説明

成形体

【課題】
解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成された吸気管の捨袋を除去するに際して、刃物の切断面が吸入口の吸入方向に垂直な断面に対し60度傾いている場合、該吸入方向に垂直に切断する場合の切断断面幅に比べてその切断断面幅が2倍に増加しているため、その切断抵抗も垂直に切断する場合の2倍となって該吸気管や該刃物が変形してしまうことにより意図した形状に切断できないという点である。
【解決手段】
捨袋の切断面が吸気管に垂直な断面に対して傾いている該切断面の切断位置で、該吸気管に対する外向きの段差を捨袋に設けることにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成され、捨袋の切断面が成形本体に垂直な断面に対して傾いている該切断面にて該捨袋を除去するのに適した形状を有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
捨袋の除去に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【特許文献1】特開平6−91589号公報
【0003】
即ち、特許文献1の段落番号0005に「押出し成形品に扁平な角形の鋼板から成る刃物を押し付け、その押し付け力を一定にし、刃物に微振動を与えて押出し成形品を塑性切断する」と示されている方法はそのまま該捨袋の除去にも適用できる。
【0004】
しかし、「扁平な角形の鋼板から成る刃物を押し付け」るのであるから、薄肉断面のものなら問題ないが、厚肉断面のものを切断する場合には過大な切断抵抗により切断ラインが横振れして精度良く切断できないという欠点があった。
【0005】
以下、図によってより詳しく説明する。図1は熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成された自動車用吸気管1の斜視図である。2は吸入口、3は排出口である。
【0006】
図2はブロー成形直後の捨袋付き該吸気管1の斜視図である。また、図3は図2のB−B断面を表す。捨袋5、6は前記従来技術の塑性切断により除去されるが、図1に示すように該吸入口2は偏平且つ傾いており、図2に示すように刃物7を矢印Aの方向に動かし該捨袋5を除去して該吸入口2を加工しようとすると、図3に示すように該刃物7の切断面8が該吸入口2の吸入方向Sに垂直な断面に対して60度傾いているため、該吸入方向Sに垂直に切断する場合の垂直切断断面幅aに比べてその傾斜切断断面幅bが2倍に増加している。
【0007】
よってその切断抵抗も垂直に切断する場合の2倍となって該吸気管1や該刃物7がその切断抵抗によって変形してしまうため意図した形状に切断できないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成された自動車用吸気管の捨袋を除去するに際して、刃物の切断面が吸入口の吸入方向に垂直な断面に対して60度傾いている場合、該吸入方向に垂直に切断する場合の垂直切断断面幅に比べてその傾斜切断断面幅が2倍に増加しているため、その切断抵抗も垂直に切断する場合の2倍となって該吸気管や該刃物が変形してしまうことにより意図した形状に切断できないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成される成形体であって、捨袋の切断面が成形本体に垂直な断面に対して傾いている該切断面の切断位置で、該捨袋が該成形本体に対して外向きの段差を有することを最も主要な特徴とする。
【0010】
また、上記切断位置の段差部切断幅が垂直切断断面幅の3分の2以下であることを第2の主要な特徴とする。
【0011】
また、上記成形本体が吸気管であることを第3の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、捨袋の切断位置で吸気管に対して外向きの段差が付けられているため、該切断位置にてパリソンが急激に折り曲げられながら延伸させられることで、該切断位置における段差部切断幅は非常に小さくなって切断抵抗も小さくなるので、捨袋を除去して吸入口を加工する際、吸気管や刃物が変形してしまうことはなく、意図した形状にスムーズに切断できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
吸気管や刃物を変形させることなく捨袋を除去して吸入口を加工するという目的を、該捨袋の切断面が該吸気管に垂直な断面に対して傾いている該切断面の切断位置で、該吸気管に対する外向きの段差を捨袋に設けることによって、塑性切断という安価な工法を用いて、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0014】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0015】
図4は、本発明の1実施例を示す吸入口2の断面図である。捨袋5は切断位置Pで吸気管1に対して外向きの段差hが付けられている。ここで言う「外向き」とは該吸気管1の内側から外側に向かう向きを意味する。
【0016】
次に本発明の作用を説明する。分割金型(図示せず)内にポリプロピレン等の半溶融状態の熱可塑性樹脂パリソン(図示せず)を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0017】
尚、該パリソンに適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0018】
その後該パリソン内に圧縮空気を吹き込んでブローアップし、ブロー成形を完了させる。
【0019】
この時該パリソンは該切断位置Pにて急激に折り曲げられながら延伸させられるため、該切断位置Pにおける段差部切断幅tは非常に小さくなっていて切断抵抗も小さいので、該捨袋5を除去して該吸入口2を加工する際該吸気管1や該刃物7が変形してしまうことはなく、意図した形状にスムーズに切断できる。
【0020】
該捨袋5を切断後の該吸入口2の断面を図5に示す。該段差部切断幅tは該垂直切断断面幅aの3分の2以下になっている。即ち、
該段差部切断幅t≦(2/3)×該垂直切断断面幅a
=(2/3)×(1/2)×該傾斜切断断面幅b
=(1/3) ×該傾斜切断断面幅b
であるから、該切断抵抗が従来例の1/3以下となっている。
【0021】
以上実施例に述べたように本発明によれば、捨袋の切断位置で吸気管に対して外向きの段差が付けられているため、該切断位置にてパリソンが急激に折り曲げられながら延伸させられることで、該切断位置における段差部切断幅は非常に小さくなって切断抵抗も小さいので、捨袋を除去して吸入口を加工する際、吸気管や刃物が変形してしまうことはなく、意図した形状にスムーズに切断できるという効果がある。
【0022】
尚、上記実施例では吸気管を例にあげて説明したが、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成される成形体(捨袋付き該吸気管に相当)で、該成形体から該捨袋を除去した残りの部分を成形本体(該吸気管に相当)とすれば、該捨袋の切断面が成形本体に垂直な断面に対して傾いているものであれば何でも良く、該切断面の切断位置で捨袋が該成形本体に対して外向きの段差を有するように構成すれば同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、熱可塑性樹脂製のブロー成形による自動車用吸気管に利用可能であるが、これに限るものではなく、ブロー成形による成形体の捨袋の切断面が成形本体に垂直な断面に対して傾いている場合に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の吸気管の斜視図
【図2】ブロー成形直後の従来の吸気管の斜視図
【図3】図2のB−B断面図
【図4】本発明に係る吸気管の吸入口の断面図
【図5】本発明に係る吸気管の吸入口の切断後の断面図
【符号の説明】
【0025】
1 吸気管
2 吸入口
3 排出口
5、6 捨袋
7 刃物
8 切断面
A 切断方向
P 切断位置
S 吸入方向
a 垂直切断断面幅
b 傾斜切断断面幅
h 段差
t 段差部切断幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形により形成される成形体であって、捨袋の切断面が成形本体に垂直な断面に対して傾いている該切断面の切断位置で、該捨袋が該成形本体に対して外向きの段差を有することを特徴とする成形体
【請求項2】
請求項1における切断位置の段差部切断幅tが垂直切断断面幅aの3分の2以下であることを特徴とする請求項1記載の成形体
【請求項3】
請求項1または請求項2における成形本体が吸気管であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の成形体

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−201009(P2008−201009A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40128(P2007−40128)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】