説明

成形機の安全ドア装置

【課題】安価に実施できて、既設のドア本体の交換も容易に行い得る成形機の安全ドア装置を提供する。
【解決手段】安全ドア装置5を、ドア本体21と、該ドア本体21を所定の開閉方向に案内するレール部材25,26と、ドア本体21をレール部材25,26に連結する連結部材23とから構成する。レール部材25,26として、めっき鋼板を加工することによって所定の形状に形成されたものを用いる。これらのレール部材25,26は、成形機に設定された所定のレール固定部にボルト27,29を用いて固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の安全ドア装置に係り、特に、ドア本体を所定の開閉方向に案内するレール部材の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機やダイカストマシン等の成形機には、オペレータの安全を確保するため、型開閉機構の外周を覆う安全カバーが備えられており、この安全カバーの一部には、金型交換や製品取り出し等の作業を可能にするための安全ドア装置が備えられている。安全ドア装置は、主としてドア本体と、ドア本体を所定の開閉方向に案内するレール部材と、ドア本体をレール部材に連結する連結部材とから構成される。
【0003】
従来、安全ドア装置のレール部材としては、厚板からなる帯状の金属板が用いられており、連結部材としては、レール部材を挿入可能な溝が形成された溝付きローラを軸体の先端部に回転可能に取り付けたものが用いられている。レール部材は、所定のレール固定部に溶接により取り付けられる。また、連結部材は、軸体の一端がドア本体の背面側にボルト・ナット等により取り付けられ、溝の両側に形成されたリブをレール部材の表裏面に係合するようにして、溝付きローラがレール部材に取り付けられる。これにより、ドア本体がレール部材の敷設方向に開閉可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−252850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の安全ドア装置は、レール部材を所定のレール固定部に溶接する構成であるので、安全ドア装置の組立コストひいては成形機の製造コストが高価になる。また、レール部材にパーカー処理等の表面処理を施さなくてはならないので、この点からも成形機の製造コストが高価になる。さらに、従来の安全ドア装置は、帯状の金属板からなるレール部材を溝付きローラの溝内に挿入することによって、レール部材に対する溝付きローラの連結を行う構成であるので、レール部材に対するドア本体の取り付けは、レール部材の端部側からしか行うことができない。即ち、ドア本体をレール部材の側面側から行おうとしても、溝付きローラのリブがレール部材に干渉するので行うことができない。このため、既設の成形機に備えられたドア部材を交換する際には、安全カバーの取り外しと取り付けも行わなくてはならず、ドア部材の交換作業に多大の労力を要するという問題もある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価に実施できて、既設のドア本体の交換も容易に行い得る成形機の安全ドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、ドア本体と、該ドア本体を所定の開閉方向に案内するレール部材と、前記ドア本体を前記レール部材に連結する連結部材とからなる成形機の安全ドア装置において、前記レール部材として、めっき鋼板を加工することによって所定の形状に形成されたものを用い、該レール部材を、成形機に設定された所定のレール固定部にボルトを用いて固着したことを特徴とする。
【0008】
レール部材として、めっき鋼板を加工することによって所定の形状に形成されたものを用いると、安価な汎用のめっき鋼板を用いてレール部材を形成できるので、厚板からなるレール部材にパーカー処理等の表面処理を事後的に施す場合に比べて、レール部材の製造コストを低減することができる。また、かかる構成のレール部材を用いると、連結部材として溝付きローラを用いる必要がないので、レール部材の側方からのドア本体の取り付けが可能になり、ドア本体の交換時に型開閉機構の周囲を覆う安全カバーの取り外し及び取り付けを行う必要がないので、ドア部材の交換作業を容易化することができる。さらに、レール部材を成形機に設定された所定のレール固定部にボルトを用いて固着すると、レール部材を溶接によりレール固定部に固着する場合に比べて、レール部材の固定に要する設備や労力を軽減できるので、成形機に対するレール部材の組立コストを低減することができる。
【0009】
また本発明は、前記構成の成形機の安全ドア装置において、前記レール部材は、前記ドア本体の上部と前記連結部材を介して連結される上部レール部材と、前記ドア本体の下部と前記連結部材を介して連結される下部レール部材とからなることを特徴とする。
【0010】
このように、上部レール部材と下部レール部材とを備え、連結部材を介してドア本体の上部と下部を上部レール部材及び下部レール部材に連結すると、ドア本体を各レール部材に安定に保持できるので、ドア本体の開閉をスムースにかつ安定に行うことができる。
【0011】
また本発明は、前記構成の成形機の安全ドア装置において、前記連結部材は、ねじ部がナットを用いて前記ドア本体に締結される頭付ボルトと、当該頭付ボルトの軸部に回転可能に取り付けられ、前記レール部材に転動可能に連結されるベアリングと、前記軸部の外周に被着され、前記ベアリングを支承する筒状のスペーサとからなることを特徴とする。
【0012】
頭付ボルトの軸部にベアリングを取り付け、このベアリングをレール部材に転動可能に連結すると、ドア本体の開閉時におけるレール部材の摩耗をほぼ防止できるので、レール部材の耐用命数を高めることができる。また、ベアリング保持用の軸体として頭付ボルトを用いると、ナットを用いてベアリング保持用の軸体をドア本体に締結できるので、溶接する場合に比べてその取付コストを低減することができる。さらに、頭付ボルトの軸部に被着されたスペーサを用いてベアリングを支承すると、頭付ボルトの軸部にベアリングを圧入する必要がないので、その部品コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る成形機の安全ドア装置は、レール部材として安価なめっき鋼板を加工することによって所定の形状に形成されたものを用いるので、厚板からなるレール部材にパーカー処理等の表面処理を事後的に施す場合に比べてレール部材の製造コストを低減できると共に、レール部材の側方からのドア本体の取り付けが可能になり、ドア部材の交換作業を容易化することができる。さらに、連結部材として、ねじ部がナットを用いてドア本体に締結される頭付ボルトと、当該頭付ボルトの軸部に回転可能に取り付けられ、レール部材に転動可能に連結されるベアリングと、軸部の外周に被着され、ベアリングを支承する筒状のスペーサとからなるものを用いるので、レール部材の耐用命数が高められると共に、その部品コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る安全ドア装置が適用される射出成形機の正面図である。
【図2】図1に示す射出成形機の型締機構部の正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】実施形態に係る安全ドア装置の構成を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る安全ドア装置の実施形態を、横型の射出成形機に備えられる安全ドア装置を例にとって説明する。
【0016】
横型の射出成形機は、図1に示すように、横長に形成されたメインフレーム1上の長さ方向に、型締装置2と射出装置3とを対向に搭載してなる。型締装置2の外周は、安全カバー4にて覆われており、該安全カバー4の一部には、金型の交換や成形品の取り出しなどの所要の作業を可能にするための安全ドア装置5が、メインフレーム1の長さ方向にスライド可能に設けられる。その他、図1中の符号6,7,8は、それぞれ射出装置3に備えられた原料樹脂供給用のホッパ、スクリュが内蔵された加熱筒、成形機制御装置の表示・入力部を示している。
【0017】
型締装置2は、図2に示すように、図示しない固定側金型が取り付けられる固定盤11と、図示しない可動側金型が取り付けられる可動盤12と、後述するトグル機構を支持するトグル支持盤13とを備えており、これらの各部材11,12,13は、互いに対向に配置されて、この順にメインフレーム1上に備えられている。固定盤11及びトグル支持盤13はメインフレーム1上に固定され、可動盤12はメインフレーム1上に移動可能に取り付けられる。可動盤12とトグル支持盤13には、トグル機構14の両端がそれぞれ回動可能にピン結合されており、トグル支持盤13には、型開閉用モータ15と、型開閉用モータ15の駆動力をトグル機構14に伝達する動力伝達装置16とが搭載されている。可動盤12は、型開閉用モータ15を回転駆動し、その駆動力を動力伝達装置16を介してトグル機構14に伝達し、トグル機構14を伸縮させることにより、固定盤11に接近する型締方向及び固定盤から離隔する型開方向に駆動される。なお、図2の符号17は、可動盤12に備えられた製品取り出し用のエジェクト装置を示している。また、動力伝達装置16は、図2及び図3に示すように、型開閉用モータ15の回転軸に備えられたプーリ15aと、トグル支持盤13に取り付けられ、型開閉用モータ15の回転運動を直線運動に変換してトグル機構14に伝達するボールねじ機構18と、ボールねじ機構18の回転軸に備えられたプーリ18aと、これらの各プーリ15a,18aに輪掛けされたベルト19とからなる。
【0018】
安全ドア装置5は、図2乃至図4に示すように、ドア本体21と、ドア本体21を所定の開閉方向に案内するレール部材22と、ドア本体21とレール部材22とを連結する連結部材23とから構成される。
【0019】
ドア本体21は、図3に示すように、鋼板をもって所定の大きさの角筒形に形成されており、フロント側(射出成形作業時におけるオペレータの立ち位置側)の前面には、オペレータがドア部材21の開閉を手動で行うための把手24が取り付けられている。
【0020】
レール部材22は、図3に示すように、ドア本体21の上部と連結部材23を介して連結される上部レール部材25と、ドア本体21の下部と連結部材23を介して連結される下部レール部材26とからなる。これら上部レール部材25及び下部レール部材26は、ドア本体21のフロント側及びリア側の内面に対向して配置される。
【0021】
上部レール部材25は、めっき鋼板を板金加工することによって下向きコの字形に形成されており、図2に示すように、一端がボルト27を用いて固定盤11に固定されている。この上部レール部材25の他端は、図2及び図4に示すように、ボルト27を用いてトグル支持盤13に固定されたレールステー36に支持される。レールステー36は、図4に示すように、トグル支持盤13にボルト27を用いて取り付けられる取付部36aと、取付部36aから垂直に起立された垂直部36bと、垂直部36bから水平に折り返された水平部36cと、水平部36cの先端から上向きに折り返された案内部36dとを有している。上部レール25の一端は、下向きコの字形の開口部を下向きにして、垂直部36bと案内部36dの間の隙間に挿入され、水平部36c上に載置される。
【0022】
下部レール部材26も、めっき鋼板を板金加工することによって形成される。本例の下部レール部材26は、図3及び図4に示すように、メインフレーム1に設けられたブラケット28にボルト29を用いて取り付けられるステー部26aと、図示しないリベットを介してステー部26aと一体化された案内部26bとから構成されている。案内部26bは、ステー部26aに固着される固着部26cと、固着部26の下辺より約30度の角度で折り下げられた傾斜部26dと、傾斜部26dから水平に折り曲げられた水平部26eと、水平部26eの先端部より約45°の角度で折り上げられた脱落防止部26fとからなる。この下部レール26は、水平部26eを水平にして、長さ方向の全体に形成されたステー部26aが、ボルト29を用いてブラケット28上に固着される。
【0023】
連結部材23は、頭付ボルト31と、頭付ボルト31の軸部に回転可能に取り付けられたベアリング32と、頭付ボルト31の軸部の外周に被着され、ベアリング32を支承する筒状のスペーサ33とからなる。頭付ボルト31は、図4に示すように、ドア本体21の内面に設けられたブラケット34に、ナット35を用いて固着される。上部レール部材25に連結されるベアリング32については、下向きコの字形に形成された案内部25d内に転動可能に挿入される。一方、下部レール部材26に連結されるベアリング32については、水平部26e上に転動可能に載置される。これにより、ドア本体21のスムースな開閉が可能になる。
【0024】
本実施形態に係る安全ドア装置は、安価なめっき鋼板を用いてレール部材22(上部レール部材25及び下部レール部材26)を形成したので、厚板からなるレール部材にパーカー処理等の表面処理を事後的に施す場合に比べて、レール部材の製造コストを低減することができる。また、めっき鋼板を板金加工してなるレール部材22を用いたので、連結部材23として溝付きローラを用いる必要がなく、レール部材22の側方からのドア本体21の取り付けが可能になって、ドア部材21の交換作業を容易化することができる。また、レール部材22を成形機に設定された所定のレール固定部にボルト27,29を用いて固着したので、レール部材を溶接によりレール固定部に固着する場合に比べて、レール部材21の固定に要する設備や労力を軽減できる。また、レール部材22として、上部レール部材25及び下部レール部材26を備えたので、ドア本体21の開閉をスムースかつ安定に行うことができる。また、連結部材23にベアリング32を備えたので、ドア本体21の開閉時におけるレール部材の摩耗をほぼ防止できる。また、ベアリング保持用の軸体として頭付ボルト31を用いたので、ナットを用いてベアリング保持用の軸体をドア本体21に締結することができ、溶接する場合に比べてその取付コストを低減することができる。さらに、頭付ボルト31の軸部に被着されたスペーサ33を用いてベアリング32を支承するので、頭付ボルトの軸部にベアリングを圧入する必要がなく、その部品コストを低減することができる。
【0025】
なお、前記実施形態においては、下部レール部材26として、リベットを介してステー部26aと案内部26bとを一体化したものを用いたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、ステー部26aと案内部26bとは折り曲げ加工により一体に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 メインフレーム
2 型締装置
3 射出装置
4 安全カバー
5 安全ドア
6 ホッパ
7 加熱筒
8 表示・入力部
11 固定盤
12 可動盤
13 トグル支持盤
14 トグル機構
15 型開閉用モータ
15a プーリ
16 動力伝達装置
17 エジェクト装置
18 ボールねじ機構
18a プーリ
19 ベルト
21 ドア本体
22 レール部材
23 連結部材
24 把手
25 上部レール部材
26 下部レール部材
26a ステー部
26b 案内部
26c 固着部
26d 傾斜部
26e 水平部
26f 脱落防止部
27,29 ボルト
28 ブラケット
31 頭付ボルト
32 ベアリング
33 スペーサ
36 レールステー
36a 取付部
36b 垂直部
36c 水平部
36d 案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体と、該ドア本体を所定の開閉方向に案内するレール部材と、前記ドア本体を前記レール部材に連結する連結部材とからなる成形機の安全ドア装置において、
前記レール部材として、めっき鋼板を加工することによって所定の形状に形成されたものを用い、該レール部材を、成形機に設定された所定のレール固定部にボルトを用いて固着したことを特徴とする成形機の安全ドア装置。
【請求項2】
前記レール部材は、前記ドア本体の上部と前記連結部材を介して連結される上部レール部材と、前記ドア本体の下部と前記連結部材を介して連結される下部レール部材とからなることを特徴とする請求項1に記載の成形機の安全ドア装置。
【請求項3】
前記連結部材は、ねじ部がナットを用いて前記ドア本体に締結される頭付ボルトと、当該頭付ボルトの軸部に回転可能に取り付けられ、前記レール部材に転動可能に連結されるベアリングと、前記軸部の外周に被着され、前記ベアリングを支承する筒状のスペーサとからなることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の成形機の安全ドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86420(P2013−86420A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230736(P2011−230736)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】