説明

成形型予熱装置及び成形型予熱方法

【課題】成形型をより均一に加熱することができる成形型予熱装置を提供する。
【解決手段】
本発明の成形型予熱装置10は、キャビティ230と、キャビティ230に連通する連通孔254、224を備えた成形型200を予熱する。この成形型予熱装置10は、加熱した気体を前記連通孔254、224からキャビティ230内に導入する。これによって、キャビティ230の表面を加熱する。加熱した気体をキャビティ230内に送り込めば、火炎を用いる場合のようにキャビティ230の表面が局所的に高温となったりすることがない。したがって、キャビティ230の表面を均一に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型を予熱する技術に関する。なお、本明細書において、成形型は、流動状態の成形材料を充填し、充填した成形材料を固化することによって成形品を製造するための型を意味する。成形型には、鋳造用成形型や樹脂成形用成形型等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
成形型を用いて成形品を製造する際に、成形型を予熱する技術が知られている。成形型の予熱後に成形を行うことで、成形品を好適に製造することができる。
特許文献1には、鋳造用金型を予熱する金型予熱装置が開示されている。この金型予熱装置は、火炎を放射する放射口を複数個備えている。この金型予熱装置で鋳造用金型を予熱する際には、まず、鋳造用金型を開く。そして、開いた鋳造用金型のキャビティ内に金型予熱装置を挿入する。このとき、各放射口を鋳造用金型のキャビティの表面に向けてセットする。そして、各放射口からキャビティの表面に向けて火炎を放射する。これによって、鋳造用金型が加熱され、鋳造に適した温度まで昇温される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−152929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の金型予熱装置のように、キャビティの表面に向けて火炎を直接放射する成形型予熱装置では、キャビティの表面全体に均一に火炎を放射することが困難である。すなわち、比較的強く火炎が放射されている箇所では、火炎の放射が弱い箇所に比べて、キャビティの表面が高温となる。特許文献1の金型予熱装置では、キャビティの表面全体が均一に昇温するように放射口を配置しているが、それでも、キャビティの表面全体の温度を十分に均一化することは難しい。キャビティの表面の温度分布が不均一となると、予熱後の成形により製造される成形品の品質が不安定となったり、不均一な温度分布により生じる応力により成形型に歪みが生じたりする等、種々の問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、成形型をより均一に加熱することができる成形型予熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成形型予熱装置は、キャビティと、キャビティに連通する連通孔を備えた成形型を予熱する。この成形型予熱装置は、加熱した気体を前記連通孔からキャビティ内に導入する。
なお、本明細書において、キャビティとは、流動状態の成形材料を受け入れる成形型内の空間をいう。キャビティ内には、成形材料が直接充填される場合と、砂型等の中子が設置される(すなわち、キャビティ内に設置された中子の内部に成形材料が充填される)場合とがある。
この成形型予熱装置は、連通孔を介してキャビティ内に加熱した気体を送り込む。これによって、キャビティの表面を加熱する。加熱した気体をキャビティ内に送り込めば、火炎を用いる場合のようにキャビティの表面が局所的に高温となったりすることがない。したがって、火炎により加熱する場合に比べて、キャビティの表面を均一に加熱することができる。
【0007】
上述した成形型予熱装置は、成形型を閉じた状態で、加熱した気体をキャビティ内に導入することが好ましい。
このような構成によれば、閉じた成形型のキャビティ内に加熱された気体が導入される。キャビティ内に導入された気体は、成形型のパーティション部等から成形型外に流出する。また、成形型には、通常、ガス抜き用の連通孔が形成されているため、このガス抜き用の連通孔からキャビティ内の気体が成形型外に流出する場合もある。このように、成形型を閉じた状態でキャビティ内に加熱した気体を導入すると、キャビティ内に導入された気体がキャビティ内に滞留する。したがって、キャビティ内の気体の温度がより均一となり、キャビティの表面全体がより均一に加熱される。
【0008】
上述した成形型予熱装置は、前記連通孔が、成形時に成形材料をキャビティ内に導入する成形材料導入路であることが好ましい。すなわち、成形型予熱装置は、成形時に成形材料をキャビティ内に導入する成形材料導入路を介してキャビティ内に加熱した気体を導入することが好ましい。
このような構成によれば、キャビティの表面と同時に成形材料導入路の表面を加熱することができる。成形材料導入路の表面を加熱することで、予熱後の成形をより好適に実施することが可能となる。
【0009】
成形時には、キャビティ内の成形材料は冷却固化されるが、成形材料導入路内の成形材料は流動状態に保持される。成形材料導入路内の成形材料を流動状態に保持しておくことで、次の成形行程へスムーズに移行することが可能となるためである。すなわち、成形時には、成形材料導入路内の成形材料の温度はキャビティ内の成形材料よりも高温に保持される。したがって、予熱時においても、成形材料導入路の表面の温度を、キャビティの表面の温度に比べて高温にしておくことが好ましい。
一方で、成形材料導入路は、キャビティに比べて気体が流れる流路の断面積が小さいので、気体の流速が速くなる。気体の流速が速いと、気体と成形材料導入路の表面との間で熱交換する時間が短時間となり、成形材料導入路の表面の温度が上昇し難くなる。すなわち、成形材料導入路の表面は、キャビティの表面に比べて温度が上昇し難いという問題がある。
上記の問題を解決するために、成形型予熱装置が成形材料導入路に導入する気体の流量が、成形材料導入路の表面がキャビティの表面より高温となる流量に制限されていることが好ましい。
成形型予熱装置が成形材料導入路に導入する気体の流量は、成形材料導入路とキャビティの温度に影響を与える。すなわち、成形型予熱装置が導入する気体の流量が少ない場合には、成形材料導入路を流れる気体の流速が遅くなる。すると、気体と成形材料導入路の表面との間で熱交換が行われる時間が長くなり、成形材料導入路の表面の温度は上昇し易くなる。また、気体と成形材料導入路との熱交換が多くなるので、キャビティ内に導入される気体の温度は気体の流量が少ないほど低温となる。したがって、キャビティの表面の温度は上昇し難くなる。すなわち、導入される気体の流量が少ないほど、キャビティの表面よりも成形材料導入路の方が高温となり易い。
この成形型予熱装置は、成形材料導入路に導入する気体の流量が、成形材料導入路の表面がキャビティの表面より高温となる流量に制限されている。したがって、気体がゆっくりと成形材料導入路内を流れ、気体と成形材料導入路の表面との間で熱交換が行われる時間が長くなる。これによって、成形材料導入路の表面がキャビティの表面より高温に加熱される。
【0010】
また、成形材料導入路からキャビティ内に気体を導入する成形型予熱装置は、成形材料導入路に挿入する蓄熱体をさらに備えていることが好ましい。
なお、蓄熱体とは、成形材料導入路の表面に比べて温度上昇し易い物体をいう。例えば、金属ウール(繊維状の金属材料が絡み合っている物体)を蓄熱体に用いることができる。
このような構成によれば、成形材料導入路を流れる気体によって、蓄熱体が加熱される。蓄熱体は、成形材料導入路よりも温度上昇し易いので、成形材料導入路よりも高温となる。すると、蓄熱体からの熱放射によって、成形材料導入路の表面が加熱される。これによって、成形材料導入路の表面を効率よく加熱することが可能となる。
【0011】
また、成形型予熱装置は、成形型から排出されるキャビティ内を通過した後の気体の少なくとも一部を、再度、キャビティ内に導入することが好ましい。
成形型から排出されるキャビティ内を通過した後の気体は、成形型との熱交換により冷却されているとはいえ、高温の気体である。したがって、成形型から排出された気体を再度キャビティ内に導入することによって、高いエネルギー効率で成形型を加熱することができる。
【0012】
また、成形型予熱装置は、成形型の周囲を覆うフードをさらに備えていることが好ましい。
このような構成によれば、成形型から排出される気体がフード内で滞留する。したがって、フード内の気体によって成形型が外側からも加熱される。したがって、均一に成形型を加熱することができる。
【0013】
また、本発明は、成形型を予熱する新規な方法をも提供する。
この成形型予熱方法は、キャビティと成形型外とを連通する連通孔を備えた成形型において、加熱した気体を前記連通孔からキャビティ内に導入することによって成形型を予熱する。
この方法によれば、成形型を均一に加熱することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形型を均一に加熱することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
下記に詳細に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(特徴1)成形型予熱装置は、気体を加熱する加熱装置と、加熱装置によって加熱された気体を成形型の連通孔からキャビティ内に導入する気体導入装置を備えている。
(特徴2)気体導入装置は、加熱装置によって加熱された気体を成形型に導入する送気管と、成形型から排出された気体を加熱装置に供給する排気管を備えている。
(特徴3)成形型は、成形型本体と、成形型本体に取り付けられている成形材料導入部を備えている。成形型本体は、キャビティと、キャビティに連通する第1流路を備えている。成形材料導入部は、前記第1流路に繋がる第2流路を備えている。第1流路と第2流路によって、成形材料をキャビティ内に導入する成形材料導入路が形成されている。成形型予熱装置は、成形材料導入路(すなわち、第2流路と第1流路)を介して、キャビティ内に加熱した気体を導入する。
(特徴4)成形材料導入部は、成形型本体に比べて温度上昇し難い材質により構成されている。例えば、成形型本体は金属により構成されており、成形材料導入部はセラミックスにより構成されている。
(特徴5)成形型予熱装置は、成形型導入部が第1流路よりも高温となり、第1流路がキャビティよりも高温となる流量で気体を導入する。
(特徴6)蓄熱体は、成形材料導入路の表面を構成する材料に比べて、単位体積あたりの熱容量が小さい。
【実施例】
【0016】
鋳造用金型を予熱する金型予熱装置に本発明を適用した実施例ついて、図面を参照しながら説明する。まず、本実施例の金型予熱装置について説明する前に、予熱の対象である金型について説明する。
【0017】
図1は、鋳造用の金型200を示している。金型200は、金型本体202と、支持台240と、湯口入子250と、ストーク260を備えている。
金型本体202は、上金型210と、下金型220を備えている。下金型220は、支持台240に固定されている。下金型220には、下側キャビティ面222と、溶湯導入路224が形成されている。上金型210は、図示しない移動装置に接続されており、上下に移動可能とされている(すなわち、上金型210は下金型220に向かって進退動可能とされている)。なお、図1は、上金型210を下金型220に当接させた状態(すなわち、金型本体202を閉じた状態)を示している。上金型210には、上側キャビティ面212と、ガス抜き孔214が形成されている。図1に示すように、金型200を閉じることで、上側キャビティ面212と下側キャビティ面222によってキャビティ230が形成される。
湯口入子250は、下金型220の下面に固定されている。湯口入子250は、セラミックスにより形成されており、金型本体202に比べて比熱が高い。湯口入子250には、溶湯導入路254が形成されている。溶湯導入路254は、上部が広く形成されており、下金型220の各溶湯導入路224に繋がっている。
ストーク260は筒状の部材であり、湯口入子250の溶湯導入路254に接続されている。ストーク260は、セラミックスにより形成されている。
【0018】
金型200は、図2に示すように、るつぼ280上に設置される。るつぼ280内には、溶湯が貯められている。金型200は、ストーク260がるつぼ280内の溶湯に浸漬されるように設置される。図2に示すように、ストーク260と湯口入子250は、るつぼ280内に収容されるので、非常に高い温度にさらされる。したがって、ストーク260と湯口入子250は、耐熱性が高いセラミックスにより形成されている。図2に示すように、るつぼ280の上部は支持台240に塞がれている。したがって、るつぼ280は密閉されている。るつぼ280の一部には空気導入路282が形成されている。
【0019】
鋳造時には、まず、金型本体202を開き、キャビティ230内(すなわち、上側キャビティ面212及び下側キャビティ面222)に塗型剤を塗布する。そして、図2に示すように、キャビティ230内に砂型270を設置する。砂型270は、鋳物を成形する成形空間272と、溶湯導入路274を備えている。図2に示すように、砂型270は、溶湯導入路274が下金型220の溶湯導入路224と繋がるように設置される。砂型270を設置したら、金型本体202を閉じる。
次に、空気導入路282からるつぼ280内に加圧した空気を導入する。るつぼ280内に空気が導入されると、空気の圧力により溶湯の液面が下方に押し下げられる。これによって、るつぼ280内の溶湯が、ストーク260、溶湯導入路254、溶湯導入路224、溶湯導入路274の順に流れて、砂型270の成形空間272内に導入される。これによって、成形空間272内に溶湯が充填される。
溶湯を砂型270内に充填したら、砂型270内の溶湯が冷却されるまで待機する。
溶湯が冷却されて固化したら、金型200を開き、砂型270ごと鋳物を取り出す。鋳物を取り出すときには、砂型270内の鋳物は固化している必要がある一方で、溶湯導入路224及び254内の溶湯は溶融状態に維持されている必要がある。溶湯導入路224及び254内の溶湯が固化してしまうと、次の鋳造処理をスムーズに開始することができなくなるためである。したがって、鋳物の取り出しは、砂型270内の鋳物が固化しており、溶湯導入路224及び254内の溶湯が溶融状態にあるタイミングで行われる。
【0020】
鋳物を取り出したら、再度、キャビティ230内に砂型270を設置し、次の鋳造処理を実行する。このように、砂型270の設置、溶湯の充填、冷却、及び、鋳物の取り出しからなる鋳造処理が繰り返し行われる。上述したように、鋳物の取り出しは、砂型270内の鋳物が固化しており、溶湯導入路224及び254内の溶湯が溶融状態にあるタイミングで行われる。したがって、繰り返しの鋳造処理中においては、金型200内に、溶湯の経路(すなわち、ストーク260、溶湯導入路254、溶湯導入路224、溶湯導入路274、及び、成形空間272)の上流側(すなわち、ストーク260側)ほど高温となる温度分布が形成される。このような温度分布を維持しながら鋳造処理を行うことで、寸法ばらつきの少ない安定した品質の鋳物を製造することができる。
【0021】
上述した金型200を用いて最初の鋳造処理を行う場合には、金型200を予熱する。すなわち、最初の鋳造処理の開始時においては、金型200が冷えた状態にある。冷えた状態の金型200を用いると、好適に鋳造処理を実行できない。したがって、金型200を予熱した後に、最初の鋳造処理を行う。
【0022】
以下に、金型200を予熱する予熱装置について説明する。なお、比較のために、まず、バーナによって加熱する従来式の金型予熱装置300について説明する。
【0023】
図3は、金型予熱装置300を説明する説明図である。金型予熱装置300は、複数のバーナ310を備えている。
金型予熱装置300により金型200を予熱するときには、図3に示すように、金型本体202を開き、キャビティ230内に金型予熱装置300を挿入する。そして、各バーナ310から上側キャビティ面212及び下側キャビティ面222に向けて火炎を放射する。これにより、金型200が加熱される。
【0024】
上述した従来の金型予熱装置300は、以下の問題点を有している。
(1)バーナ310による加熱では、火炎の放射が強い箇所ではキャビティ230の表面の温度が高温となるが、火炎の放射が弱い箇所ではキャビティ230の表面の温度があまり上昇しない。すなわち、キャビティ230の表面が不均一に加熱される。キャビティ230の表面の温度が不均一となることにより、以下の問題が生じる。
(1−1)予熱後の最初の鋳造処理で製造される鋳物の品質(寸法等)が安定しない。
(1−2)金型本体202が歪み易い。
(2)金型200を開いた状態でキャビティ230の表面を加熱するため、以下の問題が生じる。
(2−1)火炎からの熱の多くが外部に逃げてしまい、金型本体202に熱が伝わり難い。したがって、エネルギー効率が非常に悪い。また、予熱行程に長時間を要する。
(2−2)上金型210を吊り下げた状態(すなわち、吊り下げによる応力が上金型210に加わった状態)で加熱するので、上金型210が特に歪み易い。
(3)キャビティ230の表面だけが加熱され、金型本体202の他の箇所が加熱されない。このことによって、以下の問題が生じる。
(3−1)金型本体202が歪み易い。
(3−2)予熱終了後に短時間でキャビティ230の表面の温度が低下してしまう。したがって、キャビティ230の表面の温度が十分な温度に達していない状態で、予熱後の最初の鋳造処理が開始される。したがって、最初の鋳造処理で製造される鋳物の品質が安定しない。また、キャビティ230の表面の温度が十分な温度に達していない状態で鋳造処理を開始すると、その鋳造処理の最初にキャビティ230内に塗布する塗型剤が鋳造処理中に剥離してしまう。
(4)断面積が小さい溶湯導入路224の内部や、溶湯導入路224より上流側の溶湯導入路254の内部まで火炎が届かないため、溶湯導入路224と溶湯導入路254の表面を加熱できない。このため、予熱後の金型200内の温度分布は、キャビティ230の表面の方が溶湯導入路224と溶湯導入路254の表面より高温な分布となる。この温度分布は、上述した鋳造処理(2回目以降の鋳造処理)の温度分布とは異なる。したがって、最初の鋳造処理により製造される鋳物の品質(寸法等)が、後の鋳造処理により製造される鋳物の品質と異なってしまう。
【0025】
次に、本実施例の金型予熱装置10について説明する。
図4は、金型予熱装置10を金型200に取り付けた状態を示している。図4に示すように、金型予熱装置10は、燃焼装置12と、送気管20と、送気ブロワ22と、フード30と、排気管24と、排気ブロワ26と、蓄熱ユニット40を備えている。
【0026】
燃焼装置12は、送気室12aと、燃焼室12bと、バーナ12cを備えている。
送気室12aと燃焼室12bは隔壁12dにより仕切られている。隔壁12dには連通孔が形成されている。この連通孔によって、送気室12aと燃焼室12bは連通している。送気室12aには、送気管20が接続されている。
バーナ12cは、燃焼室12b内に設置されている。バーナ12cには、外部から燃焼ガス(可燃性ガスと空気の混合気体)が供給される。バーナ12cは、燃焼ガスを燃焼室12b内で燃焼させる。
【0027】
送気管20は、上流側送気管20aと下流側送気管20bを備えている。上流側送気管20aの上流端は、排気管24に接続されている。上流側送気管20aの下流端は、送気室12aに接続されている。下流側送気管20bの上流端は、送気室12aに接続されている。下流側送気管20bの下流端は開放されている。予熱時には、図4に示すように、下流側送気管20bが金型200のストーク260内に挿入される。下流側送気管20bは、その下流端が溶湯導入路254の上流端に達する位置まで挿入される。後に詳述するが、溶湯導入路254と溶湯導入路224は、キャビティ230内に燃焼ガスを導入する通路となる。
【0028】
送気ブロワ22は、上流側送気管20aに介装されている。送気ブロワ22は、上流側送気管20a内の気体(燃焼ガス)を送気室12a側に送り出す。
【0029】
フード30は、下面部が開放された箱型の形状を備えている。予熱時には、フード30は、図4に示すように金型200の支持台240に取り付けられる。これによって、金型本体202の周囲がフード30に覆われる。
【0030】
排気管24の上流端は、フード30の上部に接続されている。排気管24の下流端は、上流側送気管20aの上流端に接続されている。また、図4に示すように、排気管24と上流側送気管20aとの接続部には、排出口28が形成されている。
【0031】
排気ブロワ26は、排気管24に介装されている。排気ブロワ26は、排気管24内の気体を下流側(上流側送気管20a側)に送り出す。
【0032】
蓄熱ユニット40は、複数の蓄熱体42を備えている。蓄熱体42は、ステンレス製の金属ウールである。蓄熱体42は、単位体積あたりの熱容量が非常に小さい。蓄熱ユニット40は、下金型220に形成されている溶湯導入路224と同じ数の蓄熱体42を備えている。各蓄熱体42は、接続部材により互いに接続されている。予熱時には、図4に示すように、蓄熱ユニット40がキャビティ230内に設置される。すなわち、各蓄熱体42が、対応する溶湯導入路224内に挿入される。なお、蓄熱体42の直径は溶湯導入路224の直径に比べて小さいので、蓄熱体42を挿入しても溶湯導入路224は塞がれない。
【0033】
次に、金型予熱装置10によって金型200を予熱する処理について説明する。
金型200を予熱するときには、まず、金型本体202を開き、キャビティ230内に蓄熱ユニット40を設置する。すなわち、各溶湯導入路224内に各蓄熱体42を挿入する。蓄熱ユニット40を設置したら、金型本体202を閉じる。そして、図4に示すようにフード30を支持台240に取り付ける。また、下流側送気管20bを、図4に示す位置までストーク260内に挿入する。このように金型予熱装置10を接続することによって、上流側送気管20aから、送気室12a、下流側送気管20b、金型200内、金型200外(すなわち、フード30内)、及び、排気管24を経て上流側送気管20aに戻る循環経路が形成される。
【0034】
以上のように金型予熱装置10を金型200に接続したら、バーナ12cを作動させるとともに、送気ブロワ22と排気ブロワ26を作動させる。
【0035】
バーナ12cを作動させると、燃焼室12b内で燃焼ガスが燃焼する。燃焼後の高温の燃焼ガスは、燃焼室12bから送気室12a内に流入する。また、送気室12a内には、送気ブロワ22によって上流側送気管20aから燃焼ガスが送り込まれる。後に詳述するが、送気ブロワ22が送り出す燃焼ガスは、金型200を通過した後の燃焼ガスである。送気室12a内では、燃焼室12bからの燃焼ガスと、上流側送気管20aからの燃焼ガスが混合される。送気室12a内の燃焼ガスは、下流側送気管20b内に流入する。
【0036】
下流側送気管20b内に流入した燃焼ガスは、溶湯導入路254、溶湯導入路224を経てキャビティ230内に流入する。キャビティ230内に流入した燃焼ガスは、ガス抜き孔214や金型本体202のパーティション面(すなわち、上金型210と下金型220との間のパーティション面)から金型200外に流出する。燃焼ガスが金型200内を流れる際には、金型200と燃焼ガスとの間で熱交換が行われる。これによって、溶湯導入路254の表面と、溶湯導入路224の表面と、キャビティ230の表面が加熱される。
なお、溶湯導入路224は、その断面積がキャビティ230に比べて非常に小さい。したがって、溶湯導入路224を流れる燃焼ガスの流速は、キャビティ230内を流れる燃焼ガスの流速より速くなる。このため、溶湯導入路224と燃焼ガスとの間で熱交換が行われる時間が短時間となる。したがって、溶湯導入路224の表面は、キャビティ230の表面に比べて昇温し難い。しかしながら、溶湯導入路224には蓄熱体42が挿入されている。蓄熱体42は、熱容量が小さい金属ウールである。したがって、蓄熱体42は、燃焼ガスにより急速に昇温される。すなわち、蓄熱体42は、溶湯導入路224の表面よりも高温となる。すると、蓄熱体42からの熱放射によって、溶湯導入路224の表面が加熱される。これによって、溶湯導入路224の表面が効率よく加熱される。溶湯導入路224の表面は、キャビティ230よりも高温に維持される。
また、湯口入子250は、金型本体202より比熱が高いセラミックスにより形成されている。したがって、溶湯導入路254の表面は、キャビティ230の表面より温度上昇し難い。しかしながら、送気ブロワ22及び排気ブロワ26の回転数は、溶湯導入路254の表面がキャビティ230の表面より高温となるように設定されている。すなわち、金型200内を流れる燃焼ガスの流量が、溶湯導入路254の表面がキャビティ230の表面より高温となるように設定されている。つまり、燃焼ガスの流量が多い場合には、溶湯導入路254内を比較的速い流速で燃焼ガスが流れる。したがって、溶湯導入路254の表面と燃焼ガスとの間で熱交換が行われる時間が短時間となり、溶湯導入路254の表面の温度は比較的低温となる。この場合、キャビティ230には比較的温度が高い燃焼ガスが流入することになるので、キャビティ230の温度は比較的高温となる。すなわち、金型200内を流れる燃焼ガスの流量が多いほど、溶湯導入路254に比べてキャビティ230が高温となる傾向にあり、金型200内を流れる燃焼ガスの流量が少ないほど、キャビティ230に比べて溶湯導入路254が高温となる傾向にある。金型予熱装置10では、十分に低い流量の燃焼ガスが流れるように送気ブロワ22と排気ブロワ26の回転数が設定されている。したがって、溶湯導入路254の表面の温度は、キャビティ230の表面の温度より高温となる。
このように、金型予熱装置10では、送気ブロワ22と排気ブロワ26の回転数と、蓄熱体42によって、溶湯導入路254の表面及び溶湯導入路224の表面がキャビティ230の表面より高温となるように構成されている。また、溶湯導入路254の表面が溶湯導入路224の表面より高温となるように、送気ブロワ22と排気ブロワ26の回転数が設定されている。
【0037】
上述したように、キャビティ230内の燃料は、ガス抜き孔214やパーティション面を通って金型本体202外に流出する。金型本体202の周囲はフード30に覆われている。したがって、金型本体202外に流出した燃焼ガスが、フード30内に充満する。このため、金型本体202は、フード30内の燃焼ガスによって外側からも加熱される。
【0038】
フード30内の燃焼ガスは、排気管24へ流入する。排気管24に流入した燃焼ガスは、排気ブロワ26によって下流側へ送られる。排気管24の下流端に到達した燃焼ガスの一部は、排出口28から排出される。残りの燃焼ガスは、上流側送気管20a内に流入し、送気ブロワ22によって送気室12a内に再度送り込まれる。送気室12a内に送り込まれた燃焼ガスは、燃焼室12bからの燃焼ガスと混合されて昇温され、再度、金型200に送り込まれる。
【0039】
以上に説明したように、金型予熱装置10は、金型200のキャビティ230内に、ガスバーナ12cで燃焼させた後の燃焼ガスを送り込む。したがって、キャビティ230内に高温の燃焼ガスが充満した状態となる。キャビティ230内に充満する燃焼ガスは、局所的に温度が高くなったり、低くなったりすることがない。したがって、キャビティ230の表面を均一に加熱することができる。これによって、金型本体202が歪むことが抑制される。また、予熱後の最初の鋳造処理で製造される鋳物の品質を安定させることができる。
また、金型本体202を閉じた状態でキャビティ230内に燃焼ガスを送り込むので、燃焼ガスがキャビティ230内に留まる時間が長くなる。したがって、キャビティ230内をより均一に加熱することが可能となる。また、燃焼ガスが留まる時間が長くなるので、燃焼ガスと金型200との間で十分に熱交換が行われる。したがって、効率よく金型200を昇温させることができ、金型200を短時間で目的の温度に昇温させることができる。また、上金型210に吊り下げによる応力が加わることがないため、上金型210の歪みを抑制することができる。
【0040】
また、金型予熱装置10は、溶湯導入路254及び224を介してキャビティ230内に燃焼ガスを送り込む。したがって、溶湯導入路254の表面及び溶湯導入路224の表面を燃焼ガスにより加熱することができる。特に、送気ブロワ22と排気ブロワ26の回転数により、溶湯導入路254の表面が溶湯導入路224の表面よりも高温とされる。さらに、蓄熱体42からの放射熱により、溶湯導入路224の表面がキャビティ230の表面よりも高温とされる。すなわち、上流側の溶湯導入路ほど高温となる温度分布が形成される。この温度分布は、鋳造処理で砂型270を取り出したときの金型200内の温度分布と同様の温度分布である。すなわち、金型予熱装置10によれば、鋳造処理で砂型270を取り出したときと同様の温度分布を形成することができる。したがって、予熱後の最初の鋳造処理においても、繰り返し実施する鋳造処理と同様の品質で鋳物を製造することが可能となる。
【0041】
また、金型予熱装置10は、金型本体202の周囲を覆うフード30を備えている。したがって、フード30内(金型本体202外)に、金型本体202から排出された燃焼ガスが充満する。このため、フード30内に充満している燃焼ガスにより、金型本体202が外側からも加熱される。したがって、金型本体202の全体を均一に加熱することができる。また、芯部(金型本体202の表面から遠い箇所)まで金型本体202が加熱されるようになるため、予熱後に金型本体202の温度が低下し難い。したがって、予熱後の最初の鋳造処理で製造される鋳物の品質を安定させることができる。また、鋳造処理中に塗型剤が剥離してしまうことも抑制できる。
【0042】
また、金型予熱装置10は、金型本体202から排出された燃焼ガス(すなわち、フード30内の燃焼ガス)の一部を送気室12aに送り込み、送気室12a内で燃焼ガスを再加熱して再度金型200内に送り込む。金型本体202から排出される燃焼ガスは、金型200との熱交換により温度低下した燃焼ガスであるが、それでもかなりの高温を維持している。このように、排出後の高温のガスを再度、金型200内に送り込むことで、高いエネルギー効率で金型200を加熱することができる。
【0043】
なお、上述した金型予熱装置10では、ストーク260が燃焼ガスに直接触れることがないため、ストーク260はそれほど加熱されない。しかしながら、図2に示すように、ストーク260はるつぼ280内の溶湯に浸漬されるため、浸漬後すぐに高温となる。したがって、ストーク260を予熱しなくても、鋳造処理に与える影響はほとんどない。
【0044】
また、上述した金型予熱装置10は、金型本体202を閉じた状態で予熱を行ったが、金型本体202を開いた状態で予熱を行ってもよい。例えば、金型本体202を一定量だけ開いて上金型210と下金型220の間に隙間を形成する。このような状態でキャビティ230内に燃焼ガスを送り込むと、形成した隙間(すなわち、パーティション面)にも燃焼ガスが流れるようになる。すると、その隙間からも上金型210と下金型220が加熱されるようになる。したがって、金型本体202をより均一に加熱することができるようになる。
【0045】
なお、上述した金型本体202は、定期的にメンテナンスを実施する必要がある。従来は、湯口入子250の温度が低下してしまうのを防止するために、支持台240と湯口入子250とストーク260をるつぼ280に取り付けた状態のまま、金型本体202を支持台240及び湯口入子250から切り離してメンテナンスしていた。しかしながら、上述した金型予熱装置10によれば、湯口入子250をも予熱することができる。したがって、湯口入子250の温度低下を考慮する必要がなくなり、メンテナンス時に金型200全体をるつぼ280から取り外すことが可能となる。このため、金型本体202を支持台240から切り離す作業が不要となり、容易にメンテナンスを実施することが可能となる。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】金型200の概略断面図。
【図2】鋳造時の金型200の概略断面図。
【図3】従来型の金型予熱装置300を示す概略断面図。
【図4】実施例の金型予熱装置10を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0048】
10:金型予熱装置
12:燃焼装置
12a:送気室
12b:燃焼室
12c:バーナ
20:送気管
22:送気ブロワ
24:排気管
26:排気ブロワ
28:排出口
30:フード
40:蓄熱ユニット
42:蓄熱体
200:金型
202:金型本体
210:上金型
212:上側キャビティ面
214:ガス抜き孔
220:下金型
222:下側キャビティ面
224:溶湯導入路
230:キャビティ
240:支持台
250:湯口入子
254:溶湯導入路
260:ストーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと、キャビティに連通する連通孔を備えた成形型を予熱する装置であって、
加熱した気体を前記連通孔からキャビティ内に導入することを特徴とする成形型予熱装置。
【請求項2】
成形型を閉じた状態で、加熱した気体をキャビティ内に導入することを特徴とする請求項1に記載の成形型予熱装置。
【請求項3】
前記連通孔が、成形時に成形材料をキャビティ内に導入する成形材料導入路であることを特徴とする請求項1または2に記載の成形予熱装置。
【請求項4】
成形材料導入路に導入する気体の流量が、成形材料導入路の表面がキャビティの表面より高温となる流量に制限されていることを特徴とする請求項3に記載の成形予熱装置。
【請求項5】
成形材料導入路に挿入する蓄熱体をさらに備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の成形予熱装置。
【請求項6】
成形型から排出されるキャビティ内を通過した後の気体の少なくとも一部を、再度、キャビティ内に導入することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形型予熱装置。
【請求項7】
成形型の周囲を覆うフードをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形型予熱装置。
【請求項8】
キャビティと成形型外とを連通する連通孔を備えた成形型において、加熱した気体を前記連通孔からキャビティ内に導入することによって成形型を予熱する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−241137(P2009−241137A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92540(P2008−92540)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504233351)株式会社マルエム商会 (3)
【出願人】(508098660)
【Fターム(参考)】