説明

成膜方法

【課題】基板上に膜を成膜する際に、マスクやレジスト膜を用いることなく、所望のパターンを有する膜を安価に得ることができる成膜方法を提供する。
【解決手段】本発明の成膜方法は、基材1の表面1aに撥液膜2を形成する工程と、この撥液膜2上に、インクジェット法により所定のパターンを有する樹脂層5を形成する工程と、この樹脂層5に、CFプラズマを用いて撥液性を示すフッ素イオンを打ち込むことによりフッ素化処理7を施す工程と、樹脂層5を含む撥液膜2上に蒸着材料を堆積し、この蒸着材料を、樹脂層の付着エネルギーが低くかつ所定のパターンを有する領域以外の撥液膜上に集合させ、この集合した蒸着材料を膜とする工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上に所定のパターンの膜を形成する成膜方法として、マスクを用いた蒸着法が広く利用されている。
この蒸着法は、基材上に、成膜すべき蒸着膜と同一のパターンの開口部を有するマスクを配置し、このマスクを介して前記基材上に蒸着材料を堆積させ、このマスクを除去することにより、基材上に所定のパターンの蒸着膜を成膜する方法である。
また、リフトオフによる蒸着膜の成膜方法も提案されている。この方法は、基材上に、逆テーパー状のレジストパターンを形成し、このレジストパターンを含む基材上に蒸着材料を堆積させて蒸着膜を成膜し、その後、リフトオフ操作によりレジストパターンとその上の蒸着膜を一緒に除去し、基材上に所定のパターンの蒸着膜を形成する方法である(特許文献1参照)。
【0003】
さらに、基材上に化学的気相堆積法(CVD法)により所定のパターンの膜を成膜する方法としては、予め、基材の表面に、膜形成領域と、この膜形成領域より濡れ性が低く膜を形成し難い非膜形成領域とを形成しておき、この基材上に膜の原料となる飛来物を、この膜形成領域と非膜形成領域との飛来物に対する濡れ性の違いを利用して膜形成領域に集めるとともに、集められた飛来物を化学反応して得られた反応生成物により、基材上に所定のパターンのCVD膜を形成する成膜方法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−120443号公報
【特許文献2】特開2005−213597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマスクを用いた蒸着法では、得られた蒸着膜のパターン精度を一定に保ち続けるためには、一定期間毎にマスクを洗浄し、交換する必要があり、マスクのメンテナンスに時間と手間が掛かり、製造コストが上昇する一因になっている、という問題点があった。
また、従来のリフトオフによる成膜方法では、レジストパターンを形成するのに時間と手間を要する上、レジストパターンとその上の蒸着膜を一緒に除去する必要があることから、レジスト材料及び蒸着材料に無駄が生じ、特に貴金属材料の場合、無視出来ない量になるという問題点があった。
【0006】
さらに、これらの方法では、例えば、少量多品種生産の場合、品種毎にマスクを作製する必要があるが、マスクの製造には一定の期間が必要になるために、特に、試作品や生産品を短納期にて作製する必要が生じた場合等では、マスクの製造が間に合わず、対応が難しくなるという問題点があった。
さらにまた、CVD膜を形成する成膜方法では、確かに、マスクやレジストを用いずにCVD膜を成膜することができるものの、このCVD膜を安価に得ることが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、基板上に膜を成膜する際に、マスクやレジスト膜を用いることなく、所望のパターンを有する膜を安価に得ることができる成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような成膜方法を提供した。
本発明の成膜方法は、基材の表面に膜材料を堆積させることにより膜を形成する成膜方法であって、
前記基材の表面に、インクジェット法により、所定のパターンを有する樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施す工程と、前記樹脂層を含む前記基材の表面に膜材料を堆積し、この膜材料を、前記樹脂層以外の前記基材の表面に集合させ、この集合した膜材料を前記膜とする工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、基材の表面に、インクジェット法により樹脂を含む液滴を吐出させると、吐出された液滴は、球状あるいは球状に近い略レンズ状となる。ここで、この樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施すと、樹脂層の表面の付着エネルギーが低下することとなり、その結果、得られた樹脂層は滑落角(転落角)以上に角度制御がなされ、従って樹脂層の付着エネルギーは非常に小さいものとなる。
【0010】
そこで、樹脂層を含む基材の表面に膜材料を堆積すると、この膜材料は、フッ素化処理が施されることで付着エネルギーが小さくなった樹脂層以外の、基材の表面に集合し易くなり、その結果、基材の表面に選択的に膜材料を集合させた膜を形成することができる。
したがって、マスクやレジスト膜を用いることなく、また、高価な露光・現像装置等を用いることなく、簡便な方法により、所望のパターンを有する膜を安価に作製することができる。
【0011】
さらに、インクジェット法により所定のパターンを有する樹脂層を形成するので、インクジェットの描画パターンを変更するだけで少量多品種生産に容易かつ迅速に対応することができる。したがって、試作品や生産品を短納期にて作製する必要が生じた場合等に対しても、容易に対応することができる。
【0012】
本発明の成膜方法は、基材の表面に膜材料を堆積させることにより膜を形成する成膜方法であって、
前記基材の表面を撥液化処理する工程と、前記撥液化処理が施された基材の表面に、インクジェット法により、所定のパターンを有する樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施す工程と、前記樹脂層を含む前記基材の表面に膜材料を堆積し、この膜材料を、前記樹脂層以外の前記基材の表面に集合させ、この集合した膜材料を前記膜とする工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、撥液化処理が施された基材の表面に、インクジェット法により樹脂を含む液滴を吐出させると、吐出された液滴は、球状あるいは球状に近い略レンズ状となる。ここで、この樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施すと、樹脂層の表面の付着エネルギーが低下することとなり、その結果、得られた樹脂層は滑落角(転落角)以上に角度制御がなされ、従って樹脂層の付着エネルギーは非常に小さいものとなる。
【0014】
そこで、樹脂層を含む基材の表面に膜材料を堆積すると、この膜材料は、フッ素化処理が施されることで付着エネルギーが小さくなった樹脂層以外の、基材の表面に集合し易くなり、その結果、基材の表面に選択的に膜材料を集合させた膜を形成することができる。
したがって、マスクやレジスト膜を用いることなく、また、高価な露光・現像装置等を用いることなく、簡便な方法により、所望のパターンを有する膜を安価に作製することができる。
【0015】
また、基材の表面に撥液化処理を施したので、高精細な樹脂層のパターンが形成可能となり、それに伴って膜の精度を高めることができる。
さらに、インクジェット法により所定のパターンを有する樹脂層を形成するので、インクジェットの描画パターンを変更するだけで少量多品種生産に容易かつ迅速に対応することができる。したがって、試作品や生産品を短納期にて作製する必要が生じた場合等に対しても、容易に対応することができる。
【0016】
本発明においては、前記樹脂層は、複数の樹脂層を積層してなる積層構造であることが好ましい。
この構成によれば、樹脂層を、複数の樹脂層を積層してなる積層構造とすることで、樹脂層の厚みを実質的に厚くすることができ、材料の特性で決定される滑落角(転落角)以上に角度制御が可能となる。その結果、積層構造上に堆積した膜材料を容易に落下させることができる。したがって、積層構造を含む基材の表面に膜材料を堆積した場合、膜材料は、付着エネルギーの低い領域以外の基材の表面にさらに集合し易くなり、その結果、基材の表面に形状の精度が高い膜を形成することができる。
【0017】
本発明においては、前記樹脂層は、上端部より下端部が広い凸状であることが好ましい。
この構成によれば、樹脂層を、上端部より下端部が広い凸状とすることで、樹脂層上に堆積した膜材料の滑落角度が上昇し、この膜材料をさらに容易に落下させることができる。したがって、膜材料を基材の表面に速やかに集合させることができる。
【0018】
本発明においては、膜材料を膜とする工程の後に、樹脂層を除去する工程を有することとしてもよい。
この構成によれば、膜材料を集合させて膜とした後に樹脂層を除去することで、基材の表面は膜のみで構成されることとなり、樹脂層が残存しない平坦な膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の成膜方法を示す過程図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の成膜方法を示す過程図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の成膜方法の一部の工程を示す過程図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の成膜方法における部分平面形状の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の電子部品を時計の文字板の金属層に適用した状態を示す断面図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)を示す斜視図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造とは縮尺や数等が異なっている。
【0021】
「第1の実施の形態」
以下、本発明の第1の実施形態について、図面に基づき説明する。
本実施形態の成膜方法は、基材の表面を撥液化処理する工程と、撥液化処理が施された基材の表面に、インクジェット法により、所定のパターンを有する樹脂層を形成する工程と、この樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施す工程と、この樹脂層を含む基材の表面に膜材料を堆積し、この膜材料を、樹脂層以外の基材の表面に集合させ、この集合した膜材料を膜とする工程と、を有する方法である。
【0022】
次に、本実施形態の成膜方法について、図1及び図2に基づき詳細に説明する。
本実施形態の成膜方法では、膜材料として蒸着材料を例に取り説明することとする。
[1]基材の表面の撥液化処理工程
まず、図1(a)に示す基材1を用意する。
この基材1としては、いかなる材料により構成されたものでもよいが、例えば、石英ガラス、カリガラス、ソーダガラス等の各種ガラス、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)等の無機系絶縁材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等の有機系絶縁材料、low−K材等の各種低誘電率材料、アモルファスシリコン、多結晶シリコン等のシリコン材料、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)等の金属酸化物材料、スズ添加インジウム酸化物(ITO)、スズ添加アンチモン酸化物(ATO)、亜鉛添加インジウム酸化物(IZO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)等の複合金属酸化物材料、Al、Al合金、Cr、Mo、Ta等の金属材料等により構成されたものを用いることができる。
この基材1は、これらの材料で構成された層を複数、積層してなる積層構造であってもよい。
【0023】
次いで、この基材1の表面1aに撥液化処理を施す。
撥液化処理としては、例えば、次の様な各種の処理方法が挙げられる。
(1)基材1の表面1aに撥液膜2を形成する方法
(2)基材1の表面1aにCFプラズマ等を用いて撥液性を示すイオン、例えば、フッ素イオン等を打ち込む方法
(3)基材1の表面1aに撥液性を有する官能基を導入する方法
これらの中でも、特に、「基材1の表面1aに撥液膜2を形成する方法」が、大掛かりな設備を必要とせず、簡便な装置を用いて形成することができ、しかも、容易かつ精度よく形成することができるので、好ましい。
【0024】
この撥液膜2は、高い撥液性を有するものであればよく、特に高い撥液性を有する材料としては、フッ素系材料が好ましい。
このフッ素系材料としては、フッ素系有機材料、フッ素系無機材料、フッ素系有機材料とフッ素系無機材料との複合材料、のいずれか1種が好ましい。
【0025】
フッ素系有機材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、パーフロロアルキルエーテル、およびそれらのシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、これらの群から選択される1種のみを単独で、あるいは、これらの群から選択される2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
フッ素系無機材料としては、例えば、フッ化チタン酸カリウム、ケイフッ化カリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、ケイフッ酸等が挙げられ、特に、フッ化チタン酸カリウム、ケイフッ化カリウム、フッ化ジルコン酸カリウムが好ましい。
これらは、これらの群から選択される1種のみを単独で、あるいは、これらの群から選択される2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
この撥液膜2は、上記のフッ素系材料を含む組成物、すなわちフッ素系材料溶液またはフッ素系材料分散液を、基材1の表面1aに供給(塗布)し、その後、乾燥、必要に応じて加熱・乾燥を行うことにより、形成することができる。
【0028】
この溶媒または分散媒としては、例えば、蒸留水、純水、RO水等の各種水の他、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルセロソルブ)等のエーテル類(セロソルブ類)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基及びベンゼン環を有する芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環類、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、カルボン酸塩またはその他の各種油類等が挙げられる。
これらは、これらの群から選択される1種のみを単独で、あるいは、これらの群から選択される2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
このフッ素系材料を含む組成物を基材1の表面1aに供給(塗布)する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、ディップコート法、スピンコート法、スリットコート法、キャップコート法、ディスペンサー法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の各種塗布法を用いることができるが、これらの中でも、インクジェット印刷法を用いるのが好ましい。
このインクジェット印刷法によれば、基材1上に直接マスク、例えば、レジスト層等を形成することを必要とせず、しかも、高い寸法精度で撥液膜2を形成することができる。
【0030】
このフッ素系材料を含む組成物に加熱・乾燥を施すと、フッ素系材料が基材1の表面1aに固着(固定)するので、好ましい。
このように、上記のフッ素系材料を用いて、基材1の表面1aに撥液膜2を形成することにより、この基材1の表面1aにおける撥液性が特に顕著なものとなり、したがって、後述するインクジェット法にて樹脂層を形成する際に、パターンの微細化及び高精度化を図ることができる。
したがって、後述する蒸着材料の堆積工程においては、蒸着材料を基材1の表面1aに効果的に集合させることができ、得られた膜の微細化及び高精度化を図ることができる。
【0031】
[2]樹脂層形成工程
図1(b)に示すように、基材1の表面1aの撥液膜2上に、インクジェット3を用いて樹脂を含むインク(液滴)4を吐出させる。
また、基材1の表面1aにフッ素イオン等を打ち込んだ場合や撥液性を有する官能基を導入した場合には、撥液化処理が施された基材1の表面1aに、インクジェット3を用いて樹脂を含むインク(液滴)4を吐出させればよい。
【0032】
このインク4に含まれる樹脂は、後述するフッ素化処理を施すことにより、その付着エネルギーが低下する樹脂であればよく、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂は、熱硬化性型又は、紫外線硬化型であっても良い。
ポリイミド樹脂としては、例えば、ビスマレイミド型ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0033】
アクリル樹脂としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリルレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタアクリルオキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチオールプロパントリアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、1−6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。
【0034】
シリコーン樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、これらの群から選択される1種のみを単独で、あるいは、これらの群から選択される2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
このインク4に含まれる溶媒としては、例えば、蒸留水、純水、RO水等の各種水の他、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルセロソルブ)等のエーテル類(セロソルブ類)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基及びベンゼン環を有する芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環類、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、カルボン酸塩またはその他の各種油類等が挙げられる。
これらは、これらの群から選択される1種のみを単独で、あるいは、これらの群から選択される2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
ここで、基材1の表面1aの撥液膜2上に、樹脂を含むインク4を吐出させると、図1(c)に示すように、この吐出されたインク4は、基材1の表面1aの撥液膜2上における濡れ性が抑制されることとなり、その結果、表面張力により付着エネルギーが小さい形状、すなわち半球状あるいは凸レンズ状の樹脂層5となる。
このインク4には溶媒が含まれているので、この溶媒を除去するために、例えば、室温(25℃)以上かつ100℃以下の温度にて、1分以上かつ30分以下、乾燥または加熱・乾燥させる。
【0037】
ここで、付着エネルギーについて説明する。
付着エネルギーとは、滑落角(転落角)を用いて固体試料を傾けて液滴を滑らせる方法から算出され、付着エネルギーをEとすると下記の式(1)が提唱されている。
E=mg・sinα/2πr ……(1)
(式中、m:液滴質量、g:重力加速度、r:着液半径、α:滑落角(転落角))
この滑落角(転落角)は、水平に設置した平面状態で固体試料の表面に液体材料を滴下し、ここから固体試料を傾け、液体が滑りだしたときの角度を滑落角と規定され、付着エネルギーの目安として広く普及している。例えば、滑落角(転落角)が大きいほど液体材料は、固体試料に強く付着していることになる。
【0038】
[3]樹脂層のフッ素化処理工程
図1(d)に示すように、樹脂層5を含む基材1の表面にフッ素化処理7を施す。このフッ素化処理7としては、CFプラズマを用いて撥液性を示すフッ素イオンを打ち込むCFプラズマ処理が好適である。
このように、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理7を施すと、樹脂層5に撥液性が生じることとなり、その結果、この樹脂層5の表面の付着エネルギーが低下することとなる。
【0039】
このように、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理7を施すことにより、得られた樹脂層5は滑落角(転落角)以上に角度制御がなされ、従って樹脂層の付着エネルギーは非常に小さいものとなる。
【0040】
[5]蒸着膜形成工程
図2(e)に示すように、樹脂層5を含む基材1の表面1aの撥液膜2上に蒸着材料8を堆積させる。
【0041】
ここで、蒸着材料8としては、特に限定されることはないが、例えば、Ni、Pd、Pt、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Co、Al、Cs、Rbの群から選択される1種または2種以上を含む金属・合金材料、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)等の金属酸化物材料、スズ添加インジウム酸化物(ITO)、スズ添加アンチモン酸化物(ATO)、亜鉛添加インジウム酸化物(IZO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)等の複合金属酸化物材料、二酸化ケイ素(SiO)等の無機系絶縁材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、炭素繊維等の各種炭素系材料、、Alq3(アルミキノリノール錯体)等の有機発光材料等が挙げられる。
【0042】
この樹脂層5を含む撥液膜2上に蒸着材料8を堆積した場合、この蒸着材料8は、付着エネルギーの小さい樹脂層5から付着エネルギーの大きな撥液膜2上に落下し、この撥液膜2上に集合することとなる。特に、樹脂層5が半球状あるいは凸レンズ状の場合、樹脂層5上に堆積した蒸着材料8は、この樹脂層5から容易かつ速やかに移動して、撥液膜2上に容易に堆積することとなる。
【0043】
これにより、図2(f)に示すように、この蒸着材料8は、撥液膜2上に選択的に堆積され、その結果、基材1の表面1aの撥液膜2上に、選択的に蒸着材料8を集合させた膜9が形成されることとなる。
この膜9を形成した後、必要に応じて、樹脂層5を除去することとすれば、図2(g)に示すように、基材1の表面1aの撥液膜2上に、微細な所定のパターンの膜9のみが存在することとなる。
【0044】
以上により、樹脂層5に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理7を施すことにより、得られた樹脂層5は滑落角(転落角)以上に角度制御がなされ、従って樹脂層の付着エネルギーは非常に小さいものとなり、蒸着材料8を撥液膜2上に集合させ、この集合した蒸着材料8により膜9を形成することができる。
したがって、マスクやレジスト膜を用いることなく、インクジェット3という簡便な方法により、所望のパターンを有する膜9を安価に作製することができる。
【0045】
また、樹脂層5のパターン精度に対応して膜9の精度を高めることができるので、この膜9の細密化を図ることができる。
さらに、インクジェット3により所定のパターンを有する樹脂層5を形成するので、インクジェット3の液滴パターンを変更するだけで少量多品種生産に容易かつ迅速に対応することができる。したがって、試作品や生産品を短納期にて作製する必要が生じた場合等にも容易に対応することができる。
【0046】
なお、本実施形態の成膜方法では、膜材料として蒸着材料を例に取り説明したが、蒸着材料以外の膜材料、例えば、スパッタ材料、イオンプレーティング材料などの、物理気相堆積法(PVD法)により堆積される材料等においても、同様の作用・効果を奏することができる。
また、撥液膜2を省略し、基材1の表面1a上に集合させて膜9を形成することとしてもよい。
【0047】
「第2の実施の形態」
図3は、本発明の第2の実施形態の成膜方法の一部の工程を示す過程図であり、本実施形態の成膜方法が第1の実施形態の成膜方法と異なる点は、第1の実施形態の成膜方法の樹脂層形成工程では、基材1の表面1aの撥液膜2上に樹脂を含むインク4を吐出させて、基材1の表面1aの撥液膜2上に樹脂層5を形成したのに対し、本実施形態の成膜方法の樹脂層形成工程では、インクジェットを用いて樹脂を含むインク4を吐出させ、このインク4を乾燥または加熱・乾燥させる、という工程を繰り返し行い(図3では、4回)、基材1の表面1aの撥液膜2上に、付着エネルギーが低くかつ微細な所定のパターンを有する凸レンズ状の樹脂層11a〜11dを積層させ、全体形状が凸状の積層構造11とした点であり、その他の点については第1の実施形態の成膜方法と同様である。
【0048】
本実施形態においては、図3(a)に示すように、積層構造11を含む基材1の表面に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理7を施すことにより、この積層構造11の表面における付着エネルギーが低下する。
【0049】
このように、積層構造11にフッ素化処理7を施すことにより、この積層構造11の付着エネルギーを低下させるので、図3(b)に示すように、この積層構造11が用いた樹脂の特性で決定される滑落角(転落角)よりも、高い角度を有することと相まってより容易に蒸着材料8の落下が可能となる。
【0050】
本実施形態によれば、基材1の表面1aの撥液膜2上に、凸レンズ状の樹脂層11a〜11dを積層して全体形状が凸状の積層構造11とし、さらに、積層構造11に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理7を施したので、この積層構造11全体の厚みを実質的に厚くするとともに、この厚みのある積層構造11の付着エネルギーを低下させることができ、結果として、滑落角(転落角)よりも大きい角度に制御され、その結果、積層構造11上に堆積した蒸着材料8を、撥液膜2上に容易に落下させることができる。
【0051】
また、樹脂層11a〜11dは、撥液膜2上から上方に向かって順次小さくなるように、それぞれの形状が制御されて全体形状が凸状の積層構造11とされているので、積層構造11上に堆積した蒸着材料8は、この凸状の積層構造11の角度が滑落角(転落角)より大きいことにより、この積層構造11からさらに容易に落下して撥液膜2上に容易に移動することとなり、蒸着材料8を撥液膜2上に速やかに集合させることができる。
【0052】
その結果、図3(c)に示すように、基材1の表面1aの撥液膜2上に、より速やかに、蒸着材料8を集合してなる膜13を形成することができる。
さらに、この膜13を形成した後に積層構造11を除去することとすれば、第1の実施の形態と同様に、基材1の表面1aの撥液膜2上に、微細な所定のパターンの膜13のみを形成したものとすることができる。
【0053】
図4は、本実施形態の成膜方法における部分平面形状の一例を示す平面図であり、撥液膜2上に、インクジェットを用いて樹脂を含むインクを吐出させるという工程を、撥液膜2上の面内にて縦横に繰り返し行い、この撥液膜2上に、この撥液膜2より付着エネルギーが低くかつ微細な所定のパターンを有する樹脂層21aを千鳥状に多数、互いに接触するように密に形成し、網目状の樹脂層21とした例である。
【0054】
この例においては、撥液膜2上に、樹脂層21aを多数、互いに接触するように密に形成して、全体の表面形状が凹凸面となる網目状の樹脂層21としている。
この樹脂層21を含む撥液膜2上に蒸着材料8を堆積した場合、この蒸着材料8は、付着エネルギーの小さい樹脂層21から撥液膜2上に移動し、この撥液膜2上に集合することとなる。特に、この樹脂層21を凸レンズ状の樹脂層11a〜11dを積層した積層構造とした場合、この樹脂層21上に堆積した蒸着材料8は、この樹脂層21から容易かつ速やかに移動して、撥液膜2上に容易に堆積することとなる。
その結果、撥液膜2上の樹脂層21a間に膜22を容易に形成することができる。
したがって、基材1の表面1aの撥液膜2上に、樹脂層21及び膜22が設けられた電子部品23を得ることができる。
【0055】
図5は、本実施形態の電子部品23を時計の文字板の金属層に適用した断面図であり、図において、31はEL発光体(またはソーラーセル体)、32はEL発光体(またはソーラーセル体)31に対向配置された時計用文字板である。
この時計用文字板32は、透明基材33と、多数の樹脂層21aが光透過用の小孔とされるとともに膜22が光遮蔽部とされた金属層34(電子部品23)と、この金属層34上に設けられ文字やマークを示す第2の金属層35と、これら金属層34及び第2の金属層35を覆う透明層36とから構成されている。
【0056】
この時計用文字板32では、マスクやレジスト膜を用いることなく、また、高価な露光・現像装置等を用いることなく、インクジェット法という簡便な方法により、所望の時計用文字板32を速やかかつ安価に作製することができる。
また、金属層34に凹凸があったような場合においても、インクジェット法を適用することにより、所望の時計用文字板32を安価に作製することができるので、有利である。
さらに、インクジェットの液滴パターンを変更するだけで少量多品種生産に容易かつ迅速に対応することができる。したがって、時計用文字板32の試作品や生産品を短納期にて作製する必要が生じた場合等にも容易に対応することができる。
【0057】
「電子機器」
本発明の第1〜第2の実施形態の成膜方法により得られた膜9、13、22を電子部品に適用することにより、信頼性が高くかつ安価な電子部品を得ることができる。
また、この電子部品を電子機器に適用することにより、信頼性が高くかつ安価な電子機器を得ることができる。
【0058】
図6は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータを示す斜視図である。
このパーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部1107を介して回動可能に支持されている。
本発明の成膜方法により得られた膜は、例えば、本体部1104の筐体部分、表示ユニット1106の筐体部分、表示ユニット1106の表示部の各画素の切り替えを行うスイッチング素子、本体部1104と表示ユニット1106とを接続する可撓性配線基板等に適用されている。
【0059】
図7は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)を示す斜視図である。
この携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204、送話口1206、表示部1208を備えている。
本発明の成膜方法により得られた膜は、例えば、表示部1208の筐体部分、表示部1208の各画素の切り替えを行うスイッチング素子、データを保存するための半導体部品(各種メモリ)等に適用されている。
【0060】
図8は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラを示す斜視図である。なお、この図においては、外部機器との接続についても簡易的に示している。
ここで、通常のカメラでは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300では、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0061】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
このケース1302の内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図9では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0062】
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、このビデオ信号出力端子1312には、CRT1401及び再生回路1402を備えたテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314には、パーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0063】
本発明の成膜方法により得られた膜は、例えば、ケース1302、表示部の各画素の切り替えを行うスイッチング素子、CCDの撮像信号を保存するための半導体部品(各種メモリ)、回路基板1308等に適用されている。
【0064】
なお、本発明の電子機器は、図6のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図7の携帯電話機、図8のディジタルスチルカメラの他、例えば、テレビ、ビデオカメラ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機等)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置等)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
「実施例1」
まず、石英ガラス基板(基材)を用意し、この石英ガラス基板の表面を純水を用いて洗浄した。
次いで、この石英ガラス基板の表面に、スピンコート法により、フッ素系コーティング材であるノベックEGC−1720(住友スリーエム株式会社製)を含む塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を、大気中、80℃にて30分、乾燥させて撥液膜を形成し、撥液膜付石英ガラス基板を得た。
【0066】
次いで、この撥液膜付石英ガラス基板上に、インクジェット印刷法により、オプツールDSX(臨界表面張力:12mN/m、ダイキン工業株式会社製)を含むインクを吐出させて、半球状の樹脂前駆体を形成し、次いで、この樹脂前駆体を、大気中、80℃にて10分、乾燥させて溶媒を除去し、撥液膜の表面に半球状の樹脂層を形成し、樹脂層付石英ガラス基板を得た。
なお、この樹脂層の厚みは200nm、臨界表面張力γcは12mN/mであった。
【0067】
次いで、この樹脂層付石英ガラス基板の樹脂層のみにCFプラズマを用いてフッ素イオンを打ち込み、この樹脂層にフッ素化処理を施した。
このようにして得られたフッ素化処理済みの樹脂層付石英ガラス基板上に、蒸着材料である銅(Cu)を堆積させた。
この銅(Cu)は、樹脂層から容易かつ速やかに落下して撥液膜上に移動して堆積され、銅(Cu)膜となった。この銅(Cu)膜の厚みは100nmであった。
次いで、この銅(Cu)膜付石英ガラス基板をメチルエチルケトン(MEK)及びトルエンを含む溶媒により超音波洗浄し、樹脂層を除去した。
以上により、マスクやレジスト膜を用いることなく、インクジェットという簡便な方法により、所望のパターンを有する銅(Cu)からなる蒸着膜を安価に作製することができた。
【0068】
「実施例2」
オプツールDSX(臨界表面張力:12mN/m、ダイキン工業株式会社製)をユニダイン TG−656(臨界表面張力:10mN/m、ダイキン工業株式会社製)に替えた他は、実施例1と同様にして、撥液膜の表面に半球状の樹脂層を形成した。この樹脂層の厚みは2μm、臨界表面張力γcは10mN/mであった。
【0069】
次いで、この樹脂層付石英ガラス基板の樹脂層のみにCFプラズマを用いてフッ素イオンを打ち込み、この樹脂層にフッ素化処理を施した。
このようにして得られたフッ素化処理済みの樹脂層付石英ガラス基板上に、蒸着材料である銅(Cu)を堆積させた。
この銅(Cu)は、樹脂層から容易かつ速やかに落下して撥液膜上に移動して堆積され、銅(Cu)膜となった。この銅(Cu)膜の厚みは100nmであった。
次いで、この銅(Cu)膜付石英ガラス基板をメチルエチルケトン(MEK)及びトルエンを含む溶媒により超音波洗浄し、樹脂層を除去した。
以上により、マスクやレジスト膜を用いることなく、インクジェットという簡便な方法により、所望のパターンを有する銅(Cu)からなる蒸着膜を安価に作製することができた。
【0070】
「実施例3」
実施例1で得られたフッ素化処理済みの樹脂層付石英ガラス基板上に、物理気相堆積法(PVD法)により、スズ添加インジウム酸化物(ITO)を堆積させた。
このスズ添加インジウム酸化物(ITO)は、樹脂層から容易かつ速やかに落下して撥液膜上に移動して堆積された。このスズ添加インジウム酸化物(ITO)膜の厚みは100nmであった。
【0071】
次いで、このスズ添加インジウム酸化物(ITO)膜付石英ガラス基板をメチルエチルケトン(MEK)及びトルエンを含む溶媒により超音波洗浄し、樹脂層を除去した。
以上により、マスクやレジスト膜を用いることなく、インクジェットという簡便な方法により、所望のパターンを有するスズ添加インジウム酸化物(ITO)からなるCVD膜を安価に作製することができた。
【符号の説明】
【0072】
1…基材、1a…表面、2…撥液膜、3…インクジェット、4…インク(液滴)、5…樹脂層、7…フッ素化処理、8…蒸着材料、9…膜、11…積層構造、11a〜11d…樹脂層、13…膜、21…網目状の樹脂層、21a…樹脂層、22…膜、23…電子部品、1100…パーソナルコンピュータ(電子機器)、1200…携帯電話機(電子機器)、1300…ディジタルスチルカメラ(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に膜材料を堆積させることにより膜を形成する成膜方法であって、
前記基材の表面に、インクジェット法により、所定のパターンを有する樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施す工程と、
前記樹脂層を含む前記基材の表面に膜材料を堆積し、この膜材料を、前記樹脂層以外の前記基材の表面に集合させ、この集合した膜材料を前記膜とする工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
基材の表面に膜材料を堆積させることにより膜を形成する成膜方法であって、
前記基材の表面を撥液化処理する工程と、
前記撥液化処理が施された基材の表面に、インクジェット法により、所定のパターンを有する樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層に、その付着エネルギーを低下させるフッ素化処理を施す工程と、
前記樹脂層を含む前記基材の表面に膜材料を堆積し、この膜材料を、前記樹脂層以外の前記基材の表面に集合させ、この集合した膜材料を前記膜とする工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
前記樹脂層は、複数の樹脂層を積層してなる積層構造であることを特徴とする請求項1または2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記樹脂層は、上端部より下端部が広い凸状であることを特徴とする請求項1、2または3記載の成膜方法。
【請求項5】
前記膜材料を前記膜とする工程の後に、前記樹脂層を除去する工程を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の成膜方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate