説明

手動操作装置の軸受取付構造

【課題】駆動体の軸部とその軸受部材が基台に容易に装着できて脱落の虞もない手動操作装置の軸受取付構造を提供すること。
【解決手段】 基台3に軸支される駆動レバー5の軸部51とその軸受部材53を、基台3の切欠き部37に装着させる軸受取付構造において、切欠き部37の開口端側から入口溝37bを介して嵌合孔37aに挿入した軸部51に対して、その軸線方向外側から軸受部材53の保持部53aを外嵌させて該保持部53aを嵌合孔37aに嵌入させるようにした。この状態で、例えば回転レバー部53eを介して軸受部材53を適宜回転させるなどして、軸受部材53の内側係合部53cが基台3の内側面と対向し、かつ軸受部材53の外側係合部53dが基台3の外側面と対向するようにしておく。また、切欠き部37の入口溝37bは軸受部材53の保持部53aよりも幅狭に形成しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台に装着された軸受部材が駆動体の軸部を摺動可能に保持して、操作力が付与されると駆動体が回転移動するようになっている手動操作装置に係り、特に、駆動体の軸部とその軸受部材を基台に取り付けるための軸受取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
基台(フレーム)に回動可能に軸支された駆動体に操作力を付与して回転移動させる手動操作装置としては、例えば、操作レバーを介して駆動体を揺動させると、その揺動方向や揺動量に応じた電気信号が検出できるようになっている入力装置などがある。この種の手動操作装置において、駆動体の軸部を基台の透孔に挿通させて軸支するという構造にすると煩雑な組立作業を余儀なくされてしまう。
【0003】
そこで従来より、同じ向きに開口している一対の切欠き部を基台に設け、その開口端側から両切欠き部内へ駆動体の軸部を挿入して軸支できるようにした手動操作装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来例では、基台の上端部で所定間隔を存して対向する位置に、駆動体の軸部に取り付けた一対の軸受部材を装着させるための一対の切欠き部が設けられており、各切欠き部は上方に開口している。この切欠き部は、対応する軸受部材を上方から嵌入できるように幅寸法がほぼ一定な凹溝として形成されている。軸受部材には駆動体の軸部を摺動自在に嵌入させる軸孔が形成されており、この軸受部材の一部が対応する切欠き部の形状に略合致させてある。したがって、組立時には駆動体の両端の軸部にそれぞれ軸受部材を取り付けた後、各軸受部材を基台の上方から対応する切欠き部内へ押し込んで装着させれば、駆動体が基台に軸支された状態となって、組立作業性を大幅に向上させることができる。
【特許文献1】特開2005−332038号公報(第4−6頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来例では、駆動体の軸部に取り付けた軸受部材を基台の切欠き部内へ押し込んで装着させるだけで、駆動体が基台に軸支された状態となるため組立作業を円滑に行うことができるが、この状態ではまだ軸受部材が基台の切欠き部から脱落する可能性があるため、軸受部材の抜け止め対策を別途講じておく必要がある。すなわち、基台の切欠き部に装着された軸受部材は、装着方向とは逆向きの外力に対して位置規制されてはいないので、カバー部材等の別部材を軸受部材に衝合させるといった抜け止め対策を講じておかないと、手動操作装置の使用中に軸受部材や駆動体が基台から外れてしまう虞がある。したがって、かかる従来の軸受取付構造を採用する場合には、軸受部材の脱落が防止可能な特別な形状の別部材を該軸受部材に対し正確に位置合わせして組み付けなければならず、その影響で組立作業性が劣化したり部品コストが上昇してしまうという問題があった。また、こうした別部材が組み付けられる前の半製品のときには、軸受部材が抜け止め状態とはなっていないので、組立途中に軸受部材や駆動体が基台から外れてしまうことがあり、よって従来例は半製品状態での取扱い性という点でも改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、駆動体の軸部とその軸受部材を基台に容易に装着できて脱落の虞もない手動操作装置の軸受取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明では、所定間隔を存して対向する位置に切欠き部が設けられて各切欠き部が同じ向きに開口している基台と、これら切欠き部に装着される一対の軸受部材と、これら軸受部材に摺動可能に保持される軸部を有して前記基台に回動可能に軸支された駆動体とを備えていると共に、前記軸部が前記切欠き部の開口端から該切欠き部内へ挿入可能であり、操作力を付与することによって前記駆動体を回転移動させる手動操作装置において、少なくともいずれか一方の前記軸受部材が、対応する前記軸部に外嵌される保持部と、該保持部から前記基台の内側面に沿って外方へせり出す内側係合部と、前記保持部から前記基台の外側面に沿って外方へせり出す外側係合部とを有すると共に、該軸受部材が装着される前記切欠き部が、前記保持部を嵌入させる嵌合孔と、該嵌合孔から開口端に至る連通路であって前記保持部よりも幅狭な入口溝とを有するという軸受取付構造にした。
【0007】
このような軸受取付構造によれば、切欠き部の開口端側から入口溝を介して嵌合孔へ挿入した駆動体の軸部に対して、その軸線方向外側から軸受部材の保持部を外嵌させて該保持部を嵌合孔に嵌入させることができ、こうして入口溝よりも幅広な保持部が嵌合孔に嵌入されると、軸受部材は切欠き部の開口端側への移動が規制された状態となる。また、この状態で軸受部材の内側係合部を基台の内側面に対向させ、かつ軸受部材の外側係合部を基台の外側面に対向させることができるため、軸受部材を軸線方向の移動が規制された状態となすことができる。それゆえ、軸受部材を基台の切欠き部に脱落の虞なく装着することができ、この軸受部材に嵌め込まれた駆動体の軸部が基台から脱落する虞もなくなる。
【0008】
なお、いずれか一方の軸受部材が基台に対して上記の如くに装着されていれば、他方の軸受部材は抜け止め対策が講じられていなくても基台から脱落する可能性は低いが、脱落を確実に防止するためには、他方の軸受部材も基台に対して上記の如くに装着されていることが好ましい。
【0009】
また、上記の構成において、軸受部材の内側係合部が切欠き部の入口溝よりも幅狭に形成されていると共に、軸受部材の保持部が切欠き部の嵌合孔に回転可能に嵌入されていると、内側係合部を入口溝に位置合わせして該入口溝を通過させつつ、保持部を嵌合孔に嵌入させた後、軸受部材を適宜回転させて内側係合部を基台の内側面と対向させることによって、この軸受部材を軸線方向の移動が規制された状態となすことができる。この場合において、外側係合部の少なくとも一部が回転レバー部として突設されていると、回転レバー部に手指を掛合させるなどして軸受部材を容易に回転させることができる。さらに、基台の外側面で回転レバー部と重なり合う位置に、該回転レバー部を所定の回転位置に係止可能なストッパ部を設けておけば、切欠き部に装着した軸受部材の位置ずれが確実に防止できる。
【0010】
また、上記の構成において、軸受部材の内側係合部が、軸線方向外側から切欠き部の嵌合孔へ圧入することによって該嵌合孔を通過可能なテーパ状鍔部を有すると共に、軸受部材の保持部が該嵌合孔に回転不能に嵌入されていると、軸受部材を軸線方向外側から押し込むだけで切欠き部に装着させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による手動操作装置の軸受取付構造は、軸受部材が保持部と内側係合部と外側係合部とを有すると共に、基台の切欠き部が嵌合孔と入口溝とを有し、この切欠き部に軸受部材を装着させるというものであり、開口端側から切欠き部の嵌合孔へ挿入した駆動体の軸部に対して、その軸線方向外側から軸受部材の保持部を外嵌させて該保持部を嵌合孔に嵌入させることによって、この軸受部材が基台の切欠き部に脱落の虞なく容易に装着できるようになっている。したがって、駆動体の軸部とその軸受部材を基台に容易に装着できると共に組立途中や使用中に脱落する虞がなくなり、組立作業性および信頼性に優れた軸受取付構造が安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の一実施形態例に係る手動操作装置の斜視図、図2は該手動操作装置を基台を省略して示す斜視図、図3は該手動操作装置の分解斜視図、図4は該手動操作装置における基台用スペーサの取付方法を示す説明図、図5は該手動操作装置における駆動レバーの取付方法を示す説明図、図6および図7は該手動操作装置における軸受部材の取付方法を示す説明図、図8は該軸受部材の裏面側の斜視図である。
【0013】
これらの図に示す手動操作装置は、電気制御された力覚が操作レバーに付与されるという力覚付与型入力装置の本体部分である。周知のように力覚付与型入力装置は、エアコンやオーディオ、ナビゲーション等の車載用制御機器の機能調整を一つの操作レバーに集約し、この操作レバーの手動操作によって機器の選択や機能調整等を行う際に、操作レバーの操作量ゃ操作方向に応じた抵抗感や推力等の外力を付与することにより、操作フィーリングを良好にして所望の操作が確実に行えるようにしたフォースフィードバック機能付きの入力装置である。
【0014】
本実施形態例に係る手動操作装置は、上面に透孔を有する図示せぬ筐体の内部に収納されて自動車のセンターコンソール等に設置され、前記透孔から上方へ突出する操作レバー1を揺動させることによって入力操作が行えるようになっている。この手動操作装置は、回路基板2上に立設された基台(フレーム)3と、基台3に回動可能に軸支されて互いの回転軸を直交させている第1および第2の駆動レバー4,5と、回路基板2上に搭載されて互いの回転軸6a,7aを直交させている第1および第2の回転モータ6,7と、回路基板2上に実装されたロータリエンコーダ8,9およびフォトインタラプタ10,11と、図示せぬ制御部とを備えて概略構成されている。そして、操作レバー1が任意方向へ揺動操作可能であり、この操作レバー1を介して付与される操作力によって各駆動レバー4,5が揺動(回転移動)するようになっている。
【0015】
基台3は、第1支持板31と第2支持板32を連結板33やスペーサ34を介して一体化したものである。第1支持板31は平面視L字形状の金属板で、第2支持板32は平面視W字形状の金属板である。これら両支持板31,32は、互いに対向するように配置して両端に連結板33をかしめ固定することにより強固に連結されており、図5に示すように、両支持板31,32の間には、平面視正方形状の幅広スペースS1と、連結板33の幅寸法と略同幅な2箇所の幅狭スペースS2とが画成されている。各幅狭スペースS2には幅広スペースS1の近傍にスペーサ34が挿入されており、このスペーサ34が両支持板31,32に挟圧されるようにねじ部材35が締結させてあるため、幅広スペースS1および幅狭スペースS2はそれぞれ所定の幅寸法に設定されている。また、両支持板31,32の上端部には幅広スペースS1の周囲に、上方に開口して相対向する切欠き部36,38と、同じく上方に開口して相対向する切欠き部37,39とが設けられており、切欠き部36,38どうしを結ぶ第1の直線と切欠き部37,39どうしを結ぶ第2の直線とが幅広スペースS1の上部で直交するように設定されている。切欠き部36,38には第1の駆動レバー4の一対の軸部41,42とその軸受部材43,44が装着されるため、この駆動レバー4の回転軸は前記第1の直線と合致する。また、切欠き部37,39には第2の駆動レバー5の一対の軸部51,52とその軸受部材53,54が装着されるため、この駆動レバー5の回転軸は前記第2の直線と合致する。
【0016】
駆動レバー4,5は上記の如く互いの回転軸を直交させた配置で基台3に軸支される。第1の駆動レバー4の長孔4aと第2の駆動レバー5の長孔(図示せず)の交差部分には操作レバー1が摺動自在に挿通されており、この操作レバー1の長手方向中央部と第2の駆動レバー5の上部はピン12を用いて回動自在に連結されている。第1の駆動レバー4を基台3に取り付ける際には、幅広スペースS1の上方から軸部41,42を切欠き部36,38内へ挿入した後、各軸部41,42に軸線方向外側から軸受部材43,44を外嵌させて、これら軸受部材43,44を切欠き部36,38に装着させる。しかる後、操作レバー1に連結された第2の駆動レバー5を同様の手順で基台3に取り付ける(図5参照)。つまり、幅広スペースS1の上方から軸部51,52を切欠き部37,39内へ挿入した後、各軸部51,52に軸線方向外側から軸受部材53,54を外嵌させて、これら軸受部材53,54を切欠き部37,39に装着させる。
【0017】
第1の駆動レバー4の一側部には先端に歯部45aを有するギヤ部45が一体形成されており、第1の駆動レバー4の他側部には検出板46が固着されている。この手動操作装置は、第1の駆動レバー4の歯部45aを第1の回転モータ6の回転軸6aに固着されているギヤ61と噛合させている。また、検出板46は第1の駆動レバー4の揺動に伴ってフォトインタラプタ10の凹部10a内を通過するようになっている。同様に、第2の駆動レバー5の一側部には先端に歯部55aを有するギヤ部55が一体形成されており、第2の駆動レバー5の他側部には検出板56が固着されている。第2の駆動レバー5の歯部55aは第2の回転モータ7の回転軸7aに固着されているギヤ71と噛合し、この駆動レバー5の揺動に伴って検出板56がフォトインタラプタ11の凹部11a内を通過するようになっている。
【0018】
回転モータ6,7は互いの回転軸6a,7aを直交させた配置で回路基板2上に搭載されている。第1の回転モータ6の回転軸6aは、ロータリエンコーダ8のコード板81の中心部に連結されて、このコード板81と一体的に回転する。また、第1の駆動レバー4を揺動させる操作力が付与されると、歯部45aおよびギヤ61を介して回転軸6aが回転駆動されるようになっている。同様に、第2の回転モータ7の回転軸7aは、ロータリエンコーダ9のコード板91の中心部に連結されて、このコード板91と一体的に回転すると共に、第2の駆動レバー5を揺動させる操作力が付与されると、歯部55aおよびギヤ71を介して回転軸7aが回転駆動されるようになっている。
【0019】
ロータリエンコーダ8は、上記のコード板81と、回路基板2上に実装されたフォトインタラプタ82とで構成され、コード板81の一部がフォトインタラプタ82の凹部82a内に配置されている。フォトインタラプタ82には凹部82aを介して対向する図示せぬLED(発光素子)とフォトトランジスタ(受光素子)が備えられており、コード板81の回転情報を検知できるようになっている。同様に、ロータリエンコーダ9は、上記のコード板91と、回路基板2上に実装されたフォトインタラプタ92とで構成され、コード板91の一部がフォトインタラプタ92の凹部92a内に配置されているため、このフォトインタラプタ92によってコード板91の回転情報を検知できるようになっている。
【0020】
フォトインタラプタ10には凹部10aを介して対向する図示せぬLEDとフォトトランジスタが備えられている。このフォトインタラプタ10は、第1の駆動レバー4の検出板46が凹部10a内から外れた位置にあるときにはオン信号を出力するが、第1の駆動レバー4の揺動に伴い検出板46が凹部10a内へ入り込むとLEDの光が遮蔽されるためオフ信号を出力する。同様に、フォトインタラプタ11は、第2の駆動レバー5の検出板56が凹部11a内から外れた位置にあるときにはオン信号を出力し、検出板56が凹部11a内へ入り込むとオフ信号を出力する。各フォトインタラプタ10,11から出力された信号は図示せぬ制御部に取り込まれて、駆動レバー4,5の基準位置が演算されるようになっている。さらに、この制御部にはロータリエンコーダ8,9のフォトインタラプタ82,92で検知された信号が取り込まれて、駆動レバー4,5の基準位置からの回転移動方向(揺動方向)と回転量(揺動角度)が演算されるようになっている。
【0021】
上記の制御部はメモリに記憶されたデータやプログラムに基づいて決定した制御信号を回転モータ6,7に出力する。この制御信号は操作レバー1に付与される操作フィーリングに対応する信号であり、信号の種類としては振動の発生や作動力(抵抗力または推力)の変更等がある。なお、この制御部の回路構成部品は回路基板2の底面や図示せぬ他の回路基板に実装されている。
【0022】
次に、第1および第2支持板31,32に対するスペーサ34の取付構造を主に図4を参照して詳しく説明する。前述したように、両支持板31,32は連結板33によって強固に連結されてはいるが、幅広スペースS1における両支持板31,32の間隔を精度よく規定するためにはスペーサ34が不可欠である。スペーサ34は貫通孔34aを有する四角柱状に形成されており、幅狭スペースS2を介して対向する両支持板31,32がねじ部材35の締結によってスペーサ34を挟圧するようになっている。このスペーサ34には、第1支持板31に圧接される側の端面に上下一対の係合突起34b,34cが突設されている。第1支持板31にはスペーサ34の取付箇所に、ねじ部材35が挿通される開口31aと、係合突起34b,34cが嵌入される切れ込み溝31dとが設けられている。切れ込み溝31dは、第1支持板31の上縁から開口31aへと至る連通路を形成する導入溝部31bと、この導入溝部31bの延長線上で開口31aに連通する凹溝部31cとからなり、スペーサ34は上側の係合突起34bを導入溝部31bに係合させ、かつ下側の係合突起34cを凹溝部31cに係合させた状態で第1支持板31に取り付けられる。第2支持板32には第1支持板31の開口31aと対向する箇所に、ねじ部材35が螺着されるねじ孔として機能する開口32aが設けられている。つまり、この開口32aの内周壁にはねじ部材35と螺合する図示せぬ雌ねじ溝が刻設されている。
【0023】
そして、スペーサ34を両支持板31,32に取り付ける際には、まずスペーサ34の下側の係合突起34cを第1支持板31の導入溝部31bに位置合わせして、両支持板31,32間へスペーサ34を挿入していく。これにより、係合突起34cが導入溝部31bと開口31aを通過して凹溝部31cに嵌入されると共に、上側の係合突起34bが導入溝部31bに嵌入されるため、スペーサ34は所定位置に仮固定された状態となる。この後、ねじ部材35を開口31a側から貫通孔34aへ挿入して開口32aに締結状態で螺着させることによって、図1に示すように、両支持板31,32間にスペーサ34を圧着固定することができるため、これら両支持板31,32の対向間隔が高精度に規定されることになる。
【0024】
次に、駆動レバー4,5を基台3(両支持板31,32)に軸支させるための構造について説明する。ただし、第1の駆動レバー4の軸部41,42とその軸受部材43,44を基台3の切欠き部36,38に装着させる取付構造と、第2の駆動レバー5の軸部51,52とその軸受部材53,54を基台3の切欠き部37,39に装着させる取付構造とに基本的な差異はないため、主に図5〜図7を参照しつつ後者の取付構造についてのみ詳しく説明する。
【0025】
第2の駆動レバー5用の一方の軸受部材53は、軸孔53bを有して軸部51に外嵌される保持部53aと、この保持部53aから第1支持板31の内側面に沿って外方へせり出す一対の内側係合部53cと、保持部53aから第1支持板31の外側面に沿って外方へせり出す複数の外側係合部53dとを備えた樹脂モールド品で、外側係合部53dの一部は手指が掛止させやすい形状の回転レバー部53eとなっている。この軸受部材53が装着される第1支持板31の切欠き部37は、保持部53aを回転可能に嵌入させる嵌合孔37aと、嵌合孔37aから開口端に至る連通路である入口溝37bと、嵌合孔37aの下端に連通する凹状の逃げ溝37cとからなり、入口溝37bと逃げ溝37cは保持部53aよりも幅狭で内側係合部53cよりも幅広に形成されている。また、第1支持板31には切欠き部37の下方に、回転レバー部53eの裏面に突設された突起53f(図8参照)が係止可能なストッパ孔31eが穿設されている。
【0026】
第2の駆動レバー5の軸部51とその軸受部材53を切欠き部37に組み付ける際には、まず図5と図6に示すように、軸部51を切欠き部37の開口端側から入口溝37bを介して嵌合孔37a内へ挿入し、この状態で軸部51に軸線方向外側から保持部53aを外嵌させることにより、軸部51を軸孔53bに摺動自在に嵌入させると共に、保持部53aを嵌合孔37aに嵌入させる。このとき、図7に示すように、軸受部材53の一対の内側係合部53cは切欠き部37の入口溝37bと逃げ溝37cに位置合わせして通過させておく。こうして入口溝37bおよび逃げ溝37cよりも幅広な保持部53aが嵌合孔37aに嵌入されると、軸受部材53は上下方向への移動が規制された状態で切欠き部37に取り付けられる。そして、この後、軸受部材53を第1支持板31の内側面および外側面に沿って約90度回転させることにより、図1に示すように、内側係合部53cが入口溝37bとは対向せずに第1支持板31の内側面と対向し、かつ回転レバー部53eを含む外側係合部53dが第1支持板31の外側面と対向するように設定できるため、軸受部材53を軸線方向の移動が規制された状態となすことができる。その結果、軸受部材53が第1支持板31の切欠き部37に脱落の虞なく装着されることになるため、この軸受部材53に嵌め込まれた軸部51が第1支持板31から脱落する虞もない。
【0027】
第2の駆動レバー5用の他方の軸受部材54は上記の軸受部材53と同一形状の部品であり、この軸受部材54が装着される第2支持板32の切欠き部39も上記の切欠き部37と同一形状である。したがって、軸部52とその軸受部材54を切欠き部39に組み付ける際の手順は上記手順と全く同等である。なお、前述したように第1の駆動レバー4用の軸受取付構造は第2の駆動レバー5用の軸受取付構造と全く同等なので、その説明は省略する。
【0028】
次に、このように構成された手動操作装置の動作について説明する。まず、この手動操作装置のシステムを起動(電源オン)させると、前記制御部がフォトインタラプタ10,11の検知信号を取り込んで回転モータ6,7に制御信号を出力し、これら回転モータ6,7は駆動レバー4,5を回転駆動して操作レバー1を中立位置に自動復帰させる。この場合、回転モータ6,7はフォトインタラプタ10,11の出力がオフからオンに切り替わるように駆動レバー4,5を回転駆動すればよく、操作レバー1は両フォトインタラプタ10,11の出力が共にオフからオンに切り替わった時点で中立位置となる。
【0029】
こうして操作レバー1を中立位置に自動復帰させた状態で、操作者が操作レバー1を任意方向へ揺動操作すると、その揺動方向に応じて第1の駆動レバー4や第2の駆動レバー5がそれぞれの回転軸を中心に揺動(回転移動)する。そして、第1の駆動レバー4の揺動に連動してコード板81が回転し、第2の駆動レバー5の揺動に連動してコード板91が回転するため、ロータリエンコーダ8,9のフォトインタラプタ82,92によってコード板81,91の回転情報が検知され、その信号が前記制御部に取り込まれる。
【0030】
この制御部は、フォトインタラプタ10,11の検知信号やフォトインタラプタ82,92の検知信号に基づいて、駆動レバー4,5の回転移動方向(揺動方向)と回転量(揺動角度)を演算すると共に、回転モータ6,7に所定の制御信号を出力する。一例を挙げると、操作レバー1が所定方向に所定量だけ揺動操作されたとき、前記制御信号に基づく回転駆動力が回転モータ6,7から駆動レバー4,5に伝達されて、これら駆動レバー4,5を介して操作レバー1に揺動操作に抗する作動力が付与されると、この作動力が操作レバー1を手動操作する操作者にクリック感として認識されるようになっている。
【0031】
このように本実施形態例に係る手動操作装置にあっては、駆動レバー4,5の軸部41,42,51,52とその軸受部材43,44,53,54が、基台3の対応する切欠き部36〜39に脱落の虞なく容易に装着できる軸受取付構造を採用している。一例として、第2の駆動レバー5の軸部51とその軸受部材53を切欠き部37に装着する場合には、切欠き部37の開口端側から入口溝37bを介して嵌合孔37aへ挿入した軸部51に対して、その軸線方向外側から軸受部材53の保持部53aを外嵌させて該保持部53aを嵌合孔37aに嵌入させた後、軸受部材53を回転させて内側掛合部53cと外側掛合部53dを第1支持板31の内側面と外側面に対向させれば、軸受部材53は切欠き部37の開口端側への移動と軸線方向への移動が規制されるため、切欠き部37からの脱落が防止された状態となる。このとき、軸受部材53は回転レバー部53eに手指を掛合させるなどして容易に回転させることができる。また、回転レバー部53eの突起53fがストッパ孔31eに没入する位置まで軸受部材53を回転させれば、軸受部材53は回り止めされた状態となって位置ずれを確実に防止できる。それゆえ、こうして第1支持板31に装着された軸受部材53は、その後の組立過程や使用中に切欠き部37から脱落する虞がなく、よって軸受部材53に嵌め込まれた軸部51が切欠き部37から脱落する虞もない。
【0032】
前述したように第2の駆動レバー5の他方の軸部52とその軸受部材54を切欠き部39に装着する場合の手順も全く同等なので、結局、第2の駆動レバー5は、各軸部51,52とその軸受部材53,54をそれぞれ対応する切欠き部37,39に脱落の虞なく容易に装着することができる。同様に、第1の駆動レバー4の軸部41,42とその軸受部材43,44もそれぞれ対応する切欠き部36,38に脱落の虞なく容易に装着することができる。したがって、本実施形態例にあっては、組立作業性および信頼性に優れた軸受取付構造が安価に実現されている。
【0033】
図9は本発明の他の実施形態例に係る軸受取付構造を説明するための要部分解斜視図であり、図5と対応する部分には同一符号が付してある。図9において、軸部51を摺動自在に嵌入させる軸孔53bを有する軸受部材53は、その保持部53aが四角柱状に形成されており、この保持部53aが嵌入される切欠き部37の嵌合孔37aも対応する角孔となっている。また、軸受部材53の内側係合部53cに保持部53aから径方向外側へせり出すテーパ状鍔部53gが形成されており、このテーパ状鍔部53gの小径な側(反保持部53a側)は嵌合孔37aよりも若干小さいが大径な側(保持部53a側)は嵌合孔37aよりも若干大きい。また、軸受部材53の外側係合部53dがテーパ状鍔部53gの大径な側と所定の間隙を存して対向しており、この間隙に第1支持板31の嵌合孔37a周縁部が入り込むようになっている。つまり、図9に示す軸受部材53は、軸孔53bに軸部51を嵌入させながら、その軸線方向外側から内側係合部53cを嵌合孔37aへ圧入していくと、テーパ状鍔部53gのせり出し部分が嵌合孔37aを通過した時点で第1支持板31にスナップ結合されて、保持部53aが嵌合孔37aに回転不能に嵌入・保持されるようになっている。したがって、本実施形態例にあっては、軸受部材53を軸部51の軸線方向外側から押し込むだけで切欠き部37に装着させることができる。
【0034】
なお、上記の各実施形態例では、力覚付与型入力装置について説明しているが、駆動体が軸受部材を介して基台に軸支されている他の手動操作装置においても、本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は本発明の実施形態例に係る手動操作装置の斜視図である。
【図2】該手動操作装置を基台を省略して示す斜視図である。
【図3】該手動操作装置の分解斜視図である。
【図4】該手動操作装置における基台用スペーサの取付方法を示す説明図である。
【図5】該手動操作装置における駆動レバーの取付方法を示す説明図である。
【図6】該手動操作装置における軸受部材の取付方法を示す説明図である。
【図7】該手動操作装置における軸受部材の取付方法を示す説明図である。
【図8】該軸受部材の裏面側の斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態例に係る軸受取付構造を説明するための要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 操作レバー
2 回路基板
3 基台
4,5 駆動レバー(駆動体)
31,32 支持板
31e ストッパ孔(ストッパ部)
36,37,38,39 切欠き部
37a 嵌合孔
37b 入口溝
37c 逃げ溝
41,42,51,52 軸部
43,44,53,54 軸受部材
53a 保持部
53c 内側係合部
53d 外側係合部
53e 回転レバー部
53f 突起
53g テーパ状鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を存して対向する位置に切欠き部が設けられて各切欠き部が同じ向きに開口している基台と、これら切欠き部に装着される一対の軸受部材と、これら軸受部材に摺動可能に保持される軸部を有して前記基台に回動可能に軸支された駆動体とを備えていると共に、前記軸部が前記切欠き部の開口端から該切欠き部内へ挿入可能であり、操作力を付与することによって前記駆動体を回転移動させる手動操作装置であって、
少なくともいずれか一方の前記軸受部材が、対応する前記軸部に外嵌される保持部と、該保持部から前記基台の内側面に沿って外方へせり出す内側係合部と、前記保持部から前記基台の外側面に沿って外方へせり出す外側係合部とを有すると共に、該軸受部材が装着される前記切欠き部が、前記保持部を嵌入させる嵌合孔と、該嵌合孔から開口端に至る連通路であって前記保持部よりも幅狭な入口溝とを有することを特徴とする手動操作装置の軸受取付構造。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記内側係合部が前記入口溝よりも幅狭に形成されていると共に、前記保持部が前記嵌合孔に回転可能に嵌入されていることを特徴とする手動操作装置の軸受取付構造。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記外側係合部の少なくとも一部が回転レバー部として突設されていることを特徴とする手動操作装置の軸受取付構造。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記基台の外側面で前記回転レバー部と重なり合う位置に、該回転レバー部を所定の回転位置に係止可能なストッパ部を設けたことを特徴とする手動操作装置の軸受取付構造。
【請求項5】
請求項1の記載において、前記内側係合部が、軸線方向外側から前記嵌合孔へ圧入することによって該嵌合孔を通過可能なテーパ状鍔部を有すると共に、前記保持部が前記嵌合孔に回転不能に嵌入されていることを特徴とする手動操作装置の軸受取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−276651(P2008−276651A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121830(P2007−121830)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】