説明

成型器具

【課題】成型対象物が位置ずれした状態で搬送されても、その成型対象物を確実に成型することができるようにすること。
【解決手段】成型器具1は、揺動部材2と、軸部3と、ローラ部材4を備えている。揺動部材2は、成型対象物の搬送路の上方に配置され、上下方向に移動可能(成型対象物の搬送方向に揺動可能)になっている。この揺動部材2には、揺動軸(取付部52)と平行に延びてローラ部材4を貫通する軸部3が保持されている。ローラ部材4は、軸部3を軸として回転可能、且つ軸部3が延びる方向に移動可能とされ、成型対象物を成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力が加わることによって変形し、且つ保形性を有する成型対象物の角部に丸みを付ける成型器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、肉類や魚類を食材として用いたハンバーグやコロッケなどの加工食品が大量生産されている。例えば、ハンバーグは、挽き肉や魚のすり身、野菜、パン粉、調味料等を混練する工程と、混練して得られた材料を成型する工程と、成型された材料を鉄板、オーブン、フライヤ等で加熱する工程を経て製造される。
【0003】
上述したような混練して得られた材料(以下、「混練材料」という)は、外力が加わることによって変形し、且つ保形性を有する。このような混練材料は、予め定められた量に分割され、それぞれ成型される。このとき、成型された混練材料が角張った形状であると、手作り感が無く、美味しそうに見えない。そこで、ハンバーグなどの混練材料に対して丸みを帯びた手作り感のある成型を行う装置が考えられている。
【0004】
このような混練材料を成型する装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。すなわち、特許文献1には、結着状食品を所定の形状に成型するための成形装置に関するものが記載されている。この成形装置は、結着状食品を移送する駆動ベルトと、駆動ベルトの上方に配置された駆動ローラと、駆動ベルトを支持する湾曲部材とを備えている。
【0005】
駆動ベルトは、湾曲部材の凹部に沿って湾曲されている。駆動ローラは、駆動ベルトの移送方向に略垂直な回転軸に固定されており、駆動ベルトに対向する湾曲状の凹部が設けられている。この成形装置では、駆動ベルトと駆動ローラによって結着状食品を押圧し、その結着状食品の上下面に丸みを付けるようになっている。
【0006】
また、食品などの対象物にローラを接触させる技術としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものがある。特許文献2には、レトルト食品等の流動物を収容した包装体を搬送する搬送装置に関するものが記載されている。この搬送装置は、搬送手段の上部に上下動可能に配設されたローラを有している。このローラは、搬送手段によって搬送される包装体に対して外部より負荷を与え、包装体内の流動物を流動させて混ぜる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−124539号公報
【特許文献2】特開平11−91929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された結着状食品の成形装置では、駆動ローラが回転軸に固定されており、回転軸と一体に回転駆動されるようになっていた。そのため、駆動ベルトによって搬送される結着状食品を駆動ローラの回転軸方向に正確に投入する必要があり、投入時において結着状食品が回転軸方向にずれていると、駆動ベルトと駆動ローラに押圧されたときに結着状食品の上下面の形状がいびつになってしまう可能性があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、成型対象物が位置ずれした状態で搬送されても、その成型対象物を確実に成型できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の成型器具は、移動部材と、軸部と、ローラ部材とを備えている。移動部材は、成型対象物の搬送路の上方に配置され、上下方向に移動可能になっている。この移動部材には、搬送路と平行であって前記成型対象物の搬送方向に直交する方向へ延びる軸部が保持されている。ローラ部材は、軸部を軸として回転可能、且つ軸部が延びる方向に移動可能とされ、成型対象物を成型する。
【0011】
本発明の成型器具では、搬送されてきた成型対象物をローラ部材によって成型する。このとき、ローラ部材は、揺動部材によって成型対象物の搬送方向に揺動する。そのため、成型対象物の高さにバラツキが生じても、成型対象物に加える押圧力を一定にすることができる。
【0012】
また、ローラ部材は、軸部が延びる方向に移動可能になっている。そのため、ローラ部材は、軸部が延びる方向にずれて搬送された成型対象物に追従して移動することができる。その結果、成型対象物を確実に成型することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成型対象物が位置ずれした状態で搬送されても、位置ずれした成型対象物に追従するようにローラ部材を移動させることができ、成型対象物を確実に成型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の成型器具の第1の実施の形態の斜視図である。
【図2】本発明の成型器具の第1の実施の形態に係るローラ部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の成型器具の第1の実施の形態の正面図である。
【図4】本発明の成型器具の実施の第1の形態の動作を説明する説明図である。
【図5】本発明の成型器具の第1の実施の形態に係るローラ部材の軸方向への移動を説明する説明図である。
【図6】本発明の成型器具の第2の実施の形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の成型器具を実施するための形態について、図1〜図6を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
また、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.変形例
【0016】
〈1.第1の実施の形態〉
[成型器具]
まず、本発明の成型器具の第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。
図1は、成型器具の第1の実施の形態の斜視図である。
【0017】
成型器具1は、ハンバーグの混練材料100(図4及び図5参照)を成型するために用いられる。混練材料100は、外力が加わることによって変形し、且つ保形性を有する成型対象物の一具体例を示すものである。
【0018】
混練材料100は、略楕円形の枠状の型によって打ち出されることにより、扁平の略楕円形に形成されている。したがって、混練材料100は、周縁に角部を有している。成型器具1は、混練材料100を押圧し、混練材料100の角部に丸みをつけるような成型を行う。
【0019】
成型器具1は、成型装置の一部を構成する。ここで、成型装置について説明する。成型装置は、混練材料100を搬送する搬送部51(図4参照)と、この搬送部51の上方に配設された取付部52と、この取付部52に取り付けられる成型器具1から構成されている。
【0020】
搬送部51としては、例えば、ベルトコンベアやネットコンベアが挙げることができる。この搬送部51は、少なくとも成型器具1に対向する部分において、混練材料100を直線方向(以下、「搬送方向」という)に搬送する。取付部52は、円柱状に形成されており、支持部(不図示)に固定されている。この取付部52は、搬送部51に対して平行であり、且つ搬送方向に直交する方向に延びている。取付部52は、成型器具1の揺動軸になる。
【0021】
成型器具1は、取付部52に揺動可能に取り付けられる揺動部材2と、この揺動部材2に固定される軸部3と、この軸部3を軸として回転するローラ部材4を備えている。なお、本実施の形態における「揺動」とは、取付部52を軸として360°以下の角度で正逆に回転して揺れ動くことである。したがって、揺動部材2は、搬送部51に対して上下方向に移動する移動部材の一具体例を示すものである。この揺動部材2は、取付部52に取り付けられるアーム部21と、このアーム部21に固定される軸固定部22を有している。
【0022】
アーム部21は、取付部52が貫通する軸受け21aと、この軸受け21aに連続する棒状の連結片21bからなっている。軸受け21aは、円形の環状に形成されており、取付部52に回転可能に嵌合されている。本実施の形態では、軸受け21aを滑り軸受けとして形成したが、軸受け21aを転がり軸受けに形成してもよい。連結片21bは、軸受け21aの外周面から突出しており、軸受け21aの半径方向に延びている。この連結片21bの先端部には、軸固定部22が固定されている。
【0023】
軸固定部22は、コ字状に形成されている。この軸固定部22は、長方形の板体からなるベース片22aと、このベース片22aの長手方向の両端にそれぞれ連続する固定片22b,22cからなっている。
【0024】
ベース片22aの一方の平面は、取付部52に対向している。このベース片22aの中央部には、連結片21bの先端部が固定ねじ、接着剤、溶接などの固着方法によって固定されている。ベース片22aの長手方向は、取付部52が延びる方向に一致している。つまり、ベース片22aの長辺は、搬送部51に対して平行であり、且つ搬送方向に直交する方向に延びている。
【0025】
固定片22b,22cは、それぞれ長方形の板体からなり、ベース片22aの長手方向に対向している。これら固定片22b,22cの先端部には、軸部3が貫通する貫通孔(不図示)が設けられている。軸部3は、ナット25によって固定片22b,22cに固定されている。なお、軸部3は、接着剤や圧入によって固定片22b,22cに固定してもよい。この軸部3は、円柱状に形成されており、取付部(揺動軸)52と平行な方向に延びる。
【0026】
なお、揺動部材2の軸受け21aと取付部(揺動軸)52との間には、間隙(ガタ)が生じるように構成してもよい。軸受け21aと取付部52との間に間隙を生じさせると、混練材料100がローラ部材4に接触するときの衝撃を軽減することができ、混練材料100に対して過度の押圧力が加わることを抑制することができる。
【0027】
[ローラ部材]
次に、ローラ部材4について、図2を参照して説明する。
図2は、ローラ部材4の分解斜視図である。
【0028】
ローラ部材4は、一対の接触ローラ41,42と、調整用カラー43と、一対の係止リング44,45と、筒芯部46から構成されている。筒芯部46は、円筒状に形成されており、接触ローラ41,42、調整用カラー43及び係止リング44,45を貫通する。
【0029】
接触ローラ41は、略円筒体からなっている。この接触ローラ41は、一端に向かうにつれて外径を小さくするテーパー状に形成されている。この接触ローラ41のテーパー面41aは、周方向に連続して凹となるよう湾曲する曲面になっている。なお、接触ローラ42は、接触ローラ41と同一の形状であり、テーパー面42aを有している。
【0030】
接触ローラ41と接触ローラ42は、互いの先細側が調整用カラー43を介して対向する。つまり、調整用カラー43は、一対の接触ローラ41,42間に介在されている。このテーパー面41a,42aよりなる曲面には、搬送部51によって搬送された混練材料100が接触する。
【0031】
接触ローラ41,42の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアセタール(POM)、超高分子量ポリエチレンなど合成樹脂や、ステンレス、アルミニウム等の金属を挙げることができる。
【0032】
調整用カラー43は、円筒体からなっている。この調整用カラー43の外径は、接触ローラ41,42の一端(先細側)の外径と同一に形成されている。そのため、調整用カラー43の外周面と接触ローラ41,42のテーパー面41a,42aとの間には、段差が生じないようになっている。そして、調整用カラー43及び接触ローラ41,42のテーパー面41a,42aは、ローラ部材4の中央部において周方向に連続する凹部を形成する(図1参照)。
【0033】
調整用カラー43は、接触ローラ41,42間の距離を規定する。この接触ローラ41,42間の距離は、混練材料100の大きさに応じて変更する必要がある。そのため、調製用カラーは、混練材料100の大きさに応じて複数個用意されている。つまり、複数の調製用カラーは、それぞれ軸方向の長さが異なっており、混練材料100の大きさに応じて適宜選択される。
【0034】
また、調整用カラー43は、ローラ部材4の重量を調整する役割を有している。つまり、調整用カラー43は、軸方向の長さが同一であり、重さの異なるものが複数個用意されている。例えば、ステンレスにより形成した調整用カラーと、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂によって形成した調製用カラーが用意されている。
【0035】
混練材料100を成型する(角に丸みを付ける)ために必要な押圧力は、混練材料100の種類(肉の種類、野菜、パン粉、調味料等の割合)により異なる。そして、混練材料100に加えられる押圧力は、ローラ部材4の重量によって変化する。そのため、ローラ部材4の重量は、混練材料100の種類に応じて変える必要がある。本実施の形態では、調整用カラー43を交換することにより、ローラ部材4の重量を変化させる。
【0036】
一対の係止リング44,45は、それぞれ円形の環状に形成されている。これら一対の係止リング44,45は、一対の接触ローラ41,42及び調整用カラー43を両側から挟み込んだ状態で筒芯部46に着脱可能に固定される。係止リング44,45の固定方法としては、例えば、各係止リング44,45を2つの部材から構成し、筒芯部46に締め付け固定してもよい。また、各係止リング44,45を筒芯部46に螺合させてもよい。
【0037】
筒芯部46に固定された係止リング44,45は、接触ローラ41,42及び調整用カラー43の筒芯部46に対する移動を係止する。つまり、接触ローラ41,42、調整用カラー43、係止リング44,45及び筒芯部46は、一体に組み立てられ、ローラ部材4を構成する。そして、筒芯部46の筒孔46aには、軸部3が貫通する。これにより、ローラ部材4は、軸部3を軸として回転可能になっている。
【0038】
筒孔46aの直径は、軸部3の直径よりも大きくなっており、筒芯部46(ローラ部材4)と軸部3との間に間隙(ガタ)が生じるようになっている。そのため、ローラ部材4は、軸部3の軸方向に直交する方向(例えば上下方向や搬送方向と平行な方向)に移動可能になっている。このように、ローラ部材4と軸部3と間に間隙(ガタ)を生じさせると、混練材料100がローラ部材4に接触するときの衝撃を軽減することができる。
【0039】
[筒芯部の軸方向の長さ]
次に、筒芯部46の軸方向の長さについて、図3を参照して説明する。
図3は、成型器具1の正面図である。
【0040】
筒芯部46の軸方向の長さSは、上述した揺動部材2の固定片22b,22c間の距離Lよりも短い(L>S)。そのため、筒芯部46と固定片22b,22cとの間には、所定の距離2Tの間隙が設けられる(L=S+2T)。つまり、筒芯部46を有するローラ部材4は、軸部3が延びる方向(軸方向)に所定の距離2Tだけ移動可能になっている。
【0041】
揺動部材2の中心から軸部3の軸方向にずれて載置された混練材料100が搬送されてきたとする。このとき、混練材料100に接触したローラ部材4は、その混練材料100のずれに追従するように軸部3の軸方向に移動する。その結果、ローラ部材4のテーパー面41a,42aを混練材料100の両側の角部に接触させることができ、混練材料100の両側の角部に確実に丸みを付けることができる。
【0042】
[成型器具の動作]
次に、混練材料100の角部に丸みを付ける成型器具1の成型動作について、図4を参照して説明する。
図4(a)は、混練材料100が成型器具1のローラ部材4に接触する前の状態の説明図である。図4(b)は、混練材料100が成型器具1のローラ部材4に接触した状態の説明図である、図4(c)は、混練材料100が成型器具1のローラ部材4に押圧されながら進んでいる状態の説明図である。
【0043】
まず、混練材料100は、1次成型される。つまり、混練材料100は、型(不図示)から打ち出されて扁平の略楕円形に形成される。1次成型された混練材料100は、搬送部51に載置され、成型器具1に向かって搬送される(図4(a)参照)。そして、混練材料100の両側の角部が成型器具1のローラ部材4に設けたテーパー面41a,42aに接触する(図4(b)参照)。
【0044】
ローラ部材4と軸部3と間に間隙(ガタ)が設けられている。そのため、混練材料100がローラ部材4に接触すると、ローラ部材4は、軸部3の軸方向に直交する方向(混練材料100の斜め上方)に僅かに移動する。これにより、混練材料100がローラ部材4に接触するときの衝撃を軽減することができ、混練材料100に対して過度の押圧力が加わることを抑制することができる。
【0045】
その後、混練材料100が搬送方向に進むと、ローラ部材4が混練材料100を押圧して変形させる。このとき、ローラ部材4が軸部3を軸として回転すると共に、成型器具1が取付部(揺動軸)52を軸として揺動する(図4(c)参照)。これにより、混練材料100には、角部に丸みを付けるために必要な最小限の力が加えられる。その結果、混練材料100が潰れたり、搬送部51に食い込んだりする心配がない。したがって、混練材料100の両側の角部に丸みを付けることができる(図5参照)。
【0046】
混練材料100の角部に丸みを付けるには、ローラ部材4の重量の設定が重要である。例えば、ローラ部材4の重量が重過ぎると、ローラ部材4に混練材料100が接触しても、成型器具1が取付部(揺動軸)52を軸として揺動しない。その結果、混練材料100が潰れてしまう。一方、ローラ部材4の重量が軽過ぎると、混練材料100に充分な押圧力が加わらず、混練材料100の角部に丸みが付かない。
【0047】
本実施の形態では、混練材料100の種類に応じて調整用カラー43を適宜選択し、混練材料100の角部に丸みを付けるために必要な最小限の押圧力が生じるように、ローラ部材4の重量を調整している。なお、本実施の形態に係る調整用カラーは、省略してもよい。この場合は、接触ローラ41,42を適宜選択してローラ部材4の重量を調整することにより、混練材料100の角部に丸みを付けるために必要な最小限の押圧力を生じさせることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、ローラ部材4のテーパー面41a,42aを、周方向に連続して凹となる曲面にした。これにより、テーパー面41a,42aを混練材料100の両側の角部及びその周辺に当接させることができ、混練材料100の上部全体に丸みを付けることができる。そして、混練材料100の上部全体に丸みが付くことにより、より手作り感を演出することができる。
【0049】
[ローラ部材の軸方向への移動]
次に、ローラ部材4の軸方向への移動について、図5を参照して説明する。
図5(a)は、混練材料100の中心が成型器具1の中心に略一致している状態の説明図である。図5(b)は、混練材料100の中心が成型器具1の中心に対して軸部3の軸方向にずれている状態の説明図である。
【0050】
1次成型された混練材料100は、基本的に、その中心が成型器具1の中心に略一致するように搬送部51に載置される。そして、ローラ部材4は、その中心が揺動部材2(成型器具1)の中心に略一致した状態になっている。したがって、混練材料100は、その中心がローラ部材4の中心と略一致した状態でテーパー面41a,42aに接触する。
【0051】
その結果、ローラ部材4のテーパー面41a,42aを、混練材料100の両側の角部に確実に接触させることができる。そして、ローラ部材4によって混練材料100を押圧することにより、混練材料100をテーパー面41a,42aに沿って変形させることができ、混練材料100の両側の角部に対称な丸みを付けることができる(図5(a)参照)。
【0052】
ところで、1次成型された混練材料100は、その中心が成型器具1の中心に対して軸部3の軸方向にずれた状態で搬送部51に載置されることがある。このような場合に、ローラ部材4の中心が揺動部材2(成型器具1)の中心に略一致していると、混練材料100は、その中心がローラ部材4の中心に対して軸部3の軸方向にずれた状態でテーパー面41a,42aに接触する。
【0053】
このとき、ローラ部材4は、混練材料100によって軸部3の軸方向に押圧されて移動する。つまり、混練材料100に接触したローラ部材4は、その混練材料100のずれに追従するように軸部3の軸方向に移動する。その結果、ローラ部材4の中心を混練材料100の中心に略一致させることができる(図5(b)参照)。これにより、混練材料100の両側の角部に対称な丸みを付けることができる。
【0054】
なお、成型器具1を軸部3の軸方向に複数配置してもよい。その場合は、各成型器具1のローラ部材4が軸部3の軸方向に移動するため、ローラ部材4の軸方向への移動可能な範囲内で混練材料100が軸方向に対して不揃い(バラバラ)に搬送されても、それら混練材料100を確実に成型することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、混練材料100が調整用カラー43に接触しないようになっている(図5参照)が、本発明の成型器具としては、混練材料100が調整用カラー43に接触してもよい。また、本実施の形態では、調整用カラー43を円筒体に形成したが、本発明に係る調製用カラーとしては、楕円筒状、角筒状などの筒体に形成してもよい。
【0056】
〈2.第2の実施の形態〉
[成型器具]
次に、本発明の成型器具の第2の実施の形態について、図6を参照して説明する。
図6は、成型器具の第2の実施の形態の側面図である。
【0057】
第2の実施の形態を示す成型器具61は、第1の実施の形態の成型器具1と同様な構成を有している。この成型器具61が成型器具1と異なるところは、液体放出部材62を備えることである。そのため、ここでは、液体放出部材62について説明し、成型器具1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
成型器具61の液体放出部材62は、ノズル63と、このノズル63を保持するノズル保持部64とを備えている。ノズル63は、ローラ部材4の斜め上方に配置されており、ローラ部材4に対向する放出口63aと、パイプ65が連通される給水口(不図示)を有している。ノズル63の放出口63aは、液体を霧状に噴出する。
【0059】
パイプ65の他端は、送液ポンプ等の液体供給装置(不図示)に連通されている。液体供給装置には、ローラ部材4に向けて放出する液体が充填されている。この液体は、混練材料100がローラ部材4に付着することを防ぐものであり、例えば、水や食用油などを挙げることができる。液体供給装置は、水や食用油などの液体をノズル63に供給する。ノズル63は、液体供給装置から供給された液体をローラ部材4のテーパー面41a,42a及び調整用カラーの外周面に向けて噴霧(放出)する。
【0060】
ノズル保持部64は、揺動部材2の軸受け21aに固定されている。これにより、ノズル保持部64に保持されたノズル63は、揺動部材2と共に揺動する。すなわち、ローラ部材4に対するノズル63の位置は、揺動部材2が揺動しても常に変わらないようになっている。
【0061】
なお、ローラ部材4に対するノズル63の位置は、揺動部材2の揺動によって変化してもよい。つまり、本発明に係るノズル保持部としては、揺動部材2の軸受け21aに固定することに限定されるものではない。本発明のノズル保持部としては、例えば、取付部(揺動軸)52に固定してもよく、また、天井や壁などその他の構造物に固定する構成としてもよい。
【0062】
[成型器具の動作]
次に、成型器具61の動作について説明する。
混練材料100の角部に丸みを付ける成型器具61の動作は、成型器具1と同様である。そのため、ここでは、ノズル63による液体の放出動作について説明する。
【0063】
ノズル63による液体の放出動作は、混練材料100の角部に丸みを付ける動作と並行して行われる。ノズル63によって噴霧された液体は、ローラ部材4のテーパー面41a,42a及び調整用カラー43の外周面に付着する。これにより、混練材料100がテーパー面41a,42a及び調整用カラー43の外周面から剥離し易くなる。その結果、混練材料100の一部がテーパー面41a,42a及び調整用カラー43の外周面に付着することを防止或いは抑制することができる。
【0064】
本実施の形態では、ノズル63による液体の放出動作を間欠的に行う。つまり、液体供給装置(不図示)は、混練材料100に対する成型動作が複数回行われると、ノズル63に水や食用油などの液体を供給するようになっている。これにより、液体の消費量を削減することができる。
【0065】
なお、本発明に係る液体の放出動作としては、間欠的に行うことに限定されるものではなく、混練材料100に対する成型動作中に常に行うようにしてもよい。
【0066】
〈3.変形例〉
以上、本発明の成型器具の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の成型器具は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0067】
上述の第1及び第2の実施の形態では、外力が加わることによって変形し、且つ保形性を有する成型対象物として混練材料100を例に挙げて説明した。この混練材料100としては、例えば、ハンバーグ、メンチカツの種、コロッケの種、魚肉練り製品、パンの生地などを挙げることができる。また、本発明に係る成型対象物としては、食品に限定されるものではなく、例えば、粘土、樹脂などを適用してもよい。
【0068】
上述の第1及び第2の実施の形態では、上下方向に移動可能な移動部材として揺動部材2を適用したが、本発明に係る移動部材としては、揺動するものに限定されるものではない。本発明に係る移動部材としては、例えば、ばねなどの弾性部材を用いて上下方向に移動可能な構成としてもよい。
【0069】
この場合は、ローラ部材が混練材料を押圧して変形させるときに、成型器具1が上方に直線移動する。その結果、角部に丸みを付けるために必要な最小限の力を混練材料に加えるようにすることができる。
【0070】
上述の第1及び第2の実施の形態では、軸部3がローラ部材4を貫通する構成したが、本発明の成型器具としては、軸部がローラ部材を貫通しない構成にすることもできる。例えば、ローラ部材4の筒孔46aの両側にそれぞれ挿入される一対の軸部を備える構成としてもよい。また、ローラ部材4と軸部3を一体に形成し、揺動部材2(移動部材)が軸部3を軸方向に移動可能に保持する構成としてもよい。
【0071】
上述の第1及び第2の実施の形態では、軸部3とローラ部材4との間に間隙(ガタ)を設ける構成としたが、本発明の成型器具としては、軸部とローラ部材との間に間隙(ガタ)を設けない構成とすることもできる。つまり、ローラ部材4と軸部3を一体に成形してもよい。この場合は、前述したように、揺動部材2(移動部材)が軸部3を軸方向に移動可能に保持するように構成すれば、ローラ部材4を軸方向に移動させることができ、軸方向にずれて搬送された混練材料100の中心にローラ部材4の中心を略一致させることができる。
【0072】
上述の第1及び第2の実施の形態では、一対の接触ローラ41,42と、調整用カラー43と、一対の係止リング44,45と、筒芯部46からローラ部材4を構成した。しかしながら、本発明に係るローラ部材としては、一部品によって形成してもよい。
【0073】
上述の第1及び第2の実施の形態では、ローラ部材4のテーパー面41a,42aを、周方向に連続して凹となる曲面にした。しかしながら、本発明に係るローラ部材のテーパー面としては、混練材料の角部に丸みを付けることが可能であればよく、例えば、周方向に連続して凹となる曲面にすることもできる。また、本発明に係るローラ部材のテーパー面としては、円錐面或いは略円錐面にすることもできる。
【0074】
上述の第2の実施の形態では、ノズル63からローラ部材4に水や食用油など液体を噴霧し、混練材料100の一部がローラ部材4に付着することを防止或いは抑制した。しかしながら、本発明の成型器具としては、その他の方法によって混練材料の一部がローラ部材に付着することを防止或いは抑制してもよい。例えば、温風やヒータによってローラ部材を温める構成にすることで、混練材料の一部がローラ部材に付着することを防止或いは抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
1,61…成型器具、 2…揺動部材(移動部材)、 3…軸部、 4…ローラ部材、 21…アーム部、 22…軸固定部、 41,42…接触ローラ、 41a,42a…テーパー面、 43…調整用カラー、 44,45…係止リング、 46…筒芯部、 51…搬送部、 52…取付部(揺動軸)、 62…液体放出部材、 63…ノズル、 63a…放出口、 64…ノズル保持部、 65…パイプ、 100…混練材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型対象物の搬送路の上方に配置され、上下方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材に保持され、前記搬送路と平行であって前記成型対象物の搬送方向に直交する方向へ延びる軸部と、
前記軸部を軸として回転可能、且つ前記軸部が延びる方向に移動可能とされ、前記成型対象物を成型するローラ部材と、
を備える成型器具。
【請求項2】
前記移動部材は、前記成型対象物の搬送方向に揺動可能に設けられる
請求項1記載の成型器具。
【請求項3】
前記ローラ部材は、前記成型対象物に接触する曲面を有する
請求項1または2記載の成型器具。
【請求項4】
前記ローラ部材は、前記成型対象物に接触する一対の接触ローラと、前記一対の接触ローラの間に介在される調整用カラーとを有する
請求項1〜3のいずれかに記載の成型器具。
【請求項5】
前記一対の接触ローラの少なくとも前記成型対象物に接触する部分は、それぞれテーパー状に形成され、それぞれの先細側が前記調整用カラーを介して対向する
請求項4記載の成型器具。
【請求項6】
前記ローラ部材と前記軸部との間には、間隙が設けられている
請求項1〜5のいずれかに記載の成型器具。
【請求項7】
前記ローラ部材の前記成型対象物に接触する面に対して、前記成型対象物の付着を防ぐ液体を放出する液体放出部材を備える
請求項1〜6のいずれかに記載の成型器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−259358(P2010−259358A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112121(P2009−112121)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】