説明

成形体の製造方法および光学射出成形体

【課題】 成形性に優れた重合体を用いて耐熱性に優れた成形体を製造する方法と、耐熱性および成形性に優れた光学射出成形体を提供すること。
【解決手段】 ジシクロペンタジエン等由来の繰り返し単位を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、特定ノルボルネン系化合物由来の繰り返し単位を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%有し、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が35,000〜55,000である環状オレフィン系重合体を、射出成形により成形することを特徴とする、成形体の製造方法と光学射出成形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の環状オレフィン系重合体を用いた成形体の製造方法および光学射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系開環(共)重合体は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも屈折の異方性が小さいことにより低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている。このような環状オレフィン系開環(共)重合体としては、例えば特許文献1〜6に記載のものなどが挙げられる。
上記の特徴を利用して、例えば光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、環状オレフィン系開環(共)重合体を応用することが検討されている。すなわち、従来から光学用フィルムとして使用されているポリカーボネート、ポリエステルあるいはトリアセチルアセテート等のフィルムは、光弾性係数が大きいために微小な応力変化により位相差が発現したり変化したりする問題や、耐熱性や吸水変形等の問題があるため、これらの問題を解決するものとして、環状オレフィン系開環(共)重合体からなる成形体が提案されている。
【0003】
しかしながら、耐熱性に優れた環状オレフィン系開環(共)重合体は、流動性が不足して成形が困難であり、流動性を向上させると重合体のガラス転移温度が下がって耐熱性が不足するという問題点があった。このため、耐熱性に優れ、かつ十分な流動性を有し成形性に優れる重合体が、強く望まれていた。
【特許文献1】特開平1−132625号公報
【特許文献2】特開平1−132626号公報
【特許文献3】特開昭63−218726号公報
【特許文献4】特開平2−133413号公報
【特許文献5】特開昭61−120816号公報
【特許文献6】特開昭61−115912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、成形性に優れた重合体を用いて耐熱性に優れた成形体を製造する方法と、耐熱性および成形性に優れた光学射出成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の成形体の製造方法は、下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう)を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、下記式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」ともいう)を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%有し、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が35,000〜55,000である環状オレフィン系重合体を、射出成形により成形することを特徴とする。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【0008】
(式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または極性基であり、ただしR1 〜R4 のうち少なくともひとつは極性基である。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または1である。)
【0009】
本発明の製造方法における環状オレフィン系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量は、35,000〜55,000であることが好ましい。
【0010】
本発明の光学射出成形体は、繰り返し単位(1)を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、繰り返し単位(2)を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%有し、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が35,000〜55,000である環状オレフィン系重合体を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の2種の繰り返し単位を特定の割合で有する環状オレフィン系開環共重合体を用いることにより、成形性に優れ、耐熱性に優れた成形体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該樹脂組成物を用いた耐熱性および成形性に優れた光学射出成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
環状オレフィン系重合体
本発明に用いられる環状オレフィン系重合体は、繰り返し単位(1)を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、繰り返し単位(2)を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%有する開環共重合体水素化物である。
繰り返し単位(1)を与える単量体(以下、「単量体(1)」ともいう)としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンおよびトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)が挙げられる。トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンを用いる場合には、開環共重合の後、五員環の水素添加により繰り返し単位(1)が得られる。
【0013】
繰り返し単位(2)を与える単量体(以下、「単量体(2)」ともいう)は、下記式(2m)で表される。
【0014】
【化3】

【0015】
式(2m)中、mおよびR〜Rは、式(2)と同様である。すなわち、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または極性基であり、ただしR1 〜R4 のうち少なくともひとつは極性基である。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または1である。
【0016】
式(2)あるいは式(2m)において、極性基としては、たとえば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0017】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0018】
ここで、繰り返し単位(2)および単量体(2)は、その極性基が、下記式(4)で表される基であることが好ましい。すなわち、式(2)または式(2m)中、R1〜R4の少なくとも1つが、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
【0019】
−(CH2pCOOR’ ・・・(4)
(式(4)中、pは0または1〜5の整数であり、R'は炭素数1〜15の炭化水素基である。)
上記式(4)において、pの値が小さいものほど、また、R'が炭素数の小さいほど、得られる共重合体のガラス転移温度が高くなり耐熱性が向上するので好ましい。すなわち、pは通常0または1〜5の整数であるが、好ましくは0または1であり、また、R'は通常炭素数1〜15の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であるのが望ましい。
【0020】
極性基が上記式(4)で表される基である繰り返し単位(2)を有する場合には、共重合体の耐熱性と吸水(湿)性がバランスに優れるため好ましい。上記式(4)で表される極性基が結合した炭素原子にさらに結合しているアルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
【0021】
このような単量体(2)としては、具体的には、例えば、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−6−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−6−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0022】
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、繰り返し単位(1)を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%有し、繰り返し単位(2)を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%、好ましくは60〜80重量%、特に好ましくは70〜80重量%有することが好ましい。繰り返し単位(1)の割合が20重量%未満であると、流動性が不足するという問題があり、50重量%を超えると、耐熱性が低下するという問題がある。
【0023】
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、繰り返し単位(1)および繰り返し単位(2)のみからなる共重合体であってもよいが、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の共重合性単量体から導かれる繰り返し単位を有していてもよい。その他の共重合性単量体から導かれる繰り返し単位としては、繰り返し単位(1)または(2)以外のノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系単量体を開環共重合して導かれる繰り返し単位が好ましいものとして挙げられ、また、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィン系単量体を開環共重合して導かれる繰り返し単位などが挙げられる。
【0024】
かかる環状オレフィン系重合体は、単量体(1)、単量体(2)および必要に応じてその他の単量体を、開環共重合し、水素添加することにより製造することができる。
【0025】
本発明で用いる環状オレフィン系重合体の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)が、好ましくは35,000〜55,000、さらに好ましくは40,000〜50,000である。Mwが35,000未満では、得られる成形体の強度が低いものとなる場合があり、55,000を超えると、流動性が不足して成形性が不十分になる場合がある。また、GPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)は、好ましくは10,000〜25,000、さらに好ましくは10,000〜20,000である。また、本発明で用いる環状オレフィン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常2.0〜3.5、好ましくは2.5〜3.5である。
【0026】
本発明で用いる環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましく、より好ましくは125〜250℃であり、さらに好ましくは125〜220℃、特に好ましくは130〜200℃である。Tgが110℃以上である場合には、優れた耐熱性を有するため好ましい。Tgが110℃未満である場合には、熱変形温度が低くなるため、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、得られる成形体における温度による光学特性の変化が大きくなるという問題が生じることがある。一方、Tgが250℃を超える場合には、成形温度が高くなりすぎて本発明の共重合体が熱劣化する場合がある。
【0027】
環状オレフィン系重合体の製造方法については、上述した各単量体の共重合に際しては、用いる各単量体の反応性に留意して重合条件を適宜選択して行うことができる。共重合に際しては、重合系中の単量体組成比が重合初期と後期とで大幅に変化しないことが好ましく、単量体濃度が経時的に変化する場合には、重合を早い段階でストップさせるか、重合系中に濃度の減少した単量体を連続的あるいは間欠的に重合系内に供給して、単量体組成比を一定に保つことが好ましい。このように単量体組成比を制御しながら共重合を行うと、透明性に優れた光学フィルムを形成可能な共重合体を得ることができる。
【0028】
本発明で用いる環状オレフィン系重合体を製造するのに好適に用いることのできる開環重合用の触媒としては、例えば、
(I)Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。このような触媒としては、例えば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)アルカリ金属元素(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca)、第12族元素(例えば、Zn、Cd、Hg)、第13族元素(例えば、B、Al)、第14族元素(例えば、Si、Sn、Pd)等の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合または当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組み合わせからなるメタセシス触媒が挙げられる。該触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
また、その他の触媒として、
(II)周期表第4族〜第8族の遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体等からなるメタセシス触媒を用いることができる。
なお、上記触媒(I)と(II)とを組み合わせて用いても差し支えない。
【0029】
本発明で用いる環状オレフィン系重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類等を調整することによっても行うことができるが、分子量調節剤を開環共重合の反応系に共存させることにより調節することが好ましい。分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン類およびスチレンが好ましく、これらのうち、1−ブテンおよび1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この分子量調節剤の使用量は、全単量体1モル当り、通常、0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0030】
開環共重合反応において用いられる溶媒(即ち、単量体、開環重合触媒、分子量調節剤等を溶解する溶媒)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられ、これらの中では芳香族炭化水素が好ましい。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この開環重合反応用溶媒の使用量は、「溶媒:全単量体」の重量比が、通常、1:1〜10:1となる量であり、好ましくは1:1〜5:1となる量であるのが望ましい。
【0031】
触媒を添加する時のモノマー溶液の温度は、30〜200℃が好ましく、より好ましくは50℃〜180℃である。30℃未満の場合は重合体の収率が低下することがあり、200℃を超える場合は分子量コントロールが困難になることがある。
【0032】
開環共重合反応を行う際の反応時間は通常0.1〜10時間であるが、好ましくは0.1〜9時間、より好ましくは0.1〜8時間である。
各環状オレフィン系単量体を開環共重合しただけの開環共重合体は、その分子内にオレフィン性不飽和結合を有しており、耐熱着色などの問題を有しているため、係るオレフィン性不飽和結合は水素添加されることが好ましいが、係る水素添加反応も公知の方法を適用できる。例えば、特開昭63−218726号公報、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開平2−10221号公報などに記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで、開環重合反応および水素添加反応を実施することができる。
【0033】
環状オレフィン系重合体のオレフィン性不飽和結合の水素添加率としては、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であることが望ましい。なお、本発明における水素添加反応とは、上記の通り、分子内のオレフィン性不飽和結合に対するものであり、本発明で用いる環状オレフィン系重合体が芳香族基を有する場合、係る芳香族基は屈折率など光学的な特性や耐熱性において有利に作用することもあるので、必ずしも水素添加される必要はない。
【0034】
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、成形に用いる際、本発明の効果を損なわない範囲において、耐熱劣化性や耐光性の改良のために公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を添加して用いてもよい。例えば、下記フェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物、リン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、本発明に係る重合体成分100重量部に対して0.01〜10重量部添加することで、耐熱劣化性を向上させることができる。
【0035】
フェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、などを挙げることができる。好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、特に好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などを挙げることができる。
【0036】
チオール系化合物としては、t−ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1,3−ジメチルベンズイミダゾール、メルカプト酢酸などを挙げることができる。
【0037】
スルフィド系化合物としては、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、ジラウリル3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3'−チオジプロピオネートなどを挙げることができる。
【0038】
ジスルフィド系化合物としては、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド 、ビス(2−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド 、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド 、2,2'−ジチオジ安息香酸エチル、ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド 、ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、1,1'−ジナフチルジスルフィド 、2,2'−ジナフチルジスルフィド、1,2'−ジナフチルジスルフィド、2,2'−ビス(1 −クロロジナフチル)ジスルフィド、1,1'−ビス(2−クロロナフチル)ジスルフィド 、2,2'−ビス(1−シアノナフチル)ジスルフィド、2,2'−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオン酸エステルなどを挙げることができる。
【0039】
リン系化合物としては、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどを挙げることができる。
【0040】
さらに、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどベンゾフェノン系化合物、N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、あるいは2−エチルオキサニリド、2−エチル−2'−エトキシオキサニリドなどのオキサニリド系化合物を、共重合体100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部添加することにより、耐光性を向上させることができる。
【0041】
なお、添加剤であるこれらの化合物は、一種単独で用いてもよく、組み合わせて用いて
もよい。
また、本発明の環状オレフィン系重合体には、目的とする成形体の特性に応じて、その他の添加剤を添加してもよい。たとえば、着色された成形体を得ることを目的として、染料、顔料等の着色剤を添加してもよく、得られる成形体の平滑性を向上させることを特徴としてレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、たとえば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
【0042】
成形体の製造方法および光学射出成形体
本発明の光学射出成形体は、上述した環状オレフィン系重合体を射出成形してなる。具体的には、上記環状オレフィン系重合体からなるペレットを射出成形して得られる。
本発明に用いる環状オレフィン系重合体は、射出成形の前に、予め、公知の方法で溶存する水分や酸素成分を除去することが好ましい。この際、熱風乾燥機、除湿乾燥機、窒素循環式乾燥機、除湿窒素循環式乾燥機、真空乾燥機など、公知の乾燥装置が用いられる。これらの乾燥装置のうち、色相均一性を有する成型品が得られやすい点で、減圧乾燥機、または窒素などの不活性ガスを循環させる乾燥機を使用することが好ましい。
乾燥温度および乾燥時間は特に限定されるものではないが、通常Tg−100℃〜Tg−20℃で、通常2〜6時間乾燥される。
【0043】
射出成形に使用される射出成形機は特に限定されないが、たとえば、シリンダーの方式としてはインライン方式、プリプラ方式;駆動方式としては油圧式、電動式、ハイブリッド式;型締め方式としては直圧式、トグル式;射出方向としては横型、縦型などが挙げられる。また、型締め方式は射出圧縮できるものでもよい。シリンダー径および型締め力は目的の成形体の形状により決まるが、一般に成形体の投影面積が大きい場合は型締め力を大きくすることが好ましく、成形体の容量が大きい場合はシリンダー径の大きくすることが好ましい。
シリンダーがインライン式の場合、圧縮比、長さ/直径の比、サブフライトの有無などのスクリュー形状は適宜選択でき、スクリュー表面には、クロム系、チタン系、窒化物系、炭素系など、公知のコーティングを施してもよい。また、計量や射出動作の安定性を向上するためにスクリューの回転や圧力を制御する機構などを設けてもよい。また、シリンダー内や樹脂組成物を貯蔵するホッパー内を減圧にしたり、シリンダーおよびホッパーを窒素などの不活性ガスでシールしたりすることは、成形体が安定に得られるという観点から好ましい。
本発明の成形体は、公知の材質や構造を有する金型を用いて製造される。このような金型は、成形体の形状に対応するキャビティーを有する。金型の好ましい材質としては、通常の炭素鋼、ステンレス鋼、またはこれらをベースにした公知の合金類が挙げられ、金型の表面に、焼き入れ処理、クロム、チタン、ダイヤモンドなどによる公知のコーティング処理、またはニッケル系金属、銅合金などによるパターン加工のための金属メッキを施してもよい。
また、集光や反射防止などを目的として成形体表面にパターンを形成する場合には、金型の金属コーティング面もしくは金属メッキ面、またはスタンパ表面に、放電加工機、切削加工機などの公知の加工機で直接パターンを形成してもよく、電鋳などの方法でパターンを形成してもよい。
射出成形の際、成形体のソリの低減や安定した連続成形のために、金型のキャビティー内を減圧する方法または射出圧縮方法が好適に用いられる。
金型のキャビティー内を減圧して射出成形する場合、減圧度は、ゲージ圧で、好ましくは−0.08MPa以下、さらに好ましくは−0.09MPa以下、特に好ましくは−0.1MPa以下である。上記範囲を超えると、減圧度が不足し、光透過性および光拡散性に優れた成形体を得られないことがある。
上記範囲の減圧度は、公知の方法、たとえば真空ポンプを使用して達成される。キャビティー周囲やエジェクター機構部などに、Oリングなどの公知のシール材を使用することが好ましく、成形体に不純物が混入しないなどの範囲で真空用のグリスなどを使用してもよい。また、真空ポンプ等の減圧装置と接続するための吸引口は、金型内の任意の場所に設ければよいが、通常、エジェクター機構部、スプルーおよびランナーの端部、入れ子構造部などに設けられる。また、真空吸引シーケンスは、金型の開閉に併せて電磁バルブなどで制御してもよく、常時運転してもよく、溶融樹脂の充填時に金型のキャビティー内を所望の減圧度にできる方法であれば特に制限されない。
金型のキャビティー内を減圧して射出成形する場合、キャビティーを閉じ減圧になった状態で溶融樹脂を射出するため、通常、射出遅延時間を設定する。射出遅延時間は、使用する真空ポンプの能力およびキャビティーサイズに依存するが、通常0.5〜3秒程度である。
一方、射出圧縮成形方法では、キャビティー間隔を成形体の厚みの1.5〜20倍に設定し、その隙間に溶融樹脂を射出し、シリンダー側で測定される樹脂の圧力を200〜2,000kgf/cm2の範囲に保持しながら、金型内の成形体面を圧縮し、キャビティーの間隔を狭くすればよい。
また、金型のコアを成形体の厚みの1.1倍〜10倍に設定して可動状態とし、そこに溶融樹脂を射出して、射出開始あるいは射出終了後から、可動側コアを平均速度0.01mm/sec〜1mm/secで圧縮してもよい。
これらの射出圧縮成形方法には、公知の成形機が用いられる。
射出成形のその他の条件は、特に限定されるものではないが、通常、シリンダー温度が260〜350℃、金型温度は、環状オレフィン系重合体のガラス転移温度Tgに基づいて、通常Tg−1〜Tg−40℃、好ましくはTg−5〜Tg−25℃の範囲である。また、射出速度は、本発明の成形体の大きさや成形機のシリンダーサイズにより異なるが、たとえば、シリンダー径が28mmの場合、通常80mm/sec以上、好ましくは90〜250mm/secである。保圧では、成形体の形状が保持できる程度の最小圧・時間に適宜調整することが好ましい。
さらに、金型内でのガス成分の圧縮による高温化に起因する樹脂の炭化や、金型内に滞留する揮発成分の凝縮防止を目的として、レンズのキャビティー周囲にガスベント機構を設けてもよい。通常ガスベントの厚みは、50〜150nmの深さで形成される。ガスベントはキャビティーの一部に設けてもよいが、ゲート部を除く全面に形成することも好ましい。また、このようなガスベントは、金型のゲート部、またはランナー部に形成してもよい。
【実施例】
【0044】
次に実施例によって本発明の方法を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で得られた共重合体および成形体の評価は下記の方法によって行った。
<ガラス転移温度(Tg)>
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定した。ガラス転移温度(Tg)は、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K7210に準拠して、98N荷重、260℃でのMFRを測定した。
<重量平均分子量および分子量分布>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC-8020)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
<破断伸び>
射出成形で成形した試験片を用い、ASTM D638の方法により、樹脂の破断伸びを測定した。
<メルトフローレート(MFR)>
射出成形で成形した試験片を用い、JIS K7210に準拠して260℃、10kg荷重でのMFRを測定した。MFRが40以上であれば、加熱流動性に優れるため、成形性に優れた重合体であるといえる。
【0045】
<実施例1>
単量体(1)としてジシクロペンタジエン23.5重量部、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン75.5重量部、その他の単量体として2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン14.7重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.40重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(C653]を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=45900、分子量分布(Mw/Mn)=2.8]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ140℃であった。
2軸押出機を用い、得られた環状オレフィン系重合体(1)を溶融混練りした後、ストランド上に押出し、水冷後フィーダールーダーを通してペレットを得た。得られたペレットを100℃の乾燥機にて2時間真空乾燥させた後、射出成形機(住友重機製 SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton))にて射出成形を行い、80mm×60mm×3.2mmの試験片を製造した。射出成形速度は、100mm/sec、シリンダー温度は、樹脂のTg+140〜160℃、金型温度は樹脂のTg−10〜−20℃の条件で行った。得られた試験片を用いて、破断伸びとMFRの評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例2>
単量体(1)としてジシクロペンタジエン23.5重量部、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン75.5重量部、その他の単量体として2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン13.4重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.40重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(C653]を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=52100、分子量分布(Mw/Mn)=2.9]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ140℃であった。
得られた環状オレフィン系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0047】
<実施例3>
単量体(1)としてジシクロペンタジエン23.5重量部、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン75.5重量部、その他の単量体として2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン16.8重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.40重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(C653]を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=40000、分子量分布(Mw/Mn)=2.9]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ139℃であった。
得られた環状オレフィン系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0048】
<実施例4>
単量体(1)としてジシクロペンタジエン40重量部、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン60重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン14.1重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.40重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(C653]を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=55000、分子量分布(Mw/Mn)=3.2]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ135℃であった。
得られた環状オレフィン系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0049】
<実施例5>
単量体(1)としてジシクロペンタジエン35重量部、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン65重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン16.0重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.40重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(C653]を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=42000、分子量分布(Mw/Mn)=2.8]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ133℃であった。
得られた環状オレフィン系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0050】
<比較例1>
単量体(1)を用いず、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン89重量部、その他の単量体として2−ノルボルネンを11重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン16.8重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.20重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)0.89重量部を加え、80℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRuHCl(CO)[P(C6533を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=49700、分子量分布(Mw/Mn)=3.3]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ130℃であった。
得られた環状オレフィン系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0051】
<比較例2>
単量体(1)としてジシクロペンタジエン23.5重量部、単量体(2)として8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン75.5重量部、その他の単量体として2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン9.2重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.40重量部、およびメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
得られた開環重合体の溶液360重量部に水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(C653]を0.04重量部添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[重量平均分子量(Mw)=58500、分子量分布(Mw/Mn)=2.7]。この水素添加物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体を得た。環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)を測定したところ144℃であった。
得られた環状オレフィン系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、下記式(2)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%有し、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が35,000〜55,000である環状オレフィン系重合体を、射出成形により成形することを特徴とする、成形体の製造方法。
【化1】

【化2】

(式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または極性基であり、ただしR1 〜R4 のうち少なくともひとつは極性基である。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または1である。)
【請求項2】
環状オレフィン系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が35,000〜55,000であることを特徴とする、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
下記式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位100重量%に対して20〜50重量%、下記式(2)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位100重量%に対して50〜80重量%有し、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が35,000〜55,000である環状オレフィン系重合体を含有することを特徴とする、光学射出成形体。
【化3】

【化4】

(式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または極性基であり、ただしR1 〜R4 のうち少なくともひとつは極性基である。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または1である。)

【公開番号】特開2009−178941(P2009−178941A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20034(P2008−20034)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】