説明

成形装置及び成形方法

【課題】基材を構成する材料が成形品の表側に現れにくくすることにより、成形不良の発生を抑制する。
【解決手段】成形装置1の可動型3には、本体型11、12とスライド型25、26とを設ける。スライド型25、26を移動させることでキャビティを区画し、本体板部成形用の材料充填空間を形成する。この本体板部成形用の材料充填空間に基材を構成する材料を供給して基材を成形する。その後、本体型11、12を後退させる。さらに、スライド型25、26を後退させて突出板部成形用の材料充填空間を形成する。この突出板部成形用の材料充填空間に表皮を構成する材料を供給して基材の表側に表皮を成形するとともに、突出板部を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に表皮が積層された成形品を一体成形する際に用いられる成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の成形品を成形する際に用いられる成形装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、1つの可動型と、基材成形用及び表皮成形用の2つの固定型との合計3つの成形型を備えたものが知られている。この成形装置を用いて成形品を成形する際には、まず、基材成形用の固定型と可動型とを型閉じして形成されたキャビティに、基材を構成する材料を供給して基材を成形する。その後、型開きして、基材成形用の固定型を、表皮成形用の固定型と入れ替える。そして、型閉じした後、発泡材料をキャビティにおける基材の表面側に供給する。このとき、可動型を表皮成形用の固定型から離れる方向に移動させることで、発泡材料は、表皮成形用の固定型の成形面に接触している部分が発泡せずにソリッド状態となる一方、内部が発泡する。
【0003】
また、上記のような樹脂製の成形品においては、本体板部の周縁部から裏側へ突出する突出板部が設けられる場合があり、この場合、見栄えの観点から本体板部の表皮を突出板部まで連続させて設けるようにすることが一般的に行われている。
【特許文献1】特許第3118125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の成形装置では、固定型を基材成形用と表皮成形用の2つ用意して、基材の成形時と表皮の成形時とで入れ替えるようにしている。このため、型費が高騰するとともに、成形サイクル毎に固定型を入れ替える時間が必要になって成形サイクルが長くなり、ひいては、成形品のコスト高を招く。
【0005】
そこで、基材の成形時と表皮の成形時とで固定型を入れ替えることなく、1つの固定型を用いて成形することが考えられる。しかしながら、こうすると1つの固定型と可動型とで形成される単一のキャビティに、基材を構成する材料と表皮を構成する材料とが供給されることになるので、特に、成形品の突出板部のように本体板部と異なる方向に延びる部分では、成形時、基材を構成する材料が表側に現れ易くなり、成形不良が発生する虞れがある。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材を構成する材料が成形品の表側に現れにくくすることにより、成形不良の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、成形型に設けたスライド型を進出させることによってキャビティに本体板部成形用の材料充填空間を形成する一方、後退させることによって突出板部成形用の材料充填空間を形成するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、基材に表皮が積層された本体板部と、該本体板部の周縁部から突出する突出板部とを有する成形品を成形する成形装置において、第1及び第2成形型と、上記第1及び第2成形型の少なくとも一方を他方に接離させる成形型駆動装置と、キャビティの内外方向に進退移動するように上記第1及び第2成形型の一方側に設けられ、進出した状態で上記キャビティを区画して本体板部成形用の材料充填空間を形成し、後退した状態で突出板部成形用の材料充填空間を形成するスライド型と、上記スライド型を進退駆動するスライド型駆動装置と、上記基材を構成する材料を上記キャビティに供給する基材用材料供給装置と、上記表皮を構成する材料を上記キャビティに供給する表皮用材料供給装置と、上記成形型駆動装置、上記スライド型駆動装置、上記基材用材料供給装置及び上記表皮用材料供給装置を制御する制御装置とを備え、上記制御装置は、上記スライド型駆動装置により上記スライド型を進出させるとともに、上記基材用材料供給装置を作動させた後、上記成形型駆動装置により一方の成形型を他方の成形型から離れる方向に移動させ、かつ、上記スライド型駆動装置により上記スライド型を後退させるとともに、上記表皮用材料供給装置を作動させるように構成されているものとする。
【0009】
この構成によれば、スライド型を進出させてキャビティに本体板部成形用の材料充填空間を形成した状態で、基材用材料供給装置を作動させると、基材の材料が本体板部成形用の材料充填空間に流入して成形され、本体板部の基材が得られる。このとき、キャビティがスライド型によって区画されていることにより、基材の材料が突出板部成形用の材料充填空間には流入しない。
【0010】
そして、成形型駆動装置により例えば第1成形型を第2成形型から離れる方向に移動させると、キャビティ内において基材の表側に表皮を成形するための空間を形成することが可能になる。これに加えて、スライド型を後退させると、キャビティ内に突出板部成形用の材料充填空間が形成される。この状態で表皮材用材料供給装置を作動させると、表皮の材料が、キャビティ内において基材の表側の空間及び突出板部成形用の材料充填空間に流入して成形され、基材の表側に表皮が一体に得られるとともに、突出板部も得られる。このように、突出板部成形用の材料充填空間には、表皮の材料のみを充填することが可能になるので、基材の材料が成形品の表側に現れるのを回避することが可能になる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、スライド型は、第1成形型側に設けられ、進出した状態で第2成形型の成形面に当接する当接部を有し、上記当接部は、上記第2成形型の成形面を構成する材料よりも柔らかい材料で構成されているものとする。
【0012】
この構成によれば、スライド型が進出して第2成形型の成形面に当接した際、該第2成形型の成形面の損傷が抑制される。
【0013】
第3の発明では、第1の発明において、スライド型は、第1成形型側に設けられ、進出した状態で第2成形型の成形面に当接する当接部を有し、上記当接部は、上記第2成形型の成形面に沿って延びるように形成されている構成とする。
【0014】
この構成によれば、スライド型が進出して第2成形型の成形面に当接した際、該第2成形型の成形面が受ける圧力を低減させることが可能になり、該成形面の損傷が抑制される。
【0015】
第4の発明では、基材に表皮が積層された本体板部と、該本体板部の周縁部から突出する突出板部とを有する成形品を成形する成形方法において、第1成形型と第2成形型とを用いてキャビティを形成し、上記第1及び第2成形型の一方側に設けられたスライド型を進出させて上記キャビティを区画することにより本体板部成形用の材料充填空間を形成し、該材料充填空間に基材を構成する材料を供給して基材を成形し、その後、上記第1成形型と上記第2成形型との少なくとも一方を他方から離すとともに、上記スライド型を後退させて突出板部成形用の材料充填空間を形成した後、該材料充填空間に表皮を構成する材料を供給して上記基材の表側に表皮を一体成形するとともに、上記突出板部を成形する構成とする。
【0016】
この構成によれば、スライド型を進出させてキャビティを区画するようにしたので、突出板部成形用の材料充填空間には、表皮の材料のみを充填することが可能になり、基材の材料が成形品の表側に現れるのを回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、スライド型を進出させてキャビティに本体板部成形用の材料充填空間を形成して基材の材料を供給した後、スライド型を後退させて突出板部成形用の材料充填空間を形成して表皮の材料を供給するようにしたので、基材の材料が成形品の表側に現れるようになるのを回避することができ、成形不良の発生を抑制することができる。
【0018】
第2の発明によれば、スライド型の当接部を第2成形型の成形面よりも柔らかくしたので、スライド型を進出させた際に第2成形型の成形面の損傷を抑制することができ、スライド型を設けたことによる成形品の見栄え悪化を抑制できる。
【0019】
第3の発明によれば、スライド型の当接部を第2成形型の成形面に沿って延びるように形成したので、スライド型を進出させた際に成形面から受ける圧力を低減させて成形面の損傷を抑制することができ、スライド型を設けたことによる成形品の見栄え悪化を抑制できる。
【0020】
第4の発明によれば、第1の発明と同様に、基材の材料が成形品の表側に現れるのを回避することができ、成形不良の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図2に示す本発明の実施形態に係る成形装置1は、自動車の室内に設けられる成形品としてのパネル部材100(図1に示す)を成形する際に用いられるものである。この実施形態の説明では、成形装置1の構造を説明する前に、成形装置1で成形されるパネル部材100の構造について説明する。パネル部材100は、略平坦に延びる矩形状の本体板部100aと、本体板部100aの周縁部から本体板部100aの裏側へ向けて突出する突出板部100bとを備えている。突出板部100bは、本体板部100aに対し略垂直に突出し、本体板部100aの周縁部に沿って環状に延びる枠形状とされている。
【0023】
パネル部材100の本体板部100aは、基材101と、該基材101の表側に設けられた表皮102とを有する積層構造となっている一方、突出板部100bには、基材101が無い。基材101は、硬質な樹脂で構成されており、表皮102は、基材101を構成する樹脂よりも柔軟な材料で構成されている。本実施形態では、表皮102をエラストマーで構成しており、従って、突出板部100bは、本体板部100aよりも柔らかく、容易に弾性変形するようになっている。
【0024】
表皮102は、表側のソリッド層102aと、ソリッド層102aの裏側に位置する発泡層102bとで構成されている。表皮102は、本体板部100aから突出板部100bまで連続しており、その表面全体にシボ模様が設けられている。
【0025】
次に、成形装置1の構造について説明する。成形装置1は、図2に示すように、固定型2及び可動型3と、型駆動装置8と、基材101を構成する樹脂を供給する樹脂供給装置9と、エラストマーを供給するエラストマー供給装置10とを備えている。
【0026】
上記型駆動装置8は、水平方向に伸縮動作する油圧シリンダー等で構成されている。型駆動装置8のロッド8aが可動型3の左側面(図2及び図3の左側)に連結され、可動型3は、図2及び図3の左右方向に水平移動することで固定型2に対し接離するようになっている。
【0027】
上記可動型3には、右側へ膨出するように形成された第1及び第2本体型11、12が成形装置1の奥行き方向(図2及び図3の上下方向)に離れて設けられている。第1及び第2本体型11、12は、同じ形状とされ、左右方向に移動可能に可動型3に対して支持されている。第1及び第2本体型11、12の右側面が可動側成形面11a、12aとされている。可動側成形面11a、12aは、基材101の裏面側を成形するためのものである。
【0028】
一方、固定型2の左側面は、第1及び第2本体型11、12に対向する部位が右側へ窪むように形成されており、この窪み部分の内面が固定側成形面2a、2aとされている。この固定側成形面2a、2aは、パネル部材100の表面側を成形するためのものである。
【0029】
上記各固定側成形面2aは、図2及び図5に示すように、可動型成形面11a、12aと略平行に延びる鉛直面部2bと、鉛直面部2bの周縁部から左側へ延びる周面部2cとで構成されている。各固定側成形面2aの鉛直面部2b及び周面部2cには、表皮102にシボ模様を形成するための微少な凹凸形状が設けられている。
【0030】
第1及び第2本体型11、12の左側には、第1及び第2本体型駆動装置13、14が配設されている。第1及び第2本体型駆動装置13、14は、左右方向に伸縮動作する周知の油圧シリンダー等で構成されており、ロッド(図示せず)の先端部が第1及び第2本体型11、12に連結されている。第1及び第2本体型駆動装置13、14は、第1及び第2本体型11、12を左右方向に移動させて固定型2に対し接離させることで、これら本体型11、12を基材成形位置と表皮成形位置とに切り替えるように構成されている。基材成形位置とは、可動側成形面11a、12aと固定側成形面2a、2aとの隙間が基材101の厚み寸法となる位置(図5(a)に示す)であり、表皮成形位置とは、可動側成形面11a、12aと固定側成形面2a、2aとの隙間が、基材101の厚みと表皮102の厚みとを合わせた寸法となる位置(図7(b)に示す)である。また、第1及び第2本体型11、12は、基材成形位置と表皮成形位置との間の任意の位置で停止させることができるようになっている。
【0031】
尚、本発明の第1成形型は、第1及び第2本体型11、12で構成され、第2成形型は、固定型2で構成されている。また、本発明の成形型駆動装置は、本体型駆動装置13、14で構成されている。
【0032】
上記可動型3と固定型2とを型締めすると、固定側成形面2a、2aと、可動側成形面11a、12aとの間に第1キャビティC1及び第2キャビティC2が形成されるようになっている。これらキャビティC1、C2は同じ形状である。詳細は後述するが、上記樹脂供給装置9及びエラストマー供給装置10によって各キャビティC1、C2に供給された樹脂及びエラストマーは、成形されてパネル部材100となり、固定型2及び可動型3内では、図7(b)に示すように、パネル部材100は、本体板部100aが略鉛直となり、突出板部100bが略水平に突出する向きとなっている。
【0033】
図3に示すように、固定型2と可動型3との合わせ部には、第1キャビティC1に開口するエラストマー用第1ゲート16と、第2キャビティC2に開口するエラストマー用第2ゲート17と、これら両ゲート16、17に連通するランナー18とが形成されている。また、固定型2には、固定側成形面2a、2aにそれぞれ開口する樹脂用ゲート15、15が形成されている。樹脂用ゲート15、15は、後述する本体板部成形用の材料充填空間Rに臨むように配置されている。
【0034】
固定型2には、ランナー18にエラストマーを流入させるためのエラストマー通路21と、エラストマー通路21を開閉するエラストマー流量制御弁22と、樹脂用ゲート15、15に連通する樹脂通路19と、樹脂通路19を開閉する樹脂流量制御弁20とが設けられている。樹脂通路19の上流端部は、固定型2の右側面に開口しており、この上流端に樹脂供給装置9のノズル9aが接続されている。
【0035】
エラストマー通路21の上流端には、エラストマー供給装置10のノズル10aが接続されている。エラストマー通路21の下流側は、2つに分岐しており、これらのうち、一方の通路が、ランナー18の第1ゲート16に近い側に連通し、他方の通路が、第2ゲート17に近い側に連通している。上記樹脂供給装置9及びエラストマー供給装置10は、従来より周知の射出成形機等で構成されている。
【0036】
上記第1及び第2本体型11、12における基材100の突出板部100bを成形する箇所には、該本体型11、12をそれぞれ囲むように形成された環状の第1及び第2スライド型25、26が配置されている。これらスライド型25、26は、同じ形状とされている。第1及び第2スライド型25、26は、キャビティC1、C2をそれぞれ区画するためのものであり、左右方向に移動可能に可動型3に支持されている。図5に示すように、第1スライド型25の先端面部25aは、固定型2の固定側成形面2aの対向する部位に沿って延びるように形成されており、第1スライド型25の固定側成形面2aへの接触面積を広く確保できるようになっている。この先端面部25aは、固定型2の固定側成形面2aを構成する材料よりも柔らかい材料で構成されている。先端面部25aの材料としては、例えば、ベリリウム銅合金等が挙げられるが、これに限られるものではない。図示しないが、第2スライド型26の先端面部も同様に構成されている。
【0037】
図2に示すように、上記第1及び第2スライド型25、26の左側には、第1及び第2スライド型駆動装置27、28が配設されている。第1及び第2スライド型駆動装置27、28は、左右方向に伸縮動作する周知の油圧シリンダー等で構成されており、ロッド(図示せず)の先端部が第1及び第2スライド型25、26の基端部に連結されている。スライド型駆動装置27、28は、スライド型25、26をキャビティC1、C2内へ進出させる方向と、キャビティC1、C2内から後退させる方向とに移動する。
【0038】
第1スライド型25が進出状態になると、図5(b)に示すように、先端面部25aが固定型2の固定側成形面2aに当接する。これにより、第1キャビティC1内が第1スライド型25によって区画されることになり、第1スライド型25の内方に本体板部成形用の材料充填空間Rが形成されるようになっている。一方、第1スライド型25が後退状態になると、図5(a)に示すように、先端面部25aが第1本体型1の可動側成形面11aよりも後退した位置となる。これにより、第1キャビティC1内に突出板部成形用の材料充填空間S(図6(b)に示す)が形成される。尚、図示しないが、第2スライド型26が進出状態になった場合、及び後退状態になった場合も同様に、本体板部成形用の材料充填空間及び突出板部成形用の材料充填空間が形成される。
【0039】
また、上記成形装置1は、図4に示すように、制御装置40を備えている。この制御装置40には、型駆動装置8、樹脂供給装置9、エラストマー供給装置10、本体型駆動装置13、14、樹脂流量制御弁20、エラストマー流量制御弁22及びスライド型駆動装置27、28が接続されており、これら装置8〜10、13、14、27、28及び流量制御弁20、22を制御するように構成されている。
【0040】
具体的には、制御装置40は、成形開始の信号を受けると、まず、キャビティC1、C2を形成して基材101の成形を開始するように、各装置8〜10、13、14、27、28及び樹脂流量制御弁20、22に制御信号を送出する。すなわち、図5(a)に示すように、制御装置40は、型駆動装置8により可動型を固定型2に接近させて固定型と可動型3とを型締めするとともに、第1及び第2本体型駆動装置13、14により第1及び第2本体型11、12を基材成形位置にする。さらに、図5(b)に示すように、第1及び第2スライド型駆動装置27、28により第1及び第2スライド型25、26を進出させる。その後、樹脂供給装置9を作動させるとともに、樹脂流量制御弁20を開状態とする。
【0041】
制御装置40は、基材101を構成する樹脂の供給が終了すると、表皮102の成形を開始するように、各装置8〜10、13、14、27、28及び流量制御弁20、22に制御信号を送出する。すなわち、制御装置40は、樹脂流量制御弁20を閉状態とした後、本体型駆動装置13、14により第1及び第2本体型11、12を左側へ移動させ、かつ第1及び第2スライド型駆動装置27、28により第1及び第2スライド型25、26を後退させ、その後、エラストマー供給装置10を作動させるとともに、エラストマー流量制御弁22を開状態とする。可動型3、本体型11、12及びスライド型25、26の移動速度や、樹脂及びエラストマーの供給量及び流速は、制御装置40によって任意の値に制御可能となっている。
【0042】
次に、上記のように構成された成形装置1を用いてパネル部材100を成形する要領について説明する。基材101を構成する樹脂は、例えばポリプロピレンを用い、これを樹脂供給装置9に溶融状態で準備しておく。表皮を構成する材料は、例えば上記特許文献1に開示されている発泡性のエラストマー(発泡材料)を用い、これをエラストマー供給装置10に準備しておく。尚、エラストマーとしては、飽和型スチレン系エラストマーが好ましく、これに混入する発泡剤としては、エラストマーを発泡させることができるものであればよく、例えば、重炭酸ナトリウム等の無機化合物やアゾ化合物等の有機化合物のような分解性発泡剤が挙げられる。
【0043】
成形開始の信号を制御装置40に送ると、制御装置40は、図3及び図5に示すように、型駆動装置8により可動型3と固定型2とを型締めし、第1及び第2キャビティC1、C2を形成する。また、図5(a)に示すように、第1及び第2本体型駆動装置13、14により第1及び第2本体型11、12を基材成形位置にする。さらに、図5(b)に示すように、第1及び第2スライド側駆動装置27、28により第1及び第2スライド型25、26を進出させる。すると、第1及び第2スライド型25、26が固定側成形面2a、2aに当接する。このとき、第1及び第2スライド型25、26の当接部25aが固定側成形面2a、2aよりも柔らかいので、固定側成形面2a、2aのシボ形成用の凹凸形状が潰れるのを抑制すること可能である。さらに、第1及び第2スライド型25、26の当接部25aが固定側成形面2a、2aに沿って延びるように形成されているので、固定側成形面2a、2aが受ける圧力を低減させることが可能になり、このことによっても、固定側成形面2a、2aの凹凸形状が潰れるのを抑制すること可能である。
【0044】
第1及び第2スライド型25、26を進出させると、第1及び第2キャビティC1、C2が第1及び第2スライド型25、26によりそれぞれ区画されて、第1及び第2スライド型25、26の内方に本体板部成形用の材料充填空間Rがそれぞれ形成される。
【0045】
次いで、制御装置40は、樹脂供給装置9を作動させて樹脂の供給を開始するとともに、樹脂流量制御弁20を開放する。これにより、樹脂が樹脂通路19を通って樹脂用ゲート15、15から本体板部成形用の材料充填空間Rに流入する。図6(a)に示すように、本体板部成形用の材料充填空間Rに流入した樹脂は、基材101の形状となる。
【0046】
その後、制御装置40は、図6(b)に示すように、第1及び第2スライド型駆動装置27、28により第1及び第2スライド型25、26を後退させる。すると、第1及び第2キャビティC1、C2には、基材101を囲むように突出板部成形用の材料充填空間Sが形成される。
【0047】
その後、制御装置40は、同図に示すように、第1及び第2本体型駆動装置13、14により第1及び第2本体型11、12を基材101と共に左側へ移動させ、基材101と固定側成形面2aとの間にエラストマーが充填される空間を形成しておく。この空間は、突出板部成形用の材料充填空間Sと連通している。このときの第1及び第2本体型11、12の移動量は、ソリッド層102aの厚さ寸法と略同じくらいである。
【0048】
制御装置40は、第1及び第2本体型11、12の移動と同期して、エラストマー供給装置10を作動させてエラストマーの供給を開始するとともに、エラストマー流量制御弁22を開放する。これにより、エラストマーがエラストマー通路21を通ってランナー18に流入する。ランナー18に流入した樹脂は、該ランナー18内を第1ゲート16側及び第2ゲート17側へ流れて、第1ゲート16から第1キャビティC1の突出板部成形用の材料充填空間Sに流入し、第2ゲート17から第2キャビティC2の突出板部成形用の材料充填空間Sに流入する。突出板部成形用の材料充填空間Sに流入したエラストマーは、基材101を囲むように流れるとともに、基材101の表側にも流れていく。このエラストマーは、図7(a)に示すように、固定側成形面2aの周面部2cに接触し、該周面部2cにより成形されてソリッド層102aとなる。また、基材101の表側全体に行き渡ったエラストマーは、固定側成形面2aの鉛直面部2bに接触し、該鉛直面部2bにより成形される。このとき、表皮102の表面全体には、固定側成形面2aによりシボ模様が形成される。
【0049】
しかる後、図7(b)に示すように、制御装置40は第1及び第2本体型駆動装置13、14により第1及び第2本体型11、12を左側へ移動させる。これにより、表皮102内部の未だ固化していないエラストマーが安定して発泡し、発泡層102bとなる。このようにして、表皮102が基材101に積層され、かつ、突出板部100bがエラストマーのみで形成されたパネル部材100が得られる。パネル部材100を脱型する際には、型駆動装置8により可動型3を左側へ移動させて型開きする。この型開きのとき、突出板部100bがエラストマーのみからなっていて弾性変形するので、突出板部100bを固定側成形面2aの周面部2cの凹凸形状部分から無理に抜くのが容易に行える。
【0050】
以上説明したように、この実施形態によれば、固定型2及び可動型3を他の成形型に入れ変えることなく、表皮102が基材101に積層されたパネル部材100を成形できる。さらに、第1及び第2スライド型25、26を進出させて第1及び第2キャビティC1、C2に本体板部成形用の材料充填空間Rを形成して基材101の材料を供給した後、これらスライド型25、26を後退させて突出板部成形用の材料充填空間Sを形成して表皮102の材料を供給するようにしたので、基材101の材料がパネル部材100の表側に現れるのを回避することができ、成形不良の発生を抑制することができる。
【0051】
また、第1及び第2スライド型25、26の当接部25aを固定側成形面2a、2aよりも柔らかくしたので、第1及び第2スライド型25、26を進出させた際に固定側成形面2a、2aの損傷を抑制することができる。また、第1及び第2スライド型25、26の当接部25aを固定側成形面2a、2aに沿って延びるように形成したことにより、固定側成形面2a、2aの損傷をより一層抑制することができる。これにより、第1及び第2スライド型25、26を設けたことによるパネル部材100の見栄え悪化を抑制できる。
【0052】
尚、基材101を構成する材料や、表皮102を構成する材料は上記した材料に限られるものではない。
【0053】
また、基材101を構成する樹脂の供給タイミングとしては、型閉じ前や型締め前であってもよい。また、表皮102を構成する材料の供給タイミングとしては、本体型11、12の移動途中であってもよいし、本体型11、12の移動を停止した後であってもよい。
【0054】
また、スライド型25、26を基材成形位置から表皮成形位置まで移動させる途中に、エラストマーの供給を開始してもよい。
【0055】
また、成形装置1の構造としては、可動型を下側に配置し、固定型を上側に配置するようにしてもよいし、固定型を下側に配置し、可動型を上側に配置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明に係る成形装置及び成形方法は、例えば、車両用の内装部材を成形する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は、成形装置で成形されたパネル部材の斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線断面図である。
【図2】型開き状態にある成形装置の断面図である。
【図3】型閉じ状態の図3相当図である。
【図4】成形装置のブロック図である。
【図5】(a)は、型閉じ状態にある成形装置の拡大断面図であり、(b)は、スライド型を進出させた状態の(a)相当図である。
【図6】(a)は、基材を構成する樹脂を充填した状態の図5(a)相当図であり、(b)は、スライド型及び本体型を後退させた状態の図5(a)相当図である。
【図7】(a)は、エラストマーを充填した状態の図5(a)相当図であり、(b)は、本体型を表皮成形位置にした状態の図5(a)相当図である。
【符号の説明】
【0058】
1 成形装置
2 固定型(第2成形型)
3 可動型
9 樹脂供給装置(基材用材料供給装置)
10 エラストマー供給装置(表皮用材料供給装置)
11 第1本体型(第1成形型)
12 第2本体型(第1成形型)
13 第1本体型駆動装置(成形型駆動装置)
14 第2本体型駆動装置(成形型駆動装置)
25 第1スライド型
25a 当接部
26 第2スライド型
27 第1スライド型駆動装置
28 第2スライド型駆動装置
40 制御装置
100 パネル部材(成形品)
100a 本体板部
100b 突出板部
101 基材
102 表皮
C1、C2 キャビティ
R 本体板部成形用の材料充填空間
S 突出板部成形用の材料充填空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に表皮が積層された本体板部と、該本体板部の周縁部から突出する突出板部とを有する成形品を成形する成形装置において、
第1及び第2成形型と、
上記第1及び第2成形型の少なくとも一方を他方に接離させる成形型駆動装置と、
キャビティの内外方向に進退移動するように上記第1及び第2成形型の一方側に設けられ、進出した状態で上記キャビティを区画して本体板部成形用の材料充填空間を形成し、後退した状態で突出板部成形用の材料充填空間を形成するスライド型と、
上記スライド型を進退駆動するスライド型駆動装置と、
上記基材を構成する材料を上記キャビティに供給する基材用材料供給装置と、
上記表皮を構成する材料を上記キャビティに供給する表皮用材料供給装置と、
上記成形型駆動装置、上記スライド型駆動装置、上記基材用材料供給装置及び上記表皮用材料供給装置を制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記スライド型駆動装置により上記スライド型を進出させるとともに、上記基材用材料供給装置を作動させた後、上記成形型駆動装置により一方の成形型を他方の成形型から離れる方向に移動させ、かつ、上記スライド型駆動装置により上記スライド型を後退させるとともに、上記表皮用材料供給装置を作動させるように構成されていることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形装置において、
スライド型は、第1成形型側に設けられ、進出した状態で第2成形型の成形面に当接する当接部を有し、
上記当接部は、上記第2成形型の成形面を構成する材料よりも柔らかい材料で構成されていることを特徴とする成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の成形装置において、
スライド型は、第1成形型側に設けられ、進出した状態で第2成形型の成形面に当接する当接部を有し、
上記当接部は、上記第2成形型の成形面に沿って延びるように形成されていることを特徴とする成形装置。
【請求項4】
基材に表皮が積層された本体板部と、該本体板部の周縁部から突出する突出板部とを有する成形品を成形する成形方法において、
第1成形型と第2成形型とを用いてキャビティを形成し、上記第1及び第2成形型の一方側に設けられたスライド型を進出させて上記キャビティを区画することにより本体板部成形用の材料充填空間を形成し、該材料充填空間に基材を構成する材料を供給して基材を成形し、
その後、上記第1成形型と上記第2成形型との少なくとも一方を他方から離すとともに、上記スライド型を後退させて突出板部成形用の材料充填空間を形成した後、該材料充填空間に表皮を構成する材料を供給して上記基材の表側に表皮を一体成形するとともに、上記突出板部を成形することを特徴とする成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190327(P2009−190327A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34919(P2008−34919)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000225728)南条装備工業株式会社 (18)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】