説明

手動式画像読取装置の検査装置

【課題】手動式画像読取装置における撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を容易に検査することができる検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置20は、マウススキャナー40を載せる検査平面240を形成する検査台230と、検査平面240に載せたマウススキャナー40を移動させる移動部250と、矩形の各辺に沿った線状の空隙を形成して、位置検出部420による位置の検出を阻害する空隙部246と、空隙部246による矩形の各辺にそれぞれ略平行する複数の線分を含み、位置検出部420による位置の検出が空隙部246によって阻害される際に撮像部430によって撮像可能な位置に描かれた基準線248とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式画像読取装置(マウススキャナー)を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿を読み取る画像読取装置(スキャナー)として、ハンディー方式とも呼ばれ、手動で原稿上を移動させることによって原稿を読み取る手動式画像読取装置が知られている(特許文献1)。手動式画像読取装置は、原稿を撮像する撮像部と、原稿との相対的な位置を検出する位置検出部とを備え、撮像部によって撮像された撮像データと、その撮像データが撮像された位置を示す位置データとを関連付けて取得する。手動式画像読取装置によって取得された撮像データおよび位置データを用いて、原稿上の位置に対応させて複数の撮像データを合成することによって、原稿を表現する画像データを生成することができる。そのため、手動式画像読取装置における撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係のズレは、読み取られた画像に歪みを生じさせることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−345074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、手動式画像読取装置の校正作業(キャリブレーション)の一環として、手動式画像読取装置における撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を検査することに関して十分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、上記した課題を踏まえ、手動式画像読取装置における撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を容易に検査することができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1] 適用例1の検査装置は、原稿を撮像する撮像部と前記原稿との相対的な位置を検出する位置検出部とを備える手動式画像読取装置を検査する検査装置であって、前記手動式画像読取装置を載せる検査平面を形成する検査台と、前記検査平面に載せた前記手動式画像読取装置を前記検査平面に略沿って移動させる移動部と、前記検査平面に設けられ、矩形の各辺に沿った線状の空隙を形成する空隙部であって、前記移動部によって前記手動式画像読取装置が移動する際に前記位置検出部による位置の検出を阻害する空隙部と、前記検査平面に設けられ、前記空隙部による矩形の各辺にそれぞれ略平行する複数の線分を含む基準線であって、前記位置検出部による位置の検出が前記空隙部によって阻害される際に前記撮像部によって撮像可能な位置に描かれた基準線とを備えることを特徴とする。適用例1の検査装置によれば、検査平面における空隙部と基準線との間の相対的な位置関係は一定であることから、検査平面に載せた手動式画像読取装置を各方向に移動させながら、位置検出部による位置の検出が阻害される際に撮像部によって撮像された画像データを取得し、その画像データにおける基準線の位置に基づいて、撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を判断することができる。したがって、手動式画像読取装置における撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を容易に検査することができる。
【0008】
[適用例2] 適用例1の検査装置は、更に、前記位置検出部による位置の検出が阻害される際に前記撮像部によって撮像された画像データを取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された画像データにおける基準線の位置に基づいて、前記撮像部と前記位置検出部との間の相対的な位置関係を判断する位置判断部とを備えても良い。適用例2の検査装置によれば、検査装置において画像データの取得および位置関係の判断を実施するため、手動式画像読取装置における撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を一層容易に検査することができる。
【0009】
[適用例3] 適用例1または適用例2の検査装置において、前記空隙部は、二つの長辺の中央部を削除した矩形に沿った線状の空隙を形成しても良い。適用例3の検査装置によれば、検査に影響を与えることなく、検査平面の剛性を保持することができる。
【0010】
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかの検査装置において、前記基準線は、前記空隙部による矩形の内側に位置し、該矩形よりも小さな矩形を構成しても良い。適用例4の検査装置によれば、複雑な計算を実施することなく、位置検出部による位置の検出が阻害される際に撮像部によって撮像された画像データに基づいて、撮像部と位置検出部との間の相対的な位置関係を容易に判断することができる。
【0011】
[適用例5] 適用例1ないし適用例4のいずれかの検査装置は、更に、前記移動部によって前記手動式画像読取装置が移動する際に、前記位置検出部が前記空隙部を通過した後、前記移動部による前記手動式画像読取装置の移動を抑止する抑止部を備えても良い。適用例5の検査装置によれば、検査平面における手動式画像読取装置の不必要な移動が回避されるため、手動式画像読取装置の検査に要する処理時間を短縮することができる。また、検査平面における手動式画像読取装置の過剰な移動が回避されるため、手動式画像読取装置および検査装置の破損を防止することができる。
【0012】
[適用例6] 適用例1ないし適用例5のいずれかの検査装置は、更に、前記移動部によって前記手動式画像読取装置が移動する際に、前記手動式画像読取装置と前記検査平面との間の距離を略一定に保持する保持部を備えても良い。適用例6の検査装置によれば、移動中に手動式画像読取装置が検査平面から離れることによる検査エラーの発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の形態は、検査装置に限るものではなく、検査装置を制御する制御装置、検査装置を用いて手動式画像読取装置を検査する方法、検査装置を制御するプログラムなど他の形態に適用することもできる。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】校正システムの外観構成を示す説明図である。
【図2】検査平面の詳細構造を主に示す説明図である。
【図3】図2に示した状態から左方向にマウススキャナーを移動させた検査平面の詳細構成を主に示す説明図である。
【図4】図2に示した状態から前方向にマウススキャナーを移動させた検査平面の詳細構成を主に示す説明図である。
【図5】校正システムの電気的な構成を示す説明図である。
【図6】校正システムのパーソナルコンピューターが実行する校正処理を示すフローチャートである。
【図7】校正システムのパーソナルコンピューターが実行する校正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した校正システムについて説明する。
【0016】
A.実施例:
A1.校正システムの構成:
図1は、校正システム10の外観構成を示す説明図である。校正システム10は、手動式画像読取装置であるマウススキャナー40の校正(キャリブレーション、Calibration)を行うシステムである。本実施例では、校正システム10は、校正の対象機器であるマウススキャナー40を検査する検査装置20と、マウススキャナー40の検査および校正を制御するパーソナルコンピューター30とを備える。
【0017】
校正システム10の検査装置20は、基台210と、フレーム220と、検査台230と、移動部250と、ガイド260とを備える。
【0018】
検査装置20の基台210は、検査装置20を構成する各部の荷重を受け持つ基礎構造体である。本実施例では、基台210は、矩形状に成形された金属製の板材である。検査装置20のフレーム220は、基台210に固定され、検査台230を支持する支柱構造体である。
【0019】
検査装置20の検査台230は、マウススキャナー40の検査を実施する構造である検査平面240を備える構造体であり、マウススキャナー40の検査は、検査台230の検査平面240にマウススキャナー40を載せて実施される。本実施例では、検査台230は、基台210と略同じ大きさの矩形状に成形された金属製の板材であり、基台210に対して略平行にフレーム220に支持されている。
【0020】
本実施例の説明では、矩形状の検査台230における短辺に沿って図1の紙面奥に向かう方向をX軸方向として設定し、検査台230における長辺に沿って図1の紙面奥に向かう方向をY軸方向として設定し、X軸方向およびY軸方向に直交して基台210から検査台230に向かう方向をZ軸方向として設定する。本実施例の説明では、X軸における正の方向を右方向と呼び、X軸における負の方向を左方向と呼び、Y軸における正の方向を前方向と呼び、Y軸における負の方向を後方向と呼ぶ。
【0021】
検査台230の検査平面240は、検査台230において上方(Z軸方向)を向く上面232に対して略平行に窪む平面であり、検査平面240の周囲には、上面232に対して検査平面240が窪む深さに相当する凹部側面234が形成されている。検査平面240は、Z軸に略直交し、X軸方向およびY軸方向に略沿った平面であり、凹部側面234は、検査平面240および上面232に略直交するZ軸に略沿った平面である。検査平面240の構造についての詳細は後述する。
【0022】
検査装置20の移動部250は、検査台230の検査平面240に載せたマウススキャナー40をX軸方向およびY軸方向に略沿って移動させる。移動部250は、X軸移動台251と、Y軸移動台252と、連結部254と、移動プレート256と、マウス保持部258とを備える。
【0023】
移動部250の移動プレート256は、マウススキャナー40に嵌り合う開口部2562が形成され、検査台230の検査平面240よりも小さな板材である。本実施例では、マウススキャナー40は、移動プレート256の開口部2562に嵌め合わせた状態で、検査台230の検査平面240に載せられる。本実施例では、移動プレート256は、検査台230の検査平面240においてX軸方向およびY軸方向に移動可能な大きさの矩形状に成形されている。本実施例では、移動プレート256は、合成樹脂製である。
【0024】
移動部250の連結部254は、移動プレート256をX軸移動台251およびY軸移動台252に連結する構造体である。移動部250のマウス保持部258は、移動プレート256の開口部2562に嵌め合わせたマウススキャナー40を検査平面240に向けて押し当てることによって、マウススキャナー40を保持する機構である。
【0025】
移動部250のX軸移動台251は、連結部254を介して移動プレート256をX軸方向に検査台230の検査平面240に対して相対的に移動させる機構であり、移動部250のY軸移動台252は、連結部254を介して移動プレート256をY軸方向に検査台230の検査平面240に対して相対的に移動させる機構である。X軸移動台251およびY軸移動台252が連結部254を介して移動プレート256を移動させることによって、移動プレート256におけるマウススキャナー40は、検査台230の検査平面240上を移動する。本実施例では、X軸移動台251およびY軸移動台252の各々は、パーソナルコンピューター30からの制御信号に基づいて動作するステップモーター(図示しない)を備える。
【0026】
検査装置20のガイド260は、移動部250の移動プレート256が検査台230の検査平面240上を移動する際に、移動プレート256が検査平面240から浮き上がることを防止することによって、マウススキャナー40と検査平面240との間の距離を略一定に保持する保持部として機能する。本実施例では、ガイド260は、検査平面240の上方に突き出た状態で検査台230の上面232に固定された矩形状の板材である。本実施例では、矩形の移動プレート256における四隅に対応して、四つのガイド260が検査台230に設けられている。
【0027】
図2は、検査平面240の詳細構造を主に示す説明図である。図2では、検査台230を上面232から見た上面図に検査平面240が図示されている。図2には、Z軸方向から検査平面240に投影した移動プレート256が、一点鎖線を用いて図示され、Z軸方向から検査平面240に投影したガイド260が破線を用いて検査平面240に重ね合わせて図示されている。
【0028】
図2には、移動プレート256の開口部2562に嵌め合わされたマウススキャナー40をZ軸方向から検査平面240に投影した状態が図示されている。マウススキャナー40は、原稿との相対的な位置を検出する位置検出部420と、原稿を撮像する撮像部430とを備え、図2には、マウススキャナー40の位置検出部420および撮像部430が一点鎖線を用いて検査平面240に重ね合わせて図示されている。
【0029】
マウススキャナー40の撮像部430は、原稿に光を照射して原稿における矩形状の領域を撮像する撮像装置であり、図2には、撮像部430によって撮像可能な矩形状の撮像領域に、左上がりのハッチングが施されている。本実施例では、撮像部430は、640列×480行に配列された複数のフォトダイオードを有するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを備え、マウススキャナー40の中央部に設けられている。
【0030】
マウススキャナー40の位置検出部420は、原稿にレーザー光を照射し、その反射光の強度に基づいて位置を検出する光学式の位置検出装置である。本実施例では、マウススキャナー40は、四つの位置検出部420を備え、これら四つの位置検出部420の各々は、撮像部430の左前、右前、左後、右後に設けられている。本実施例の説明では、マウススキャナー40の位置検出部を一般的に示す場合には、「240」の符号を用い、四つ位置検出部を個別に示す場合には、左前に位置する位置検出部には「240a」の符号を用い、右前に位置する位置検出部には「240b」の符号を用い、左後に位置する位置検出部には「240c」の符号を用い、右後に位置する位置検出部には「240d」の符号を用いる。
【0031】
図2に示すように、検査台230の検査平面240は、移動プレート256よりも一回り大きな矩形から各々の辺を上下左右にそれぞれ引き伸ばした十字状の平面であり、その十字状の中央部に位置する矩形の内側には、空隙部246と、基準線248とが設けられている。
【0032】
検査平面240の空隙部246は、矩形の各辺に沿った線状の空隙、すなわち、矩形における各辺の少なくとも一部を構成する空隙を形成する。これによって、空隙部246は、移動部250の移動プレート256に嵌め合わされたマウススキャナー40が移動する際にマウススキャナー40の位置検出部420による位置の検出を阻害する。図2には、空隙部246によって形成される空隙に、右上がりのハッチングが施されている。本実施例では、空隙部246は、Y軸に沿った二つの長辺の中央部を削除した矩形における前方向の部位を構成する空隙を形成する前方空隙部246aと、その矩形における後方向の部位を構成する空隙を形成する後方空隙部246bとを備え、検査平面240における十字状の中央部に位置する矩形よりも一回り小さな矩形を構成する。本実施例では、空隙部246によって形成される空隙は、検査台230を貫通する孔であるが、他の実施形態において、検査平面240に対して窪んだ溝であっても良い。
【0033】
検査平面240の基準線248は、空隙部246によって構成される矩形の各辺にそれぞれ略平行する複数の線分を含み、マウススキャナー40の位置検出部420による位置の検出が空隙部246によって阻害される際にマウススキャナー40の撮像部430によって撮像可能な位置に描かれている。本実施例では、基準線248は、空隙部246によって構成される矩形の各辺にそれぞれ略平行する四つの線分で構成される矩形状の枠であり、空隙部246によって構成される矩形の内側に位置し、検査平面240における十字状の中央部に移動プレート256が位置する状態で、マウススキャナー40の撮像部430による撮像領域を取り囲む。
【0034】
図3は、図2に示した状態から左方向にマウススキャナー40を移動させた検査平面240の詳細構成を主に示す説明図である。図3は、検査台230を上面232から見た上面図であり、移動プレート256およびマウススキャナー40を左方向に移動させた点を除き、図2と同様である。
【0035】
図3に示すように、図2に示した状態から左方向にマウススキャナー40を移動させると、マウススキャナー40の位置検出部420aは、検査平面240の前方空隙部246aにおけるY軸に沿った左側の線状の空隙において、位置の検出に十分な反射光を得られずに、マウススキャナー40が原稿から持ち上げられた状態を示すリフトアップを検出する。他方、マウススキャナー40の位置検出部420cは、検査平面240の後方空隙部246bにおけるY軸に沿った左側の線状の空隙においてリフトアップを検出する。図3に示すように、図2に示した状態から左方向にマウススキャナー40を移動させ、マウススキャナー40の位置検出部420a,420cがリフトアップを検出した状態では、マウススキャナー40の撮像部430は、基準線248におけるY軸に沿った左側の線分によってY軸方向に略二等分される。
【0036】
図3とは逆に、図2に示した状態から右方向にマウススキャナー40を移動させると、マウススキャナー40の位置検出部420bは、検査平面240の前方空隙部246aにおけるY軸に沿った右側の線状の空隙においてリフトアップを検出する。他方、マウススキャナー40の位置検出部420dは、検査平面240の後方空隙部246bにおけるY軸に沿った右側の線状の空隙においてリフトアップを検出する。図3とは逆に、図2に示した状態から右方向にマウススキャナー40を移動させ、マウススキャナー40の位置検出部420b,420dがリフトアップを検出した状態では、マウススキャナー40の撮像部430は、基準線248におけるY軸に沿った右側の線分によってY軸方向に略二等分される。
【0037】
図4は、図2に示した状態から前方向にマウススキャナー40を移動させた検査平面240の詳細構成を主に示す説明図である。図4は、検査台230を上面232から見た上面図であり、移動プレート256およびマウススキャナー40を前方向に移動させた点を除き、図2と同様である。
【0038】
図4に示すように、図2に示した状態から前方向にマウススキャナー40を移動させると、マウススキャナー40の位置検出部420a,420bは、検査平面240の前方空隙部246aにおけるX軸に沿った前側の線状の空隙においてリフトアップを検出する。図4に示すように、図2に示した状態から前方向にマウススキャナー40を移動させ、マウススキャナー40の位置検出部420a,420bがリフトアップを検出した状態では、マウススキャナー40の撮像部430は、基準線248におけるX軸に沿った前側の線分によってX軸方向に略二等分される。
【0039】
図4にとは逆に、図2に示した状態から後方向にマウススキャナー40を移動させると、マウススキャナー40の位置検出部420c,420dは、検査平面240の後方空隙部246bにおけるX軸に沿った後側の線状の空隙においてリフトアップを検出する。図4とは逆に、図2に示した状態から後方向にマウススキャナー40を移動させ、マウススキャナー40の位置検出部420c,420dがリフトアップを検出した状態では、マウススキャナー40の撮像部430は、基準線248におけるX軸に沿った後側の線分によってX軸方向に略二等分される。
【0040】
図5は、校正システム10の電気的な構成を示す説明図である。校正システム10のパーソナルコンピューター30は、移動制御部312と、画像取得部314と、位置判断部316と、機器インターフェース380とを備える。
【0041】
パーソナルコンピューター30の移動制御部312は、機器インターフェース380を通じて制御信号を出力することによって、検査装置20における移動部250のX軸移動台251およびY軸移動台252を制御する。
【0042】
パーソナルコンピューター30の画像取得部314は、マウススキャナー40の位置検出部420による位置の検出が阻害される際にマウススキャナー40の撮像部430によって撮像された画像データを、マウススキャナー40から機器インターフェース380を通じて取得する。
【0043】
パーソナルコンピューター30の位置判断部316は、画像取得部314によって取得された画像データにおける基準線248の位置に基づいて、マウススキャナー40の位置検出部420と撮像部430との間の相対的な位置関係を判断する。
【0044】
パーソナルコンピューター30の機器インターフェース380は、検査装置20およびマウススキャナー40と電気的に接続する。本実施例では、機器インターフェース380は、マウススキャナー40と接続するインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠したインターフェースを備える。
【0045】
本実施例では、パーソナルコンピューター30における移動制御部312、画像取得部314、位置判断部316の各機能は、プログラムに基づいてセントラルプロセッシングユニット(Central Processing Unit、以下、「CPU」と呼ぶ)が動作することによって実現されるが、他の実施形態において、パーソナルコンピューター30の電子回路がその物理的な回路構成に基づいて動作することによって、パーソナルコンピューター30の機能の少なくとも一つが実現されても良い。
【0046】
校正対象であるマウススキャナー40は、位置検出部420および撮像部430の他、制御部410と、メモリー470と、機器インターフェース480と、操作受付部490とを備える。マウススキャナー40の制御部410は、マウススキャナー40の各部を制御する。マウススキャナー40のメモリー470は、不揮発性メモリーであり、マウススキャナー40を校正する校正値を記憶する。マウススキャナー40の機器インターフェース480は、本実施例では、USB規格に準拠したインターフェースであり、マウススキャナー40と協働して原稿の読み取りを行うコンピューターと電気的に接続する。マウススキャナー40の操作受付部490は、マウススキャナー40を操作するユーザーからの操作入力を受け付けるユーザーインターフェースであり、本実施例では、押しボタンやスクロールボタンを含む。
【0047】
A2.校正システムの動作:
図6および図7は、校正システム10のパーソナルコンピューター30が実行する校正処理(ステップS10)を示すフローチャートである。本実施例では、マウススキャナー40を検査する作業者から指示入力を受け付けると、パーソナルコンピューター30は、校正処理(ステップS10)を開始する。
【0048】
校正処理(ステップS10)を開始すると、パーソナルコンピューター30は、検査装置20における移動プレート256を図2に示した基準位置に移動させ、マウススキャナー40の位置検出部420から出力される信号に基づいて、マウススキャナー40が検査装置20に適切に取り付けられていることを確認する(ステップS100)。
【0049】
マウススキャナー40の取り付けを確認した後(ステップS100)、パーソナルコンピューター30は、四つの位置検出部420のうちの一つを検査対象として選択する(ステップS200)。本実施例では、パーソナルコンピューター30は、位置検出部420a,420b,420c,420dの順に、検査対象である位置検出部420を選択する。
【0050】
検査対象として位置検出部420を選択した後(ステップS200)、パーソナルコンピューター30は、移動制御部312として動作することによって、移動プレート256に取り付けられたマウススキャナー40をX軸方向に検査平面240に対して相対的に移動させる(ステップS302)。本実施例では、パーソナルコンピューター30は、検査対象が左前の位置検出部420aおよび左後の位置検出部420cである場合、X軸方向のうち左方向にマウススキャナー40を移動させ、検査対象が右前の位置検出部420bおよび右後の位置検出部420dである場合、X軸方向のうち右方向にマウススキャナー40を移動させる。
【0051】
マウススキャナー40をX軸方向に移動させている際に(ステップS302)、検査対象として選択された位置検出部420が空隙部246に重なり合った場合、すなわち、検査対象として選択された位置検出部420がリフトアップを検出した場合(ステップS304:「YES」)、パーソナルコンピューター30は、画像取得部314として動作することによって、位置検出部420がリフトアップを検出する際にマウススキャナー40の撮像部430によって撮像された画像データを取得する(ステップS306)。
【0052】
X軸方向の移動中におけるリフトアップで画像データを取得した後(ステップS306)、パーソナルコンピューター30は、移動制御部312として動作することによって、移動プレート256に取り付けられたマウススキャナー40を基準位置に再び移動させる(ステップS308)。
【0053】
マウススキャナー40を基準位置に移動させた後(ステップS308)、パーソナルコンピューター30は、移動制御部312として動作することによって、移動プレート256に取り付けられたマウススキャナー40をY軸方向に検査平面240に対して相対的に移動させる(ステップS402)。本実施例では、パーソナルコンピューター30は、検査対象が左前の位置検出部420aおよび右前の位置検出部420bである場合、Y軸方向のうち前方向にマウススキャナー40を移動させ、検査対象が左後の位置検出部420cおよび右後の位置検出部420dである場合、Y軸方向のうち後方向にマウススキャナー40を移動させる。
【0054】
マウススキャナー40をY軸方向に移動させている際に(ステップS402)、検査対象として選択された位置検出部420が空隙部246に重なり合った場合、すなわち、検査対象として選択された位置検出部420がリフトアップを検出した場合(ステップS404:「YES」)、パーソナルコンピューター30は、画像取得部314として動作することによって、位置検出部420がリフトアップを検出する際にマウススキャナー40の撮像部430によって撮像された画像データを取得する(ステップS406)。
【0055】
Y軸方向の移動中におけるリフトアップで画像データを取得した後(ステップS406)、パーソナルコンピューター30は、移動制御部312として動作することによって、移動プレート256に取り付けられたマウススキャナー40を基準位置に再び移動させる(ステップS408)。
【0056】
全ての位置検出部420についてX軸方向およびY軸方向への移動中に撮像された画像データを取得した後(ステップS500:「YES」)、パーソナルコンピューター30は、位置判断部316として動作することによって、X軸方向およびY軸方向への移動中に撮像された画像データにおける基準線248の位置に基づいて、位置検出部420と撮像部430との間の相対的な位置関係を判断する(ステップS602)。本実施例では、パーソナルコンピューター30は、X軸方向およびY軸方向への移動中に撮像された画像データにおける図心と、その画像データにおける基準線248との距離に基づいて、位置検出部420と撮像部430との間の相対的な位置関係を判断する。
【0057】
位置検出部420と撮像部430との間の相対的な位置関係を判断した後(ステップS602)、パーソナルコンピューター30は、その位置関係に基づいて、マウススキャナー40の位置検出部420を校正する校正値を算出し(ステップS604)、その校正値をマウススキャナー40のメモリー470に登録する(ステップS606)。その後、パーソナルコンピューター30は、校正処理(ステップS10)を終了する。
【0058】
A3.効果:
以上説明した検査装置20によれば、検査平面240における空隙部246と基準線248との間の相対的な位置関係は一定であることから、検査平面240に載せたマウススキャナー40を各方向に移動させながら、位置検出部420による位置の検出が阻害される際に撮像部430によって撮像された画像データを取得し、その画像データにおける基準線の位置に基づいて、撮像部430と位置検出部420との間の相対的な位置関係を判断することができる。したがって、マウススキャナー40における撮像部430と位置検出部420との間の相対的な位置関係を容易に検査することができる。
【0059】
また、移動制御部312、画像取得部314、位置判断部316の各機能を備えるパーソナルコンピューター30を用いることによって、マウススキャナー40における撮像部430と位置検出部420との間の相対的な位置関係を一層容易に検査することができる。
【0060】
また、空隙部246は、前方空隙部246aおよび後方空隙部246bを備え、二つの長辺の中央部を削除した矩形を構成する線状の空隙を形成することから、検査に影響を与えることなく、検査平面240の剛性を保持することができる。
【0061】
また、基準線248は、空隙部246によって構成される矩形の内側に位置し、その矩形よりも小さな矩形を構成することから、複雑な計算を実施することなく、位置検出部420による位置の検出が阻害される際に撮像部430によって撮像された画像データに基づいて、撮像部430と位置検出部420との間の相対的な位置関係を容易に判断することができる。
【0062】
また、検査平面240に設けられた凹部側面234は、移動部250によってマウススキャナー40が移動する際に、位置検出部420が空隙部246を通過した後、移動部250によるマウススキャナー40の移動を抑止する抑止部として機能することから、検査平面240におけるマウススキャナー40の不必要な移動が回避されるため、マウススキャナー40の検査に要する処理時間を短縮することができる。また、この凹部側面234によれば、検査平面240におけるマウススキャナー40の過剰な移動が回避されるため、マウススキャナー40および検査装置20の破損を防止することができる。
【0063】
また、検査台230に設けられたガイド260は、移動部250によってマウススキャナー40が移動する際に、マウススキャナー40と検査平面240との間の距離を略一定に保持する保持部として機能することから、移動中にマウススキャナー40が検査平面240から離れることによる検査エラーの発生を抑制することができる。
【0064】
B.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【0065】
例えば、本実施例では、X軸移動台251およびY軸移動台252によるマウススキャナー40の移動をパーソナルコンピューター30によって制御したが、他の実施形態において、X軸移動台251およびY軸移動台252の少なくとも一方の移動を手動で行っても良い。
【0066】
また、本実施例では、パーソナルコンピューター30を用いて検査装置20およびマウススキャナー40を制御したが、他の実施形態において、検査装置20が、移動制御部312、画像取得部314、位置判断部316、機器インターフェース380に相当する各種の機能要素を備えるとしても良い。
【0067】
また、本実施例では、検査平面240を固定した状態でマウススキャナー40を移動させることによって、マウススキャナー40と検査平面240との間の位置関係を相対的に移動させたが、他の実施形態において、マウススキャナー40を固定した状態で検査平面240を移動させても良いし、マウススキャナー40および検査平面240の両方を移動させても良い。
【0068】
また、空隙部246は、マウススキャナー40の位置検出部420に対応して、矩形における各辺の少なくとも一部を構成する線状の空隙を形成すれば良く、他の実施形態において、その矩形における各辺の全てが連続しても良いし、その矩形における各辺の一部がそれぞれ分離しても良い。
【0069】
また、基準線248は、マウススキャナー40の撮像部430に対応して、空隙部246によって構成される矩形の各辺にそれぞれ略平行する複数の線分を含めば良く、他の実施形態において、基準線248は、二つの線分で十字状に構成されても良いし、基準線248を構成する複数の線分がそれぞれ分離しても良い。
【符号の説明】
【0070】
10…校正システム
20…検査装置
30…パーソナルコンピューター
40…マウススキャナー
210…基台
220…フレーム
230…検査台
232…上面
234…凹部側面
240…検査平面
246…空隙部
246a…前方空隙部
246b…後方空隙部
248…基準線
250…移動部
254…連結部
256…移動プレート
258…マウス保持部
260…ガイド
312…移動制御部
314…画像取得部
316…位置判断部
380…機器インターフェース
410…制御部
420…位置検出部
420a…位置検出部
420b…位置検出部
420c…位置検出部
420d…位置検出部
430…撮像部
470…メモリー
480…機器インターフェース
490…操作受付部
2562…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を撮像する撮像部と前記原稿との相対的な位置を検出する位置検出部とを備える手動式画像読取装置を検査する検査装置であって、
前記手動式画像読取装置を載せる検査平面を形成する検査台と、
前記検査平面に載せた前記手動式画像読取装置を前記検査平面に略沿って移動させる移動部と、
前記検査平面に設けられ、矩形の各辺に沿った線状の空隙を形成する空隙部であって、前記移動部によって前記手動式画像読取装置が移動する際に前記位置検出部による位置の検出を阻害する空隙部と、
前記検査平面に設けられ、前記空隙部による矩形の各辺にそれぞれ略平行する複数の線分を含む基準線であって、前記位置検出部による位置の検出が前記空隙部によって阻害される際に前記撮像部によって撮像可能な位置に描かれた基準線と
を備える検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、更に、
前記位置検出部による位置の検出が阻害される際に前記撮像部によって撮像された画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像データにおける基準線の位置に基づいて、前記撮像部と前記位置検出部との間の相対的な位置関係を判断する位置判断部と
を備える検査装置。
【請求項3】
前記空隙部は、二つの長辺の中央部を削除した矩形に沿った線状の空隙を形成する請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記基準線は、前記空隙部による矩形の内側に位置し、該矩形よりも小さな矩形を構成する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
更に、前記移動部によって前記手動式画像読取装置が移動する際に、前記位置検出部が前記空隙部を通過した後、前記移動部による前記手動式画像読取装置の移動を抑止する抑止部を備える請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
更に、前記移動部によって前記手動式画像読取装置が移動する際に、前記手動式画像読取装置と前記検査平面との間の距離を略一定に保持する保持部を備える請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−263466(P2010−263466A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113385(P2009−113385)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】