説明

成形品の内容物のための配合物

本発明は、ゼラチン不含有材料および充填物としての液体からなる殻部分を含む成形物に関し、その殻部分は少なくとも1つの第1の生体ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含む。殻部分と充填物との間の水分量の平衡の確立の時点で、その充填物は該充填剤に基づき3重量%未満の水分量を有する。さらに本発明は、それらの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル殻(capsule shell)およびカプセル内容物におけるそれら2つの部分の間の平衡が確立した後の非常に低い水分量により特徴付けられるソフトカプセルであって、それによって水感受性または水に溶けにくい活性物質の投与に特に適するソフトカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトへの投与のための水に溶けにくい活性物質の配合は、複雑で困難な仕事である。比較的水に不溶性であるがためにしばしば不十分な生体利用能しか達成されない。活性物質粒子の更なる微細化によって、溶液の生成のキネティクスは有利な影響を受けうる。しかしながら、その生体利用能はそれでもまだ制限されうる。功を奏するアプローチは、これら活性物質の非水溶液の適用でなされる。選択された溶剤は、第1に活性物質を十分に溶解させ、第2に活性物質を水性相内へまたは少なくとも生体膜へ移送するものでなければならない。基本的な要求は、これら溶剤が適用および放出の場所で生理学的にも十分に許容されることである。
【0003】
適した有機溶剤はエタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、N−メチルピロリドン、ビタミンE TPGS、Tween系の化合物およびそれらの組み合わせ、並びにその他多数である。テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドは、非常に効率的な溶剤であるが、それらの毒性のため一般的には不適当である。
【0004】
それら適した溶剤は、一般に高度から中程度の極性、高誘電率および低分子量に関連する高い溶解度積によって区別される(Handbook of Chemistry, CRC Press, 64th edition (1983-1984), page C-696参照)。
【0005】
そのような適切な溶剤またはそれらの混合物の内容物としての使用による、殻がゼラチンまたは他の高分子量物質からなるソフトカプセル内への活性物質の溶液の導入は、その溶剤の特性に起因して、ポリマー殻材料の“溶解”または部分的膨潤あるいはその一方で少なくとも溶剤の殻内への移動を導き、他方で殻からカプセル内容物への低分子量成分の移動を導く。その平衡化移動は、特に水の場合に起こるが、その配合物中に使用されている他の成分の場合にも見られることである。そのような成分の例は、殻中の可塑剤としてまたはカプセル内容物中の溶剤として使用されるグリセリン、プロピレングリコールおよび同類の物質である。
【0006】
この問題を解決するため、例えば、EP-A-0 649 651においてグリセリンのような特別の親水性物質を殻材料に加えることが提案された。内容物中の親水性物質の量と殻材料との間に結果的に生じる平衡の急速な確立は、充填材料を持つ貯蔵に安定な成形品をもたらすはずである。しかしながら、EP-A-0 649 651に記載されている通り、そのような成形品の製造のためにはロータリーダイ法の特別な開発が要求される。したがって、EP-A-0 649 651によれば、水に溶けにくい活性物質を持つ内容物のための成形品のゼラチンからの製造において一般的に無視できない付加的な技術的複雑さがある。
【0007】
カプセル封入の間に無水でありかつポリエチレングリコール(PEG)および活性物質(例えば、テマゼパムまたはニフェジピン)を含む溶液中への殻からの水の移動は、水中溶解性がPEG中での溶解性よりも乏しい活性物質を溶解度積の減少に起因して結晶化させ、活性物質の生体利用能を著しく低下させるという結果を招く、ということも知られている。シクロスポリン含有カプセル内容物の場合も、水による活性物質の析出物が知られている。
【0008】
この問題は、慣用のゼラチンカプセルの場合に頻繁に起こる。ソフトゼラチンカプセル内の活性物質溶液のカプセル封入において、殻材料は、カプセル封入の時点で高い水分量(25-40%)を有する。殻からカプセル内容物への水の移動は、カプセル内容物の水親和性に依存し、わずか数分後に測定できる。ソフトカプセル殻の乾燥の終了まで、殻材料とカプセル内容物との間の水分量の平衡が数時間後に確立される。この事態の基本状態に関しては、高ブルームで同時に低粘性なゼラチンが使用される場合でさえ何も変わらない(J.P. Stanley in Lachman, Lieberman, Kanig (editors), The theory and practice of industrial Pharmacy, 3rd ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1986), page 400参照)。
【0009】
1,2−プロピレングリコールのような溶剤/可塑剤を内容物へおよび同時に殻へ加えることによって、EP-A-0 649 651に記載されているように実際にゼラチン融解物(gelatin melt)の水分量を低下させることはできるが、それを排除することはできない:EP-A-0 649 651では、特別な親水性成分の殻材料への添加の結果として、殻材料の製造のための水の量を減らすことができるという。これは、一定な可塑剤全含量(有機可塑剤に水を足したもの)の帰結である。その有機質分量の増加で、それと引き換えにゼラチン融解物の許容可能な粘度に要求される水の割合を低下させることができる。カプセル封入が完了した後、殻材料中の水は、追加の乾燥段階により除去されなければならない。これは、いかなる場合でも、その乾燥時間の間に殻から内容物への水の不可避的移動を導く。Serajuddin、Sheen and Augustine ((J. Pharmaceutical Sci.7581)(1986)62-64))は、殻から内容物への水の移動は、36℃まで固体であるソフトカプセル内容物を使用することにより減らすことができると述べる。カプセル封入後の内容物の固化は、拡散の低減を導くので、その乾燥工程は好ましいとされる。
【0010】
EP-A-1 103 254は、慣用のゼラチンカプセルの代替物としてのデンプンカプセルを開示するが、それというのもその生分解性およびゼラチンが関与するBSE問題に関してデンプンは原材料としてゼラチンを凌ぐ利点を有し、加えてソフトカプセルの製造に要求される物理的特性を有するからである。しかしながら、それから製造されたカプセルであって、成分として水に溶けにくい活性物質を有するものは記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、水に溶けにくい活性物質を含有する溶液のための容易に調製できる剤形であって、長期間貯蔵時でさえ活性物質の析出が起こらない剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明によると、ゼラチン不含有材料の殻材料および内容物としての液体を含むゼラチン不含有材料の成形品(a molded part)であって、その殻材料は、少なくとも1つの第1の生体ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含んでなり、かつ殻の水分量と内容物の水分量との間に平衡が確立した後にその内容物が該内容物に基づき3重量%未満の水分量を有する成形品により達成される。
【0013】
驚いたことに、特定の殻材料、好ましくはデンプン、および充填材料として低水分量を有する溶液を使用して、水に溶けにくい活性物質の析出が長期間貯蔵時でさえ起こらないカプセルを製造できることが見出された。このことは推測するに、第1に殻材料の低水分量に起因し、第2にそれは殻材料によるその周囲からの水の低吸収性により引き起こされ、その結果、長期間貯蔵時でさえ殻から充填材料中への水の移動がほんのわずかしかないのである。
【0014】
成形品内容物中の3重量%未満の非常に低い水分量は、慣用のゼラチン成形品で達成することはできない。ゼラチン成形品の製造には、ゼラチンを溶解および融解させるのに或る程度の量の水が不可欠である。EP-A-0 649 651によると1,2−プロピレングリコールのような或る種の親水性物質を殻材料に加えることによって、必要とされる水の量を減らすことはできるが、その親水性成分によりもたらされる製造工程の複雑化という代償なくして成しえない。さらに、その殻材料中に存在する水は、追加の乾燥段階により除去しなければならない。これは、殻材料から成形品内容物中への或る程度の水の移動を不可避的にもたらす。このことは、特に水に溶けにくい活性物質の場合、付随的な活性物質の析出というだけの理由で許容し得ない。
【0015】
今般、本発明によれば、少なくとも1つの生体ポリマーおよび特に成形品の主要成分としてゼラチンではなくデンプンを使用して、殻材料の製造および非常に低い水分量を有するカプセルの成形が乾燥段階なしで可能であることが見出された。これらの材料の場合、その可塑変形は、カプセル製造において通常達成できるとされるよりも高い圧力と温度で達成できる。かくして、殻から成形品内容物への水の移動は劇的に低下する。このようにして、殻と成形品内容物との間に平衡が確立した後でさえ成形品内容物に基づき3重量%未満の水分量を有するカプセルを製造することが可能である。またこの水分量は、長期間貯蔵の間に実質的に維持可能である。したがって、成形品内容物中に溶解している活性物質の高い安定性と生体利用能がもたらされる。
【0016】
本発明によれば、平衡の確立とは、成形品内容物中の水の濃度と殻材料中の水の濃度との間の濃度勾配が等しくなり、殻材料から成形品内容物への水の移動もまたその逆も、もはや実質上起こらなくなる時点を意味するものと理解される。この時点へは、それらカプセルを乾燥段階にかけるならば、通常は成形品の製造直後に至らず、貯蔵または乾燥のしばらく後に初めて至る。殻(見かけ上の固相)と成形品内容物(液相)との間の水および低分子量成分の分布は、その初期濃度によってだけでなく、とりわけ、例えば溶解度パラメーターδにより表され得る溶解度によっても測定される(Handbook of Chemistry, CRC Press, 64thedition (1983-1984), page C-696参照)。
【0017】
本発明による殻材料中で達成可能な低い水分濃度のおかげで、成形品内容物への初期からの水の移動はほんのわずかしかない。移動に起因して成形品内容物中へ浸透する水の量は、その成形品内容物の水分量に依存する。最初に成形品内容物と殻材料との間の水の濃度勾配が低ければ低いほど、平衡を確立するのに必要とされる移動も少なくなる。その一方で、このことは、成形品内容物中に水がより多く含有されるほど、殻材料に含有することが許される水の量は少ないことを意味する。というのも、そうでなければ平衡が確立した後の成形品内容物中の3重量%の水という閾値を移動に起因して越え得るからである。このことは、類似のやり方で、成形品内容物中および/または殻材料中に起こる他の移動分子(すなわち、300〜600 g/mol未満の分子量を有する分子)にも当てはまる。
【0018】
下記に示されるように、成形品内容物の水分量を知ることで当業者は、平衡が確立した後の成形品における成形品内容物中の水の3重量%という閾値を越えることを回避するため、成形品の製造の際のプロセスパラメーターの適切な選択によって、望み通りに殻材料の水分量を調節することができる。プロセスパラメーターの最適な調節は、当業者によって本発明によるいかなる殻材料に関しても問題なく決定できる。
【0019】
本発明によれば、殻材料は、ゼラチンの代わりに少なくとも1つの生体ポリマーを含む。殻材料としてのデンプンの使用は、本発明によれば特に好ましい。
本発明によれば、成形品内容物は液体である。本明細書において“液体”という用語は、溶液、乳液および分散液を含むことが意図されている。
【0020】
デンプンという用語は、天然デンプン、および物理的および/または化学的に修飾されたデンプンを意味するものと理解される。本発明によれば、EP-A-1 103 254に記載されているデンプンおよびこれに関して本明細書中に明示的に参照がなされている開示に記載されているデンプンは、殻材料として使用できる。好ましいデンプンは、それのアミロペクチン含量がその無水デンプンの全重量に基づき50%を超えるものである。物理的および/または化学的に修飾されたジャガイモデンプンは、特に好ましいことが証明されている。
【0021】
しかし最も広義において、すべてのポリグルカン、すなわち、1,4−および/または1,6−ポリ−α−D−グルカン、および/またはこれらの混合物は、本発明に適している。
【0022】
好ましい態様において、そのデンプンはヒドロキシプロピレート化デンプンである。その置換度(DS)は、0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.25、より好ましくは0.1〜0.15である。特にそれはヒドロキシプロピレート化ジャガイモデンプンである。
【0023】
さらに好ましい態様において、そのデンプンは、予め糊化させたデンプンである。いずれのタイプのデンプンも典型的な温度を超えると、デンプン粒子の“溶解”、すなわち、デンプン粒子の不可逆的な崩壊が、水性デンプン懸濁液中で最高度の膨潤に至った後に起こる。このプロセスは、“糊化(gelatinization)”とも呼ばれる。糊化、すなわち、比較的高い温度で元の容積の40倍までになるデンプン粒子の不可逆的膨潤は、漸次的水分吸収および水素架橋結合の破壊に基づき、それはデンプン粒子構造の完全な崩壊までのさらなる水和を許容する。また、糊化は、低い水濃度で、比較的高い圧力と温度で、および例えば、グリセリンのような可塑剤の同時的使用によっても可能となる。
【0024】
予め糊化させたデンプンであって、それのアミロペクチン含量が無水デンプンの全重量に基づき50%を超え、かつ本発明による処理後に少なくとも40ml/g、好ましくは少なくとも50ml/g、より好ましくは少なくとも80ml/gのシュタウディンガー(Staudinger)指数を有するデンプンの使用は、本発明によると最も好ましい。
【0025】
本発明によると、殻材料は、デンプンとは別に他の物理的および/または化学的に修飾された生体ポリマー、特に多糖類および植物ポリペプチドを含有してもよい。物理的および/または化学的に修飾された生体ポリマーからなる群には、とりわけ、セルロースエーテルおよびセルロースエステル(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート)、アルギネート(アルギン酸および塩)、カラギナン(ラムダ、イオタ、カッパ)、寒天、ペクチンおよび様々な果実(例えば、リンゴ、レモン等)からのペクチン誘導体、ガラクトマンナン(例えば、グアールおよびカロブ豆食品)、グルコマンナン(例えば、コンジャク(konjac))、アラビノガラクタン、植物ゴム(アカシアゴム、トラガカント、カラヤ、タマリンド)、細菌および菌類のような微生物からのゴム(例えば、キサンタン)、アミノ糖誘導体(キトサン、キチンなど)、タンパク質(カゼイン、ゼイン、グルテン等)、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、ゲラン(gellan)、プルラン、および合成または“脱分枝化”デンプンが含まれる。さらに、殻材料は、生理学的に許容される合成ポリマー、例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、PLA(ポリ酢酸)、またはアクリルエステルを含んでもよい。
【0026】
本発明による成形品の製造に使用される混合物は、好ましくは、生体ポリマー、好ましくはデンプンを混合物の全重量に基づき45〜80重量%で含有する。使用される生体ポリマー、特に上記したデンプンは、好ましくは、本発明によれば、1〜30%、好ましくは15〜23%の水分量を有する。このことは、下記の方法による成形品の水分量の確立を容易にする。
【0027】
本発明による殻材料は、少なくとも1つの可塑剤を含んでいなければならない。好ましく使用される可塑剤は、16.3(MPa)1/2に等しいかまたはそれを超える溶解度パラメーターを有するものである。有機可塑剤は、多価アルコール、有機酸、アミン、酸アミド、およびスルホキシドからなる群から選択される。多価アルコールが好ましい。本発明により使用され得る可塑剤の例は、グリセリン、水素化多価アルコール含有デンプン分解生成物のシロップ、デンプン分解生成物(オリゴ糖、二糖および単糖類を含む)、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリトリトール、キシリトール、プロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリソルビタン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレンポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物である。シロップとは、定義により、少なくとも70重量%でデキストロース同等物を含有するものでなければならない(regulation on sugar types of the Federal Republic of Germany of April 24, 1993 (BGBl. [Federal German Law Gazette] I, page 512))。本発明に使用されるシロップは、10〜30%、好ましくは15〜30%の水を含有する。特定の態様において、他の可塑剤に対し少なくとも1重量%の過剰のポリオールであって、加水分解化および水素化デンプンから由来するものが存在する。ただし、本発明によれば、出発材料として使用される混合物の水分量は、混合物全体に基づき6〜30重量%であるべきである。本発明による殻材料の調製に使用される混合物の可塑剤全含量は、無水デンプンの重量に基づき少なくとも12重量%である。好ましい態様において、その可塑剤の含量は、材料の全重量に基づき30重量%〜60重量%、より好ましくは38重量%〜55重量%である。
【0028】
可塑剤の全含量(すなわち、水の含量(デンプンおよび可塑剤配合物中のもの)および可塑剤の含量)は、その吸着性、強度、弾性率、および昇温と常温での融解流動速度(melt flow rate)に関して等しく重要である。純粋な化学的性質のポリオール(グリセリンおよびソルビトールなど)だけでなく、デンプンの酵素的および/または化学的加水分解とそれに次ぐ水素化からすべて調製されるポリオール混合物(高分子量形態も含む)を使用することも特に好ましい。ほとんどの場合、これら生成物は、含まれる分子の異なる化学的特性および鎖長に起因して結晶化が起こり得ないことから、乾燥物質として販売されることはない。使用されるシロップ(好ましくはソルビトール/マンニトールシロップの混合物)の水分量は、本発明による方法全体に考慮されなければならない。
【0029】
得られた成形品の必要とされる特性に依存して、混合物の全重量に基づき3.5重量%〜15重量%、好ましくは5重量%〜8重量%の少なくとも1つの添加物を、本発明による殻材料の製造に使用される混合物に添加してもよい。それら添加物は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属イオンの炭酸塩および重炭酸塩、さらには崩壊促進剤、成形品内容物、色素、および抗酸化剤からなる群から選択される。
【0030】
均質化された材料は、好ましくは、二酸化チタンを成形品内容物として加えることにより不透明になる。
炭酸カルシウムおよびアミラーゼは、好ましくは、カプセル殻の急速な崩壊のための崩壊促進剤として添加される。
【0031】
好ましい態様において、本発明による殻材料の製造に使用される混合物は、内部潤滑剤および離型剤をさらに含有し、それはレシチン、食用脂肪酸のモノー、ジーまたはトリグリセリド、食用脂肪酸のポリグリセリルエステル、食用脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、食用脂肪酸の糖エステル、食用脂肪酸およびそれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。潤滑剤および離型剤は、好ましくは、混合物の全重量に基づいて0〜4重量%で混合物中に含有される。それは、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは0.8〜1.5重量%の量で混合物中に加えられる。潤滑剤および離型剤は、有利にはグリセリルステアラートおよびレシチンからなる群から選択される。
【0032】
食用脂肪酸とは、天然脂肪のトリグリセリドの酸性成分として生じるモノカルボン酸を意味すると理解される。それらは、偶数個の炭素原子を有しかつ直鎖炭素骨格を有する。それら脂肪酸の鎖長は、2〜26炭素原子で変動する。本発明により好ましいとされるこれら脂肪酸の群は、飽和脂肪酸を含む。
【0033】
本発明による殻材料によるその周囲からの常に低い水分吸収性をさらに低下させるために、本発明による成形品は、追加的にコーティングされてもよい。ただし、このコーティングは、他の目的、例えば、活性物質の放出を遅延させるため、胃液に対する抵抗性を与えるため、芳香保護を与えるため、光沢または色を与えるためのような審美目的のため、またカプセル材料の水分を一定に維持しこれらを脆弱化も粘着化もさせずかつそれらの物理的特性を保持させるために施し得る。そのようなコーティングは、ワックス、樹脂、ゴムおよび/または脂質およびまたは疎水性を有する合成ポリマーからなるものでよく、蜜ろう(E901)、カルナバワックス (E903)、カンデリラワックス(E902)、ベリーワックス(berry wax)、モンタングリコールワックス(E912)、ポリエチレングリコールワックス酸化生成物(E914)、モンタン酸エステル(E912)、ロジンエステル、シェラック(E904)、食用脂肪酸のモノ−、ジーおよびトリグリセリド(E471)、食用脂肪酸の糖エステル(E476)、ジメチルポリシロキサン(E900)、アクリルエステル(例えば、Eudragit)、セルロースエーテル(例えば、エチルセルロース(EC))、およびセルロースエステル(例えば、HPMC)、並びにそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0034】
本発明による成形品は、液状からペースト状までのコンシステンシーを有し単一相から多相までの成形品内容物(エマルジョン、プレエマルジョン、懸濁液、溶液)を含有する。本発明による成形品は、水に溶けにくいが、成形品内容物中に均質に溶解または乳化する少なくとも1つの活性物質を含む成形品内容物に特に適している。本発明によると、水に溶けにくい活性物質とは、薬学的に活性の物質、または美容効果を有する物質、または栄養補助食品として使用される物質であって、水中に1%(W/V)未満の溶解度を有する物質を意味するものと理解される。そのような水に溶けにくい活性物質の例として次のものが挙げられる:シクロスポリン(例えば、シクロスポリンA)、マクロライド(例えば、ラパマイシン)、パクリタキセル、ある種のビタミン、フラボノイド、コエンザイムQ10、またはイソトレチノイン、イブプロフェン、テマゼパム、ニフェジピン、ニモジピン、パラセタモール、またはコデインからなるクラス。さらに、本発明による成形品は、水感受性活性物質を含有する成形品内容物に適している。
【0035】
本発明による充填された主要部分は、1つ以上のそのような活性物質を含んでもよい。
これら活性物質は、本発明による成形品内において、水に溶けにくい化合物のために通常使用される配合物中に存在し得る。エタノールまたはポリエチレングリコールのような慣用的な有機溶剤において最初に言及した配合物は、この目的のための例として挙げ得る。ただし、そのような活性物質のために複合ビヒクルを溶剤として使用することも可能である。EP-A-0 649 651に言及されているマイクロエマルジョンまたはプレマイクロエマルジョン濃縮物を例として挙げ得る。WO 01/28518およびWO 01/28520に記載されているマイクロエマルジョンまたはプレマイクロエマルジョン濃縮物、特に活性物質としてシクロスポリンまたはコエンザイムQ10を持つものは、本発明によると好ましいとされる。これら文献の対応する内容にここで明示的に参照がなされる。
【0036】
本発明によると、水に溶けにくい活性物質を溶解させるためのビヒクルは、好ましくは親水性マトリックスである。例えば、エタノール、PEG400のようなポリエチレングリコール、またはグリセリンからなる群からの、1つ以上の活性物質を含むマトリックスである。ただし、少量の水を含んでもよい。しかしながら、このビヒクルが、平衡が確立した後に成形品内容物全体における水分量が3重量%未満であるような水分量を有しなければならないことは、もちろん自明である。したがって、成形品内容物全体に基づき、カプセル充填の時点で2重量%と同等であるかまたはそれ未満の水分量を有するビヒクルまたは成形品内容物は、本発明によると好ましい。
【0037】
さらに本発明は、上記の成形品の製造方法であって、次の各段階:
a) 粉体または顆粒の形態の少なくとも1つの第1の生体ポリマーを、液体の形態、特にシロップの形態の少なくとも1つの可塑剤と、場合により添加剤と共に混合し、均質な原材料混合物を提供すること;
b) 該原材料混合物を、加工装置内の熱の供給および高圧(superatmospheric pressure)下で、特に押出し段階において融解させ、熱可塑的に加工可能な材料を提供すること;
c) 場合により、中間体、特に顆粒の中間体を、段階b)において得られた材料の冷却後に調製して、熱可塑的に加工可能な材料を提供するようにさらに処理すること;
d) 段階b)または場合により段階c)による熱可塑的に加工可能な材料の少なくとも1つのフィルムを、特にスロットダイからの押出しにより成形すること;
e) 成形品ステーションで、特にロータリーダイカプセル封入機上で断続的または連続的方法で該フィルムを使用して、かつ成形品内容物としての液体を該成形物に充填して、成形品を製造すること;
を含む製造方法に関する。
【0038】
完成成形品は、その成形ステーションを離れた後、乾燥工程にかける必要がない。
この方法は、EP-A-1 103 254に詳しく記載されている。これに関してその内容にここで明示的に参照がなされる。
【0039】
“熱可塑的に加工可能な”、“融解”、“シロップ”、および“アモルファス”という用語は、Rompp Chemie Lexikon [Rompp Chemistry Lexicon], editors: J. Falbe, M. Regitz, 9th edition, 1992, Georg Thieme Verlag, Stuttgratにおける定義に従って、本願に使用されている。
【0040】
段階b)並びにその後の加工段階におけるデンプン含有混合物の熱可塑性で好ましくは均質化した状態への変換は、アミロースおよびアミロペクチン分子の短い断片への非コントロール性分解を防ぐ条件下で達成されなければならない。すべての加工パラメータ、例えば温度、圧力、滞留時間および混練力の協働は、デンプン分子の実質的な分解を防ぐために様々な段階の際に考慮されなければならない。かくして、デンプン分子の実質的な分解は、例えば、比較的高い温度でさえ、これら温度でのデンプン含有材料の滞留時間を短く保つなら、防ぐことができる。
【0041】
好ましい態様において、第1および場合により第2の加工装置内および材料押出し物の製造の間の材料の温度は、160℃、好ましく140℃、より好ましく120℃、最も有利には90℃を超えない。160℃では、段階a)における温浸(digestion)工程は、特に5分未満に、好ましくは3分未満に完了すべきである。
【0042】
さらに好ましい態様において、段階a)〜c)において熱可塑的に加工可能な均質材料を生成するために混練によって材料に導入されたエネルギーは、0.3kWh/kg、好ましくは0.2kWh/kg、より好ましくは0.175kWh/kgを超えない。
【0043】
段階d)におけるフィルムの成形は、好ましくは、5×104Paを越える圧力下および80℃〜105℃の温度でのスロットダイから大気環境中への押出しにより起こる。
熱可塑的に加工可能な状態への変換は、デンプン粒子の不可逆的な膨潤を生じ、それはその材料が均質な状態に変換可能であるためにもまた冷却後に均質状態で存在するためにも要求されることである。さらに、段階a)〜c)によって、実質的にもはやデンプン中にいかなる天然の秩序だった領域も有さない材料が生成される。天然の秩序だった領域は、材料押出し物中のゲル形成、すなわち、段階c)における材料押出し物が押出しフィルムである場合に特に不利な効果を有する不均質物を導く。“実質的に天然の秩序だった領域でない”とは、押出された材料のその成形に関連する物理的パラメータの欠陥が天然の秩序だった領域の存在に帰するとはいえないような程度までこれらが破壊されていること意味すると意図されている。
【0044】
したがって、“均質な材料”または“均質化した材料”という用語は、その材料の何れの部位でも実質的に同一の物理的特性(パラメータ)を有する材料を意味するものと理解される。各々の材料または成形品表面で大気湿気の吸収の結果としてわずかな相違は生じてもよい。材料は、顕微鏡下でまだ視認できるデンプン粒子の数が平均で1パーセント未満である場合に均質なまたは均質化された形態で存在する。この目的のためには、材料を熱可塑性状態で冷やし、薄いディスクにカットし、光学顕微鏡下で分析する。
【0045】
均質化した材料は、対応する出発混合物を、軟化したまたは液状である熱可塑的に加工可能な状態に変換することにより得られる。その混合物を占める大部分の成分(デンプン、有機可塑剤、滑剤、および離型剤)は、融解状態で存在してもよく、そして十分に長い停止(standing)および/または混合(混練)時間で、材料はその融解物(均質な材料)のいかなる部位でも実質的に同じ特性または化学組成を有するであろう。この均質な状態は、熱可塑性状態の冷却の間およびその後でも維持される。分離過程は起こらない。このことは、成形品の室温での均一な機械的特性を保証する。
【0046】
上記した通り、段階a)に使用される混合物の水分量は、本発明による方法における段階b)またはc)において、当業者によく知られている特定のやり方で修飾的に変更できる。このようにして水分量に依存する物理的パラメータを変化にさらしてもよい。本発明による成形品の製造後の追加乾燥段階は完了しており、したがって、もはや必要とされない。段階b)またはc)における混合物の水分量の変更は、本発明に従い、好ましくは、加工装置からの減圧域における水蒸気の制御放出により、または加工装置へ注入域において水を導入することにより行うことができる。本発明により好ましいとされるツインスクリュー押出しの場合、1つ以上のいわゆる脱蒸気(devolatilization)域が使用され、そこを経由して過剰な水分(生体ポリマー、例えば、デンプン、および/または可塑剤、例えばポリオールシロップからのもの)が融解物から除去される。融解物に作用する低下圧力を調節することにより(例えば、減圧ポンプと押出し機との間の外気バルブを利用して)、押出された材料の最終的な水分量を具体的に確立することができる。固定された全排出量で、例えば、脱蒸気域において作用する200mbarの絶対圧力で、押出し物の最終水分量が、例えば、6%であることが保証される;その圧力が450mbarに調節されると、例えば、12%の最終水分含量となる。
【0047】
本発明の好ましい態様によれば、段階d)において成形されたフィルムは、少なくとも40ml/g、好ましくは少なくとも50ml/g、より好ましくは少なくとも80ml/gのシュタウディンガー指数(Staudinger index)を有する。シュタウディンガー指数という用語の説明およびそれの定義については、これに関連してEP-A-1 103 254の全内容への参照がなされ、それは参照によってここで明示的に取り組まれる。
【0048】
本発明による製造方法により得られる本発明による材料は、約20℃〜約80℃の温度においてこの範囲外よりも温度への依存性が少ない機械的特性、例えば、ε、σ、Eを有する。そのいわゆるラバープラトー(rubber plateau)は、充填化成形品へのフィルムの成形および充填のために決定的に重要である。かくして、本発明によるデンプン含有フィルムのヤング弾性率Eは、ロータリーダイ工程における成形および充填の時点で2Mpa以下、好ましくは1Mpa以下である。換言すれば、フィルムは、充填材料の充填圧力に拮抗してはならず、それは、機械により生じる充填ウエッジ接触圧力でもって、その充填材料がフィルムと充填ウエッジとの間に流れだすような抵抗を伴って、その末端にロータリーダイ工程でカプセル殻を成形することを最終的に担っている。これらの材料からソフトカプセルにロータリーダイ法で製造されるフィルムの加工性は、こうすることによって認められる。
【0049】
本発明による処理によって、高度に分解されたデンプンのオリゴマーを実質的に排除することができる。このことは、総量としては多量の可塑剤を材料中に組み込むことを可能にする。
【0050】
押出された帯体(band)は、直接的にさらに加工されるか、または場合により貯蔵のためにロール上へ、例えば、中間層としての可塑性フィルムの使用で巻つけられる。ポリエチレンが最も適したフィルム材料であると証明されている。
【0051】
成形品を与えるために材料押出し物を成形するための工程、特に産業上知られている方法による押出しフィルムの一体ソフトカプセルへの成形は、40℃〜90℃、好ましくは60℃〜80℃において、材料押出し物、特にフィルムの少なくとも100%の破断点伸び(elongation at break)を要求する。好ましい態様において、材料押出し物、特にフィルムの破断点伸びは、少なくとも160%、より好ましく少なくとも240%である。
【0052】
材料押出し物、特にそれから製造される成形品の強度σは、25℃および60%相対湿度で少なくとも2MPaである。好ましい態様において、σは、3.5MPaより大きいかまたはそれと等しく、より好ましくは5MPaより大きいかまたはそれと等しい。室温で、この値はカプセル殻の十分な安定性(包装、貯蔵、移動安全性および使用)を保証する。
【0053】
ただし、その充填はフィルムの昇温下で行われ、2Mpa以下の充填圧力を必要とする。これは、好ましいカプセル封入温度(40℃〜90℃)で2MPa未満またはそれと等しいヤング弾性率Eを有する本材料に関する場合である。
【0054】
本発明による方法によって段階d)において得られるフィルムは、特に産業上知られているあらゆるユニットでのソフトカプセルの製造のために加工でき、かつ一体カプセルの製造に意図され得る。連続ユニットおよび特にロータリーダイ工程は、特に適すると証明されている。カプセル壁は、熱の作用下、好ましく50℃を超えるかまたはそれと等しい温度で、フィルムから予め打出された2つの片割れ成形品から溶接される。2つの“連続フィルム”は、凹部を有する2つの近接する対抗回転ローラまたはロールを通過する。デンプンフィルムは、成形品内容物の凹部内への充填圧力によりプレスされてそれらカプセル片割れが成形され、一方でポンプ供給およびスプレー可能なカプセル充填物は、バルブによって正確に計量されて充填ウエッジによって成形ロールの引込み角度内へ導入される。かくして、カプセルの形状およびサイズは、ロール内の凹部の幾何学的寸法および計量された全容量に依存する。
【0055】
段階e)において、好ましくロータリーダイ工程を利用して成形される成形品は、上記した液状、ペースト状または融解した成形品内容物で充填できる。
したがって結果として、カプセルという用語は、典型的なカプセル形状のみならず、あらゆる可能な形状の“殻”、例えば、球、クッションその他の形状をも意味するものと理解される。今日まで、この基本原理のさらなる発展および基本原理からの逸脱が多々ある。
【0056】
そのフィルム成形特性が合成および/または天然ポリマーに基づく材料での本発明による成形品の共押出し、コーティングおよびラミネーションは、多層フィルムによってカプセル殻のある種の特性を提供するためのさらなる可能性を創出する。
【0057】
特に、多層構造によって、その内側に速やかに溶接可能なコーティングを有し、その一方で外側がカプセルの崩壊または胃液抵抗性への遅延効果があるようにコーティングされた成形品を製造することが可能である。
【0058】
本発明による殻材料は、例えば、WO 00/28976に記載されているような多室または2室カプセルの製造に適している。フィルムの水分量を低くするように調節できるので、完成した乾燥カプセル、特に室内を形成する仕切りに事実上応力が生じず、それら多室カプセルの安定性をソフトゼラチン多室カプセルと比べて実質的に向上させる。
【0059】
成形品、特にカプセル殻は、0.1〜2mm、好ましくは0.2〜0.6mmの厚みを有する。
本発明は、下記の非限定的実施例への参照でより詳細に説明される。それら成形品は、EP-A-1 103 254において図3と図4およびその記載中の対応する記述(セクション[0087]〜[0093])に詳細に説明されている。これに関してEP-A-1 103 254の開示はここで明示的に参照によって組み込まれる。Werner & Pfleiderer社製のタイプZSK30またはKrupp, Werner & Pfleiderer社製のタイプZSK25のツインスクリュー押出し機が使用された。下記のすべてのデータは重量部で表されている。すべての実施例において、実施例1に記載されているデンプンが使用された。
【実施例】
【0060】
実施例1:
下記の成分は、ツインスクリュー押出し機(タイプZSK25、Krupp, Werner & Pfleiderer)を経て連続的に計量され、熱可塑的に加工可能な状態に変換された。
【0061】
本法の開始時点での組成
ヒドロキシプロピレート化ジャガイモデンプン
(天然の顆粒形態、21%水分(絶対水分量)、
0.1mol%のヒドロキシプロピル基) 60.2部
ソルビトールシロップFCCIII(70%固形分) 37.5部
液体レシチンFCCIII 1.1部
グリセリルモノステアラート(E471) 1.2部
押出しの開始時点での水の全量 23.8%
本法の終了時の周囲大気湿度との平衡
における組成物の水分量(25℃、60%RH;
カールフィッシャー(Karl Fischer)法
により測定された水分量) 11.5%
実施例2並びに比較例1および2
成形品内容物の製造のために、ポリエチレングリコール(PEG) 400 (Macrogol 400)および場合によりプロピレングリコールを、各ケースにつき均質に20℃で混合した。次いで、活性物質テマゼパムを完全に溶解するまで20〜30℃で攪拌した。
【0062】
比較例1および2については、ゼラチンを水とグリセリンの混合物中に70℃で導入し、粘性で均質な融解物を形成するまで攪拌した。これを60℃でチルロール上で0.7mm厚の帯体に成形した。カプセル封入はロータリーダイ技術を使用して行った。成形されたソフトゼラチンカプセルを20〜30℃で30%未満の湿度を有する乾燥空気中で一定の重量までに乾燥させた(約18時間)。
【0063】
実施例2において、下記の殻材料は、95〜105℃でシングルスクリュー押出し機内で融解させ、0.7mm厚の帯体に成形した。カプセル封入は、ロータリーダイ法を使用して行った。成形されたソフトカプセルを20〜30℃で50%の湿度を有する空気中で約18時間コンディショニングした。
【0064】
下記の表1は、各種組成(乾燥物質に基づく)を示す。
【0065】
【表1】

成形品内容物の水分量は、上記したように24時間後に測定した。それらの結果は表2に示される。実施例2において、成形品内容物中にかなり低い最終水分濃度が得られていることが明らかである。極性1,2−プロピレングリコールの添加は、事実上結果に影響を与えなかった。
【0066】
【表2】

実施例3および比較例3
シクロスポリンを25℃でエタノール中に溶解させ、攪拌し、表3中に記載した残留する成形品内容物成分の融解混合物にした。その混合物を25℃まで冷却した。
【0067】
比較例3については、ゼラチンを、水、グリセリンおよびソルビトールシロップの混合物中に70℃で導入し、粘性で均質な融解物を形成するまで攪拌した。これを60℃でチルロール上で0.7mm厚の帯体に成形した。カプセル封入はロータリーダイ技術を使用して行った。成形されたソフトゼラチンカプセルを20〜30℃で30%未満の湿度を有する乾燥空気中で一定の重量までに乾燥させた(約18時間)。
【0068】
実施例3において、下記の殻材料は、95〜105℃でシングルスクリュー押出し機内で融解させ、0.7mm厚の帯体に成形した。カプセル封入は、ロータリーダイ法を使用して行った。成形されたソフトカプセルを20〜30℃で50%の湿度を有する空気中で約18時間コンディショニングした。
【0069】
下記の表3は、各種組成(乾燥物質に基づく)を示す。
【0070】
【表3】

成形品内容物の水分量は、上記したように24時間後に測定した。それらの結果は表4に示される。ここで比較例3とは対照的に、実施例3において水分濃度の低下がある。これは特に顕著である。なぜなら、大量の非常に極性で吸湿性の成形品内容物が、実施例3におけるカプセル封入の時点で同様の重量を有する殻でカプセル封入されていたからである。
【0071】
【表4】

実施例4および比較例4
それほど親水性でなくかつポロキサマー(ポリオキシエチレン−12−ポリオキシプロピレン−20−ブロックポリマー,MG=2200)124,クレモフォアRH40およびプロピレングリコーを含む成形品内容物を約40℃まで過熱した。50%の活性物質イブプロフェンを導入し、溶解させた。次いで、その混合物を攪拌しながら25℃まで冷却し、残留する59%のイブプロフェンを加えた。微細な結晶懸濁物を得た。
【0072】
比較例4については、ゼラチンを、水とグリセリンの混合物中に70℃で導入し、粘性で均質な融解物を形成するまで攪拌した。これを60℃でチルロール上で0.7mm厚の帯体に成形した。カプセル封入はロータリーダイ技術を使用して行った。成形されたソフトゼラチンカプセルを20〜30℃で30%未満の湿度を有する乾燥空気中で一定の重量までに乾燥させた(約18時間)。
【0073】
実施例4において、下記の殻材料は、95〜105℃でシングルスクリュー押出し機内で融解させ、0.7mm厚の帯体に成形した。カプセル封入は、ロータリーダイ法を使用して行った。成形されたソフトカプセルを20〜30℃で50%の湿度を有する空気中で約18時間コンディショニングした。
【0074】
下記の表5は、各種組成(乾燥物質に基づく)を示す。記載されている量は重量%である。
【0075】
【表5】

成形品内容物の水分量は、上記したように24時間後に測定した。それらの結果は表6に示される。この比較において、まったく吸湿性のない成形品内容物の場合でさえ効果が依然として明白であることがわかる。
【0076】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン不含有材料の殻材料および成形品内容物としての液体を含む成形品であって、該殻材料が、少なくとも1つの第1の生体ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含んでなり、かつ該成形品内容物が、該殻材料の水分量と該成形品内容物の水分量との間に平衡が確立した時点で該成形品内容物に基づき3重量%未満の水分量を有する成形品。
【請求項2】
該第1の生体ポリマーがデンプンである、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
該デンプンが、無水デンプンの重量に基づき、少なくとも50重量%のアミロペクチン含量を有する、請求項2に記載の成形品。
【請求項4】
該可塑剤が、グリセリン、水素化多価アルコール含有デンプン分解生成物のシロップ、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリトリトール、キシリトール、微量の還元糖、プロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリソルビタン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレンポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項5】
該可塑剤が、15%〜30%の水分量を有するポリオールシロップである、請求項4に記載の成形品。
【請求項6】
該殻材料が、デンプン、修飾されたデンプン、セルロース、特に部分的にヒドロキシプロピレート化されたセルロース、アルギネート、ペクチン、寒天、カラギナン(ラムダ−、イオタ−、またはカッパ−カラギナン)、ガラクトマンナン(グアールおよびカロブ豆食品)、キサンタンガム、タマリンド、トラガカントガム、カラヤガム、キトサン、グルコマンナン、カゼイン、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、プルラン、およびアラビノガラクタンからなる群から選択される少なくとも1つの別の生体ポリマーをさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項7】
該殻材料が添加剤をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項8】
該成形品の表面が親油性ワックスまたはシーリング用ポリマー物質でコーティングされている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項9】
該シーリング用物質が、蜜ろう(E901)、カルナバワックス (E903)、カンデリラワックス(E902)、ベリーワックス、モンタングリコールワックス(E912)、ポリエチレングリコールワックス酸化生成物(E914)、モンタン酸エステル(E912)、シェラック(E904)、食用脂肪酸のモノ−、ジーおよびトリグリセリド(E471)、食用脂肪酸の糖エステル(E476)、ジメチルポリシロキサン(E900)、アクリルエステル、セルロースエステルとセルロースエーテル、並びにそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
該成形品内容物が、少なくとも1つの水に溶けにくい活性物質を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項11】
該成形品内容物が、少なくとも1つの水感受性活性物質を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項12】
該活性物質が、シクロスポリン、イソトレチノイン、イブプロフェン、テマゼパム、ニフェジピン、ニモジピン、パラセタモール、またはコデインからなる群から選択される、請求項10または11に記載の成形品。
【請求項13】
該活性物質が、成形品内容物の全体に基づき2重量%と同等かまたはそれ未満の水分量を有する親水性マトリックス中に溶解している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項14】
ソフトカプセルである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項15】
多室カプセル、好ましくは2室カプセルである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の成形品の製造方法であって、次の各段階:
a) 粉体または顆粒の形態の少なくとも1つの第1の生体ポリマーを、液体形態、特にシロップの形態の少なくとも1つの可塑剤と、場合により添加剤と共に混合し、均質な原材料混合物を得ること;
b) 該原材料混合物を、加工装置内の熱の供給および高圧下で、特に押出し段階において融解させ、熱可塑的に加工可能な材料を得ること;
c) 場合により、中間体、特に顆粒の中間体を、段階b)において得られた材料の冷却後に調製し、かつ熱可塑的に加工可能な材料を得るようにさらに処理すること;
d) 段階b)または場合により段階c)による熱可塑的に加工可能な材料の少なくとも1つのフィルムを、特にスロットダイからの押出しにより成形すること;
e) 成形品ステーションで、特にロータリーダイカプセル封入機上で断続的または連続的方法で該フィルムを使用して、かつ該成形物に該成形品内容物としての液体を充填して、成形品を製造すること;
を含み、完成した成形品は、成形品ステーションを離れた後に乾燥工程にかけないことを特徴とする該製造方法。
【請求項17】
段階b)における原材料混合物の融解を好ましくは80℃〜160℃の温度で行い、かつその圧力は最低でも該温度での蒸気圧に一致し、加工装置から減圧域において蒸気を放出するか、または加工装置内へ注入域において水を導入することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階d)におけるフィルムの成形を、5×104Paを超える圧力下および80℃〜105℃の温度でのスロットダイから大気環境への押出しにより行う、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
段階d)において、0.2mm〜2mmの層厚を有するフィルムを成形する、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
段階d)において成形されたフィルムが、少なくとも40ml/g、好ましくは少なくとも50ml/g、より好ましくは少なくとも80ml/gのシュタウディンガー指数を有する、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
段階a)に使用される第1の生体ポリマーがデンプンである、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
該デンプンが、破壊されていない天然形態または結晶形態のデンプンまたは修飾デンプンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該デンプンが、無水デンプンの重量に基づき、少なくとも50重量%のアミロペクチン含量を有する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
該デンプンが、10重量%〜30重量%、好ましくは15重量%〜23重量%の水分を有する、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項16〜24のいずれか1項に記載の方法により得られる成形品。
【請求項26】
ソフトカプセルである、請求項25に記載の成形品。
【請求項27】
多室カプセル、好ましくは2室カプセルである、請求項25に記載の成形品。
【請求項28】
水に溶けにくいかまたは水に感受性である活性物質を含有する、貯蔵安定性を有する医薬品の製造のための、請求項1〜15、21または22のいずれか1項に記載の成形品の使用。

【公表番号】特表2006−514062(P2006−514062A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566044(P2004−566044)
【出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014950
【国際公開番号】WO2004/062650
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(502173567)スイス・キャップス・レヒテ・ウント・リツェンツェン・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】