成膜装置及び成膜方法
【課題】 基材表面に均一な薄膜を安定して形成できる成膜装置及び成膜方法を提供すること。
【解決手段】 チャンバ3内に基材搬送室9、成膜室11、排気室13が形成される。巻出しローラ15は基材16を巻回しており、基材16はガイドローラ21−1、21−2、張力ピックアップロール23−1、ガイドローラ21−2を介してドラム19に巻きつけられ、更にガイドローラ21−3、張力ピックアップロール23−2、ガイドローラ21−4、21−5を介して巻取りローラ17で巻き取られる。ガス供給部37から基材16に向けて、成膜ガスが放出され、電気的にフローティングレベルに設定され、基材同一面側に配置された電極55−1、55−2間に電力が供給され、プラズマ4が発生し、基材16の表面に薄膜が形成される。
【解決手段】 チャンバ3内に基材搬送室9、成膜室11、排気室13が形成される。巻出しローラ15は基材16を巻回しており、基材16はガイドローラ21−1、21−2、張力ピックアップロール23−1、ガイドローラ21−2を介してドラム19に巻きつけられ、更にガイドローラ21−3、張力ピックアップロール23−2、ガイドローラ21−4、21−5を介して巻取りローラ17で巻き取られる。ガス供給部37から基材16に向けて、成膜ガスが放出され、電気的にフローティングレベルに設定され、基材同一面側に配置された電極55−1、55−2間に電力が供給され、プラズマ4が発生し、基材16の表面に薄膜が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜装置(以下、成膜装置と称する)及びプラズマCVD成膜方法(以下、成膜方法と称する)に係り、特に減圧下において長尺状の基材表面に均一に薄膜を安定して連続形成する成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマCVD法により基板上に薄膜を形成するためには、容量結合型プラズマと誘導結合型プラズマを用いる方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】プラズマエレクトロニクス オーム社 菅井秀郎編集 第1版第1刷 平成12年8月25日発行 106ページ
【0004】
本文献106ページ8行目には、容量結合型プラズマは簡単に大口径プラズマを作れることが記載され、ウエハーやガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔等の基材に対して薄膜形成を行う分野で、容量結合型プラズマが広く用いられている。
【0005】
本文献図6.3及び106ページ13行目から14行目には容量結合型プラズマを薄膜形成に用いる場合、プラズマ放電用の2枚の電極を用い、被成膜基材は、これら2枚の電極上に配置され、この状態で成膜が行われる。
また、ロール状の基材に対して連続的に基材を搬送する機構を有し、容量結合型プラズマCVD法により成膜する装置として図8に示すものがある(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−61416
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような方法で成膜を行う場合、半導体や絶縁性の被成膜基材の配置によりプラズマの電気的流れにくさ、即ち放電インピーダンスが大きくなり、プラズマ放電が立ちにくくなり、またプラズマ放電の安定性が悪くなるという問題があった。
プラズマ放電の不安定さはアーキングのような異常放電を引き起こし、基材に対して直径数ミリ程度のアーキング跡をつけたり、これが激しい場合には穴をあけてしまう等の外観不良、品質低下を引き起こす問題があった。
またプラズマが不安定であると、長尺状の基材等に成膜を行う際、基材搬送制御にも影響を与え、長時間連続して均一に膜を形成することができないという問題があった。
【0008】
また、放電インピーダンスが大きくなると、同一電力を投入した場合でも放電電圧が上昇し、放電電流は低下する。この結果、成膜速度の低下(生産性低下)、膜応力の増加、基材へのダメージ(電気的なチャージアップの発生、基材が強くエッチングされることによる密着性不良、基材着色発生など)の不具合が生じ、膜品質の低下が問題となる。
さらには、基材によって放電インピーダンスが異なるため、形成される膜の膜厚や膜質が異なるという問題が生じ、基材の種類毎に成膜条件を最適化させる必要があった。
【0009】
以上の問題は、例えばSiO2やTiO2のような絶縁膜を形成する際には、成膜材料の分解性が悪いことに起因して放電インピーダンスが更に大きくなり、成膜が不安定になるという問題がある。
一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長尺状の基材に連続して基材表面に均一な薄膜を安定して形成できる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために第1の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、前記基材を巻きつけるドラムと、前記基材を搬送する搬送機構と、前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極と、前記2つの電極間に電力を供給する電源と、を具備することを特徴とする成膜装置である。
【0012】
ここで、電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバや他の成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。電極の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、ドラムの冷却または加熱に必要な冷媒や熱媒が用いられ、この冷媒や熱媒を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グラウンドレベル)を基準として、電極とアースとの間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
【0013】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えてもよい。前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであることが望ましい。前記マグネットは、マグネトロン構造を有する。
【0014】
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzであることが望ましい。前記電源は、投入電力制御または、インピーダンス制御等が行われる。
前記ドラムは、電気的にアースレベルに設置されてもよく、電気的にフローティングレベルに設置されてもよい。また、前記ドラムがフローティングレベルの場合、前記ドラムに一定の直流電圧を印加してもよい。
【0015】
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給する。前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルでもよい。
前記チャンバは、成膜室と基材搬送室とを有する構成にしてもよい。十分な膜の緻密性と基材に対する密着性を有する膜を形成するためには、前記成膜室の成膜圧力が0.1Paから100Paの間に設定、維持することが望ましい。前記基材搬送室の真空度は、成膜室プラズマが基材搬送室へもれこみプラズマ放電(成膜)が不安定になるのを防ぎ、基材搬送を適切に制御することを可能とするために、また、基材搬送機構へのプラズマダメージから保護するために、前記成膜室の成膜時の真空度よりも10倍以上10000倍以下の範囲で高く設定、維持することが望ましい。
【0016】
前記成膜室よりも後段の前記基材搬送室に成膜により発生した基材帯電を除去する基材帯電除去部を基材の片面または両面の表面に対して備えてもよい。前記基材帯電除去部はプラズマ放電装置等である。前記成膜室よりも前段の前記基材搬送室にプラズマ放電装置を備えてもよい。
【0017】
前記チャンバは、成膜室と排気室を有する構成にしてもよい。前記排気室の真空度は前記成膜室の成膜時の真空度よりも10倍以上10000倍以下の範囲であることが望ましい。
このように排気室真空度を設定することで、成膜基材表面で生成される副生成物を効率よく除去し、良質な膜の生成が可能となる。
前記ドラムは少なくともステンレス、鉄、銅、クロムのうちいずれかを1以上含む材料から形成され、前記ドラムは、表面平均粗さRaが0.1nm以上10nm以下であることが望ましい。
【0018】
前記ドラムを−20℃から200℃の間の一定温度に保つ温度調整手段を更に備えてもよい。前記ドラムは、両端部に絶縁性領域を備えてもよい。前記絶縁性領域は、Al、Si、Ta、Ti、Nb、V、Bi、Y、W,Mo、Zr、Hfのいずれか1以上の酸化膜または窒化膜または酸化窒化膜で形成される。または、前記絶縁性領域は、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、マイカのいずれか1の成型体、テープ、コーティング膜により被覆している。
【0019】
第2の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、チャンバ内に設けられたドラムに基材を巻きつけ、前記チャンバ内にガスを供給し、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極間に電力を供給し、プラズマを発生させ、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基材を電極間に置いて成膜しないため、プラズマ放電中に電気的にカップリングされず、放電インピーダンス上昇を防ぐことが可能となる。この結果、放電開始電圧の低減により、プラズマ放電が立ちやすくなる、放電維持電圧の低減により、安定してプラズマ放電が可能になるなどの利点がある。また放電インピーダンスが小さくなることから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0021】
さらに、基材によるインピーダンス変動を考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。
また電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。先に放電インピーダンスが大きくなる場合の不具合を説明したが、一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。
【0022】
このような場合、具体的には組になって設置されている電極間の距離を広げることで放電インピーダンスは増加する。この結果、印加電力一定の場合、成膜の放電電圧は大きく、放電電流は小さくなり、結果としてイオン打ち込み効果が高まり、密着性の高い膜を形成することが可能となる。
【0023】
反対に組になって設置されている電極間の距離を狭めることで、放電インピーダンスは減少し、印加電力一定の場合、放電電圧は小さく、放電電流は大きくなり、成膜速度の上昇(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0024】
このように、放電インピーダンスを最適とすることが可能となり、基材へのイオン打ち込み効果を調整し、膜の密着性を高めたり、基材へのダメージを低減し、良質な膜の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態に係る成膜装置及び成膜方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る成膜装置1の概略構成を示す図である。チャンバ3内に隔壁5、7が形成される。隔壁5の上側には基材搬送室9が形成され、隔壁5と隔壁7で囲まれた空間に成膜室11が形成され、隔壁7より下側に排気室13が形成される。
【0026】
基材搬送室9には巻出しローラ15、巻取りローラ17が設けられる。隔壁5で挟まれるようにドラム19が設けられ、巻出しローラ15とドラム19との間にガイドローラ21−1、21−2、21−3および張力ピックアップロール23−1が設けられ、ドラム19と巻取りローラ17との間にガイドローラ21−4、21−5、21−6及び張力ピックアップロール23−2が設けられる。
【0027】
巻出しローラ15は基材16を巻回しており、基材16はガイドローラ21−1、21−2、張力ピックアップロール23−1、ガイドローラ21−3を介してドラム19に巻きつけられ、更にガイドローラ21−4、張力ピックアップロール23−2、ガイドローラ21−5、21−6を介して巻取りローラ17で巻き取られる。張力ピックアップロール23−1、23−2により基材16の張力を調整し、基材を搬送する。
【0028】
また、基材搬送方向は図1においては巻出しローラ15から巻取りローラ17へ基材が進むよう説明しているが、逆方向に基材を搬送しながら成膜したり、基材処理を行うこと、これらを繰り返し行うことも可能である。真空を大気圧に戻さず、繰り返し成膜することが生産性、膜質の面からも好ましい。
基材16は、ガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔、紙、不織布、繊維等である。
【0029】
ドラム19近傍に前処理装置25、後処理装置27が設けられる。前処理装置25はたとえば、プラズマ放電装置であり、後処理装置27は成膜により発生した基材帯電を除去する装置であり、例えばプラズマ放電装置である。
【0030】
隔壁7に挟まれるように、ガス供給部37−1、37−2、37−3が設けられ、ガス供給部37−1、37−2、37−3は流量制御器35−1、35−2、35−3を介してガス貯留部33−1、33−2、33−3に接続される。
ガス貯留部33−1、33−2、33−3は、成膜用ガスを貯留し、それぞれ例えば、成膜原料であるTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)、分解性の酸化ガスである酸素(02)、放電用イオン化ガスであるアルゴン(Ar)を貯留する。流量制御器35−1、35−2は、35−3はガス貯留部33−1、33−2、33−3からガス供給部37に送られるガスの流量を計測する。
【0031】
ガス供給部37−1、37−2、37−3はその噴出口がドラム19上の基材16に向けられる。このため、基材16表面に均一に成膜用ガスを拡散、供給させることが可能となり、基材16の大面積の部分に均一な成膜が可能となる。
【0032】
ガス供給部37−1、37−2の間に電極55−1を備えた電極ユニット39−1が設けられ、ガス供給部37−2、37−3の間に電極55−2を備えた電極ユニット39−2が設けられ、電極55−1、55−2は電源41と接続され、電源41から電力が供給される。電極55−1、55−2電気的にフローティングレベルに設定されている。
【0033】
ここで電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバや成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。電極の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、電極を冷却するために必要な冷媒を用い、この冷媒やこれら冷媒を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グラウンドレベル)を基準とし、電極とアースとの間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
【0034】
基材搬送室9には、圧力調整バルブ29−1を介して真空排気ポンプ31−1が設けられ、成膜室11には圧力調整バルブ29−2を介して真空排気ポンプ31−2が設けられ、排気室13には圧力調整バルブ29−3を介して真空排気ポンプ31−3が設けられる。
これら真空排気ポンプの排気能力および圧力調整バルブの開度を調整することで、任意の真空度に設定することが可能である。
【0035】
図2は電極ユニット39−1の断面図、図3は図2のA方向矢視図、図4は図3のC−C断面図である。
支持台51に絶縁性シールド板53が設けられ、この絶縁性シールド板53に電極55が設けられる。これらの間には熱伝導を防ぐために、オーリングやスペーサを用いて空間を設け、直接的な接触を防ぐ構造としても良い。いずれにせよ、電極55は支持台51とは電気的に絶縁された構造である。電極55には外部が絶縁材料で被覆された電力供給配線59が設けられ、電極55の内部には冷媒を循環させるための温度調節媒体用配管57が設けられる。
【0036】
電極ユニット39−2も同一の構造体を用いることが可能である。また通常、組にして使用する電極ユニットおよび電極は、電気的にバランスを等価とするため、同一サイズ、同一構造体を用いるのが好適である。
【0037】
電力供給配線59は電源41に接続され、電源41から電力が供給されると電極55からプラズマ43が発生する。温度調節媒体用配管57内部には温度調節用媒体が流れ、電極55や電極ユニット39を冷却または加熱することができる。
【0038】
図5はドラム19の側面図、図6はドラム19の断面図、図7は図5のD方向の矢視図である。ドラム19は円筒状のドラム本体61の両端に回転軸63を備える。回転軸63にはベアリング65が設けられる。ドラム温度制御のため、ドラム19および回転軸63の内部には、冷媒や熱媒等の温度調節媒体を循環させるための配管が設置される。ドラムはドラム内を循環させる温度調節媒体の温度を調整することにより、−20℃から+200℃の間で、一定温度に調節することが可能で、その温度制御性は設定温度±2℃であることが好ましい。ドラム本体61の中央部の両側、及び回転軸63周囲には電気的な絶縁部69が設けられ、基材16はドラム本体61の中央部に巻かれる。
【0039】
電源41は、その周波数が10Hzから27.12MHzである。10Hz以上の周波数で安定した成膜放電が可能となるとともに、27.12MHzよりも高い周波数では電源やそのマッチング回路が高価になり装置コストが高くなる。
さらに好ましくは10kHz〜500kHz、13.56MHz、27.12MHzが好ましい。
【0040】
10kHz〜500kHzの成膜用電源を用いた場合は、成膜材料が成膜のために必要な分解を起こす効率が高いことと、基材16への成膜材料打ち込み効果が高いため良質な膜が得られる。また、13.56MHz、27.12MHzは成膜材料の成膜に必要な分解を起こす分解効率が更に高まり、ガスの反応性が高くなり、緻密で密着性の高い良質な成膜が可能となる。これら電源は高周波数帯の中でも、産業上利用を許容された周波数であるため、同周波数電源は多数市販化されていて、安価であるという利点がある。
【0041】
電源41の制御方法として投入電力制御または放電電圧値を放電電流値で割り算した電気の流れにくさを示す放電インピーダンスを制御する、インピーダンス制御方式がある。投入電力制御では電源41の成膜投入電力を一定となるようプラズマ放電を安定化させながら成膜を行う方法で、安定的、簡便、安価に成膜を行うことができる。
【0042】
インピーダンス制御では、応答性が速いこと、長時間の成膜におけるインピーダンス変化が生じた場合、例えば放電によりチャンバ3の内壁が温まることで放出し始める水分の影響により、CVD成膜ガスの組成が変化し、結果としてインピーダンスが変化したような場合、これを一定に維持する効果がある。
【0043】
また、電源41の安定成膜のための制御方法として、光学的手法を用いてもよい。たとえば、プラズマエミッションモニタを設置し、プラズマ中での特定元素の発光強度をモニタし、その発光強度を一定とするためのプロセス制御を行ってもよい。この場合のプロセス制御方法としては、成膜原料ガス、分解性ガス、酸化ガス、放電ガス、イオン化ガスなどの供給ガス量を制御したり、成膜圧力、基板温度等の成膜条件を制御してもよい。
【0044】
ドラム19は電気的にアースレベルに設置してもよい。ドラム19をアースレベルに設置した場合、基材16表面に蓄積された帯電電荷がアースレベルに開放され、結果として安定した成膜が可能となる。この場合、ドラム本体や回転軸、ベアリング、ドラム支持体に金属製の導電性材料を用いることで実現できる。
【0045】
また、ドラム19は電気的にフローティングレベル即ち絶縁電位に設置してもよい。ドラム19の電位をフローティングレベルとすることで電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。
【0046】
ここで電気的フローティングレベルとは、電気的にチャンバ3や装置部品と絶縁性が保たれるように装置が設計、構成されている状態を意味している。絶縁性が確保されているように設計されているにも拘らず、ドラム19や基材16の冷却・加熱に必要な温度調節媒体が用いられる場合は、例えば配管や媒体が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グラウンドレベル)を基準とし、10kΩ〜1000MΩの抵抗を有してもよい。
この場合、ドラム回転軸、ベアリング、ドラム支持体部品のいずれか1つ以上を絶縁性部品とすることで実現することができる。
【0047】
ドラム19が電気的にフローティングレベルの場合、ドラム19に直流電位をかけ、基材16へのイオン化された成膜材料の打ち込み効果を強めたり、弱めたりする機構を設置することが可能となる。イオン化打ち込み効果を高めるためには、基材16にマイナス10Vからマイナス3000Vのマイナス電位を与え、イオン化打ち込み効果を弱めるためには、基材16にプラス10Vからプラス3000Vのプラス電位を与えることが好ましい。また、設備的には高額複雑となるが、基材16に10Hz〜27.12MHzの周波数を有する交流電力を与えてもよい。
【0048】
また、成膜インピーダンスを最適とするために、電極55−1と電極55−2の距離を変更することにより調整することが可能となる。具体的には電極55−1と電極55−2間の距離を広げることで成膜インピーダンスは増加し、成膜電力を一定とした場合に、成膜放電電圧は高く、成膜放電電流は小さくなる。反対に両電極間の距離を狭めることで、成膜インピーダンスは減少し、成膜電力を一定とした場合に、成膜放電電圧は低く、成膜放電電流は大きくなる。
このような調整により、基材へのイオンの打ち込み効果を調整し、基材へのダメージを低減したり、反対に基材への膜の密着率を強めたりすることが可能となる。
【0049】
ガス供給部37−1、37−2、37−3は電気的にフローティングレベルとしてもよい。この場合、ガス供給部37−1、37−2、37−3に成膜電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。また、ガス供給部37−1、37−2、37−3においてチャンバ3内にガスが供給される以前に配管供給口で成膜が生じ、供給口を塞ぐことを回避できる。
【0050】
基材搬送室9は、電極55−1、55−2の存在する成膜室11とは隔壁(ゾーンシール)5により仕切られ圧力が異なる。基材搬送室9と成膜室11とを圧力的に異なる空間とすることで成膜室11のプラズマ43が基材搬送室9に漏れることによって成膜室11のプラズマ放電状態が不安定になったり、基材搬送室9の部材を傷めたり、基材搬送機構の制御のための電気回路に電気的ダメージを与えて、制御不良を引き起こすことがなくなり、安定した成膜及び基材搬送が可能となる。
【0051】
具体的には、成膜室11の成膜圧力は0.1Paから100Paの間である。このような成膜圧力で成膜を行うことにより、安定したプラズマ43を形成することができる。
【0052】
そして、基材搬送室9の圧力(真空度)は成膜室11の成膜時の圧力(真空度)よりも10倍から10000倍高くする。このように、基材搬送室9の圧力を設定することにより成膜室11のプラズマ43が基材搬送室9に漏れ込むことがなくなり、成膜室11でのプラズマCVD成膜を安定して行うことができる。
【0053】
排気室13は、隔壁(ゾーンシール)7により成膜室11と仕切られ、圧力が異なる。排気室13は成膜室11の成膜時の圧力よりも10倍以上10000倍以下の圧力(真空度)である。成膜室11と排気室13とを仕切り、成膜室11と排気室13に圧力差を設けることで、成膜時に発生した副生成物を基材16の表面近傍から効率よく排気することができる。
【0054】
成膜室11よりも後段の基材搬送室9に成膜により発生した基材帯電を除去するための基材帯電除去部としての後処理装置27を備える。
【0055】
後処理装置27を成膜室11後段の基材搬送室9に設置し、基材帯電を除去することにより基材16をドラム19から所定位置で速やかに離し搬送することができ、安定した基材搬送が可能となり、帯電に起因する基材16の破損や品質低下を防ぎ、基材16表裏面の濡れ性改善による後加工適正向上を図ることがきる。
【0056】
帯電除去部としての後処理装置27として、例えばプラズマ放電装置、電子線照射装置、紫外線照射装置、除電バー、グロー放電装置、コロナ処理装置等、任意の処理装置を用いることが可能である。
【0057】
プラズマ処理装置、グロー放電装置を用いて放電を形成する場合、基材16近傍でアルゴン、酸素、窒素、ヘリウム等の放電用ガスを単体または混合して供給し、交流(AC)プラズマ、直流(DC)プラズマ、アーク放電、マイクロウェーブ、表面波プラズマ等、任意の放電方式を用いることが可能である。減圧環境下では、プラズマ放電装置を用いる帯電処理方法が最も好ましい。
【0058】
成膜室11よりも前段の基材搬送室9に前処理装置25を備える。前処理装置25は、プラズマ放電処理装置であり、このプラズマ放電処理装置は成膜前に基材16をプラズマ放電処理することにより、基材16の表面を物理的にエッチングすることが可能となり、基材16表面に凹凸形状を形成することが可能な他、化学的な結合状態や官能基を変化させることにより、その後段の成膜時に膜の密着性を向上させることが可能となる。
【0059】
ドラム19は少なくともステンレス、鉄、銅、クロムのいずれか1以上を含む材料により形成される。ドラム19の表面は傷つき防止のため硬質のクロムハードコート処理等を施してもよい。これらの材料は加工が容易で、ドラム自体の熱伝導性がよいので温度制御を行う際に、温度制御性が優れたものとなる。
【0060】
ドラム19は、その表面平均粗さRaが10nm以下、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下であることが好ましい。通常、プラスチックフィルムや金属板(鋼鈑)鋼鈑等、基材16の平均表面粗さRaは通常10〜50nm、特別に表面平坦性を持たせて加工した基材16で5〜10nm、さらに表面コーティング加工により平坦加工を行った場合で、5nm以下の表面平坦性を持つため、これら基材16に対して効率よく冷却、加熱等の温度調整を行うためには、ドラム19は上記範囲が好ましい。
【0061】
また、ドラム19表面は平坦であればあるほど好ましいが、平坦性測定精度の限界は現状0.1nmであり、便宜的にこの値を下限としておく。
ドラム19は、冷却媒体及びまたは熱源媒体あるいはヒータを用いることにより−20℃から+200℃の間で一定温度に設定することができる温度調節機構を有している。
【0062】
温度調節機構により成膜時に発生する熱による基材16の温度の変動を抑えることが可能となる。具体的には、冷却媒体(冷媒)としてエチレングリコール水溶液や熱源媒体(熱媒)としてシリコンオイルを用いたり、ドラム19内を循環させることにより温度調節したり、ドラム19と対向する位置にヒータを設置することが可能である。
【0063】
特に、成膜装置1では関連する機械部品の耐熱性の制約や汎用性の面から設定温度は−20℃から+200℃の間で一定温度に設置できることが好ましく、その制御性は成膜装置1を用いたプロセスにおいては設定温度±2℃以内の範囲で温度制御することが好ましい。
【0064】
図5、図6、図7に示すように、ドラム19は基材16の幅方向に基材16により被覆されない絶縁部69およびドラム側面に絶縁部69を有する。絶縁部69を形成することで成膜室11において導電性の金属部分が露出する領域がなくなり、成膜のために形成されたプラズマが電気的にドラム19に落ちることがなくなり、安定したプラズマ43の形成が可能となる。
【0065】
絶縁部69は、Al、Si、Ta、Ti、Nb、V、Bi、Y、W,Mo、Zr、Hfのいずれか1以上の酸化膜、または窒化膜、または酸化窒化膜で形成される。あるいは、絶縁部69はポリイミド樹脂、フッ素樹脂、マイカのいずれか1の成型体、テープ、コーティング膜により被覆される。これらの方法および材料は絶縁性を確実なものとし、耐熱性、耐プラズマ性を有し、耐久性に優れた材料であるので長時間にわたり安定して用いることが可能である。
【0066】
なお、電極55−1、55−2は、図2、図3、図4に示すものに代えて、図8、図9、図10に示すようにマグネット85を備える構造としても良い。
【0067】
図8は電極55−1、55−2の側面図、図9は図8のB方向の矢視図、図10は図9のC−C断面図である。
また通常、組にして使用する電極ユニットおよび電極は、電気的にバランスを等価とするため、同一サイズ、同一構造体を用いるのが好適である。
【0068】
電極55−1、55−2はマグネトロン構造を有している。図8、図9、図10に示すように、マグネットケース81内に絶縁性スペーサ84、ベースプレート83が設けられ、このベースプレート83にマグネット85が設けられる。マグネットケース81に絶縁性シールド板87が設けられ、この絶縁性シールド板87に電極89が取り付けられる。従ってマグネットケース81と電極89は電気的に絶縁されており、マグネットケース81をチャンバ3内に設置、固定しても電極89は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。電極89に電力供給配線93が接続され、電力供給配線93は電源41に接続される。また、電極89内部には電極およびマグネット冷却のための温度調節媒体配管91が設けられる。
【0069】
マグネット85は電極89からのプラズマが基材16に集中して形成するために設けられる。マグネット85を設けることにより、基材16表面近傍での反応性が高くなり、良質な膜を高速で形成することが可能となる。
【0070】
マグネット85は基材16の表面位置での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。基材16表面での水平磁束密度が10ガウス以上であれば、基材16表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良質な膜を高速で形成することができる。
【0071】
一方、基材16表面での水平磁束密度を10000ガウスよりも高くするには高価な磁石または磁場発生機構が必要となる。
【0072】
電極89−1、89−2のマグネット85の配置構造はマグネトロン構造である。マグネトロン構造とすることでプラズマCVD成膜時に形成されるイオン、電子はこのマグネトロン構造に従って運動する。このため、例えば300mm□以上の大面積の基材16に対してプラズマCVD成膜をする場合においても電極89−1、89−2表面全体にわたり、前述した電子やイオン、成膜材料の分解物が均一に拡散され、基材16が大面積の場合にも均一且つ安定した成膜が可能となる。
【0073】
また、電極やマグネットなど電極ユニットに局所的に偏って熱電子やイオンが蓄積することがなくなり、構成部材の耐熱性が低くてよくなるため、安価に部品を作製できるほか、熱変形、構造物の穴あきや割れ発生といった不具合発生を抑えることが可能となる。
【0074】
電極89、89−1、89−2は、電力を投入するために導電性で、プラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、冷却水による冷却効率が高く(熱伝導率が高く)、非磁性材料で、加工性に優れた材料を用い、作製することが好ましい。具体的には、アルミニウム、銅、ステンレスが好適に用いられる。
絶縁性シールド板87は、絶縁性で、プラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、加工性に優れた材料を用いることが好ましい。具体的にはフッ素樹脂、ポリイミド樹脂が好適に用いられる。
【0075】
次に、成膜装置1の概略の動作について説明する。ガス貯留部33−1、33−2、33−3から成膜用ガスがガス供給部37−1、37−2、37−3に供給され、ガス供給部37−1、37−2、37−3から基材16に向けて成膜用ガスが噴出される。
【0076】
また、電源41から電極89−1、89−2に電力が供給され、電極89−1、89−2から基材16に向けてプラズマ43が発せられ、基材16上に薄膜が形成される。
【0077】
本発明によれば、基材を電極上に置いて成膜せず、電気的にカップリングされなくなるため、プラズマ放電のインピーダンス上昇を防ぐことができ、容易にプラズマ形成が可能となり、かつ長時間安定して放電およびプラズマCVD成膜を行うことが可能となる。また放電インピーダンスが上昇しないことから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0078】
さらに基材によるインピーダンス変動を考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。
また、電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。先に放電インピーダンスが大きくなる場合の不具合を説明したが、一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。このような場合、具体的には対になって設置されている電極89−1と電極89−2の距離を広げることで放電インピーダンスは増加する。この結果、印加電力一定の場合、成膜の放電電圧は大きく、放電電流は小さくなり、結果としてイオン打ち込み効果が高まり、密着性の高い膜を形成することが可能となる。
【0079】
反対に電極89−1と電極89−2の距離を狭めることで、放電インピーダンスは減少し、印加電力一定の場合、放電電圧は小さく、放電電流は大きくなり、成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0080】
このように、放電インピーダンスを最適とすることが可能であり、基材16へのイオン打ち込み効果を調整し、膜の密着性を高めたり、基材へのダメージを低減し、良質な膜の形成が可能となる。
【0081】
次に、図1に示す成膜装置1と図11に示す比較例となる成膜装置201を用いて実際に成膜を行った際の実験結果について説明する。
【0082】
図1に示す成膜装置1において、電極55−1、55−2は前述したように図8、図9、図10に示すマグネトロン構造のマグネット85をセットし、基材16表面での平均水平磁束密度が1000ガウスとなるように設定した。チャンバ3はアースレベルに、ドラム19をフローティングレベルとした。
【0083】
濃度30%のエチレングリコール水溶液を冷媒として温度調節媒体用配管91に供給した。すなわち、ドラム19、電極55−1、55−2に個別に冷媒を循環供給させ、ドラム19を0℃に冷却した。このとき、電極55−1とドラム19の間、電極55−2とドラム19との間、電極55−1と電極55−2の間の抵抗はそれぞれ1MΩであった。
【0084】
基材16として0.6m幅のPETフィルム(東洋紡績社製、A4100、厚み100μm)を用意し、基材搬送室9の基材搬送系にセットした。
真空排気ポンプ31−2、31−3により成膜室11、排気室13ともにチャンバ3内を1×10-4Paまで真空引きした。成膜用ガスとしてTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)を加熱温度120℃で気化して供給した。そして、TEOS、酸素、アルゴンをそれぞれ20sccm、500sccm、200sccmで供給し、均一に混合させた後、基材16上にシャワー状にガスを供給した。
【0085】
次に、真空排気ポンプ31−1、31−2、31−3を調整し、成膜室11の圧力を10Pa、基材搬送室9及び排気室13内の圧力を0.5Paの一定圧力となるように調整した。電源41に周波数40kHzの電源(Advanced Energy Industries, Inc.製、PEII、10kW)を用い、電極55−1、55−2に3kWの電力を電力制御方式より印加し、ライン速度5m/minにより1200m成膜を行った。また、成膜開始後、成膜距離200mおきに前後5m成膜時の平均放電電圧を求めた。また、目視により放電のアーキング(異常放電)発生回数をカウントした結果、発生は0回と異常放電なく、安定した成膜が可能なことが判明した。
【0086】
成膜後、チャンバ3内の残留ガスを排気し、基材16を取り出し、基材16表面の目視観察及び200mおきに、基材幅方向中央部のサンプリングを行い、これらサンプルの膜厚測定及び膜の密度測定を行った。膜厚は走査型電子線顕微鏡(SEM;日立製作所(株)製、S−5000H)を用いて断面観察を行うことから膜厚を求めた。膜密度はX線反射率測定装置(理学電機(株)製、ATX−E)および付属ソフトウエアにより算出した。図12は成膜結果を示す図である。
【0087】
これに対して比較例として、図11に示す成膜装置201を用意した。この成膜装置201は図1に示す成膜装置1と比較して電源41の片側がドラム19に接続されていること、電極55−1、55−2は電気的に等電位に接続されていて、電極55−1、55−2の間の抵抗は0.1Ωであった。また、成膜圧力はチャンバ3内で全ての場所で0.5Paとした。
これら以外は、図1に示す装置と全く同様の設定手順で成膜を行った。図13は成膜結果を示す図である。
【0088】
図12と図13を比較すると、図1に示す本発明に係る成膜装置1では、放電電圧が低減され、放電が安定しやすくなるとともに、放電中のアーキングがほぼ発生せず、良質且つ均一な膜が形成可能となった。また、投入する電力が成膜に有効に用いられることから成膜速度が向上し、膜の密度すなわち緻密性の高い良質な膜が形成された。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る情報提供システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施の形態に係る成膜装置1を示す図
【図2】電極39−1の断面図
【図3】図2のA方向矢視図
【図4】図3のC−C断面図
【図5】ドラム19を示す図
【図6】ドラム19の断面図
【図7】図5のD方方向矢視図
【図8】電極39−1の断面図
【図9】図8のA方向矢視図
【図10】図9のC−C断面図
【図11】比較例となる成膜装置201を示す図
【図12】成膜装置1による成膜結果を示す図
【図13】成膜装置201による成膜結果を示す図
【符号の説明】
【0091】
1………成膜装置
3………チャンバ
5、7………隔壁
9………基材搬送室
11………成膜室
13………排気室
19………ドラム
25………前処理装置
27………後処理装置
37………ガス供給部
39………電極
41………電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜装置(以下、成膜装置と称する)及びプラズマCVD成膜方法(以下、成膜方法と称する)に係り、特に減圧下において長尺状の基材表面に均一に薄膜を安定して連続形成する成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマCVD法により基板上に薄膜を形成するためには、容量結合型プラズマと誘導結合型プラズマを用いる方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】プラズマエレクトロニクス オーム社 菅井秀郎編集 第1版第1刷 平成12年8月25日発行 106ページ
【0004】
本文献106ページ8行目には、容量結合型プラズマは簡単に大口径プラズマを作れることが記載され、ウエハーやガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔等の基材に対して薄膜形成を行う分野で、容量結合型プラズマが広く用いられている。
【0005】
本文献図6.3及び106ページ13行目から14行目には容量結合型プラズマを薄膜形成に用いる場合、プラズマ放電用の2枚の電極を用い、被成膜基材は、これら2枚の電極上に配置され、この状態で成膜が行われる。
また、ロール状の基材に対して連続的に基材を搬送する機構を有し、容量結合型プラズマCVD法により成膜する装置として図8に示すものがある(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−61416
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような方法で成膜を行う場合、半導体や絶縁性の被成膜基材の配置によりプラズマの電気的流れにくさ、即ち放電インピーダンスが大きくなり、プラズマ放電が立ちにくくなり、またプラズマ放電の安定性が悪くなるという問題があった。
プラズマ放電の不安定さはアーキングのような異常放電を引き起こし、基材に対して直径数ミリ程度のアーキング跡をつけたり、これが激しい場合には穴をあけてしまう等の外観不良、品質低下を引き起こす問題があった。
またプラズマが不安定であると、長尺状の基材等に成膜を行う際、基材搬送制御にも影響を与え、長時間連続して均一に膜を形成することができないという問題があった。
【0008】
また、放電インピーダンスが大きくなると、同一電力を投入した場合でも放電電圧が上昇し、放電電流は低下する。この結果、成膜速度の低下(生産性低下)、膜応力の増加、基材へのダメージ(電気的なチャージアップの発生、基材が強くエッチングされることによる密着性不良、基材着色発生など)の不具合が生じ、膜品質の低下が問題となる。
さらには、基材によって放電インピーダンスが異なるため、形成される膜の膜厚や膜質が異なるという問題が生じ、基材の種類毎に成膜条件を最適化させる必要があった。
【0009】
以上の問題は、例えばSiO2やTiO2のような絶縁膜を形成する際には、成膜材料の分解性が悪いことに起因して放電インピーダンスが更に大きくなり、成膜が不安定になるという問題がある。
一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長尺状の基材に連続して基材表面に均一な薄膜を安定して形成できる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために第1の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、前記基材を巻きつけるドラムと、前記基材を搬送する搬送機構と、前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極と、前記2つの電極間に電力を供給する電源と、を具備することを特徴とする成膜装置である。
【0012】
ここで、電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバや他の成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。電極の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、ドラムの冷却または加熱に必要な冷媒や熱媒が用いられ、この冷媒や熱媒を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グラウンドレベル)を基準として、電極とアースとの間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
【0013】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えてもよい。前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであることが望ましい。前記マグネットは、マグネトロン構造を有する。
【0014】
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzであることが望ましい。前記電源は、投入電力制御または、インピーダンス制御等が行われる。
前記ドラムは、電気的にアースレベルに設置されてもよく、電気的にフローティングレベルに設置されてもよい。また、前記ドラムがフローティングレベルの場合、前記ドラムに一定の直流電圧を印加してもよい。
【0015】
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給する。前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルでもよい。
前記チャンバは、成膜室と基材搬送室とを有する構成にしてもよい。十分な膜の緻密性と基材に対する密着性を有する膜を形成するためには、前記成膜室の成膜圧力が0.1Paから100Paの間に設定、維持することが望ましい。前記基材搬送室の真空度は、成膜室プラズマが基材搬送室へもれこみプラズマ放電(成膜)が不安定になるのを防ぎ、基材搬送を適切に制御することを可能とするために、また、基材搬送機構へのプラズマダメージから保護するために、前記成膜室の成膜時の真空度よりも10倍以上10000倍以下の範囲で高く設定、維持することが望ましい。
【0016】
前記成膜室よりも後段の前記基材搬送室に成膜により発生した基材帯電を除去する基材帯電除去部を基材の片面または両面の表面に対して備えてもよい。前記基材帯電除去部はプラズマ放電装置等である。前記成膜室よりも前段の前記基材搬送室にプラズマ放電装置を備えてもよい。
【0017】
前記チャンバは、成膜室と排気室を有する構成にしてもよい。前記排気室の真空度は前記成膜室の成膜時の真空度よりも10倍以上10000倍以下の範囲であることが望ましい。
このように排気室真空度を設定することで、成膜基材表面で生成される副生成物を効率よく除去し、良質な膜の生成が可能となる。
前記ドラムは少なくともステンレス、鉄、銅、クロムのうちいずれかを1以上含む材料から形成され、前記ドラムは、表面平均粗さRaが0.1nm以上10nm以下であることが望ましい。
【0018】
前記ドラムを−20℃から200℃の間の一定温度に保つ温度調整手段を更に備えてもよい。前記ドラムは、両端部に絶縁性領域を備えてもよい。前記絶縁性領域は、Al、Si、Ta、Ti、Nb、V、Bi、Y、W,Mo、Zr、Hfのいずれか1以上の酸化膜または窒化膜または酸化窒化膜で形成される。または、前記絶縁性領域は、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、マイカのいずれか1の成型体、テープ、コーティング膜により被覆している。
【0019】
第2の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、チャンバ内に設けられたドラムに基材を巻きつけ、前記チャンバ内にガスを供給し、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極間に電力を供給し、プラズマを発生させ、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基材を電極間に置いて成膜しないため、プラズマ放電中に電気的にカップリングされず、放電インピーダンス上昇を防ぐことが可能となる。この結果、放電開始電圧の低減により、プラズマ放電が立ちやすくなる、放電維持電圧の低減により、安定してプラズマ放電が可能になるなどの利点がある。また放電インピーダンスが小さくなることから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0021】
さらに、基材によるインピーダンス変動を考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。
また電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。先に放電インピーダンスが大きくなる場合の不具合を説明したが、一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。
【0022】
このような場合、具体的には組になって設置されている電極間の距離を広げることで放電インピーダンスは増加する。この結果、印加電力一定の場合、成膜の放電電圧は大きく、放電電流は小さくなり、結果としてイオン打ち込み効果が高まり、密着性の高い膜を形成することが可能となる。
【0023】
反対に組になって設置されている電極間の距離を狭めることで、放電インピーダンスは減少し、印加電力一定の場合、放電電圧は小さく、放電電流は大きくなり、成膜速度の上昇(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0024】
このように、放電インピーダンスを最適とすることが可能となり、基材へのイオン打ち込み効果を調整し、膜の密着性を高めたり、基材へのダメージを低減し、良質な膜の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態に係る成膜装置及び成膜方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る成膜装置1の概略構成を示す図である。チャンバ3内に隔壁5、7が形成される。隔壁5の上側には基材搬送室9が形成され、隔壁5と隔壁7で囲まれた空間に成膜室11が形成され、隔壁7より下側に排気室13が形成される。
【0026】
基材搬送室9には巻出しローラ15、巻取りローラ17が設けられる。隔壁5で挟まれるようにドラム19が設けられ、巻出しローラ15とドラム19との間にガイドローラ21−1、21−2、21−3および張力ピックアップロール23−1が設けられ、ドラム19と巻取りローラ17との間にガイドローラ21−4、21−5、21−6及び張力ピックアップロール23−2が設けられる。
【0027】
巻出しローラ15は基材16を巻回しており、基材16はガイドローラ21−1、21−2、張力ピックアップロール23−1、ガイドローラ21−3を介してドラム19に巻きつけられ、更にガイドローラ21−4、張力ピックアップロール23−2、ガイドローラ21−5、21−6を介して巻取りローラ17で巻き取られる。張力ピックアップロール23−1、23−2により基材16の張力を調整し、基材を搬送する。
【0028】
また、基材搬送方向は図1においては巻出しローラ15から巻取りローラ17へ基材が進むよう説明しているが、逆方向に基材を搬送しながら成膜したり、基材処理を行うこと、これらを繰り返し行うことも可能である。真空を大気圧に戻さず、繰り返し成膜することが生産性、膜質の面からも好ましい。
基材16は、ガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔、紙、不織布、繊維等である。
【0029】
ドラム19近傍に前処理装置25、後処理装置27が設けられる。前処理装置25はたとえば、プラズマ放電装置であり、後処理装置27は成膜により発生した基材帯電を除去する装置であり、例えばプラズマ放電装置である。
【0030】
隔壁7に挟まれるように、ガス供給部37−1、37−2、37−3が設けられ、ガス供給部37−1、37−2、37−3は流量制御器35−1、35−2、35−3を介してガス貯留部33−1、33−2、33−3に接続される。
ガス貯留部33−1、33−2、33−3は、成膜用ガスを貯留し、それぞれ例えば、成膜原料であるTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)、分解性の酸化ガスである酸素(02)、放電用イオン化ガスであるアルゴン(Ar)を貯留する。流量制御器35−1、35−2は、35−3はガス貯留部33−1、33−2、33−3からガス供給部37に送られるガスの流量を計測する。
【0031】
ガス供給部37−1、37−2、37−3はその噴出口がドラム19上の基材16に向けられる。このため、基材16表面に均一に成膜用ガスを拡散、供給させることが可能となり、基材16の大面積の部分に均一な成膜が可能となる。
【0032】
ガス供給部37−1、37−2の間に電極55−1を備えた電極ユニット39−1が設けられ、ガス供給部37−2、37−3の間に電極55−2を備えた電極ユニット39−2が設けられ、電極55−1、55−2は電源41と接続され、電源41から電力が供給される。電極55−1、55−2電気的にフローティングレベルに設定されている。
【0033】
ここで電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバや成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。電極の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、電極を冷却するために必要な冷媒を用い、この冷媒やこれら冷媒を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グラウンドレベル)を基準とし、電極とアースとの間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
【0034】
基材搬送室9には、圧力調整バルブ29−1を介して真空排気ポンプ31−1が設けられ、成膜室11には圧力調整バルブ29−2を介して真空排気ポンプ31−2が設けられ、排気室13には圧力調整バルブ29−3を介して真空排気ポンプ31−3が設けられる。
これら真空排気ポンプの排気能力および圧力調整バルブの開度を調整することで、任意の真空度に設定することが可能である。
【0035】
図2は電極ユニット39−1の断面図、図3は図2のA方向矢視図、図4は図3のC−C断面図である。
支持台51に絶縁性シールド板53が設けられ、この絶縁性シールド板53に電極55が設けられる。これらの間には熱伝導を防ぐために、オーリングやスペーサを用いて空間を設け、直接的な接触を防ぐ構造としても良い。いずれにせよ、電極55は支持台51とは電気的に絶縁された構造である。電極55には外部が絶縁材料で被覆された電力供給配線59が設けられ、電極55の内部には冷媒を循環させるための温度調節媒体用配管57が設けられる。
【0036】
電極ユニット39−2も同一の構造体を用いることが可能である。また通常、組にして使用する電極ユニットおよび電極は、電気的にバランスを等価とするため、同一サイズ、同一構造体を用いるのが好適である。
【0037】
電力供給配線59は電源41に接続され、電源41から電力が供給されると電極55からプラズマ43が発生する。温度調節媒体用配管57内部には温度調節用媒体が流れ、電極55や電極ユニット39を冷却または加熱することができる。
【0038】
図5はドラム19の側面図、図6はドラム19の断面図、図7は図5のD方向の矢視図である。ドラム19は円筒状のドラム本体61の両端に回転軸63を備える。回転軸63にはベアリング65が設けられる。ドラム温度制御のため、ドラム19および回転軸63の内部には、冷媒や熱媒等の温度調節媒体を循環させるための配管が設置される。ドラムはドラム内を循環させる温度調節媒体の温度を調整することにより、−20℃から+200℃の間で、一定温度に調節することが可能で、その温度制御性は設定温度±2℃であることが好ましい。ドラム本体61の中央部の両側、及び回転軸63周囲には電気的な絶縁部69が設けられ、基材16はドラム本体61の中央部に巻かれる。
【0039】
電源41は、その周波数が10Hzから27.12MHzである。10Hz以上の周波数で安定した成膜放電が可能となるとともに、27.12MHzよりも高い周波数では電源やそのマッチング回路が高価になり装置コストが高くなる。
さらに好ましくは10kHz〜500kHz、13.56MHz、27.12MHzが好ましい。
【0040】
10kHz〜500kHzの成膜用電源を用いた場合は、成膜材料が成膜のために必要な分解を起こす効率が高いことと、基材16への成膜材料打ち込み効果が高いため良質な膜が得られる。また、13.56MHz、27.12MHzは成膜材料の成膜に必要な分解を起こす分解効率が更に高まり、ガスの反応性が高くなり、緻密で密着性の高い良質な成膜が可能となる。これら電源は高周波数帯の中でも、産業上利用を許容された周波数であるため、同周波数電源は多数市販化されていて、安価であるという利点がある。
【0041】
電源41の制御方法として投入電力制御または放電電圧値を放電電流値で割り算した電気の流れにくさを示す放電インピーダンスを制御する、インピーダンス制御方式がある。投入電力制御では電源41の成膜投入電力を一定となるようプラズマ放電を安定化させながら成膜を行う方法で、安定的、簡便、安価に成膜を行うことができる。
【0042】
インピーダンス制御では、応答性が速いこと、長時間の成膜におけるインピーダンス変化が生じた場合、例えば放電によりチャンバ3の内壁が温まることで放出し始める水分の影響により、CVD成膜ガスの組成が変化し、結果としてインピーダンスが変化したような場合、これを一定に維持する効果がある。
【0043】
また、電源41の安定成膜のための制御方法として、光学的手法を用いてもよい。たとえば、プラズマエミッションモニタを設置し、プラズマ中での特定元素の発光強度をモニタし、その発光強度を一定とするためのプロセス制御を行ってもよい。この場合のプロセス制御方法としては、成膜原料ガス、分解性ガス、酸化ガス、放電ガス、イオン化ガスなどの供給ガス量を制御したり、成膜圧力、基板温度等の成膜条件を制御してもよい。
【0044】
ドラム19は電気的にアースレベルに設置してもよい。ドラム19をアースレベルに設置した場合、基材16表面に蓄積された帯電電荷がアースレベルに開放され、結果として安定した成膜が可能となる。この場合、ドラム本体や回転軸、ベアリング、ドラム支持体に金属製の導電性材料を用いることで実現できる。
【0045】
また、ドラム19は電気的にフローティングレベル即ち絶縁電位に設置してもよい。ドラム19の電位をフローティングレベルとすることで電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。
【0046】
ここで電気的フローティングレベルとは、電気的にチャンバ3や装置部品と絶縁性が保たれるように装置が設計、構成されている状態を意味している。絶縁性が確保されているように設計されているにも拘らず、ドラム19や基材16の冷却・加熱に必要な温度調節媒体が用いられる場合は、例えば配管や媒体が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グラウンドレベル)を基準とし、10kΩ〜1000MΩの抵抗を有してもよい。
この場合、ドラム回転軸、ベアリング、ドラム支持体部品のいずれか1つ以上を絶縁性部品とすることで実現することができる。
【0047】
ドラム19が電気的にフローティングレベルの場合、ドラム19に直流電位をかけ、基材16へのイオン化された成膜材料の打ち込み効果を強めたり、弱めたりする機構を設置することが可能となる。イオン化打ち込み効果を高めるためには、基材16にマイナス10Vからマイナス3000Vのマイナス電位を与え、イオン化打ち込み効果を弱めるためには、基材16にプラス10Vからプラス3000Vのプラス電位を与えることが好ましい。また、設備的には高額複雑となるが、基材16に10Hz〜27.12MHzの周波数を有する交流電力を与えてもよい。
【0048】
また、成膜インピーダンスを最適とするために、電極55−1と電極55−2の距離を変更することにより調整することが可能となる。具体的には電極55−1と電極55−2間の距離を広げることで成膜インピーダンスは増加し、成膜電力を一定とした場合に、成膜放電電圧は高く、成膜放電電流は小さくなる。反対に両電極間の距離を狭めることで、成膜インピーダンスは減少し、成膜電力を一定とした場合に、成膜放電電圧は低く、成膜放電電流は大きくなる。
このような調整により、基材へのイオンの打ち込み効果を調整し、基材へのダメージを低減したり、反対に基材への膜の密着率を強めたりすることが可能となる。
【0049】
ガス供給部37−1、37−2、37−3は電気的にフローティングレベルとしてもよい。この場合、ガス供給部37−1、37−2、37−3に成膜電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。また、ガス供給部37−1、37−2、37−3においてチャンバ3内にガスが供給される以前に配管供給口で成膜が生じ、供給口を塞ぐことを回避できる。
【0050】
基材搬送室9は、電極55−1、55−2の存在する成膜室11とは隔壁(ゾーンシール)5により仕切られ圧力が異なる。基材搬送室9と成膜室11とを圧力的に異なる空間とすることで成膜室11のプラズマ43が基材搬送室9に漏れることによって成膜室11のプラズマ放電状態が不安定になったり、基材搬送室9の部材を傷めたり、基材搬送機構の制御のための電気回路に電気的ダメージを与えて、制御不良を引き起こすことがなくなり、安定した成膜及び基材搬送が可能となる。
【0051】
具体的には、成膜室11の成膜圧力は0.1Paから100Paの間である。このような成膜圧力で成膜を行うことにより、安定したプラズマ43を形成することができる。
【0052】
そして、基材搬送室9の圧力(真空度)は成膜室11の成膜時の圧力(真空度)よりも10倍から10000倍高くする。このように、基材搬送室9の圧力を設定することにより成膜室11のプラズマ43が基材搬送室9に漏れ込むことがなくなり、成膜室11でのプラズマCVD成膜を安定して行うことができる。
【0053】
排気室13は、隔壁(ゾーンシール)7により成膜室11と仕切られ、圧力が異なる。排気室13は成膜室11の成膜時の圧力よりも10倍以上10000倍以下の圧力(真空度)である。成膜室11と排気室13とを仕切り、成膜室11と排気室13に圧力差を設けることで、成膜時に発生した副生成物を基材16の表面近傍から効率よく排気することができる。
【0054】
成膜室11よりも後段の基材搬送室9に成膜により発生した基材帯電を除去するための基材帯電除去部としての後処理装置27を備える。
【0055】
後処理装置27を成膜室11後段の基材搬送室9に設置し、基材帯電を除去することにより基材16をドラム19から所定位置で速やかに離し搬送することができ、安定した基材搬送が可能となり、帯電に起因する基材16の破損や品質低下を防ぎ、基材16表裏面の濡れ性改善による後加工適正向上を図ることがきる。
【0056】
帯電除去部としての後処理装置27として、例えばプラズマ放電装置、電子線照射装置、紫外線照射装置、除電バー、グロー放電装置、コロナ処理装置等、任意の処理装置を用いることが可能である。
【0057】
プラズマ処理装置、グロー放電装置を用いて放電を形成する場合、基材16近傍でアルゴン、酸素、窒素、ヘリウム等の放電用ガスを単体または混合して供給し、交流(AC)プラズマ、直流(DC)プラズマ、アーク放電、マイクロウェーブ、表面波プラズマ等、任意の放電方式を用いることが可能である。減圧環境下では、プラズマ放電装置を用いる帯電処理方法が最も好ましい。
【0058】
成膜室11よりも前段の基材搬送室9に前処理装置25を備える。前処理装置25は、プラズマ放電処理装置であり、このプラズマ放電処理装置は成膜前に基材16をプラズマ放電処理することにより、基材16の表面を物理的にエッチングすることが可能となり、基材16表面に凹凸形状を形成することが可能な他、化学的な結合状態や官能基を変化させることにより、その後段の成膜時に膜の密着性を向上させることが可能となる。
【0059】
ドラム19は少なくともステンレス、鉄、銅、クロムのいずれか1以上を含む材料により形成される。ドラム19の表面は傷つき防止のため硬質のクロムハードコート処理等を施してもよい。これらの材料は加工が容易で、ドラム自体の熱伝導性がよいので温度制御を行う際に、温度制御性が優れたものとなる。
【0060】
ドラム19は、その表面平均粗さRaが10nm以下、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下であることが好ましい。通常、プラスチックフィルムや金属板(鋼鈑)鋼鈑等、基材16の平均表面粗さRaは通常10〜50nm、特別に表面平坦性を持たせて加工した基材16で5〜10nm、さらに表面コーティング加工により平坦加工を行った場合で、5nm以下の表面平坦性を持つため、これら基材16に対して効率よく冷却、加熱等の温度調整を行うためには、ドラム19は上記範囲が好ましい。
【0061】
また、ドラム19表面は平坦であればあるほど好ましいが、平坦性測定精度の限界は現状0.1nmであり、便宜的にこの値を下限としておく。
ドラム19は、冷却媒体及びまたは熱源媒体あるいはヒータを用いることにより−20℃から+200℃の間で一定温度に設定することができる温度調節機構を有している。
【0062】
温度調節機構により成膜時に発生する熱による基材16の温度の変動を抑えることが可能となる。具体的には、冷却媒体(冷媒)としてエチレングリコール水溶液や熱源媒体(熱媒)としてシリコンオイルを用いたり、ドラム19内を循環させることにより温度調節したり、ドラム19と対向する位置にヒータを設置することが可能である。
【0063】
特に、成膜装置1では関連する機械部品の耐熱性の制約や汎用性の面から設定温度は−20℃から+200℃の間で一定温度に設置できることが好ましく、その制御性は成膜装置1を用いたプロセスにおいては設定温度±2℃以内の範囲で温度制御することが好ましい。
【0064】
図5、図6、図7に示すように、ドラム19は基材16の幅方向に基材16により被覆されない絶縁部69およびドラム側面に絶縁部69を有する。絶縁部69を形成することで成膜室11において導電性の金属部分が露出する領域がなくなり、成膜のために形成されたプラズマが電気的にドラム19に落ちることがなくなり、安定したプラズマ43の形成が可能となる。
【0065】
絶縁部69は、Al、Si、Ta、Ti、Nb、V、Bi、Y、W,Mo、Zr、Hfのいずれか1以上の酸化膜、または窒化膜、または酸化窒化膜で形成される。あるいは、絶縁部69はポリイミド樹脂、フッ素樹脂、マイカのいずれか1の成型体、テープ、コーティング膜により被覆される。これらの方法および材料は絶縁性を確実なものとし、耐熱性、耐プラズマ性を有し、耐久性に優れた材料であるので長時間にわたり安定して用いることが可能である。
【0066】
なお、電極55−1、55−2は、図2、図3、図4に示すものに代えて、図8、図9、図10に示すようにマグネット85を備える構造としても良い。
【0067】
図8は電極55−1、55−2の側面図、図9は図8のB方向の矢視図、図10は図9のC−C断面図である。
また通常、組にして使用する電極ユニットおよび電極は、電気的にバランスを等価とするため、同一サイズ、同一構造体を用いるのが好適である。
【0068】
電極55−1、55−2はマグネトロン構造を有している。図8、図9、図10に示すように、マグネットケース81内に絶縁性スペーサ84、ベースプレート83が設けられ、このベースプレート83にマグネット85が設けられる。マグネットケース81に絶縁性シールド板87が設けられ、この絶縁性シールド板87に電極89が取り付けられる。従ってマグネットケース81と電極89は電気的に絶縁されており、マグネットケース81をチャンバ3内に設置、固定しても電極89は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。電極89に電力供給配線93が接続され、電力供給配線93は電源41に接続される。また、電極89内部には電極およびマグネット冷却のための温度調節媒体配管91が設けられる。
【0069】
マグネット85は電極89からのプラズマが基材16に集中して形成するために設けられる。マグネット85を設けることにより、基材16表面近傍での反応性が高くなり、良質な膜を高速で形成することが可能となる。
【0070】
マグネット85は基材16の表面位置での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。基材16表面での水平磁束密度が10ガウス以上であれば、基材16表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良質な膜を高速で形成することができる。
【0071】
一方、基材16表面での水平磁束密度を10000ガウスよりも高くするには高価な磁石または磁場発生機構が必要となる。
【0072】
電極89−1、89−2のマグネット85の配置構造はマグネトロン構造である。マグネトロン構造とすることでプラズマCVD成膜時に形成されるイオン、電子はこのマグネトロン構造に従って運動する。このため、例えば300mm□以上の大面積の基材16に対してプラズマCVD成膜をする場合においても電極89−1、89−2表面全体にわたり、前述した電子やイオン、成膜材料の分解物が均一に拡散され、基材16が大面積の場合にも均一且つ安定した成膜が可能となる。
【0073】
また、電極やマグネットなど電極ユニットに局所的に偏って熱電子やイオンが蓄積することがなくなり、構成部材の耐熱性が低くてよくなるため、安価に部品を作製できるほか、熱変形、構造物の穴あきや割れ発生といった不具合発生を抑えることが可能となる。
【0074】
電極89、89−1、89−2は、電力を投入するために導電性で、プラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、冷却水による冷却効率が高く(熱伝導率が高く)、非磁性材料で、加工性に優れた材料を用い、作製することが好ましい。具体的には、アルミニウム、銅、ステンレスが好適に用いられる。
絶縁性シールド板87は、絶縁性で、プラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、加工性に優れた材料を用いることが好ましい。具体的にはフッ素樹脂、ポリイミド樹脂が好適に用いられる。
【0075】
次に、成膜装置1の概略の動作について説明する。ガス貯留部33−1、33−2、33−3から成膜用ガスがガス供給部37−1、37−2、37−3に供給され、ガス供給部37−1、37−2、37−3から基材16に向けて成膜用ガスが噴出される。
【0076】
また、電源41から電極89−1、89−2に電力が供給され、電極89−1、89−2から基材16に向けてプラズマ43が発せられ、基材16上に薄膜が形成される。
【0077】
本発明によれば、基材を電極上に置いて成膜せず、電気的にカップリングされなくなるため、プラズマ放電のインピーダンス上昇を防ぐことができ、容易にプラズマ形成が可能となり、かつ長時間安定して放電およびプラズマCVD成膜を行うことが可能となる。また放電インピーダンスが上昇しないことから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0078】
さらに基材によるインピーダンス変動を考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。
また、電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。先に放電インピーダンスが大きくなる場合の不具合を説明したが、一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。このような場合、具体的には対になって設置されている電極89−1と電極89−2の距離を広げることで放電インピーダンスは増加する。この結果、印加電力一定の場合、成膜の放電電圧は大きく、放電電流は小さくなり、結果としてイオン打ち込み効果が高まり、密着性の高い膜を形成することが可能となる。
【0079】
反対に電極89−1と電極89−2の距離を狭めることで、放電インピーダンスは減少し、印加電力一定の場合、放電電圧は小さく、放電電流は大きくなり、成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
【0080】
このように、放電インピーダンスを最適とすることが可能であり、基材16へのイオン打ち込み効果を調整し、膜の密着性を高めたり、基材へのダメージを低減し、良質な膜の形成が可能となる。
【0081】
次に、図1に示す成膜装置1と図11に示す比較例となる成膜装置201を用いて実際に成膜を行った際の実験結果について説明する。
【0082】
図1に示す成膜装置1において、電極55−1、55−2は前述したように図8、図9、図10に示すマグネトロン構造のマグネット85をセットし、基材16表面での平均水平磁束密度が1000ガウスとなるように設定した。チャンバ3はアースレベルに、ドラム19をフローティングレベルとした。
【0083】
濃度30%のエチレングリコール水溶液を冷媒として温度調節媒体用配管91に供給した。すなわち、ドラム19、電極55−1、55−2に個別に冷媒を循環供給させ、ドラム19を0℃に冷却した。このとき、電極55−1とドラム19の間、電極55−2とドラム19との間、電極55−1と電極55−2の間の抵抗はそれぞれ1MΩであった。
【0084】
基材16として0.6m幅のPETフィルム(東洋紡績社製、A4100、厚み100μm)を用意し、基材搬送室9の基材搬送系にセットした。
真空排気ポンプ31−2、31−3により成膜室11、排気室13ともにチャンバ3内を1×10-4Paまで真空引きした。成膜用ガスとしてTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)を加熱温度120℃で気化して供給した。そして、TEOS、酸素、アルゴンをそれぞれ20sccm、500sccm、200sccmで供給し、均一に混合させた後、基材16上にシャワー状にガスを供給した。
【0085】
次に、真空排気ポンプ31−1、31−2、31−3を調整し、成膜室11の圧力を10Pa、基材搬送室9及び排気室13内の圧力を0.5Paの一定圧力となるように調整した。電源41に周波数40kHzの電源(Advanced Energy Industries, Inc.製、PEII、10kW)を用い、電極55−1、55−2に3kWの電力を電力制御方式より印加し、ライン速度5m/minにより1200m成膜を行った。また、成膜開始後、成膜距離200mおきに前後5m成膜時の平均放電電圧を求めた。また、目視により放電のアーキング(異常放電)発生回数をカウントした結果、発生は0回と異常放電なく、安定した成膜が可能なことが判明した。
【0086】
成膜後、チャンバ3内の残留ガスを排気し、基材16を取り出し、基材16表面の目視観察及び200mおきに、基材幅方向中央部のサンプリングを行い、これらサンプルの膜厚測定及び膜の密度測定を行った。膜厚は走査型電子線顕微鏡(SEM;日立製作所(株)製、S−5000H)を用いて断面観察を行うことから膜厚を求めた。膜密度はX線反射率測定装置(理学電機(株)製、ATX−E)および付属ソフトウエアにより算出した。図12は成膜結果を示す図である。
【0087】
これに対して比較例として、図11に示す成膜装置201を用意した。この成膜装置201は図1に示す成膜装置1と比較して電源41の片側がドラム19に接続されていること、電極55−1、55−2は電気的に等電位に接続されていて、電極55−1、55−2の間の抵抗は0.1Ωであった。また、成膜圧力はチャンバ3内で全ての場所で0.5Paとした。
これら以外は、図1に示す装置と全く同様の設定手順で成膜を行った。図13は成膜結果を示す図である。
【0088】
図12と図13を比較すると、図1に示す本発明に係る成膜装置1では、放電電圧が低減され、放電が安定しやすくなるとともに、放電中のアーキングがほぼ発生せず、良質且つ均一な膜が形成可能となった。また、投入する電力が成膜に有効に用いられることから成膜速度が向上し、膜の密度すなわち緻密性の高い良質な膜が形成された。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る情報提供システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施の形態に係る成膜装置1を示す図
【図2】電極39−1の断面図
【図3】図2のA方向矢視図
【図4】図3のC−C断面図
【図5】ドラム19を示す図
【図6】ドラム19の断面図
【図7】図5のD方方向矢視図
【図8】電極39−1の断面図
【図9】図8のA方向矢視図
【図10】図9のC−C断面図
【図11】比較例となる成膜装置201を示す図
【図12】成膜装置1による成膜結果を示す図
【図13】成膜装置201による成膜結果を示す図
【符号の説明】
【0091】
1………成膜装置
3………チャンバ
5、7………隔壁
9………基材搬送室
11………成膜室
13………排気室
19………ドラム
25………前処理装置
27………後処理装置
37………ガス供給部
39………電極
41………電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、前記基材を巻きつけるドラムと、
前記基材を搬送する搬送機構と、
前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極と、
前記2つの電極間に電力を供給する電源と、
を具備することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記マグネットは、マグネトロン構造を有することを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項5】
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項6】
前記電源は、投入電力制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項7】
前記電源は、インピーダンス制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項8】
前記ドラムは、電気的にアースレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項9】
前記ドラムは電気的にフローティングレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項10】
前記ドラムに一定の直流電圧を印加することを特徴とする請求項9記載の成膜装置。
【請求項11】
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項12】
前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項13】
前記チャンバは、成膜室と基材搬送室とを有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項14】
前記成膜室の成膜圧力が0.1Paから100Paの間であることを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項15】
前記基材搬送室の真空度は、前記成膜室の成膜時の真空度に対して10倍から10000倍高いことを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項16】
前記成膜室よりも後段の前記基材搬送室に成膜により発生した基材帯電を除去する基材帯電除去部を備えることを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項17】
前記基材帯電除去部はプラズマ放電装置であることを特徴とする請求項16記載の成膜装置。
【請求項18】
前記成膜室よりも前段の前記基材搬送室にプラズマ放電装置を備えることを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項19】
前記チャンバは、成膜室と排気室を有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項20】
前記排気室の真空度は前記成膜室の成膜時の真空度に対して10倍から10000倍高いことを特徴とする請求項21記載の成膜装置。
【請求項21】
前記ドラムは少なくともステンレス、鉄、銅、クロムのうちいずれかを1以上含む材料から形成されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項22】
前記ドラムは、その表面平均粗さRaが0.1nm以上10nm以下であること特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項23】
前記ドラムを−20℃から200℃の間の一定温度に保つ温度調整手段を更に有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項24】
前記ドラムは、両端部に電気的絶縁性領域を有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項25】
前記絶縁性領域は、Al、Si、Ta、Ti、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hfのいずれか1以上の酸化膜または窒化膜または酸化窒化膜で形成されることを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項26】
前記絶縁性領域は、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、マイカのいずれか1の成型体、テープ、コーティング膜により被覆していることを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項27】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、
チャンバ内に設けられたドラムに基材を巻きつけ、
前記チャンバ内にガスを供給し、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極間に電力を供給し、プラズマを発生させ、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項1】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、前記基材を巻きつけるドラムと、
前記基材を搬送する搬送機構と、
前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極と、
前記2つの電極間に電力を供給する電源と、
を具備することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記マグネットは、マグネトロン構造を有することを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項5】
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項6】
前記電源は、投入電力制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項7】
前記電源は、インピーダンス制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項8】
前記ドラムは、電気的にアースレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項9】
前記ドラムは電気的にフローティングレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項10】
前記ドラムに一定の直流電圧を印加することを特徴とする請求項9記載の成膜装置。
【請求項11】
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項12】
前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項13】
前記チャンバは、成膜室と基材搬送室とを有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項14】
前記成膜室の成膜圧力が0.1Paから100Paの間であることを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項15】
前記基材搬送室の真空度は、前記成膜室の成膜時の真空度に対して10倍から10000倍高いことを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項16】
前記成膜室よりも後段の前記基材搬送室に成膜により発生した基材帯電を除去する基材帯電除去部を備えることを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項17】
前記基材帯電除去部はプラズマ放電装置であることを特徴とする請求項16記載の成膜装置。
【請求項18】
前記成膜室よりも前段の前記基材搬送室にプラズマ放電装置を備えることを特徴とする請求項13記載の成膜装置。
【請求項19】
前記チャンバは、成膜室と排気室を有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項20】
前記排気室の真空度は前記成膜室の成膜時の真空度に対して10倍から10000倍高いことを特徴とする請求項21記載の成膜装置。
【請求項21】
前記ドラムは少なくともステンレス、鉄、銅、クロムのうちいずれかを1以上含む材料から形成されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項22】
前記ドラムは、その表面平均粗さRaが0.1nm以上10nm以下であること特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項23】
前記ドラムを−20℃から200℃の間の一定温度に保つ温度調整手段を更に有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項24】
前記ドラムは、両端部に電気的絶縁性領域を有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項25】
前記絶縁性領域は、Al、Si、Ta、Ti、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hfのいずれか1以上の酸化膜または窒化膜または酸化窒化膜で形成されることを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項26】
前記絶縁性領域は、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、マイカのいずれか1の成型体、テープ、コーティング膜により被覆していることを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項27】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、
チャンバ内に設けられたドラムに基材を巻きつけ、
前記チャンバ内にガスを供給し、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルの1組の電極間に電力を供給し、プラズマを発生させ、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−283135(P2006−283135A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105010(P2005−105010)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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