説明

成膜装置

【課題】耐久性が高く、光触媒機能を有する酸化チタン薄膜を提供する。
【解決手段】バリア薄膜12表面に酸化チタン薄膜31を点在させ、その間に親水性薄膜41を形成し、機能性薄膜3を構成させる。機能性薄膜3表面に、酸化チタン薄膜31が露出する部分と親水性薄膜41が露出する部分とが混在するので、両方の薄膜の機能を得ることができる。従って、紫外線が照射される環境下ではセルフクリーニング効果と超親水性が発現され、暗所でも、ある程度の親水性が得られる。酸化チタン薄膜31は、酸素ガスが添加されたスパッタリングガスにより、酸化チタンターゲットをスパッタリングすると、形成される酸化チタン薄膜中の欠損酸素を補充できるので、光触媒機能を有する酸化チタン薄膜31を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性薄膜の技術分野にかかり、特に、光触媒機能を有する機能性薄膜を応用した技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、超親水性と防汚効果が得られる薄膜材料として、酸化チタン(TiO2)が注目されている。
【0003】
酸化チタンは光触媒の一種であり、紫外線が照射されると活性化し、空気中の酸素からヒドロキシラジカルやスーパーオキサイドアニオンが生成され、それによって表面に付着した有機汚染物質が分解されるのでセルフクリーニング効果があり、また、汚染物質の分解により、清浄な表面が露出する結果、超親水性が得られることが知られている。
【0004】
図8の符号110は、上記のような酸化チタンを応用した鏡である。
この鏡110は、ソーダライムガラスから成る基板111を有しており、その裏面には反射層(クロム層)118が形成され、表面にはシリコン酸化物薄膜から成るバリア薄膜112が形成されている。
【0005】
このバリア薄膜112の表面には、酸化チタン粉末の分散液が吹き付けられた後、焼成され、酸化チタン薄膜113が形成されており(ゾル・ゲル法)、表面に、酸化チタン薄膜113から成る光触媒薄膜が形成されている。この酸化チタン薄膜113により、セルフクリーニング効果や超親水性が得られるようになっている。
【0006】
なお、バリア薄膜112はナトリウム等の基板111中の不純物拡散を防止するための薄膜である。バリア薄膜112を形成せず、酸化チタンの分散液を基板111表面に直接吹き付けて酸化チタン薄膜113を形成した場合、酸化チタン薄膜の焼成の際に、基板111中に含まれるナトリウム成分が酸化チタン薄膜113中に侵入し、チタン−ナトリウム化合物が生成されてしまい、酸化チタン薄膜113が失活してしまう。
【0007】
ところで、酸化チタンの結晶系は、アナターゼ型、ルチル型、及びブルッカイト型があるが、アナターゼ型が最も高い光学活性を示すことが知られている。しかし、アナターゼ型は高温に曝されるとルチルゼ型に転移し、防汚効果や超親水性が発現されなくなってしまう。
【0008】
一般に、スパッタリング法によって薄膜を形成する場合は、成膜エネルギーが大きすぎるため、アナターゼ型の酸化チタン薄膜を形成することができない。また、蒸着法の場合は、成膜対象物を高温に加熱しながら薄膜を形成する必要があるため、ガラス基板表面への薄膜形成には適さない。
【0009】
それに対し、上記のようなゾル・ゲル法では、アナターゼ型の酸化チタン粉末を用い、800℃程度の低温で焼成して薄膜を形成するので、転移が生じず、アナターゼ型の酸化チタン薄膜を形成することができる。
しかしながら、ゾル・ゲル法で形成された酸化チタン薄膜113は薄膜の強度が弱いため、剥離しやすいという欠点がある。
【0010】
近年では、酸化チタン薄膜の超親水性が注目されており、鏡に応用した場合、雨天においても視認性がよく、且つセルフクリーニング機能を有する高性能のサイドミラー等が得られると期待されている。従って、酸化チタン薄膜を用いた機能性薄膜の製品化に向け、耐久性の向上が増々求められている。
【特許文献1】特開平9−227160号公報
【特許文献2】特開平10−068091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、耐久性が高く、光触媒機能を有する酸化チタン薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、親水性薄膜と酸化チタン薄膜を有する機能性薄膜であって、前記機能性薄膜の表面には、前記親水性薄膜が露出する部分と、前記酸化チタン薄膜が露出する部分とが、微小領域中で混在することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の機能性薄膜であって、前記酸化チタン薄膜は前記親水性薄膜上に形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたバリア薄膜と、前記バリア薄膜上に形成された酸化チタン薄膜とを有する機能性基板であって、前記酸化チタン薄膜は、前記バリア薄膜表面が部分的に露出するように構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の機能性基板であって、前記酸化チタン薄膜間には親水性薄膜が配置され、前記基板上の微小領域内に、前記酸化チタン薄膜が露出する部分と前記親水性薄膜が露出する部分とが混在するように構成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、機能性基板であって、ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたバリア薄膜と、前記バリア薄膜上に形成された酸化チタン薄膜と、前記酸化チタン薄膜表面に形成された親水性薄膜を有し、前記ガラス基板上の微量領域内に、前記親水性薄膜が露出する部分と、前記酸化チタン薄膜が露出する部分とが混在するように構成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、真空雰囲気中に成膜対象物を配置し、スパッタリングガスのプラズマによって酸化チタンターゲットをスパッタリングし、前記成膜対象物表面に酸化チタン薄膜を製造する酸化チタン薄膜の製造方法であって、前記スパッタリングガス中に、酸素ガス、オゾンガス、又は二酸化窒素ガスのいずれか1種又は2種以上のガスを酸素含有ガスとして含有させることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の酸化チタン薄膜の製造方法であって、前記スパッタリングガス中の前記酸素含有ガスの含有割合を10体積%以上にすることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、真空雰囲気中に成膜対象物を配置し、スパッタリングガスのプラズマによって酸化チタンターゲットをスパッタリングし、前記成膜対象物表面に酸化チタン薄膜を製造する酸化チタン薄膜の製造方法であって、前記成膜対象物表面に酸素プラズマを照射しながら前記酸化チタン薄膜を形成することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、バリア薄膜のターゲットが配置された第1の成膜部と、チタン酸化物から成るターゲットが配置された第2の成膜部と、親水性薄膜のターゲットが配置された第3の成膜部とを有する成膜装置であって、前記第2、第3の成膜部内の前記ターゲットと前記成膜対象物の間には網がそれぞれ配置され、前記第3の成膜部には成膜対象物と前記第3の成膜部内の前記網とを相対的に位置合わせする位置合わせ装置が設けられ、前記第3の成膜部内では、前記第2の成膜部内で形成された網目状の酸化チタン薄膜の間に露出する第1の成膜部内で形成されたバリア薄膜の表面に、前記親水性薄膜が形成されるように構成された成膜装置である。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の成膜装置であって、ターンテーブルを有し、前記ターンテーブル上に配置された前記成膜対象物が、前記第1、第2、第3の成膜部内に順番に搬入されるように構成された成膜装置である。
請求項11記載の発明は、請求項9記載の成膜装置であって、前記親水性薄膜のターゲットはシリコン酸化物から成り、前記親水性薄膜はシリコン酸化物薄膜である成膜装置である。
請求項12記載の発明は、請求項9記載の成膜装置であって、前記バリア薄膜のターゲットは、シリコン酸化物から成り、前記バリア膜は、シリコン酸化物薄膜である成膜装置である。
【0020】
本発明の機能性薄膜は上記のように構成されており、親水性薄膜が露出する部分と、酸化チタン薄膜が露出する部分とが、機能性薄膜表面の微小領域中で混在している。例えば、親水性薄膜間に、酸化チタン薄膜が島状に散在していたり、その逆に、酸化チタン薄膜間に、親水性薄膜が島状に散在していてもよい。また、酸化チタン薄膜と親水性薄膜が線状に交互に配置されていたり、一方が網状に配置され、他方が網の目の位置に配置されていてもよい。
【0021】
酸化チタン薄膜表面が露出する部分と親水性薄膜表面が露出する部分とが混在する機能性薄膜は、ガラス基板上に形成されたバリア薄膜上に形成してもよい。散在する酸化チタン薄膜間を親水性薄膜で充填してもよいし、散在する親水性薄膜間が酸化チタン薄膜で充填されるようにしてもよい。また、バリア薄膜上に全面成膜した酸化チタン上に島状に散在する親水性薄膜や、線状、又は網状の親水性薄膜を形成してもよい。
【0022】
要するに、機能性薄膜表面の微小領域中に酸化チタン薄膜表面と親水性薄膜表面とが混在していればよい。微小領域が1平方インチの場合、島状の酸化チタン薄膜がその中に100個程度散在していればよい。
【0023】
上記の機能性薄膜又は機能性基板に設けられた酸化チタン薄膜は、光触媒機能を有している必要がある。酸化チタンターゲットをスパッタリングして形成する場合、アルゴンガス等の希ガス中に酸素ガス、オゾンガス、又は二酸化窒素ガス等の酸素含有ガスを添加してスパッタリングガスとし、そのスパッタリングガスプラズマによってターゲットをスパッタリングすると、形成される酸化チタン薄膜中の欠損酸素原子が補充され、光触媒機能を有するアナターゼ型の酸化チタン薄膜を得ることができる。
【0024】
光触媒機能を有する酸化チタン薄膜を得るためには、酸素含有ガスの添加割合は多いほど好ましく、10体積%(希ガス:酸素含有ガス=9:1)以上を含有させる必要がある。なお、アルゴンガス等の希ガスの割合が小さくなると、スパッタリング速度が低下するので、酸素含有ガスの上限は、成膜速度によって決められる。
【0025】
また、イオンガン等により、スパッタリング中に基板表面に酸素プラズマを照射しても、欠損酸素原子を補充できるので、光触媒機能を有する酸化チタン薄膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
スパッタリング法によって酸化チタン薄膜が形成されるので、強靱な機能性薄膜が得られる。
酸化チタン薄膜間に親水性薄膜表面が配置されているので、紫外線が照射されない環境下でも、親水性を得ることができる。微小領域内で酸化チタン薄膜表面と親水性薄膜表面とが混在しているので、水玉が生成されにくくなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の機能性薄膜と機能性基板を、本発明の酸化チタン薄膜製造方法と共に説明する。
図3を参照し、符号9は、本発明の機能性薄膜を形成する成膜装置の一例である。この成膜装置9は、真空槽54を有している。真空槽54内の底壁側には、ターンテーブル59が配置されており、その上方の天井側には、搬出入部60と、第1〜第3の成膜部61〜63とが配置されている。
【0028】
ターンテーブル59は、水平回転と昇降移動可能に構成されており、図示しない搬出入口から成膜対象の基板を搬出入部60内に搬入し、ターンテーブル59上に載せた状態で回転させると、第1〜第3の成膜部61〜63へ基板を搬送できるように構成されている。また、ターンテーブル59を昇降移動させると、ターンテーブル59上に置かれた基板を、第1〜第3の成膜部61〜63内に搬入できるように構成されている。
【0029】
図1(a)〜(d)の符号11はソーダライムガラスから成る基板を示している。ガラス基板11裏面には、予め、不図示の反射膜が形成されている。
【0030】
上記成膜装置9を用い、機能性薄膜を形成する場合、予め図示しない真空ポンプによって真空槽54内部を真空雰囲気にし、その雰囲気を維持したまま、基板11を搬出入部50内に搬入する。そして、ターンテーブル59を動作させ、基板11を第1の成膜部51内に搬入する。
【0031】
第1の成膜部51はスパッタリング装置であり、シリコン酸化物から成るターゲットが配置されている。そのターゲットをスパッタリングし、基板11の表面にシリコン酸化物から成るバリア薄膜12を全面成膜する(図1(b))。
【0032】
次に、その基板11を、第2の成膜部52に移動させる。この第2の成膜部52もスパッタリング装置であり、その構造を図4に模式的に示す。
この成膜部52は、隔壁71を有しており、天井側にはカソード72が配置されている。カソード72の底壁側の面には、チタン酸化物から成るターゲット73が配置されている。搬入された基板11は、その表面のバリア薄膜12をターゲット73側に向け、隔壁71内に配置される。
【0033】
この隔壁71内では、ターゲット73と基板11の間に、フィルタ75が配置されている。それら位置関係を図5に示す。
【0034】
フィルタ75は、100メッシュ(1平方インチ中に100個の目を有する金属製の網)の篩であり、網部分である遮蔽部76と、網の目となる通過部77とで構成されている。
【0035】
基板11の搬入後、第2の成膜部52内の雰囲気を真空槽54内の雰囲気から独立させ、アルゴンガスと酸素ガスを所定割合(ここでは1:1、即ち、O2ガスの含有割合は50体積%)で導入し、3.0×10-2Torrの圧力で安定したところでカソード72に電圧を印加する。
【0036】
その結果、ターゲット73表面近傍に、アルゴンガスと酸素ガスとから成るスパッタリングガスプラズマが生成され、ターゲット73がスパッタリングされる。
【0037】
ターゲット73表面から飛び出したスパッタリング粒子(酸化チタン)が、基板11のバリア薄膜12表面に到達すると、その部分に酸化チタン薄膜が形成される。
【0038】
スパッタリング法により酸化チタン薄膜を形成する場合、スパッタリングガス中に酸素含有ガスが含まれていれば、形成される酸化チタン薄膜はアナターゼ型になる。また、スパッタリング雰囲気圧力と、結晶型には密接な関係がある。
【0039】
下記表に、酸化チタン薄膜成膜時のスパッタリング雰囲気圧力と形成されるチタン薄膜の性質を下記表に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
接触角θは、ガラス基板表面に全面成膜した酸化チタン薄膜表面に所定時間紫外線を照射し、水滴を載せた場合のガラス基板と水滴表面の成す角度である。接触角θを図6に示す。符号60はガラス基板、符号61は水滴である。
【0042】
表1によると、2.0×10-2Torr以上の圧力で接触角θが10°以下になっており、超親水性の発現が認められる。従って、2.0×10-2以上の圧力において、アナターゼ型の酸化チタン薄膜が形成される。
【0043】
図7に示したグラフは、超親水性が得られた場合の、紫外線照射時間と接触角θの関係を示すグラフである。40乃至60分程度の照射によって超親水性が得られることが分かる。
【0044】
但し、1.0×10-2Torrの圧力で得られた酸化チタン薄膜の接触角でも実用上十分であり、5.0×10-3Torr以上の圧力で形成した酸化チタン薄膜であれば使用することができると考えられる。上限は、スパッタリング中にアーク放電が生じない圧力であり、5.0×10-2Torr程度である。
【0045】
ところで、上記の第3の成膜部53内では、ターゲット73と基板11の間にフィルタ75が位置しているので、ターゲット73から飛び出したスパッタリング粒子がフィルタ75を通過する際、一部が遮蔽部76に付着し、網の目76を通ったスパッタリング粒子だけがバリア薄膜12表面に到達する。従って、フィルタ75を用いてバリア薄膜12表面に形成したチタン薄膜は、網の目状になっている。図1(c)の符号31は、その網の目状の酸化チタン薄膜を示しており、バリア薄膜12表面に規則的に散在している。
【0046】
網の目状の酸化チタン薄膜31の形成後、成膜装置9から基板11を取り出し、サイドミラーを作製した場合、酸化チタン薄膜31表面に紫外線が照射される環境下では、酸化チタン薄膜31のセルフクリーニング機能によって表面が清浄になり、また、超親水性効果が発現する。この状態では表面に水が付着しても薄膜拡がり、水玉が生成されない。
【0047】
また、酸化チタン薄膜31間には、親水性のバリア薄膜12表面が露出していることから、紫外線が照射されない環境下においても、ある程度の親水性が確保される。
【0048】
従って、網の目状の酸化チタン薄膜31とバリア薄膜12とで構成される機能性薄膜2は、紫外線の有無によらずに親水性を有している。符号5は、その機能性薄膜2を有する機能性基板を示している。
【0049】
ここでは、その基板11を成膜装置9外に取り出さず、更に、第3の成膜部53に搬送する。
【0050】
この成膜部53はスパッタリング装置であり、その内部には、シリコン酸化物から成るターゲットと、上記のような金属製の篩から成るフィルタが設けられている。
【0051】
成膜部53内に搬入した基板11をフィルタの後方に配置し、フィルタと基板11とを相対的に位置合わせし、酸化チタン薄膜31間に露出するバリア薄膜12上に、フィルタの網の目を位置させる。その状態でスパッタリングを行うと、露出したバリア薄膜12表面に、シリコン酸化物から成る親水性薄膜41が形成される(図1(d))。
【0052】
その基板11を成膜装置9から搬出し、鏡を作製した場合、表面には酸化チタン薄膜31と親水性薄膜41とが露出しているため、セルフクリーニング機能と超親水性を有するサイドミラーが得られる。
【0053】
バリア薄膜12の表面が、酸化チタン薄膜31又は親水性薄膜41で覆われた場合、バリア薄膜12には親水性は無くてもよく、基板11中の不純物が酸化チタン薄膜31内に拡散することを防止できればよい。従って、酸化チタン薄膜31と親水性薄膜41とで、親水性を有する機能性薄膜3が構成される。符号6は、その機能性薄膜3を有する機能性基板を示している。
【0054】
なお、図2(a)に示すように、基板11上のバリア薄膜12表面に酸化チタン薄膜32を全面成膜し(膜厚500〜3000Å程度)、その表面に、島状に散在するシリコン酸化物薄膜等の親水性薄膜42(膜厚500〜3000Å程度)を形成してもよい。親水性薄膜42間の底面に酸化チタン薄膜32が露出しており、その部分でセルフクリーニング機能と超親水性が得られる。従って、その酸化チタン薄膜32と親水性薄膜42とで、機能性薄膜4が構成される。符号7は、その機能性薄膜4を有する機能性基板を示している。
【0055】
この場合は、バリア薄膜12は、基板11中のナトリウム等の不純物が酸化チタン薄膜32中に侵入することを防げばよく、親水性は無くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)〜(d):本発明の機能性薄膜及び機能性基板の製造方法の一例を説明するための図
【図2】(a)、(b):他の例を説明するための図
【図3】機能性薄膜を形成できる成膜装置の一例
【図4】酸化チタン薄膜の形成方法を説明するための図
【図5】フィルタの配置状態を説明するための図
【図6】接触角θを示す図
【図7】紫外線照射時間と接触角θの関係を示すグラフ
【図8】従来技術の機能性薄膜を説明するための図
【符号の説明】
【0057】
2〜4……機能性薄膜
5〜7……機能性基板
11……ガラス基板
12……バリア薄膜又は親水性薄膜
31、32……酸化チタン薄膜
41、42……親水性薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性薄膜と酸化チタン薄膜を有する機能性薄膜であって、
前記機能性薄膜の表面には、前記親水性薄膜が露出する部分と、前記酸化チタン薄膜が露出する部分とが、微小領域中で混在することを特徴とする機能性薄膜。
【請求項2】
前記酸化チタン薄膜は前記親水性薄膜上に形成されたことを特徴とする請求項1記載の機能性薄膜。
【請求項3】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたバリア薄膜と、
前記バリア薄膜上に形成された酸化チタン薄膜とを有する機能性基板であって、
前記酸化チタン薄膜は、前記バリア薄膜表面が部分的に露出するように構成されたことを特徴とする機能性基板。
【請求項4】
前記酸化チタン薄膜間には親水性薄膜が配置され、前記基板上の微小領域内に、前記酸化チタン薄膜が露出する部分と前記親水性薄膜が露出する部分とが混在するように構成されたことを特徴とする請求項3記載の機能性基板。
【請求項5】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されたバリア薄膜と、
前記バリア薄膜上に形成された酸化チタン薄膜と、
前記酸化チタン薄膜表面に形成された親水性薄膜を有し、
前記ガラス基板上の微量領域内に、前記親水性薄膜が露出する部分と、前記酸化チタン薄膜が露出する部分とが混在するように構成されたことを特徴とする機能性基板。
【請求項6】
真空雰囲気中に成膜対象物を配置し、スパッタリングガスのプラズマによって酸化チタンターゲットをスパッタリングし、前記成膜対象物表面に酸化チタン薄膜を製造する酸化チタン薄膜の製造方法であって、
前記スパッタリングガス中に、酸素ガス、オゾンガス、又は二酸化窒素ガスのいずれか1種又は2種以上のガスを酸素含有ガスとして含有させることを特徴とする酸化チタン薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記スパッタリングガス中の前記酸素含有ガスの含有割合を10体積%以上にすることを特徴とする請求項6記載の酸化チタン薄膜の製造方法。
【請求項8】
真空雰囲気中に成膜対象物を配置し、スパッタリングガスのプラズマによって酸化チタンターゲットをスパッタリングし、前記成膜対象物表面に酸化チタン薄膜を製造する酸化チタン薄膜の製造方法であって、
前記成膜対象物表面に酸素プラズマを照射しながら前記酸化チタン薄膜を形成することを特徴とする酸化チタン薄膜の製造方法。
【請求項9】
バリア薄膜のターゲットが配置された第1の成膜部と、チタン酸化物から成るターゲットが配置された第2の成膜部と、親水性薄膜のターゲットが配置された第3の成膜部とを有する成膜装置であって、
前記第2、第3の成膜部内の前記ターゲットと前記成膜対象物の間には網がそれぞれ配置され、
前記第3の成膜部には成膜対象物と前記第3の成膜部内の前記網とを相対的に位置合わせする位置合わせ装置が設けられ、
前記第3の成膜部内では、前記第2の成膜部内で形成された網目状の酸化チタン薄膜の間に露出する第1の成膜部内で形成されたバリア薄膜の表面に、前記親水性薄膜が形成されるように構成された成膜装置。
【請求項10】
ターンテーブルを有し、前記ターンテーブル上に配置された前記成膜対象物が、前記第1、第2、第3の成膜部内に順番に搬入されるように構成された請求項9記載の成膜装置。
【請求項11】
前記親水性薄膜のターゲットはシリコン酸化物から成り、前記親水性薄膜はシリコン酸化物薄膜である請求項9記載の成膜装置。
【請求項12】
前記バリア薄膜のターゲットは、シリコン酸化物から成り、前記バリア膜は、シリコン酸化物薄膜である請求項9記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−137888(P2008−137888A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340323(P2007−340323)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願平11−3916の分割
【原出願日】平成11年1月11日(1999.1.11)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】