説明

扇風機

【課題】扇風機近傍の初速を大きくすることで遠方への送風能力が向上でき、また、羽根車内部の空間を羽根車の可動範囲としなくなることで、可動範囲の領域を小さくできる扇風機を提供することを目的としている。
【解決手段】両端に備えられた主板11と側板13が整流効果をもつので羽根板12外周の軸方向端部での乱れや渦の発生を抑えて風速を増大させることができ、また、内部に可動部を持たないので、空気の流れを妨げることも無く、他の機能を備えるための空間としても利用でき、さらに、羽根板12を両端で固定しているので十分な強度を確保できる扇風機1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は360度の広範囲へ送風を行なう扇風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、扇風機は、地面と水平に備えられた軸流ファンを回転させることにより送風を行ない、広範囲への送風のためにファン部を首振り往復運動させていたが、より広範囲への送風のために地面と垂直方向を軸として板材を環状に配置させて360度送風を行なうものがあった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
以下、その扇風機について図11を参照しながら説明する。
【0004】
図に示すように、扇風機本体101は、台部102と、支柱部103と、送風部104とを有し、台座102は扇風機本体101の基台として機能し、操作部105が設けられており、また支柱部103は台部102の上面に立設して送風部104を支えており、送風部104はケース部106とカバー部107とケース内に収納される電動機(図示せず)と、回転軸108と羽根車109を有している。
【0005】
上記構成において、操作部105により運転を開始すると電動機が回転し、これに伴い回転軸108が回転するので、これにより羽根車109が回転する。回転される羽根車109の上方や下方の空気が吸い込まれ、羽根車109の周囲に向けて送風されることになる。また風よけ部110を取り付けることにより、カバー部107の周方向の一部をカバーして水平方向に送風されない領域を形成することも可能としている。
【特許文献1】特開2006−63948号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の扇風機では、周方向への広範囲の送風を行なう代わりに、距離の2乗に比例して風速が落ちる為に、遠方への送風が劣るという課題があった。
【0007】
また、軸流ファンに比べて回転軸方向の寸法が大きいために、羽根車の可動空間が大きくなり、可動範囲の領域が大きくなるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、扇風機近傍の初速を大きくすることで遠方への送風能力が向上でき、また、羽根車内部の空間を羽根車の可動範囲としなくなることで、可動範囲の領域を小さくできる扇風機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の天井扇は上記目的を達成するために、地面に垂直方向を回転軸とした電動機と、、前記電動機と同軸上で回転する前記電動機に接続されて遠心方向の360度へ送風を行なう羽根車とを有する扇風機であって、前記羽根車は、前記電動機に接続される環状の主板と、前記主板の面上に環状に備えられた複数の羽根板と、主板と対向して羽根板を挟む環状の側板、を有したことを特徴としたものである。
【0010】
また他の手段は、羽根板の軸垂直断面形状における内側端点の接線延長線が、内側端点と回転軸を結ぶ直線よりも回転方向を向き、かつ外側端点の延長接線が、外側端点と回転軸を結ぶ直線よりも回転逆方向を向いていることを特徴としたものである。
【0011】
また他の手段は、羽根板外径から算出される円の面積に対する主板と側板の穴の総面積の割合が0.6以上であることを特徴としたものである。
【0012】
また他の手段は、吹出流軸方向の変向手段を備えたことを特徴としたものである。
【0013】
また他の手段は、羽根車周方向全体もしくは一部を覆い、羽根車軸方向の一部を覆う板を備えたことを特徴としたものである。
【0014】
また他の手段は、主板と側板の穴の面積が異なることを特徴としたものである。
【0015】
また他の手段は、主板と側板の一方もしくは両方の穴の縁が羽根車の軸方向外側に向かってノズル状に滑らかに先細り形状となることを特徴としたものである。
【0016】
また他の手段は、主板と側板の一方もしくは両方の穴の縁の回転軸を通る断面の形状が羽根車の軸方向外側に向かって凸となる半円状であることを特徴としたものである。
【0017】
また他の手段は、羽根車の周りに、前記羽根車を保護するガードを備えたことを特徴としたものである。
【0018】
また他の手段は、ガードを介して、主板と側板の一方側もしくは両側の羽根車の軸方向外側に、滑らかに気流を導くオリフィスを備えたことを特徴としたものである。
【0019】
また他の手段は、電動機と反対側にガードを介して羽根車内部に固定される送風以外の付加機能を備えたことを特徴としたものである。
【0020】
また他の手段は、電動機をアウターロータの電動機として、羽根車内部のステータ先端に固定される送風以外の付加機能を備えたことを特徴としたものである。
【0021】
また他の手段は、羽根車内部に照明を備えたことを特徴としたものである。
【0022】
また他の手段は、羽根車内部に除湿剤を備えたことを特徴としたものである。
【0023】
また他の手段は、羽根車内部に芳香剤を備えたことを特徴としたものである。
【0024】
また他の手段は、羽根車内部にマイナスイオン発生器を備えたことを特徴としたものである。
【0025】
また他の手段は、台部と支柱部とケース部を有するスタンド頂点部に電動機を固定し、電動機の上方に羽根車を備えたことを特徴としたものである。
【0026】
また他の手段は、室内天井から吊り下げた支柱もしくはワイヤにケース部を備えて電動機を固定し、電動機の下方に羽根車を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、扇風機近傍の初速を大きくすることで遠方への送風能力が向上でき、また、羽根車内部の空間を羽根車の可動範囲としなくなることで、可動範囲の領域を小さくできる扇風機を提供することを目的としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の請求項1記載の扇風機は、地面に垂直方向を回転軸とした電動機と、、前記電動機と同軸上で回転する前記電動機に接続されて遠心方向の360度へ送風を行なう羽根車とを有する扇風機であって、前記羽根車は、前記電動機に接続される環状の主板と、前記主板の面上に環状に備えられた複数の羽根板と、主板と対向して羽根板を挟む環状の側板、を有したことを特徴としたものであり、両端に備えられた主板と側板が整流効果をもつので羽根板外周の軸方向端部での乱れや渦の発生を抑えて風速を増大させることができ、また内部に可動部を小さくできるので、空気の流れを妨げることも無く、他の付加機能を備えるための空間としても利用でき、さらに、羽根板を両端で固定しているので十分な強度を確保することが可能となる。
【0029】
また請求項2記載の発明は、羽根板の軸垂直断面形状における内側端点の接線延長線が、内側端点と回転軸を結ぶ直線よりも回転方向を向き、かつ外側端点の延長接線が、外側端点と回転軸を結ぶ直線よりも回転逆方向を向いていることを特徴としたものであり、環状に備えた羽根板は遠心ファンの空気の流れとなり、遠心ファン同様に内側端点形状で損失の少ない空気の取り込みをおこない、外側端点形状で負荷に対する仕事量の割合を増大させることができ、高効率な羽根車で風速を増大させることが可能となる。
【0030】
また請求項3記載の発明は、羽根板外径から算出される円の面積に対する主板と側板の穴の総面積の割合が0.6以上であることを特徴としたものであり、主板、側板の穴が小さすぎて吸い込み抵抗となることを確実に避けることができ、主板、側板が単純な平面であっても、主板、側板の整流効果で容易に風速増大が可能となる。
【0031】
また請求項4記載の発明は、吹出流軸方向の変向手段を備えたことを特徴としたものであり、吹出軸方向を地面と水平方向とするのではなく、風向きを変えることで、人が確実に涼をとれる効果に加えて、空調機併用時の冷暖房にあわせて風向を設定することにより効果的なサーキュレータとしての働きももつことが可能となる。
【0032】
また請求項5記載の発明は、羽根車周方向全体もしくは一部を覆い、羽根車軸方向の一部を覆う板を備えたことを特徴としたものであり、羽根車内で覆っていない主流が形成され、その主流の向きを保ったまま覆った方向とは逆方向の風向きの吹出しにすることができ、また薄肉構造で構成できるので、体積を増大させない変向手段とすることが可能となる。
【0033】
また請求項6記載の発明は、主板と側板の穴の面積が異なることを特徴としたものであり、主板、側板の穴の大きい方向の空気の吸い込み量がふえて、ファンから吹出された流れを穴の大きい方向へ誘引される風向きとすることができ、羽根車に変向手段を持たせることで、抵抗が少なく、かつ体積を増大させない変向手段とすることができる。
【0034】
また請求項7記載の発明は、主板と側板の一方もしくは両方の穴の縁が羽根車の軸方向外側に向かってノズル状に滑らかに先細り形状となることを特徴としたものであり、主板、側板の穴から軸方向に羽根車内に流入して、羽根板で遠心方向へ流れが変向される際にノズル状の滑らかな曲面で流れを導くので、変向時に生じる渦を抑えて吸い込み抵抗が小さくなり風速を増大できる。
【0035】
また請求項8記載の発明は、主板と側板の一方もしくは両方の穴の縁における回転軸を通る断面の形状が羽根車の軸方向外側に向かって凸となる半円状であることを特徴としたものであり、主板、側板の穴へ向けて周方向から空気が接近し、主板、側板の穴から流入するときに軸方向の流れに変向される際に半円状の滑らかな曲面で流れを導くので、変向時に生じる渦を抑えて吸い込み抵抗が小さくなり風速を増大できる。
【0036】
また請求項9記載の発明は、羽根車の周りに、前記羽根車を保護するガードを備えたことを特徴としたものであり、回転する羽根車への他物体の接触を防いだり、転倒時の羽根車の破損を防いだりできる。
【0037】
また請求項10記載の発明は、ガードを介して、主板と側板の一方側もしくは両側の羽根車の軸方向外側に、滑らかに気流を導く曲面オリフィスを備えたことを特徴としたものであり、主板、側板の穴へ向けて周方向から空気が接近し、主板、側板の穴から流入するときに、軸方向の流れに変向される際に曲面オリフィスの滑らかな曲面で整流できるので、変向時に生じる抵抗を小さくして羽根車へ導くことで風速を増大できる。
【0038】
また請求項11記載の発明は、電動機と反対側にガードを介して羽根車内部に固定される送風以外の付加機能を備えたことを特徴としたものであり、静止体であるガードを介すことで羽根車内部に備える他機能部を安定して固定し、容積を増大させずに扇風機に付加機能を持たせることが可能となる。
【0039】
また請求項12記載の発明は、電動機をアウターロータの電動機として、羽根車内部のステータ先端に固定される送風以外の付加機能を備えたことを特徴としたものであり、静止体であるステータ先端で他機能部を支持することで、羽根車内部に他機能部を安定して固定し、容積を増大させずに扇風機に付加機能を持たせることが可能となる。
【0040】
また請求項13記載の発明は、羽根車内部に照明を備えたことを特徴としたものであり、付加機能を照明とすることで、送風と照明の両方の効果を得ることが可能となる。
【0041】
また請求項14記載の発明は、羽根車内部に除湿剤を備えたことを特徴としたものであり、付加機能を除湿剤とすることで、送風と除湿の両方の効果を得ることができ、送風効果で空気が循環することにより、効果的な除湿効果を得ることが可能となる。
【0042】
また請求項15記載の発明は、羽根車内部に芳香剤を備えたことを特徴としたものであり、付加機能を芳香剤とすることで、送風と芳香の両方の効果を得ることができ、香りが気流にのることにより、効果的な香りの拡散が可能となる。
【0043】
また請求項16記載の発明は、羽根車内部にマイナスイオン発生器を備えたことを特徴としたものであり、送風以外の機能をマイナスイオン発生器とすることで、送風作用と、空気質を改善して疲労回復や健康の増進に寄与するマイナスイオン発生作用の両方の効果をえることができ、マイナスイオンが気流にのることにより、効果的なマイナスイオンの拡散が可能となる。
【0044】
また請求項17記載の発明は、台部と支柱部とケース部を有するスタンド頂点部に電動機を固定し、電動機の上方に羽根車を備えたことを特徴としたものであり、持運び可能な移動が容易な扇風機とすることが可能となる。
【0045】
また請求項18記載の発明は、室内天井から吊り下げた支柱もしくはワイヤにケース部を備えて電動機を固定し、電動機の下方に羽根車を備えたことを特徴としたものであり、床面を占拠せず、場所をとらない扇風機とすることが可能となる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0047】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における扇風機の斜視図であり、図2は羽根車の上面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態1の扇風機1は、操作部2を有する台部3と先端にケース部4を有する支柱部5から構成されるスタンド6と、ケース部4に支持される電動機(図示せず)と、電動機と同じ回転軸7で回転し電動機のシャフト8に接続される羽根車9で構成され、羽根車9はシャフト支持部10を有し、支持部以外は平面で構成される内径が260mm、外径が300mmの環状の主板11と、高さ120mm、幅82mmの羽根板12と、主板11と内径、外径が同寸法で主板と羽根板みこむ平面の側板13で構成されている。
【0048】
また、図2に示すように、羽根板12は、回転軸7と垂直な断面形状において、内側端点の延長接線14が、内側端点と回転軸を結ぶ直線15よりも回転方向を向き、かつ外側端点の延長接線16が、外側端点と回転軸を結ぶ直線17よりも回転逆方向を向いている。
【0049】
上記構成において、運転を開始して電動機が回転すると、シャフト8を介して羽根車9が回転する。回転に伴い、羽根車9の下方から主板11を通して、羽根車9の上方から側板13を通して空気が吸い込まれ、羽根板12に昇圧された空気が羽根車9からほぼ水平方向の周囲に向けて送風されることとなる。羽根車を通過する流れは主板11と側板13の整流効果により、羽根車外周端部の乱れ18の発生を抑えて風速を増大させることができる。
【0050】
また、図3は最も単純な形状である平面の主板11、側板13を備えた羽根車の送風性能を示したものであるが、羽根板外径から算出される上面、下面分の円の総面積Scに対する主板と側板の穴の総面積Sinの割合であるSin/Scと、人が気流を感じることができる程度の風速0.4m/sの到達距離比(主板、側板を備えないSin/Sc=1の時の到達距離を基準)との関係では、羽根板高さHと羽根板外径Dで表される比D/Hとは無関係にSin/Scが0.6以上で主板11、側板13を備えない構成よりも気流の到達距離が向上することを示しており、実施の形態1では、主板11、側板13それぞれに径が130mmの穴を有しているので、Sinはこの2つの穴の面積の総和となり、Sin/Scが0.8となるように構成されているので、気流到達距離は主板11、側板13が無い場合と比較して10%ほど向上し、同距離位置での風速が増大する。
【0051】
また、羽根板12の両端部の形状定義により、遠心ファン同様に内側端点形状で空気の流入に合わせた損失の少ない空気の取り込みをおこない、外側端点形状で負荷に対する仕事量の割合を増大させることができ、高効率な羽根車9で風速を増大させる作用をもつ。
【0052】
また、主板11、側板13は羽根板12を挟みこんでいるので、主板11のみで羽根板12を支える場合と比べて、十分な強度を確保でき、また遠心力による羽根板12の広がりなどを抑えることができる。
【0053】
また、電動機と羽根車9がスタンドに備えられて、任意の床上に置くことが可能であるので、持ち運び、移動が容易な扇風機となっている。
【0054】
なお、実施の形態1では、平面の主板11、側板13で構成しているのでSin/Scが0.6以上で主板11、側板13が風速の増大をもたらすが、主板11、側板13を湾曲させたりして空気流入時の損失を少なくすることで、Sin/Scが0.6以下でも風速の増大は可能となるので、羽根車9の強度を高めたい場合には、環状の主板11、側板13の内径をさらに小さくすることもできる。
【0055】
また、羽根車9からの吹出しは、床面と水平方向の主流が形成されるが、吹出流軸方向の変向手段を備えてもよく、風向きを変えることで、人が確実に涼をとれる効果に加えて、空調機併用時の冷暖房にあわせて風向を設定することにより効果的なサーキュレータとしての働きももつことが可能となる。
【0056】
また、羽根車9がむき出しであるが、羽根車の周りに、前記羽根車を保護するガードを備えてもよく、回転する羽根車への他物体の接触を防いだり、転倒時の羽根車の破損を防いだりすることができる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図4は本発明の実施の形態2における扇風機の斜視図であり、図5は扇風機の羽根車の回転軸7を通る断面図である。
【0058】
これらの図に示すように、本発明の扇風機1はスタンド6上部に電動機(図示せず)を支持するケース部4と羽根車を保護するガード部20を備えている。電動機はシャフト8を介して羽根車9に接続され、羽根車9は内側が軸方向外側に向かってノズル状に角のない滑らかな先細り形状19となる環状の主板11と、側板13と、主板11と側板13に挟まれて固定される羽根板12で構成されている。また、ガード部20は、通風可能かつ異物混入を妨げる程度の格子21と、主板11と側板13の軸方向外側にそれぞれ設けられた曲面のオリフィス部22と、ガード部20に接続されて軸方向にスライドする羽根車軸方向の一部の全周を覆う筒状の変向手段となる風向制御板23から構成されている。
【0059】
上記構成において、羽根車9が回転して羽根車9の上下方向の空気を吸引し、オリフィス部22、主板11または側板13、羽根板12、ガード部20を通って周囲へ送風される。ここで、羽根車9へ吸引される吸込み流が主板11と側板13の間を通り抜ける軸方向の流れに変向される吸込み変向流24は、オリフィス部22の角がなく渦を生じにくい滑らかな曲面で整流され、また、羽根板により羽根車9の内部での遠心方向に変向される羽根車内変向流25は、主板11と側板13のノズル状の渦を生じるような角の無い滑らかな曲面で流れを導くので、変向時の渦26を抑えて吸い込み抵抗が小さくなるので風速が増大することとなる。
【0060】
また、風向制御板23があることで、風向制御板23で覆われていない部分へ向けて羽根車9内部で主流が形成されるので、吹出し方向を制御でき、風向制御板23を可動化とすることで、人が確実に涼をとれる効果に加えて、空調機併用時の冷暖房にあわせて風向を設定することにより効果的なサーキュレータとしての働きももつことが可能となる。さらに、風向制御板23は薄肉構造で構成できるので体積増大を避けることもできる。
【0061】
なお、実施の形態2では、ガード部20を備えているが、有無に関わらず主板11と側板13により風速増大の効果は得られ、この場合、ガード部20を通過する際の圧力損失が無くなるので、ガード部20を備えている場合よりも風速、気流到達距離が増大することとなる。
【0062】
また、主板11と側板13の両方向へオリフィス部22が備えられ、主板11と側板13の内側がノズル状の滑らかな先細り形状19となっているが、扇風機1の僅かな容積拡大も避けたい場合には、片方のみのオリフィス部22や先細り形状19でも効果は得られ、図6に示すように、オリフィス部22や先細り形状19ではなく回転軸7を通る断面の形状が羽根車9の軸方向外側に向かって凸となる半円形状を用いても、主板11、側板13を通過するときの軸方向の流れに変向される際に半円状の角の無い滑らかな曲面で流れを導くので、平板の主板11または側板13内側の乱れのある変向流27が整流される変向流28となり、変向時に生じる渦を抑えて吸い込み抵抗が小さくなり風速、気流到達距離の増大が可能となる。ちなみに、図6では300mmの羽根車9の内径に対して半径7mm程度の円弧で半円状の形状が形成されている。
【0063】
また、風向制御板23を可動としているが、吹出し流を変向させる必要の無い場合にはこれを固定することで構成を単純にすることもできる。
【0064】
(実施の形態3)
実施の形態1、2と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図7は穂院発明の実施の形態3における扇風機の斜視図であり、図8は扇風機の羽根車の回転軸7を通る断面図である。
【0065】
これらの図に示すように、支柱部5上部のケース部4にはアウターロータの電動機29が支持され、このロータ30に主板11のシャフト支持部10が直付けされて羽根車9が回転される。羽根車9は、外径が300mmであり、主板の内径31が240mm、側板の内径32が260mmであり、側板13の内側は回転軸7の外方向に向かってノズル状に角の無い滑らかな先細り形状19となっている。
【0066】
また、羽根板12を回転軸7を囲んで環状に配置した羽根車9の内部の空間のアウターロータの電動機29のステータ33先端に付加機能としての芳香剤34を備えている。
【0067】
上記構成において、アウターロータの電動機29の回転により羽根車9が回転して、空気は羽根車9への流入口となる主板11と側板13の内側へと吸引されて、羽根板12により周囲へ送風される。ここで、平面の主板11に対して、側板13は先細り形状19を有して吸込みの損失を小さくしており、また側板の内径32も主板の内径31と比較して大きくなっているので、側板13での流入面積が大きくなるために側板13からの流入量が多くなる。主板11と側板13の一方の流入量が多くなると、吹出し空気は流入量が大きい吸込み側へ向かう誘引気流41が生じ、主流は流入量が多い方向へと向かうため、側板13の方向である上方へと吹出し方向が変向されることとなる。
【0068】
また、アウターロータの電動機29を備えたことにより、羽根車9の内部に静止体を固定することが可能となる。ここではステータ33先端にハーブの香りを拡散する芳香剤34を備えているので送風と芳香の両方の効果を得ることができ、香りが気流にのることにより、芳香剤としても効果的な役目を果たす。
【0069】
なお、実施の形態3では、主板の内径31と側板の内径32を異ならせているが、主板11と側板13からの流入面積を変化させればよいので、穴を任意に塞ぐことでも吹出し流の変向は可能となる。
【0070】
また、主板11と側板13からの流入面積を異ならせたまま固定しているが、図9に示すように面積可変構造35としてもよい。面積可変構造35は、例えば放射上のスリットを有する静止板36に回転板37を重ねて、回転板37の角度をずらしてスリットの重なり量を変えることにより面積を可変させることで可能となる。
【0071】
なお、側板13と比較して主板11の面積を大きくしても良く、この場合は風向が主板11側へ向くこととなるので、羽根車9の設置高さと送風目的領域により、効果的な風向を決定すればよい。
【0072】
なお、付加機能として芳香剤34を備えているが、シリカゲルの除湿剤や電気式のマイナスイオン発生器でもよく、羽根車9により空気が循環されるので、効果的な役目を果たす。また、付加機能として照明を備えることで、送風機能に加えて明かりを得ることも可能となる。
【0073】
(実施の形態4)
実施の形態1から3と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図10は本発明の実施の形態4における扇風機の斜視図である。
【0074】
図10に示すように、本発明の扇風機は、天井38に取り付けられる支柱部5にケース部4が接続され、ケース部4に備えられた電動機(図示せず)に主板11で固定される羽根車9と、ケース部4に接続されて羽根車9を保護するガード部20から構成されている。羽根車9は主板11の下面側に環状に配置される羽根板12と、羽根板12の下端に接続される側板13から構成され、ガード部20は、ケース部4と反対側の中央部から羽根車内部に向けて羽根車内固定部39を有して付加機能としての照明40を備えている。
【0075】
上記構成において、リモコンもしくは天井を経由して取り付けられた壁スイッチにより運転を開始すると、電動機により羽根板12が回転して上下方向の空気を吸引して羽根板12の周囲へ送風を行う。ここで、羽根車9を天井から吊り下げているために、床面を占拠せず、場所をとらずに送風を行い、涼風感を得たりサーキュレータとして利用できる。また、羽根車9の内部に照明40を備えているので、扇風機としてだけでなく照明としての役目を果たす。
【0076】
なお、実施の形態4では天井38から吊り下げた扇風機に照明40を備えているが、スタンド状の扇風機の内部に照明40を備えてスタンド照明としてもよく、羽根車9の内部に付加機能として照明40を備えているが、除湿剤や芳香剤やマイナスイオン発生器でもよく、羽根車9により空気が循環されるので、効果的な役目を果たす。
【0077】
また、天井38から吊り下げた状態で羽根板12から水平方向へ送風される構造であるが、吹出流軸方向の変向手段を備えてもよく、天井38近傍から風向きを変えることで、人が確実に涼をとれる効果に加えて、空調機併用時の冷暖房にあわせて風向を設定することにより効果的なサーキュレータとしての働きももつことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明にかかる扇風機は、近傍の初速を大きくすることで遠方への送風能力が向上でき、また、羽根車内部の空間を羽根車の可動範囲としなくなることで、可動範囲の領域を小さくできる扇風機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態1の扇風機の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1の扇風機の羽根車の上面図
【図3】本発明の実施の形態1の扇風機の送風性能を示す図
【図4】本発明の実施の形態2の扇風機の斜視図
【図5】本発明の実施の形態2の扇風機の羽根車の断面図
【図6】本発明の実施の形態2の扇風機の羽根車の補足断面図
【図7】本発明の実施の形態3の扇風機の斜視図
【図8】本発明の実施の形態3の扇風機の羽根車の断面図
【図9】本発明の実施の形態3の扇風機の補足斜視図
【図10】本発明の実施の形態4の扇風機の斜視図
【図11】従来の天井扇を示す側面図
【符号の説明】
【0080】
1 扇風機
2 操作部
3 台部
4 ケース部
5 支柱部
6 スタンド
7 回転軸
8 シャフト
9 羽根車
10 シャフト支持部
11 主板
12 羽根板
13 側板
14 内側端点の延長接線
15 内側端点と回転軸を結ぶ直線
16 外側端点の延長接線
17 外側端点と回転軸を結ぶ直線
18 羽根車外周端部の乱れ
19 先細り形状
20 ガード部
21 格子
22 オリフィス部
23 風向制御板
24 吸込み変向流
25 羽根車内変向流
26 変向時の渦
27 乱れのある変向流
28 整流される変向流
29 アウターロータの電動機
30 ロータ
31 主板の内径
32 側板の内径
33 ステータ
34 芳香剤
35 面積可変構造
36 静止板
37 回転板
38 天井
39 羽根車内固定部
40 照明
41 誘引気流
42 半円形状
Sc 円の総面積
Sin 穴の総面積
H 羽根車高さ
D 羽根板外径
101 扇風機本体
102 台部
103 支柱部
104 送風部
105 操作部
106 ケース部
107 カバー部
108 回転軸
109 羽根車
110 風よけ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に垂直方向を回転軸とした電動機と、前記電動機と同軸上で回転する前記電動機に接続されて遠心方向の360度へ送風を行なう羽根車とを有する扇風機であって、前記羽根車は、前記電動機に接続される環状の主板と、前記主板の外周部の面上に環状に備えられた複数の羽根板と、主板と対向して羽根板を挟む環状の側板、を有したことを特徴とした扇風機。
【請求項2】
羽根板の軸垂直断面形状における内側端点の接線延長線が、内側端点と回転軸を結ぶ直線よりも回転方向を向き、かつ外側端点の延長接線が、外側端点と回転軸を結ぶ直線よりも回転逆方向を向いていることを特徴とした請求項1に記載の扇風機。
【請求項3】
羽根板外径から算出される円の面積に対する主板と側板の穴の総面積の割合が0.6以上であることを特徴とした請求項1または2に記載の扇風機。
【請求項4】
吹出流軸方向の変向手段を備えたことを特徴とした請求項1から3のいずれかに記載の扇風機。
【請求項5】
羽根車周方向の全体もしくは一部を覆い、羽根車軸方向の一部を覆う板を備えたことを特徴とした請求項4に記載の扇風機。
【請求項6】
主板と側板の穴の面積が異なることを特徴とした請求項4に記載の扇風機。
【請求項7】
主板と側板の一方もしくは両方の穴の縁が羽根車の軸方向外側に向かってノズル状に滑らかに先細り形状となることを特徴とした請求項1から6のいずれかに記載の扇風機。
【請求項8】
主板と側板の一方もしくは両方の穴の縁の回転軸を通る断面形状が羽根車の軸方向外側に向かって凸となる半円状であることを特徴とした請求項1から6のいずれかに記載の扇風機。
【請求項9】
羽根車の周りに、前記羽根車を保護するガードを備えたことを特徴とした請求項1から8のいずれかに記載の扇風機。
【請求項10】
ガードを介して、主板と側板の一方側もしくは両側の羽根車の軸方向外側に、滑らかに気流を導くオリフィスを備えたことを特徴とした請求項9に記載の扇風機。
【請求項11】
電動機と反対側にガードを介して羽根車内部に固定される送風以外の付加機能を備えたことを特徴とした請求項9に記載の扇風機。
【請求項12】
電動機をアウターロータの電動機として、ロータに羽根車を接続し、羽根車内部のステータ先端に固定される送風以外の付加機能を備えたことを特徴とした請求項1から10のいずれかに記載の扇風機。
【請求項13】
羽根車内部に照明を備えたことを特徴とした請求項11または12に記載の扇風機。
【請求項14】
羽根車内部に除湿剤を備えたことを特徴とした請求項11または12に記載の扇風機。
【請求項15】
羽根車内部に芳香剤を備えたことを特徴とした請求項11または12に記載の扇風機。
【請求項16】
羽根車内部にマイナスイオン発生器を備えたことを特徴とした請求項11または12に記載の扇風機。
【請求項17】
台部と支柱部とケース部を有するスタンド頂点部に電動機を固定し、電動機の上方に羽根車を備えたことを特徴とした請求項1から16のいずれかに記載の扇風機。
【請求項18】
室内天井から吊り下げた支柱もしくはワイヤにケース部を備えて電動機を固定し、電動機の下方に羽根車を備えたことを特徴とした請求項1から16のいずれかに記載の扇風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−91980(P2009−91980A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263108(P2007−263108)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】