成形金型
【課題】成形品のアンダーカット部における成形品質を向上することができる成形金型を提供する。
【解決手段】可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上には、脱型コア12の移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部13を形成し、この凹状部13によってアンダーカット部20に形成された凸状部14との係合により、脱型コア12の移動方向に対する直交方向でのバンパー21の移動を規制するように構成した。
【解決手段】可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上には、脱型コア12の移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部13を形成し、この凹状部13によってアンダーカット部20に形成された凸状部14との係合により、脱型コア12の移動方向に対する直交方向でのバンパー21の移動を規制するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製の成形品用の成形金型に係り、詳しくは脱型コアを備えた成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1に開示される成形金型がある。この成形金型は、図21(a),(b)に示すように、アンダーカット部50を有するバンパー51を成形する可動型52と、この可動型52に対して移動される脱型コア53とよりなる。そして、成形されたバンパー51は、脱型コア53が移動されるときにアンダーカット部50に係合してバンパー51を弾性変形させることにより可動型52から取り外される。
【0003】
なお、特許文献2には、アンダーカット部を有するバンパーにおいて、その端末部の裏面にリブを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−71634号公報
【特許文献2】特開平7−52733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなバンパー51は、図22にその片側を示すように、その下縁部側が上縁部側よりも高い剛性を有するような構成となっている。これは、バンパーの上側縁部には、左右フェンダやフロントグリルと接続するための突き合わせ部51aが形成されるだけであるが、下側縁部には、車体下方に直接向かうためのフランジ部51bが形成されるためである。
【0006】
このため、上記特許文献1のような成形金型によりバンパー51を成形する場合、図23に示すように、矢印P方向に移動する脱型コア53によってアンダーカット部50が外側(図23において右側)に押し広げられていくとき、バンパー51が、剛性の高いフランジ部51bの方に向かい脱型コア53に対して矢印Qで示すように相対移動することがあった。すなわち、バンパー51が、自身の弾性復帰力により、脱型コア53の移動方向に対する直交方向に移動することがあった。このとき、アンダーカット部50の表面(図23のハッチング部分の表面)に脱型コア53の角が擦れ、同表面に傷ができることがあった。従って、このアンダーカット部50が車体のホイールアーチの内側の一部を形成する場合には、車両の外部から傷が見えてしまう問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、成形品のアンダーカット部における成形品質を向上することができる成形金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部を形成し、この凹状部によってアンダーカット部に形成された凸状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、前記交差方向におけるバンパーの剛性の差等の要因により、脱型コアの移動時に、可動型に対してバンパーを同交差方向に移動させるような力がバンパーに生じても、脱型コアが移動する間、凹状部と凸状部との係合により交差方向におけるバンパーの移動が規制される。この結果、アンダーカット部と脱型コアとの摺接が防止されるため、摺接に起因するアンダーカット部の傷が防止される。
【0010】
請求項2の発明は、前記凹状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる溝状に形成され、前記凸状部を畝状に形成することを特徴とする。
請求項2の発明によれば、アンダーカット部の表面に畝状の凸状部が形成されるだけであるため、アンダーカット部さらにはバンパーの重量が不要に大きくなることが防止される。
【0011】
請求項3の発明は、アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に高くなる凸状部を形成し、この凸状部によってアンダーカット部に形成された凹状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果が得られる。
請求項4の発明は、前記凸状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる畝状に形成され、前記凹状部を溝状に形成することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、アンダーカット部の表面に溝状の凹状部が形成されるだけであるため、アンダーカット部の剛性低下が防止される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、成形品のアンダーカット部における成形品質を向上することができる成形金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態のバンパー用の成形金型の一部を示す断面図。
【図2】バンパー用の成形金型の一部を示す断面図。
【図3】バンパーを示す斜視図。
【図4】図3におけるS部拡大図。
【図5】アンダーカット部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図6】図5におけるa−a線断面図。
【図7】凸状部を示すアンダーカット部の断面図。
【図8】図7におけるb−b線断面図。
【図9】凸状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図10】凸状部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図11】図10におけるc−c線断面図。
【図12】凸状部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図13】図12におけるd−d線断面図。
【図14】他の実施形態の凸状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図15】他の実施形態の凸状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図16】他の実施形態の凸状部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図17】図16におけるe−e線断面図。
【図18】凸状部を示すアンダーカット部の断面図。
【図19】図18におけるf−f線断面図。
【図20】凹状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図21】(a),(b)は、従来におけるアンダーカット部の成形状態を示す成形用金型の一部断面図。
【図22】バンパーのアンダーカット部を示す斜視図。
【図23】離型時のアンダーカット部の動きを示す製品の背面から見た図22のR部分の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明を具体化した一実施形態を図1〜図13を参照して説明する。
図1に一部を示す成形金型10は、合成樹脂製の車両バンパーの成形用であって、アンダーカット部20を有するバンパー21を成形する可動型11と、この可動型11に対しその離型方向(Z方向)に対する直交方向(X方向)に移動される脱型コア12とを備えている。この脱型コア12は、図2に示すように、可動型11に対してY方向に移動されるときにアンダーカット部20に係合してバンパー21を弾性変形させ、バンパー21が可動型11から取り外されるようにする。なお、図1及び図2には、成形金型10のうち、アンダーカット部20を含むバンパー21の一部に対応する部分のみを示すが、図示しない残りの部分の構成は、背景技術で説明した成形金型と同様の構成である。
【0017】
図3に示すように、バンパー21は、車両のフロントグリルの下部と、左右フェンダの前部を形成する構成であり、その上側縁部は、フロントグリルの下側縁部への突き合わせ部21aとされ、下側縁部は、車体下方に対面するフランジ部21bとされている。バンパー21の左右両側には、ホイールアーチの前部を形成するアンダーカット部20が形成されている。上記成形金型10の一部は、図4に矢印Tで示すように、このバンパー21のアンダーカット部20を含む部分に対応する部分である。
【0018】
図5及び図6に示すように、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11aには、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対して傾斜する抜き勾配が設けられている。このアンダーカット部20の成形面11a上には、脱型コア12の移動方向に沿って延びる溝状の凹状部13が形成されている。この凹状部13は、脱型コア12の移動方向に向かって、抜き勾配の分だけ深さが直線的に浅くなるように形成されている。さらに、凹状部13の底面13aは、脱型コア12の移動方向と平行な直線状とされている。また、図6に示すように、溝状の凹状部13の両側面13bは、脱型コア12の移動方向(Y方向)に平行に延びるように形成されている。
【0019】
この凹状部13は、図7、図8及び図9に示すように、アンダーカット部20の表面上に、バンパー21の側部内面21cに向かって次第に低くなる畝状の凸状部14を形成する。そして、凹状部13は、脱型コア12がY方向において移動されるときに、X方向における凸状部14との係合により、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対する直交方向(X方向)でのアンダーカット部20の移動を規制するように構成されている。なお、凹状部13の底面13aは、必ずしも脱型コア12の移動方向と平行な直線状でなくてもよく、成形面11aの傾斜方向に傾斜していてもよい。すなわち、凹状部13は、脱型コア12のY方向への移動を許容し、かつ、この移動時において、X方向で凸状部14と係合する形状であればよい。
【0020】
さて、上記のように構成された成形金型10により形成したバンパー21を離型するときのその作用について説明する。
図1に示すように、成形金型10によりバンパー21が成形されると、そのアンダーカット部20の表面には、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上の凹状部13により、図9、図10及び図11に示すような畝状の凸状部14が形成される。この凸状部14は、バンパー21の側部内面21cに向かって次第に低くなるように形成される。なお、この実施形態では、図9に示すように、可動型11に設けられた2つの凹状部13により2つの凸状部14が形成される。なお、凸状部14の数は限定するものではない。
【0021】
この状態から、脱型コア12が可動型11の離型方向(Z方向)に対する直交方向(Y方向)へ移動されると、アンダーカット部20は、脱型コア12によってY方向へ付勢され、図12に示すように、バンパー21の弾性変形によって同Y方向へ移動される。
【0022】
この脱型コア12が移動する間においては、図12及び図13に示すように、可動型11の凹状部13とバンパー21の凸状部14とは、両側面同士が摺接する状態となっており、このことにより、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対する直交方向(X方向)での可動型11に対するバンパー21の相対変位が規制される。この結果、バンパー21の突き合わせ部21a側とフランジ部21b側とで剛性の大きさに差があっても、離型時における脱型コア12の移動に伴ってバンパー21がその直交方向に移動することはない。
【0023】
そして、図2及び図5に示すように、脱型コア12によりY方向へ移動されたアンダーカット部20が、可動型11に対する干渉範囲から外れると、可動型11が離型方向(Z方向)へ移動可能となる。この状態で可動型11が離型方向に移動され、バンパー21が可動型11から外される。
【0024】
以上詳述したこの実施形態は、以下の特徴を有する。
(1) 可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上には、脱型コア12の移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部13を形成し、この凹状部13によってアンダーカット部20に形成された凸状部14との係合により、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対する直交方向(X方向)でのバンパー21の移動を規制するように構成した。従って、前記直交方向(X方向)におけるバンパー21の剛性の差等の要因により、脱型コア12の移動時に、可動型11に対してバンパー21を同直交方向に移動させるような力がバンパー21に生じても、脱型コア12が移動する間、凸状部14と凹状部13との係合により脱型コア12の移動方向と直交する方向におけるバンパー21の移動が規制される。この結果、アンダーカット部20と脱型コア12との前記直交する方向での摺接が防止されるため、摺接に起因するアンダーカット部20の傷を防止して成形品質を向上できる。
【0025】
これに対し、前記特許文献2に開示されたバンパーの端末部構造は、アンダーカット部である端末部の剛性を向上させるために、端末部の裏面上に側部内面まで至る複数条のリブを設けた構成を備えている。一方、本発明の凸状部14は、特許文献2のリブとは異なり、図7に示すように、バンパー21の側部内面21cまで至るものではない。すなわち、凸状部14は、アンダーカット部20の剛性を向上させるものではなく、アンダーカット部20の剛性は従来と同等である。
【0026】
(2) 凹状部13は、脱型コア12の移動方向に延びる溝状に形成され、凸状部14を畝状に形成する。従って、アンダーカット部20の表面に畝状の凸状部14が形成されるだけであるため、凸状部14を設けることによりアンダーカット部20さらにはバンパー21の重量が不要に大きくなることを防止することができる。
【0027】
(3) 成形用金型は、車両の合成樹脂製バンパー21の成形用である。従って、バンパー21のアンダーカット部20がホイールアーチの一部を形成する場合に、外部から見えるホイールアーチに離型時の傷ができないようにすることができる。
【0028】
なお、この発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・ 前記実施形態では、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面上に設けた溝状の凹状部13により、アンダーカット部20の表面に畝状の凸状部14を形成した。これを、図14に示すように、互いに平行な外側面14aを有し、脱型コア12の移動方向に向かって次第に低くなる矩形状の凸状部14をアンダーカット部20の表面に形成する矩形状の凹状部を可動型11に形成しても良い。
【0029】
・ 前記実施形態では、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面上に設けた溝状の凹状部13により、アンダーカット部20の表面に畝状の凸状部14を形成した。これを、図15に示すように、平面視三角形状の一対の凸状部分よりなり、それぞれの外側面14aが互いに平行であって脱型コア12の移動方向と平行であるとともに、脱型コア12の移動方向に向かって次第に低くなる凸状部14をアンダーカット部20の表面に形成する凹状部を可動型11に形成してもよい。
【0030】
・ 可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上には、図16及び図17に示すように、脱型コア12の移動方向(Y方向)に延びるとともに同移動方向に向かって次第に高くなる畝状の凸状部30を形成する。この凸状部30により、アンダーカット部20の表面上には、図18、図19及び図20に示すように、脱型コア12の移動方向に向かって次第に深くなる溝状の凹状部31を形成する。そして、離型時に脱型コア12がY方向に移動するときに、凸状部30と凹状部31とのX方向での係合により、脱型コア12の移動方向に対する直交方向でのアンダーカット部20の移動が規制される構成としてもよい。このような構成によっても、離型時におけるアンダーカット部20と脱型コア12との摺接をなくし、摺接によるアンダーカット部20の傷を防止できる。加えて、アンダーカット部20の表面に溝状の凹状部31を形成するだけであるため、凹状部31を設けることによるアンダーカット部20の剛性低下を防止できる。
【0031】
以下、前記各実施形態から把握され、請求項として挙げられていない技術的思想を記載する。
・請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形金型において、車両の合成樹脂製バンパーの成形用であることを特徴とする成形金型。このような構成では、アンダーカット部がホイールアーチの一部を形成する場合に、外部から見えるホイールアーチに傷ができないようにすることができる。
【符号の説明】
【0032】
10…成形金型、11…可動型、11a…成形面、12…脱型コア、13…凹状部、14…凸状部、20…アンダーカット部、21…成形品としてのバンパー、30…凸状部、31…凹状部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製の成形品用の成形金型に係り、詳しくは脱型コアを備えた成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1に開示される成形金型がある。この成形金型は、図21(a),(b)に示すように、アンダーカット部50を有するバンパー51を成形する可動型52と、この可動型52に対して移動される脱型コア53とよりなる。そして、成形されたバンパー51は、脱型コア53が移動されるときにアンダーカット部50に係合してバンパー51を弾性変形させることにより可動型52から取り外される。
【0003】
なお、特許文献2には、アンダーカット部を有するバンパーにおいて、その端末部の裏面にリブを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−71634号公報
【特許文献2】特開平7−52733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなバンパー51は、図22にその片側を示すように、その下縁部側が上縁部側よりも高い剛性を有するような構成となっている。これは、バンパーの上側縁部には、左右フェンダやフロントグリルと接続するための突き合わせ部51aが形成されるだけであるが、下側縁部には、車体下方に直接向かうためのフランジ部51bが形成されるためである。
【0006】
このため、上記特許文献1のような成形金型によりバンパー51を成形する場合、図23に示すように、矢印P方向に移動する脱型コア53によってアンダーカット部50が外側(図23において右側)に押し広げられていくとき、バンパー51が、剛性の高いフランジ部51bの方に向かい脱型コア53に対して矢印Qで示すように相対移動することがあった。すなわち、バンパー51が、自身の弾性復帰力により、脱型コア53の移動方向に対する直交方向に移動することがあった。このとき、アンダーカット部50の表面(図23のハッチング部分の表面)に脱型コア53の角が擦れ、同表面に傷ができることがあった。従って、このアンダーカット部50が車体のホイールアーチの内側の一部を形成する場合には、車両の外部から傷が見えてしまう問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、成形品のアンダーカット部における成形品質を向上することができる成形金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部を形成し、この凹状部によってアンダーカット部に形成された凸状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、前記交差方向におけるバンパーの剛性の差等の要因により、脱型コアの移動時に、可動型に対してバンパーを同交差方向に移動させるような力がバンパーに生じても、脱型コアが移動する間、凹状部と凸状部との係合により交差方向におけるバンパーの移動が規制される。この結果、アンダーカット部と脱型コアとの摺接が防止されるため、摺接に起因するアンダーカット部の傷が防止される。
【0010】
請求項2の発明は、前記凹状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる溝状に形成され、前記凸状部を畝状に形成することを特徴とする。
請求項2の発明によれば、アンダーカット部の表面に畝状の凸状部が形成されるだけであるため、アンダーカット部さらにはバンパーの重量が不要に大きくなることが防止される。
【0011】
請求項3の発明は、アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に高くなる凸状部を形成し、この凸状部によってアンダーカット部に形成された凹状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果が得られる。
請求項4の発明は、前記凸状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる畝状に形成され、前記凹状部を溝状に形成することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、アンダーカット部の表面に溝状の凹状部が形成されるだけであるため、アンダーカット部の剛性低下が防止される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、成形品のアンダーカット部における成形品質を向上することができる成形金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態のバンパー用の成形金型の一部を示す断面図。
【図2】バンパー用の成形金型の一部を示す断面図。
【図3】バンパーを示す斜視図。
【図4】図3におけるS部拡大図。
【図5】アンダーカット部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図6】図5におけるa−a線断面図。
【図7】凸状部を示すアンダーカット部の断面図。
【図8】図7におけるb−b線断面図。
【図9】凸状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図10】凸状部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図11】図10におけるc−c線断面図。
【図12】凸状部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図13】図12におけるd−d線断面図。
【図14】他の実施形態の凸状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図15】他の実施形態の凸状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図16】他の実施形態の凸状部の成形状態を示す成形用金型の断面図。
【図17】図16におけるe−e線断面図。
【図18】凸状部を示すアンダーカット部の断面図。
【図19】図18におけるf−f線断面図。
【図20】凹状部を示すアンダーカット部の斜視図。
【図21】(a),(b)は、従来におけるアンダーカット部の成形状態を示す成形用金型の一部断面図。
【図22】バンパーのアンダーカット部を示す斜視図。
【図23】離型時のアンダーカット部の動きを示す製品の背面から見た図22のR部分の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明を具体化した一実施形態を図1〜図13を参照して説明する。
図1に一部を示す成形金型10は、合成樹脂製の車両バンパーの成形用であって、アンダーカット部20を有するバンパー21を成形する可動型11と、この可動型11に対しその離型方向(Z方向)に対する直交方向(X方向)に移動される脱型コア12とを備えている。この脱型コア12は、図2に示すように、可動型11に対してY方向に移動されるときにアンダーカット部20に係合してバンパー21を弾性変形させ、バンパー21が可動型11から取り外されるようにする。なお、図1及び図2には、成形金型10のうち、アンダーカット部20を含むバンパー21の一部に対応する部分のみを示すが、図示しない残りの部分の構成は、背景技術で説明した成形金型と同様の構成である。
【0017】
図3に示すように、バンパー21は、車両のフロントグリルの下部と、左右フェンダの前部を形成する構成であり、その上側縁部は、フロントグリルの下側縁部への突き合わせ部21aとされ、下側縁部は、車体下方に対面するフランジ部21bとされている。バンパー21の左右両側には、ホイールアーチの前部を形成するアンダーカット部20が形成されている。上記成形金型10の一部は、図4に矢印Tで示すように、このバンパー21のアンダーカット部20を含む部分に対応する部分である。
【0018】
図5及び図6に示すように、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11aには、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対して傾斜する抜き勾配が設けられている。このアンダーカット部20の成形面11a上には、脱型コア12の移動方向に沿って延びる溝状の凹状部13が形成されている。この凹状部13は、脱型コア12の移動方向に向かって、抜き勾配の分だけ深さが直線的に浅くなるように形成されている。さらに、凹状部13の底面13aは、脱型コア12の移動方向と平行な直線状とされている。また、図6に示すように、溝状の凹状部13の両側面13bは、脱型コア12の移動方向(Y方向)に平行に延びるように形成されている。
【0019】
この凹状部13は、図7、図8及び図9に示すように、アンダーカット部20の表面上に、バンパー21の側部内面21cに向かって次第に低くなる畝状の凸状部14を形成する。そして、凹状部13は、脱型コア12がY方向において移動されるときに、X方向における凸状部14との係合により、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対する直交方向(X方向)でのアンダーカット部20の移動を規制するように構成されている。なお、凹状部13の底面13aは、必ずしも脱型コア12の移動方向と平行な直線状でなくてもよく、成形面11aの傾斜方向に傾斜していてもよい。すなわち、凹状部13は、脱型コア12のY方向への移動を許容し、かつ、この移動時において、X方向で凸状部14と係合する形状であればよい。
【0020】
さて、上記のように構成された成形金型10により形成したバンパー21を離型するときのその作用について説明する。
図1に示すように、成形金型10によりバンパー21が成形されると、そのアンダーカット部20の表面には、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上の凹状部13により、図9、図10及び図11に示すような畝状の凸状部14が形成される。この凸状部14は、バンパー21の側部内面21cに向かって次第に低くなるように形成される。なお、この実施形態では、図9に示すように、可動型11に設けられた2つの凹状部13により2つの凸状部14が形成される。なお、凸状部14の数は限定するものではない。
【0021】
この状態から、脱型コア12が可動型11の離型方向(Z方向)に対する直交方向(Y方向)へ移動されると、アンダーカット部20は、脱型コア12によってY方向へ付勢され、図12に示すように、バンパー21の弾性変形によって同Y方向へ移動される。
【0022】
この脱型コア12が移動する間においては、図12及び図13に示すように、可動型11の凹状部13とバンパー21の凸状部14とは、両側面同士が摺接する状態となっており、このことにより、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対する直交方向(X方向)での可動型11に対するバンパー21の相対変位が規制される。この結果、バンパー21の突き合わせ部21a側とフランジ部21b側とで剛性の大きさに差があっても、離型時における脱型コア12の移動に伴ってバンパー21がその直交方向に移動することはない。
【0023】
そして、図2及び図5に示すように、脱型コア12によりY方向へ移動されたアンダーカット部20が、可動型11に対する干渉範囲から外れると、可動型11が離型方向(Z方向)へ移動可能となる。この状態で可動型11が離型方向に移動され、バンパー21が可動型11から外される。
【0024】
以上詳述したこの実施形態は、以下の特徴を有する。
(1) 可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上には、脱型コア12の移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部13を形成し、この凹状部13によってアンダーカット部20に形成された凸状部14との係合により、脱型コア12の移動方向(Y方向)に対する直交方向(X方向)でのバンパー21の移動を規制するように構成した。従って、前記直交方向(X方向)におけるバンパー21の剛性の差等の要因により、脱型コア12の移動時に、可動型11に対してバンパー21を同直交方向に移動させるような力がバンパー21に生じても、脱型コア12が移動する間、凸状部14と凹状部13との係合により脱型コア12の移動方向と直交する方向におけるバンパー21の移動が規制される。この結果、アンダーカット部20と脱型コア12との前記直交する方向での摺接が防止されるため、摺接に起因するアンダーカット部20の傷を防止して成形品質を向上できる。
【0025】
これに対し、前記特許文献2に開示されたバンパーの端末部構造は、アンダーカット部である端末部の剛性を向上させるために、端末部の裏面上に側部内面まで至る複数条のリブを設けた構成を備えている。一方、本発明の凸状部14は、特許文献2のリブとは異なり、図7に示すように、バンパー21の側部内面21cまで至るものではない。すなわち、凸状部14は、アンダーカット部20の剛性を向上させるものではなく、アンダーカット部20の剛性は従来と同等である。
【0026】
(2) 凹状部13は、脱型コア12の移動方向に延びる溝状に形成され、凸状部14を畝状に形成する。従って、アンダーカット部20の表面に畝状の凸状部14が形成されるだけであるため、凸状部14を設けることによりアンダーカット部20さらにはバンパー21の重量が不要に大きくなることを防止することができる。
【0027】
(3) 成形用金型は、車両の合成樹脂製バンパー21の成形用である。従って、バンパー21のアンダーカット部20がホイールアーチの一部を形成する場合に、外部から見えるホイールアーチに離型時の傷ができないようにすることができる。
【0028】
なお、この発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・ 前記実施形態では、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面上に設けた溝状の凹状部13により、アンダーカット部20の表面に畝状の凸状部14を形成した。これを、図14に示すように、互いに平行な外側面14aを有し、脱型コア12の移動方向に向かって次第に低くなる矩形状の凸状部14をアンダーカット部20の表面に形成する矩形状の凹状部を可動型11に形成しても良い。
【0029】
・ 前記実施形態では、可動型11におけるアンダーカット部20の成形面上に設けた溝状の凹状部13により、アンダーカット部20の表面に畝状の凸状部14を形成した。これを、図15に示すように、平面視三角形状の一対の凸状部分よりなり、それぞれの外側面14aが互いに平行であって脱型コア12の移動方向と平行であるとともに、脱型コア12の移動方向に向かって次第に低くなる凸状部14をアンダーカット部20の表面に形成する凹状部を可動型11に形成してもよい。
【0030】
・ 可動型11におけるアンダーカット部20の成形面11a上には、図16及び図17に示すように、脱型コア12の移動方向(Y方向)に延びるとともに同移動方向に向かって次第に高くなる畝状の凸状部30を形成する。この凸状部30により、アンダーカット部20の表面上には、図18、図19及び図20に示すように、脱型コア12の移動方向に向かって次第に深くなる溝状の凹状部31を形成する。そして、離型時に脱型コア12がY方向に移動するときに、凸状部30と凹状部31とのX方向での係合により、脱型コア12の移動方向に対する直交方向でのアンダーカット部20の移動が規制される構成としてもよい。このような構成によっても、離型時におけるアンダーカット部20と脱型コア12との摺接をなくし、摺接によるアンダーカット部20の傷を防止できる。加えて、アンダーカット部20の表面に溝状の凹状部31を形成するだけであるため、凹状部31を設けることによるアンダーカット部20の剛性低下を防止できる。
【0031】
以下、前記各実施形態から把握され、請求項として挙げられていない技術的思想を記載する。
・請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形金型において、車両の合成樹脂製バンパーの成形用であることを特徴とする成形金型。このような構成では、アンダーカット部がホイールアーチの一部を形成する場合に、外部から見えるホイールアーチに傷ができないようにすることができる。
【符号の説明】
【0032】
10…成形金型、11…可動型、11a…成形面、12…脱型コア、13…凹状部、14…凸状部、20…アンダーカット部、21…成形品としてのバンパー、30…凸状部、31…凹状部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、
前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部を形成し、この凹状部によってアンダーカット部に形成された凸状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする成形金型。
【請求項2】
前記凹状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる溝状に形成され、前記凸状部を畝状に形成することを特徴とする請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、
前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に高くなる凸状部を形成し、この凸状部によってアンダーカット部に形成された凹状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする成形金型。
【請求項4】
前記凸状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる畝状に形成され、前記凹状部を溝状に形成することを特徴とする請求項3に記載の成形金型。
【請求項1】
アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、
前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に浅くなる凹状部を形成し、この凹状部によってアンダーカット部に形成された凸状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする成形金型。
【請求項2】
前記凹状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる溝状に形成され、前記凸状部を畝状に形成することを特徴とする請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
アンダーカット部を有する成形品を成形する可動型と、この可動型に対して移動するときに同アンダーカット部に係合して同成形品を弾性変形させることにより同可動型から取り外す脱型コアとを備えた成形金型において、
前記可動型における前記アンダーカット部の成形面上には、前記脱型コアの移動方向に向かって次第に高くなる凸状部を形成し、この凸状部によってアンダーカット部に形成された凹状部との係合により、同脱型コアの移動方向に対する交差方向での前記成形品の移動を規制することを特徴とする成形金型。
【請求項4】
前記凸状部は、前記脱型コアの移動方向に延びる畝状に形成され、前記凹状部を溝状に形成することを特徴とする請求項3に記載の成形金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−18217(P2013−18217A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154136(P2011−154136)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
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