説明

成膜体の製造方法及び成膜装置

【課題】 第1微粒子と第2微粒子を用いてエアロゾルデポジション法により被膜を形成するにあたり、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質の比率(重量比)を適切に制御した成膜体の製造方法を提供する。
【解決手段】 基体20と、エアロゾルデポジション法により基体の成膜面21に形成された被膜10と、を備える成膜体1の製造方法は、少なくとも第1微粒子D1を第1搬送ガスG1中に分散させた第1エアロゾルAS1と、第2微粒子D2を第2搬送ガスG2中に分散させた第2エアロゾルAS2とを、基体の成膜面に向けて同時に噴射して、被膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体とこの成膜面に形成された被膜とを備える成膜体の製造方法、及び、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数μm以上の厚膜の膜を基体上に成膜する手法として、エアロゾルデポジション法が知られている。エアロゾルデポジション法とは、原料となる微粒子を、例えば、ガスの供給や振動、超音波振動などによって気中に巻き上げて、搬送ガス中に分散(混合)しエアロゾル化して、その微粒子を加速させ、基体に衝突させて成膜する手法である。
特許文献1では、微粒子の粉内に噴出口を埋設した巻き上げガスを噴出させて、微粒子をエアロゾル化して、整流ガスにその微粒子を載せて基板(基体)に衝突させ成膜する膜形成方法が挙げられている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−169606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、比重などの性質が異なる第1微粒子と第2微粒子とを混合した混合粉末を1つの容器に収容し、エアロゾル化して基体に衝突させると、形成される被膜における第1微粒子と第2微粒子の比率(重量比)が、時間の経過と共に変化する(偏る)ことがある。これは、第1微粒子と第2微粒子とでは、気中への巻き上げられ易さが異なるので、巻き上げられ易い方の微粒子が相対的に早く減少し、容器内の混合粉末における第1微粒子と第2微粒子との比率(重量比)が、当初に比して、次第に偏るためである。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、第1微粒子と第2微粒子を用いてエアロゾルデポジション法により被膜を形成するにあたり、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質の比率(重量比)を一定にあるいは所望のパターンに変化させるなど、適切に制御した成膜体の製造方法、及び、このような成膜体を製造可能な成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、その解決手段は、基体と、エアロゾルデポジション法により、上記基体の成膜面に形成された被膜と、を備える成膜体の製造方法であって、少なくとも、第1微粒子を第1搬送ガス中に分散させた第1エアロゾルと、第2微粒子を第2搬送ガス中に分散させた第2エアロゾルとを含む複数種のエアロゾルを、上記基体の上記成膜面に向けて同時に噴射して、上記被膜を形成する成膜体の製造方法である。
【0007】
本発明の成膜体の製造方法では、このようなエアロゾル化の特性の異なる第1微粒子と第2微粒子を、別々の第1エアロゾル及び第2エアロゾルとして、基体の成膜面に向けて同時に噴射させる。
このため、第1微粒子と第2微粒子とを混合しておき、これをエアロゾル化する場合と異なり、時間が経過しても、噴射させる第1微粒子と第2微粒子との比率(重量比)が偏らない。従って、時間が経過しても、形成した被膜において、第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を一定に保ち、所定の比率を有する被膜(複合被膜)を備えた成膜体を安定して得ることができる。
また、これとは逆に、第1エアロゾル及び第2エアロゾルとして搬送される第1微粒子と第2微粒子の供給比率を時間とともに変化させることで、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を、容易に所望のパターンに変化させることができ、比率が場所によって変化した被膜を有する成膜体を形成することもできる。
かくして本発明の成膜体の製造方法により、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を適切に制御することができる。
【0008】
なお、第1微粒子及び第2微粒子としては、例えば、金属の微粉末、セラミックス(金属酸化物)の微粉末、カーボンや有機物の微粉末などが挙げられる。
【0009】
また第1搬送ガスと第2搬送ガスとは、同じ種類のガスでも良いし、互いに異なる種類のガスを用いても良い。また、第1搬送ガスと第2搬送ガスとしては、成膜面に形成させる被膜の特性や第1微粒子,第2微粒子の組成等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば、ヘリウムガス、乾燥空気、窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガスなどが挙げられる。
また、第1エアロゾルと第2エアロゾルとは、共通のノズルから基体に向けて同時に噴射しても良いし、別々のノズルから、同じ基体に向けて同時に噴射しても良い。
【0010】
さらに、上述の成膜体の製造方法であって、前記第1微粒子及び前記第2微粒子は、これらを混合した混合粉末を気中に巻き上げて、搬送ガス中に上記混合粉末が分散された単一のエアロゾルを構成した場合に、このエアロゾルにおける上記第1微粒子と上記第2微粒子との比率が、上記混合粉末における上記第1微粒子と上記第2微粒子との比率とは異なる値になる特性を有する成膜体の製造方法とすると良い。
【0011】
本発明の成膜体の製造方法では、上述のような特性を有する第1微粒子及び第2微粒子を用いる。しかし、このような第1微粒子及び第2微粒子を用いながらも、第1エアロゾルと第2エアロゾルを用いるので、形成した被膜において、第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を一定に保ち、所定の比率を有する被膜(複合被膜)を備えた成膜体を安定して得ることができる。
【0012】
なお、第1微粒子及び第2微粒子としては、組成や製法などが異なることにより、見かけ比重、粒子形状などが異なるために、エアロゾル化したときの、気中への巻き上げられ易さ(エアロゾル化の特性)が互いに異なる微粒子を用いることができる。
【0013】
さらに、上述のいずれかの成膜体の製造方法であって、前記第1エアロゾルと前記第2エアロゾルとを、共通のノズルから前記基体の前記成膜面に向けて同時に噴射する成膜体の製造方法とすると良い。
【0014】
2つのエアロゾルを、それぞれ別体のノズルから同じ基体に向けて同時に噴射すると、ノズル同士の機械的な位置の違いから、2つのエアロゾルの基体へのあたり方に違いが生じ易い。特に、マスクを使用する場合には、ノズルの位置の違いが、基体の成膜面上での2つのエアロゾルが当たる位置及び角度のズレを生じさせ易い。
これに対し、本発明の成膜体の製造方法では、2つのエアロゾルを共通のノズルから同時に噴射するので、常に、2つのエアロゾルが基体の成膜面の同じ位置に当たる。従って、2つの微粒子を起源としながら、より均一な組成の被膜(複合被膜)を有する成膜体を形成できる。
【0015】
なお共通のノズルを用いて基体に向けて同時に噴射するには、第1エアロゾルと第2エアロゾルとが、共通のノズル内で混合されるようにしても良いし、共通のノズルよりも上流側で混合されるように配管しても良い。
【0016】
さらに、上述のいずれかの成膜体の製造方法であって、前記第1エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第1微粒子の量と、前記第2エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第2微粒子の量と、を独立して調整して、上記第1エアロゾル及び第2エアロゾルを噴射する成膜体の製造方法とすると良い。
【0017】
本発明の成膜体の製造方法では、第1微粒子の単位時間当たりの量(搬送量)と、第2微粒子の単位時間当たりの量(搬送量)とを独立して調整するので、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を容易に調整することができる。
【0018】
さらに、他の解決手段は、基体の成膜面上に、エアロゾルデポジション法により被膜形成する成膜装置であって、第1微粒子を第1搬送ガス中に分散させた第1エアロゾルを供給する第1供給系と、第2微粒子を第2搬送ガス中に分散させた第2エアロゾルを供給する第2供給系と、上記第1供給系から供給された上記第1エアロゾルと上記第2供給系から供給された上記第2エアロゾルとを、上記基体の上記成膜面に向けて同時に噴射する噴射ノズルと、を備える成膜装置である。
【0019】
第1微粒子と第2微粒子として、これらを混合した混合粉末を搬送ガス中に分散させてエアロゾルとしたとき、このエアロゾルにおける第1微粒子と第2微粒子との比率が、混合物における第1微粒子と第2微粒子との比率とは異なる値となる微粒子同士を用いた場合を考える。この場合でも、本発明の成膜装置では、第1微粒子と第2微粒子を、別々の第1エアロゾル及び第2エアロゾルとして噴射ノズルに供給し、基体の上記成膜面に向けて同時に噴射させることができる。
従って、時間が経過しても、形成した被膜において、第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を一定に保ち、所定の比率を有する被膜(複合被膜)を備えた成膜体を安定して得ることができる。
また、これとは逆に、第1エアロゾル及び第2エアロゾルとして搬送される第1微粒子と第2微粒子の供給比率を時間とともに変化させることで、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を、容易に所望のパターンに変化させることができ、比率が場所によって変化した被膜を有する成膜体を容易に形成することもできる。
このように本発明の成膜装置では、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を適切に制御することができる。
【0020】
さらに、上述の成膜装置であって、前記噴射ノズルは、前記第1エアロゾルと前記第2エアロゾルとを混合した混合エアロゾルを噴射する、共通ノズルである成膜装置とすると良い。
【0021】
本発明の成膜装置では、混合エアロゾルを共通ノズルから噴射するので、常に、2つのエアロゾルが基体の成膜面の同じ位置に当たる。従って、2つの微粒子を起源としながら、2つのエアロゾルをそれぞれ別のノズルから同時に噴射するよりも均一な組成の被膜(複合被膜)を備える成膜体を形成できる。
【0022】
なお混合エアロゾルを作る位置としては、第1エアロゾルと第2エアロゾルとが、共通ノズル内で混合されるようにしても良いし、共通ノズルよりも上流側で混合されるように配管しても良い。
【0023】
さらに、上述のいずれかの成膜装置であって、前記第1供給系は、前記第1エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第1微粒子の量を調整する第1調整手段を有し、前記第2供給系は、前記第2エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第2微粒子の量を調整する第2調整手段を有する成膜装置とすると良い。
【0024】
本発明の成膜装置では、第1供給系が第1調整手段を、第2供給系が第2調整手段をそれぞれ有する。このため、第1エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される第1微粒子の量と、第2エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される第2微粒子の量とを、系ごとに独立に調整できるので、被膜における第1微粒子を起源とする物質と第2微粒子を起源とする物質との比率を容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態にかかる成膜体1について説明する。図1に成膜体1の斜視図を、図2にその成膜体1の断面図(図1のA−A図)をそれぞれ示す。
本実施形態にかかる成膜体1は、アルミニウムからなる矩形板状の第1金属板20と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)及び複合燐酸塩固体電解質ガラス(本実施形態ではLi1+XAlXTi2-X(PO43)が混在した第1被膜10とを備える(図1,2参照)。この成膜体1では、第1金属板20のうち、第1方向DA(図1,2中、上方)に向く第1主面21上に、第1被膜10が形成されている。このうち第1被膜10は、後述する成膜装置40を用いて行うエアロゾルデポジション法により成膜されてなる。
【0026】
なお、第1被膜10をなすコバルト酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができる。また、複合燐酸塩固体電解質ガラスは、リチウムイオン二次電池の電解質として用いることができる。
つまり、この成膜体1は、例えば、図3に示すような、固体電解質リチウムイオン二次電池に使用可能な発電要素BFの一部をなす。この発電要素BFは、第1方向DAに沿って、順に成膜体1の第1金属板20、第1被膜10、複合燐酸塩固体電解質ガラスからなる固体電解質膜XC、Li4Ti512及び複合燐酸塩固体電解質ガラスからなる第2被膜XB、及び、銅からなる第2金属板XAが積層されてなる。この発電要素BFは、図示しない挟持部材により第1方向DAの両側から所定の圧力で挟んだ状態とすると、第1金属板20に接続した正極端子線W1と第2金属板XAに接続した負極端子線W2とを通じて、充放電を行うことができる。
【0027】
次に、本実施形態にかかる成膜体1の成膜装置及び製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図4に、エアロゾルデポジション法によって、第1金属板20に第1被膜10を成膜する成膜装置40の概略図を示す。この成膜装置40は、成膜室41、第1エアロゾル発生器44L、第2エアロゾル発生器44M、第1ガスボンベ45L、第2ガスボンベ45M、第1ガス管47L、第2ガス管47M、第1エアロゾル管48L及び第2エアロゾル管48Mとを有する。
【0028】
なお、このうちの、第1エアロゾル発生器44L、第1ガスボンベ45L、第1ガス管47L及び第1エアロゾル管48Lによって発生させた第1エアロゾルAS1を成膜室41に供給する第1供給系SLが構成されている。また、このうちの、第2エアロゾル発生器44M、第2ガスボンベ45M、第2ガス導管47M及び第1エアロゾル導管48Mによって発生させた第2エアロゾルAS2を成膜室41に供給する第2供給系SMが構成されている。
【0029】
成膜装置40の第1ガスボンベ45Lは、その内部に高圧のアルゴンガスの第1搬送ガスG1が充填されている。この第1ガスボンベ45Lは、自身に接続されている金属製の第1ガス管47Lを通じて、第1エアロゾル発生器44Lに向けて第1搬送ガスG1を送出する。なお、第1ガス管47Lの途中には、第1ガスボンベ45Lから送出させる第1搬送ガスG1の流量を調節可能な第1レギュレータ46Lが配置されている。従ってこの第1レギュレータ46Lによって、第1エアロゾルAS1の流量、従って、第1搬送ガスG1で単位時間当たりに搬送される第1微粒子D1の量(搬送量)を調整することができる。
【0030】
また、第1エアロゾル発生器44Lは、有底円筒形状の第1容器部LPと、この第1容器部LPの開口を閉塞する第1閉塞栓LQと、第1容器部LPの底(図4中、下方に位置)から所定の距離を離すように上げ底に配置されてなり、板面がメッシュ形状をなす第1内側底板LRとを有する。
このうち、第1閉塞栓LQには、上述の第1ガス管47L及び第1エアロゾル管48Lがそれぞれ貫通している。また、第1内側底板LRは、図4に示すように、第1ガス管47Lが貫通しており、また、第1閉塞栓LQに面する側に、コバルト酸リチウム(LiCoO2)の第1微粒子D1が保持されている。なお、この第1内側底板LRの板面を形成するメッシュ孔径は、第1微粒子D1の粒子径よりも小さい。そのため、この第1内側底板LRは、第1微粒子D1を通過させないが、ガス、即ち、第1搬送ガスG1を通過させることができる。
【0031】
また、第2ガスボンベ45Mは、第1ガスボンベ45Lと同様、その内部に高圧のアルゴンガスの第2搬送ガスG2が充填されている。この第2ガスボンベ45Mは、金属製の第2ガス管47Mを通じて、第2エアロゾル発生器44Mに向けて第2搬送ガスG2を流す。なお、第2ガス管47Mの途中にも、第1ガス管47Lと同様の第2レギュレータ46Mが配置されている。この第2レギュレータ46Mによって、第2エアロゾルAS2の流量、従って、第2搬送ガスG2の単位時間当たりに搬送される第2微粒子D2の量(搬送量)を、第1レギュレータ46Lとは独立して調整することができる。
【0032】
また、第2エアロゾル発生器44Mは、第1エアロゾル発生器44Lと同様、有底円筒形状の第2容器部MPと、この第2容器部MPの開口を閉塞する第2閉塞栓MQと、第2容器部MPの底(図4中、下方に位置)から所定の距離を離すように上げ底に配置されてなり、板面がメッシュ形状をなす第2内側底板MRとを有する。
このうち、第2閉塞栓MQには、第1閉塞栓LQと同様、上述の第2ガス管47M及び第2エアロゾル管48Mがそれぞれ貫通している。また、第2内側底板MRは、図4に示すように、第2ガス管47Mが貫通しており、また、第2閉塞栓MQに面する側に、複合燐酸塩固体電解質ガラス(Li1+XAlXTi2-X(PO43)の第2微粒子D2が保持されている。なお、この第2内側底板MRの板面を形成するメッシュ孔径は、第2微粒子D2の粒子径よりも小さい。そのため、この第2内側底板MRは、第2微粒子D2を通過させないが、ガス、即ち、第2搬送ガスG2を通過させることができる。
【0033】
また成膜室41内は、第1主面21を露出させながら第1金属板20を保持する金属板保持部43と、露出した第1金属板20の第1主面21に向けて噴射可能な1口の噴射ノズル42とを有する。この成膜室41は、その室内に金属板保持部43及び噴射ノズル42を配置している。また、図示しない真空ポンプを用いて、室内を102Paにまで減圧することができる。
このうち、金属板保持部43は、第1金属板20を保持しつつ、図4中、掃引方向DSの両側に繰り返し移動させて、第1金属板20に成膜する膜厚を調節する。
【0034】
また、噴射ノズル42は、円筒形状の本体部42Jと、この本体部42Jより第1金属板20側に位置し、第1金属板20側ほど径小のテーパ形状であり、その先端からエアロゾルを噴射可能な噴射部42Hとを有する。また、本体部42Jより噴射部42Hとは逆側には、上述の第1エアロゾル管48L及び第2エアロゾル管48Mと接続している接続部42Kも有する。この噴射ノズル42は、接続部42Kを通じて導入された1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2とを本体部42Jの内部で混合する。これによりできた混合エアロゾルASは、先細りの噴射部42Hでさらに加速されて、第1金属板20に向けて噴射される(図4参照)。つまり、混合エアロゾルASをなす第1エアロゾルAS1及び第2エアロゾルAS2を、第1金属板20の第1主面21に向けて同時に、かつ、所定の比率で噴射することができる。
【0035】
ところで、上述した第1微粒子D1の比重と第2微粒子D2の比重とが異なるため、気中への巻き上げられ易さが互いに異なる。このため、これらを混合した混合粉末を同一のエアロゾル発生器内でエアロゾル化した場合、このエアロゾルにおける第1微粒子D1と第2微粒子D2との比率は、混合粉末における第1微粒子D1と第2微粒子D2との比率とは異なってしまう。
これに対し、本実施形態の成膜装置40では、上述したように、第1微粒子D1を第1エアロゾルAS1として、また、第2微粒子D2を第1エアロゾルAS1とは別の第2エアロゾルAS2として、噴射ノズル42にそれぞれ別の系で供給する。従って供給される第1微粒子D1と第2微粒子D2の単位時間当たりの供給量(搬送量)及びその比率は、第1レギュレータ46L及び第2レギュレータ46Mによって制御することができる。このため、混合エアロゾルAS内において、互いに比重の異なる第1微粒子D1及び第2微粒子D2の比率(重量比)が時間と共に偏ることを防止できる。従って、時間が経過しても、つまりどの成膜のタイミングでも、第1金属板20の第1主面21に形成した第1被膜10における、第1微粒子D1を起源とする物質と、第2微粒子D2を起源とする物質との比率を一定に保ち、所定の比率を有する第1被膜10を備えた成膜体1を安定して得ることができる。
【0036】
また、本実施形態の成膜装置40では、混合エアロゾルASを噴射ノズル40から噴射するので、常に、混合エアロゾルASをなす第1エアロゾルAS1及び第2エアロゾルAS2が第1金属板20の第1主面21の同じ位置に当たる。従って、第1,第2微粒子D1,D2を起源としながら、第1エアロゾルAS1や第2エアロゾルAS2をそれぞれ別のノズルから同時に噴射するよりも均一な組成の第1被膜10を有する成膜体1を形成できる。
【0037】
また、本実施形態の成膜装置40では、第1供給系SLが第1レギュレータ46Lを、第2供給系SMが第2レギュレータ46Mをそれぞれ有する。このため、第1エアロゾルAS1となって単位時間当たりに搬送される第1微粒子D1の量と、第2エアロゾルAS2となって単位時間当たりに搬送される第2微粒子D2の量とを、第1供給系SL及び第2供給系SMごとに独立して調整できる。従って、第1被膜10における第1微粒子D1を起源とする物質と第2微粒子D2を起源とする物質との比率を一定に保つなど、容易に調整することができる。
【0038】
次いで、前述の成膜装置40を用いた成膜体1の成膜工程について、図4を参照しつつ説明する。
まず、成膜室41の金属板保持部43に第1金属板20を保持させる。このとき、成膜させる第1金属板20の第1主面21を、噴射ノズル42に向けて配置する。その後、成膜室41を密閉し、図示しない真空ポンプを用いて室内を102Paにまで減圧する。
また、第1エアロゾル発生器44L内の第1内側底板LRに第1微粒子D1を、また、第2エアロゾル発生器44M内の第2内側底板MRに第2微粒子D2を、それぞれ投入する。投入後は、第1閉塞栓LQで第1容器部LPの開口を、また、第2閉塞栓MQで第2容器部MPの開口を、それぞれ塞ぐ。
【0039】
次に、第1ガス管47Lの途中に配置された第1レギュレータ46Lを調節して、第1ガスボンベ45Lから第1搬送ガスG1を所定流量流す。この第1搬送ガスG1は、第1ガス管47Lを通じて、第1エアロゾル発生器44L内に流入する。なお、第1エアロゾル発生器44Lでは、図4に示すように、第1内側底板LRと第1容器部LPの底との間に、第1ガス管47Lの先端口を配置している。これにより、この第1ガス管47Lの先端口から流入した第1搬送ガスG1は、出口である第1閉塞栓LQの第1エアロゾル管48Lに向けて移動すべく、第1内側底板LRを通過する。すると、この第1搬送ガスG1の通過と共に、第1微粒子D1は、第1内側底板LRと第1閉塞栓LQとの間の空間中に巻き上げられて、第1エアロゾルAS1となり、第1搬送ガスG1の流量で決まる、所定の単位時間当たりの搬送量の第1微粒子D1が、第1搬送ガスG1によって搬送される。
このようにしてできた第1エアロゾルAS1は、第1エアロゾル管48Lを通じて、成膜室41の噴射ノズル42に導かれる。
【0040】
第2供給系SMについても同様である。即ち、第2ガス管47Mの途中に配置された第2レギュレータ46Mを調節して、第2ガスボンベ45Mから第2搬送ガスG2を所定流量流す。この第2搬送ガスG2は、第2ガス管47Mを通じて、第2エアロゾル発生器44M内に流入する。すると、第1エアロゾル発生器44Lと同様、この第2搬送ガスG2により、第2微粒子D2が第2内側底板MRと第2閉塞栓MQとの間の空間中に巻き上げられて、第2エアロゾルAS2となり、第2搬送ガスG2の流量で決まる、所定の単位時間当たりの搬送量の第2微粒子D2が、第2搬送ガスG2によって搬送される。
このようにしてできた第2エアロゾルAS2は、第2エアロゾル管48Mを通じて、成膜室41の噴射ノズル42に導かれる。
【0041】
噴射ノズル42に導かれた第1エアロゾルAS1及び第2エアロゾルAS2は、噴射ノズル42の本体部42J内部で混合され、混合エアロゾルASとなる。なお、この混合エアロゾルASにおける、第1エアロゾルAS1及び第2エアロゾルAS2の流量及びこれらの比率(流量比)(第1搬送ガスG1及び第2搬送ガスG2の流量比)は、第1レギュレータ46L及び第2レギュレータ46Mにより制御される。従って、第1レギュレータ46L及び第2レギュレータ46Mで、第1搬送ガスG1及び第2搬送ガスG2の流量を一定に保てば、混合エアロゾルASにおける、第1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2の流量の比率は一定に保たれる。つまり、噴射される第1微粒子D1と第2微粒子D2との単位時間当たりの搬送量の比を一定に保つことができる。
【0042】
この混合エアロゾルASは、テーパ形状の噴射部42Hでさらに加速されて、第1金属板20に向けて噴射される。このとき、第1金属板20を保持する金属板保持部43は、走査方向DSに繰り返し移動して、第1金属板20に成膜する第1被膜10の膜厚を、所定の膜厚にする。
かくして、第1金属板20の第1主面21に、所定の比率で、第1微粒子D1を起源とする物質(コバルト酸リチウム(LiCoO2))と、第2微粒子D2を起源とする物質(複合燐酸塩固体電解質ガラス(Li1+XAlXTi2-X(PO43))とからなる第1被膜10が成膜された成膜体1を製造できる。
【0043】
このように本実施形態の成膜体1の製造方法では、エアロゾル化の特性の異なる第1微粒子D1と第2微粒子D2を、別々の第1エアロゾルAS1及び第2エアロゾルAS2として、第1金属板20の第1主面21に向けて同時に噴射する。
【0044】
なお、前述したように、第1微粒子D1と第2微粒子D2とは、気中への巻き上げられ易さが互いに異なる。しかし、第1微粒子D1と第2微粒子D2とを予め混合しておき、これをエアロゾル化する場合と異なり、本実施形態では、時間が経過しても、噴射させる第1微粒子D1と第2微粒子D2との比率(重量比)が偏らない。従って、時間が経過しても、形成した第1被膜10において、第1微粒子D1を起源とする物質と第2微粒子D2を起源とする物質との比率を一定に保ち、所定の組成比を有する第1被膜10を備えた成膜体1を安定して得ることができる。
【0045】
また、この成膜体1の製造方法では、第1エアロゾルAS1及び第2エアロゾルAS2を共通の噴射ノズル42から同時に噴射するので、常に、第1エアロゾルAS1(第1微粒子D1)及び第2エアロゾルAS2(第2微粒子D2)が第1金属板20の第1主面21の同じ位置に当たる。従って、第1微粒子D1及び第2微粒子D2を起源としながら、2つのエアロゾルをそれぞれ別のノズルから同じ第1金属板20に向けて同時に噴射する場合よりも、均一な組成の第1被膜10を有する成膜体1を形成できる。
【0046】
また、本実施形態の成膜体1の製造方法では、第1微粒子D1の単位時間当たりの搬送量と、第2微粒子D2の単位時間当たりの搬送量とを、第1レギュレータ46L及び第2レギュレータ46Mで各々独立して調整できるので、第1被膜10における第1微粒子D1を起源とする物質と第2微粒子D2を起源とする物質との比率を容易に調整することができる。
【0047】
なお、本実施形態にかかる成膜体1の製造方法では、成膜装置40において、第1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2との供給比率を時間とともに変化させることができる。具体的には、図4に示す、第1レギュレータ46Lを調節して、第1ガスボンベ45Lから送出する第1搬送ガスG1の送出流量のみを時間と共に変化させる。あるいは、第2レギュレータ46Mを調節して、第2ガスボンベ45Mから送出する第2搬送ガスG2の送出流量のみを変化させる。或いは両者を変化させても良い。このようにすることで、噴射ノズル42内から噴射される混合エアロゾルASにおける、第1エアロゾルAS1と第1エアロゾルAS2との比率を、時間と共に所望の比率に変化させることができる。
このようにして、第1レギュレータ46Lと第2レギュレータ46Mとを調節することで、混合エアロゾルASに含まれる、第1微粒子D1と第2微粒子D2の比率(重量比)を制御することができる。従って、例えば、成膜室41の金属板保持部43の移動に合わせて、混合エアロゾルASにおけるその比率を変化させて、場所により組成が変化した被膜(図示しない)を成膜することもできる。
このように、本実施形態にかかる成膜体1の製造方法により、第1被膜10における第1微粒子D1を起源とする物質と第2微粒子D2を起源とする物質との比率を適切に制御することもできる。
【0048】
(変形形態)
次に、本発明の変形形態にかかる成膜体101について、図1〜3,6を参照しつつ説明する。
本変形形態は、その成膜体101の第1被膜110が、前述したコバルト酸リチウム(LiCoO2)及び複合燐酸塩固体電解質ガラス(Li1+XAlXTi2-X(PO43)のほか、導電助剤であるアセチレンブラックの3つの物質からなる点で、前述の実施形態と異なり、それ以外は同様である。
そこで、実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略または簡略化する。なお、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同内容のものには同番号を付して説明する。
【0049】
本変形形態にかかる成膜体101は、アルミニウムからなる矩形板状の第1金属板20と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、複合燐酸塩固体電解質ガラス(実施形態と同じLi1+XAlXTi2-X(PO43)及びアセチレンブラックが混在した第1被膜110とを備える(図1,2参照)。この第1被膜110では、その成分であるアセチレンブラックが導電助剤として作用するため、前述した実施形態にかかる成膜体1における第1被膜10よりも、第1被膜110の導電率を向上させることができる。従って、この成膜体101を、例えば図3に示すような、固体電解質リチウムイオン二次電池に使用可能な発電要素BFの一部に用いた場合、実施形態にかかる成膜体1を用いるよりも、発電要素BFの抵抗を抑制できる。
【0050】
次に、本変形形態にかかる成膜体101の成膜装置及び製造方法について、図6を参照しつつ説明する。
図6に、エアロゾルデポジション法による成膜装置140の概略図を示す。この成膜装置140は、実施形態と同様、成膜室41、第1エアロゾル発生器44L、第2エアロゾル発生器44M、第1ガスボンベ45L、第2ガスボンベ45M、第1ガス管47L、第2ガス管47M、第1エアロゾル管48L及び第2エアロゾル管48Mとを有する。そのほかに、第3エアロゾル発生器144N、第3ガスボンベ145M、第3ガス管147N及び第3エアロゾル管148Nとを有する。
なお、このうちの、第3エアロゾル発生器144N、第3ガスボンベ145M、第3ガス管147N及び第3エアロゾル管148Nによって発生させた第3エアロゾルAS3を成膜室41に供給する第3供給系SNが構成されている。
【0051】
成膜装置140の第3ガスボンベ145Nは、前述した第1ガスボンベ45Lと同様、その内部に高圧のアルゴンガスの第3搬送ガスG3が充填されている。この第3ガスボンベ145Nは、金属製の第3ガス管147Nを通じて、第3エアロゾル発生器144Nに向けて第3搬送ガスG3を送出する。なお、第3ガス管147Nの途中に第3レギュレータ46Nが配置されている。この第3レギュレータ146Nによって、第3搬送ガスG3で搬送される第3エアロゾルAS3の流量、従って、搬送される第3微粒子D3の単位時間当たりの搬送量を調整することができる。
【0052】
また、第3エアロゾル発生器144Nは、前述した第1エアロゾル発生器44Lと同様、有底円筒形状の第3容器部NPと、この第3容器部NPの開口を閉塞する第3閉塞栓NQと、第3容器部NPの底(図6中、下方に位置)から所定の距離を離すように上げ底に配置されてなり、板面がメッシュ形状をなす第3内側底板NRとを有する。
このうち、第3閉塞栓NQには、第1閉塞栓LQと同様、上述の第3ガス管147N及び第3エアロゾル管148Nがそれぞれ貫通している。また、第3内側底板NRは、図6に示すように、第3ガス管147Nが貫通しており、また、第3閉塞栓NQに面する側に、アセチレンブラックの第3微粒子D3が保持されている。なお、この第3内側底板NRの板面を形成するメッシュ孔径は、第3微粒子D3の粒子径よりも小さい。そのため、この第3内側底板NRは、第3微粒子D3を通過させないが、ガス、即ち、第3搬送ガスG3を通過させることができる。
【0053】
次いで、前述の成膜装置140を用いた成膜体101の成膜工程について、図6を参照しつつ説明する。
実施形態と同様にして、成膜室41の金属板保持部43に第1金属板20を保持させて、成膜室41を密閉し、図示しない真空ポンプを用いて室内を102Paにまで減圧する。
また、実施形態と同様にして、さらに、第3エアロゾル発生器144N内の第3内側底板NRに第3微粒子D3を投入する。投入後は、第3閉塞栓NQで第3容器部NPの開口を塞ぐ。
【0054】
次に、実施形態と同様にして、第1供給系SLは第1エアロゾルAS1を、第2供給系SMは第2エアロゾルAS2を、いずれも所定の送出流量で成膜室41の噴射ノズル42に導く。
第3供給系SNについても実施形態の第1供給系SLと同様である。即ち、第3レギュレータ146Nを調節して、第3ガスボンベ145Nから第3搬送ガスG3を所定流量流す。この第3搬送ガスG3は、第3ガス管147Nを通じて、第3エアロゾル発生器144N内に流入する。すると、その第3搬送ガスG3により、第3微粒子D3が第3内側底板NRと第3閉塞栓NQとの間の空間中に巻き上げられて、第3エアロゾルAS3となり、第3搬送ガスG3の流量で決まる、所定の単位時間当たりの搬送量の第3微粒子D3が、第3搬送ガスG3によって搬送される。
このようにしてできた第3エアロゾルAS3は、第3エアロゾル管148Nを通じて、成膜室41の噴射ノズル42に導かれる。
【0055】
噴射ノズル42に導かれた第1エアロゾルAS1、第2エアロゾルAS2及び第3エアロゾルAS3は、噴射ノズル42の本体部42J内部で混合され、混合エアロゾルASとなる。なお、この混合エアロゾルASにおける、第1エアロゾルAS1、第2エアロゾルAS2及び第3エアロゾルAS3の流量及びこれらの比率(流量比)は、第1レギュレータ46L、第2レギュレータ46M及び第3レギュレータ146Nにより制御される。つまり、第1レギュレータ46L、第2レギュレータ46M及び第3レギュレータ146Nにより、第1搬送ガスG1、第2搬送ガスG2及び第3搬送ガスG3を各々一定流量に保てば、混合エアロゾルASにおける、第1エアロゾルAS1、第2エアロゾルAS2及び第3エアロゾルAS3の流量の比率が一定に保たれる。従って、噴射される第1微粒子D1、第2微粒子D2及び第3微粒子D3の単位時間当たりの搬送量の比を一定に保つことができる。
【0056】
この混合エアロゾルASは、テーパ形状の噴射部42Hでさらに加速されて、第1金属板20に向けて噴射される。
かくして、第1金属板20の第1主面21に、所定の比率で、第1微粒子D1を起源とする物質(コバルト酸リチウム(LiCoO2))と、第2微粒子D2を起源とする物質(複合燐酸塩固体電解質ガラス(Li1+XAlXTi2-X(PO43))と、第3微粒子D3を起源とする物質(アセチレンブラック)とからなる第1被膜110が成膜された成膜体101を製造できる。
【0057】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態等では、成膜体を固体電解質リチウムイオン二次電池に使用可能な発電要素BFの一部をなすものとしたが、基体の成膜面にエアロゾルデポジション法で形成された被膜を備える成膜体であれば良く、例えば、圧電体、燃料電池電解質、磁性膜、パターニング回路等の製造に適用することもできる。
【0058】
また、実施形態等では、比重の異なる第1微粒子と第2微粒子と(変形形態では第3微粒子D3も)を用いたが、エアロゾル化したときに、気中への巻き上げられ易さ(エアロゾル化の特性)が互いに異なる微粒子を用いる場合に適用すれば良い。例えば、見かけ比重や粒子形状が異なる微粒子を用いても良い。また、第1微粒子及び第2微粒子の材質を、例えば、金属の微粉末、セラミックス(金属酸化物)の微粉末、カーボンや有機物の微粉末などとしても良い。
【0059】
また、第1搬送ガスG1及び第2搬送ガスG2にアルゴンガスを用いた例を示したが、成膜面に形成させる被膜の特性や第1微粒子,第2微粒子の組成等に応じて適宜選択すれば良く、例えば、乾燥空気、窒素ガス、ヘリウムガス、酸素ガスなどを用いることもできる。また、第1搬送ガスと第2搬送ガスとを同一種類のガスとしたが、互いに異なる種類のガスを用いることもできる。
さらに、実施形態等では、第1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2とを共通の噴射ノズル42内で混合したが、例えば、その共通のノズルよりも上流側で、第1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2とが混合されるように配管を構成しても良い。
【0060】
また、実施形態等では、共通の噴射ノズル42を用いたが、第1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2とを各々、個別のノズルから噴射させても良い。この場合には、一方のガス流量(エアロゾル流量)が変化しても他方のガス流量にその影響が生じにくいため、第1エアロゾルAS1と第2エアロゾルAS2の流量の比率、従って、第1微粒子D1と第2微粒子D2の単位時間当たりの搬送量を制御しやすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態にかかる成膜体の斜視図である。
【図2】実施形態にかかる成膜体の断面図(図1のA−A部)である。
【図3】固体電解質リチウムイオン二次電池の説明図である。
【図4】実施形態にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【図5】実施形態にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【図6】変形形態にかかる成膜体の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1,101 成膜体
10,110 第1被膜
20 第1金属板(基体)
21 第1主面(成膜面)
40,140 成膜装置
42 噴射ノズル(共通ノズル)
46L 第1レギュレータ(第1調整手段)
46M 第2レギュレータ(第2調整手段)
AS 混合エアロゾル
AS1 第1エアロゾル
AS2 第2エアロゾル
D1 第1微粒子
D2 第2微粒子
G1 第1搬送ガス
G2 第2搬送ガス
SL 第1供給系
SM 第2供給系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、エアロゾルデポジション法により、上記基体の成膜面に形成された被膜と、を備える成膜体の製造方法であって、
少なくとも、第1微粒子を第1搬送ガス中に分散させた第1エアロゾルと、第2微粒子を第2搬送ガス中に分散させた第2エアロゾルとを含む複数種のエアロゾルを、上記基体の上記成膜面に向けて同時に噴射して、上記被膜を形成する
成膜体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜体の製造方法であって、
前記第1微粒子及び前記第2微粒子は、
これらを混合した混合粉末を気中に巻き上げて、搬送ガス中に上記混合粉末が分散された単一のエアロゾルを構成した場合に、
このエアロゾルにおける上記第1微粒子と上記第2微粒子との比率が、上記混合粉末における上記第1微粒子と上記第2微粒子との比率とは異なる値になる特性を有する
成膜体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の成膜体の製造方法であって、
前記第1エアロゾルと前記第2エアロゾルとを、共通のノズルから前記基体の前記成膜面に向けて同時に噴射する
成膜体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の成膜体の製造方法であって、
前記第1エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第1微粒子の量と、前記第2エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第2微粒子の量と、を独立して調整して、上記第1エアロゾル及び第2エアロゾルを噴射する
成膜体の製造方法。
【請求項5】
基体の成膜面上に、エアロゾルデポジション法により被膜形成する成膜装置であって、
第1微粒子を第1搬送ガス中に分散させた第1エアロゾルを供給する第1供給系と、
第2微粒子を第2搬送ガス中に分散させた第2エアロゾルを供給する第2供給系と、
上記第1供給系から供給された上記第1エアロゾルと上記第2供給系から供給された上記第2エアロゾルとを、上記基体の上記成膜面に向けて同時に噴射する噴射ノズルと、を備える
成膜装置。
【請求項6】
請求項5に記載の成膜装置であって、
前記噴射ノズルは、前記第1エアロゾルと前記第2エアロゾルとを混合した混合エアロゾルを噴射する、共通ノズルである
成膜装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の成膜装置であって、
前記第1供給系は、前記第1エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第1微粒子の量を調整する第1調整手段を有し、
前記第2供給系は、前記第2エアロゾルとなって単位時間当たりに搬送される前記第2微粒子の量を調整する第2調整手段を有する
成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−280874(P2009−280874A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135827(P2008−135827)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】