説明

手術前治療

本発明は、外科的治療、例えば外科的切開又はレーザー治療を受けることを予定している患者における手術後の出血及び/又は創傷を減少させるための方法に関する。該方法は、出血及び/又は創傷を引き起こす外科的治療を行うことを予定している、患者の皮膚の局部に、有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、外科的治療を行う前に局所的に塗布することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願では、米国仮特許出願シリアル番号61/015,912の優先権を主張し、その内容は、参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
患者は外科的治療を受けるとき、多くの場合、その回復期間が外科的治療自体よりも痛ましく、苦しい。様々な要因、例えば患者の年齢及び健康状態、又は、外科的治療の間及びその後における出血量及び/又は創傷の数が、治癒過程に影響する。患者の年齢及び健康状態のような要因は変更できないが、外科的治療の位置の周りの出血及び/又は創傷を減少させる方法を発見することは有利である。
原発性近視(primary myopia)/近視性乱視又は遠視性乱視のためのLASIK手術を受ける前に、予防的用量のブリモニジンを受ける患者は、結膜下出血の発生が少なく、充血が少ないことが報告されている(Norden, "Effect of prophylactic brimonidine on bleeding complications and flap adherence after laser in situ keratomileusis," J Refract Surg. 2002 M-Aug; 18(4):468-71参照のこと)。結膜下出血は、結膜(conjuctiva)における血管が、破裂するか、損傷した場合に生じる。血管が破砕するか、又は損傷することで、結膜と強膜との間のスペースに、血液が漏出する。血液は、白目部分に目に見えて確認されうる。
【0003】
ブリモニジンは、α2アドレナリン受容体アゴニストとして知られている。しかしながら、本分野においては、α2アドレナリン受容体アゴニストの効果はあまり予測できない。例えば、α2アドレナリン受容体アゴニストは、ある組織における血管の血管拡張、他の組織の血管収縮を引き起こすかもしれないし、全く効果がないかもしれない。
ブリモニジンタルトラートの水溶液(0.15%及び0.20%)は、眼科用途で数年前から知られている。これは、アルファガン(ALPHAGAN(登録商標))Pの名前で、アラガン(Allergan)から、販売されている。
しかしながら、皮膚においてブリモニジンを使用することは、比較的新しい。最近、ブリモニジンタルトラートは、酒さにより生じる紅斑の治療にも有用であることが分かってきている。ブリモニジンタルトラートを含むクリーム及びゲルは、以下の米国特許出願に開示されている:米国シリアル番号 10/853,585(DeJovin 等)(現在、米国特許番号第7,439,241);米国シリアル番号 10/626,037(Scherer);及び、米国シリアル番号 10/763,807(Shanler 等)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明は、外科的治療、例えば外科的切開又はレーザー治療を受けることを予定している患者における手術後の出血及び/又は創傷を減少させるための方法に関する。該方法は、出血及び/又は創傷を引き起こす外科的治療を行うことを予定している、患者の皮膚の局部に、有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、外科的治療を行う前に局所的に接触させることを含む。
ある態様において、医薬組成物を、外科的治療の10分前〜120分前に接触させる。他の態様において、医薬組成物を、外科的治療の15分前〜60分前に接触させる。
【0005】
当該医薬組成物は、クリーム、ゲル、エマルション、及び、軟膏、液剤、並びに、薬用包帯からなる群から選択される医薬担体を含む。当該医薬組成物は、好ましくは、ゲル又はクリームである。ゲル又はクリーム組成物において、ブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩は、約0.1質量%〜約10質量%の量で存在する。
本発明の他の局面は、外科的治療、例えば外科的切開又はレーザー治療を受けた患者における出血及び/又は創傷を減少させるための方法に関する。該方法は、外科的治療を行った患者の皮膚の局部に、有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を局所的に接触させることを含む。
当該医薬組成物は、クリーム、ゲル、エマルション、及び、軟膏、液剤、並びに、薬用包帯からなる群から選択される医薬担体を含む。当該医薬組成物は、好ましくは、ゲル又はクリームである。ゲル又はクリーム組成物において、ブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩は、ゲル又はクリーム組成物中に約0.1質量%〜約1質量%の量で存在する。
好ましい態様において、医薬組成物を、外科的治療の直後に接触させる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
医薬組成物を、出血及び/又は創傷を減少させるために十分な手術前の時間に、皮膚に局所的に接触させる。好ましい態様において、医薬組成物を、外科的治療の少なくとも10分前に、より好ましくは、外科的治療の少なくとも15分前に、そして、最も好ましくは外科的治療の少なくとも30分前に接触させる。医薬組成物を、好ましくは、外科的治療の約60分前までには、最も好ましくは、外科的治療の約120分前までには接触させる。
医薬組成物を、切開又は治療を行うことを予定している皮膚の局部、及び、その皮膚の局部の周辺に局所的に接触させる。切開又は治療を、頭、胸、腕、脚、腹などのような体の任意の局部において行うことができる。例えば、治療を、患者の顔において行ってもよい。
医薬組成物が接触する皮膚の局部とは、外科的手術の後の出血及び/又は創傷を減少させる一因となるであろう皮膚の任意の局部である。例えば、医薬組成物を、切開される予定の位置と、切開される予定の位置の周りの半径3インチにわたって接触させることができる。
【0007】
本発明の医薬組成物を、本分野でよく知られる任意の従来の方法で、局所的に接触させる。例えば、該組成物を、綿棒又は塗布用スティックによって接触させるか、又は、本発明の製剤を、手袋をはめた指で患部に単に広げることによって接触させる。
組成物を、医薬組成物によってあらかじめ薬物が添加された包帯、又は、医薬組成物の液剤に浸した包帯を用いて接触させてもよい。包帯を、外科的治療の後の出血及び/又は創傷を減少させるのに十分な時間の長さで皮膚に接触させることができる。例えば、包帯を、最低でも約10分間、より好ましくは最低でも約15分間、皮膚に接触させることができる。包帯を、最大で約90分間、より好ましくは最大で約30分間、皮膚に接触させることもできる。
【0008】
皮膚の患部に接触させる本発明の局所用製剤の量は、外科的治療の後の出血及び/又は創傷を減少させるのに十分な任意の量である。例えば、接触させる本発明の局所用製剤の最小値は、約0.0001g/cm2(皮膚面積)、より好ましくは、約0.001g/cm2(皮膚面積)にすることができる。接触させる局所用製剤の最大値は、約0.01g/cm2(皮膚面積)、より好ましくは、約0.007g/cm2(皮膚面積)、最も好ましくは、約0.003g/cm2(皮膚面積)にすることができる。
外科的治療は、出血及び/又は創傷を引き起こす任意の治療である。外科的治療は、例えば、外科的切開及びレーザー治療を含む。外科的切開は、外科用メス、ナイフ、かみそり、シリンジ、レーザーなどの手段で皮膚を刺すことを含む。レーザー治療は、皮膚組織及び血管を切断可能か、蒸発可能な周波数の電磁放射を用いて実施される。
当該方法は、出血及び/又は創傷を引き起こす任意の外科的治療の前に使用されうる。方法は、形成外科及び治療、例えば、レーザーでの肌のケア(resurfacing)、あざやしみの除去、ボトックス注射、豊胸のための注入、腹部形成、フェイスリフト、鼻形成、脂肪吸引術などの前に使用されうる。当該方法は、非美容整形手術及び治療、例えば胃バイパス、虫垂切除、帝王切開、胆嚢切除、血管形成術、心臓切開手術、腎臓移植、脳外科手術などの前に使用されてもよい。
【0009】
その他の応用法として、本発明の医薬組成物を、シェービングの前にヒトの皮膚に接触させることができる。医薬組成物を、かみそりによって引き起こされる出血及び/又は創傷を抑制するのに有効に働くためにシェービング前の任意の時間に接触させることができる。例えば、医薬組成物を、少なくともシェービングの15分前に接触させることができる。
医薬組成物を、顔及び脚のようなシェービングした皮膚の任意の局部に接触させることができる。シェービング前の医薬組成物の接触により、かみそりによって引き起こされる切り傷又は軽い傷の出血及び創傷を、なくすとは言えないまでも、十分に減少させる。
【0010】
<医薬組成物>
医薬組成物は、ブリモニジン、すなわち、5-ブロモ-6-(2-イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリン、又は、それの医薬的に許容可能な塩を含む。
医薬的に許容可能な塩は、患者における局所的な使用に対して安全で、所望の生物活性を有するブリモニジンのそれらの塩を含む。医薬的に許容可能な酸付加塩は、ブリモニジンに存在する塩基性基の塩を含む。医薬的に許容可能な酸付加塩としては、限定されないが、クロリド、ブロミド、ニトラート、スルファート、ビスルファート、ホスファート、イソニコチナート、アセタート、ラクタート、サリチラート、シトラート、タルトラート、パントテナート、ビタルトラート、アスコルバート、スクシナート、マレアート、ゲンチシナート、フマラート、グルコナート、グルカロナート、サッカラート、ホルマート、ベンゾアート、グルタマート、メタンスルホナート、エタンスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート及びパモアート(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトアート))塩が挙げられる。医薬的に許容可能な塩の総覧用に、BERGE ET AL., 66 J. PHARM. SCI. 1-19 (1977) (参照によりここに組み込まれる)を参照のこと。
ブリモニジンの好適な医薬的に許容可能な塩は、ブリモニジンタルトラートである。その構造を以下に示す。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明の医薬組成物は、手術前に接触させる場合に、出血及び/又は創傷を減少させるのに治療学的に有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む。ブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩の実際の有効量は、例えば、投与する特定の位置(particulate site)、接触の方法、組成物が皮膚と接触する時間の長さ、及び、治療される患者(例えば、年齢、性別、皮膚質など)に応じて変えられる。当該有効量は、臨床前試験及び臨床試験の間に、医師及び臨床医によって簡単に決定可能であり、手術前に外科医によって簡単に決定可能である。
【0013】
例えば、本発明の医薬組成物は、最小量が約0.01質量%、更に好ましくは約0.10質量%、そして、最も好ましくは、約0.17質量%であるブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含みうる。医薬組成物は、最大量が約10質量%、更に好ましくは約5質量%、更に好ましくは約1質量%、そして、最も好ましくは、約0.19質量%であるブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含みうる。
医薬組成物は、医薬的に許容可能な局所用担体も含む。医薬的に許容可能な局所用担体は、医薬又は薬剤の局所送達用、皮膚送達用、真皮送達用又は経皮送達用に、皮膚表面に接触可能である任意の医薬的に許容可能な製剤である。医薬的に許容可能な担体及び本発明の化合物の組み合わせは、本発明の局所用製剤と呼ばれる。本発明の局所用製剤は、本発明の化合物を本分野においてよく知られた方法に従って局所用担体と混合することによって調製される。その方法は、例えば、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1577-1591, 1672-1673, 866-885 (Alfonso R. Gennaro ed. 19版、1995); Ghosh, T. K.; et al. TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS (1997) のような標準的な参照テキストによって提供される方法であり、これらの双方が、これにより、参照によってここに組み込まれる。
【0014】
<医薬的に許容可能な局所用担体>
本発明の化合物の局所的送達のために有用な局所用担体は、局所的に医薬を投与するために本分野で知られる任意の担体、例えば、限定されないが、医薬的に許容可能な溶剤、例えば、ポリアルコール又は水;エマルション(水中油、又は、油中水エマルション)、例えばクリーム又はローション;マイクロエマルション;ゲル;軟膏;リポソーム;粉末;及び水剤又は懸濁剤、例えば標準的な点眼液でありうる。
【0015】
≪局所用担体としてのエマルション、ゲル、及び軟膏≫
好適な態様において、本発明の化合物を送達するために用いられる局所用担体は、エマルション、ゲル、又は軟膏である。エマルション、例えばクリーム及びローションが本発明における使用に好適な局所用製剤である。エマルションは、少なくとも2つの不混和相(1つの相が、他の相の中に、0.1μm〜100μmの直径の範囲の液滴で分散している)を含む分散系である。乳化剤は、概して安定性を改良するために含まれる。水が分散相であり、油が分散媒である場合に、エマルションは、油中水エマルションと呼ばれる。水相の全体にわたって、油が液滴で分散している場合、エマルションは、水中油エマルションと呼ばれる。局所用担体として用いることができるクリーム及びローションのようなエマルション及びそれらの調製は、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 282-291 (Alfonso R. Gennaro ed. 19版、1995) に開示されており、これによって参照により、ここに組み込まれる。
【0016】
他の態様において、薬学的に許容可能な担体は、ゲルである。ゲルは、液体により浸透された(広げられた(interpenetrate))、小さな無機粒子、又は、大きな有機粒子の懸濁液を含む半固体系である。ゲルの大部分が、小さな分散する無機粒子の網状組織を含む場合に、それは、2相のゲルとして分類される。単相ゲルは、分散する高分子と液体との間に明確な境界が存在しないように液体の全体にわたって均一に分散する有機高分子で構成される。本発明における使用に好適なゲルは、2相系であっても単相系であってもよい。好適なゲルのいくつかの例は、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1517-1518 (Alfonso R. Gennaro ed. 19版、1995) に開示されており、ゲルの記載は、参照によりここに組み込まれる。本発明における使用のための他の好適なゲルは、米国特許番号第6,387,383(2002年5月14日公開);米国特許番号第6,517,847(2003年2月11日公開);及び米国特許番号第6,468,989(2002年10月22日公開)に開示されており、ゲルの記載は、参照によりここに組み込まれる。
【0017】
使用されうるゲル化剤は、本分野の当業者に公知であるもの、例えば、化粧品工業及び製薬工業で頻繁に使用される親水性及び含水アルコール性のゲル化剤を含む。好ましくは、親水性又は含水アルコール性のゲル化剤としては、"CARBOPOL(登録商標)"(B.F. Goodrich, Cleveland, Ohio)、"HYP AN(登録商標)"(Kingston Technologies, Dayton, N.J.)、"NATROSOL(登録商標)"(Aqualon, Wilmington, Del.)、"KLUCEL(登録商標)"(Aqualon, Wilmington, Del.)、又は、"STABILEZE(登録商標)"(ISP Technologies, Wayne, N.J.)が挙げられる。
"CARBOPOL(登録商標)"は、一般名カルボマーで示される多くの架橋アクリル酸ポリマーの一つである。"カルボマー"は、分散可能であるが水不溶性である様々なポリマー酸のためのUSP(米国薬局方)名称である。酸性分散物が塩基で中和されたときに、透明で安定したゲルが形成される。好適なカルボマーは、カルボマー934Pである。なぜならば、それは、生理的に不活性であり、かつ、一次刺激原でも増感剤でもないためである。他のカルボナーとしては、910、940、941、及び、1342が挙げられる。
カルボマーは、水に溶解し、そして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、又は、他のアミン塩基のような腐食性物質で中和することで透明なゲル、又は、わずかに濁ったゲルを形成する。"KLUCEL(登録商標)"は、水に分散し、そして、完全に水和することで均一なゲルを形成するセルロースポリマーである。他に好適なゲル化剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム、MVE/MAデカジエン架橋ポリマー、PVM/MAコポリマー、又は、それらの組合せが挙げられる。
【0018】
好適な態様において、組成物中のゲル化剤の最小量は、約0.5%であり、より好ましくは、約0.75%であり、最も好ましくは約1%である。
他の好適な態様において、組成物中のゲル化剤の最大量は、約2%であり、より好ましくは、約1.75%であり、最も好ましくは約1.5%である。
【0019】
他の好ましい態様において、本発明の化合物を送達するために使用される局所用担体は軟膏である。軟膏は、たとえあったとしてもごくわずかな水しか含まない油性半固体である。好ましくは、軟膏は、炭化水素ベースの例えば、ワックス、ワセリン、又は、ゲル状のミネラルオイルである。本発明における使用に適した軟膏は、本分野でよく知られており、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1585-1591 (Alfonso R. Gennaro ed. 19版、1995) に開示され、これにより参照によりここに組み込まれる。
【0020】
医薬担体のpHは、例えば、水酸化ナトリウム、又は、水酸化カリウムのような塩基で調製される。担体の最小pHは、該担体が10倍希釈された場合に、約5であり、好ましくは5.5であり、最も好ましくは6.2である。担体の最大pHは、該担体が10倍希釈される場合に、約7.5であり、好ましくは7であり、最も好ましくは6.8である。 上記のpH値は、組成物が水で10倍希釈される場合に、生じる値である。pH値を得るために組成物を10倍希釈することは必要でない。実際には、組成物は、pHを測定できる任意の値に希釈されうる。例えば、組成物は、約5倍〜約20倍に希釈されうる。pHは、希釈係数に応じて、わずかに変化するだろう。
【0021】
≪本発明の水性局所用製剤≫
他の態様において、本発明の局所用製剤に使用される局所用担体は、水剤又は懸濁剤であり、好ましくは水剤である。よく知られた点眼剤及び懸濁剤は、本発明における使用に好適な局所用担体である。本発明における使用に好適な水性局所用製剤は、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1563-1576 (Alfonso R. Gennaro ed. 19版、1995) に開示され、これにより参照によってここに組み込まれる。他の好適な水性局所用担体系は、米国特許番号5,424,078(1995年6月13日発行);米国特許番号5,736,165(1998年4月7日発行);米国特許番号6,194,415(2001年2月27日発行);米国特許番号6,248,741(2001年6月19日発行);米国特許番号6,465,464(2002年10月15日発行) に開示され、ここで、水性局所用担体系の記載は、参照によってここに組み込まれる。
本発明の水性局所用製剤のpHは、好ましくは、約6〜約8の範囲内であり、より好ましくは、約6.3〜約6.5の範囲内である。pHを安定化するために、好ましくは有効量の緩衝剤を含む。一態様において、緩衝剤は、製剤の約0.05〜約1質量%の量で水性局所用製剤中に存在する。酸及び塩基は、必要に応じてpHを調整するために使用されうる。好適な緩衝剤は、以下に記載される。
【0022】
等張化剤は、本発明の水性局所用製剤に含まれうる。好適な等張化剤としては、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、デキストロース、グリセリン、及び、プロピレングリコールが挙げられる。等張化剤の量は、製剤に望まれる性質に応じて広く変更できる。ひとつの態様において、等張化剤は、製剤の約0.5〜約0.9質量%の量で水性局所用製剤に存在する。
好ましくは、本発明の水性局所用製剤は、約15cps〜約25cpsの範囲の粘度を有する。本発明の水剤の粘度は、粘度調整剤、例えば、制限されないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピル メチル セルロース、ポロキサマー、カルボキシメチル セルロース、又はヒドロキシエチル セルロースを添加することで調整されうる。
好ましい態様において、本発明の水性局所用製剤は、防腐剤、例えば、ベンザルコニウム クロリド又は塩素 ジオキシド、粘度調整剤、例えば、ポリビニルアルコール、及び、緩衝剤系、例えば、ナトリウム シトラート及びクエン酸を含む等張食塩水である。
【0023】
<賦形剤>
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、例えば、制限されないが、保護剤、吸着剤、鎮痛剤、皮膚軟化剤、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚浸透剤、及び、界面活性剤を含んでもよい。薬学的に許容可能な賦形剤は、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 866-885(Alfonso R. Gennaro ed. 19版、1995);Ghosh, T. K;等 TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS (1997) に記載され、賦形剤の記載は参照によってここに組み込まれる。
好適な保護剤、及び/又は、化粧品剤、及び、吸着剤としては、制限されないが、散布剤、ステアリン酸亜鉛、コロジオン、ジメチコン、シリコーン、炭酸亜鉛、アロエベラゲル、及び、他のアロエ製品、ビタミンEオイル、アラントイン(allatoin)、ワセリン、二酸化チタン、及び、酸化亜鉛が挙げられる。より好適な保護剤は、二酸化チタンである。
好適な態様において、組成物中の化粧品剤の最小量は、約0.01%であり、より好ましくは約0.025%であり、最も好ましくは、約0.05%である。
他の好適な態様において、組成物中の化粧品剤の最大量は、約0.15%であり、より好ましくは約0.1%であり、最も好ましくは、約0.075%である。
【0024】
好適な鎮痛剤としては、制限されないが、ベンゾイン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び、ポリビニルアルコールが挙げられる。
好適な皮膚軟化剤としては、制限されないが、動物性及び植物性の脂肪及びオイル、ミリスチルアルコール、ミョウバン、及びアルミニウムアセタートが挙げられる。
好適な防腐剤としては、制限されないが、第4級アンモニウム化合物、例えば、ベンザルコニウム クロリド、ベンゼトニウム クロリド、セトリミド、デカリニウム クロリド、及び、セチルピリジニウム クロリド;水銀剤、例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、及び、チメロサール;アルコール剤、例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、及び、ベンジルアルコール;パラベン、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及び、ブチルパラベン;抗菌エステル、例えば、パラヒドロキシ安息香酸のエステル;及び、他の抗-微生物剤、例えば、クロルヘキシジン、クロロクレゾール、安息香酸、ポリミキシン、及び、フェノキシエタノールが挙げられる。好適な防腐剤は、メチルパラベン、及び、フェノキシエタノールである。
好適な態様において、組成物中の防腐剤の最小量は、約0.1%であり、より好ましくは、約0.2%であり、最も好ましくは、約0.3%である。
他の好適な態様において、組成物中の防腐剤の最大量は、約1%であり、より好ましくは、約0.75%であり、最も好ましくは、約0.5%である。
【0025】
好適な抗酸化剤としては、制限されないが、アスコルビン酸及びそのエステル、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、及び、EDTA及びクエン酸のようなキレート剤が挙げられる。
好適な保湿剤としては、限定されないが、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、及び、プロピレングリコールが挙げられる。より好適な保湿剤は、グリセリンである。
好適な態様において、組成物中の保湿剤の最小量は、約2%であり、より好ましくは、約3.5%であり、最も好ましくは約4.5%である。
他の好適な態様において、組成物中の保湿剤の最大量は、約10%であり、より好ましくは約8%であり、最も好ましくは約6%である。
本発明での使用に好適な緩衝剤としては、限定されないが、アセタート緩衝液、シトラート緩衝液、ホスファート緩衝液、乳酸緩衝液、及びボラート緩衝液が挙げられる。
【0026】
好適な可溶化剤は、限定されないが、第四級アンモニウム クロリド、シクロデキストリン、ベンジル ベンゾアート、レシチン、及び、ポリソルバートが挙げられる。
好適な皮膚浸透剤としては、制限されないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、イソプロピル ミリスタート、メチル ラウラート、グリセロール モノオレアート、及び、プロピレングリコール モノオレアート);及び、N-メチルピロリドンが挙げられる。より好適な皮膚浸透剤は、プロピレングリコールである。
好適な態様において、組成物中の皮膚浸透剤の最小量は、約2%であり、より好ましくは約3.5%であり、最も好ましくは、約4.5%である。
他のより好適な態様において、組成物中の皮膚浸透剤の最大量は、約10%であり、より好ましくは約8%であり、最も好ましくは、約6%である。
【0027】
<医薬品添加物>
本発明の局所用製剤は、単独の活性成分としてブリモニジンを含んでもよいし、他の活性成分を含んでもよい。他の活性成分の例としては、限定されないが、外用副腎皮質ホルモン剤及び他の抗炎症剤、例えば、ベタメタゾン(betamethasone)、ジフロラゾン(diflorasone)、アムシノニド(amcinonide)、フルオシノロン(fluocinolone)、モメタゾン(mometasone)、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン及びトリアムシノロン;局所麻酔薬及び麻酔薬、例えば、カンフル、メントール、リドカイン及びジブカイン及びプラモキシン;抗真菌剤、例えば、シクロピロクス、クロロキシレノール、トリアセチン、スルコナゾール(sulconazole)、ナイスタチン、ウンデシレン酸、トルナフタート、ミコナゾール(miconizole)、クロトリマゾール、オキシコナゾール、グリセオフルビン、エコナゾール、ケトコナゾール(ketoconozole)及びアンフォテリシン(amphotericin)B;抗生物質及び抗感染薬、例えば、ムピロシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、及び、スルファジアジン銀;並びに、消毒剤、例えば、ヨウ素、ポビジン-ヨウ素、ベンザルコニウム クロリド、安息香酸、クロルヘキシジン、ニトロフラジン、ベンゾイル ペルオキシド、水素 ペルオキシド、ヘキサクロロフェン、フェノール、レソルシノール、及びセチルピリジニウム クロリドが挙げられる。
【0028】
本発明の他の局面は、外科的治療を受けた患者における出血及び/又は創傷を減少させる方法に関する。該方法は、外科的治療が行われた患者の皮膚の局部に、有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を局所的に接触させることを含む。
医薬組成物及び例えば用量、担体などの適用の方法は、上述のとおりである。医薬組成物を、治療後できるだけ早く外科的治療の位置に局所的に接触させる。好ましい態様において、医薬組成物を、外科的治療の直後に接触させる。
本発明の方法は、外科的治療によって引き起こされる出血及び/又は創傷を減少させるために、必要に応じて外科的治療の前及び/又は後に使用されうる。
【実施例】
【0029】
実施例は、例示の目的のために、そして、現在のところの本発明のベストモードを記載するために以下に示される。本発明の範囲は、ここに示される実施例によって、決して制限されない。
【0030】
<実施例1> ブリモニジン(5−ブロモキノキサリン−6−イル)−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)アミンの合成
6−アミノ−5−ブロモキノキサリン ヒドロブロミド(10g)を含む希釈水(150ml)の攪拌溶液に、チオホスゲン(3ml)を添加した。該溶液を2時間、室温で、攪拌し、得られた沈殿物を、ろ過して回収し、水で洗浄し、乾燥させて、5−ブロモ−6−イソチオシアナト−キノキサリンを得た。
5−ブロモ−6−イソチオシアナト-キノキサリン(3.5g)を、ベンゼン(400ml)の中に直接溶解し、エチレンジアミン(15g)を含むベンゼン(50ml)の良く攪拌された溶液に滴下した。約2時間で、油が下層として分離した。上のベンゼン層を捨てて、油をジエチルエーテルで洗浄し、次いで、メタノール(500ml)中に溶解した。硫化水素の発生が止むまで、メタノール溶液を還流した。メタノール溶液を真空で、容積がおおよそ100mlになるまで濃縮し、黄色の固体が沈殿した。沈殿物をろ過して回収し、メタノールから再結晶させて、(5−ブロモ−キノキサリン−6−イル)−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−アミン(融点:250〜251℃)を得た。
【0031】
<実施例2> ブリモニジン タルトラート 5−ブロモ−6−(2−イミダゾリジニリデンアミノ) キノキサリン L−タルトラートの合成
(L)−(+)−酒石酸を、ブリモニジンを含むメタノール水溶液に添加することで、ブリモニジンの酒石酸塩を合成することができた。ブリモニジンタルトラートは、溶液から分離された。
【0032】
<実施例3> ゲル製剤

【0033】
<実施例4> クリーム製剤

【0034】
<実施例5> ボトックス注射前のブリモニジンタルトラートクリームの接触
患者は、額のしわをへらすために眉の間の前額にボトックス注射を受けることを予定していた。ボトックス注射10分前に、0.18%のブリモニジンタルトラートを含むクリーム製剤を綿棒で、眉の間の顔の皮膚に接触させた。
【0035】
<実施例6> シェービング前の顔の皮膚へのブリモニジンタルトラートゲルの接触
シェービングの15分前に、ある男性は、0.10%のブリモニジンタルトラートを含むゲル製剤を、シェービングする顔の皮膚に接触させた。ブリモニジンタルトラート製剤は、彼がシェービングで怪我をした場合には、過剰な出血を抑制した。
【0036】
<実施例7> 中垂切除を受ける前の患者への包帯を介したブリモニジンの接触
中垂切除のために手術を受ける30分前に、0.25%のブリモニジンの液剤に浸した包帯を切開される皮膚の局部に貼り付けた。該包帯は、切開がなされる直前に除かれた。ブリモニジンの接触は、外科的治療後の出血及び創傷を有意に減らした。
【0037】
<実施例8> 中垂切除から回復しつつある患者へのブリモニジンタルトラートクリームの接触
他の実施例において、患者は、中垂切除を受けた後に回復しつつあった。0.40%ブリモニジンタルトラートクリームを、外科的治療を行った局部に接触させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的治療を受けることを予定している患者における手術後の出血及び/又は創傷を減少させるための方法であって、
出血及び/又は創傷を引き起こす外科的治療を行うことを予定している、患者の皮膚の局部に、有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、外科的治療を行う前に局所的に接触させることを含む、方法。
【請求項2】
外科的治療が、外科的切開又はレーザー治療である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物を、外科的治療の10分前〜120分前に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物を、外科的治療の15分前〜60分前に接触させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
医薬組成物が、クリーム、ゲル、エマルション、及び、軟膏、液剤、並びに、薬用包帯からなる群から選択される医薬担体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が、ゲル又はクリームである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩が、クリーム又はゲル中に約0.1質量%〜約10質量%の量で存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
外科的治療を受けた患者における出血及び/又は創傷を減少させるための方法であって、
外科的治療を行った患者の皮膚の局部に、有効量のブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を局所的に接触させることを含む、方法。
【請求項9】
外科的治療が、外科的切開又はレーザー治療である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
医薬組成物が、クリーム、ゲル、エマルション、及び、軟膏、液剤、並びに、薬用包帯からなる群から選択される医薬担体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物が、ゲル又はクリームである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ブリモニジン又はそれの医薬的に許容可能な塩が、クリーム又はゲル中に約0.1質量%〜約1質量%の量で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
医薬組成物を、外科的治療の直後に接触させる、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2011−507845(P2011−507845A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539469(P2010−539469)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/013797
【国際公開番号】WO2009/082452
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510052573)ガルデマ ラボラトリーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】