説明

手摺装置

【課題】 開口部における手摺の取り付ける自由度が大きい。
【解決手段】 壁の縦枠14に沿ってケーシングが設けられる開口部の手摺装置であって、縦枠に沿う方向に延長する握り部4と、この握り部4に延在する基端部6とを有する手摺1を備え、基端部6に形成された突起7がケーシングが固定される縦枠の溝18に嵌合することにより、手摺1がケーシングの一部に取って代わって設けられる。これにより歩行者が開口部を通過する際に安全に支持される。さらに、手摺1が縦枠の上下方向略全長に渡って設けられることにより、車椅子による移動や立ち座り時に人が安全に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の開口部に設けられる手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手摺装置としては、開閉自在に扉が取り付けられた枠体の少なくとも一方の縦枠に、部分的または全長にわたって握り部を設けたもの(特許文献1)、あるいは開口面を化粧するための化粧枠であって、少なくとも一方の室内側に向かって延設される延設部を備え、その延設部は、開口部を出入りする際、姿勢を保つために手で掴むことができるように形成された手摺部を備えたもの(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】実開平7−10362号公報
【特許文献2】特開平9−125825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの手摺装置は、扉が取り付けられた縦枠に、部分的または全長にわたって握り部を設けたもの、あるいは化粧枠の室内側に向かって延設される延設部に手摺部を設けたものであるから、開口部の枠体または化粧枠の大きさや場所が変わるごとに握り部または手摺部の位置を変えなければならないので、握り部または手摺部を設ける自由度が小さかった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、開口部における手摺の取り付ける自由度が大きいことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、壁の開口枠に沿ってケーシングが設けられる開口部の手摺装置であって、前記開口枠に沿う方向に延長する握り部と、該握り部に延在する基端部とを有する手摺を備え、該手摺の基端部に形成された突起が前記ケーシングが固定される開口枠の溝に嵌合することにより前記手摺が前記ケーシングの一部に取って代わって設けられることを特徴とする。
【0006】
このようにすることにより、手摺の基端部に形成された突起がケーシングが固定される開口枠の溝に嵌合するので、その溝がある箇所であれば、どの箇所でも手摺を設けることができる。また、既にケーシングが取り付けられた開口部であっても、ケーシングの一部または全部を取り外して、その代わりに手摺を設けることができるので、リフォーム時にも対応可能である。また、開口枠の溝に手摺を設けることにより、手摺は歩行者が開口部を通過する際に安全に歩行することができるように支持する。
【0007】
さらに、前記手摺は前記開口枠の上下方向略全長に渡って設けられると良い。手摺が開口枠の上下方向略全長に渡って設けられることにより、人の立ち座り、子供の開口部の通過などの際に安全に支持する。特に、高齢者が車椅子などで開口部を通過したり室内を移動する際に、あるいは立ち座りの際に安全に支持する。
【0008】
次に本発明を構成する各要件についてさらに詳しく説明する。本手摺装置は、住宅、店舗などの建築物の壁の開口部であって、この開口枠に沿ってケーシングが設けられる場合に適用できる。この場合、室と室との間の壁に設けられる開口部、扉、引戸などが設けられる開口部あるいは窓の開口部などが含まれる。
【0009】
本手摺装置は、開口部を通過する、またはその近くを移動するすべての歩行者が利用するものであるが、特に高齢者が室内を移動したり立ち座りする時などに最適に利用できる。
【0010】
手摺は、人が握ることができる略棒状の握り部と、この握り部に延在する基端部とを有し、かつ基端部に突起が形成されていれば、特に限定されない。握り部の断面形状は、円形、楕円形、矩形、多角形などを利用できる。握り部の断面大きさは、材質にもよるが円形相当で25〜45mm程度、木質の場合には直径32〜35mm程度が好ましい。手摺の握り部の長さは、特に限定されないが、たとえば600mmから開口枠の上下方向全長の範囲で適宜選定すると良い。手摺がケーシング用の開口枠の溝の一部のみに設けられる場合、手摺以外の部分には手摺に連結してケーシングが設けられる。
【0011】
基端部に形成された突起の形状は、特に限定されないが、矩形、異形矩形、鈎形などであり、突起が嵌合する開口枠の溝に係止する形状でも良い。突起が嵌合する開口枠の溝は、ケーシングの固定用端部が嵌合する開口枠の溝と同じで、たとえば開口部を形成する縦枠または上枠の正面または裏面(室側に向く面)に設けられる溝である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーシングが設けられる開口部において、ケーシングに取って代えて手摺を設けることができるので、開口部における手摺の取り付ける自由度が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る手摺装置の実施形態を図面に基いて詳細に説明する。なお、図1〜8において、同一または同等部分には同一符号を付けて示す。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る手摺装置の一実施形態を示す正面図である。実施例1の手摺装置は、住宅などの建築物の室と室との間の壁の開口部12に設けられる。開口部12は、床面42上に立設される左右の縦枠14と、これら左右縦枠14の上部同士を連結する上枠16とから形成される。左右縦枠14および上枠16にはケーシング20が設けられる。開口部12には扉30が設けられ、上下二つの蝶番32を介して図の右側縦枠14に支持される。扉30の左右方向左側寄りで中間高さ位置には取手34が設けられる。
【0015】
さらに、左右縦枠14の上下方向中間位置には手摺1が設けられる。手摺1の上端と下端は、ケーシング20に連続している。手摺1の長さは、たとえば600mmであるが、この長さに限定されることはない。
【0016】
図2は、図1における扉30を開けた状態でのA矢視の要部側面図である。図3は、図1におけるB−B断面図である。図2に示すように、手摺1は、縦枠長さの一部に設けられるもので、縦枠14に沿う方向に延長する握り部4と、この握り部4に延在する基端部6とを有する。握り部4と基端部6とは、手摺1の上部と下部において一体的に形成され、中間においては補強リブ8が適宜設けられ、握り部4の強度を補強する。
【0017】
図3に示すように、開口部12は、たとえば躯体である柱38に飼木22を介して縦枠14および上枠(図1符号16)を門形に組んで形成される。柱38の外側には、たとえば石膏ボード36が設けられる。さらに、基端部6には突起7が形成される。突起7の先端側は、ケーシング20が固定される縦枠の溝18に嵌合する。握り部4の材質は木質で、その断面形状は略矩形である。握り部4の断面大きさは、幅35mm、厚さ25mmである。
【0018】
基端部6は、その突起7を含めた形状が略L字形である。突起7が嵌合する縦枠の溝18の形状、大きさは、ケーシング20の固定用端部が嵌合する溝と同じで、開口部を形成する縦枠14の正面または裏面(室側に向く面)に設けられる。
【0019】
図4は、図1におけるC−C断面図である。開口部12の縦枠14に形成された溝18にケーシング20の固定用端部20aが嵌合する。石膏ボード36の端部は、ケーシング20で覆われる。また、ケーシング20の断面形状と手摺1の基端部6及び突起7の断面形状とを同一とすることにより、ケーシング20と手摺1との突き付け部に段差が生ずることなく面一となるため、突き付け部に指が引っかかり負傷する危険性が無く、意匠上も良好なものとなる。
【0020】
以上のように形成される実施例1の手摺装置は、次のように作用する。すなわち、図1〜3に示すように、基端部の突起7は、ケーシング20が固定される縦枠の溝18に嵌合するので、ケーシングが固定される溝がある箇所であれば、どの箇所でも手摺1を設けることができる。また、既にケーシング20が取り付けられた開口部であっても、ケーシング20の一部を取り外して、その代わりに手摺1を取り付けることによってリフォーム時にも対応可能である。また、歩行者が開口部を通過する際の支持や立ち座りなどの支持の際にも利用できる。
【実施例2】
【0021】
図5は、本発明に係る手摺装置の別の実施形態を示す正面図である。図6は、図5における扉30を開けた状態でのD矢視の要部側面図である。この実施形態の手摺2は、開口部の縦枠14の上下方向略全長に渡って設けられる。
【0022】
図6に示すように手摺2は、先の手摺1と同じく、縦枠14に沿う方向に延長する握り部4と、この握り部4に延在する基端部6とを有する。握り部4と基端部6とは、上部と下部において一体的に形成され、中間においては補強リブ8が適宜設けられ、握り部4の強度を補強する。
【0023】
図7は、図5におけるE−E断面図である。手摺2は、その基端部の突起7が縦枠の溝18に嵌合して固定されるが、さらに基端部6の裏面において、接続金物24を介して飼木22に固定される。
【0024】
図5〜7に示した実施例2の手摺装置は、手摺2が縦枠14の上下方向略全長に渡って設けられ、手摺が上下方向の低い位置にも設けられるので、人の立ち座り、子供などの利用に便利である。特に高齢者が車椅子などで室内を移動したり立ち座りする時などに最適に利用できる。図5〜7におけるその他の構造と作用は、図1〜4に示した実施例1の手摺装置と同じであるので、その説明を省略する。
【実施例3】
【0025】
図8は、本発明に係る手摺装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。図8に示す手摺装置は、壁の開口部の一つである窓の下枠17に手摺3を設けたものである。手摺3は、下枠17に沿う方向に延長する丸棒状の握り部4と、この握り部4に延在する基端部6とを有する。基端部6には突起7が形成されるが、突起7の少なくとも先端側は下枠17に形成された溝18に嵌合する。基端部6と突起7とは一体的に形成される。基端部6は、握り部4の長手方向に連続的に設けられても良いし、握り部4の長手方向において数箇所不連続的に設けられても良い。なお、符号40は腰壁である。
【0026】
図8に示した実施例3の手摺装置は、窓の下枠17の水平方向に設けられることにより、人の歩行時はもちろん、高齢者などが車椅子などで室内を移動したり立ち座りする時などに最適に利用できる。図8におけるその他の構造と作用は、図1〜4に示した実施例1の手摺装置と同じであるので、その説明を省略する。
【0027】
以上この発明を図示の実施例について詳しく説明したが、それを以ってこの発明をそれらの実施例のみに限定するものではない。要するに、この発明の精神を逸脱せずして種々改変を加えて多種多様の変形をなし得ることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の手摺装置は、住宅、店舗などの建築物の壁の開口部であって、この開口部の開口枠に沿ってケーシングが設けられる場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る手摺装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1におけるA矢視の要部側面図である。
【図3】図1におけるB−B断面図である。
【図4】図1におけるC−C断面図である。
【図5】本発明に係る手摺装置の別の実施形態を示す正面図である。
【図6】図5におけるD矢視の要部側面図である。
【図7】図5におけるE−E断面図である。
【図8】本発明に係る手摺装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、2、3 手摺
4 握り部
6 基端部
7 突起
10 壁
12 開口部
14 縦枠(開口枠)
16 上枠(開口枠)
17 下枠(開口枠)
18 溝
20 ケーシング
26 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の開口枠に沿ってケーシングが設けられる開口部の手摺装置であって、前記開口枠に沿う方向に延長する握り部と、該握り部に延在する基端部とを有する手摺を備え、該手摺の基端部に形成された突起が前記ケーシングが固定される開口枠の溝に嵌合することにより前記手摺が前記ケーシングの一部に取って代わって設けられることを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
請求項1において、前記手摺は前記開口枠の上下方向略全長に渡って設けられることを特徴とする手摺装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate