説明

抄紙機の汚染防止方法及びそれに用いられる汚染防止剤並びに抄紙機

【課題】プレスロール、フェルト、フェルトロール及びプレスパート後の抄紙機の汚染防止方法及び抄紙機の提供。
【解決手段】湿紙に下記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとを含む汚染防止剤を付与する、抄紙機の汚染防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機の汚染防止方法及びそれに用いられる汚染防止剤並びに抄紙機に関する。
【背景技術】
【0002】
紙を製造するための抄紙工程は、一般に水中にパルプが分散された液を抄紙用の網(ワイヤー)に載せ、余分な水を自然落下させることにより湿紙とするワイヤーパートと、湿紙を一対のプレスロール間に通し、フェルトを介してプレスロールで押圧することにより、湿紙中の水分をフェルトに移行させ、これにより湿紙を脱水するプレスパートと、プレスパートを通過した湿紙を、加熱されたドライヤに接触させることで乾燥させ、紙とするドライヤパートと、紙をカレンダー加工するカレンダーパートと、を有する。
【0003】
ところで、上記プレスパートについては、一対のプレスロールのうちの一方がシュープレスであるウエブ搾水機構が開示されている(特許文献1参照)。
かかるウエブ搾水機構においては、ボトムロールに設けられボトムロールとトップロールとのニップ部近傍からボトムロールとトランスファロールとのニップ部近傍までの範囲でボトムロールの周面に吸引力を作用させるサクションボックスを備えている。
【0004】
一方、抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のプレスロールの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するプレスロールの汚染防止方法が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−119685号公報
【特許文献2】特開2003−213587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のウエブ搾水機構にて湿紙の脱水を行うと、湿紙が通過する際に接触するシュープレスやフェルトに湿紙に含まれる異物が付着する場合がある。
この場合、シュープレスやフェルトに異物が付着したまま湿紙が押圧されるため、湿紙に凹部が生じ、極端には穴が空く等の不具合が生じる。
また、フェルトに付着した異物は、フェルト表面やフェルトを案内するフェルトロールに蓄積される。
【0006】
一方、ウエブ搾水機構後においては、湿紙が接触するペーパーロールやカンバスに異物が付着する場合があり、これらに異物が蓄積されることになる。
この場合、後進する湿紙に汚れが付着することになる。
【0007】
上記特許文献2記載の汚染防止方法においては、汚染防止剤をプレスロールに直接付与している。
ところが、この汚染防止剤ではプレスロールの汚染を抑制できるものの、未だ改善の余地がある。
また、プレスパート後のドライヤパート等におけるペーパーロールやカンバス等の汚染は十分に抑制できない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、プレスロール、フェルト及びフェルトロールの汚染を十分に抑制できると共に、プレスパート後におけるペーパーロールやカンバスの汚染も十分に抑制できる抄紙機の汚染防止方法及び抄紙機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、所定の汚染防止剤を、湿紙に付着することにより、プレスロールやフェルト等のみならず、プレスパート後におけるペーパーロールやカンバス等の汚染が抑制できることを見出した。
そして、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の抄紙機の汚染防止方法は、フェルトと、フェルトを案内するフェルトロールと、フェルトを介して湿紙を押圧するための一対のプレスロールと、を備えた抄紙機の汚染防止方法であって、湿紙に下記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとを含む汚染防止剤を付与することを特徴とする。
【化1】

[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜228の整数を示し、qは0〜69の整数を示す。但し、前記p,q,rは同時に0とはならない。]
【0011】
上記抄紙機の汚染防止方法においては、湿紙に上記汚染防止剤が付与されるため、湿紙が接触することに起因するフェルト、フェルトロール、プレスロールへの湿紙に含まれる異物の付着が抑制される。
また、このとき湿紙から汚染防止剤がフェルト、フェルトロール、プレスロールに転移されるため、フェルト、フェルトロール、プレスロールは汚染が一層抑制される。
これにより、例えば、プレスロールへの異物の付着により湿紙が押圧されて穴が空く等の不具合の発生が抑制される。
さらに、湿紙に汚染防止剤が付与されているため、プレスパート後においても、湿紙が接触するペーパーロールやカンバスに湿紙から汚染防止剤が転移される。
このため、ペーパーロールやカンバスの汚染も抑制される。
【0012】
したがって、本発明の抄紙機の汚染防止方法によれば、プレスロール、フェルト及びフェルトロールの汚染を十分に抑制できると共に、プレスパート後におけるペーパーロールやカンバスの汚染も十分に抑制できる。
【0013】
上記抄紙機の汚染防止方法において、フェルト又はプレスロールを介して、湿紙に汚染防止剤を付与することが好ましい。
この場合、直接汚染防止剤を湿紙に付与することにより、湿紙が破れるという事態が生じるのを抑制できる。
また、フェルト又はプレスロールを介することにより、湿紙に汚染防止剤を均一に付与できる。
【0014】
上記抄紙機の汚染防止方法において、湿紙と接触するフェルトの面、該フェルトの面と接触するフェルトロールの面、又は湿紙と接触するプレスロールの面、に汚染防止剤を付与することが好ましい。
この場合、汚染防止剤の付与量を最小限に止めることができると共に、設備も簡素化できる。
【0015】
上記抄紙機の汚染防止方法において、一対のプレスロールのうちの一方がシュープレスであることが好ましい。
この場合、湿紙を押圧する面が大きくなるため、湿紙を効率よく脱水できる。
これにより、湿紙に付与された汚染防止剤の濃度をより高くすることができる。
【0016】
上記抄紙機の汚染防止方法において、抄紙機が、プレスロールに付着する異物を除去するためのドクターブレードを備え、ドクターブレードで異物を除去する前に汚染防止剤をプレスロールに付与することが好ましい。
この場合、プレスロール表面に異物が付着することをより確実に抑制できる。
また、汚染防止剤をプレスロール表面に均一に付着させることができ、汚染防止剤の過剰塗布による湿紙の破れも抑制できる。
【0017】
上記抄紙機の汚染防止方法において、抄紙機が、フェルト中の水分を吸引するためのサクションボックスを備え、サクションボックスがフェルト中の水分を吸引した後に汚染防止剤をフェルトに付与することが好ましい。
【0018】
この場合、フェルト中の水分がサクションボックスによって十分に吸引されるので、後にフェルトに付与される汚染防止剤は上記水分によって希釈されずに濃度の高いものとなる。
これにより、湿紙表面に高濃度の汚染防止剤を付与することができ、更には湿紙表面からプレスロール等に確実に汚染防止剤を転移させることができる。
【0019】
上記抄紙機の汚染防止方法において、上記一般式(1)中のRが水素原子であり、p及びrがそれぞれ独立に27〜228の整数であり、qが25〜69の整数であることが好ましい。
また、上記一般式(1)中のRが置換基を有していてもよい炭素数10〜16の炭化水素基であり、pとrとの和が6〜20の整数であり、qが0〜2の整数であることが好ましい。
これらの場合、汚染防止効果がより向上する。
【0020】
上記抄紙機の汚染防止方法において、フェルトに対する前記汚染防止剤の付着量が5×10−6〜5×10−3g/mであることが好ましい。
この場合、汚染防止剤を確実かつ均一に湿紙に付着させることができる。
【0021】
本発明の汚染防止剤は、上述した抄紙機の汚染防止方法に用いられることを特徴とする。
かかる汚染防止剤によれば、プレスロール、フェルト及びフェルトロールの汚染を十分に抑制されると共に、プレスパート後におけるペーパーロールやカンバスの汚染も十分に抑制される。
【0022】
また、本発明の抄紙機は、フェルトと、フェルトを介して湿紙を押圧するためのプレスロールと、フェルト中の水分を吸引するためのサクションボックスと、フェルトに下記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとを含む汚染防止剤を付与するための吹付け具と、を備えることを特徴とする。
【化2】


[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜228の整数を示し、qは0〜69の整数を示す。但し、前記p,q,rは同時に0とはならない。]
【0023】
かかる汚染防止剤又は抄紙機によれば、プレスロール、フェルト及びフェルトロールの汚染を十分に抑制されると共に、プレスパート後におけるペーパーロールやカンバスの汚染も十分に抑制される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プレスロール、フェルト及びフェルトロールの汚染を十分に抑制できると共に、プレスパート後におけるペーパーロールやカンバスの汚染も十分に抑制できる抄紙機の汚染防止方法及び抄紙機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
図1は、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行う抄紙機における抄紙機を模式的に示す概略図である。
図1に示すように、抄紙機100は、フェルトと、フェルトを案内するフェルトロールと、フェルトを介して湿紙を押圧するための一対のプレスロールと、上記フェルト中の水分を吸引するための複数のサクションボックスと、フェルトに汚染防止剤を付与するための吹付け具と、を備えている。
【0027】
上記抄紙機100は、第1プレス部Aと、第2プレス部Bと、第3プレス部Cとを有しており、第1プレス部Aにおいては、一対のプレスロールが、第2及び第3プレス部B,Cにおいては、一対のプレスロールのうちの下側がシュープレスとなっている。
【0028】
上記第1プレス部Aは、トップロール11及びボトムロール12からなる一対のプレスロール10と、トップロール11及びボトムロール12に挟持される第1トップ側フェルト15及び第1ボトム側フェルト16と、を備えている。
【0029】
上記第1トップ側フェルト15は、複数の第1トップ側フェルトロールによりループ状に案内されるようになっており、トップロール11が内接するように配置される。
同様に上記第1ボトム側フェルト16は、複数の第1ボトム側フェルトロールによりループ状に案内されるようになっており、ボトムロール12が内接するように配置される。
【0030】
第1トップ側フェルト15の表面には、該第1トップ側フェルト15中の水分を吸引するためのサクションボックス15aが設けられており、第1ボトム側フェルト16の表面には、該第1ボトム側フェルト16中の水分を吸引するためのサクションボックス16aが設けられている。
【0031】
第2プレス部Bは、トップロール21及びシュープレス22からなるプレスロール20と、トップロール21及びシュープレス22に挟持される第2トップ側フェルト25及び第2ボトム側フェルト26と、を備えている。
【0032】
上記第2トップ側フェルト25は、複数の第2トップ側フェルトロールによりループ状に案内されるようになっており、トップロール21が内接するように配置される。
同様に上記第2ボトム側フェルト26は、複数の第2ボトム側フェルトロールによりループ状に案内されるようになっており、シュープレス22が内接するように配置される。
【0033】
第2トップ側フェルト25の表面には、該第2トップ側フェルト25中の水分を吸引するためのサクションボックス25aが設けられている。
また、第2ボトム側フェルト26の表面には、該第2ボトム側フェルト26中の水分を吸引するためのサクションボックス26aと、該サクションボックス26aが第2ボトム側フェルト26中の水分を吸引した後に該第2ボトム側フェルト26に汚染防止剤を付与可能な吹付け具26bと、該サクションボックス26aが第2ボトム側フェルト26中の水分を吸引する前に該第2ボトム側フェルト26に汚染防止剤を付与可能な吹付け具27bと、が設けられている。
【0034】
第3プレス部Cは、トップロール31及びシュープレス32からなるプレスロール30と、トップロール31及びシュープレス32に挟持される第3ボトム側フェルト36と、を備えている。
【0035】
上記トップロール31には、付着する異物を除去するためのドクターブレード30cと、このドクターブレード30cで除去できなかった異物を除去するためのドクターブレード31cとが設けられている。
また、ドクターブレード30cでトップロール31に付着した異物を除去する前にトップロール31に汚染防止剤を付与可能な吹付け具30bと、ドクターブレード30c及びドクターブレード31cの間にトップロール31に汚染防止剤を付与可能な吹付け具31bとが設けられている。
【0036】
上記第3ボトム側フェルト36は、複数の第3ボトム側フェルトロールによりループ状に案内されるようになっており、シュープレス32が内接するように配置される。
【0037】
第3ボトム側フェルト36の表面には、該第3ボトム側フェルト36中の水分を吸引するためのサクションボックス36aと、該サクションボックス35aが第3ボトム側フェルト36中の水分を吸引した後に該第3ボトム側フェルト36に汚染防止剤を付与可能な吹付け具36bと、該サクションボックス35aが第3ボトム側フェルト36中の水分を吸引する前に該第3ボトム側フェルト36に汚染防止剤を付与可能な吹付け具37bと、が設けられている。
【0038】
また、第1プレス部Aと第2プレス部Bとの間において、第1プレス部A側に位置する1つの第2トップ側フェルトロールは、サクションロール40となっており、第1プレス部A側に位置する第2ボトム側フェルトロール及び第2プレス部B側に位置する第1ボトム側フェルトロールに接している。
なお、上記サクションロール40は内部が減圧されており、搬送される湿紙を吸引することが可能となっている。
【0039】
湿紙50は、第1プレス部Aのトップロール11とボトムロール12との間を通過し、サクションロール40を介した後、第2プレス部Bのトップロール21とシュープレス22との間を通過し、第3プレス部Cのトップロール31とシュープレス32との間を通過し、ペーパーロール60を介してドライヤパートに搬送されるように配置されている。
【0040】
図2は、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行う抄紙機におけるシュープレスの押圧部を拡大した概略図である。
図2に示すように、第2プレス部Bのプレスロール20は、円筒状のトップロール21と、該トップロール21の下面に合致するような形状を有するゴム製の押上げ部22a、該押上げ部22aを押し上げるための昇降機構22b及び押し上げ部22aを収容する枠体22cを有するシュープレス22とを備える。
【0041】
上記押上げ部22aは昇降機構22bに連動して昇降可能となっており、押上げ部22aを上昇させるにより、押し上げ部22aの上面がトップロール21の下面に合致するようになっている。
【0042】
図3は、図2の状態からシュープレスが湿紙及びフェルトを挟持した状態を示す概略図である。
すなわち、図3に示すように、押上げ部22aを上昇させると、第2トップ側フェルト25、湿紙50及び第2ボトム側フェルト26がこの順序でトップロール21とシュープレス22との間に挟持され押圧される。
また、上記昇降機構22bは図示しないモータにより昇降される。
そして、この状態からトップロール21が回転することにより、第2トップ側フェルト25、湿紙50及び第2ボトム側フェルト26が搬送される。
なお、第3プレス部Cのプレスロール30については、第2トップ側フェルト25に相当するフェルトがないこと以外は上述のプレスロール20と同様の構成となっている。
【0043】
図4は、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行う抄紙機における吹付け具の一例を示す斜視図である。
図4に示す吹付け具26bは、スプレー式であり、筒状の基体27と、該基体27に取付けられた複数の噴霧ノズル28とを有する。
【0044】
上記基体27内部には汚染防止剤70が充填されており、該汚染防止剤70は適宜噴霧ノズル28から吐出可能となっている。
このため、吹付け具26bは、フェルトの表面全体に比較的多量の汚染防止剤70を同時に吹付けることができる。
なお、吹付け具27b、36b、37bも吹付け具26bと同様の形態であってもよい。
【0045】
そして、プレスパートを通過した湿紙50は、公知の方法により、ドライヤパート及びカレンダーパートを通過する。
図5は、プレスパート後のドライヤパート及びカレンダーパートを示す概略図である。
図5に示すように、ドライヤパート200は、複数配列されたドライヤ80と、ドライヤ80に湿紙を接触させ効率よく乾燥させるためのカンバス81とを備える。
また、カレンダーパート300は、湿紙50をカレンダー加工するための一対のカレンダーロール82を備える。
【0046】
次に、抄紙機の汚染防止方法について説明する。
本発明の抄紙機の汚染防止方法は上述したような抄紙機の抄紙機100における湿紙の脱水と共に行われる。
【0047】
まず、湿紙50は、第1トップ側フェルト15及び第1ボトム側フェルト16に挟持され、プレスロール10に搬送される。
そして、その状態で押圧部P1において、プレスロール10により押圧される。
【0048】
次いで、押圧部P1を過ぎた湿紙50は、サクションロールにより吸引され、第1ボトム側フェルト16から剥離される。
そして、湿紙50が吸着したまま、サクションロール40が回転することにより、湿紙50が第2トップ側フェルト25及び第2ボトム側フェルト26に挟持され、プレスロール20に搬送される。そして、その状態で押圧部P2において、プレスロール20により押圧される。
【0049】
次いで、押圧部P2を過ぎた湿紙50は、プレスロール30に搬送され、第3ボトム側フェルト36を介して、押圧部P3において押圧される。
これらの押圧により湿紙50は脱水される。
【0050】
そして、押圧部P3を過ぎた湿紙50は、ペーパーロール60により案内され、ドライヤパート200に搬送される。
【0051】
上記押圧部P1において、第1トップ側フェルト15及び第1ボトム側フェルト16に挟持された状態で湿紙50が押圧されると、湿紙50中に含まれていた水分は湿紙50に接する第1トップ側フェルト15及び第1ボトム側フェルト16に移行する。
【0052】
水分を含んだ第1トップ側フェルト15及び第1ボトム側フェルト16は、第1トップ側フェルトロール及び第1ボトム側フェルトロールにより案内され、サクションボックス15a及びサクションボックス16aにより、水分が吸引される。
【0053】
そして、再び、第1トップ側フェルト15及び第1ボトム側フェルト16が湿紙50を挟持し、湿紙50がプレスロール10に搬送される。
【0054】
同様に、上記押圧部P2においては、第2トップ側フェルト25及び第2ボトム側フェルト26に挟持された状態で湿紙50が押圧されると、湿紙50中に含まれていた水分は湿紙50に接する第2トップ側フェルト25及び第2ボトム側フェルト26に移行する。
【0055】
水分を含んだ第2トップ側フェルト25は、第2トップ側フェルトロールにより案内され、サクションボックス25aにより、水分が吸引される。
一方、第2ボトム側フェルト26は、吹付け具27bにより、汚染防止剤が付与され、次にサクションボックス26aにより、水分が吸引された後、吹付け具26bにより、汚染防止剤が付与される。
【0056】
そして、再び、第2トップ側フェルト25及び第2ボトム側フェルト26が湿紙50を挟持し、湿紙50がプレスロール20に搬送される。
【0057】
このとき、上記第2ボトム側フェルト26には汚染防止剤が付与されているため、第2ボトム側フェルト26と湿紙50とが接することにより、汚染防止剤は湿紙50に付着される。
【0058】
また、押圧部P3においては、第3ボトム側フェルト36に接触した状態で湿紙50が押圧されると、湿紙50中に含まれていた水分は湿紙50に接する第3ボトム側フェルト36に移行する。
【0059】
水分を含んだ第3ボトム側フェルト36は、まず、吹付け具37bにより、汚染防止剤が付与され、次にサクションボックス36aにより、水分が吸引され、最後に吹付け具36bにより、汚染防止剤が付与される。
【0060】
そして、再び、第3ボトム側フェルト36を介して湿紙50がプレスロール30により押圧される。
【0061】
一方、トップロール31においては、吹付け具30bにより、トップロール31に汚染防止剤が付与され、その後、ドクターブレード30cがトップロール31表面の異物を除去する。
その後、吹付け具31bにより、トップロール31に汚染防止剤が付与され、ドクターブレード31cによりドクターブレード30cで除去できなかった異物を除去する。
このとき、吹付け具30bにより付与された汚染防止剤は、ドクターブレード30cによりトップロール31の面に均一に均され、吹付け具31bにより付与された汚染防止剤は、ドクターブレード31cによりトップロール31の面に均一に均される。
【0062】
これらのことにより、トップロール31及び第3ボトム側フェルト36に汚染防止剤が付与されているため、トップロール31及び第3ボトム側フェルト36と湿紙50とが接することにより、汚染防止剤は湿紙50の両面に付着される。
【0063】
このように、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法においては、上述した第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36及びトップロール31により汚染防止剤が付与され、湿紙50がプレスロール20,30により押圧される。
【0064】
そうすると、湿紙50中に含まれる水分は第2トップ側フェルト25、第2ボトム側フェルト26及び第3ボトム側フェルト36に移行すると共に、第2ボトム側フェルト26及び第3ボトム側フェルト36に含まれる汚染防止剤は、湿紙50の表面に付着される。
なお、トップロール31、第2ボトム側フェルト26及び第3ボトム側フェルト36に含まれる汚染防止剤とはそれぞれ同一種類であっても、異なる種類であってもよい。
【0065】
ドライヤパート200に搬送された湿紙50は、ドライヤ80と、カンバス81とに挟持されることにより乾燥され、紙が得られる。
そして、カレンダーパート300に搬送された紙は、一対のカレンダーロール82に挟持され、カレンダー加工される。
【0066】
本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、湿紙50に上記汚染防止剤が付与されるため、湿紙50が接触することに起因する第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36、トップロール31への湿紙に含まれる異物の付着が抑制される。
また、このとき湿紙から汚染防止剤が第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36、トップロール31に転移されるため、プレスロール、フェルト及び該フェルトが接触するフェルトロールは汚染が一層抑制される。
【0067】
これにより、例えば、トップロール31への異物の付着により湿紙50が押圧されて穴が空く等の不具合の発生が抑制される。
さらに、湿紙50に汚染防止剤が付与されているため、プレスパート後においても、湿紙が接触するペーパーロール60、ドライヤ80、カンバス81、カレンダーロール82に湿紙50から汚染防止剤が転移される。
このため、ペーパーロール60、ドライヤ80、カンバス81、カレンダーロール82の汚染も抑制される。
【0068】
このように、本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36又はトップロール31を介して、湿紙50に汚染防止剤を付与しているので、湿紙50が破れるという事態が生じるのを抑制できる。
また、湿紙50に汚染防止剤を均一に付与できるという利点もある。
【0069】
したがって、本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法によれば、トップロール31、第2トップ側フェルト25、第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36及びこれらのフェルトに接触するフェルトロールの汚染を十分に抑制できると共に、プレスパート後におけるペーパーロール60、ドライヤ80、カンバス81、カレンダーロール82の汚染も十分に抑制できる。
【0070】
本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法の第2プレス部Bにおいては、サクションボックス26aが第2ボトム側フェルト26中の水分を吸引した後に第2ボトム側フェルト26に汚染防止剤を付与しているので、第2ボトム側フェルト26中の水分が十分に吸引され、第2ボトム側フェルト26に付与される汚染防止剤は希釈されずに濃度の高いものとなる。
【0071】
また、本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法の第3プレス部Cにおいては、サクションボックス36aが第3ボトム側フェルト36中の水分を吸引する前後に第3ボトム側フェルト36に汚染防止剤を付与しているので、より十分に第3ボトム側フェルト36に汚染防止剤が付着することになる。
これらのことにより、湿紙50表面に高濃度の汚染防止剤を付与することができ、更には湿紙50表面からトップロール31等に確実に汚染防止剤を転移させることができる。
【0072】
本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、プレスロール31に付着する異物を除去するためのドクターブレード30c,31cを備え、ドクターブレード30cで異物を除去した前後に汚染防止剤をプレスロールに付与しているので、トップロール31表面に異物が付着することを抑制できる。
また、ドクターブレード31cで残存する異物を除去できると共に、付与された汚染防止剤をトップロール31の面に均一に均すことができる。
【0073】
本実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、シュープレス22,32を用いているので、湿紙50を押圧する面が大きくなり、湿紙50を効率よく脱水できる。
これにより、湿紙50に付与された汚染防止剤の濃度をより高くすることができる。
【0074】
本発明の抄紙機の汚染防止方法において用いられる汚染防止剤は、下記一般式(1)で表される化合物と水溶性ポリマーとを含有する。
【化3】

【0075】
ここで、上記一般式(1)中、Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜228の整数を示し、qは0〜69の整数を示す。
但し、p,q,rは同時に0とはならない。
【0076】
この場合、水溶性ポリマーが上記一般式(1)で表される化合物と共にシュープレスやペーパーロールに転移される。そうすると、上記一般式(1)で表される化合物と共に水溶性ポリマーがシュープレスやペーパーロールの表面に皮膜化される。
このため、シュープレスやペーパーロールを長期間用いた場合であっても異物の付着が十分に抑制される。
【0077】
上記一般式(1)で表される化合物において、有機基としては、炭素原子を含む基であれば特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基、フェニル基又はナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0078】
また、上記置換基としては、フェニル基又はナフチル基等のアリール基、ハロゲン基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、エステル基、スルホニル基、ニトロ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
なお、上記一般式(1)で表される化合物は、これらの置換基を単独で有していても、単独で複数有していても、2種類以上有していてもよい。
【0079】
上記汚染防止剤において、一般式(1)で表される化合物の分子量に対する下記一般式(2)で表されるエチレンオキサイド基の含有割合が30質量%以上であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。
【化4】

【0080】
エチレンオキサイド基の含有割合が30質量%未満であると、エチレンオキサイド基の含有割合が上記範囲にある場合と比較して、皮膜強度が不十分となる傾向にあり、エチレンオキサイド基の含有割合が90質量%を超えると、エチレンオキサイド基の含有割合が上記範囲にある場合と比較して、皮膜がシュープレスに十分に定着しない傾向にある。
【0081】
上記一般式(1)で表される化合物において、Rが水素原子である場合、該化合物が下記一般式(3)で表すように、プロピレンオキサイド基を中心として、その左右にエチレンオキサイド基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーであることが好ましい。
【化5】

【0082】
ここで、一般式(3)中のp,q,rの値は汚染防止の観点から、以下の範囲であることが好ましい。
すなわち、pは27〜228の整数であることが好ましく、38〜199の整数であることがより好ましい。
qは25〜69の整数であることが好ましく、34〜60の整数であることがより好ましい。
rは27〜228の整数であることが好ましく、38〜199の整数であることがより好ましい。
また、これに加えてpとrとの値が同じであることが更に好ましい。
なお、本発明の汚染防止剤は、一般式(1)で表される化合物において、p,q,rの値が異なる化合物を2種類以上含んでいてもよい。
【0083】
なお、上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーにおける下記一般式(4)で表されるプロピレンオキサイド基の平均分子量は、汚染防止剤のプレスロールへの定着性の観点から1300以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。
【化6】

【0084】
上記一般式(1)において、Rが置換基を有していてもよい有機基である場合、該有機基は、炭素数が10〜16の炭化水素基であることが好ましく、炭素数12〜15の炭化水素基であることがより好ましい。
なお、上記炭化水素基は置換基を有していないものであることが好ましい。
【0085】
炭素数が10未満であると、炭素数が上記範囲にある場合と比較して、表面張力が高くなり、皮膜が十分に形成されない傾向にあり、炭素数が16を超えると、水中に均一に分散されにくくなるため、フェルトの表面に均一に吹付けられない傾向にある。
なお、本発明の汚染防止剤は、一般式(1)で表される化合物において、炭素数が異なる化合物を2種類以上含んでいてもよい。
【0086】
このとき、pとrとの和は水への相溶性の観点から6〜30の整数であることが好ましく、6〜20の整数であることがより好ましく、8〜20の整数であることが更に好ましく、9〜16の整数であることが一層好ましい。
また、qは0〜2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0087】
すなわち、qが0であるときは、下記一般式(5)で表される化合物となる。
【化7】

【0088】
これらの中でも、上記一般式(1)で表される化合物が、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテルであることが更に好ましい。
【0089】
上記水溶性ポリマーは、カチオン性、両性、又はノニオン性であることが好ましく、カチオン性又は両性であることがより好ましい。
これらの水溶性ポリマーは単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
なお、両性とは、カチオン性単量体とアニオン性単量体とを重合させることにより得られる。
この場合、シュープレスやペーパーロールへの異物の付着がより抑制される。
【0090】
上記カチオン性水溶性ポリマーとしては、ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム、ジシアンジアミド−ホルムアルデヒド縮合物、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合物等が挙げられる。
また、カチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体と、ノニオン性単量体であるエチレン性二重結合を有するモノマーとを重合させることにより得られるポリマーであってもよい。
【0091】
上記重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体としては、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルクロリド塩等が挙げられる。
また、上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
【0092】
上記両性水溶性ポリマーとしては、カチオン性単量体である重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体と、アニオン性単量体である重合可能な官能基を有するカルボン酸誘導体とを重合させることにより得られるポリマーが挙げられる。
なお、上記カチオン性単量体とアニオン性単量体とを重合させる際には、上述したノニオン性単量体を同時に重合させてもよい。
【0093】
上記重合可能な官能基を有するハロゲン化アミン誘導体は、上述したものと同様のものが用いられる。
また、上記重合可能な官能基を有するカルボン酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
【0094】
上記一般式(1)で表される化合物において、Rが水素原子である場合、上記水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩と、アニオン性単量体であるメタクリル酸と、ノニオン性単量体であるエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを、質量比5:2:3となるように重合させたものであることが好ましい。
【0095】
上記一般式(1)において、Rが置換基を有していてもよい有機基である場合、上記水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩と、ノニオン性単量体であるエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを、質量比1:1となるように重合させたものであることが好ましい。
【0096】
上記汚染防止剤において、一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの混合比が質量比で1:0.1〜1:10であることが好ましい。
【0097】
汚染防止剤1に対する水溶性ポリマーの質量比が0.1未満であると、質量比が上記範囲にある場合と比較して、皮膜を十分に維持できなくなる傾向にあり、汚染防止剤1に対する水溶性ポリマーの質量比が10を超えると、質量比が上記範囲にある場合と比較して、タック性が増加するため、汚染防止効果が低下する傾向にある。
【0098】
上記汚染防止剤において、一般式(1)で表される化合物の表面張力は、25〜40mN/mであることが好ましい。
この場合、汚染防止剤をフェルト表面上により均一に付与することができる。
【0099】
上記汚染防止剤は、上記一般式(1)で表される化合物、水溶性ポリマー以外にも、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、分散剤、粘度調整剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0100】
本発明の抄紙機の汚染防止方法において、フェルトに対する汚染防止剤の付着量は、5×10−6〜5×10−3g/mであることが好ましい。
フェルトに対する汚染防止剤の付着量が5×10−6g/m未満であると、付着量が上記範囲にある場合と比較して、付着量が過少であるため、十分な汚染抑制効果が得えられない傾向にあり、付着量が5×10−3g/mを超えると、汚染抑制効果の向上が認められなくなる傾向にある。
【0101】
上述した本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行って紙を製造することにより、汚れが少ない湿紙を得ることができる。
【0102】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0103】
上記実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36及びトップロール31に汚染防止剤を付与しているが、湿紙に接触する部位であればこれらに限定されない。
例えば、第1トップ側フェルト15、第1ボトム側フェルト16、第2トップ側フェルト25に汚染防止剤を付与してもよく、フェルトに接触するそれぞれのフェルトロールに汚染防止剤を付与しフェルトに汚染防止剤を転移させてもよい。
【0104】
なお、湿紙50に接触する面に汚染防止剤を付与することが好ましい。
すなわち、湿紙50と接触するフェルトの面、該フェルトの面と接触するフェルトロールの面、又は湿紙と接触するプレスロールの面、に汚染防止剤を付与することが好ましい。
この場合、汚染防止剤の付与量を最小限に止めることができると共に、設備も簡素化できる。
【0105】
また、湿紙50が一方の面しかペーパーロールやカンバス等に接触しない場合、汚染防止剤を一方の面のみに付与してもよい。
【0106】
上記実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、汚染防止剤を第2ボトム側フェルト26、第3ボトム側フェルト36に付与し、湿紙50に転移させているが、湿紙50に直接付与してもよい。
【0107】
上記実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法においては、第2及び第3プレス部B,Cでシュープレス22,32を用いているが、第1プレス部Aのプレスロール12がシュープレスであってもよい。
逆に、全てがシュープレスでなくてもよい。
なお、プレスロールの配列数は特に限定されず、シュープレスの位置についても特に限定されない。
【0108】
上記実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法では、サクションボックスがフェルト中の水分を吸引する前後にフェルトに汚染防止剤を付与しているが、サクションボックスがフェルト中の水分を吸引する前はフェルトに汚染防止剤を付与しなくてもよい。
すなわち、サクションボックスがフェルト中の水分を吸引した後にフェルトに汚染防止剤を付与することが好ましい。
【0109】
上記実施形態に係る抄紙機100の汚染防止方法では、ドクターブレード30cがトップロール31表面の異物を除去する前にトップロール31に汚染防止剤を付与しているが、必ずしもこの時点で汚染防止剤を付与する必要はない。
すなわち、ドクターブレード30cとドクターブレード31cとの間において、汚染防止剤をトップロール31に付与することが好ましい。
換言すると、トップロールが2つのドクターブレードを備えるときは、2つのドクターブレードの間に汚染防止剤を付与することが好ましい。
この場合、均一且つ確実にトップロールに汚染防止剤を付与することができる。
【0110】
上述した吹付け具26bの形式としては、図4に示すスプレー式に限定されず、フェルトの幅方向に往復移動しながら液体を吐出可能な吹付け具等であってもよい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[汚染防止剤]
水80質量%中に、下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(プロピレンオキサイド基の分子量:2000、エチレンオキサイド基の含有割合:40質量%、p=34、q=38、r=38、表面張力38.6mN/m)10質量%と、両性水溶性ポリマー10質量%とを加えることにより、汚染防止剤を得た。
【化8】

【0112】
なお、上記両性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩と、アニオン性単量体であるメタクリル酸と、ノニオン性単量体であるエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを、質量比5:2:3となるように混合し、ラジカル重合させたものである。
【0113】
[実機試験]
図5に示すドライヤパート200とカレンダーパート300とを備えた図1に示す抄紙機100を稼動させた。
すなわち、得られた汚染防止剤を吹付け具30b,31b,27b,37bに注入し、トップロール31、第2ボトム側フェルト26,第3ボトム側フェルト36それぞれに吹き付けて、湿紙の脱水を行った。
稼動条件は、次の通りである。
抄造品種:板紙
坪量:160〜320g/m
紙幅:6m
湿紙の移動速度:400〜800m/min
ペーパーロールの材質:鉄心ロール
汚染防止剤の付与量:25cc/min
【0114】
(実施例2)
実施例1において得られた汚染防止剤を、サクションボックス26a,36aの後に設けられている吹付け具26b,36bにも注入し、フェルト26,36それぞれに吹き付けて、湿紙の脱水工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして湿紙の脱水を行った。
【0115】
(実施例3)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの代わりに、下記一般式(1)で表される化合物(エチレンオキサイド基の含有割合:70質量%、炭素数12(直鎖ドデシル)、p+r=10、q=0、表面張力31.0mN/m)を用い、両性水溶性ポリマーの代わりに、カチオン性水溶性ポリマーを用いたこと以外は実施例1と同様にして湿紙の脱水を行った。
【化9】

【0116】
なお、上記カチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジンクロリド塩と、ノニオン性単量体であるエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを、質量比1:1となるように混合し、ラジカル重合させたものである。
【0117】
(実施例4)
実施例3において得られた汚染防止剤を、サクションボックス26a,36aの後に設けられている吹付け具26b,36bにも注入し、フェルト26,36それぞれに吹き付けて、湿紙の脱水工程を行ったこと以外は、実施例2と同様にして湿紙の脱水を行った。
【0118】
(比較例1)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを用いず、塩化アルキルジメチルベンザルコニウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして湿紙の脱水を行った。
【0119】
(比較例2)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを用いず、塩化アルキルジメチルベンザルコニウムを用いたこと以外は実施例2と同様にして湿紙の脱水を行った。
【0120】
[評価方法]
実施例1〜4及び比較例1,2において、抄紙機を1週間稼動させた後、フェルトロール38、ペーパーロール60、トップロール31及びドライパート200におけるカンバス81の汚染状態(汚れ量)をそれぞれ測定した。
なお、トップロール31の汚れ量は、ドクターブレード30bの刃先に溜まる汚れの量を採取して測定した。
得られた結果を表1に示す。
また、各実施例の結果は汚染防止剤として水のみを用いた場合のフェルトロール38、ペーパーロール60、トップロール31及びドライパート200におけるカンバス81の汚れの量をそれぞれ10としたときの規格値(ブランクに対する相対値)で示す。
さらに、実施例1及び比較例1における実機試験後のフェルトロール38の写真を図6及び図7に、実施例1及び比較例1における実機試験後のペーパーロール60の写真を図8及び図9に、実施例1及び比較例1における実機試験後のトップロール31の写真を図10及び図11に、実施例1及び比較例1における実機試験後のカンバス81の写真を図12及び図13に、それぞれ示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4の汚染防止剤によれば、比較例1,2の汚染防止剤と比較して、フェルトロール38、ペーパーロール60、トップロール31及びカンバス81の汚染を十分に抑制できることがわかった。
また、実施例2,4の結果は実施例1,3の結果よりも優れていることから、サクションボックスがフェルト中の水分を吸引した後に汚染防止剤をフェルトに付与することにより、フェルトロール38、ペーパーロール60、トップロール31及びカンバス81の汚染を一層抑制できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行う抄紙機における抄紙機を模式的に示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行う抄紙機におけるシュープレスの押圧部を拡大した概略図である。
【図3】図3は、図2の状態からシュープレスが湿紙及びフェルトを挟持した状態を示す概略図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る抄紙機の汚染防止方法を行う抄紙機における吹付け具の一例を示す斜視図である。
【図5】図5は、プレスパート後のドライヤパート及びカレンダーパートを示す概略図である。
【図6】図6は、実施例1における実機試験後のフェルトロールの写真である。
【図7】図7は、比較例1における実機試験後のフェルトロールの写真である。
【図8】図8は、実施例1における実機試験後のペーパーロールの写真である。
【図9】図9は、比較例1における実機試験後のペーパーロールの写真である。
【図10】図10は、実施例1における実機試験後のトップロールの写真である。
【図11】図11は、比較例1における実機試験後のトップロールの写真である。
【図12】図12は、実施例1における実機試験後のカンバスの写真である。
【図13】図13は、比較例1における実機試験後のカンバスの写真である。
【符号の説明】
【0124】
10,20,30・・・プレスロール
11,21,31・・・トップロール
12・・・ボトムロール
15・・・第1トップ側フェルト
15a,16a,25a,26a,36a・・・サクションボックス
16・・・第1ボトム側フェルト
22,32・・・シュープレス
22a・・・押上げ部
22b・・・昇降機構
22c・・・枠体
25・・・第2トップ側フェルト
26・・・第2ボトム側フェルト
26b,27b,30b,31b,36b,37b・・・吹付け具
27・・・基体
28・・・噴霧ノズル
30c,31c・・・ドクターブレード
36・・・第3ボトム側フェルト
38・・・フェルトロール
40・・・サクションロール
50・・・湿紙
60・・・ペーパーロール
70・・・汚染防止剤
100・・・抄紙機
A・・・第1プレス部
B・・・第2プレス部
C・・・第3プレス部
P1,P2,P3・・・押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルトと、
前記フェルトを案内するフェルトロールと、
前記フェルトを介して湿紙を押圧するための一対のプレスロールと、
を備えた抄紙機の汚染防止方法であって、
前記湿紙に下記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとを含む汚染防止剤を付与する、抄紙機の汚染防止方法。
【化1】

[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜228の整数を示し、qは0〜69の整数を示す。但し、前記p,q,rは同時に0とはならない。]
【請求項2】
前記フェルト又は前記プレスロールを介して、前記湿紙に前記汚染防止剤を付与する、請求項1記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項3】
前記湿紙と接触する前記フェルトの面、該フェルトの面と接触する前記フェルトロールの面、又は前記湿紙と接触する前記プレスロールの面、に汚染防止剤を付与する、請求項2記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項4】
前記一対のプレスロールのうちの一方がシュープレスである、請求項1記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項5】
前記抄紙機が、前記プレスロールに付着する異物を除去するためのドクターブレードを備え、
前記ドクターブレードで前記異物を除去する前に前記汚染防止剤を前記プレスロールに付与する、請求項1記載の汚染防止方法。
【請求項6】
前記抄紙機が、前記フェルト中の水分を吸引するためのサクションボックスを備え、
前記サクションボックスが前記フェルト中の水分を吸引した後に前記汚染防止剤を前記フェルトに付与する、請求項1記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項7】
前記一般式(1)中のRが水素原子であり、p及びrがそれぞれ独立に27〜228の整数であり、qが25〜69の整数である、請求項1記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項8】
前記一般式(1)中のRが置換基を有していてもよい炭素数10〜16の炭化水素基であり、pとrとの和が6〜20の整数であり、qが0〜2の整数である、請求項1記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項9】
前記フェルトに対する前記汚染防止剤の付着量が5×10−6〜5×10−3g/mである、請求項1記載の抄紙機の汚染防止方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の汚染防止方法に用いられる、汚染防止剤。
【請求項11】
フェルトと、
前記フェルトを介して湿紙を押圧するためのプレスロールと、
前記フェルト中の水分を吸引するためのサクションボックスと、
前記フェルトに下記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとを含む汚染防止剤を付与するための吹付け具と、
を備える、抄紙機。
【化2】

[式(1)中、Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を示し、p,rはそれぞれ独立に0〜228の整数を示し、qは0〜69の整数を示す。但し、前記p,q,rは同時に0とはならない。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−81903(P2008−81903A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265852(P2006−265852)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(594020802)株式会社メンテック (7)
【出願人】(000231257)日本大昭和板紙株式会社 (18)
【Fターム(参考)】