説明

成形用樹脂材料

【構成】 ポリカプロラクトン0.1〜15重量%およびそれ以外の熱可塑性樹脂85〜99.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物のペレットであって、当該ペレット中における粒子径50〜750μmの微粉の含有量が100ppm以下であることを特徴とするペレットからなる成形用樹脂材料。
【効果】 本発明の熱可塑性樹脂にポリカプロラクトンを配合した成形用樹脂材料によれば、ペレット製造時のストランドの温度管理や水槽の追加などの制約を受けにくく、ペレットに付着または混在する微紛の発生を抑制し、その結果として微粉の少ない熱可塑性樹脂ペレットが得られ、当該微粉に起因する成形時の不具合、例えばシルバーストリークの発生や未溶融異物の生成に伴う光学性能の低下などを改良した熱可塑性樹脂ペレットを容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカプロラクトンおよびそれ以外の熱可塑性樹脂からなる微粉含有量の極めて少ないペレットからなる成形用樹脂材料に関する。詳しくは、ペレット化後のペレットに付着または混在する微粉の発生を抑制し、その結果として微粉の少ないペレットからなる成形用樹脂材料を提供せんとするものであり、当該微粉に起因する成形時の不具合、例えばシルバーストリークの発生や未溶融異物の生成に伴う光学性能の低下などを改良した樹脂ペレットを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、その優れた特性から種々の用途に使用されている。とりわけ、透明性熱可塑性樹脂は、優れた光透過性を有することから電気・電子・OA、自動車などの分野において広範に使用されており、それぞれの分野で求められる要求性能を満足する樹脂が選択され、使い分けがなされている。
【0003】
一方、液晶テレビの導光板や、DVDやCDといった光記憶媒体などの用途においては、ペレットに付着もしくは混在する微紛が、シルバーストリークの発生や成形体中に未溶融異物として存在することで光学的不良など不具合を引き起こす場合がある。このような不具合を防止するために、溶融混錬された熱可塑性樹脂のストランドを冷却後、ペレタイザーなどを用いてペレット化する際に発生する微紛の低減が望まれていた。
【0004】
従来、ペレット製造時の微粉の発生を低減する方法に関しては、ストランドを切断する際の切削加工温度を厳密に制御する方法や、ストランドの冷却において温度の異なる複数の水槽を通した後に、ペレット化する方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2001−269929号公報
【特許文献2】特開平11−342510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、熱可塑性樹脂をペレット化する工程において微紛発生量を抑制するために、水槽やストランドの温度管理を厳密にしなければならず、また水槽の追加や温度制御など特別な設備や装置を必要とした。さらに、ペレットの製造においても微紛の量を厳密に管理しなければならず、多大な労力が費やされていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる問題点に鑑み鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂にポリカプロラクトンを配合することにより、ストランドのペレット化において、ある特定粒子径の範囲にある微紛の発生を著しく抑制し、当該微粉に起因する成形時の不具合、例えばシルバーストリークの発生や未溶融異物の生成に伴う光学性能の低下などを改良した熱可塑性樹脂ペレットを容易に提供できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリカプロラクトン0.1〜15重量%およびそれ以外の熱可塑性樹脂85〜99.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物のペレットであって、当該ペレット中における粒子径50〜750μmの微粉の含有量が100ppm以下であることを特徴とするペレットからなる成形用樹脂材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂にポリカプロラクトンを配合した成形用樹脂材料によれば、ペレット製造時のストランドの温度管理や水槽の追加などの制約を受けにくく、ペレットに付着または混在するある特定粒子径の範囲内にある微紛の発生を抑制し、その結果として微粉の少ない熱可塑性樹脂ペレットが得られ、当該微粉に起因する成形時の不具合、例えばシルバーストリークの発生や未溶融異物の生成に伴う光学性能の低下などを改良した熱可塑性樹脂ペレットを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、メタクリレート・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系共重合体、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートとポリエステルなどをブレンドしたポリマーアロイなどが挙げられる。とりわけ、透明性熱可塑性樹脂樹脂であるポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン系共重合体またはシクロオレフィンポリマーなどが好適に用いられる。なお、前記透明性熱可塑性樹脂とは、光を透過し、かつ当該樹脂の成形体を観察者と光源等の対象物の間に介在させた場合に、観察者が対象物を認識できる程度の透明性を有するものをいう。
【0010】
さらに、本発明に使用されるポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。さらに、上記ジヒドロキシアリール化合物と3価以上のフェノール化合物、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどを混合使用してもよい。
【0011】
本発明にて使用されるポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンを触媒存在下、開環重合して製造され、特に2−オキセパノンのホモポリマーが好適に用いられる。該ポリマーは市販品として容易に入手可能で、ダウ・ケミカル社製トーンポリマー、ソルベイ社製CAPAなどが挙げられる。ポリカプロラクトンの分子量としては、10,000〜100,000のものが好適で、さらに好ましくは40,000〜90,000である。
【0012】
さらに、ε−カプロラクトンを開環重合させる際に、1,4−ブタンジオールなどと共存させ変性したものや、分子末端をエーテルあるいはエステル基などで置換された変性ポリカプロラクトンを使用してもよい。
【0013】
また、ポリカプロラクトンの配合量としては、0.1〜15重量%である。0.1重量%未満であると、微紛の発生を抑制する効果に劣るため好ましくない。一方、20重量%を越えると、微紛の発生量は十分抑制されるものの、極端な耐熱性の低下が起こり、予備乾燥時に、ペレットが固着してしまうため(ブロッキングの発生)好ましくない。より好ましい配合量としては、0.3〜10重量%である。
【0014】
本発明において規定される、微紛の粒子径とは、20メッシュ・スクリーンを通過し(750μm以下)、300メッシュ・スクリーンを通過しない(50μm以上)微紛を指す。また、ペレット中の該粒子径を有する微粉の含有量を、100ppm以下に抑えることにより、成形時のシルバーストリークの発生を抑制することができる。一方、ペレット中に混在する微紛含有量が100ppmを越えると、シルバーストリークの発生が顕著になるため好ましくない。より好ましい微紛含有量としては、50ppm以下であり、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0015】
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、熱可塑性樹脂に他の公知の添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、着色剤、充填剤、流動性改良剤、展着剤、耐衝撃改良剤等を必要に応じて添加することができる。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂にポリカプロラクトンを配合して溶融混錬する方法に関しては、熱可塑性樹脂とポリカプロラクトンを任意の配合量で計量し、タンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等により混合した後、混合物を通常の一軸またはニ軸押出機を用いて溶融混練する方法、あるいは、各々の成分を別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入し溶融混合する方法があげられる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機に投入する位置、押出温度、スクリュー回転数、供給量などは、状況に応じて任意の条件を選択することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により説明するが本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0018】
尚、使用された熱可塑性樹脂とポリカプロラクトンは以下のものである。
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製 カリバー200−30
(粘度平均分子量:17200、以下PCと略記)
ポリカプロラクトン:
ソルベイ社製CAPA6400
(粘度平均分子量:37000、以下PCL−1と略記)
ソルベイ社製CAPA6800
(粘度平均分子量:80000、以下PCL−2と略記)
ダウ・ケミカル社製トーンポリマーP−787
(粘度平均分子量:80000、以下PCL−3と略記)
イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート:
ユニチカ社製SA−1346P(以下i−PETと略記)
【0019】
(微紛量の測定)
ペレタイザーによる切削開始後10分経過した時点で、ステンレスバット中におよそ3kgのペレットを抜き取り、さらに、該抜き取ったペレットからさらに約500gを別のステンレスバットへサンプリングし、ペレット重量を秤量した。ついで、業務用バキュームクリーナーのノズル部に300メッシュおよび20メッシュの金網を重ねて配置し、ペレット中に含まれる微紛を吸引し、300メッシュ上に堆積した微紛を採取、秤量した。該微紛量を微紛吸引前のペレット重量で除し、微紛含有量(ppm)とした。
【0020】
(成形品のシルバーストリークの評価)
前記操作により、約3kg採取したペレットから微紛測定用に約500g抜き取った残りのペレットを日本製鋼所製射出成形機J100−EIIPにより、溶融温度280℃で、連続射出成形を行い、シルバーストリークの発生の有無を目視により確認した。
【0021】
(ブロッキングの評価)
表−1に示す配合比率により得られたペレットを110℃の温度で3時間放置し、ペレットのブロッキング発生の有無を目視により確認した。
【0022】
(実施例1)
表1に示す配合比率により、PC(99%)とPCL−1(1%)をカワタ製スーパーフローターにより乾式混合した。次いで、神戸製鋼所社製2軸押出機KTX−37(軸直径=37mmφ、L/D=30、図1のA)により、250℃の温度下、溶融混練し、押出機先端ダイス部より押し出されたストランドを直ちに冷却水槽へ導き、日本プラコン社製SS型ペレタイザーを用いて、23m/分の引き取り速度により、ストランドを切断し、ペレット化した。このときの冷却水槽の第1槽目(図1のB)と第2槽目(図1のC)の水温はそれぞれ54℃、45℃であった。また、ストランドの第1水槽および第2水槽中における冷却時間は、それぞれ、0.52秒と0.78秒であった。
【0023】
ストランド切断を開始してから10分後、ステンレスバットに約3kgのペレットを採取し、該採取ペレットの約500gを微紛測定用に、残りを射出成形用として供した。このときの微紛含有量は31ppmで、100ppm以下であり良好であった。また、連続射出成形によるシルバーストリークの発生は見られず良好であった。
【0024】
また、110℃の温度において3時間放置後のブロッキングの発生は見られず、良好であった。
【0025】
(実施例2)
PCとPCL−1の配合比率をそれぞれ97%と3%にした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は52℃、第2槽目の水温は、44℃であった。また、微紛発生量の測定および成形品のシルバーストリークの評価も実施例1と同様の方法で行ったところ、微紛含有量は20ppmで良好であり、シルバーストリークおよびブロッキングの発生も見られず良好であった。
【0026】
(実施例3)
PCLの種類と配合比率をそれぞれ、PCL−2および3%とした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は56℃、第2槽目の水温は、45℃であった。また、微紛発生量の測定および成形品のシルバーストリークの評価も実施例1と同様の方法で行ったところ、微紛含有量は17ppmで良好であり、シルバーストリークおよびブロッキングの発生も見られず良好であった。
【0027】
(実施例4)
PCLの種類と配合比率をそれぞれ、PCL−3および3%とした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は53℃、第2槽目の水温は、44℃であった。また、微紛発生量の測定および成形品のシルバーストリークの評価も実施例1と同様の方法で行ったところ、微紛含有量は18ppmで良好であり、シルバーストリークおよびブロッキングの発生も見られず良好であった。
【0028】
(実施例5)
PCLの種類と配合比率をそれぞれ、PCL−2および10%とした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は51℃、第2槽目の水温は、42℃であった。また、微紛発生量の測定および成形品のシルバーストリークの評価も実施例1と同様の方法で行ったところ、微紛含有量は7ppmで良好であり、シルバーストリークおよびブロッキングの発生も見られず良好であった。
【0029】
(実施例6)
PC(90%)、i−PET(5%)およびPCL−2(5%)の配合比率とした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は53℃、第2槽目の水温は、42℃であった。また、微紛発生量の測定および成形品のシルバーストリークの評価も実施例1と同様の方法で行ったところ、微紛含有量は50ppmで良好であり、シルバーストリークおよびブロッキングの発生も見られず良好であった。
【0030】
(比較例1)
PC(99.99%)、PCL−1(0.01%)の配合比率とした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は51℃、第2槽目の水温は、43℃であった。このときの微紛含有量は130ppmであり、多量の微紛が採取された。また、ブロッキングの発生は見られず良好であったが、連続成形を行ったところ、シルバーストリークの発生が起こり、外観不良が確認された。
【0031】
(比較例2)
PC(80%)、PCL−1(20%)の配合比率とした以外は、実施例1と同様の溶融混練条件、引き取り速度によりペレット化した。このときの第1水槽の水温は54℃、第2槽目の水温は、43℃であった。このときの微紛含有量は6ppmで良好であった。また、シルバーストリークの発生は見られなかったが、110℃で3時間放置後のペレットにおいて、著しいブロッキングが確認された。
【0032】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の溶融混錬・冷却・ペレット化の工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0034】
A:押出機
B:第1槽目水槽
C:第2槽目水槽
D:ペレタイザー本体
E:ロールカッター
F:ペレット排出口
G:ストランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカプロラクトン0.1〜15重量%およびそれ以外の熱可塑性樹脂85〜99.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物のペレットであって、当該ペレット中における粒子径50〜750μmの微粉の含有量が100ppm以下であることを特徴とするペレットからなる成形用樹脂材料。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、透明性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂材料。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン系共重合体またはシクロオレフィンポリマーから選択される一種もしくは二種以上であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂材料。
【請求項4】
ポリカプロラクトンの配合量が、0.3〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂材料。
【請求項5】
ポリカプロラクトンの粘度平均分子量が、40000〜90000であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂材料。



【図1】
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【公開番号】特開2006−22254(P2006−22254A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203037(P2004−203037)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】