痰量の増加・色調の変化・粘度の変化に加えて、呼吸困難感の増加、咳嗽の増加、発熱、全身状態の悪化などを総合的に判断して行った。発明者らは、AECOPDの罹患頻度と重篤度をそれぞれ後ろ向きコホート研究と前向きコホート研究に分けて行った。これにより、研究の正確性を上げることができた。
後ろ向き及び前向きコホート研究を通じて、患者は外来診療で毎月フォローアップされ、加えてAECOPDが疑われる際にも同様にフォローアップされた。定期的な来診のそれぞれにおいて徹底的な臨床評価が総合医によって行われた。患者にAECOPDの疑いがある時は、2人呼吸器科医のどちらかが臨床評価に参加した。AECOPDの診断基準は未だに確定はしていないが(MacNee W. Acute exacerbations of COPD. Swiss Med Wkly. 2003; 133: 247-257.)、発明者らは以下の通り診断を行った。被験者は、まず全体的な健康状態、呼吸困難、咳、痰の量、痰の粘稠度、痰が化膿性か否かについての6つの質問を受ける。主要な症状3つには重みづけをした。すなわち、痰の量、痰が化膿性か否か(色調で判別)、呼吸困難の3つである。次に、被験者らは全体的な臨床所見、呼吸回数、喘鳴、ラ音について評価される。発明者らは、これらの観察に基づいて患者が臨床的に安定した状態なのか、急性憎悪の状態にあるのかを判定した(Abe Y et al., Am J Respir Crit Care Med. 2002; 165: 967-971., Bakri F et al.,J Infect Dis. 2002; 185: 632-640.)。
これらの、後向き研究から得られた臨床情報を用いて、タイピングしたSNPとAECOPDの頻度との関連を解析した。さらに、発明者らは同じ患者群(276名の男性COPD患者)を2003年1月1日から2005年6月30日までの30ヶ月の間、前向きに観察を継続した。前向き研究ではタイピングしたSNPとAECOPDの重篤度(エンドポイント:AECOPDによる死亡)について評価した。さらに、重篤なAECOPDであるという事実は、血清中のC反応性蛋白(CRP)定量、または、血中の白血球数の増加、肺炎等についてはX線撮影による所見により証明した。
【0115】
<肺機能検査>
努力肺活量(FVC)および1秒量(FEV1.0)は、標準的な手法で肺活量測定機器(CHESTAC-25パートII EX;チェスト株式会社(日本東京))により測定した。少なくとも3回肺活量測定を行い最高値を使用した。基準値は、日本胸部疾患学会(Japanese Society of Chest Diseases)により提唱されたものである(Japanese Society of Chest Disease. Jpn J Thorac Dis 1993;31:appendix.)。動脈血ガスの分析は、座位で酸素を補給しながら、又は補給せずに呼吸している被検者に対し行った(280 Blood Gas System;Ciba Corning Diagnostics Corp.,Medfield,MA)。
【0116】
<候補SNP選択および多型遺伝子型決定>
COPDに関連する可能性がある、主として免疫と炎症に関与する事が知られる遺伝子を94遺伝子選択し、各遺伝子上のSNPsを、dbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)、JSNP(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp)、およびアプライド・バイオシステムズ・ジェノタイピング・データベース(Applied Biosisytems genotyping Database)(http://myscience.appliedbiosystems.com/genotype/)より抽出した。200個のSNPが選択され、全てのSNPについてAECOPDの頻度(2回以上/2年 vs. 2年間発症なし)、AECOPDによる死亡との関連をそれぞれ解析した。
また、選択したSNPを含む周辺の配列に結合する転写因子の候補を探索するために、TRANSFAC Professional database(Biobase Biological Database)が販売するコンピュータープログラムであるMatch(Ver.1.4.1)を用い、スコア85以上を閾値として転写因子を探索した(表2b、2c)(Kochi Y et al., Nat Genet. 2005; 37: 478-485., Wang J et al., Mol Cell Biol. 2004; 24: 2423-4243., Davis ME et al., J Biol Chem. 2004; 279: 163-168., Tullai JW et al., J Biol Chem. 2004; 279: 20167- 20177.)。後向きコホート研究にてCCL1、CCL5及び CCL11近傍にAECOPDの罹患頻度との相関性が認められたために、前向きコホート研究でも、CCL1とその近傍のケモカインをSNP解析対象とした。CCL1、CCL11とCCL5の染色体上の位置を図1に示した。CCL11の2SNPs、CCL1の1SNP、CCL5の1SNPをタイピングした。前向きコホート研究では、同じCOPD患者集団を用い、これらのSNPとAECOPDの重症度に関して解析を行なった。
【0117】
【表2】

【0118】
<SNPの遺伝子型決定法>
遺伝子多型SNP遺伝子型決定の分析は、TaqMan allelic discrimination assay(Livak KJ. Genet Anal. 1999; 14: 143-149.)により実施した。試薬は、アプライド・バイオシステムズ(Foster City,CA,USA)より購入した。PCR反応の完了時にSNPを区別するタックマン・プローブは、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosisytems)で設計、合成されたものを用いた。一方のアレル・プローブを蛍光FAM色素で標識し、他方を蛍光VIC色素で標識した。PCR反応は、濃度900nMのPCRプライマーおよび濃度200nMのタックマンMGB-プローブを用いて、UNGを含まないTaqMan Universsal Master Mix without UNG(Applied Biosisytems)中で行った。反応は、3.0ngのゲノムDNAを使用し、全反応容量3μlで、384穴フォーマットで行った。次いで、プレートをGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosisytems)に設置し、95℃に10分間加熱した後、92℃15秒、60℃1分のサイクルを40回行い、最後に25℃に浸漬した。Prism 7900HT装置(Applied Biosisytems)により、プレートの各ウェル内の蛍光強度を読み取った。各プレートからの蛍光データ・ファイルは、SDS2.0 allele calling software(Applied Biosisytems)により分析した。
【0119】
<統計解析>
カイ二乗検定によって、各アリルがハーディ・ワインバーグ平衡(HWE)に適合するか否かの検定を行なった(p>0.05)。遺伝子型とAECOPD易罹患性(感染症の頻度(2回以上/2年 vs. 0回/2年)、AECOPDによる死亡(30ヶ月間の前向き調査による))およびその他の臨床的パラメータとの関連を、フィッシャーの直接法、ロジスティック回帰分析により評価した。優性遺伝モデルおよび劣性遺伝モデルの両方を、これらの統計分析に適用した。年齢、肺機能指数、および喫煙指数は、COPD患者に可能性のある交絡変数であり、多変量分析においてはこれらの交絡変数の効果を補償する必要があるため、ロジスティック回帰分析では、年齢、喫煙指数、ボディーマスインデックス(BMI)および肺機能指数(1秒間あたりの努力呼気容量−期待値に対する割合(%))に関して調整した。また対象COPD患者全員に対する解析には、AECOPDの頻度の順位の平均回数の、異なる遺伝子型グループにおける差異を評価するためにKruskal-Wallis 検定(ノンパラメトリックANOVA)を用いた。AECOPDからの生存期間解析は前向きコホート研究で30ヶ月のフォローアップ期間をKaplan-Meier法を用いた一変量解析とlog-rank検定を用いて分析した。また、AECOPDからの生存期間解析については、全体の死亡率に影響する可能性がある共変量として、年齢、BMI、肺機能指数で調整したCoxの比例ハザードモデルを用いた分析も行った(Schols AM,et al., Am J Respir Crit Care Med. 1998;157:1791-1797)。結果は平均値±標準偏差(SD)で表し、P<0.05を有意とした。すべてのデータ解析はSPSS ver.12.0.1J(SPSS Inc., Chicago, IL, 2003)。を用いて行った。
【0120】
<核抽出液とゲルシフトアッセイ(EMSA:Elecgtromobility Shift Assay)>
単球由来の培養細胞株であるTHP-1を10%FBS(ウシ胎児血清)を添加したPRIMI1640(GIBCO社)中で培養した。細胞濃度を1.0×106/mlに調整した上で、ヒト組換えインターロイキンー6(IL-6)(10ng/ml)とヒト組換えガンマインターフェロン(IFN-γ)(400単位/ml)を培地に添加し、細胞濃度を1.0×106/mlに調整した。6時間培養刺激した後に、細胞を回収し、既報(Wong HR, et al.,J Clin Invest. 1997; 99: 2423-2428)の通りに核抽出液を調製した。EMSAに用いるオリゴヌクレオチドは、TRANSFAC professional database(Biobase社)を使用して設計した。CCL1-SNP3- [CCAAT/enhancer binding protein beta (C/EBP?)] -A アリル-センス(5’-ATTGGAGTAGCTTTCACAAACCAGTCAGTAT-3’)の配列を配列表2に、CCL1-SNP3-C/EBP?-A アリル-アンチセンス(5’-ATACTGACTGGTTTGTGAAAGCTACTCCAAT?3’)の配列を配列表3に、,CCL1-SNP3-C/EBP?-B アリル-センス(5’-ATTGGAGTAGCTTTCACATACCAGTCAGTAT?3’)の配列を配列表4に、 CCL1-SNP3-C/EBP?-B アリル-アンチセンス(5’-ATACTGACTGGTATGTGAAAGCTACTCCAAT?3’)の配列を配列表5に記載する。
核タンパク(5μg)を標識したプローブと混和し20分間室温でインキュベートした。混和液をポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ナイロンメンブレンに転写した。バンドの検出はLightShift Chemiluminescent EMSAキット(Pierce Biotechnology社)を用いて使用説明書の通り行った。また、C/EBPβに対するコンセンサス配列の未標識のプローブを、核抽出液と標識プローブを混和する前に過剰量添加するという競合実験によりバンドの特異性を確認した。さらに、C/EBPβタンパクについてのスーパーシフトアッセイを抗C/EBPβ抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いて行った。核抽出液と抗C/EBPβ抗体(4μg)を、標識プローブを加える前に4℃で1時間インキュベートした。
【0121】
〔実施例1〕後向き研究の相関解析
まず、過去2年間に2回以上AECOPDを発症した患者(C群とする)(n=73, AECOPDの発生頻度:4.27±5.41回(レンジ:2-40回))と、明らかなAECOPDを発症しなかった患者(c群とする)(n=123)との比較を行った(表3)。
C群の患者はc群と比較して有意に低いBMI(kg/m2)(19.9±3.3 vs. 20.9±3.2, p<0.05)と、%FEV1.0(予測%)(43.4±22.6 vs. 49.8±20.4, p<0.01)を示した。単球特異的化学遊走物質をコードするCCL1遺伝子(Miller MD et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A, 1992;89:2950-2954)上のSNP(rs2282691)が、フィッシャーの直接検定(オッズ比(OR):2.70、95%信頼区間(95%CI):1.36-5.36)p=0.004)と、ロジスティック回帰分析(オッズ比(OR):3.06、95%信頼区間(95%CI):1.46-6.41)p=0.003)と、優性モデルの検定においてAECOPDの頻度と有意な関連が認められた(表2a)。
憎悪の頻度は、疾患の重症度を表わす%FEV1.0(予測%)の悪化と(Burge PS et al.,BMJ. 2000;320:1297-1303)、臨床的な予後不良を予測するBMIの低下(Takabatake N et al., Am J Respir Crit Care Med. 2001; 163: 1314-1319., Takabatake N et al., Am J Respir Crit Care Med. 2000; 161: 1179-1184. Takabatake N et al., Am J Respir Crit Care Med. 1999; 159: 1215-1219.)により増加するため、低い肺機能指標と低いBMIが交絡因子として働いている可能性を除外するために多変量解析を行った。表4bに示すように、C群とc群の予後因子の差を考慮してなお、CCL1遺伝子上のSNP rs2282691は優性モデル(AA+AT vs. TT)で有意差を示した(オッズ比(OR):2.82、95%信頼区間(95%CI):1.39-5.71),p=0.004)。逆に、BMIと%FEV1.0(予測%)はAECOPDの有意なリスクファクターではなかった。
また、ケモカイン遺伝子群のCCLサブファミリーは染色体領域17q11.2-q12にクラスター形成しているが、CCL1遺伝子近傍に存在する、CCL11(SNP rs17809012、rs4795900)、CCL5(SNP rs3817655)については、COPDにおける急性気道感染症(急性増悪)易罹患性との関連は認められなかった(表2)
【0122】
【表3】

【表4】

【0123】
〔実施例2〕後向きコホート研究の相関解析
後向き研究でAECOPDの発生率により分類し、3種類の遺伝子型それぞれにおけるAECOPDの頻度の平均値の差を比較するために、Kruskal-Wallis検定(ノンパラメトリックANOVA)を適用した。この解析では、正確なAECOPD発生率が得られなかった4名の患者を解析から除外した。CCL1上のSNP rs2282691は有意なp値を示し(p=0.006、表5a)、優性モデルを仮定した時にリスクアリルは‘A’であった(p=0.003、表5b)。また、劣性モデルを仮定した時には有意な相関は認められず(表5c)、従って、AECOPDの回数はより多かった(表5a、表5b)。これらの結果はフィッシャーの直接法による検定結果およびロジスティック回帰分析による解析結果と一致した。全対象者を合わせたSNP rs2282691のAアリルの頻度は0.456、Tアリルの頻度は0.544であり、ハーディーワインバーグ平衡は0.365(p=0.546(カイ二乗検定))であった。
【0124】
〔実施例3〕前向きコホート研究のログランク検定を用いたKaplan-Meier解析
前向き研究の目的はCCL1上のSNP rs2282691のジェノタイプとAECOPDの重症度(エンドポイント:死亡)の関連を評価することである。死亡した場合を除いてドロップアウトした患者も除外された患者もいなかった。後向きコホート研究の結果(表5)にしたがってKaplan-Meier法を適用し、遺伝子型およびアリルについて、生存曲線の傾向に差があるかどうかをログランク検定を用いて評価した。この解析は30ヶ月間にわたって行われたフォローアップ研究に基づいている(表6)。
【0125】
【表5】

【表6】

【0126】
30ヶ月間のフォローアップデータをKaplan-Meier法で解析した結果、‘A’アリルが有意なAECOPDの重症度のリスクアリルであることを発見した。この結果は、本前向き研究においてA’アリルがAECOPDによる死亡のリスクアリルであることを示す。‘A’アリルを持つことにより、AECOPDによる死亡までの平均生存期間が短くなる。また、‘A’アリルをホモで持つジェノタイプAAではヘテロであるジェノタイプATより強い有意な相関を示すことを見出した。ヘテロであるジェノタイプATは‘T’アリルのホモであるTTジェノタイプと比較して有意な相関を示さなかったが(P=0.06)、ログランク解析では優性モデル、劣性モデル共に有意差が認められた(劣性モデル:ログランク解析4.43、p=0.0353)。この結果の理由は、AECOPDの重篤度(死亡率)について、ヘテロ遺伝子型もリスクファクターであると考えられ、リスクアリル‘A’が生存率に及ぼす負の影響の典型的な遺伝子量効果である(図2)。
【0127】
〔実施例4〕前向きコホート研究におけるCox比例ハザード回帰分析
発明者らは、次に30ヶ月間のフォローアップデータをCox比例ハザード回帰解析法を用いて分析を行った。Cox比例ハザード回帰解析モデルは、発明者らの結果に有効に適用可能であり、CCL1遺伝子上のSNP rs2282691において比例ハザード傾向が認められた(表7)。ジェノタイプ、‘A’アリル優性モデルのいずれにおいても、年齢がAECOPDの重篤度(死亡率)のリスクファクターであると認められた(それぞれp=0.041、p=0.038)。前向き研究の初期では、栄養状態(BMI)と肺機能指標(%FEV1.0(期待値に対する割合(%))有意ではなかった。しかし、これらの因子がAECOPDの重篤度(死亡率)に与える影響を完全に否定することはできなかった。解析の結果を図3に示した。図3は、本解析におけるKaplan-Meier解析の結果と同様であった。典型的な遺伝子量効果も同様に認められる。
【0128】
【表7】

【0129】
本前向き研究では、合計47名の患者が死亡した。47名のうち、23名の患者がAECOPDによる死亡であった(48.9%)。それら23名の死亡者の培養試験を行った結果、12名の患者の喀痰から、病原性の可能性がある病原菌が認められた。内訳は、5名の患者の単一の病原菌として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が同定された。2名の患者の単一の病原菌としてメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive Staphylococcus aureus:MSSA)が同定された。MRSAと緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)が1名、MRSAとKlebsiella pneumoniaeが1名、MRSAとペニシリン感受性肺炎連鎖球菌(penicillin-sensitive Strepcoccus pneumoniae(PSPP))が1名、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)とKlebsiella pneumoniaeが1名、MSSAとKlebsiella pneumoniaeとヘモフィルスパラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)が1名で培養同定され、残り11名の喀痰検体では非特異的な培養所見を示した。
【0130】
〔実施例5〕EMSA
CCL1遺伝子のイントロン2に存在するSNP rs2282691の機能を解析するために、TRANSFAC Professiona database(Kochi Y et al.,Nat Genet. 2005; 37: 478-485. , Wang J, et al., Mol Cell Biol. 2004; 24: 2423-4243., Davis ME, et al., J Biol Chem. 2004; 279: 163-168., Tullai JW, et al., J Biol Chem. 2004; 279: 20167- 20177.)を用いてこの部分に結合する可能性がある転写因子を探索した。発明者らは、‘A’アリルには結合しないが、‘T’アリルには結合する転写因子の候補を見出した。C/EBPβと transcription factor poly(c)-binding protein2(TFCP2)の2つがTRANSFACのスコアがそれぞれ89と87であった(表2b、表2c)。そこで、発明者らはSNP rs2282691の周辺の配列がC/EBPβに結合するかどうかを調べるためにEMSAを行った。単核球の培養細胞であるTHP-1の核抽出液を、XXによる刺激の後に調製し、SNP rs2282691の部分が‘A’または‘T’であるCCL1遺伝子配列の一部を用いて作成したオリゴヌクレオチドを用いてEMSAを行った。核抽出液とオリゴヌクレオチドの複合体はゲル電気泳動において‘T’オリゴヌクレオチドではDNA?核蛋白複合体が認められたが(図4、レーン2)、‘A’オリゴヌクレオチドではDNA?核蛋白複合体が認められなかった(図4、レーン5)未標識DNAによる競合反応で特異性を確認した(図4、レーン4)。図の説明を確認の上で再度記載すること。加えて、この複合体は抗C/EBPβ抗体の添加によりスーパーシフトした(図4、レーン3)。これらの結果は、SNP rs2282691の‘T’アリルはC/EBPβと結合するが、’A‘アリルはC/EBPβと結合しないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】CCL1遺伝子の染色体上の位置と、近傍に存在するSNP解析の対象とした他のケモカイン。CCL11、CCL1、CCL5は17番染色体上にクラスターを形成している。
【図2】30ヶ月間の前向きコホート研究の結果により、CCL1遺伝子上のSNP rs2282691のジェノタイプおよび‘A’アリル優性モデルでKaplan-Meier法によって生存率曲線を描き、傾向をログランク検定を用いて解析した。図中の+は、AECOPD以外の原因による死亡打ち切り例を示す。統計解析結果は表6を参照のこと。(a)ジェノタイプ毎に3つの生存率曲線を描いた。(b)’A’アリルの優性モデルを仮定して描いた2つの生存率曲線。
【図3】30ヶ月間の前向きコホート研究の結果により、CCL1遺伝子上のSNP rs2282691のジェノタイプおよび‘A’アリル優性モデルでCox比例ハザード回帰分析モデルによる生存率曲線。(a)ジェノタイプ毎に3つの生存率曲線を描いた。(b)’A’アリルの優性モデルを仮定して描いた2つの生存率曲線。
【図4】SNP rs2282691の‘A’アリルと‘T’アリルの塩基違いによる、DNA?核蛋白複合体の形成における差異をEMSA(electrophoretic mobility shift assay)法により解析した結果。レーン(1):SNP rs2282691の‘T’アリルに対応するC/EBPβのオリボヌクレオチドプローブを核抽出液を加えずにアプライした。フリーのプローブが図の外に認められた。レーン(2):SNP rs2282691の‘T’アリルに対応するC/EBPβのオリボヌクレオチドプローブを核抽出液と混合してアプライした。DNA?核蛋白複合体の位置をアスタリスク(*)で示す。レーン(3):SNP rs2282691の‘T’アリルに対応するC/EBPβのオリボヌクレオチドプローブを核抽出液、さらに抗C/EBPβとインキュベーションしてアプライした。スーパーシフトしたバンドを矢印で示す。レーン(4):バンドの特異性を競合実験により確認するために、過剰量の未標識のSNP rs2282691の‘T’アリルに対応するC/EBPβのオリボヌクレオチドプローブと核抽出液をアプライした。レーン(5):SNP rs2282691の‘A’アリルに対応するC/EBPβのオリボヌクレオチドプローブを核抽出液と混合してアプライした。[配列表] SEQUENCE LISTING<110> YAMAGATA UNIVERSITY HUBIT GENOMIX, INC. <120> Polymorphisms in AECOPD genes in patients with Chronic obstructive pulmonary disease, and use thereof<130> 0601<160> 5<170> PatentIn version 3.1<210> 1<211> 20001<212> DNA<213> Homo sapiens<400> 1gagataatct gtttgtttgg gacaaagtaa gaaaaaagaa caagagtttc tgcctggtag 60tccagagaat tcttctggat tttatccaag accaccaaag tggtacacag aaaaccacag 120aataacattg taattgtggt 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【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者について、CCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定する方法。
【請求項2】
変異が、該遺伝子の発現量の低下もたらすものであるときに慢性閉塞性肺疾患において急性増悪易罹患性であると判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変異が一塩基多型変異である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
以下の工程(a)および(b)を含む、被検者について、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定する方法。
(a)被検者におけるCCL1遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定する工程。
(b)(a)で決定された多型部位の塩基種において、変異が検出された場合に、被検者は慢性閉塞性肺疾患において急性増悪易罹患性であると判定する工程。
【請求項5】
変異が、該遺伝子の発現量の低下をもたらすものであるときに慢性閉塞性肺疾患において急性増悪易罹患性であると判定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多型部位が、CCL1遺伝子領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の多型部位である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
塩基種の変異が、CCL1遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における10001位の塩基種が、TからAに変異したものである、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
被検者由来の生体試料を被検試料として検査に供する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性が、慢性閉塞性肺疾患における急性憎悪の頻度である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性が、慢性閉塞性肺疾患における急性憎悪の重篤度である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
慢性閉塞性肺疾患における急性増悪が、慢性閉塞性肺疾患における急性気道感染症である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項7に記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定するための薬剤。
【請求項13】
請求項7に記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定するための薬剤。
【請求項14】
請求項7に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪易罹患性の有無を判定するための薬剤。
【請求項15】
慢性閉塞性肺疾患における急性増悪が、慢性閉塞性肺疾患における急性気道感染症である、請求項12から14のいずれかに記載の薬剤。
【請求項16】
CCL1遺伝子の発現量もしくは該遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を活性化する物質を選択することを特徴とする、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
【請求項17】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(a)CCL1遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる工程
(b)該CCL1遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、該発現レベルを上昇させる物質を選択する工程
【請求項18】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(a)CCL1遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験物質を接触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、該発現レベルを上昇させる物質を選択する工程
【請求項19】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪の治療薬または予防薬のスクリーニング方法。
(a)C/EBPβ認識配列を含むポリヌクレオチド、およびC/EBPβタンパク質を被験物質と接触させる工程
(b)前記ポリヌクレオチドと転写因子との結合活性を測定する工程
(c)被験物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記結合活性を増強させる物質を選択する工程
【請求項20】
慢性閉塞性肺疾患における急性増悪が、急性気道感染症である、請求項16から19に記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
CCL1遺伝子の発現量もしくは該遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を活性化する物質を有効成分として含有する、慢性閉塞性肺疾患における急性増悪予防薬または治療薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−228941(P2007−228941A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57804(P2006−57804)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(501124337)ヒュ―ビット ジェノミクス株式会社 (13)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】