説明

成形品の離型装置及び離型方法

【課題】成形品を金型から離型する際に成形品の変形を抑えるのに効果的で構造が簡単な成形品離型装置及び成形品の離型方法の提供。
【解決手段】固定盤10に直接又は固定型取付ベース部11を介して固定した固定型30と、可動盤20に直接又は可動型取付ベース部21を介して固定した可動型31とを対向して備え、固定型は成形品を支持する固定型エジェクタピン17と可動型方向に突出する固定型側型押ピン16を有し、可動型は成形品を支持する可動型エジェクタピン27と固定型方向に突出する可動型側型押ピン26を有し、可動盤は前進・後退制御されたメインロッド2に対して当接及び所定距離離間自在に連結。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム合金等の金属製品の金型成形あるいは、樹脂製品等の金型成形における成形品を金型から離型するための成形品離型装置及び離型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金のダイカスト鋳造や樹脂製品の射出成形等の分野においては、固定型と可動型とでキャビティを形成し、このキャビティ内に金属溶湯あるいは溶融樹脂を鋳込み(射出)、その後に冷却して固化した成形品を金型から離型及び取り出しを行っている。
その代表的な離型方法を図4に模式的に示す。
図4(a)に示すように固定型130と可動型131とを型締めし、キャビティ内に溶湯等を射出(注入)し、(b)に示すように、可動型131が可動盤120に取り付けられており、この可動盤に直接連結したロッド102を介して後退させる。
このときに金型の抜き勾配等を固定型と可動型で差を付け、成形品Wが可動型に張り付いたまま、型開きするように設計されている場合が多い。
従って成形品の抜き勾配に制限が生じ、成形品の形状の自由度が抑えられる。
次に(c)に示すように、エジェクタロッド123をシリンダー等にて前進させることでエジェクタプレート122を介してエジェクタピン127を突出し、成形品Wを突き出すことでこの成形品Wを金型から取り出す。
【0003】
しかし、成形品が充分に固化していない場合や、成形品を高温の状態で金型内から離型及び取り出したい場合がある。
このような場合に図5(a)に模式的に示すように、可動型を型開きする際に成形品Wの一部が固定型130に引っ張られるようになり、成形品形状が変形する恐れが生じる。
また、成形品Wが可動型にそのまま張り付き、固定型から離型したとしてもエジェクタピンを突き出す際に図5(b)に示すように成形品が柔らかく陥没する方向に変形が生じる恐れがあった。
【0004】
特許文献1に複数本のエジェクタピンを段階的に突き出すことで離型抵抗を減少させる方法を開示するが、効果が限定的であり、固定型に成形品の一部が張り付くことによる変形を防止することができない。
特許文献2に固定型にもエジェクタピン相当の機能構造を備えた離型方法を開示するが、エジェクタピンによる突き出し変形を防止することはできない。
特許文献3に型開圧力をパルス状に作用させることで、成形品に瞬間的な初期のショックを与えないようにした技術を開示するが、複雑で高価な制御設備が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−109198号公報
【特許文献2】特開平10−217294号公報
【特許文献3】特開平9−1616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は成形品を金型から離型する際に成形品の変形を抑えるのに効果的で構造が簡単な成形品離型装置及び成形品の離型方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形品離型装置は、固定盤に直接又は固定型取付ベース部を介して固定した固定型と、可動盤に直接又は可動型取付ベース部を介して固定した可動型とを対向して備え、固定型は成形品を支持する固定型エジェクタピンと可動型方向に突出する固定型側型押ピンを有し、可動型は成形品を支持する可動型エジェクタピンと固定型方向に突出する可動型側型押ピンを有し、可動盤は前進・後退制御されたメインロッドに対して当接及び所定距離離間自在に連結されていることを特徴とする。
ここで、可動盤がメインロッドに対して当接及び所定距離離間自在に連結されているので、メインロッドが前進する際には、可動盤を後方から押圧し可動盤が前進することになり、メインロッドが後退する際には、先にメインロッドのみが所定間隔になるまで後退し、その後はメインロッドに引っ張られるようにして可動盤が後退する。
また、可動盤とメインロッドの間に間隔がある場合には、可動盤はメインロッドに当接するまで後退移動自在になる。
【0008】
本発明にあっては、前記固定型エジェクタピンと固定型側型押ピンは、前記固定型内又は固定型取付ベース部内に設けた1つの固定型エジェクタプレートにて前進・後退制御され、前記可動型エジェクタピンと可動型側型押ピンは、前記可動型内又は可動型取付ベース部内に設けた1つの可動型エジェクタプレートにて前進・後退制御されているようにすると、エジェクタピンと型押ピンを同期して前進・後退させることができる。
ここで、固定型及び可動型エジェクタプレートをそれぞれ固定型内及び可動型内に直接配設してもよいが、型と取付ベースとに分割すると型の小型化を図ることができる。
【0009】
このような装置を用いた成形品の離型方法は、固定型と可動型とを型締めした状態で成形品を成形する工程と、メインロッドを後退させ可動盤と当該メインロッドとの間に所定の間隔を形成する工程と、固定型エジェクタピンで成形品を支持しながら固定型側型押ピンを突出させることで可動型を後退させると同時に成形品を固定型から離型させる工程と、さらに、可動型エジェクタピンで成形品を支持しながら可動型側型押ピンを突出させることで相対的に可動型が後退し、成形品が可動型から離型する工程とを有することを特徴とする。
なお、可動盤がメインロッドに直接固定されている場合には、固定盤に直接又は固定型取付ベース部を介して固定した固定型と、可動盤に直接又は可動型取付ベース部を介して固定した可動型とを対向して備え、固定型は成形品を支持する固定型エジェクタピンと可動型方向に突出する固定型側型押ピンを有し、可動型は成形品を支持する可動型エジェクタピンと固定型方向に突出する可動型側型押ピンを有し、固定型と可動型とを型締めした状態で成形品を成形する工程と、固定型エジェクタピンで成形品を支持しながら、可動型を同期して後退させつつ固定型側型押ピンを突出させることで成形品を固定型から離型させる工程と、さらに可動型エジェクタピンで成形品を支持しながら、可動型を同期して後退させつつ可動型側型押ピンを突出させることで成形品が可動型から離型する工程とを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る成形品離型装置にあっては型締めし、成形品を成形した後にメインロッドのみが所定距離後退し、メインロッドと可動型の間に所定の間隔を空けておくことで固定型エジェクタピンで成形品を支持しつつ、固定型から固定型側型押ピンを突き出して可動型を後退させることができ、成形品が相対的に固定型から離型され、従来のように成形品を可動型に抜き勾配等にて無理矢理張り付けさせる必要がなく、成形品に変形力が生じるのを少なく抑えることができる。
【0011】
また、可動型とメインロッドとを直接固定連結し、型押ピンが突出する動作に可動型の後退を同期させてもよいが、メインロッドと可動型を所定の距離移動自在に連結してあると、固定型から突き出す型押ピンにて可動型の型開きをするので簡単な構造でありながら、型開き初期のショックも少なく、エジェクタピンと型押ピンの動きの同期化も容易である。
【0012】
成形品を可動型から離型する際にも可動型とメインロッドの間に所定の間隔を空けた状態で可動型から可動型側型押ピンを固定型側型押ピンに突き合せるようにして突き出すことで、可動型エジェクタピンにて成形品を支持しながら相対的に可動型が後退しそれに同期して可動型エジェクタピンにて成形品を押し出すので、成形品への衝撃を抑えつつ可動型からも離型できる。
これにより、柔らかい成形品であっても変形を抑えつつ離型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る成形品離型装置の構造例を示し、(a)は全体の要部図、(b)は金型付近の要部図を示す。
【図2】金型の開閉の説明図を示す。
【図3】成形品の離型手順を示す。
【図4】従来の成形品の離型方法を示す。
【図5】成形品が柔らかい場合の問題点の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明に係る成形品離型装置の構造例及び離型方法例について説明する。
図1に要部図を示す。
固定設置されたベース盤1と所定の距離を隔てて固定盤10を配置し、その間にタイバー4を設け、このタイバー4に沿って可動盤が前進・後退移動する。
本明細書では型締め方向の動きを前進と表現し、型開き方向の動きを後退と表現する。
【0015】
固定盤10には内部11aに固定型エジェクタプレート12を配設した固定型取付ベース部11を有し、この固定型取付ベース部11に固定型30を取り付けてある。
固定型エジェクタプレート12はシリンダー14にて油圧制御された固定型エジェクタロッド13にて前進・後退移動制御されている。
なお、固定型エジェクタプレートは固定型内に直接設けてもよい。
固定型エジェクタプレート12には固定型30を貫通し、可動型31に向けて突き出す固定型側型押ピン16と、この固定型側型押ピン16が突出する動きに合せて突出しながら成形品を支持する固定型エジェクタピン17とを水平方向に有する。
従って、固定型側型押ピン16と、固定型エジェクタピン17とは、相互に平行に配置され、固定型エジェクタプレート12の前進・後退により、同期して前進又は後退する。
【0016】
可動盤20には固定型側に可動型エジェクタプレート22を内部21aに設けた可動型取付ベース部21を有し、この可動型取付ベース部21に可動型31を取り付けてある。
可動型エジェクタプレート22はシリンダー24にて油圧制御された可動型エジェクタロッド23にて前進・後退制御されている。
可動型も可動型取付ベース部を設けることなく、可動型内に直接可動型エジェクタプレートを配設してもよい。
可動型エジェクタプレート22からは可動型31を貫通し、固定型30の固定型側型押ピン16に突き合せた可動型側型押ピン26とこの可動型側型押ピン26の動きに合せてキャビティ32に向けて突出することで成形品を支持する可動型エジェクタピン27を有する。
従って、この可動型側型押ピン26と可動型エジェクタピン27も相互に平行で同期して前進又は後退する。
さらに、可動型側型押ピン26は、固定型30の固定型側型押ピン16に突き合せた状態になっているので、可動型側型押ピン26を固定型に向けて突き出すと、固定型が移動しないので、相対的に可動型が後退する方向に力が働く。
【0017】
可動盤20は水平方向のスライド孔28を有し、このスライド孔28に沿って前進・後退する補助ロッド3を配設し、補助ロッド3の後端をメインロッド2に固定連結してある。 補助ロッド3の先端はロッド部よりも外形が大きい頭部3aを有し、スライド孔28のメインロッド2側にはスライド孔28の内径よりも小さい段差状の引掛け部28aを有する。
これにより、メインロッド2が後退する際には補助ロッド3の頭部3aが可動盤20のスライド孔28の引掛け部28aに干渉し、補助ロッド3にて可動盤20を引っ張るようにして後退することになる。
また、補助ロッド3の頭部3aがスライド孔28の引掛け部28aに位置する状態では、可動盤の後面とメインロッド2の前面との間に所定の間隔を有し、この間隔のストローク部だけ可動盤が後方に移動自在になっている。
メインロッド2は油圧制御等にて前進・後退制御されている。
なお、メインロッド2は前進・後退制御されていれば油圧式に限定されない。
【0018】
次に図2に基づいて金型の開閉動作について説明する。
図2(a)は可動型31が固定型30に対して全開した状態を示し、メインロッド2が後退する際に可動盤20を補助ロッド3の頭部3aで引っ張るように作動するので、可動盤20の後面とメインロッド2の前面との間に寸法dなる間隔が空いている。
型締めする際にはメインロッド2が前進し、補助ロッド3の頭部3aがスライド孔28に沿って前進する(矢印S)。
間隔dだけメインロッド2が前進すると、メインロッド2の前面が可動盤20の後面に突き当たる。
その後は押圧力fにて可動盤20が前進し(矢印S)、これにより可動型31が前進する。
図2(c)に示すように可動型31が固定型30に当たると、メインロッド2の押圧力fにて型締め状態になる。
この状態にて金型内(キャビティ32)に材料が射出あるいは圧入され成形される。
型開きの場合にはメインロッド2がSの方向に後退し、可動盤20との間に間隔dが生じた後はfの力でSの方向に可動盤20が後退し、型開き状態になる。
【0019】
次に図3に基づいて成形品の離型手順について説明する。
図3(a)に示すようにメインロッド2のfの力で型締めした状態で成形品が製造される。
例えば、アルミニウム合金を金型温度を高温にした状態で複雑な製品を成形した場合に成形品の温度も高く、柔らかい状態になっている。
次に(b)に示すようにメインロッド2がPだけ後退し、可動盤20との間に間隔dを生じさせる。
この状態では可動型31と固定型30とは、まだ、閉じた状態にある。
次に(c)に示すように固定型エジェクタプレート12を固定型エジェクタロッド13にてPの方向に前進させる。
すると、固定型側型押ピン16の突出にて可動型31が後退するが、同期して固定型エジェクタピン17が突出するので成形品は固定型エジェクタピン17に支持された状態になり、相対的に固定型30が後退するように離型することになる。
次に(d)に示すようにメインロッド2をPの方向に間隔dだけさらに後退させ、この状態で可動型側型押ピン26を可動型エジェクタピン27と同期させて前進させると、相対的に可動型31が後退し、成形品は可動型エジェクタピン27に支持されながら可動型31から成形品が離型される。
このときにロボット等にて成形品Wを把持し搬出する。
このような離型方法は、可動盤20をメインロッド2に直接固定連結し、固定型側型押ピンの突出動作及び可動型側型押ピンの突出動作に同期して後退制御することでも可能であるが、メインロッド2の油圧制御あるいは電気制御が複雑になる。
【符号の説明】
【0020】
1 ベース盤
2 メインロッド
3 補助ロッド
10 固定盤
11 固定型取付ベース部
12 固定型エジェクタプレート
13 固定型エジェクタロッド
16 固定型側型押ピン
17 固定型エジェクタピン
20 可動盤
21 可動型取付ベース部
22 可動型エジェクタプレート
23 可動型エジェクタロッド
26 可動型側型押ピン
27 可動型エジェクタピン
28 スライド孔
30 固定型
31 可動型
32 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤に直接又は固定型取付ベース部を介して固定した固定型と、
可動盤に直接又は可動型取付ベース部を介して固定した可動型とを対向して備え、
固定型は成形品を支持する固定型エジェクタピンと可動型方向に突出する固定型側型押ピンを有し、
可動型は成形品を支持する可動型エジェクタピンと固定型方向に突出する可動型側型押ピンを有し、
可動盤は前進・後退制御されたメインロッドに対して当接及び所定距離離間自在に連結されていることを特徴とする成形品離型装置。
【請求項2】
前記固定型エジェクタピンと固定型側型押ピンは、前記固定型内又は固定型取付ベース部内に設けた1つの固定型エジェクタプレートにて前進・後退制御され、前記可動型エジェクタピンと可動型側型押ピンは、前記可動型内又は可動型取付ベース部内に設けた1つの可動型エジェクタプレートにて前進・後退制御されていることを特徴とする請求項1記載の成形品離型装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成形品離型装置を用いて、
固定型と可動型とを型締めした状態で成形品を成形する工程と、
メインロッドを後退させ可動盤と当該メインロッドとの間に所定の間隔を形成する工程と、
固定型エジェクタピンで成形品を支持しながら固定型側型押ピンを突出させることで可動型を後退させると同時に成形品を固定型から離型させる工程と、
さらに、可動型エジェクタピンで成形品を支持しながら可動型側型押ピンを突出させることで相対的に可動型が後退し、成形品が可動型から離型する工程とを有することを特徴とする成形品の離型方法。
【請求項4】
固定盤に直接又は固定型取付ベース部を介して固定した固定型と、
可動盤に直接又は可動型取付ベース部を介して固定した可動型とを対向して備え、
固定型は成形品を支持する固定型エジェクタピンと可動型方向に突出する固定型側型押ピンを有し、
可動型は成形品を支持する可動型エジェクタピンと固定型方向に突出する可動型側型押ピンを有し、
固定型と可動型とを型締めした状態で成形品を成形する工程と、
固定型エジェクタピンで成形品を支持しながら、可動型を同期して後退させつつ固定型側型押ピンを突出させることで成形品を固定型から離型させる工程と、
さらに可動型エジェクタピンで成形品を支持しながら、可動型を同期して後退させつつ可動型側型押ピンを突出させることで成形品が可動型から離型する工程とを有することを特徴とする成形品の離型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245489(P2011−245489A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117860(P2010−117860)
【出願日】平成22年5月22日(2010.5.22)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】