成形体及び成形方法、成形装置
【課題】結晶磁気異方性を有する強磁性粉末を一軸加圧成形する際に、成形体の形状が細くて長い形状であっても、十分且つ均一な磁場配向を可能とする成形方法および成形装置を提供する。
【解決手段】強磁性体粉を含む原料粉を金型の成形空間内で一軸加圧成形する成形方法である。一軸加圧方向に外部磁場を印加するとともに、金型の成形空間4の近傍に強磁性体(強磁性体リング3)を配し、この強磁性体リング3を成形空間に対して相対移動させる。強磁性体として、強磁性体スパイラルリングを用いてもよい。成形される成形体は、一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片における主要な結晶面のX線回折ピークの半値全幅と、中央付近の分割片における前記半値全幅との差が0.05°未満である。
【解決手段】強磁性体粉を含む原料粉を金型の成形空間内で一軸加圧成形する成形方法である。一軸加圧方向に外部磁場を印加するとともに、金型の成形空間4の近傍に強磁性体(強磁性体リング3)を配し、この強磁性体リング3を成形空間に対して相対移動させる。強磁性体として、強磁性体スパイラルリングを用いてもよい。成形される成形体は、一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片における主要な結晶面のX線回折ピークの半値全幅と、中央付近の分割片における前記半値全幅との差が0.05°未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば結晶磁気異方性を有する強磁性粉末が一軸加圧成形された成形体及びその成形方法、成形装置に関するものであり、特に、配向を制御するための新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、高速で高精度な変位制御や位置制御が求められており、さらには前記制御を行う制御装置の小型化・低コスト化が求められている。具体的な分野としては、燃料吐出装置(インジェクター)、医療機器、いわゆるマイクロマシン、ナノマシン等を挙げることができる。
【0003】
そして、前記要求に対し、いわゆる超磁歪材料は、変位制御、位置制御に高いポテンシャルを持つ材料として注目されている。また、例えばTb−Dy−Fe系等のRT2(Rは希土類元素、Tは3d遷移金属元素を表す。)系超磁歪材料は、PZTに代表されるような圧電材料に比して約2倍以上の変位が可能であることから、音響関連のエキサイタとしても注目されている。
【0004】
前記Tb−Dy−Fe系に代表される超磁歪材料は、ゾーンメルト法等の単結晶成長でも作製することはできるが、生産性、コスト、特性制御性等の観点から、一般に粉末の磁場中成形体を焼結する粉末冶金法が採用されている(例えば、特許文献1等を参照)。これにより、配向性に優れる多結晶体の超磁歪材料を安価に得ることができる。
【特許文献1】特開平7−286249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば前記Tb−Dy−Fe系の超磁歪材料は、単位長さ当たり1000ppmオーダーの変位量が得られる高変位材料である。ただし、これらを変位素子に応用する場合においては、所望の変位量を満たすために、分母となる正味の長さとして、ある程度以上の長さが必要である。すなわち、より大きな変位のためには、より長い超磁歪材料が必要になる。一方、デバイスや装置全体の小型化の観点から、長さ方向以外の横方向の大きさは必要最小限に設計されるため、超磁歪材料全体の形状の要求は、より細く長くなる傾向にある。また、燃料吐出装置などでは、超磁歪材内部にトンネル状の穴を設け、超磁歪材料を変位導入以外に液体の通路として用いることも検討されている。
【0006】
前述のような細く長い形状、さらには中空に穴を持つ細長い形状の素子を形成する場合、複数の超磁歪材料の接合や、慎重で微細な削り出し等を用いざるを得ない場合も多い。しかしながら、それらは、加工精度や製作容易性、低コスト化、歩留まり、再現性、さらには後プロセスに対する機械的耐性等の点において、優れているとは言えない。したがって、性能面でも、コスト面でも、さらには機械的精度や強度の面でも、前記粉末冶金法によって、超磁歪材料を一体で単一の成形体として形成することが望ましい。
【0007】
ここで、前記超磁歪材料等を成形する場合、成形時に粒子を磁場配向させるための外部磁場が必要となる。例えば、Tb−Dy−Fe系に代表されるようなRT2系の超磁歪材料の結晶質は、特別の場合を除き、磁気的相転移点以下で結晶磁気異方性を有する。このような材料の粒子や粉末を成形する際には、特性向上、特性管理の点から、磁場配向させるのが通常である。
【0008】
前記磁場配向の際には、各強磁性粒子の磁化ベクトルは印加磁場に沿った方向に向こうとし、粒子の方位は磁化容易軸方向に磁化ベクトルが来るよう回転する。これらの効果は一般に印加磁場が大であるほど顕著であるので、磁場配向成形時には、より大きな磁場が求められる。
【0009】
一方、前記材料の粒子や粉末を磁場配向しながら成形する方法としては、加圧方向と磁場印加方向が直交する成形法(いわゆる横磁場成形)や、加圧方向と磁場印加方向が平行な成形法(いわゆる縦磁場成形)が知られているが、円柱形状や円筒形状等の形状に成形する場合には、横磁場成形よりも縦磁場成形の方が適している。
【0010】
しかしながら、縦磁場成形を採用した場合、同様な横磁場成形に比較して強い磁場を印加し難く、磁場配向等の十分な効果を得るには、成形体の長さや細さが制限される可能性がある。逆に言えば、所望の長さ、細さに強い磁場を与えるには、同様な横磁場成形に比較してより強力な磁場発生用電源や磁気回路が必要である。
【0011】
成形する材料への磁場印加には、集中的なソレノイドコイル、一様性に優れるヘルムホルツコイル、電磁石や永久磁石とコアやポールピースを組み合わせて用いた磁気回路等が用いられるが、これらの中で、大きな定常磁場が得られ、縦磁場成形の機構と両立させ易いのは、コア等を用いた磁気回路である。ただし、前記磁気回路を用いた磁場印加では、試料長(成形体の長さ)が長くなると、磁気回路のギャップ長が長くなり、それに応じて印加可能な最大磁場は減少する。また、試料が細くなると、成形機構側との取り合い・干渉の問題で、成形する試料近傍に広い磁極面を持ったポールピース部分を設置することが困難になり、同様に印加可能な最大磁場は減少する。したがって、前記のような細く長い形状に成形する場合には、印加し得る磁場の大きさが著しく制約されることになる。
【0012】
また、従来の磁場印加では、印加し得る磁場の大きさばかりでなく、磁場の均一性という点でも十分とは言えない。前記コア等を用いた磁気回路で磁場印加する場合、完全に平行で一様な磁場を形成することは現実には不可能に近く、場所によって磁場の大きさや方向等が多少異なるのが実情である。したがって、成形される成形体においては、配向度のバラツキが生ずるおそれがある。前記配向度のバラツキは、特性のバラツキに繋がり、好ましいものではない。
【0013】
このような状況から、得られる成形体の観点から見た場合には、十分な磁場配向が行われず、配向度の均一性が不十分で、その結果、磁気特性(例えば磁歪特性)が不十分になるという大きな問題があり、その改良が望まれている。また、成形方法や成形装置の観点から見た場合には、例えば縦磁場成形での成形が容易な円筒形状や円柱形状を成形するに際して、簡便に強い磁場を印加する方法が求められている。
【0014】
本発明は、前記従来の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、例えば、細くて長い形状であっても十分な磁場配向が施され、これまで実現され得なかった配向度のバラツキが著しく小さい成形体を提供することを目的とし、これにより磁歪特性等、特性的にも優れた成形体を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、例えば細く長い形状を縦磁場成形により成形する場合にも、十分に強い磁場を均一に印加することができ、磁場配向の効果を十分に得ることが可能な成形方法、成形装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、強力な磁場発生用電源や磁気回路が不要で、簡便に強い磁場を印加することが可能な成形方法、成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的を達成するために、本発明の成形体は、強磁性体粉を含む原料粉が一軸加圧成形されてなる成形体であって、前記一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片における主要な結晶面のX線回折ピークの半値全幅と、中央付近の分割片における前記半値全幅との差が0.05°未満であることを特徴とする。
【0017】
本発明の成形体は、配向性に優れ、これまでになく配向度の均一性に優れた成形体である。前記半値全幅との差が0.05°未満ということは、成形体の両端部と中央部とで配向度がほとんど変わらないことを意味し、これほどまでに配向度の均一性に優れた成形体は実現されたことがない。
【0018】
なお、本発明で言うところの成形体は、強磁性体粉を含む原料粉が加圧成形された成形体全般を含む概念であり、例えば、特段の処理(焼成等)を行っていない未焼結成形体や、焼成後の焼結体等、最終的な形態は問わず、製造の過程で前記加圧成形が行われたものを全て含むものとする。
【0019】
前記のような配向度の均一性に優れた成形体を成形するには、磁場印加方法に工夫が必要である。従来技術のように、一方向に外部磁場を印加しながら成形するだけでは、前記ように配向度の均一性に優れた成形体を得ることは難しい。これを規定したのが、本発明の成形方法、成形装置である。すなわち、本発明の成形方法は、強磁性体粉を含む原料粉を金型の成形空間内で一軸加圧成形する成形方法であって、前記一軸加圧方向に外部磁場を印加するとともに、前記金型の成形空間の近傍に強磁性体を配し、当該強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の成形装置は、強磁性体粉を含む原料粉を一軸加圧成形する成形空間を有する金型と、前記金型の成形空間に外部磁場を印加する外部磁場印加手段と、前記金型の成形空間の近傍に配される強磁性体とを備え、前記強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させる移動機構を有することを特徴とする。
【0021】
本発明の成形方法、成形装置では、成形空間の近傍に磁性体を配置し、これに磁極を発生させて局所磁場を発生させ、外部磁場に重畳させることで、有効磁場が前記外部磁場よりも大である領域を形成する。前記局所磁場は、成形空間の近傍に配置した強磁性体を移動することによって移動し、これを移動することで前記有効磁場が外部磁場よりも大である領域を広い範囲に作用させることができ、配向性に優れた成形体が得られる。また、前記局所磁場の移動は、場所による外部磁場の強さや方向等の相違を解消する方向に働き、その結果、成形体の全ての部分において極めて均一な磁場印加が実現される。これらの作用により、配向性に優れ、配向度の均一性に優れた成形体が成形される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば、細くて長い形状であっても十分な磁場配向、均一な磁場配向を施すことが可能であり、配向性に優れ、これまで実現され得なかったような配向度のバラツキが著しく小さい成形体を提供することが可能である。
【0023】
また、本発明の成形方法、成形装置によれば、例えば細く長い形状を縦磁場成形により成形する場合にも、十分に強い磁場を均一に印加することができ、しかも、強力な磁場発生用電源や磁気回路が不要で、簡便に強い磁場を印加することが可能であるので、装置構成の簡素化や使用電流の低減等が可能である。したがって、これらにより、例えば体積や長さ当たりの変位が大きく、デバイス化等に適した超磁歪素子等を、市場に安価に安定供給することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を適用した成形体及びその成形方法、成形装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、超磁歪素子の成形を例にして説明するが、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
図1(a)は、本発明を適用した成形体(焼結体)の一例を示すものである。この成形体1は、超磁歪材料を一軸加圧成形した成形体を焼成したものであり、本例の場合、円筒形状を有する。成形体の形状としては、これに限らず、例えば円柱形状や、角筒形状、角柱形状等、任意であるが、細長い形状、具体的には成形体の外径寸法(あるいは幅寸法)が長さ寸法よりも小さい形状に適用することが好ましい。
【0026】
超磁歪素子の場合、前記成形体(焼結体)は例えば希土類元素と3d遷移金属元素を主たる構成元素として含む磁歪材料から構成され、磁歪変位が大きく、高速応答性に優れ、大きな駆動力を発現するという優れた特徴を有する。具体的組成としては、例えばRTy(ここで、Rは1種類以上の希土類元素、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4である。)で示される組成となるように原料合金粉を焼結すればよい。
【0027】
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類元素から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特にNd、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho等の希土類元素が好ましく、Tb、Dyがより一層好ましく、これらを混合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が好ましく、これらを混合して用いることができる。
【0028】
RTyで表される合金のうち、y=2であるRT2ラーベス型金属間化合物は、キュリー温度が高く、磁歪値が大きいため、磁歪素子に適する。ここで、yが1以下では、焼結後の熱処理でRT相が析出して磁歪値が低下する。また、yが4以上では、RT3相又はRT6相が多くなり、磁歪値が低下する。このため、RT2がリッチな相を多くするために、yは1<y<4の範囲が好ましい。
【0029】
Rは、2種以上の希土類元素を混合してもよく、特に、TbとDyを混合して用いることが好ましい。具体的には、TbaDy1−aで表される合金で、aは0.27<a≦0.50の範囲にあることが一層好ましい。これにより、(TbaDy1−a)Tyなる合金で、飽和磁歪定数が大きく、大きな磁歪値が得られる。ここで、aが0.27以下では室温以下では十分な磁歪値を示さず、逆に0.50を越えると室温付近では十分な磁歪値を示さない。
【0030】
Tは、特にFeが好ましく、FeはTb、Dyと(Tb、Dy)Fe2金属間化合物を形成して、大きな磁歪値を有し磁歪特性の高い焼結体が得られる。このときに、Feの一部をCo、Niで置換してもよいが、Coは磁気異方性を大きくするものの、透磁率を低くし、また、Niはキュリー温度を下げ、結果として常温・高磁場での磁歪値を低下させる。したがって、Feは70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0031】
本発明の成形体において特徴的なことは、例えば円筒形状の成形体1において、その配向度の均一性に極めて優れることである。すなわち、前記成形体1を一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片と中央付近の分割片とは、ほとんど同じ配向度となっている。
【0032】
例えば、図1(b)に示すように、前記円筒形状の成形体1を一軸加圧方向(本例の場合、円筒の中心軸方向)に7等分に分割した場合を考える。前記円筒形状の成形体1を7等分してリング状の分割片1a〜1gとすると、本発明の成形体の場合、両端の分割片1a,1gと、中央近傍の分割片(前記のように奇数等分した場合には、中央の分割片1d)とで配向度にほとんど差が無いことが特徴である。
【0033】
この配向度の指標としては、本発明においては、X線回折ピークの半値全幅を採用する。例えば、前記超磁歪材料の場合、立方晶系であって、[hhh]方向が結晶磁気異方性の磁化容易軸方向である。一軸加圧成形では、一軸加圧方向を鉛直方向とする平面の磁場方向に、前記結晶磁気異方性としての磁化容易軸が優先配向する。したがって、前記図1(b)に示すように成形体1を一軸加圧方向に等分割した場合、切断面には前記磁化容易軸と直交する結晶面が含まれることになる。そこで、前記磁化容易軸と直交する主要な結晶面の粉末法X線による回折ピークを測定し、その半値全幅を比較することで、各分割片1a〜1gの結晶配向度を把握することができる。
【0034】
前記希土類元素と3d遷移金属元素を主たる構成元素として含む磁歪材料の成形体の場合、前記主要な結晶面として、[222]面の粉末X線回折ピークを測定し、前記両端の分割片1a,1gと中央の分割片1dの半値全幅を比較する。本発明の成形体の基準としては、前記両端の分割片1a,1gの半値全幅と中央の分割片1dの半値全幅の差が0.05(degree)未満である。前記半値全幅の差を0.05(degree)未満とすることで、配向性とその場所一様性に優れた成形体とすることができ、例えば磁歪特性等の性能の点でも優れた成形体(超磁歪素子)を実現することが可能である。
【0035】
前述のような配向性及びその場所一様性に優れた成形体を成形するには、成形時の磁場印加方法を工夫する必要がある。具体的には、一軸加圧成形する際の成型空間の近傍に磁性体を配置し、これに磁極を発生させて局所磁場を発生させ、外部磁場に重畳させることで、有効磁場が前記外部磁場よりも大である領域を形成する。そして、成形空間の近傍に配置した強磁性体を移動することによって前記局所磁場を移動し、前記有効磁場が外部磁場よりも大である領域を広い範囲(成形空間の全ての領域)に均等に作用させて配向性に優れ、その場所一様性に優れた成形体を得る。
【0036】
以下、前記有効磁場が外部磁場よりも大である領域の形成、及びその移動について、基本原理を説明する。
【0037】
先ず、磁性体の配置により外部一様磁場よりも高い有効磁場が一部の領域に発生する機構を説明する。図2は、このための説明図であり、前記外部一様磁場よりも高い有効磁場を発生するための最も単純な組み合わせである。
【0038】
図2(a)及び図2(b)は、一軸加圧成形を行うための成形装置の構成例を模式的に示すものであり、金型のダイ2中にリング状の強磁性体リング3が一つのみ組み込まれている。ダイ2の他の部分は非磁性体である。前記ダイ2には、成形空間4が形成されており、その中心部に中棒5が挿入されてリング状の成形空間4とされている。この成形空間4内に原料粉6を充填し、下パンチ7及び上パンチ8で加圧することにより成形が行われる。
【0039】
ここで、強磁性体リング3の内径をrin、外径をrout、長さをLとする。また、金型の外部から印加される一様な外部磁場をHexとする。この時、成形される原料粉が充填される空間(成形空間4)、すなわち、強磁性体リング3の内径rinよりも距離Q以上内側の空間で有効磁場が外部磁場より高まる領域が生じることを以下に示す。
【0040】
一例として、強磁性体リング3の内径rin=5mm、外径rout=10mm、長さL=10mmとする。この時に強磁性体リング3の内側に発生する局所的磁場Hlocalの場所による変化を図3に示す。該磁場の値は、一般的な有限要素法で計算したものである。なお、ここで、一様な外部磁場Hexにより磁化した強磁性体リング3の端面の磁極密度、すなわち磁化を1Tと仮定した。強磁性体リング3は、球や回転楕円体のように内部で一様な反磁場係数を定義できる形状ではない。しかしながら、例えば、強磁性体リング3の自発磁化が1Tより十分大きく、比透磁率が1000以上、実効的な反磁場係数を0.5程度とみなした場合、500kA/m(=約6kOe)程度か、それ以上の一様外部磁場を印加すれば、1T程度の磁化は可能である。
【0041】
図3の原点は、強磁性体リング3の重心点に取り、強磁性体リング3の長手方向にx軸、半径方向長さにr軸を取った。すなわち、強磁性体リング3の存在範囲は、リングの内径をrin≦r≦rout、且つ−L/2≦x≦+L/2である。図3から明らかなように、−L/2≦x≦+L/2、すなわち−5mm≦x≦+5mmの範囲では、負の局所的磁場が発生する。したがって、r=5mm以下、すなわち、強磁性体リング3の内側の空間では、外部磁場Hexを弱める局所的磁場Hlocalとなる。その結果、外部磁場Hexと局所的磁場Hlocalとの和である有効磁場Heffは、前記外部磁場Hexよりも低い値となってしまう。例えば、外部磁場Hexが500kA/m程度であるとすれば、有効磁場Heffはその約半分の250kA/m前後の値となる。
【0042】
一方、+L/2<x,及び、x<−L/2の領域では、局所的磁場Hlocalの値は正となる。特に、磁性体リング3の内径5mmよりも僅かに内側のr=4.5mmやr=4.0mmの位置では、+100kA/m程度以上の実用上十分意味のある正の局所磁場が発生する。例えば、x=6mm、すなわち、強磁性体リング3の一端から1mmほど軸方向に離れた位置で、前記距離Q=0.5mm、またはQ=1.0mmの位置での有効磁場Heffは外部磁場Hexより+100kA/m前後高い値、例えば、外部磁場Hexが500kA/m程度であるとすれば、600kA/m程度の値となる。この効果は、強磁性体リング3から遠ざかるほど減少、すなわち、rが零に近い内側に行くほど弱まるので、円柱形状よりも円筒形状の成形体に対してより有効に働くものと考えられる。
【0043】
さらに、強磁性体リング3の形状と局所的磁場の相関を基本的な例で示す。図4から図6は、図3と同じ条件及び仮定の下で、強磁性体リング3の長さLだけを5mm,2mm,1mmと変化させた場合の局所的磁場の場所依存性を示すものである。このように、局所的磁場が正で、外部一様磁場を強める方向に働く場所での局所的磁場の値は、磁性体リング3の長さLが短くなるほど値が減少する。これを基に、強磁性体リング3の半径方向の厚さTと長さLの比(L/T)と局所磁場の相関の一例を図7に示す。図7に示すように、L/Tは、概ね大であるほど局所的磁場の最大値は大きくなる。しかしながら、原料粉を充填する領域は有限の長さを有することから、前記強磁性体リング3の長さLが大であると、局所的磁場が正の領域に存在する原料粉の割合が低下するものと考えられる。したがって、成形体の形状や全体の設計の中で前記比(L/T)は決定する必要がある。
【0044】
以上示したように、金型中に強磁性体リング3を組み込むことで、原料粉を充填する成形空間4の少なくとも一部に、外部磁場よりも高い有効磁場を印加することが可能であることが示された。ただし、その領域は全体的ではなく、限定的で、その効果を実用上十分なものに引き上げるには、金型構造等の工夫、強磁性体リング3の意識的な設計等が必要になる。
【0045】
以上の検討結果を基に、本発明では、ダイ2の一部または全部に強磁性体を用い、さらに、必要に応じて強磁性体の表面または界面に凹凸構造を設けることで、強磁性体の角部で生ずる局所的磁場を利用して成形する材料に与える最大磁場を増加させる。あるいは、中棒5の一部または全部に強磁性体を用い、さらに、必要に応じ該強磁性体の表面または界面の磁極を利用して、成形する材料に与える最大磁場を増加させる。さらには、ダイ2と中棒5の双方に強磁性体部分を含む構造を採用することで、該強磁性体の発生する2次的な局所的磁場を設計制御し、成形する材料に与える最大磁場を増加させる。
【0046】
ここで、前記局所的磁場を形成するためには、前記の通り配置する強磁性体が角部を有することが必要である。例えば、成形空間4の高さ寸法よりも小さな幅を持った強磁性体リングを配置した場合、成形空間4には強磁性体の端部が角部として臨むことになり、前記局所磁場が形成される。例えば、ダイ2の成形空間4に臨む内周部全体に強磁性体を配した場合には、前記端部が角部として臨むことがないので、このような場合には強磁性体に凹凸を形成し、凸部(凹部)のエッジが角部として臨むようにすることが必要である。
【0047】
前述のように局所的磁場を形成し成形する材料に与える最大磁場を増加させるためには、前記の通り配置する強磁性体が前記凹凸構造等によって角部を有することが必要で、例えばダイ全体が表面に特段の凹凸を有しない強磁性体、特に、軟磁性材料等により構成される場合には、外部磁場によって磁化されたダイの発生する磁場が、円筒状の成形体に対して、外部磁場を弱める方向に働き、縦磁場成形効果を弱めたり、実質的な磁場印加効果をほとんど無くしてしまう。中棒全体が特段の凹凸のない強磁性体で構成される場合も同様で、外部磁場によって磁化された中棒の発生する磁場が、円筒状の成形体に対して外部磁場を弱める方向に働き、縦磁場成形効果を弱めてしまう。ダイや中棒が強磁性体でなく例えば非磁性体や弱い反磁性材料である場合には、円筒状の成形体に掛かる磁場は外部磁場と概略同じである。
【0048】
前述のように、磁性体を配置することによって局所的磁場を発生させ成形材料に与える最大磁場を大きくすることができるが、磁性体を固定した状態のままでは、成形空間4の一部分に対しては外部磁場よりも大きな磁場を印加することはできるものの、逆に外部磁場よりも小さな磁場しか印加されない部位も存在することになる。そこで、本発明では、前記磁性体を移動させることで、前記成形空間4の全ての場所で、外部磁場よりも大きな磁場が印加された履歴を持たせるようにする。
【0049】
一般に、磁場中配向は、等方に近い配向状態にある粉体や粒子群に対し、一方向の磁場を印加することで、その方向に各粉体や粒子の磁化容易軸や磁化容易方向を優先配向させ、さらに粒子の状態や複数種の組み合わせによっては、磁場印加方向に粒のクラスター状の配列等を生じせしめるものである。これらの配向では、一般に印加磁場が大であるほど配向性が向上する。また、これら粉体や粒子は、配向の際に微視的な摩擦障壁を乗り越えて回転や移動しているので、前記障壁を乗り越えるための最大磁場が加わった後は、外部磁場がある程度弱まっても、配向の減少は比較的小さい。すなわち、各部位における外部印加磁場の最大値が、配向に寄与する最大要素である。
【0050】
本発明の場合、空間的な磁場は非一様であるが、局所的磁場を形成する磁性体の角部を一定の時間内で移動させることで、成形試料全体に一様で、単純な外部印加磁場より大きな印加磁場最大値を得た履歴を与えることができる。この結果、従来よりも優れた配向度を成形体に均一に与えることが可能となる。そして、得られる成形体を例えば焼結することで、優れた配向性の強磁性体が得られる。具体的には、異方的な特性を持つ超磁歪材、磁歪材、永久磁石材等である。 なお、前記成形体は、焼結前に、さらに別の成形機で追加加圧等しても良いのは当然である。また、強磁性体リングは、軟磁性材ではなく、硬質磁性材料としてもよく、この場合、一定の性能範囲であれば、外部印加磁場の機構を省略しても実用的な配向処理が可能である。
【0051】
前記のように磁性体の角部を移動して成形体全体に一様に外部印加磁場より大きな有効磁場を与えるための具体的方法としては、例えば図8(a)に示すように、成形体の長さよりも長さ寸法が小さい強磁性体リング3をダイ2の上下方向に移動させる方法や、図8(b)に示すように、螺旋状の強磁性体スパイラルリング9を回転させる方法、図8(c)に示すように、サイン波状の強磁性体リング10を回転される方法等が考えられるが、勿論、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0052】
そこで次に、強磁性体スパイラルリングを用いた成形装置を例にして、本発明の成形方法、成形装置の具体的態様について説明する。
【0053】
図9(a),(b)に、前記強磁性体スパイラルリング9を備えた成形装置を用いて磁気異方性を有する強磁性体粒子または粉末の縦磁場成形を行う場合の一実施形態を模式的に示す。図9(a),(b)には、円筒状試料の縦磁場成形(Parallel compaction)を構成する主要部材であるダイ11、上パンチ12、下パンチ13、中棒14を示した。これらを支持、保持、運動させる周辺部位の図示は省略した。また、外部磁場の磁力線の方向の概略を矢印で示した。外部磁場を発生させるコイルや磁気回路、パンチ近傍まで磁場を伝えるコアなどの要素の図示は省略した。なお、外部磁場を示す矢印は、磁場の印加の概念を伝えるものであり、必ずしも、磁力線のようにN極からS極へ向くものではなく、逆の場合もある。また、外部磁場の大きさや方向は、一般に場所によって一定の分散があり、矢印の大きさや方位が、固定された磁場の大きさや方向を表すものではない。
【0054】
図9に示す成形装置では、非磁性体のダイ11の中に、強磁性体スパイラルリング9が埋め込まれている。該スパイラルリング9はスリーブ状になっており、回転あるいは上下動させることができる。強磁性体スパイラルリング9のリング上下のスペースは非磁性材で構成されている。なお、図9(b)では、ダイ11の内壁は非磁性体であるが、加工性、硬度、強度、スリーブの回転に問題が無い場合、強磁性体スパイラルリング9の一部がダイ11の内壁を兼ねていても良い。
【0055】
強磁性体スパイラルリング9に用いる強磁性体材料は特に限定されないが、例えば、極端な保磁力や残留磁化を持たない軟磁性材料が制御性の観点からは優れている。その比磁化率は、特に限定されるものではないが、設計の自由度と効果の観点から、比磁化率100以上が好ましく、1000以上であるとさらに良い。ただし、磁場発生用電流低減や磁場発生機構の簡略化の観点からは、スパイラルリング9に用いる強磁性体に、一定の保磁力や残留磁化を持つ硬質磁性材料を用いても良いのは当然である。残留磁化は0.1T以上であることが実用上好ましく、0.3T以上であるとさらに良い。保磁力も80kA/m以上であることが好ましく、240kA/m以上であるとさらに良い。
【0056】
このダイ11に外部磁場の縦磁場を印加すると、強磁性体スパイラルリング9が磁化され、リングの上下端面に磁極が生じる。この磁極が作る新たな磁場は、リング側面に対しては、概ね外部磁場の逆方向に働く磁場を発生する。一方、強磁性体スパイラルリングの上下のリング間の領域には、概ね外部磁場と同方向の磁場が発生する。したがって、強磁性体スパイラルリング9の側方にある円筒状の成形空間内の原料粉15にも、この2次的な磁場がやや減少しながら作用する。この結果、概略としては、側面にスパイラルリング9が存在する部位では印加磁場が減少し、側面がスパイラルリング9のスペース部である部位では印加磁場が増大する。
【0057】
図10(a)〜(c)は、このような2次的な磁場の数値計算例を示す。ここで、図11は、前記ダイの断面の模式図であり、前記数値計算に際しては、図11に示すように、円筒の軸方向にZ軸を取り、直交方向にr軸を取った。図10(a)は、{Rin,Rout,Q,T,L}={3mm,5mm,1mm,4mm,8mm}とした場合に、強磁性スパイラルリング9の一巻きが発生する2次的局所磁場のZ軸成分を所定の場所(R=5mm,−16mm<Z<16mm)、すなわち、円筒状に成形される原料粉の最外周部を円筒軸方向に走査した領域について図示したものである。なお、ここで、ダイ11中の強磁性体スパイラルリング9のZ軸端面の磁化は一様に+1Tと仮定した。このように、強磁性スパイラルリング9の側面に当たる−4mm<z<4mmの領域では、2次的局所磁場は負の値を示した。前記値が負であるということは、巨視的な外部印加磁場に対して2次的な局所磁場の方向が逆であることを意味する。
【0058】
さらに、前記強磁性スパイラルリング9は、スペースSの間隔で繰り返し構造をとるものである。ここで、S=8mmとした場合に最隣接リングの2次的局所磁場を考慮した磁場計算値を図10(b)に示した。このように、強磁性スパイラルリング9のスペース部を側面に持つ部位(−12mm<z<−4mm,4mm<z<12mm)では、概ね正の値が得られていることがわかる。
【0059】
次に、実効的な有効磁場、すなわち、巨視的な外部印加磁場と2次的局所磁場の和について示す。図11の各部寸法が上述のように{Rin,Rout,Q,T,L}={3mm,5mm,1mm,4mm,8mm}である場合、強磁性スパイラルリング9のZ軸方向の実効的な反磁場係数は、一定のモデル計算の下で約0.35程度である。強磁性スパイラルリング9が、比磁化率が十分に高い飽和磁化2T級の軟磁性体とすると、例えば530kA/m(6.6kOe)程度以上の外部磁場印加で、強磁性スパイラルリング9に約2Tの飽和磁化に近い値を与えることが可能である。この時に円筒状に成形される原料粉が感じる有効磁場、すなわち外部磁場と2次的局所磁場の和は、図10(c)のようになる。このように、局所的な最大磁場は、印加磁場530kA/m(6.6kOe)の1.4倍の744kA/m(9.3kOe)に拡大されることが示された。モデルの精度や、実際の強磁性材料の不完全性などで、計算値と実際の値には若干のずれは生じるが、本発明の基本的な磁場分布を妨げるような大きなずれはあり得ず、許容できるものである。
【0060】
以上の計算結果に基づいて、図9に示すように、強磁性リング部をスパイラル状(強磁性体スパイラルリング9)とするとともに、非磁性体と組み合わせてスリーブ状としてダイ11に組み込み、これを回転させることで、成形される原料粉の受ける最大磁場の履歴を場所に依らず一様にすることができる。その結果、円筒状原料粉の外周部全てに対し、外部印加磁場の約1.4倍の最大磁場を印加した履歴を与えることができる。なお、最小磁場の履歴自体は、160kA/m(=2kOe)と低い値になるが、符号が逆転したり実質的に零近傍の値になるものではなく、履歴最大磁場で強く配向した状態を保持するに当たって問題は生じない。
【0061】
また、前記の機構説明は強磁性スパイラルリング9によるものであるが、これは一本のスパイラルではなく、2本あるいは2本以上のスパイラルでも良いのは当然である。また、金型の外径部のダイ11側ではなく、中棒14の側に電動ドリル歯状の強磁性体スパイラル構造を設けることでも、同様の効果が得られる。また、外径部のダイ11側と中棒14側の双方に強磁性体スパイラルリング9を用いることで、履歴最大印加磁場の向上や分布調整を行ってもよい。
【0062】
さらに、強磁性体リングがスパイラル構造ではなく、例えば、円筒軸を中心に360度回転する場合にZ軸方向に上下するサイン波などの三角関数、あるいは適当な三角関数の線形和のように波形のリング及び複数の波形リングでも良い[図8(c)参照]。この場合、Z軸方向の振幅は、S/2以上が好ましく、(L+S)/2以上であると、さらに良好な一様性が得られる。また、強磁性体が単純な円環状リングおよび複数の円環状リングでもよい[図8(a)参照]。この場合、強磁性体リングを含むスリーブ自体をZ軸方向に上下させることで同様の一様化効果が得られる。Z軸方向の上下動の振幅はS/2以上が好ましく、(L+S)/2以上であると、さらに良い一様性が得られる。
【0063】
次に、金型中の強磁性体部の発生する2次的な磁場の局所性と有効な形状について説明する。前述の強磁性体リングの作る2次的な磁場は、リングの端面から遠ざかると急激に減衰する局所的なものである。その局所性は、リング形状に強く依存するので一概に言えないが、実用上有効な範囲は、リングの鉛直方向の長さLや、リングの厚さTの1倍から数倍程度である。
【0064】
例えば、図4に示すような局所磁場が形成される強磁性リングの場合、L=T=5mmである。この時、リングの端面(x=2.5mm)からLまたはTの1倍離れた位置(x=7.5mm)では、正の局所磁場の最大値の半分程度の局所磁場が発生しており、十分効果が有効な範囲である。しかしながら、10倍以上では実質的な効果が乏しい。例えば、L程度よりさらに遠ざかれば、長さLのダイポールの双極子場である局所磁場は相殺により減少する。また、T程度よりさらに遠ざかれば、ガウス(Gauss)の定理により、幅Tの磁極面から発生する磁力線の磁力線密度は、その位置から当該磁極面を見た立体角にほぼ比例するので、1/10倍かそれ以下程度に大きく減少する。
【0065】
また、端面近傍で半径方向に強磁性体リングから遠ざかれば、例えば、端面から軸方向に5.0mm離れたx=7.5mmの位置で、r=4.5mmから4.0mm,3.0mmと内側に遠ざかれば、局所磁場は(x=4mm,r=4.5mm)付近の最大値を基準にして、r=4.5〜4.0mmで最大値の約7割、r≦2mmの領域では、局所磁場は最大値の約5割になる。ここでL=T=5mmであるから、これらの10〜20%程度内側に離れた位置(r=4mm〜4.5mm)で一定の効果があり、60%〜100%離れた位置(r=0〜2mm)では効果が最大値の約半分になる、と言い換えることができる。ただし、この事例は単純なシングルリングの場合であり、リングを繰り返し用い、隣接するリングからの局所磁場効果も有効に足し上げれば、最大でほぼこの倍程度の局所磁場が得られる場合も期待される。
【0066】
したがって、ダイ11側の強磁性スパイラルリング9は、ダイ11の内壁に極力近くに配置し、また磁場印加する成形体も肉薄の円筒等である場合に、最も好適で実質的効果が高くなる。
【0067】
以上述べたように、強磁性リングの形状をリングの鉛直方向の長さLとリングの厚さTで表現できるとすれば、成形する形状が筒状である場合はその肉厚を、成形する形状が筒状でない場合はその実質的半径をAとした時に、A/10≦T、且つA/10≦L程度が実質的に意味のある効果が得られる限界である。また、A≦T、且つA≦Lが強く効果が得られる範囲である。さらに、2A≦T、且つ2A≦Lならば、非常に強い効果が得られる範囲である。
【0068】
一方、強磁性体リングが二つ以上ある場合、強磁性体リングのスペース部、及び該スペース部を側面に持つ部位での2次的局所磁場の正の効果は、リングとリングの距離Sが短いほど最大値が大きくなる。ただし、距離Sが極端に短いと、正の効果の生じる領域が狭くなり、目的の成形用試料に及ぶ二次的局所磁場の付加効果の範囲が狭くなる。したがって、概ねSはLの5倍以下で、Tの1/5倍以上の範囲が実質的に有効な範囲と見なすことができる。すなわち、T/5≦S≦5・Lが前記距離Sの実用的な範囲である。また、リング自体も自分自身の磁化の反磁場効果によって、実効的な磁化率が減少してしまう。このため、リングの鉛直方向の長さLはリングの厚さTより大、すなわち、L>Tであることが、一般に望ましい。
【0069】
図12は、比磁化率が10,100,1000の三通りの理想的な軟磁性材料に80kA/m(1kOe相当)の外部磁場を与えた時の磁化[T]の反磁場係数依存性の概略を計算したものである。比磁化率がある程度高いと、磁化は、ほぼ反磁場係数で決まってしまうことが分かる。実際の材料は、端部の磁区構造や、局所的な分散等でより複雑な振る舞いを示すが、大局的な性質は図4と同じである。例えば、400kA/m程度(5kOe相当)の外部磁場で成形を試みる場合、2次的なリングに生じる磁化を1T程度かそれ以上得るためには、反磁場係数は0.5以下程度であることが必要である。あるいは、反磁場係数が0.2程度ならば、4kOe程度の外部磁場で、2次的なリングに生じる磁化を2T程度まで高められる可能性がある。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0071】
以上詳述した事前検討や設計、計算に基づき、ダイに強磁性体スパイラルリングを設置し、表1に示す条件でTb−Dy−Fe系超磁歪材料の成形体を作製し、磁歪値を評価した。なお、成形前の粉体の準備、作製、及び成形後の焼結等熱処理は、特開平7−286249号公報に準じる方法、条件で実施した。成形時の原料の主相は立方晶系で、[111]方向を磁化容易軸とした磁場配向が生じる。成形は縦磁場成形(parallel compaction)で、3.5tonf/cm2の成形圧、成形前充填長80mm、成形時の巨視的な外部磁場は成形開始の80mm距離で430kA/m、成形途中の40mm距離で648kA/mになるよう印加した。ダイ内の強磁性体スパイラルリングは成形時、常に回転させた。
【0072】
なお、実施例4のみ強磁性体がスパイラルではなく、図13(a)に示す形態の単純なシングルリング21とした。また、このシングルリング21は、図13(a),(b)に示すように、非磁性の超硬の円筒22に埋め込む形態とし、ダイ20に設置した。中棒23の挿入及び成形粉24の充填の後、パンチ25,26が成形粉24の圧縮を概略終えるまで、この円筒22を上下に±30mm動かした。これにより、圧縮成形中の成形粉24に一様に高磁場配向の履歴を与えた。なお、シングルリング21の回転は形状上の意味を持たないため、加圧軸周りの回転は無回転とした。
【0073】
また、比較例として、前記強磁性体スパイラルリングやシングルリングを設置せずに成形を行った。これら実施例及び比較例について、成形体形状(内径及び外径)、及びスパイラルリング(またはシングルリング)のディメンジョン、さらには得られた成形体の磁歪値を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
このように、強磁性リングをダイ内に具備する金型による磁場中成形法でリングがない場合に比較して磁歪値が向上することが示された。この場合、シングルリングを上下動させることでも高い磁歪値が得られたが、スパイラル形状の強磁性体を一定の時間回転させた実施例1〜3で、より高い磁歪値が得られることが示された。
【0076】
次に、磁歪測定後の試料を一軸加圧方向の長さとして略7等分した。分割はワイア−カッターでおこない、一軸加圧方向に鉛直な面で切り出した。液温5℃の2%硝酸液に5分から10分浸して20〜50μmの表面エッチングを行った。各部位の切断面の試料表面に近い側の該面を粉末法X線で評価し、[222]ピークの半値全幅を調べた。中心部位については、両面を評価し、平均した。なお、各部位の切断面全体の特性を把握するため、各部位のX線試料ホルダ上の取り付け位置を適宜変えて各面4箇所について評価し、算術平均した。なお、[222]ピークの面間隔は0.210nm〜0.215nm程度であった。半値全幅の評価結果を表2に示した。
【0077】
切断した各部位は一方の端部を1番(部位1)と名づけ、順番に数え上げ、もう一方の端部を7番(部位7)と名づけた。すなわち、中心部位は4番(部位4)である。表2に示したように、実施例では一様で安定した低半値全幅、すなわち、高配向が得られたが、比較例では、半値全幅のばらつきも大きく、比較的大きな値を示した。これらは、強磁性スパイラルリングを一定の時間内で回転させることで実質的に配向磁場を広い空間でほぼ一様に高めた効果であると推定される。
【0078】
実施例のTb−Dy−Fe系材料を縦磁場成形した場合の半値全幅は、有効磁場増加に対して概ね減少するが、一方、各場所での実質的な一軸成形圧の過度の増加によって増大する傾向を有する。このため、表2のばらつきは、有効磁場を増大させ、かつ、場所に依らず一様にした本発明の有効性を否定するものではなく、一軸成形圧のばらつき下でも、本発明の実施例は、配向性とその場所一様性において、比較例に優れることを示す証左と言える。
【0079】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(a)は成形体の形状を示す概略斜視図であり、(b)は7等分した状態を示す概略斜視図である。
【図2】有効磁場が外部磁場よりも大である領域の形成の原理を説明する図であり、(a)は強磁性体リングを組み込んだ成形装置の概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【図3】強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図4】強磁性体リングの長さを5mmとした場合の強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図5】強磁性体リングの長さを2mmとした場合の強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図6】強磁性体リングの長さを1mmとした場合の強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図7】強磁性体リングの径を固定した場合のL/Tと局所磁場最大値の相関を示す特性図である。
【図8】強磁性体を移動させる方法を示す概略斜視図であり、(a)はシングルリングを上下動させる場合、(b)はスパイラルリングを回転させる場合、(c)はサイン波形状のリングを回転させる場合を示す。
【図9】強磁性体スパイラルリングを組み込んだ成形装置の一例を示すものであり、(a)は概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【図10】(a)〜(c)は2次的な磁場の数値計算例を示す特性図である。
【図11】2次的な磁場の数値計算における各部寸法を示す模式図である。
【図12】比磁化率が10,100,1000の三通りの理想的な軟磁性材料に80kA/m(1kOe相当)の外部磁場を与えた時の磁化[T]の反磁場係数依存性を示す特性図である。
【図13】強磁性体のシングルリングを組み込んだ成形装置の一例を示すものであり、(a)はシングルリングを埋め込んだ円筒の概略斜視図、(b)は成形装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 成形体、1a〜1g 分割片、2,11,20 ダイ、3 強磁性体リング、4 成形空間、5,14,23 中棒、6 原料粉、7,13 下パンチ、8,12 上パンチ、9 強磁性体スパイラルリング、21 シングルリング、22 円筒、24 成形粉、25,26 パンチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば結晶磁気異方性を有する強磁性粉末が一軸加圧成形された成形体及びその成形方法、成形装置に関するものであり、特に、配向を制御するための新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、高速で高精度な変位制御や位置制御が求められており、さらには前記制御を行う制御装置の小型化・低コスト化が求められている。具体的な分野としては、燃料吐出装置(インジェクター)、医療機器、いわゆるマイクロマシン、ナノマシン等を挙げることができる。
【0003】
そして、前記要求に対し、いわゆる超磁歪材料は、変位制御、位置制御に高いポテンシャルを持つ材料として注目されている。また、例えばTb−Dy−Fe系等のRT2(Rは希土類元素、Tは3d遷移金属元素を表す。)系超磁歪材料は、PZTに代表されるような圧電材料に比して約2倍以上の変位が可能であることから、音響関連のエキサイタとしても注目されている。
【0004】
前記Tb−Dy−Fe系に代表される超磁歪材料は、ゾーンメルト法等の単結晶成長でも作製することはできるが、生産性、コスト、特性制御性等の観点から、一般に粉末の磁場中成形体を焼結する粉末冶金法が採用されている(例えば、特許文献1等を参照)。これにより、配向性に優れる多結晶体の超磁歪材料を安価に得ることができる。
【特許文献1】特開平7−286249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば前記Tb−Dy−Fe系の超磁歪材料は、単位長さ当たり1000ppmオーダーの変位量が得られる高変位材料である。ただし、これらを変位素子に応用する場合においては、所望の変位量を満たすために、分母となる正味の長さとして、ある程度以上の長さが必要である。すなわち、より大きな変位のためには、より長い超磁歪材料が必要になる。一方、デバイスや装置全体の小型化の観点から、長さ方向以外の横方向の大きさは必要最小限に設計されるため、超磁歪材料全体の形状の要求は、より細く長くなる傾向にある。また、燃料吐出装置などでは、超磁歪材内部にトンネル状の穴を設け、超磁歪材料を変位導入以外に液体の通路として用いることも検討されている。
【0006】
前述のような細く長い形状、さらには中空に穴を持つ細長い形状の素子を形成する場合、複数の超磁歪材料の接合や、慎重で微細な削り出し等を用いざるを得ない場合も多い。しかしながら、それらは、加工精度や製作容易性、低コスト化、歩留まり、再現性、さらには後プロセスに対する機械的耐性等の点において、優れているとは言えない。したがって、性能面でも、コスト面でも、さらには機械的精度や強度の面でも、前記粉末冶金法によって、超磁歪材料を一体で単一の成形体として形成することが望ましい。
【0007】
ここで、前記超磁歪材料等を成形する場合、成形時に粒子を磁場配向させるための外部磁場が必要となる。例えば、Tb−Dy−Fe系に代表されるようなRT2系の超磁歪材料の結晶質は、特別の場合を除き、磁気的相転移点以下で結晶磁気異方性を有する。このような材料の粒子や粉末を成形する際には、特性向上、特性管理の点から、磁場配向させるのが通常である。
【0008】
前記磁場配向の際には、各強磁性粒子の磁化ベクトルは印加磁場に沿った方向に向こうとし、粒子の方位は磁化容易軸方向に磁化ベクトルが来るよう回転する。これらの効果は一般に印加磁場が大であるほど顕著であるので、磁場配向成形時には、より大きな磁場が求められる。
【0009】
一方、前記材料の粒子や粉末を磁場配向しながら成形する方法としては、加圧方向と磁場印加方向が直交する成形法(いわゆる横磁場成形)や、加圧方向と磁場印加方向が平行な成形法(いわゆる縦磁場成形)が知られているが、円柱形状や円筒形状等の形状に成形する場合には、横磁場成形よりも縦磁場成形の方が適している。
【0010】
しかしながら、縦磁場成形を採用した場合、同様な横磁場成形に比較して強い磁場を印加し難く、磁場配向等の十分な効果を得るには、成形体の長さや細さが制限される可能性がある。逆に言えば、所望の長さ、細さに強い磁場を与えるには、同様な横磁場成形に比較してより強力な磁場発生用電源や磁気回路が必要である。
【0011】
成形する材料への磁場印加には、集中的なソレノイドコイル、一様性に優れるヘルムホルツコイル、電磁石や永久磁石とコアやポールピースを組み合わせて用いた磁気回路等が用いられるが、これらの中で、大きな定常磁場が得られ、縦磁場成形の機構と両立させ易いのは、コア等を用いた磁気回路である。ただし、前記磁気回路を用いた磁場印加では、試料長(成形体の長さ)が長くなると、磁気回路のギャップ長が長くなり、それに応じて印加可能な最大磁場は減少する。また、試料が細くなると、成形機構側との取り合い・干渉の問題で、成形する試料近傍に広い磁極面を持ったポールピース部分を設置することが困難になり、同様に印加可能な最大磁場は減少する。したがって、前記のような細く長い形状に成形する場合には、印加し得る磁場の大きさが著しく制約されることになる。
【0012】
また、従来の磁場印加では、印加し得る磁場の大きさばかりでなく、磁場の均一性という点でも十分とは言えない。前記コア等を用いた磁気回路で磁場印加する場合、完全に平行で一様な磁場を形成することは現実には不可能に近く、場所によって磁場の大きさや方向等が多少異なるのが実情である。したがって、成形される成形体においては、配向度のバラツキが生ずるおそれがある。前記配向度のバラツキは、特性のバラツキに繋がり、好ましいものではない。
【0013】
このような状況から、得られる成形体の観点から見た場合には、十分な磁場配向が行われず、配向度の均一性が不十分で、その結果、磁気特性(例えば磁歪特性)が不十分になるという大きな問題があり、その改良が望まれている。また、成形方法や成形装置の観点から見た場合には、例えば縦磁場成形での成形が容易な円筒形状や円柱形状を成形するに際して、簡便に強い磁場を印加する方法が求められている。
【0014】
本発明は、前記従来の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、例えば、細くて長い形状であっても十分な磁場配向が施され、これまで実現され得なかった配向度のバラツキが著しく小さい成形体を提供することを目的とし、これにより磁歪特性等、特性的にも優れた成形体を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、例えば細く長い形状を縦磁場成形により成形する場合にも、十分に強い磁場を均一に印加することができ、磁場配向の効果を十分に得ることが可能な成形方法、成形装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、強力な磁場発生用電源や磁気回路が不要で、簡便に強い磁場を印加することが可能な成形方法、成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的を達成するために、本発明の成形体は、強磁性体粉を含む原料粉が一軸加圧成形されてなる成形体であって、前記一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片における主要な結晶面のX線回折ピークの半値全幅と、中央付近の分割片における前記半値全幅との差が0.05°未満であることを特徴とする。
【0017】
本発明の成形体は、配向性に優れ、これまでになく配向度の均一性に優れた成形体である。前記半値全幅との差が0.05°未満ということは、成形体の両端部と中央部とで配向度がほとんど変わらないことを意味し、これほどまでに配向度の均一性に優れた成形体は実現されたことがない。
【0018】
なお、本発明で言うところの成形体は、強磁性体粉を含む原料粉が加圧成形された成形体全般を含む概念であり、例えば、特段の処理(焼成等)を行っていない未焼結成形体や、焼成後の焼結体等、最終的な形態は問わず、製造の過程で前記加圧成形が行われたものを全て含むものとする。
【0019】
前記のような配向度の均一性に優れた成形体を成形するには、磁場印加方法に工夫が必要である。従来技術のように、一方向に外部磁場を印加しながら成形するだけでは、前記ように配向度の均一性に優れた成形体を得ることは難しい。これを規定したのが、本発明の成形方法、成形装置である。すなわち、本発明の成形方法は、強磁性体粉を含む原料粉を金型の成形空間内で一軸加圧成形する成形方法であって、前記一軸加圧方向に外部磁場を印加するとともに、前記金型の成形空間の近傍に強磁性体を配し、当該強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の成形装置は、強磁性体粉を含む原料粉を一軸加圧成形する成形空間を有する金型と、前記金型の成形空間に外部磁場を印加する外部磁場印加手段と、前記金型の成形空間の近傍に配される強磁性体とを備え、前記強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させる移動機構を有することを特徴とする。
【0021】
本発明の成形方法、成形装置では、成形空間の近傍に磁性体を配置し、これに磁極を発生させて局所磁場を発生させ、外部磁場に重畳させることで、有効磁場が前記外部磁場よりも大である領域を形成する。前記局所磁場は、成形空間の近傍に配置した強磁性体を移動することによって移動し、これを移動することで前記有効磁場が外部磁場よりも大である領域を広い範囲に作用させることができ、配向性に優れた成形体が得られる。また、前記局所磁場の移動は、場所による外部磁場の強さや方向等の相違を解消する方向に働き、その結果、成形体の全ての部分において極めて均一な磁場印加が実現される。これらの作用により、配向性に優れ、配向度の均一性に優れた成形体が成形される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば、細くて長い形状であっても十分な磁場配向、均一な磁場配向を施すことが可能であり、配向性に優れ、これまで実現され得なかったような配向度のバラツキが著しく小さい成形体を提供することが可能である。
【0023】
また、本発明の成形方法、成形装置によれば、例えば細く長い形状を縦磁場成形により成形する場合にも、十分に強い磁場を均一に印加することができ、しかも、強力な磁場発生用電源や磁気回路が不要で、簡便に強い磁場を印加することが可能であるので、装置構成の簡素化や使用電流の低減等が可能である。したがって、これらにより、例えば体積や長さ当たりの変位が大きく、デバイス化等に適した超磁歪素子等を、市場に安価に安定供給することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を適用した成形体及びその成形方法、成形装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、超磁歪素子の成形を例にして説明するが、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
図1(a)は、本発明を適用した成形体(焼結体)の一例を示すものである。この成形体1は、超磁歪材料を一軸加圧成形した成形体を焼成したものであり、本例の場合、円筒形状を有する。成形体の形状としては、これに限らず、例えば円柱形状や、角筒形状、角柱形状等、任意であるが、細長い形状、具体的には成形体の外径寸法(あるいは幅寸法)が長さ寸法よりも小さい形状に適用することが好ましい。
【0026】
超磁歪素子の場合、前記成形体(焼結体)は例えば希土類元素と3d遷移金属元素を主たる構成元素として含む磁歪材料から構成され、磁歪変位が大きく、高速応答性に優れ、大きな駆動力を発現するという優れた特徴を有する。具体的組成としては、例えばRTy(ここで、Rは1種類以上の希土類元素、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4である。)で示される組成となるように原料合金粉を焼結すればよい。
【0027】
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類元素から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特にNd、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho等の希土類元素が好ましく、Tb、Dyがより一層好ましく、これらを混合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が好ましく、これらを混合して用いることができる。
【0028】
RTyで表される合金のうち、y=2であるRT2ラーベス型金属間化合物は、キュリー温度が高く、磁歪値が大きいため、磁歪素子に適する。ここで、yが1以下では、焼結後の熱処理でRT相が析出して磁歪値が低下する。また、yが4以上では、RT3相又はRT6相が多くなり、磁歪値が低下する。このため、RT2がリッチな相を多くするために、yは1<y<4の範囲が好ましい。
【0029】
Rは、2種以上の希土類元素を混合してもよく、特に、TbとDyを混合して用いることが好ましい。具体的には、TbaDy1−aで表される合金で、aは0.27<a≦0.50の範囲にあることが一層好ましい。これにより、(TbaDy1−a)Tyなる合金で、飽和磁歪定数が大きく、大きな磁歪値が得られる。ここで、aが0.27以下では室温以下では十分な磁歪値を示さず、逆に0.50を越えると室温付近では十分な磁歪値を示さない。
【0030】
Tは、特にFeが好ましく、FeはTb、Dyと(Tb、Dy)Fe2金属間化合物を形成して、大きな磁歪値を有し磁歪特性の高い焼結体が得られる。このときに、Feの一部をCo、Niで置換してもよいが、Coは磁気異方性を大きくするものの、透磁率を低くし、また、Niはキュリー温度を下げ、結果として常温・高磁場での磁歪値を低下させる。したがって、Feは70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0031】
本発明の成形体において特徴的なことは、例えば円筒形状の成形体1において、その配向度の均一性に極めて優れることである。すなわち、前記成形体1を一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片と中央付近の分割片とは、ほとんど同じ配向度となっている。
【0032】
例えば、図1(b)に示すように、前記円筒形状の成形体1を一軸加圧方向(本例の場合、円筒の中心軸方向)に7等分に分割した場合を考える。前記円筒形状の成形体1を7等分してリング状の分割片1a〜1gとすると、本発明の成形体の場合、両端の分割片1a,1gと、中央近傍の分割片(前記のように奇数等分した場合には、中央の分割片1d)とで配向度にほとんど差が無いことが特徴である。
【0033】
この配向度の指標としては、本発明においては、X線回折ピークの半値全幅を採用する。例えば、前記超磁歪材料の場合、立方晶系であって、[hhh]方向が結晶磁気異方性の磁化容易軸方向である。一軸加圧成形では、一軸加圧方向を鉛直方向とする平面の磁場方向に、前記結晶磁気異方性としての磁化容易軸が優先配向する。したがって、前記図1(b)に示すように成形体1を一軸加圧方向に等分割した場合、切断面には前記磁化容易軸と直交する結晶面が含まれることになる。そこで、前記磁化容易軸と直交する主要な結晶面の粉末法X線による回折ピークを測定し、その半値全幅を比較することで、各分割片1a〜1gの結晶配向度を把握することができる。
【0034】
前記希土類元素と3d遷移金属元素を主たる構成元素として含む磁歪材料の成形体の場合、前記主要な結晶面として、[222]面の粉末X線回折ピークを測定し、前記両端の分割片1a,1gと中央の分割片1dの半値全幅を比較する。本発明の成形体の基準としては、前記両端の分割片1a,1gの半値全幅と中央の分割片1dの半値全幅の差が0.05(degree)未満である。前記半値全幅の差を0.05(degree)未満とすることで、配向性とその場所一様性に優れた成形体とすることができ、例えば磁歪特性等の性能の点でも優れた成形体(超磁歪素子)を実現することが可能である。
【0035】
前述のような配向性及びその場所一様性に優れた成形体を成形するには、成形時の磁場印加方法を工夫する必要がある。具体的には、一軸加圧成形する際の成型空間の近傍に磁性体を配置し、これに磁極を発生させて局所磁場を発生させ、外部磁場に重畳させることで、有効磁場が前記外部磁場よりも大である領域を形成する。そして、成形空間の近傍に配置した強磁性体を移動することによって前記局所磁場を移動し、前記有効磁場が外部磁場よりも大である領域を広い範囲(成形空間の全ての領域)に均等に作用させて配向性に優れ、その場所一様性に優れた成形体を得る。
【0036】
以下、前記有効磁場が外部磁場よりも大である領域の形成、及びその移動について、基本原理を説明する。
【0037】
先ず、磁性体の配置により外部一様磁場よりも高い有効磁場が一部の領域に発生する機構を説明する。図2は、このための説明図であり、前記外部一様磁場よりも高い有効磁場を発生するための最も単純な組み合わせである。
【0038】
図2(a)及び図2(b)は、一軸加圧成形を行うための成形装置の構成例を模式的に示すものであり、金型のダイ2中にリング状の強磁性体リング3が一つのみ組み込まれている。ダイ2の他の部分は非磁性体である。前記ダイ2には、成形空間4が形成されており、その中心部に中棒5が挿入されてリング状の成形空間4とされている。この成形空間4内に原料粉6を充填し、下パンチ7及び上パンチ8で加圧することにより成形が行われる。
【0039】
ここで、強磁性体リング3の内径をrin、外径をrout、長さをLとする。また、金型の外部から印加される一様な外部磁場をHexとする。この時、成形される原料粉が充填される空間(成形空間4)、すなわち、強磁性体リング3の内径rinよりも距離Q以上内側の空間で有効磁場が外部磁場より高まる領域が生じることを以下に示す。
【0040】
一例として、強磁性体リング3の内径rin=5mm、外径rout=10mm、長さL=10mmとする。この時に強磁性体リング3の内側に発生する局所的磁場Hlocalの場所による変化を図3に示す。該磁場の値は、一般的な有限要素法で計算したものである。なお、ここで、一様な外部磁場Hexにより磁化した強磁性体リング3の端面の磁極密度、すなわち磁化を1Tと仮定した。強磁性体リング3は、球や回転楕円体のように内部で一様な反磁場係数を定義できる形状ではない。しかしながら、例えば、強磁性体リング3の自発磁化が1Tより十分大きく、比透磁率が1000以上、実効的な反磁場係数を0.5程度とみなした場合、500kA/m(=約6kOe)程度か、それ以上の一様外部磁場を印加すれば、1T程度の磁化は可能である。
【0041】
図3の原点は、強磁性体リング3の重心点に取り、強磁性体リング3の長手方向にx軸、半径方向長さにr軸を取った。すなわち、強磁性体リング3の存在範囲は、リングの内径をrin≦r≦rout、且つ−L/2≦x≦+L/2である。図3から明らかなように、−L/2≦x≦+L/2、すなわち−5mm≦x≦+5mmの範囲では、負の局所的磁場が発生する。したがって、r=5mm以下、すなわち、強磁性体リング3の内側の空間では、外部磁場Hexを弱める局所的磁場Hlocalとなる。その結果、外部磁場Hexと局所的磁場Hlocalとの和である有効磁場Heffは、前記外部磁場Hexよりも低い値となってしまう。例えば、外部磁場Hexが500kA/m程度であるとすれば、有効磁場Heffはその約半分の250kA/m前後の値となる。
【0042】
一方、+L/2<x,及び、x<−L/2の領域では、局所的磁場Hlocalの値は正となる。特に、磁性体リング3の内径5mmよりも僅かに内側のr=4.5mmやr=4.0mmの位置では、+100kA/m程度以上の実用上十分意味のある正の局所磁場が発生する。例えば、x=6mm、すなわち、強磁性体リング3の一端から1mmほど軸方向に離れた位置で、前記距離Q=0.5mm、またはQ=1.0mmの位置での有効磁場Heffは外部磁場Hexより+100kA/m前後高い値、例えば、外部磁場Hexが500kA/m程度であるとすれば、600kA/m程度の値となる。この効果は、強磁性体リング3から遠ざかるほど減少、すなわち、rが零に近い内側に行くほど弱まるので、円柱形状よりも円筒形状の成形体に対してより有効に働くものと考えられる。
【0043】
さらに、強磁性体リング3の形状と局所的磁場の相関を基本的な例で示す。図4から図6は、図3と同じ条件及び仮定の下で、強磁性体リング3の長さLだけを5mm,2mm,1mmと変化させた場合の局所的磁場の場所依存性を示すものである。このように、局所的磁場が正で、外部一様磁場を強める方向に働く場所での局所的磁場の値は、磁性体リング3の長さLが短くなるほど値が減少する。これを基に、強磁性体リング3の半径方向の厚さTと長さLの比(L/T)と局所磁場の相関の一例を図7に示す。図7に示すように、L/Tは、概ね大であるほど局所的磁場の最大値は大きくなる。しかしながら、原料粉を充填する領域は有限の長さを有することから、前記強磁性体リング3の長さLが大であると、局所的磁場が正の領域に存在する原料粉の割合が低下するものと考えられる。したがって、成形体の形状や全体の設計の中で前記比(L/T)は決定する必要がある。
【0044】
以上示したように、金型中に強磁性体リング3を組み込むことで、原料粉を充填する成形空間4の少なくとも一部に、外部磁場よりも高い有効磁場を印加することが可能であることが示された。ただし、その領域は全体的ではなく、限定的で、その効果を実用上十分なものに引き上げるには、金型構造等の工夫、強磁性体リング3の意識的な設計等が必要になる。
【0045】
以上の検討結果を基に、本発明では、ダイ2の一部または全部に強磁性体を用い、さらに、必要に応じて強磁性体の表面または界面に凹凸構造を設けることで、強磁性体の角部で生ずる局所的磁場を利用して成形する材料に与える最大磁場を増加させる。あるいは、中棒5の一部または全部に強磁性体を用い、さらに、必要に応じ該強磁性体の表面または界面の磁極を利用して、成形する材料に与える最大磁場を増加させる。さらには、ダイ2と中棒5の双方に強磁性体部分を含む構造を採用することで、該強磁性体の発生する2次的な局所的磁場を設計制御し、成形する材料に与える最大磁場を増加させる。
【0046】
ここで、前記局所的磁場を形成するためには、前記の通り配置する強磁性体が角部を有することが必要である。例えば、成形空間4の高さ寸法よりも小さな幅を持った強磁性体リングを配置した場合、成形空間4には強磁性体の端部が角部として臨むことになり、前記局所磁場が形成される。例えば、ダイ2の成形空間4に臨む内周部全体に強磁性体を配した場合には、前記端部が角部として臨むことがないので、このような場合には強磁性体に凹凸を形成し、凸部(凹部)のエッジが角部として臨むようにすることが必要である。
【0047】
前述のように局所的磁場を形成し成形する材料に与える最大磁場を増加させるためには、前記の通り配置する強磁性体が前記凹凸構造等によって角部を有することが必要で、例えばダイ全体が表面に特段の凹凸を有しない強磁性体、特に、軟磁性材料等により構成される場合には、外部磁場によって磁化されたダイの発生する磁場が、円筒状の成形体に対して、外部磁場を弱める方向に働き、縦磁場成形効果を弱めたり、実質的な磁場印加効果をほとんど無くしてしまう。中棒全体が特段の凹凸のない強磁性体で構成される場合も同様で、外部磁場によって磁化された中棒の発生する磁場が、円筒状の成形体に対して外部磁場を弱める方向に働き、縦磁場成形効果を弱めてしまう。ダイや中棒が強磁性体でなく例えば非磁性体や弱い反磁性材料である場合には、円筒状の成形体に掛かる磁場は外部磁場と概略同じである。
【0048】
前述のように、磁性体を配置することによって局所的磁場を発生させ成形材料に与える最大磁場を大きくすることができるが、磁性体を固定した状態のままでは、成形空間4の一部分に対しては外部磁場よりも大きな磁場を印加することはできるものの、逆に外部磁場よりも小さな磁場しか印加されない部位も存在することになる。そこで、本発明では、前記磁性体を移動させることで、前記成形空間4の全ての場所で、外部磁場よりも大きな磁場が印加された履歴を持たせるようにする。
【0049】
一般に、磁場中配向は、等方に近い配向状態にある粉体や粒子群に対し、一方向の磁場を印加することで、その方向に各粉体や粒子の磁化容易軸や磁化容易方向を優先配向させ、さらに粒子の状態や複数種の組み合わせによっては、磁場印加方向に粒のクラスター状の配列等を生じせしめるものである。これらの配向では、一般に印加磁場が大であるほど配向性が向上する。また、これら粉体や粒子は、配向の際に微視的な摩擦障壁を乗り越えて回転や移動しているので、前記障壁を乗り越えるための最大磁場が加わった後は、外部磁場がある程度弱まっても、配向の減少は比較的小さい。すなわち、各部位における外部印加磁場の最大値が、配向に寄与する最大要素である。
【0050】
本発明の場合、空間的な磁場は非一様であるが、局所的磁場を形成する磁性体の角部を一定の時間内で移動させることで、成形試料全体に一様で、単純な外部印加磁場より大きな印加磁場最大値を得た履歴を与えることができる。この結果、従来よりも優れた配向度を成形体に均一に与えることが可能となる。そして、得られる成形体を例えば焼結することで、優れた配向性の強磁性体が得られる。具体的には、異方的な特性を持つ超磁歪材、磁歪材、永久磁石材等である。 なお、前記成形体は、焼結前に、さらに別の成形機で追加加圧等しても良いのは当然である。また、強磁性体リングは、軟磁性材ではなく、硬質磁性材料としてもよく、この場合、一定の性能範囲であれば、外部印加磁場の機構を省略しても実用的な配向処理が可能である。
【0051】
前記のように磁性体の角部を移動して成形体全体に一様に外部印加磁場より大きな有効磁場を与えるための具体的方法としては、例えば図8(a)に示すように、成形体の長さよりも長さ寸法が小さい強磁性体リング3をダイ2の上下方向に移動させる方法や、図8(b)に示すように、螺旋状の強磁性体スパイラルリング9を回転させる方法、図8(c)に示すように、サイン波状の強磁性体リング10を回転される方法等が考えられるが、勿論、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0052】
そこで次に、強磁性体スパイラルリングを用いた成形装置を例にして、本発明の成形方法、成形装置の具体的態様について説明する。
【0053】
図9(a),(b)に、前記強磁性体スパイラルリング9を備えた成形装置を用いて磁気異方性を有する強磁性体粒子または粉末の縦磁場成形を行う場合の一実施形態を模式的に示す。図9(a),(b)には、円筒状試料の縦磁場成形(Parallel compaction)を構成する主要部材であるダイ11、上パンチ12、下パンチ13、中棒14を示した。これらを支持、保持、運動させる周辺部位の図示は省略した。また、外部磁場の磁力線の方向の概略を矢印で示した。外部磁場を発生させるコイルや磁気回路、パンチ近傍まで磁場を伝えるコアなどの要素の図示は省略した。なお、外部磁場を示す矢印は、磁場の印加の概念を伝えるものであり、必ずしも、磁力線のようにN極からS極へ向くものではなく、逆の場合もある。また、外部磁場の大きさや方向は、一般に場所によって一定の分散があり、矢印の大きさや方位が、固定された磁場の大きさや方向を表すものではない。
【0054】
図9に示す成形装置では、非磁性体のダイ11の中に、強磁性体スパイラルリング9が埋め込まれている。該スパイラルリング9はスリーブ状になっており、回転あるいは上下動させることができる。強磁性体スパイラルリング9のリング上下のスペースは非磁性材で構成されている。なお、図9(b)では、ダイ11の内壁は非磁性体であるが、加工性、硬度、強度、スリーブの回転に問題が無い場合、強磁性体スパイラルリング9の一部がダイ11の内壁を兼ねていても良い。
【0055】
強磁性体スパイラルリング9に用いる強磁性体材料は特に限定されないが、例えば、極端な保磁力や残留磁化を持たない軟磁性材料が制御性の観点からは優れている。その比磁化率は、特に限定されるものではないが、設計の自由度と効果の観点から、比磁化率100以上が好ましく、1000以上であるとさらに良い。ただし、磁場発生用電流低減や磁場発生機構の簡略化の観点からは、スパイラルリング9に用いる強磁性体に、一定の保磁力や残留磁化を持つ硬質磁性材料を用いても良いのは当然である。残留磁化は0.1T以上であることが実用上好ましく、0.3T以上であるとさらに良い。保磁力も80kA/m以上であることが好ましく、240kA/m以上であるとさらに良い。
【0056】
このダイ11に外部磁場の縦磁場を印加すると、強磁性体スパイラルリング9が磁化され、リングの上下端面に磁極が生じる。この磁極が作る新たな磁場は、リング側面に対しては、概ね外部磁場の逆方向に働く磁場を発生する。一方、強磁性体スパイラルリングの上下のリング間の領域には、概ね外部磁場と同方向の磁場が発生する。したがって、強磁性体スパイラルリング9の側方にある円筒状の成形空間内の原料粉15にも、この2次的な磁場がやや減少しながら作用する。この結果、概略としては、側面にスパイラルリング9が存在する部位では印加磁場が減少し、側面がスパイラルリング9のスペース部である部位では印加磁場が増大する。
【0057】
図10(a)〜(c)は、このような2次的な磁場の数値計算例を示す。ここで、図11は、前記ダイの断面の模式図であり、前記数値計算に際しては、図11に示すように、円筒の軸方向にZ軸を取り、直交方向にr軸を取った。図10(a)は、{Rin,Rout,Q,T,L}={3mm,5mm,1mm,4mm,8mm}とした場合に、強磁性スパイラルリング9の一巻きが発生する2次的局所磁場のZ軸成分を所定の場所(R=5mm,−16mm<Z<16mm)、すなわち、円筒状に成形される原料粉の最外周部を円筒軸方向に走査した領域について図示したものである。なお、ここで、ダイ11中の強磁性体スパイラルリング9のZ軸端面の磁化は一様に+1Tと仮定した。このように、強磁性スパイラルリング9の側面に当たる−4mm<z<4mmの領域では、2次的局所磁場は負の値を示した。前記値が負であるということは、巨視的な外部印加磁場に対して2次的な局所磁場の方向が逆であることを意味する。
【0058】
さらに、前記強磁性スパイラルリング9は、スペースSの間隔で繰り返し構造をとるものである。ここで、S=8mmとした場合に最隣接リングの2次的局所磁場を考慮した磁場計算値を図10(b)に示した。このように、強磁性スパイラルリング9のスペース部を側面に持つ部位(−12mm<z<−4mm,4mm<z<12mm)では、概ね正の値が得られていることがわかる。
【0059】
次に、実効的な有効磁場、すなわち、巨視的な外部印加磁場と2次的局所磁場の和について示す。図11の各部寸法が上述のように{Rin,Rout,Q,T,L}={3mm,5mm,1mm,4mm,8mm}である場合、強磁性スパイラルリング9のZ軸方向の実効的な反磁場係数は、一定のモデル計算の下で約0.35程度である。強磁性スパイラルリング9が、比磁化率が十分に高い飽和磁化2T級の軟磁性体とすると、例えば530kA/m(6.6kOe)程度以上の外部磁場印加で、強磁性スパイラルリング9に約2Tの飽和磁化に近い値を与えることが可能である。この時に円筒状に成形される原料粉が感じる有効磁場、すなわち外部磁場と2次的局所磁場の和は、図10(c)のようになる。このように、局所的な最大磁場は、印加磁場530kA/m(6.6kOe)の1.4倍の744kA/m(9.3kOe)に拡大されることが示された。モデルの精度や、実際の強磁性材料の不完全性などで、計算値と実際の値には若干のずれは生じるが、本発明の基本的な磁場分布を妨げるような大きなずれはあり得ず、許容できるものである。
【0060】
以上の計算結果に基づいて、図9に示すように、強磁性リング部をスパイラル状(強磁性体スパイラルリング9)とするとともに、非磁性体と組み合わせてスリーブ状としてダイ11に組み込み、これを回転させることで、成形される原料粉の受ける最大磁場の履歴を場所に依らず一様にすることができる。その結果、円筒状原料粉の外周部全てに対し、外部印加磁場の約1.4倍の最大磁場を印加した履歴を与えることができる。なお、最小磁場の履歴自体は、160kA/m(=2kOe)と低い値になるが、符号が逆転したり実質的に零近傍の値になるものではなく、履歴最大磁場で強く配向した状態を保持するに当たって問題は生じない。
【0061】
また、前記の機構説明は強磁性スパイラルリング9によるものであるが、これは一本のスパイラルではなく、2本あるいは2本以上のスパイラルでも良いのは当然である。また、金型の外径部のダイ11側ではなく、中棒14の側に電動ドリル歯状の強磁性体スパイラル構造を設けることでも、同様の効果が得られる。また、外径部のダイ11側と中棒14側の双方に強磁性体スパイラルリング9を用いることで、履歴最大印加磁場の向上や分布調整を行ってもよい。
【0062】
さらに、強磁性体リングがスパイラル構造ではなく、例えば、円筒軸を中心に360度回転する場合にZ軸方向に上下するサイン波などの三角関数、あるいは適当な三角関数の線形和のように波形のリング及び複数の波形リングでも良い[図8(c)参照]。この場合、Z軸方向の振幅は、S/2以上が好ましく、(L+S)/2以上であると、さらに良好な一様性が得られる。また、強磁性体が単純な円環状リングおよび複数の円環状リングでもよい[図8(a)参照]。この場合、強磁性体リングを含むスリーブ自体をZ軸方向に上下させることで同様の一様化効果が得られる。Z軸方向の上下動の振幅はS/2以上が好ましく、(L+S)/2以上であると、さらに良い一様性が得られる。
【0063】
次に、金型中の強磁性体部の発生する2次的な磁場の局所性と有効な形状について説明する。前述の強磁性体リングの作る2次的な磁場は、リングの端面から遠ざかると急激に減衰する局所的なものである。その局所性は、リング形状に強く依存するので一概に言えないが、実用上有効な範囲は、リングの鉛直方向の長さLや、リングの厚さTの1倍から数倍程度である。
【0064】
例えば、図4に示すような局所磁場が形成される強磁性リングの場合、L=T=5mmである。この時、リングの端面(x=2.5mm)からLまたはTの1倍離れた位置(x=7.5mm)では、正の局所磁場の最大値の半分程度の局所磁場が発生しており、十分効果が有効な範囲である。しかしながら、10倍以上では実質的な効果が乏しい。例えば、L程度よりさらに遠ざかれば、長さLのダイポールの双極子場である局所磁場は相殺により減少する。また、T程度よりさらに遠ざかれば、ガウス(Gauss)の定理により、幅Tの磁極面から発生する磁力線の磁力線密度は、その位置から当該磁極面を見た立体角にほぼ比例するので、1/10倍かそれ以下程度に大きく減少する。
【0065】
また、端面近傍で半径方向に強磁性体リングから遠ざかれば、例えば、端面から軸方向に5.0mm離れたx=7.5mmの位置で、r=4.5mmから4.0mm,3.0mmと内側に遠ざかれば、局所磁場は(x=4mm,r=4.5mm)付近の最大値を基準にして、r=4.5〜4.0mmで最大値の約7割、r≦2mmの領域では、局所磁場は最大値の約5割になる。ここでL=T=5mmであるから、これらの10〜20%程度内側に離れた位置(r=4mm〜4.5mm)で一定の効果があり、60%〜100%離れた位置(r=0〜2mm)では効果が最大値の約半分になる、と言い換えることができる。ただし、この事例は単純なシングルリングの場合であり、リングを繰り返し用い、隣接するリングからの局所磁場効果も有効に足し上げれば、最大でほぼこの倍程度の局所磁場が得られる場合も期待される。
【0066】
したがって、ダイ11側の強磁性スパイラルリング9は、ダイ11の内壁に極力近くに配置し、また磁場印加する成形体も肉薄の円筒等である場合に、最も好適で実質的効果が高くなる。
【0067】
以上述べたように、強磁性リングの形状をリングの鉛直方向の長さLとリングの厚さTで表現できるとすれば、成形する形状が筒状である場合はその肉厚を、成形する形状が筒状でない場合はその実質的半径をAとした時に、A/10≦T、且つA/10≦L程度が実質的に意味のある効果が得られる限界である。また、A≦T、且つA≦Lが強く効果が得られる範囲である。さらに、2A≦T、且つ2A≦Lならば、非常に強い効果が得られる範囲である。
【0068】
一方、強磁性体リングが二つ以上ある場合、強磁性体リングのスペース部、及び該スペース部を側面に持つ部位での2次的局所磁場の正の効果は、リングとリングの距離Sが短いほど最大値が大きくなる。ただし、距離Sが極端に短いと、正の効果の生じる領域が狭くなり、目的の成形用試料に及ぶ二次的局所磁場の付加効果の範囲が狭くなる。したがって、概ねSはLの5倍以下で、Tの1/5倍以上の範囲が実質的に有効な範囲と見なすことができる。すなわち、T/5≦S≦5・Lが前記距離Sの実用的な範囲である。また、リング自体も自分自身の磁化の反磁場効果によって、実効的な磁化率が減少してしまう。このため、リングの鉛直方向の長さLはリングの厚さTより大、すなわち、L>Tであることが、一般に望ましい。
【0069】
図12は、比磁化率が10,100,1000の三通りの理想的な軟磁性材料に80kA/m(1kOe相当)の外部磁場を与えた時の磁化[T]の反磁場係数依存性の概略を計算したものである。比磁化率がある程度高いと、磁化は、ほぼ反磁場係数で決まってしまうことが分かる。実際の材料は、端部の磁区構造や、局所的な分散等でより複雑な振る舞いを示すが、大局的な性質は図4と同じである。例えば、400kA/m程度(5kOe相当)の外部磁場で成形を試みる場合、2次的なリングに生じる磁化を1T程度かそれ以上得るためには、反磁場係数は0.5以下程度であることが必要である。あるいは、反磁場係数が0.2程度ならば、4kOe程度の外部磁場で、2次的なリングに生じる磁化を2T程度まで高められる可能性がある。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0071】
以上詳述した事前検討や設計、計算に基づき、ダイに強磁性体スパイラルリングを設置し、表1に示す条件でTb−Dy−Fe系超磁歪材料の成形体を作製し、磁歪値を評価した。なお、成形前の粉体の準備、作製、及び成形後の焼結等熱処理は、特開平7−286249号公報に準じる方法、条件で実施した。成形時の原料の主相は立方晶系で、[111]方向を磁化容易軸とした磁場配向が生じる。成形は縦磁場成形(parallel compaction)で、3.5tonf/cm2の成形圧、成形前充填長80mm、成形時の巨視的な外部磁場は成形開始の80mm距離で430kA/m、成形途中の40mm距離で648kA/mになるよう印加した。ダイ内の強磁性体スパイラルリングは成形時、常に回転させた。
【0072】
なお、実施例4のみ強磁性体がスパイラルではなく、図13(a)に示す形態の単純なシングルリング21とした。また、このシングルリング21は、図13(a),(b)に示すように、非磁性の超硬の円筒22に埋め込む形態とし、ダイ20に設置した。中棒23の挿入及び成形粉24の充填の後、パンチ25,26が成形粉24の圧縮を概略終えるまで、この円筒22を上下に±30mm動かした。これにより、圧縮成形中の成形粉24に一様に高磁場配向の履歴を与えた。なお、シングルリング21の回転は形状上の意味を持たないため、加圧軸周りの回転は無回転とした。
【0073】
また、比較例として、前記強磁性体スパイラルリングやシングルリングを設置せずに成形を行った。これら実施例及び比較例について、成形体形状(内径及び外径)、及びスパイラルリング(またはシングルリング)のディメンジョン、さらには得られた成形体の磁歪値を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
このように、強磁性リングをダイ内に具備する金型による磁場中成形法でリングがない場合に比較して磁歪値が向上することが示された。この場合、シングルリングを上下動させることでも高い磁歪値が得られたが、スパイラル形状の強磁性体を一定の時間回転させた実施例1〜3で、より高い磁歪値が得られることが示された。
【0076】
次に、磁歪測定後の試料を一軸加圧方向の長さとして略7等分した。分割はワイア−カッターでおこない、一軸加圧方向に鉛直な面で切り出した。液温5℃の2%硝酸液に5分から10分浸して20〜50μmの表面エッチングを行った。各部位の切断面の試料表面に近い側の該面を粉末法X線で評価し、[222]ピークの半値全幅を調べた。中心部位については、両面を評価し、平均した。なお、各部位の切断面全体の特性を把握するため、各部位のX線試料ホルダ上の取り付け位置を適宜変えて各面4箇所について評価し、算術平均した。なお、[222]ピークの面間隔は0.210nm〜0.215nm程度であった。半値全幅の評価結果を表2に示した。
【0077】
切断した各部位は一方の端部を1番(部位1)と名づけ、順番に数え上げ、もう一方の端部を7番(部位7)と名づけた。すなわち、中心部位は4番(部位4)である。表2に示したように、実施例では一様で安定した低半値全幅、すなわち、高配向が得られたが、比較例では、半値全幅のばらつきも大きく、比較的大きな値を示した。これらは、強磁性スパイラルリングを一定の時間内で回転させることで実質的に配向磁場を広い空間でほぼ一様に高めた効果であると推定される。
【0078】
実施例のTb−Dy−Fe系材料を縦磁場成形した場合の半値全幅は、有効磁場増加に対して概ね減少するが、一方、各場所での実質的な一軸成形圧の過度の増加によって増大する傾向を有する。このため、表2のばらつきは、有効磁場を増大させ、かつ、場所に依らず一様にした本発明の有効性を否定するものではなく、一軸成形圧のばらつき下でも、本発明の実施例は、配向性とその場所一様性において、比較例に優れることを示す証左と言える。
【0079】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(a)は成形体の形状を示す概略斜視図であり、(b)は7等分した状態を示す概略斜視図である。
【図2】有効磁場が外部磁場よりも大である領域の形成の原理を説明する図であり、(a)は強磁性体リングを組み込んだ成形装置の概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【図3】強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図4】強磁性体リングの長さを5mmとした場合の強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図5】強磁性体リングの長さを2mmとした場合の強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図6】強磁性体リングの長さを1mmとした場合の強磁性体リングの内側に発生する局所的磁場の場所による変化を示す特性図である。
【図7】強磁性体リングの径を固定した場合のL/Tと局所磁場最大値の相関を示す特性図である。
【図8】強磁性体を移動させる方法を示す概略斜視図であり、(a)はシングルリングを上下動させる場合、(b)はスパイラルリングを回転させる場合、(c)はサイン波形状のリングを回転させる場合を示す。
【図9】強磁性体スパイラルリングを組み込んだ成形装置の一例を示すものであり、(a)は概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【図10】(a)〜(c)は2次的な磁場の数値計算例を示す特性図である。
【図11】2次的な磁場の数値計算における各部寸法を示す模式図である。
【図12】比磁化率が10,100,1000の三通りの理想的な軟磁性材料に80kA/m(1kOe相当)の外部磁場を与えた時の磁化[T]の反磁場係数依存性を示す特性図である。
【図13】強磁性体のシングルリングを組み込んだ成形装置の一例を示すものであり、(a)はシングルリングを埋め込んだ円筒の概略斜視図、(b)は成形装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 成形体、1a〜1g 分割片、2,11,20 ダイ、3 強磁性体リング、4 成形空間、5,14,23 中棒、6 原料粉、7,13 下パンチ、8,12 上パンチ、9 強磁性体スパイラルリング、21 シングルリング、22 円筒、24 成形粉、25,26 パンチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体粉を含む原料粉が一軸加圧成形されてなる成形体であって、
前記一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片における主要な結晶面のX線回折ピークの半値全幅と、中央付近の分割片における前記半値全幅との差が0.05°未満であることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記強磁性体粉が、磁化容易軸、磁化容易面、磁化容易方向のいずれかを有することを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記一軸加圧成形後、焼成により焼結体とされていることを特徴とする請求項1または2記載の成形体。
【請求項4】
磁歪材料からなることを特徴とする請求項3記載の成形体。
【請求項5】
RTx(Rは1種類以上の希土類元素、Tは1種類以上の遷移金属であり、xは1<x<3である。)で示される組成を有することを特徴とする請求項4記載の成形体。
【請求項6】
前記結晶面が[222]面であることを特徴とする請求項5記載の成形体。
【請求項7】
少なくとも一部が前記一軸加圧方向と略平行な軸を中心軸とする円筒形状とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の成形体。
【請求項8】
前記円筒形状において、外径寸法が長さ寸法よりも小であることを特徴とする請求項7記載の成形体。
【請求項9】
強磁性体粉を含む原料粉を金型の成形空間内で一軸加圧成形する成形方法であって、
前記一軸加圧方向に外部磁場を印加するとともに、前記金型の成形空間の近傍に強磁性体を配し、当該強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させることを特徴とする成形方法。
【請求項10】
前記強磁性体を配することにより前記外部磁場よりも磁場の強さが大である有効磁場領域を形成し、この有効磁場領域を前記成形空間に対して一軸加圧方向に相対移動させることを特徴とする請求項9記載の成形方法。
【請求項11】
前記強磁性体は、局所磁場を形成する角部を有することを特徴とする請求項9または10記載の成形方法。
【請求項12】
前記成形空間を円筒形状とすることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載の成形方法。
【請求項13】
前記強磁性体を円環状として前記成形空間の周囲に略同軸に配し、当該軸方向に相対移動させながら成形を行うことを特徴とする請求項12記載の成形方法。
【請求項14】
前記強磁性体を螺旋状として前記成形空間の周囲に略同軸に配し、前記軸を回転軸として前記強磁性体または成形空間の少なくとも一方を回転させながら成形を行うことを特徴とする請求項12記載の成形方法。
【請求項15】
強磁性体粉を含む原料粉を一軸加圧成形する成形空間を有する金型と、前記金型の成形空間に外部磁場を印加する外部磁場印加手段と、前記金型の成形空間の近傍に配される強磁性体とを備え、
前記強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させる移動機構を有することを特徴とする成形装置。
【請求項16】
前記強磁性体を配することにより前記外部磁場よりも磁場の強さが大である有効磁場領域が形成され、前記移動機構は、前記強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させることにより、この有効磁場領域を前記成形空間に対して一軸加圧方向に相対移動させることを特徴とする請求項15記載の成形装置。
【請求項17】
前記強磁性体は、局所磁場を形成する角部を有することを特徴とする請求項15または16記載の成形装置。
【請求項18】
前記成形空間が円筒形状であることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項記載の成形装置。
【請求項19】
前記強磁性体が円環状であり、前記成形空間の周囲に略同軸に配されるとともに、前記移動機構によって当該軸方向に相対移動されることを特徴とする請求項18記載の成形装置。
【請求項20】
前記強磁性体が螺旋状であり、前記成形空間の周囲に略同軸に配されるとともに、前記移動機構によって、前記軸を回転軸として前記強磁性体または成形空間の少なくとも一方が回転されることを特徴とする請求項18記載の成形装置。
【請求項1】
強磁性体粉を含む原料粉が一軸加圧成形されてなる成形体であって、
前記一軸加圧方向に7等分以上に分割した際に、両端の分割片における主要な結晶面のX線回折ピークの半値全幅と、中央付近の分割片における前記半値全幅との差が0.05°未満であることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記強磁性体粉が、磁化容易軸、磁化容易面、磁化容易方向のいずれかを有することを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記一軸加圧成形後、焼成により焼結体とされていることを特徴とする請求項1または2記載の成形体。
【請求項4】
磁歪材料からなることを特徴とする請求項3記載の成形体。
【請求項5】
RTx(Rは1種類以上の希土類元素、Tは1種類以上の遷移金属であり、xは1<x<3である。)で示される組成を有することを特徴とする請求項4記載の成形体。
【請求項6】
前記結晶面が[222]面であることを特徴とする請求項5記載の成形体。
【請求項7】
少なくとも一部が前記一軸加圧方向と略平行な軸を中心軸とする円筒形状とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の成形体。
【請求項8】
前記円筒形状において、外径寸法が長さ寸法よりも小であることを特徴とする請求項7記載の成形体。
【請求項9】
強磁性体粉を含む原料粉を金型の成形空間内で一軸加圧成形する成形方法であって、
前記一軸加圧方向に外部磁場を印加するとともに、前記金型の成形空間の近傍に強磁性体を配し、当該強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させることを特徴とする成形方法。
【請求項10】
前記強磁性体を配することにより前記外部磁場よりも磁場の強さが大である有効磁場領域を形成し、この有効磁場領域を前記成形空間に対して一軸加圧方向に相対移動させることを特徴とする請求項9記載の成形方法。
【請求項11】
前記強磁性体は、局所磁場を形成する角部を有することを特徴とする請求項9または10記載の成形方法。
【請求項12】
前記成形空間を円筒形状とすることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載の成形方法。
【請求項13】
前記強磁性体を円環状として前記成形空間の周囲に略同軸に配し、当該軸方向に相対移動させながら成形を行うことを特徴とする請求項12記載の成形方法。
【請求項14】
前記強磁性体を螺旋状として前記成形空間の周囲に略同軸に配し、前記軸を回転軸として前記強磁性体または成形空間の少なくとも一方を回転させながら成形を行うことを特徴とする請求項12記載の成形方法。
【請求項15】
強磁性体粉を含む原料粉を一軸加圧成形する成形空間を有する金型と、前記金型の成形空間に外部磁場を印加する外部磁場印加手段と、前記金型の成形空間の近傍に配される強磁性体とを備え、
前記強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させる移動機構を有することを特徴とする成形装置。
【請求項16】
前記強磁性体を配することにより前記外部磁場よりも磁場の強さが大である有効磁場領域が形成され、前記移動機構は、前記強磁性体を前記成形空間に対して相対移動させることにより、この有効磁場領域を前記成形空間に対して一軸加圧方向に相対移動させることを特徴とする請求項15記載の成形装置。
【請求項17】
前記強磁性体は、局所磁場を形成する角部を有することを特徴とする請求項15または16記載の成形装置。
【請求項18】
前記成形空間が円筒形状であることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項記載の成形装置。
【請求項19】
前記強磁性体が円環状であり、前記成形空間の周囲に略同軸に配されるとともに、前記移動機構によって当該軸方向に相対移動されることを特徴とする請求項18記載の成形装置。
【請求項20】
前記強磁性体が螺旋状であり、前記成形空間の周囲に略同軸に配されるとともに、前記移動機構によって、前記軸を回転軸として前記強磁性体または成形空間の少なくとも一方が回転されることを特徴とする請求項18記載の成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−274438(P2006−274438A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100106(P2005−100106)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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