説明

成膜装置

【課題】
出力電力に比例する総合電流を高速で監視し、速やかに成膜状態に適した電力の制御を行い、高品質の成膜結果を得ること。
【解決手段】
出力電力が設定電力になるように定電力制御される電源ユニットを互いに並列接続してなる電源装置を備える成膜装置において、前記電源ユニットの出力電流を検出する電流検出器と、出力電圧を検出する電圧検出器と、前記電流検出器により検出された検出電流と前記電圧検出器により検出された検出電圧とを乗算して出力電力に比例する監視信号を出力する乗算回路と、その乗算回路からの監視信号を監視電流信号に変換する回路とを備え、各電源ユニットの監視電流信号は共通の信号線を通して監視回路に入力され、その監視回路は前記監視電流信号を合算して、総合電力監視信号として出力し、前記総合電力監視信号によって前記電源ユニットの出力電力の制御が行われる成膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で発生させたプラズマを利用するPVD装置、スパッタ装置、電子ビーム蒸着装置などの成膜負荷における電力監視を行って、所望の膜厚の成膜を得るのに適した成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中でプラズマを発生させ、そのプラズマを利用して加工又は処理するPVD装置、スパッタ装置、電子ビーム蒸着装置など、薄膜を形成する成膜装置は以前から広い分野で使用されている。このような成膜装置においては、電源装置を複数のブロックから構成して、定常運転時には複数の電源ブロックの出力を並列に結合することにより順方向の直流電力を成膜負荷に供給することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。このような並列運転について具体的に述べると、例えば、液晶用フラットパネルの製造に用いられる100kWの電力を必要とするPVD(Physical Vapor Deposition)装置にあっては、定格出力が20kWの電源ユニットを5台並列接続してなる電源装置から必要な100kWの電力を成膜負荷に供給している。このような成膜装置にあっては、前記特許文献1、2には開示されていないが、電源装置全体の出力電力又は出力電流を監視し、成膜状態に応じて成膜装置のシステム部から前記各電源ユニットの出力電力又は出力電流を制御している。
【0003】
したがって、このような場合にはすべての電源ユニットの総合的な出力電力量又は出力電流量を正確に、かつ高速で監視することが必要である。前述の電源ユニットを5台並列接続してなる電源装置において、最も簡単な方法は、電源ユニット1台分の出力電流を監視し、その5倍に相当する電流量を総合の出力電流とする方法であるが、仮に1台の電源ユニットが何らかの原因で出力不能に陥った場合には、電源装置としては残りの4台の電源ユニットそれぞれが予め決められた定電力を供給するので、トータルの出力電流が不足するが、電流不足に気がつかずに運転が続行される場合がある。この電流不足は、基板上などに形成される成膜の厚みなどにバラツキを生じ、製品の品質の低下を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−042129公報
【特許文献2】特開2004−229401公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような欠点を解決するために、各電源ユニットそれぞれの出力電流を電流モニタで検出し、各電流モニタの出力信号線を監視回路にそれぞれ接続し、監視回路においてすべての電流モニタからの検出電流信号を合算する方法も考えられるが、出力監視信号線の本数が並列運転される電源ユニットの台数の2倍は最低限でも必要になり、出力監視配線が複雑となるという問題点がある。また、各電源ユニットが有するCPUによって電流モニタで検出したアナログ電流検出信号をディジタル電流信号に変換し、各電源ユニット間を結ぶRS485シリアル通信プロトコルによって監視回路に送る方法も考えられるが、多数のA/D変喚器、D/A変換器などが必要であるので、これらの遅延時間が発生し、及びRS485シリアル通信プロトコルは複数の信号をタイムシェアリングで送信するために、通信遅れが大きく、高速性が望めないと言う問題点もある。
【0006】
したがって、本発明は前述のいずれの方法による問題点をも解決し、好ましくは信号配線が少ないシンプルな構成で、かつ互いに並列接続された電源ユニットのそれぞれの出力電力又は出力電流を合算した総合の出力電力又は出力電流に比例する総合電流を高速で監視することによって、速やかに成膜状態に適した出力電力の制御又は出力電流の制御を行い、高品質の成膜結果を得ることを主目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述のような問題を解決するため、第1の発明は、電源ユニットを複数台互いに並列接続してなる電源装置と、該電源装置から電力が供給され、システム部により制御されて所望の成膜を行う成膜負荷とを備える成膜装置であって、前記電源ユニットは、交流電力を直流電力に変換するAC−DCコンバータと、該AC−DCコンバータそれぞれの出力電流を検出する電流検出器と、出力電圧を検出する電圧検出器と、前記電流検出器により検出された検出電流信号と前記電圧検出器により検出された検出電圧信号とを乗算して出力電力に比例する監視信号を出力する乗算回路と、該乗算回路からの前記監視信号をこれに比例する監視電流信号に変換する電流変換回路とを備え、前記複数の電源ユニットのそれぞれの前記電流変換回路から出力される前記監視電流信号は共通の電力監視信号線と共通の信号リターン線とを通して監視回路に入力され、該監視回路は、前記共通の電力監視信号線を通じて入力される電源ユニットそれぞれの前記監視電流信号の合算値に対応する電圧信号(Vt)を総合電力監視信号として制御信号線を通して前記システム部に出力することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0008】
第2の発明は、請求項1において、前記電流変換回路は、前記監視信号を該監視信号に比例する所望の電圧信号に増幅する増幅器と、その出力に接続されて前記電圧信号をこれに比例する前記監視電流信号に変換する抵抗手段とからなることを特徴とする成膜装置を提供する。
【0009】
第3の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明において、前記監視回路は、前記電力監視信号線と前記信号リターン線とが接続される一対の入力端子を有する演算増幅器と、前記電力監視信号線が接続されている前記入力端子と前記演算増幅器の出力端子との間に接続されている帰還用抵抗とを備えることを特徴とする成膜装置を提供する。
【0010】
第4の発明は、前記第1の発明ないし前記第3の発明のいずれかにおいて、前記総合電力監視信号に左右される設定信号と前記乗算回路からの前記監視信号とを入力端子に受けて、前記設定信号と前記監視信号との誤差増幅信号を出力する誤差増幅器を備え、前記誤差増幅信号が前記AC−DCコンバータに制御信号として与えられることを特徴とする成膜装置を提供する。
【0011】
第5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、前記複数の電源ユニットのそれぞれの出力電流に対応する監視電流信号が共通の電流監視信号線と共通の前記信号リターン線とを通して前記監視回路に入力され、該監視回路は、前記共通の電流監視信号線を通じて入力される電源ユニットそれぞれの前記監視電流信号の合算値に対応する電圧信号(Vu)を総合電流監視信号として前記制御信号線とは別の信号線を通して前記システム部に出力することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0012】
第6の発明は、前記第5の発明において、前記監視回路は、前記電流監視信号線及び前記信号リターン線に接続されている一対の入力端子を有する演算増幅器と、その演算増幅器の出力端子と前記電流監視信号線が接続されている前記入力端子との間に接続されている帰還用抵抗とを有することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0013】
第7の発明は、前記第5の発明又は前記第6の発明において、前記総合電流監視信号に依存する設定信号と前記監視信号とを入力端子に受けて、前記設定信号と前記監視信号との誤差増幅信号を出力する誤差増幅器を備え、前記誤差増幅信号が前記AC−DCコンバータに制御信号として与えられることを特徴とする成膜装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
前記第1の発明ないし第4の発明によれば、互いに並列接続された電源ユニットのそれぞれの出力電力を合算した総合の出力電力に比例する総合電流を高速で監視することができ、したがって、速やかに成膜状態に適した定電力制御を行うことができ、高品質の成膜結果を得ることが可能である。
【0015】
前記第5の発明ないし前記第7の発明によれば、互いに並列接続された電源ユニットのそれぞれの出力電流を合算した総合の出力電流に比例する総合電流を高速で監視することができ、したがって、速やかに成膜状態に適した定電流制御を行うことができ、高品質の成膜結果を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔実施形態1〕
図1によって本発明に係る成膜装置の実施形態1について説明する。図1は第1の成膜装置100における電源部の電源ユニット及びその出力電力を総合監視する監視部の具体例を示す図である。図1において、交流電源1には同一構成の複数の電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nが並列に接続されている。図面では交流電源1は単相で示されているが、3相交流でも勿論よい。また、交流電源1は商用交流電源が一般的であるが、発電機でも構わない。電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nの出力側は互いに並列になるよう接続され、電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nの出力電力を合算した電力が成膜負荷3に給電される。成膜負荷3についての詳細は示さないが、成膜の行われる真空チャンバなどからなる通常のものであり、成膜負荷3は成膜装置100のシステム部4から制御配線5を通して送られる各種の信号によって制御される。なお、図1では図面が複雑になって分かり難くなるので、電源ユニット2A、・・・・・・2Nの出力線は図示するのを省略している。
【0017】
実施形態1では、電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nそれぞれの出力電力に対応する監視電流信号を共通の電力監視信号線6と共通の信号リターン線7を通して監視回路8に入力し、監視回路8はそれら監視電流信号のすべてを合算し、これら電流値の合算値に対応する監視電圧信号を総合電力監視信号として制御信号線9を通してシステム部4に出力している。電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nは同一回路構成であるので、以下では電源ユニット2だけについて説明する。電源ユニット2はAC−DCコンバータ21であり、AC−DCコンバータ21は交流電源1からの交流電力を直流電力に変換する入力側整流器21A、入力側整流器21Aの脈動分の大きな直流電力を平滑化する入力側平滑回路21B、平滑化された直流電力を高周波の交流電力に変換するインバータ部21C1とインバータ部21C1をパルス幅制御するパルス幅制御回路を含む制御部21C2とからなる一般的なインバータ装置21C、インバータ装置21Cの高周波交流電圧を所望の電圧に変圧するトランス21D、その高周波交流電力を直流電力に変換する出力側整流器21E、及びAC−DCコンバータ21の出力電圧を平滑化する平滑用コンデンサ21Fからなる。平滑用コンデンサ21Fの両端には、電源ユニット2の出力電圧を検出する電圧検出器22として互いに直列接続されている電圧分割用抵抗Raと電圧検出抵抗Rbが接続されている。電源ユニット2の出力電流を検出する電流検出器23は抵抗値の小さなシャント抵抗器Rcが用いられているが、カレントトランス又はホール素子のような電流検出素子であってもよい。
【0018】
電圧分割用抵抗Raと電圧検出抵抗Rbとの接続点に現出する検出電圧Vdは、電圧増幅器27により適切な検出電圧信号に増幅されて乗算回路24に入力される。他方では、電流増幅器28などが電流検出器23により検出された検出電流Idをこれに比例する電圧にした後に、適切な値の検出電流信号に変換して乗算回路24に入力する。乗算回路24は、一般的な回路構成のものであり、入力される前記検出電圧信号と検出電流信号とを乗算して、AC−DCコンバータ21の出力電力に比例する電圧信号である監視信号P1を出力する。電流変換回路25は、監視信号P1を非反転入力端子(+)に受け、反転入力端子(−)が出力端子に短絡されている増幅器A1と増幅器A1の出力に直列接続された抵抗手段R1とを備える簡単な回路構成でキャパシタンスが小さなものである。増幅器A1は監視信号P1に比例する監視電圧信号V1を出力する。この監視電圧信号V1は、抵抗手段R1によって監視電圧信号V1に比例する監視電流信号I1に変換されて電力監視信号線6に出力される。つまり、監視信号P1は対応する監視電流信号I1に変換される。また、監視信号P1は後で述べる差動増幅器26の非反転入力端子(+)に入力される。
【0019】
他の電源ユニット2A〜2Nでも全く同様な動作が行われ、電源ユニット2Aは出力電力に比例する監視電力信号に対応する監視電流信号I2を電力監視信号線6に出力し、また、最後段に位置する電源ユニット2Nは出力電力に比例する監視電力信号に対応する監視電流信号In+1を電力監視信号線6に出力する。したがって、電源ユニット2、2A、2B・・・・2Nそれぞれの出力電力に対応する監視電流信号I1、I2、I3、・・・・・In+1が共通の電力監視信号線6と共通の信号リターン線7を通して監視回路8に入力される。監視回路8は演算増幅器8Aと帰還用抵抗8Bとを備える簡単な回路構成のものである。演算増幅器8Aの反転入力端子t1には電力監視信号線6が接続され、非反転入力端子t2には信号リターン線7が接続されている。また、演算増幅器8Aの反転入力端子t1と出力端子t3との間には帰還用抵抗8Bが接続されている。通常、信号リターン線7は各電源ユニット2〜2Nにおける電流変換回路25の増幅器A1の接地電位にある。
【0020】
したがって、監視回路8の演算増幅器8Aは、その非反転入力端子t2がゼロ電位にあるので、帰還用抵抗8Bの帰還作用で反転入力端子t1の電位もゼロとなるように動作する。演算増幅器8Aがこのように動作することによって、電源ユニット2、2A、2B・・・・2Nそれぞれの監視電流信号I1、I2、I3、・・・・・In+1が演算増幅器8Aの反転入力端子t1に流れ込み、演算増幅器8Aは監視電流信号I1〜In+1の総和(I1+I2+I3+・・・・+In+1)に等しい総合監視電流に対応する電圧信号Vtを出力する。つまり、この実施形態1の監視回路8は、入力端子に流れ込む電流をすべて合算し、その合算した電流値に対応する電圧信号Vtを総合電力監視信号として、制御信号線9を通してシステム部4に送出する。システム部4は、制御配線5を通して負荷装置3の各種の制御や設定をする他に、制御信号線10を通して電源ユニット2〜2Nのそれぞれの誤差増幅器26の反転入力端子(−)に、総合電力監視信号の影響を受けて変化する設定信号Vrを与える。
【0021】
この設定信号Vrは、基本的には成膜条件に従って予め設定される電圧信号であり、例えば成膜のプログラミングにしたがって、あるパルス幅と振幅とを有する矩形波、そのパルス幅と振幅とは異なる1種類又は複数種類のパルス幅と振幅とを有する矩形波、及びある傾斜角度で立ち上がってその後ある期間一定電圧となる波形などの組み合わせであり、総合電力監視信号としての電圧信号Vtの大きさに応じて、設定信号Vrのパルス幅、振幅、あるいは傾斜の角度などが変化する。電源ユニット2〜2Nそれぞれの誤差増幅器26は、その非反転入力端子(+)に入力される監視信号P1と設定信号Vrとの誤差増幅信号Vaをインバータ装置21Cの制御部21C2に与える。図示しないが、一般的なインバータ回路と同様に、インバータ装置21Cはその制御部21C2において、誤差増幅信号Vaが不図示の基準電圧信号と比較される。その基準電圧信号は、通常、3角波(鋸歯状波)電圧信号であり、誤差増幅信号Vaが前記不図示の基準電圧信号を超えている期間に等しいパルス幅で、インバータ装置21Cはパルス幅制御される。したがって、インバータ装置21Cの出力は総合電力監視信号としての電圧信号Vtの大きさに応じて定電力制御される。
【0022】
この実施形態1によれば、各電源ユニットの出力電力に比例する監視電力を検出し、そしてその監視電力をキャパシタンスの極めて小さな増幅器と抵抗手段とによって監視電流信号に変換し、共通の電力監視信号線6を通して監視回路における演算増幅器に入力することによって、その演算増幅器ですべての電源ユニットの監視電流信号を合算した電圧信号(Vt)に変換し、総合電力監視信号としてシステム部4に送出しているので、簡潔な回路構成でもって高速性の優れた電力の総合監視を行うことができ、したがって、各電源ユニットの出力電力を高速で成膜状態に最適な電力量に制御することが可能であり、高品質の成膜を得ることができる。
【0023】
〔実施形態2〕
図2によって本発明の実施形態2に係る第2の成膜装置200について説明する。図2において、図1で用いた記号と同じ記号は同じ名称の部材を示すものとする。交流電源1は3相交流電源であり、したがって、詳細は示さないが、AC−DCコンバータ21の入力側整流器は3相交流を直流に整流する3相全波ブリッジ整流回路又は3相ハーフブリッジ整流回路からなる。これら整流回路については広く知られているので説明を省略する。実施形態2では、互いに同一構成の電源ユニット2、2A、・・・・・・・・・2Nの出力電力を実施形態1と同様に総合監視する他に、出力電流についても総合監視を行うことを特徴としている。電源ユニット2〜2Nの出力電力の総合監視については実施形態1と同様であるので、説明を省略する。成膜装置にあっては、成膜負荷によっては定電流の供給を必要とするものもある。また、同時に成膜負荷に給電される電力の総合監視を行う必要がある場合もある。成膜装置200はこのような定電流制御を行いながら、電力の総合監視を行うのに適する実施形態である。なお、図2では図面が複雑になって分かり難くなるので、電源ユニット2A、・・・・・・2Nの出力線は図示するのを省略しているが、電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nの出力線は互いに並列接続されて成膜負荷3に接続されている。
【0024】
電源ユニット21において、その出力電流は電流検出器23により検出され、検出電流信号Idは電流増幅器28を通して所望の電圧値の監視信号Veにされる。この出力電流の監視信号Veは、帰還信号として誤差増幅器26の非反転入力端子に入力されると共に、乗算回路24と簡単な回路構成の電流変換回路30とに入力される。電流変換回路30は、電流変換回路25と同様な回路構成のものであり、出力電流の監視信号Veを非反転入力端子(+)に受け、反転入力端子(−)が出力端子に短絡されている増幅器B1と増幅器B1の出力に直列接続された抵抗手段R2とを備える簡単な回路構成のものである。電流変換回路30は出力電流の監視信号Veに比例する監視電流信号ID1に変換し、監視電流信号ID1は電流監視信号線31に出力される。監視電流信号ID1の信号リターン線は、信号リターン線7が電力監視と共通に用いられる。したがって、実施形態2では多数の電源ユニットを並列運転し、総合的な電力監視と電流監視の双方を行っても、電力監視信号線6と電流監視信号線31と共通の信号リターン線7とが必要なだけであり、これら電力監視と電流監視については3本の配線だけで済む。なお、前述したように電圧検出器22により検出された検出電圧信号Vdと、電流検出器23により検出された検出電流信号Idとは適当に処理された後に乗算回路24にて乗算され、乗算回路24は出力電力の監視信号P1を出力する。その監視信号P1は成膜装置100の場合と同様に電流変換回路25に入力され、監視電流信号I1となる。
【0025】
他の電源ユニット2A〜2Nでも全く同様な動作が行われ、電源ユニット2Aは出力電流に比例する監視電流信号ID2を電流監視信号線31に出力し、また、最後段に位置する電源ユニット2Nは出力電流に比例する監視電流信号IDn+1を電流監視信号線31に出力する。したがって、電源ユニット2、2A、2B・・・・2Nそれぞれの出力電流に対応する監視電流信号ID1、ID2、ID3、・・・・・IDn+1が共通の電流監視信号線31と共通の信号リターン線7を通して監視回路8に入力される。監視回路8は、実施形態1で述べた演算増幅器8Aと帰還用抵抗8Bとの他に、電流監視用の演算増幅器8Cと帰還用抵抗8Dとを備えている。演算増幅器8Cの反転入力端子t4には電流監視信号線31が接続され、非反転入力端子t5には信号リターン線7が接続される。また、帰還用抵抗8Dは演算増幅器8Cの反転入力端子t4と出力端子t6との間に接続されている。
【0026】
演算増幅器8Cは、その非反転入力端子t5がゼロ電位にあるので、帰還用抵抗8Dの帰還作用で反転入力端子t4の電位もゼロとなるように動作する。演算増幅器8Cがこのように動作することによって、監視電流信号ID1、ID2、ID3、・・・・・IDn+1が反転入力端子t4に流れ込み、演算増幅器8Cは監視電流信号ID1〜IDn+1の総和(ID1+ID2+ID3+・・・・+IDn+1)に等しい総合監視電流に対応する電圧信号Vuを出力する。つまり、この実施形態2の監視回路8においても、演算増幅器8Cはその入力端子に流れ込む電流をすべて合算し、その合算した電流値に対応する電圧信号Vuを総合電流監視信号として、信号線32を通してシステム部4に送出しする。システム部4は成膜負荷3に流れる総合電流を監視し、その総合電流に比例する設定信号Vrを制御信号線10を通して電源ユニット2、2A、・・・・・・2Nのそれぞれの誤差増幅器26の反転入力端子に与える。
【0027】
この設定信号Vrは、基本的には定電流になるように成膜条件に従って予め設定される電圧信号であり、例えば成膜のプログラミングにしたがって、あるパルス幅と振幅とを有する矩形波、そのパルス幅と振幅とは異なる1種類又は複数種類のパルス幅と振幅とを有する矩形波、及びある傾斜角度で立ち上がってその後ある期間一定電圧の波形などの組み合わせであり、総合電流監視信号としての電圧信号Vuの大きさに応じて、設定信号Vrのパルス幅、振幅、あるいは傾斜の角度などが変化する。電源ユニット2〜2Nそれぞれの誤差増幅器26は、その非反転入力端子(+)に入力される出力電流の監視信号Veと設定信号Vrとの誤差増幅信号Vaをインバータ装置21Cの制御部21C2に与える。図示しないが、一般的なインバータ回路と同様に、インバータ装置21Cはその制御部21C2において、誤差増幅信号Vaが不図示の基準電圧信号と比較される。その基準電圧信号は、通常、3角波(鋸歯状波)電圧信号であり、誤差増幅信号Vaが前記不図示の基準電圧信号を超えている期間に等しいパルス幅で、インバータ装置21Cはパルス幅制御される。したがって、インバータ装置21Cの出力は総合電流監視信号としての電圧信号Vuの大きさに応じて定電流制御される。
【0028】
実施形態2に係る成膜装置200では、総合電流監視を行って成膜負荷3に供給される総合電流が定電流になるように定電流制御を行っているが、前述したような総合電力監視をも同時に行っているので、総合電力監視に使用するだけでなく、システム部4において定電流制御と定電力制御のいずれかを選択し、切り替え機能を備えることによって、実施形態1で述べたように、各電源ユニットの出力電力を高速で成膜状態に最適な一定の電力量に制御することも可能であり、また、実施形態2で述べたように各電源ユニットの出力電流を高速で成膜状態に最適な一定の電流量に制御することが可能であり、負荷条件に合わせて高品質の成膜を得ることができる。なお、総合電流監視を行って成膜負荷3に供給される総合電流が定電流になるように定電流制御を行っているときには、総合電力監視は成膜負荷3に供給される全体の電力量の監視に使用されるだけでもよい。この場合には総合電力監視機能を必ずしも備える必要はない。更にまた、総合電力監視を行って成膜負荷3に供給される総合電力が一定になるように定電力制御を行っているときには、総合電流監視は成膜負荷3に供給される全体の電流量の監視に使用されるだけでもよい。
【0029】
なお、AC−DCコンバータ21は必ずしも前述したものでなくともよく、例えば、一般的に回路構成の知られている高周波スイッチング整流装置、又はブースタコンバータなどであってもよい。また、並列運転される電源ユニットの台数は2台以上ならば何台であっても本発明を実施することができ、同じ効果を得ることができる。並列運転される電源ユニットのそれぞれの出力電力がほぼ同一になるように設定され、運転される場合には、各電源ユニットにおける電流変換回路25の抵抗手段R1の抵抗値は互いにほぼ同じに選定される。それぞれの電流変換回路30の抵抗手段R2についても同様である。更にまた、監視回路は電力監視信号線6、電流監視信号線31から流れ込む電流信号を合算する加算回路など、他の回路構成でも勿論よい。また、以上の実施形態では好ましい構成の成膜装置について述べたが、電力監視信号線、信号リターン線及び電流監視信号線がそれぞれの電源ユニットに備えられ、それぞれの電力監視信号線、信号リターン線及び電流監視信号線が電源ユニットと監視回路との間を接続していても所期の機能は得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態1に係る第1の成膜装置100を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る第2の成膜装置200を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・交流電源
2、2A〜2N・・・電源ユニット
3・・・成膜負荷
4・・・成膜装置のシステム部
5・・・制御配線
6・・・電力監視信号線
7・・・信号リターン線
8・・・監視回路
8A、8C・・・演算増幅器
8B、8D・・・帰還抵抗
9・・・制御信号線
10・・・制御信号線
21・・・AC−DCコンバータ
22・・・電圧検出器
23・・・電流検出器
24・・・乗算回路
25・・・電流変換回路
26・・・誤差増幅器
27・・・電圧増幅器
28・・・電流増幅器
30・・・電流変換回路
31・・・電流監視信号線
32・・・信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ユニットを複数台互いに並列接続してなる電源装置と、該電源装置から電力が供給され、システム部により制御されて所望の成膜を行う成膜負荷とを備える成膜装置であって、
前記電源ユニットは、交流電力を直流電力に変換するAC−DCコンバータと、該AC−DCコンバータそれぞれの出力電流を検出する電流検出器と、出力電圧を検出する電圧検出器と、前記電流検出器により検出された検出電流信号と前記電圧検出器により検出された検出電圧信号とを乗算して出力電力に比例する監視信号を出力する乗算回路と、該乗算回路からの前記監視信号をこれに比例する監視電流信号に変換する電流変換回路とを備え、
前記複数の電源ユニットのそれぞれの前記電流変換回路から出力される前記監視電流信号は共通の電力監視信号線と共通の信号リターン線とを通して監視回路に入力され、
該監視回路は、前記共通の電力監視信号線を通じて入力される電源ユニットそれぞれの前記監視電流信号の合算値に対応する電圧信号(Vt)を総合電力監視信号として制御信号線を通して前記システム部に出力することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電流変換回路は、前記監視信号を該監視信号に比例する所望の電圧信号に増幅する増幅器と、その出力に接続されて前記電圧信号をこれに比例する前記監視電流信号に変換する抵抗手段とからなることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記監視回路は、前記電力監視信号線と前記信号リターン線とが接続される一対の入力端子を有する演算増幅器と、前記電力監視信号線が接続されている前記入力端子と前記演算増幅器の出力端子との間に接続されている帰還用抵抗とを備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
前記総合電力監視信号に左右される設定信号と前記乗算回路からの前記監視信号とを入力端子に受けて、前記設定信号と前記監視信号との誤差増幅信号を出力する誤差増幅器を備え、前記誤差増幅信号が前記AC−DCコンバータに制御信号として与えられることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記複数の電源ユニットのそれぞれの出力電流に対応する監視電流信号が共通の電流監視信号線と共通の前記信号リターン線とを通して前記監視回路に入力され、
該監視回路は、前記共通の電流監視信号線を通じて入力される電源ユニットそれぞれの前記監視電流信号の合算値に対応する電圧信号(Vu)を総合電流監視信号として前記制御信号線とは別の信号線を通して前記システム部に出力することを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記監視回路は、前記電流監視信号線及び前記信号リターン線に接続されている一対の入力端子を有する演算増幅器と、該演算増幅器の出力端子と前記電流監視信号線が接続されている前記入力端子との間に接続されている帰還用抵抗とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、
前記総合電流監視信号に依存する設定信号と前記監視信号とを入力端子に受けて、前記設定信号と前記監視信号との誤差増幅信号を出力する誤差増幅器を備え、前記誤差増幅信号が前記AC−DCコンバータに制御信号として与えられることを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−67091(P2011−67091A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276794(P2010−276794)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【分割の表示】特願2005−263860(P2005−263860)の分割
【原出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】